以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の思想を適用可能な油圧ショベルの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す側面図である。本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、上部旋回体3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン7と、キャブ10とを主に備えている。下部走行体2と上部旋回体3とにより、油圧ショベル本体が主に構成されている。
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた一対の履帯Pを有している。下部走行体2は、一対の履帯Pが回転することにより自走可能に構成されている。
上部旋回体3は、下部走行体2に対して任意の方向に旋回可能に設置されている。上部旋回体3は、前方左側に、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であるキャブ10を含んでいる。上部旋回体3は、後方側に、エンジン7を収納するエンジン室、およびカウンタウェイト5を含んでいる。
なお、本実施の形態では、キャブ10内に運転員が着座した状態で、運転員の前方側(正面側)を上部旋回体3の前方側とし、運転員の後方側を上部旋回体3の後方側とし、着座状態での運転員の左側を上部旋回体3の左側とし、着座状態での運転員の右側を上部旋回体3の右側とする。以下の説明では、上部旋回体3の前後左右と油圧ショベル1の前後左右は一致しているとする。また、上部旋回体3の中心からの近い側を内側とし、上部旋回体3の中心から離れた側を外側とする。さらに、以下の図においては、前後方向を図中矢印X、左右方向を図中矢印Y、上下方向を図中矢印Zで示している。
土砂の掘削などの作業を行なう作業機4は、上下方向に作動自在に、上部旋回体3により軸支されている。作業機4は、上部旋回体3の前方側の略中央部に上下方向に作動可能に取り付けられたブーム4aと、ブーム4aの先端部に前後方向に作動可能に取り付けられたアーム4bと、アーム4bの先端部に前後方向に作動可能に取り付けられたバケット4cとを有している。ブーム4a、アーム4bおよびバケット4cはそれぞれ、油圧シリンダ58によって、駆動されるように構成されている。
作業機4は、キャブ10に搭乗しているオペレータが作業機4の先端部を見通せるように、キャブ10に対し、キャブ10の一方の側部側である右側に設けられている。キャブ10は、作業機4の取り付け部分の側方に配置されている。
カウンタウェイト5は、採掘時などにおいて車体のバランスをとるために上部旋回体3の後部に配置された重りである。油圧ショベル1は、カウンタウェイト5の後面の旋回半径を小さくした後方小旋回型油圧ショベルとして形成されている。このため、カウンタウェイト5の後面は、上方から見て上部旋回体3の旋回中心を中心とした円弧状に形成されている。エンジン7は、上部旋回体3の後部のエンジン室内に収容されている。
図2は、図1の油圧ショベル1の上部旋回体3の一部構成を示す斜視図である。図2には、図1に示す油圧ショベル1の上部旋回体3を左前方から見た構成の一部が図示されている。図2に示すように、上部旋回体3は、旋回フレーム31を有している。旋回フレーム31は、油圧ショベル本体に含まれている。旋回フレーム31は、図1に示す下部走行体2の上方に配置されており、下部走行体2に対して任意の方向に旋回自在に設けられている。
旋回フレーム31の上面には、一対のフロアフレーム32,32が、前後方向に間隔を空けて配置されている。キャブ10は、フロアフレーム32,32上に載せ置かれている。キャブ10は、フロアフレーム32を介して、旋回フレーム31上に搭載されている。
旋回フレーム31における左右方向の中央部の前端部には、センタブラケット33が設けられている。図1に示す作業機4の基端部は、センタブラケット33に取り付けられている。センタブラケット33は、油圧ショベル1の作業機4を支持しており、作業機4の取り付け部分を構成している。
旋回フレーム31の前方右側には、前カバー60が配置されている。前カバー60に対して後方側には、タンクカバー36A,38Aが配置されている。図3は、前カバー60およびタンクカバー36A,38Aの構成を示す斜視図である。前カバー60内には、後述するタンクルーム92およびバルブルーム97が形成されている。タンクカバー36A内には、後述する燃料タンク36が収容されている。タンクカバー36Aの上面には、燃料タンク36への燃料の補給を行なうための給油口36Bが設けられている。タンクカバー38A内には、後述する作動油タンク38が収容されている。
前カバー60は、開閉カバー61と、左側面板62とを有している。開閉カバー61は、前カバー60の右側面を構成しており、油圧ショベル本体の側面の一部を構成している。開閉カバー61は、タンクカバー36Aの前端から、上部旋回体3の前端に向けて延出している。開閉カバー61は、開閉可能に設けられている。開閉カバー61は、把手61Aを有している。作業者は、把手61Aを把持して開閉カバー61を回動することにより、閉じた状態の開閉カバー61を開くことができる。
図2に示す左側面板62は、前カバー60の左側面を構成している。左側面板62は、後述する還元剤タンク20、メインバルブ57などを介在して、開閉カバー61と対向している。左側面板62は、センタブラケット33を介在して、キャブ10の右側面と対向している。左側面板62は、上部旋回体3の前後方向に延びている。左側面板62には、通気口69が形成されている。通気口69は、前カバー60の内部に形成されたタンクルーム92と、前カバー60の外部空間とを連通している。
前カバー60はまた、前端板63、下段ステップ板64、立板65、上段ステップ板66、立板67、および天井板68を有している。前カバー60は、タンクカバー36A,38Aと上部旋回体3の前端との間に設けられている。
前端板63は、上部旋回体3の前端において、垂直方向に延びて設けられている。下段ステップ板64は、前端板63の上縁から後方に向けて延出している。立板65は、下段ステップ板64の後縁から上方に向けて延出している。上段ステップ板66は、立板65の上縁から後方に向けて延出している。立板67は、上段ステップ板66の後縁から上方に向けて延出している。天井板68は、立板67の上縁から後方に向けて延出している。天井板68は、タンクカバー38Aの上面と略同一平面上に配置されている。
前端板63から前方に突設して、ステップ34が設けられている。前端板63、下段ステップ板64、立板65、上段ステップ板66、立板67、および天井板68は、階段状の形状を構成している。ステップ34から、前カバー60の下段ステップ板64および上段ステップ板66に順番に足をかけて、天井板68上へのアクセスが容易に可能となっている。これにより、作業者は、燃料タンク36への燃料の補給、作動油タンク38への給油、およびエンジン7のメンテナンスなどの作業を、容易かつ安全に行なうことができる。
次に、本実施の形態の油圧ショベル1における還元剤タンクから排気処理ユニットまでの還元剤配管の経路について、図4を用いて説明する。図4は、旋回フレーム31上の各機器の配置を示す模式的な平面図である。図4中の下側が上部旋回体3の前方を示し、図4中の上側が上部旋回体3の後方を示している。図4には、図1に示す油圧ショベル1において、旋回フレーム31上において還元剤タンク20から排気処理ユニットへ還元剤を供給するための配管(送り配管21および圧送配管25)の経路が図示されている。
図1に示す下部走行体2および作業機4を駆動するための動力源であるエンジン7は、旋回フレーム31上に搭載されている。エンジン7は、旋回フレーム31のうち左右方向の中央側のセンタフレームの、後部に搭載されている。重量の大きいエンジン7は、油圧ショベル本体の前方に取り付けられた作業機4との重量バランスを考慮して、作業機4を支持するセンタブラケット33から離れており、かつカウンタウェイト5に近い、油圧ショベル本体の後方端に配置されている。エンジン7を収納するエンジン室は、上部旋回体3の後部に設けられている。
エンジン室内には、冷却ユニット6およびファン8が収容されている。エンジン室内において、左側から右側へ向かって、冷却ユニット6、ファン8、エンジン7の順に並べられている。ファン8は、エンジン7によって回転駆動されて、エンジン室内を通過する空気の流れを発生する。ファン8は、油圧ショベル本体の左側から右側へ向かう空気の流れを発生する。冷却ユニット6は、ファン8の発生する空気の流れの上流側である、ファン8に対して左側に配置されている。エンジン7は、ファン8の発生する空気の流れの下流側である、ファン8に対して右側に配置されている。
冷却ユニット6は、後述するラジエータ16(図5)、インタークーラおよびオイルクーラを含んで構成されている。ラジエータ16は、エンジン7の冷却水を冷却するための冷却装置である。インタークーラは、エンジン7に供給される圧縮空気を冷却するための冷却装置である。オイルクーラは、油圧シリンダ58(図1)などの、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに供給される作動油を冷却するための冷却装置である。
油圧ショベル1はまた、エンジン室内に、エンジン7から排出される排気ガスを処理して浄化するための排気処理ユニットを備えている。排気処理ユニットは、排気処理装置12,14と、中継接続管13と、排気筒15と、還元剤の噴射ノズル28を主に備えている。図4に示す平面視において、排気処理ユニットは、エンジン7に対して右側に配置されている。エンジン7には、エンジン7によって駆動されて作動油を移送する図示しない油圧ポンプが直結されている。油圧ポンプはエンジン7の右隣に配置されており、排気処理ユニットは油圧ポンプの上方に配置されている。
排気処理装置12は、後述する排気管11(図5)によりエンジン7と接続されている。排気処理装置14は、中継接続管13により排気処理装置12と接続されている。エンジン7から排出される排気ガスは、排気処理装置12,14を順に通過して、排気筒15から大気中に排出される。エンジン7からの排気ガスの排出の流れに対して、排気処理装置12はエンジン7の下流側に配置されており、排気処理装置14は排気処理装置12の下流側に配置されている。
排気処理装置12は、エンジン7から排出される排気ガス中に含まれる一酸化炭素および炭化水素などの未燃焼ガスを酸化して、排気ガス中の未燃焼ガスの濃度を低下させる。排気処理装置12は、たとえばディーゼル酸化触媒装置である。排気処理装置14は、還元剤との反応によって排気ガス中に含まれている窒素酸化物を還元し、窒素酸化物を無害な窒素ガスに化学変化して、排気ガス中の窒素酸化物濃度を低下させる。排気処理装置14は、たとえば選択触媒還元式の脱硝装置である。中継接続管13には、中継接続管13内に還元剤を噴射するための噴射ノズル28が設けられている。中継接続管13は、排気ガスに還元剤を噴射し混合するミキシング配管としての機能を有している。
油圧ショベル1はまた、排気処理ユニットへ還元剤を供給するための、還元剤供給部を備えている。還元剤供給部は、還元剤タンク20、および還元剤ポンプ22を備えている。還元剤タンク20は、排気処理装置14で使用される還元剤を貯留する。還元剤としては、たとえば尿素水が好適に用いられるが、これに限られるものではない。
還元剤タンク20および還元剤ポンプ22は、旋回フレーム31のうち、右側のサイドフレーム上に搭載されている。還元剤ポンプ22は、エンジン室に対して前方に配置されている。還元剤タンク20は、還元剤ポンプ22よりも前方に配置されている。還元剤タンク20は、還元剤が温度上昇して劣化することを防止するために、高温の機器であるエンジン7から離れて配置されており、たとえば旋回フレーム31の前方端に配置されている。
還元剤タンク20と還元剤ポンプ22とは、送り配管21および戻し配管23によって、互いに連結されている。送り配管21は、還元剤タンク20から還元剤ポンプ22へ還元剤を送出するための配管である。戻し配管23は、還元剤ポンプ22から還元剤タンク20へ還元剤を戻すための配管である。還元剤ポンプ22と噴射ノズル28とは、圧送配管25によって、互いに連結されている。圧送配管25は、還元剤ポンプ22から噴射ノズル28に還元剤を移送するための配管である。
還元剤タンク20から送り配管21を経由して還元剤ポンプ22へ移送されてきた還元剤は、還元剤ポンプ22において二分岐する。排気処理に使用されない還元剤は、還元剤ポンプ22から戻し配管23を経由して、還元剤タンク20へ戻される。排気処理に使用される還元剤は、還元剤ポンプ22から圧送配管25を経由して、噴射ノズル28へ到達し、噴射ノズル28から中継接続管13内へ噴霧される。
エンジン7からの排気ガスは、中継接続管13を経由して排気処理装置14へ流入する。中継接続管13は、排気ガスの流れにおいて、排気処理装置14の上流側に設けられている。還元剤タンク20から吸い出された還元剤は、中継接続管13に取り付けられた噴射ノズル28を経由して、中継接続管13内を流れる排気ガス中に噴射される。還元剤は、排気処理装置14に対し排気ガスの流れの上流側に噴射される。排気ガス中に噴射される還元剤の量は、排気処理装置14を通過する排気ガスの温度、および排気ガス中の窒素酸化物の濃度に基づいて、制御されている。
還元剤タンク20が旋回フレーム31上の前方端に配置されており、排気処理装置14が旋回フレーム31上の後方端に配置されている。この配置のため、還元剤を移送する送り配管21および圧送配管25は、油圧ショベル本体の前後方向に延び、旋回フレーム31の前方端から後方端に向かって延びている。
旋回フレーム31のうち右側のサイドフレーム上にはまた、燃料タンク36、作動油タンク38およびメインバルブ57が搭載されている。燃料タンク36は、エンジン7に供給される燃料を貯える。作動油タンク38は、油圧シリンダ58(図1)などの油圧アクチュエータに供給される作動油を貯える。
旋回フレーム31は、側方の縁部分である側縁31eを有している。燃料タンク36は、側面36sを有している。燃料タンク36の右側の側面36sは、旋回フレーム31の側縁31eよりも、外側に張り出している。これにより燃料タンク36の容積が増大しており、より多くの燃料を燃料タンク36内に貯えることが可能になっている。
燃料タンク36および作動油タンク38は、重量が大きいため、旋回フレーム31上の重量バランスを考慮して、排気処理ユニットに対し前方の位置に配置されている。燃料タンク36への燃料の補給作業の作業性を考慮して、燃料タンク36は作動油タンク38よりも旋回フレーム31の側縁31e近くに配置されている。燃料タンク36および作動油タンク38は、直方体状の耐圧タンクとして形成されている。燃料タンク36および作動油タンク38の前面は、メインバルブ57を収容するバルブルーム97の後壁として構成されている。
メインバルブ57は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。メインバルブ57は、作動油タンク38から吸い出され油圧ポンプにより移送される作動油を、図1に示す油圧シリンダ58、図示しない走行モータおよび旋回モータなどの油圧アクチュエータに給排する。これによりメインバルブ57は、油圧ショベル1の車体および作業機4を、オペレータの運転操作に応じて作動させる。
メインバルブ57は、燃料タンク36および作動油タンク38よりも重量が小さいため、旋回フレーム31上の重量バランスを考慮して、燃料タンク36および作動油タンク38に対し前方に配置されている。メインバルブ57は、還元剤タンク20に対し後方に配置されている。
メインバルブ57を収容するバルブルーム97と、還元剤タンク20を収容するタンクルーム92とは、仕切板80によって仕切られている。仕切板80は、還元剤タンク20の後方、かつメインバルブ57の前方に配置されており、還元剤タンク20とメインバルブ57との間に配置されている。仕切板80は、上部旋回体3の前後方向において、還元剤タンク20とメインバルブ57との間に介在している。
仕切板80は、バルブルーム97の前壁として構成されている。仕切板80は、タンクルーム92の後壁として構成されている。タンクルーム92の前壁は、図2,3に示す前端板63により構成されている。タンクルーム92の右側壁は、図3に示す閉じた状態の開閉カバー61により構成されている。タンクルーム92の左側壁は、図2に示す左側面板62により構成されている。
開閉カバー61、左側面板62、前端板63、および仕切板80により、タンクルーム92を規定する壁部が構成されている。タンクルーム92を規定する壁部のうち、後方の壁部である仕切板80のみが、メインバルブ57と還元剤タンク20との間に介在している。タンクルーム92を規定する壁部のうち、左方の壁部である左側面板62に、通気口69(図2)が形成されている。通気口69は、タンクルーム92の内外を連通する連通孔として構成されている。
還元剤タンク20は、タンクルーム92内の前方の、平面視におけるタンクルーム92の角部に配置されている。還元剤タンク20は、略直方体状に形成されている。還元剤タンク20の前面は、前端板63との間にわずかな隙間を空けて、前端板63に対向している。還元剤タンク20の左面は、左側面板62との間にわずかな隙間を空けて、左側面板62に対向している。還元剤タンク20は、タンクルーム92の前壁と後壁とのうち、前壁により近い位置に配置されている。
前端板63と左側面板62とにより形成される角部に、還元剤タンク20が配置されている。図2,3に示すように、開閉カバー61の前端部分は曲面形状である。そのため、平面視四角形状の還元剤タンク20を左側面板62に隣接して配置することにより、タンクルーム92を規定する壁部のより近くに還元剤タンク20を配置することが可能とされている。
図5は、本実施の形態の油圧ショベル1における還元剤の経路、熱交換用の媒体の経路、およびエンジン7からの排気ガスの排気経路を模式的に示す機能図である。図5に示すように、エンジン7から排出された排気ガスは、排気管11、排気処理装置12、中継接続管13、排気処理装置14を順に経て排気筒15から車外に排気される。排気処理装置14に対して排気ガスの流れの上流側の中継接続管13に、噴射ノズル28が設けられている。
還元剤タンク20の内部には、還元剤90が貯留されている。還元剤タンク20の内部には、還元剤タンク20から流出する還元剤90が流れる吸出管24が配置されている。吸出管24の先端には、ストレーナ(濾過器)26が接続されている。吸出管24は、送り配管21に連結されている。還元剤タンク20から吸い出された還元剤90は、還元剤ポンプ22によって移送され、送り配管21および圧送配管25を順に経由して、噴射ノズル28へ到達する。排気処理に使用されない還元剤90は、還元剤ポンプ22から戻し配管23を経由して、還元剤タンク20へ戻される。
噴射ノズル28は、還元剤タンク20から吸い出した還元剤90を排気処理装置14に対し排気ガスの上流側に噴射する、還元剤噴射装置としての機能を有している。噴射ノズル28により、中継接続管13内を流れる排気ガス中に還元剤90が供給される。排気処理装置14において、排気ガス中に含有される窒素酸化物が還元剤90と反応することにより、排気ガス中の窒素酸化物の濃度が減少する。還元剤90が尿素水である場合、中継接続管13内において尿素水は分解してアンモニアへと変化し、窒素酸化物とアンモニアとの反応によって窒素酸化物は無害な窒素および酸素に分解される。窒素酸化物の量が適正値に低下した排気ガスは、排気筒15から排出される。
還元剤タンク20の内部には、還元剤90との間で熱交換する媒体(熱交換媒体)が流れる熱交換器40が配置されている。熱交換媒体としては、エンジン7の冷却水が用いられている。熱交換器40は、熱交換媒体を還元剤タンク20内に導く第1管路と、還元剤タンク20から熱交換媒体を流出させる第2管路とを有している。第1管路は、冷却水配管17に連結されている。第2管路は、冷却水配管18に連結されている。冷却水配管18には、ラジエータ16と、冷却水ポンプ19とが設けられている。
冷却水ポンプ19の駆動によって、エンジン7の冷却水は、エンジン7、熱交換器40、ラジエータ16、および冷却水ポンプ19を、循環して流れる。エンジン7で加熱された冷却水は、熱交換器40において還元剤90と熱交換することにより、冷却される。他方、還元剤90は、冷却水から熱を受けることにより、加熱される。ラジエータ16は、冷却水と空気との熱交換を行い、冷却水を冷却するための熱交換器である。ラジエータ16において冷却された冷却水がエンジン7のウォータジャケットに流れることにより、エンジン7は適切に冷却される。
還元剤タンク20は、旋回フレーム31上の前方端に配置されている。エンジン7、およびラジエータ16を含む冷却ユニット6は、旋回フレーム31上の後方に配置されている。この配置のため、還元剤タンク20とエンジン7とをつなぐ冷却水配管17、および還元剤タンク20とラジエータ16とをつなぐ冷却水配管18は、油圧ショベル本体の前後方向に延び、旋回フレーム31の前方端のタンクルーム92と後方のエンジン室との間に亘って延びている。
図6は、図1の油圧ショベル1の外装カバー150(図2,3)および後述する補強プレートを取り外した状態の、左前方からの斜視図である。図6に示すように、旋回フレーム31上には、マウント部材130が設けられている。燃料タンク36は、マウント部材130に搭載されている。マウント部材130は、燃料タンク36と旋回フレーム31との間に介在し、燃料タンク36を支持している。マウント部材130は、油圧ショベル本体の前後方向において互いに離れた、複数の柱状の部材を有している。当該複数の部材の間隔をできるだけ大きくすることにより、燃料タンク36をより安定してマウント部材130に搭載することができる。
燃料タンク36はマウント部材130を介して旋回フレーム31上に搭載されており、燃料タンク36の下面と旋回フレーム31との間に空間が形成されている。この空間には、エンジンに直結されている油圧ポンプとメインバルブ57とをつなぐ油圧配管が配置されている。
図4に示すように、燃料タンク36は、排気処理装置14の前方かつ還元剤タンク20の後方に配置されている。そのため、燃料タンク36を搭載するマウント部材130もまた、排気処理装置14の前方かつ還元剤タンク20の後方に配置されていることになる。
外装カバー150は、マウント部材130を側方から覆っている。外装カバー150が装着されている状態では、マウント部材130は外部から視認できない。図6に示すように、外装カバー150を取り外すことにより、油圧ショベル1の側方からマウント部材130の視認が可能になっている。
燃料タンク36は、図4に示すように、旋回フレーム31の側縁31eから一部が側方にはみ出している。一方マウント部材130は、旋回フレーム31に取り付けられている。燃料タンク36の下面は、マウント部材130よりも外側にまで延びている。マウント部材130よりも外側に、燃料タンク36の下面に面する空間が存在している。
エンジン7から還元剤タンク20へ向かう冷却水が流れる冷却水配管17と、還元剤タンク20からラジエータ16へ向かう冷却水が流れる冷却水配管18とは、互いに添って延びている。冷却水配管17,18は、油圧ショベル本体の前後方向に延びている。冷却水配管17,18は、還元剤タンク20から下方に向かい、旋回フレーム31の上面に沿って延びている。冷却水配管17,18は、旋回フレーム31の側縁31eに沿って延びている。冷却水配管17,18は、マウント部材130に対し、油圧ショベル本体の外側を通って延びている。
図7は、図1の油圧ショベル1の外装カバー150を取り外し補強プレート140を取り付けた状態の、左前方からの斜視図である。図7には、図6と同角度で左前方から見た油圧ショベル1に、補強プレート140を追加的に取り付けた状態が図示されている。図7に示す油圧ショベル1には、2つの補強プレート140,140が取り付けられている。補強プレート140は、冷却水配管17,18に対し外側に設けられている。そのため、冷却水配管17,18の一部が補強プレート140によって覆われて、側方から視認できなくなっている。
補強プレート140は、油圧ショベル本体の前後方向において、マウント部材130と重なる位置に配置されている。図6に示すように、旋回フレーム31の側縁31eの近傍において、前後方向に2つのマウント部材130が並んで配置されている。図7に示す補強プレート140は、油圧ショベル本体を側面視してマウント部材130に重なる位置に配置されている。マウント部材130は、補強プレート140によって覆われて、視認できなくなっている。
図8は、補強プレートの斜視図である。図8に示すように、補強プレート140は、薄板状の部材を2箇所で屈曲させた形状を有している。補強プレート140は、平板状の平板部141,142,143と、平板部141および平板部142の間の屈曲部145と、平板部142および平板部143の間の屈曲部146とを有している。補強プレート140が2箇所で屈曲した形状とされていることにより、補強プレート140の強度が向上している。
平板部141と平板部142とは、屈曲部145を境にして折り曲げられており、屈曲部145において鈍角を形成して接続されている。平板部142と平板部143とは、屈曲部146を境にして折り曲げられており、屈曲部146において鈍角を形成して接続されている。平板部141と平板部143とは、互いに直交している。
平板部143には、平板部143を厚み方向に貫通する貫通孔144が形成されている。この貫通孔144にボルトが挿通されることにより、補強プレート140は旋回フレーム31に固定されている。
図9は、外装カバー付近を前方から見た断面図である。上述したように、旋回フレーム31は、側縁31eを有している。旋回フレーム31上にはマウント部材130が設けられており、燃料タンク36はマウント部材130に搭載されている。
燃料タンク36は、旋回フレーム31に対し間隔を空けて対向する下面36bと、旋回フレーム31の側縁31eよりも外側に張り出す側面36sとを有している。マウント部材130は、外装カバー150によって、側方から覆われている。マウント部材130は、油圧ショベル本体の外側に向く外面130sを有している。外装カバー150は、油圧ショベル本体の内側に向く内面150sを有している。
エンジン7の冷却水を還元剤タンク20へ導く冷却水配管17,18は、油圧ショベル本体の左右方向において、旋回フレーム31の側縁31eと燃料タンク36の側面36sとの間に配置されている。冷却水配管17,18は、燃料タンク36に対し下方に配置されており、マウント部材130に対し油圧ショベル本体の外側に配置されており、外装カバー150に対し油圧ショベル本体の内側に配置されている。冷却水配管17,18は、マウント部材130と外装カバー150との間に形成された中空空間に配置されている。冷却水配管17,18は、燃料タンク36の下方の、マウント部材130および外装カバー150により挟まれた空間を経由して配置されている。
冷却水配管17,18は、燃料タンク36の下面36b、マウント部材130の外面130s、および外装カバー150の内面150sに、それぞれ対向する位置に配置されている。冷却水配管17,18は、旋回フレーム31の側縁31eよりも油圧ショベル本体の外側であって、燃料タンク36の側面36sよりも油圧ショベル本体の内側の位置に配置されている。冷却水配管17,18の上方には燃料タンク36が存在し、一方冷却水配管17,18の下方には、旋回フレーム31が存在していない。
冷却水配管17,18は、上下方向に並べられて配置されている。冷却水配管17が上側に、冷却水配管18が下側に配置され、冷却水配管17,18は2本束ねられてクランプ部材160によって支持されている。クランプ部材160は、冷却水配管17,18を支持するとともに、冷却水配管17,18の位置決めを行なっている。
旋回フレーム31には、補強プレート140が固定されている。補強プレート140は、冷却水配管17,18に対して油圧ショベル本体の外側、かつ外装カバー150に対して油圧ショベル本体の内側に設けられている。補強プレート140の設けられている位置で、冷却水配管17,18は、マウント部材130と補強プレート140との間に挟まれて配置されている。
補強プレート140は、屈曲部145を有している。屈曲部145は、上下方向において、冷却水配管17,18と隣り合う位置に配置されている。図9に示す冷却水配管17,18は、油圧ショベル本体を側方から見た場合において、マウント部材130と重なっている。屈曲部145は、図9に示す冷却水配管17の上端と冷却水配管18の下端との間に設けられている。
図10は、マウント部材130に対する補強プレート140の配置を示す模式図である。図10には、図7の斜視図と同様に外装カバー150を取り外した状態の、油圧ショベル本体の側方から見た補強プレート140が図示されている。
図10中において、マウント部材130は補強プレート140の奥側に配置されており、直接視認できないため、破線で示されている。一方、油圧ショベル本体の前後方向において、補強プレート140の寸法は、マウント部材130の寸法よりも少し大きい程度である。前後方向においてマウント部材130の存在しない位置にまで補強プレート140が延びる寸法は、図10に示すように、マウント部材130の寸法と比較して小さくなっている。補強プレート140の寸法をこのように設定することで、補強プレート140は前後方向においてマウント部材130と重なる位置にのみ設けられていることになる。
図11は、クランプ部材160の構成を示す側面図である。図11には、図6の斜視図と同様に外装カバー150および補強プレート140を取り外した状態の、マウント部材130付近が拡大されて図示されている。
図11に示すように、クランプ部材160は、クランプ本体161と、連結部162と、固定部164とを有している。クランプ本体161は、冷却水配管17,18を束ねている。固定部164は、ボルト166により、旋回フレーム31に固定されている。連結部162は、固定部164と一体に連結されており、またボルト163を用いてクランプ本体161を固定している。
クランプ部材160は、冷却水配管17,18を、旋回フレーム31に対して支持している。クランプ部材160は、図11に示すように、油圧ショベル本体の前後方向においてマウント部材130の近傍に配置されている。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の油圧ショベル1は、図9に示すように、旋回フレーム31上に設けられたマウント部材130と、マウント部材130上に搭載された燃料タンク36とを備えている。燃料タンク36は、旋回フレーム31の側縁31eよりも外側に張り出す側面36sを有している。油圧ショベル1はさらに、マウント部材130を側方から覆う外装カバー150と、エンジン7の冷却水を還元剤タンク20へ導く冷却水配管17,18と、補強プレート140とを備えている。冷却水配管17,18は、燃料タンク36の下方の、マウント部材130および外装カバー150により挟まれた空間を経由して配置されている。補強プレート140は、冷却水配管17,18に対し外側、かつ外装カバー150に対し内側に設けられている。
冷却水配管17,18を外装カバー150のすぐ内側に配置することにより、冷却水配管17,18へのアクセスが容易になり、冷却水配管17,18のメンテナンスが容易に可能になる。一方、旋回フレーム31の側縁31eよりも外側に冷却水配管17,18を配置する場合、たとえば油圧ショベル1の旋回時に外装カバー150に物がぶつかるなどして外装カバー150に衝撃が加わると、変形した外装カバー150を介して冷却水配管17,18に負荷が加わり、外装カバー150とマウント部材130との間に冷却水配管17,18が挟まれる場合がある。
冷却水配管17,18と外装カバー150との間に補強プレート140を配置することにより、冷却水配管17,18よりも外側に、外装カバー150および補強プレート140が設けられ、冷却水配管17,18よりも外側の構造の剛性が向上している。そのため、外装カバー150に衝撃が加わる場合にも、冷却水配管17,18よりも外側の構造の変形を抑制して、冷却水配管17,18を収容可能な空間を確保できるので、外装カバー150を介して冷却水配管17,18に加わる負荷を低減できる。
これにより、冷却水配管17,18が挟まれる事態を抑制できるので、燃料タンク36の下方の、マウント部材130および外装カバー150により挟まれた空間に冷却水配管17,18を配置することが可能になる。したがって、冷却水配管17,18を効率的に配置することができる。
また図7,10に示すように、補強プレート140は、側面視においてマウント部材130と重なる位置に設けられている。
燃料タンク36がマウント部材130に搭載されているために、燃料タンク36の下面36bと旋回フレーム31との間には空間が形成されている。側面視においてマウント部材130が存在しない位置において、仮に外装カバー150に外部からの負荷が加わっても、冷却水配管17,18は燃料タンク36と旋回フレーム31との間の空間に移動できるため、冷却水配管17,18に過大な負荷が加わることはない。
外装カバー150とマウント部材130との間に冷却水配管17,18が挟まれる事態を回避するためには、マウント部材130の設けられている位置において、冷却水配管17,18よりも外側の構造の剛性を高めればよい。マウント部材130の設けられていない位置に補強プレート140を配置しても、冷却水配管17,18へ加わる負荷を低減する効果は小さい。そのため、側面視においてマウント部材130と重なる位置に補強プレート140を設け、マウント部材130と重ならない位置には補強プレート140を配置しない構成とする。このようにすれば、冷却水配管17,18の保護のために必要な強度を確保しつつ、補強プレート140を小型化することができる。
また図8,9に示すように、補強プレート140は、屈曲部145を有している。屈曲部145は、側面視において補強プレート140と重なる冷却水配管17,18の上端と下端との間に形成されている。
補強プレート140を平板状でなく屈曲部145を有する形状にすることで、補強プレート140の剛性を向上できる。特に、屈曲部145の設けられる位置において、補強プレート140の剛性がより高められている。屈曲部145を、上下方向において冷却水配管17,18の設けられている位置に重ねて配置することにより、強度の高い屈曲部145によって、冷却水配管17,18をより確実に保護することができる。
また図9,11に示すように、油圧ショベル1は、クランプ部材160をさらに備えている。クランプ部材160は、冷却水配管17,18を旋回フレーム31に対して支持している。
クランプ部材160は、冷却水配管17,18を支持するとともに、冷却水配管17,18を位置決めする機能を有している。クランプ部材160をマウント部材130の近傍に配置して冷却水配管17,18の位置決めをすることで、冷却水配管17,18とマウント部材130との干渉を防止することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。