JP5790500B2 - 導電性高分子、導電性高分子の品質管理方法、および導電性高分子の精製方法 - Google Patents
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Description
本願は、2010年3月24日に、日本に出願された特願2010−068159号、2010年3月31日に、日本に出願された特願2010−080734号、2010年5月20日に、日本に出願された特願2010−116483号、2010年11月11日に、日本に出願された特願2010−252717号、2011年2月16日に、日本に出願された特願2011−031388号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ポリアニリンの製造法としては、スルホン酸基やカルボキシル基などの酸性基で置換されたアニリン(酸性基置換アニリン)を、塩基性化合物を含む溶液中で重合する方法が提案されている(例えば特許文献3、4参照)。
従来、酸性基置換アニリンは、それ単独では重合しにくく、高分子量化が困難とされていたが、塩基性化合物を含む溶液中で重合する方法によれば、高分子量の重合体の製造が可能である。この方法で得られるポリアニリンは高分子量であり、酸性からアルカリ性のいずれの水溶液にも優れた溶解性を示す。
しかし、塩基性化合物を含む溶液中で酸性基置換アニリンを重合する方法は、副反応の併発や、それに基づくと考えられるオリゴマー成分の副生等が完全には抑制されず、これが導電性高分子中への不純物混入の要因および導電性向上の妨げとなっていた。
また、特許文献2には、塩基性化合物を含む溶液中で酸性基置換アニリンを重合する際に、重合触媒である酸化剤の溶液に酸性基置換アニリンと塩基性化合物を含む溶液を滴下することで、不純物を抑制する方法が開示されている。
また、特許文献1に記載の方法は煩雑であり、導電性高分子の精製も不十分であった。そのため、特に硫酸イオン、オリゴマー、未反応のモノマーなどが不純物として残ってしまい、導電性や溶解性が低下するという問題があった。
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性高分子を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
(II)試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
(III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程。
[2] 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子の品質管理方法であって、
下記工程(I)〜(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(Y/X)が0.60以下である導電性高分子を選択する導電性高分子の品質管理方法。
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性高分子を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
(II)試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
(III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程。
[3] 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子を、下記(i)〜(iii)から選択される少なくとも1つの工程によって精製する方法。
(i)前記導電性高分子を膜ろ過する工程。
(ii)前記導電性高分子を溶媒に分散または溶解させた後に、前記導電性高分子を含む溶媒を強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させる工程。
(iii)前記導電性高分子を含む溶媒を炭素材料に接触させる工程。
また、本発明によれば、高い導電性と溶解性を有する導電性高分子の精製方法を提供できる。
[導電性高分子]
本発明の導電性高分子は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する。
本発明において「導電性」とは、109Ω・cm以下の体積抵抗率を有することである。
ここで、「酸性基」とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。つまり、式(1)中、R1〜R4のうちの少なくとも一つは、−SO3 −、−SO3H、−COOHまたは−COO−である。また、「塩」とはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、および置換アンモニウム塩のいずれかである。
中でも、製造が容易な点で、R1〜R4のうち、いずれか一つが炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つが−SO3 −または−SO3Hであり、残りがHであるものが好ましい。
また、導電性高分子は、導電性に優れる観点で、上記一般(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性高分子を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程(工程(I))。
(II)試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程(工程(II))。
(III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程(工程(III))。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)を求める工程(工程(IV))。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程(工程(V))。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程(工程(VI))。
溶離液は、溶媒に溶質が溶解した液である。溶媒としては、水、アセトニトリル、アルコール(メタノール、エタノールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。
溶質としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリシン、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸などが挙げられる。
pHが10以上の溶離液は、例えば以下のようにして調製することができる。
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合して、混合溶媒を得る。ついで、得られた混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を得る。
このようにして得られる溶離液は25℃でのpHが10.8である。
なお、溶離液のpHは、溶離液の温度を25℃に保持した状態で、pHメータを用いて測定した値である。
なお、導電性高分子溶液を用いる場合、溶離液に加えたときに導電性高分子の固形分濃度が0.1質量%になれば、導電性高分子溶液の固形分濃度については特に制限されないが、1.0質量%以上が好ましい。導電性高分子溶液の固形分濃度が1.0質量%未満であると、溶離液に加えたときに溶離液のpH緩衝作用が十分に働かず、試験溶液のpHが10未満となり、定量値がぶれて、安定した測定結果が得られにくくなる。
また、導電性高分子溶液に用いる溶媒としては、後述する導電性高分子が可溶な溶媒が挙げられる。中でも、水が好ましい。
高分子材料評価装置は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えており、分子量の大きさにより化合物(ポリマー、オリゴマー、モノマー)を分離して分析できる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフには、フォトダイオードアレイ検出器、UV検出器などの検出器が接続されている。
図1に示すクロマトグラムは、縦軸が吸光度、横軸が保持時間であり、高分子量体は比較的短い保持時間で検出され、低分子量体は比較的長い保持時間で検出される。
具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料のみは固形分濃度が0.0025質量%となるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製する。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成する。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する。
また、工程(V)は、分子量(M)が5000Da未満の領域(y)の面積(Y)を求める工程である。
工程(VI)は、面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程である。
面積(Y)は、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積であり、この領域には主にオリゴマーやモノマーといった異物の原因となる低分子量体が存在する。面積比(Y/X)が0.60以下であれば、導電性高分子に含まれる低分子量体の割合が少ないので、時間が経過しても導電性高分子より形成される塗膜に異物が発生しにくい。
なお、面積比(Y/X)の値が小さいほど、導電性高分子に含まれる低分子量体の割合が少ない。従って、面積比(Y/X)の値は小さくなるほど好ましく、具体的には0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましい。
まず、化学重合または電解重合などの各種合成法によって、導電性高分子を合成する。具体的には、下記一般式(3)で表される酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(モノマー)を、塩基性化合物の存在下、酸化剤を用いて重合する(重合工程)。
上記一般式(3)で表される酸性基置換アニリンとしては、酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリン、酸性基としてカルボキシ基を有するカルボキシ基置換アニリンが挙げられる。
スルホン基置換アニリンとして代表的なものはアミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンスルホン酸、アニリン−2,6−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、アニリン−3,5−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−3,4−ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
アミノベンゼンスルホン酸類以外のその他のスルホン基置換アニリンとしては、例えはメチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t−ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類;メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類などを挙げることができる。その他のスルホン基置換アニリンの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性高分子が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、またはハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
アミノベンゼンカルボン酸類以外のその他のカルボキシル基置換アニリンとしては、例えばメチルアミノベンゼンカルボン酸、エチルアミノベンゼンカルボン酸,n−プロピルアミノベンゼンカルボン酸、iso−プロピルアミノベンゼンカルボン酸、n−ブチルアミノベンゼンカルボン酸、sec−ブチルアミノベンゼンカルボン酸、t−ブチルアミノベンゼンカルボン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類;メトキシアミノベンゼンカルボン酸、エトキシアミノベンゼンカルボン酸、プロポキシアミノベンゼンカルボン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンカルボン酸類;フルオロアミノベンゼンカルボン酸、クロロアミノベンゼンカルボン酸、ブロムアミノベンゼンカルボン酸等のハロゲン基置換アミノベンゼンカルボン酸類などが挙げられる。その他のカルボキシル基置換アニリンの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性高分子が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンカルボン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンカルボン酸類またはハロゲン基置換アミノベンゼンスルホン酸類が実用上好ましい。
これらのカルボキシル基置換アニリンはそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種(異性体を含む。)以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
A:スルホン基またはカルボキシル基、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩から選ばれた一つの基を示す。
B:メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、t−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのアルコキシ基、ヒドロキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロム基などのハロゲン基から選ばれた一つの基を示す。
H:水素原子を示す。
塩基性化合物としては、無機塩基、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが用いられる。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物の塩などが挙げられる。これらのなかでも、水酸化ナトリウムが好ましい。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリンおよびこれらの骨格を有する誘導体、ならびにこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが挙げられる。
無機塩類やこれらの塩基性化合物も用いれば、高導電性で、かつ高純度な導電性高分子を得ることができる。
これらの塩基性化合物はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素等を用いることが好ましい。
これらの酸化剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
本発明においては、モノマーに対して酸化剤がモル比で等モル以上存在している系にて重合を行うことが重要である。また、触媒として、鉄、銅などの遷移金属化合物を酸化剤と併用することも有効である。
重合の方法としては、例えば酸化剤溶液中にモノマーと塩基性化合物の混合溶液を滴下する方法、モノマーと塩基性化合物の混合溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にモノマーと塩基性化合物の混合溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法などが挙げられる。
なお、溶媒として混合溶媒を用いる場合、水と水溶性有機溶媒との混合比は任意であるが、水:水溶性有機溶媒=1:100〜100:1が好ましい。
プロトン酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ化フッ素酸等の鉱酸類、トリフルオロメタンスルホン酸等の超強酸類、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機スルホン酸類、およびポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ−2−メチルプロパン−2−アクリルアミドスルホン酸等の高分子酸類などが挙げられる。これらの中でも、塩酸、硝酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が好ましい。
洗浄液としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド,N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が、高純度のものが得られるため好ましい。特にメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリルが効果的である。
[導電性高分子精製方法]
本発明の導電性高分子の精製方法は、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子を精製する方法である。また、「精製」とは、モノマー、オリゴマー、低分子量体や不純物等を含む粗な前記導電性高分子から、目的の前記導電性高分子以外の物質を除去することをいう。なお、本発明において表面抵抗率と体積抵抗率の関係は、「体積抵抗率=表面抵抗率×測定試料の膜厚」を意味する。
尚、未精製の導電性高分子を精製する方法としては、膜ろ過法、陰イオン交換法、炭素材料処理法(活性炭処理法、カーボンナノチューブ(CNT)処理法)などの方法が挙げられる。
未精製の導電性高分子を上述した方法で精製する場合は、水などの溶媒に溶解させた状態(試料液)で用いる。
(膜ろ過法)
限外ろ過膜の材質としては、セルロース、セルロースアセテート、ポリサルホン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン等の有機膜やセラミック等の無機膜、もしくは有機-無機のハイブリッド膜等など、通常、限外ろ過膜の材質として使用するものであれば、特に制限はないが、特に耐溶剤性に優れており、薬液洗浄などのメンテナンスが容易であるセラミックス膜などが好適である。
また、限外ろ過膜としては、有機膜では、分画分子量が1000〜100000の範囲内に収まる限外ろ過膜が好ましく、より好ましくは、5000〜50000の範囲内に収まる限外ろ過膜であり、さらに好ましくは10000〜50000の範囲内に収まる限外ろ過膜であり、特に好ましくは10000〜30000の範囲内に収まる限外ろ過膜である。セラミック膜の場合は、孔径100nm以下1nm以上、より好ましくは50nm以下2nm以上、さらに好ましくは20nm以下5nm以上のろ過膜である。
なお、限外ろ過膜の分画分子量の値が大きくなるほど、限界透過流束は高くなり、精製後に得られる導電性ポリマーの導電性が高くなる傾向があるが、収率は低下する傾向にある。
同様に限外ろ過膜の孔径の値が大きくなるほど、限界透過流束は高くなり、精製後に得られる導電性ポリマーの導電性が高くなる傾向があるが、収率は低下する傾向にある。
また、クロスフロー方式は、ポリマー溶液を繰り返し連続的に透過膜と接触させることができ、精製度を高めることができる。なお、ポリマー溶液中の溶媒は、透過膜を透過するため、精製の過程でポリマー溶液は濃縮されて高粘度化し、運転上支障が出ることがある。このような場合には、適宜、溶媒(水等)を濃縮液側に供給して適度な濃度に希釈することで、精製処理を継続することができる。
また、ろ過時間については特に制限されないが、その他の条件が同じであれば、時間が長くなるほど精製度は高くなり、精製後に得られる導電性ポリマーの導電性が高くなる傾向にある。
具体的には、GPCにより得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量のうち、5000Da以上の領域の面積(X)と、5000Da未満の領域の面積(Y)との面積比(Y/X)が0.60以下となるまで膜ろ過するのが好ましい。面積比(Y/X)が0.60以下となれば、未反応モノマー、低分子量物(オリゴマー)、および不純物等が十分に除去され、高い導電性を有する導電性ポリマーが得られる。
具体的には、膜ろ過の透過液(ろ過膜通過後のろ過液)に含まれる固形分が10質量%以下となるまで膜ろ過するのが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。固形分が10質量%以下となれば、未反応モノマー、低分子量物(オリゴマー)、および不純物等が十分に除去され、高い導電性を有する導電性ポリマーが得られる。
このように酸性基の一部ないし全部が塩を形成しているポリマーは、精製工程の前または後でさらに精製処理することによって高純度なポリマーとすることで、さらに導電性を向上させることができる。
前記未精製の導電性高分子を溶媒に分散または溶解させた後に、強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて、導電性高分子を精製することができる。
陰イオン交換樹脂は、樹脂母体の表面または内部に、樹脂母体に固定された無数のイオン交換基(固定イオン)を有する。このイオン交換基が、未精製の導電性高分子に含まれるオリゴマーやモノマーを選択的にイオン交換(吸着)して、除去することができる。また、イオン交換基は不純物となる陰イオンを選択的にイオン交換してこれを捕捉でき、導電性高分子から陰イオンを除去することもできる。
ここで、「強塩基」とは、塩基解離定数の大きい塩基のことであり、具体的には、水溶液中において電離度が1に近く、水酸化物イオンを定量的に生成し、塩基解離定数(pKb)がpKb<0(Kb>1)のものをいう。一方、「弱塩基」とは、塩基解離定数の小さい塩基のことであり、具体的には、水溶液中において電離度が1よりも小さく、0に近いもので、他の物質から水素イオンを奪う能力が弱いものをいう。
一方、弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えばイオン交換基として1〜3級のアミノ基を有する陰イオン交換樹脂などが挙げられる。また、市販品としては、三菱化学株式会社製の「ダイヤイオンWA20」;オルガノ株式会社製の「アンバーライト IRA67」などが挙げられる。
前記未精製の導電性高分子を溶媒に分散または溶解させた後に、炭素材料に接触させて、導電性高分子を精製することができる。
本発明の炭素材料としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノウォール、フラーレンなどの炭素を主成分とする材料が挙げられる。
(活性炭)
活性炭処理法は、活性炭を用いる。
活性炭は、その内部に無数の微細孔を有する多孔性の炭素物質であり、特定の成分を選択的に吸着して分離することができる。
活性炭としては、試料液中のオリゴマーやモノマーを吸着し、試料液から分離できるものであれば特に制限されないが、例えば日本エンバイロケミカルズ株式会社製の「精製白鷺」などが好適である。
カーボンナノチューブは、2〜数十層のグラファイト状炭素が積み重なってできた外径がnmオーダーのチューブである。
カーボンナノチューブとしては、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、単層のカーボンナノチューブが同心円状に多層に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったものが挙げられる。
さらには、カーボンナノチューブには、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、その頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質、カーボンナノチューブの類縁体であるフラーレン、カーボンナノファイバーも含まれる。
これらの中でも、導電性がより高くなる点では、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブが好ましい。
また、カーボンナノチューブを製造する際には、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、高純度化することが好ましい。
本発明の活性炭処理法、カーボンナノチューブ法において、「接触」とは、導電性高分子の分散液または溶解液と、炭素材料とを混合させた状態に置くことを意味する。導電性高分子の分散液または溶解液と、炭素材料とを混合した後に、攪拌や超音波照射などを用いて、導電性高分子と炭素材料の接触を加速させるような処理を行っても良い。
なお、接触時間の上限値については特に制限されず、導電性高分子の分散液または溶離液の濃度、炭素材料の量、後述する接触温度などの条件に併せて、適宜設定すればよい。
なお、上述したように、導電性高分子は塩基性化合物の存在下、モノマーを重合することで得られる。そのため、導電性高分子、オリゴマー、モノマー中の酸性基の一部が、塩基性化合物と塩を形成することがある。特に、オリゴマーやモノマー中の酸性基と塩基性化合物が塩を形成すると、導電性高分子より形成される塗膜に異物として現れやすくなる。また、導電性高分子中の酸性基と塩基性化合物が塩を形成すると、導電性が低下する場合がある。
脱塩処理の方法としてはイオン交換法が挙げられ、具体的には、陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、電気透析法などである。
陽イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、陽イオン交換樹脂に対する試料液の量は、例えば5%の導電性高分子水溶液の場合、陽イオン交換樹脂に対して10倍の容積までが好ましく、5倍の容積までがより好ましい。
陽イオン交換樹脂としては、例えば三菱化学株式会社製の「ダイアイオンSK1B」、オルガノ株式会社製の「アンバーライトIR−120H」などが挙げられる。
また、電気透析法に用いるイオン交換膜として、アニオン交換層、カチオン交換層を張り合わせた構造を持ったイオン交換膜であるバイポーラ膜を用いてもよい。このようなバイポーラ膜としては、例えば株式会社アストム製の「PB−1E/CMB」などが好適である。
電気透析における電流密度は限界電流密度以下であることが好ましい。バイポーラ膜での印加電圧は、10〜50Vが好ましく、25〜35Vより好ましい。
また、精製工程や脱塩処理後の、溶媒に溶解した導電性高分子を導電性高分子溶液として、上述した評価方法に用いることもできる。
導電性高分子の質量平均分子量は、上述した工程(I)〜(III)を実施して測定される値である。
溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類などが挙げられる。これら有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、これらの有機溶媒の中には、1種単独で用いると導電性高分子が溶解しにくいものもある(例えばメタノールなど)。そのような場合は、水と混合して混合溶媒として用いる。
導電性高分子溶液を塗工する基材としては、特に限定されず、高分子化合物、木材、紙材、セラミックス及びそのフィルムまたはガラス板などが用いられる。
本発明の導電性高分子の品質管理方法(以下、単に「品質管理方法」という。)は、前記工程(I)〜(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(Y/X)が0.60以下である導電性高分子を選択する方法である。すなわち、面積比(Y/X)が0.60以下の導電性高分子を合格、面積比(Y/X)が0.60超の導電性高分子を不合格と判定し、合格と評価されたものを本発明の導電性高分子とする。
なお、本発明により品質管理される対象物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子である。
なお、不合格と判定された導電性高分子は、合格と判定されるまで精製工程を繰り返し行えばよいので、製造した導電性高分子を無駄なく利用できる。
なお、実施例および比較例における評価・測定方法、および導電性高分子の重合方法は以下の通りである。
<評価および測定>
(面積比(Y/X)の算出)
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
この溶離液に、導電性高分子溶液を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(I))。
得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2414(屈折率計)、2996(PDA)」)を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得た(工程(II))。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した(工程(III))。具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料のみは固形分濃度が0.0025質量%となるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製した。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した。
そして、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)と、5000Da未満の領域の面積(Y)をそれぞれ求めた(工程(IV)、(V))。
これら面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求めた(工程(VI))。
5cm×5cmのガラス基板上に、導電性高分子溶液をスピンコート塗布(2000rpm×60sec)し、ホットプレート上で100℃×2分間加熱して、厚さ0.1μmの塗膜がガラス基板上に形成された試験片を得た。
得られた試験片を23℃にて放置し、塗膜形成から1週間および3ヶ月経過した後の塗膜の状態について顕微鏡(倍率:1000倍)にて観察し、塗膜1mm2あたりに発生した異物の数を数え、下記評価基準にて評価した。
なお、異物としては最長径が1μm以上のものをカウントした。また、「A」と評価された塗膜の状態の一例を図2に、「B」と評価された塗膜の状態の一例を図3に、「C」と評価された塗膜の状態の一例を図4にそれぞれ示す。
A:異物の数が0個である。
B:異物の数が1〜5個である。
C:異物の数が6〜50個である。
D:異物の数が51〜100個である。
E:異物の数が100個超である。
異物発生の評価と同様にして試験片を作製した。
得られた試験片の表面抵抗値(初期値)を、抵抗率計(株式会社三菱アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四探針プローブを装着して測定した。
(重合例1)
2−アミノアニソールー4−スルホン酸100mmolを、2mol/L濃度のトリエチルアミンの水/アセトニトリル=5:5の溶液50mLに溶解し、モノマー溶液を得た。次に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを、水/アセトニトリル=5:5の溶液80mLに溶解し、さらに濃硫酸(98質量%)0.5gを加え、酸化剤溶液を得た。
ついで、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、モノマー溶液を1時間かけて滴下した。このときの反応時の最高到達温度は20℃であった。滴下終了後、室温で12時間さらに攪拌した後に反応生成物を遠心濾過器にてろ別した。さらに、メタノールにて洗浄した後乾燥させ、重合体(未精製の導電性高分子)1Aの粉末約13gを得た。
なお、「室温」とは23℃のことである。
2−アミノアニソールー4−スルホン酸100mmolを、2mol/L濃度のトリエチルアミンの水/アセトニトリル=4:6の溶液50mLに溶解し、モノマー溶液を得た。次に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを、水/アセトニトリル=4:6の溶液80mLに溶解し、さらに濃硫酸(98質量%)0.5gを加え、酸化剤溶液を得た。
得られたモノマー溶液および酸化剤溶液を用いた以外は重合例1と同様にして、重合体(未精製の導電性高分子)1Bの粉末約11gを得た。
重合例1と同様のモノマー溶液および酸化剤溶液を用い、この酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、モノマー溶液を1時間かけて滴下した。このときの反応時の最高到達温度は20℃であった。滴下終了後、室温で12時間さらに攪拌し、重合体(未精製の導電性高分子)溶液1Cを得た。
重合例1で得られた重合体1Aを、固形分濃度が2質量%となるように、超純水(ミリポア)に溶解させ、300gの水溶液を得た。
分画分子量が10000Daのクロスフロー式限外ろ過膜を備えたクロスフロー式限外ろ過ユニット(ザルトリウス・ステディム・ジャパン株式会社製、「ビバフロー50」)を2つ直列に接続したろ過装置を用い、得られた水溶液をろ過時間70分、ろ過圧力0.4MPaの条件で循環ろ過させ、未精製の導電性高分子を精製し、ろ過膜を通過しなかった方を導電性高分子溶液1A−1として回収した。
また、導電性高分子溶液1A−1について、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例1で得られた重合体1Aを、固形分濃度が2質量%となるように、超純水(ミリポア)に溶解させ、300gの水溶液を得た。
分画分子量が10000Daの加圧式限外ろ過膜(アドバンテック株式会社製、「ウルトラフィルターQ0100」)を備えた加圧式限外ろ過ユニット(アドバンテック株式会社製、「攪拌型ウルトラフォルダー」)に、得られた水溶液をセットし、水溶液が150gになるまで0.35MPaの圧力を加圧しながらろ過した。その後圧力を解除し、水溶液に超純水を150g加え、再度加圧しながらろ過した。この操作を3回繰り返して未精製の導電性高分子を精製し、ろ過膜を通過しなかった方を導電性高分子溶液1A−2として回収した。
得られた導電性高分子溶液1A−2について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例1で得られた重合体1Aを2質量部、水98質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液100質量部に、強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「オルライトDS−2」)10質量部を加え、ミックスローターバリアブル(VMR−3R)を用いて50rpmの回転速度で、室温で1時間回転させ、未精製の導電性高分子を精製した。
ついで、混合液をフィルターろ過することにより強塩基性陰イオン交換樹脂を除去し、導電性高分子溶液1A−3を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−3について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例1で得られた重合体1Aを2質量部、水98質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液100質量部に、活性炭(日本エンバイロケミカルズ株式会社製、「精製白鷺」)1質量部を加え、ミックスローターバリアブル(VMR−3R)を用いて50rpmの回転速度で、室温で1時間回転させ、未精製の導電性高分子を精製した。
ついで、混合液をフィルターろ過することにより活性炭を除去し、導電性高分子溶液1A−4を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−4について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例1で得られた重合体1Aを2質量部、水98質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液100質量部に、カーボンナノチューブ(CNT、株式会社昭和電工製、「VGCF」)1質量部を加え、ミックスローターバリアブル(VMR−3R)を用いて50rpmの回転速度で、室温で1時間回転させ、未精製の導電性高分子を精製した。
ついで、混合液をフィルターろ過することによりCNTを除去し、導電性高分子溶液1A−5を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−5について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例2で得られた重合体1Bを用いた以外は、実施例1と同様にして未精製の導電性高分子を精製し、ろ過膜を通過しなかった方を導電性高分子溶液1B−1として回収した。この導電性高分子溶液1B−1について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例3で得られた重合体溶液1Cを用い、固形分濃度が2質量%となるように超純水(ミリポア)をさらに加えた以外は、実施例1と同様にして未精製の導電性高分子を精製し、ろ過膜を通過しなかった方を導電性高分子溶液1C−1として回収した。この導電性高分子溶液1C−1について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例1で得られた導電性高分子溶液1A−1の100質量部に対して10質量部となるように、酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIR−120H」)をカラムに充填し、該カラムに導電性高分子溶液1A−1をSV=5の速度で通過させて脱塩を行い、導電性高分子溶液1A−6を得た。なお、1SV(スベルドラップ)は1×106m3/s(=1GL/s)である。
得られた導電性高分子溶液1A−6について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例2で得られた導電性高分子溶液1A−2を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、導電性高分子溶液1A−7を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−7について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例3で得られた導電性高分子溶液1A−3を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、導電性高分子溶液1A−8を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−8について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例4で得られた導電性高分子溶液1A−4を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、導電性高分子溶液1A−9を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−9について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例5で得られた導電性高分子溶液1A−5を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、導電性高分子溶液1A−10を得た。
得られた導電性高分子溶液1A−10について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例6で得られた導電性高分子溶液1B−1を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、導電性高分子溶液1B−2を得た。
得られた導電性高分子溶液1B−2について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例7で得られた導電性高分子溶液1C−1を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、高分子溶液1C−2を得た。
得られた導電性高分子溶液1C−2について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例1で得られた重合体1Aを、固形分濃度が2質量%となるように、超純水(ミリポア)に溶解させ、300gの水溶液を得た。この水溶液を導電性高分子溶液1D−1とした。
導電性高分子溶液1D−1について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例1と同様にして未精製の導電性高分子(重合体1A)を精製した。ろ過膜を通過した方を導電性高分子溶液1D−2として回収した。
導電性高分子溶液1D−2について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
重合例2で得られた重合体1Bを、固形分濃度が2質量%となるように、超純水(ミリポア)に溶解させ、300gの水溶液を得た。この水溶液を導電性高分子溶液1D−3とした。
導電性高分子溶液1D−3について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
比較例2で得られた導電性高分子溶液1D−2を用いた以外は、実施例8と同様にして脱塩を行い、高分子溶液1D−4を得た。
得られた導電性高分子溶液1D−4について、実施例1と同様にして面積比(Y/X)を算出し、異物発生の評価および表面抵抗値を測定した。これらの結果を表2に示す。
また、各実施例で得られた導電性高分子溶液から形成された塗膜は、表面抵抗値が低く、高い導電性を示した。特に、未精製の導電性高分子を精製した後、脱塩を行った実施例8〜14の場合は、表面抵抗値がさらに低下し、より高い導電性を発現できた。
比較例2で得られた導電性高分子溶液は、実施例1でクロスフロー方式により未精製の導電性高分子を精製した後のろ液(ろ過膜を通過した液)に相当する。比較例3により得られた導電性高分子は、面積比(Y/X)が3.00であり、オリゴマーやモノマーなどの低分子量体の割合が多かった。この導電性高分子の溶液は、塗膜を形成してから1週間で塗膜1mm2あたり100個超の異物が発生した。また、塗膜の表面抵抗値が各実施例に比べて著しく高く、導電性が不十分であった。
比較例4は、比較例2で得られた導電性高分子溶液を脱塩した例である。比較例4より得られた導電性高分子の面積比(Y/X)は3.00であり、脱塩ではオリゴマーやモノマーを除去することはできなかった。また、比較例4の場合は、脱塩によって塩基性化合物が除去されたため、比較例2に比べれば異物の発生数は少なかったが、各実施例に比べるとはるかに多かった。さらに、塗膜の表面抵抗値が各実施例に比べて著しく高く、導電性が不十分であった。
<評価および測定>
(面積比(Y/X)の算出)
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
この溶離液に、導電性ポリマー溶液を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(I))。
得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2414(屈折率計)、2996(PDA)」)を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得た(工程(II))。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した(工程(III))。具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%となるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製した。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した。
そして、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)と、5000Da未満の領域の面積(Y)をそれぞれ求めた(工程(IV))。
これら面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求めた(工程(V))。結果を表3に示す。
得られた導電性ポリマー溶液を、スピンコータ(Actes inc.製、「マニュアルスピンナーASC−4000」)を用いてガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で100℃×2分間加熱して、表3に示す膜厚の塗膜がガラス基板上に形成された試験片を得た。
得られた試験片の表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四探針プローブを装着して測定した。結果を表3に示す。
<導電性ポリマーの製造>
ペルオキソ二硫酸アンモニウム1mol/Lの水溶液134kgと、98質量%硫酸(26.8mol)を仕込んだ容量300LのSUS製の丸底攪拌槽(槽径0.6m)の反応器内温度を0℃に調整後、4.5mol/Lトリエチルアミン水溶液65kgに溶解した2−アミノアニソール−4−スルホン酸131molを1時間かけて滴下した。攪拌翼はSUS製のアンカー翼(攪拌翼径0.5m)で、攪拌回転数は45rpmで行った。滴下終了後、2時間攪拌し、12時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
前記導電性ポリマーの製造工程で得られたポリマー溶液を膜ろ過した。
膜ろ過には、図6に示す膜ろ過装置10を用いた。この膜ろ過装置10は、クロスフロー方式を採用した装置であり、ろ過部11と、ポンプ12と、3つの容器13、14、15を備えている。
ろ過部11としては、ザルトリウス社製の「ビバフロー200」を用いた。また、ろ過膜として、分画分子量が5000Daの限外ろ過膜(材質:ポリエーテルスルホン(PES))を用いた。
容器13はポリマー溶液と、ろ過膜を通過しなかったろ過液を収容する容器であり、容器14はろ過膜を通過したろ過液(透過液)を回収する容器であり、容器15は希釈液(水など)を貯蔵する容器である。
すなわち、ポンプ12を稼働させ、容器13に収容されたポリマー溶液をろ過部11に供給し、ろ過部11のろ過膜を通過したろ過液を容器14に回収し、通過しなかったろ過液を容器13に返送した。容器13に返送されたろ過液は、ポリマー溶液と混合され、再度、ろ過部11に供給されて膜ろ過される。
ろ過圧力0.18MPa、ろ過時間420分の条件で、連続して膜ろ過を行った。なお、時間が経過するに従って、ろ過部11に供給されるポリマー溶液は濃縮されるので、容器15に貯蔵された希釈液(水)を容器13に供給し、ポリマー溶液の濃度が所望の値になるように希釈した。
膜ろ過の終了後、容器13内の溶液を導電性ポリマー溶液として回収した。
(面積比(Y/X)の算出)
まず、水(超純水)とメタノールを、容積比が水:メタノール=8:2となるように混合した混合溶媒に、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを、それぞれの固形分濃度が20mmol/L、30mmol/Lになるように添加して、溶離液を調製した。得られた溶離液は、25℃でのpHが10.8であった。
この溶離液に、導電性ポリマー溶液を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させ、試験溶液を調製した(工程(I))。
得られた試験溶液について、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器が接続されたゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置(Waters社製、「Waters Alliance2695、2414(屈折率計)、2996(PDA)」)を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得た(工程(II))。
ついで、得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した(工程(III))。具体的には、ピークトップ分子量が206、1030、4210、13500、33500、78400、158000、2350000のポリスチレンスルホン酸ナトリウムを標準試料として用い、試験溶液と同様にして、各標準試料を固形分濃度が0.05質量%、ただし、ピークトップ分子量が206の標準試料のみは固形分濃度が0.0025質量%となるように溶離液に溶解させて、標準溶液を調製した。そして、各標準溶液についてGPCにより保持時間と分子量の関係を求め、検量線を作成した。作成した検量線から、工程(II)で得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算した。
そして、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)と、5000Da未満の領域の面積(Y)をそれぞれ求めた(工程(IV))。
これら面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求めた(工程(V))。結果を表3に示す。
本発明の導電性ポリマーには、その製造過程において副生するオリゴマーや、未反応のモノマーなどが不純物として含まれている。上記面積(Y)は、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積であり、この領域には主にオリゴマーやモノマー等の低分子量体が存在する。従って、当該面積比(Y/X)は未反応モノマーや低分子量物(オリゴマー)の指標を示すものであり、この値が小さいほど、導電性高分子に含まれる低分子量体の割合が少ないことを示す。
得られた導電性ポリマー溶液を、スピンコータ(Actes inc.製、「マニュアルスピンナーASC−4000」)を用いてガラス基板上に塗布し、ホットプレート上で100℃×2分間加熱して、表3に示す膜厚の塗膜がガラス基板上に形成された試験片を得た。
得られた試験片の表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四探針プローブを装着して測定した。結果を表3に示す。
ろ過膜として分画分子量が10000Daの限外ろ過膜を用い、ろ過圧力およびろ過時間を表3に示すように変更した以外は、実施例15と同様にして導電性ポリマーを得た。得られた導電性ポリマーについて、各種評価を行った。結果を表3に示す。
膜ろ過としてセラミック膜を使用する以外は実施例15と同様にして導電性ポリマーを得た。
<無機膜ろ過工程>
セラミック膜ろ過には、図6に示すものと同様な膜ろ過装置を用いた。ただし、ろ過膜として膜孔径10nmである日本ポール社製の「メンブラロックス」(材質:セラミック)を用いた。この膜は長さ250mm、直径10mm、内径7mmの筒型であり、筒の内側が限外ろ過膜として機能するようになっている。ろ過部11は16に示すような外形のSUS製ハウジングであり透過液を容器14へ回収できるようになっている。
膜ろ過装置を用い、実施例15と同様にポリマー溶液を膜ろ過した。
ろ過圧力0.3MPa、ろ過時間746分の条件で、連続して膜ろ過を行い、得られた導電性ポリマーについて、各種評価を行った。結果を表3に示す。
実施例15の工程(a)と同様にしてポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を膜ろ過せずに、導電性ポリマーとして用い、各種評価を行った。
結果を表3に示す。
また、これら導電性ポリマーから形成された塗膜は、表面抵抗値が低く、高い導電性を示していた。
特に、分画分子量が10000Daの限外ろ過膜を用いて膜ろ過を行った実施例16は、実施例15に比べてろ過時間が短いにもかかわらず、上記面積比(Y/X)の値がより小さく、塗膜の表面抵抗値がより低下した。すなわち、実施例16では、未反応モノマーやオリゴマーなどが実施例15よりもさらに除去され、より高い導電性を示す導電性ポリマーが得られたことが示された。
また、セラミック膜ろ過を用いて膜ろ過を行った実施例17は、ろ過効率(単位膜面積に対するろ過時間換算)が、実施例15とほぼ同等であるが、実施例15および16よりも、上記面積比(Y/X)の値がより小さくなり、塗膜の表面抵抗値がより低下した。すなわち、より効率的にろ過を行うことができ、高い導電性を示す導電性ポリマーが得られたことが示された。
このポリマー溶液から形成された塗膜は、表面抵抗値が実施例15〜17に比べて高く、導電性が不十分であった。
<測定方法>
(残留オリゴマーおよび残留モノマーの測定)
導電性高分子の質量平均分子量をGPCにより測定し、標準試料の検量線からポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で求め、以下のようにして254nmの波長のクロマトグラム比較を行った。検出器にはUV検出器を用いた。
なお、以下のクロマトグラム比較の説明においては、図5に示すクロマトグラムを用いて説明する。
そして、得られたクロマトグラムに検出ピーク全体のベースラインXを引き、全てのピーク面積を求め、これを全体のピーク面積とした。
また、ピーク2のベースライン(ピーク2の谷と谷を繋いだ線)Yを引き、オリゴマーのピーク面積(y)を求め、全体のピーク面積に対するオリゴマーのピーク面積(y)の面積率(y1)を求めた。
また、ピーク3のベースライン(ピーク3の谷と谷を繋いだ線)Zを引き、モノマーのピーク面積(z)を求め、全体のピーク面積に対するモノマーのピーク面積(z)の面積率(z1)を求めた。
ついで、精製後の導電性高分子溶液についても同様にして質量平均分子量を測定し、得られたクロマトグラムから、全体のピーク面積に対するオリゴマーのピーク面積の面積率(y2)、およびモノマーのピーク面積の面積率(z2)を求めた。
そして、面積率(y1)、(z1)を100としたときの、面積率(y2)、(z2)の割合を算出し、これらを精製後の導電性高分子中の残留オリゴマー割合、および残留モノマー割合とした。
5cm×5cmのガラス基板上に、導電性高分子溶液をスピンコート塗布(2000rpm×60sec)し、ホットプレート上で100℃×2分間加熱して、厚さ0.1μmの塗膜がガラス基板上に形成された試験片を得た。
得られた試験片の表面抵抗値(初期値)を、抵抗率計(株式会社三菱アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四探針プローブを装着して測定した。
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを、0℃で4mol/L濃度のトリエチルアミンの水/アセトニトリル=3:7の溶液300mLに溶解し、モノマー溶液を得た。
別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを、水/アセトニトリル=3:7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。
ついで、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、モノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後に、反応生成物を遠心濾過器にてろ別した。さらに、メタノールにて洗浄した後乾燥させ、重合体(未精製の導電性高分子)の粉末約185gを得た。
先に得られた重合体(未精製の導電性高分子)2質量部を、水98質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液100質量部に、強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「オルライトDS−2」)10質量部を加え、ミックスローターバリアブル(VMR−3R)を用いて50rpmの回転速度で、室温で1時間回転させ、未精製の導電性高分子を精製した。
ついで、混合液をフィルターろ過することにより強塩基性陰イオン交換樹脂を除去し、導電性高分子溶液3A−1を得た。
得られた導電性高分子溶液3A−1について、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合を求め、表面抵抗値を測定した。これらの結果を表4に示す。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
実施例18で得られた導電性高分子溶液3A−1の100質量部に対して10質量部となるように、酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIR−120H」)をカラムに充填し、該カラムに導電性高分子溶液3A−1をSV=5の速度で通過させて脱塩を行い、導電性高分子溶液3A−2を得た。
得られた導電性高分子溶液3A−2について、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合を求め、表面抵抗値を測定した。これらの結果を表4に示す。
先に得られた重合体(未精製の導電性高分子)2質量部を、水98質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液を導電性高分子溶液3B−1とした。
導電性高分子溶液3B−1について、表面抵抗値を測定した。この結果を表4に示す。
なお、比較例6において、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合は、それぞれ100である。
強塩基性陰イオン交換樹脂の代わりに、弱塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製、「ダイヤイオンWA20」)を用いた以外は、実施例17と同様にして未精製の導電性高分子を精製し、導電性高分子溶液3C−1を得た。
導電性高分子溶液3C−1について、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合を求め、表面抵抗値を測定した。これらの結果を表4に示す。
また、導電性高分子溶液から形成された塗膜は、表面抵抗値が低く、高い導電性を示した。特に、未精製の導電性高分子を精製した後、酸性陽イオン交換樹脂でイオン交換をさらに行った実施例19の場合は、表面抵抗値がさらに低下し、より高い導電性を発現できた。
弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いて未精製の導電性高分子を精製した比較例7は、比較例6に比べるとオリゴマーやモノマーを除去することはできたが、各実施例に比べると不十分であり、塗膜の表面抵抗値が各実施例に比べて高く、導電性が不十分であった。
<測定方法>
(残留オリゴマーおよび残留モノマーの測定)
導電性高分子の質量平均分子量をGPCにより測定し、標準試料の検量線からポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で求め、以下のようにして254nmの波長のクロマトグラム比較を行った。検出器にはUV検出器を用いた。
なお、以下のクロマトグラム比較の説明においては、図5に示すクロマトグラムを用いて説明する。
そして、得られたクロマトグラムに検出ピーク全体のベースラインXを引き、全てのピーク面積を求め、これを全体のピーク面積とした。
また、ピーク2のベースライン(ピーク2の谷と谷を繋いだ線)Yを引き、オリゴマーのピーク面積(y)を求め、全体のピーク面積に対するオリゴマーのピーク面積(y)の面積率(y1)を求めた。
また、ピーク3のベースライン(ピーク3の谷と谷を繋いだ線)Zを引き、モノマーのピーク面積(z)を求め、全体のピーク面積に対するモノマーのピーク面積(z)の面積率(z1)を求めた。
ついで、精製後の導電性高分子溶液についても同様にして質量平均分子量を測定し、得られたクロマトグラムから、全体のピーク面積に対するオリゴマーのピーク面積の面積率(y2)、およびモノマーのピーク面積の面積率(z2)を求めた。
そして、面積率(y1)、(z1)を100としたときの、面積率(y2)、(z2)の割合を算出し、これらを精製後の導電性高分子中の残留オリゴマー割合、および残留モノマー割合とした。
5cm×5cmのガラス基板上に、導電性高分子溶液をスピンコート塗布(2000rpm×60sec)し、ホットプレート上で100℃×2分間加熱して、厚さ0.1μmの塗膜がガラス基板上に形成された試験片を得た。
得られた試験片の表面抵抗値(初期値)を、抵抗率計(株式会社三菱アナリテック製、「ロレスタGP」)に直列四探針プローブを装着して測定した。
2−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを、0℃で4mol/L濃度のトリエチルアミンの水/アセトニトリル=3:7の溶液300mLに溶解し、モノマー溶液を得た。
別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを、水/アセトニトリル=3:7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。
ついで、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、モノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した後に、反応生成物を遠心濾過器にてろ別した。さらに、メタノールにて洗浄した後乾燥させ、重合体(未精製の導電性高分子)の粉末約185gを得た。
先に得られた重合体(未精製の導電性高分子)1質量部を、水99質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液100質量部に、活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製 精製白鷺)1質量部を加え、室温で半日放置し、未精製の導電性高分子を精製した。
ついで、混合液をフィルターろ過することにより活性炭を除去し、導電性高分子溶液4A−1を得た。
得られた導電性高分子溶液4A−1について、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合を求め、表面抵抗値を測定した。これらの結果を表5に示す。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
先に得られた重合体(未精製の導電性高分子)1質量部を、水99質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液100質量部に、多層カーボンナノチューブ(昭和電工社製 VGCF-X)1質量部を加え、室温で半日放置し、未精製の導電性高分子を精製した。ついで、混合液をフィルターろ過することにより多層カーボンナノチューブを除去し、導電性高分子溶液4A−2を得た。
得られた導電性高分子溶液4A−2について、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合を求め、表面抵抗値を測定した。これらの結果を表5に示す。
なお、「室温」とは、25℃のことである。
先に得られた重合体(未精製の導電性高分子)1質量部を、水99質量部に室温で溶解させ、水溶液を得た。この水溶液を導電性高分子溶液4B−1とした。
導電性高分子溶液4B−1について、表面抵抗値を測定した。この結果を表5に示す。なお、比較例8において、導電性高分子中の残留オリゴマーおよび残留モノマーの割合は、それぞれ100である。
また、導電性高分子溶液から形成された塗膜は、表面抵抗値が低く、高い導電性を示した。
2:オリゴマーのピーク
3:モノマーのピーク
X、Y、Z:ベースライン
y:オリゴマーのピーク面積
z:モノマーのピーク面積
10:膜ろ過装置
11:ろ過部
12:ポンプ
13、14、15:容器
16:ろ過部(SUS製ハウジング)
17:セラミック膜
Claims (6)
- 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、かつ、下記工程(I)〜(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(Y/X)が0.60以下である導電性高分子。
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性高分子を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
(II)試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
(III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程。
- 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子の品質管理方法であって、
下記工程(I)〜(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(Y/X)が0.60以下である導電性高分子を選択する導電性高分子の品質管理方法。
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、導電性高分子を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
(II)試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
(III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程。
- 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性高分子を、下記工程(I)〜(VI)を含む評価方法にて算出した面積比(Y/X)が0.60以下になるように、下記(i)〜(iii)から選択される少なくとも1つの工程によって精製する方法。
(i)前記導電性高分子を膜ろ過する工程。
(ii)前記導電性高分子を溶媒に分散または溶解させた後に、前記導電性高分子を含む溶媒を強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させる工程。
(iii)前記導電性高分子を含む溶媒を炭素材料に接触させる工程。
(評価方法)
(I)pHが10以上となるように調製した溶離液に、精製後の導電性高分子を固形分濃度が0.1質量%となるように溶解させて試験溶液を調製する工程。
(II)試験溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフを備えた高分子材料評価装置を使用して分子量分布を測定し、クロマトグラムを得る工程。
(III)工程(II)により得られたクロマトグラムについて、保持時間をポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の分子量(M)へと換算する工程。
(IV)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da以上の領域の面積(X)を求める工程。
(V)ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算した分子量(M)において、分子量(M)が5000Da未満の領域の面積(Y)を求める工程。
(VI)面積(X)と面積(Y)との面積比(Y/X)を求める工程。
- ガラス基板上に、前記導電性高分子を含む導電性高分子溶液を塗布し、加熱してガラス基板上に塗膜を形成し、23℃にて1週間放置したときに、前記塗膜1mm 2 あたりに発生する最長径が1μm以上の異物数が5個以下である、請求項1に記載の導電性高分子。
- 前記選択された導電性高分子が、ガラス基板上に、前記選択された導電性高分子を含む導電性高分子溶液を塗布し、加熱してガラス基板上に塗膜を形成し、23℃にて1週間放置したときに、前記塗膜1mm 2 あたりに発生する最長径が1μm以上の異物数が5個以下である高分子である、請求項2に記載の導電性高分子の品質管理方法。
- 前記精製後の導電性高分子が、ガラス基板上に、前記精製後の導電性高分子を含む導電性高分子溶液を塗布し、加熱してガラス基板上に塗膜を形成し、23℃にて1週間放置したときに、前記塗膜1mm 2 あたりに発生する最長径が1μm以上の異物数が5個以下である高分子である、請求項3に記載の導電性高分子の精製方法。
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