JP5697379B2 - 耐水性セルロースシート - Google Patents

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Description

本発明は、微細セルロース繊維から構成される耐水性セルロースシートに関する。
繊維径が1μm以下のいわゆるナノファイバーから構成される不織布は、ナノファイバーが形成する網目構造によって微細な空隙が多数形成されるため、気体中又は液体中に含まれる微粒子を低い圧力損失で濾別できる濾材としての利用が期待されている。
また、ナノファイバーから構成される不織布は、微細な研磨砥粒をナノファイバー間に効率的に把持できるため、ハードディスクのテクスチャ表面を平滑化するための研磨テープとして利用されている。
不織布を構成するナノファイバー材料としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維等が挙げられるが、特にバクテリアセルロース(以下、BCと略す。)やパルプ等の天然セルロースを原料として得られる微小繊維状セルロース(マイクロフィブリレーテッドセルロース、以下、MFCと略す。)等、いわゆる微細セルロース繊維からなる不織布は、耐熱性、耐薬品性、さらには表面活性の高さに由来した高吸着性能等濾過材としての高い特性が期待できる。また、微細セルロース繊維からなる不織布は高い結晶性を有し、かつ高弾性率であるので、研磨材としての利用も大いに期待できるところである。
微細セルロース繊維から構成される不織布としては、以下の特許文献1に、BCの製膜技術が紹介されている。特許文献1には、静置培養によって得られたBCゲルを圧搾後、乾燥させて得たBC膜にエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂をハイブリッド化させたハイブリッドフィルムは、低線膨張率であると同時に高透明性を有するため、光学フィルムや光学基板として有効であることが開示されている。
しかしながら、特許文献1によると、静置培養で得られたBC膜は、非常に緻密な構造をもつ膜であり、空孔率(開孔率)がせいぜい30%程度であり、このような空孔率の小さな膜は濾過効率の観点から濾過材として到底利用することはできない(すなわち、圧力損失が高すぎるために、濾過速度を遅くしなくてはならない)。更に、セルロースは水に対して高い親和性があり、水を含む溶液系に対して膨潤するので、水を含む溶液系の濾過材、或いは血液分離膜として特許文献1の不織布を使用すると経時的に平均孔径が変化し、捕集効率或いは分離効率が低下するという問題がある。また、研磨材としても同様に水を含む溶液系で研磨を行う場合、経時的に形態変化が起こり、研磨材としての寿命が非常に短いという問題がある。
一方、本発明者らは、最大繊維径1500nm以下の繊維径を有するセルロース繊維から構成され、高空孔率で微細なネットワーク構造を有する不織布を提案している(以下、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたセルロース不織布は、測定部位による物性のばらつきが少ない、膜質均一性に優れたものである。
しかしながら、特許文献2に記載されたセルロース不織布も特許文献1のBC膜と同様に水に対する耐性の低さに問題があった。
以上のとおり、高い空孔率と水に対する高い耐久性を有する微細セルロース繊維からなる不織布はこれまで提案されていなかった。
特開2005−60680号公報 国際公開第2006−004012号公報
本発明が解決しようとする課題は、セルロース特有の耐熱性、耐薬品性、高弾性率と表面活性の高さに由来した高吸着性能を有し、かつ高い空孔率と水に対する高い耐久性を有する微細セルロース繊維からなる耐水性セルロースシートを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の解決手段により上記課題が解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]数平均繊維径が500nm以下の微細セルロース繊維から構成される不織布からなる耐水性セルロースシートであって、該微細セルロース繊維は、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、多官能エポキシ化合物、及びイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤によって架橋されており、かつ、下記(1)〜(4)の要件:
(1)微細セルロース繊維の重量比率:96.6重量%以上99重量%以下
(2)空孔率:50%以上
(3)目付10g/m相当の引張強度:6N/15mm以上
(4)引張強度の乾湿強度比:50%以上
のすべてを満足する耐水性セルロースシート。
[2]透水後の平均孔径変化率が40%以下である、前記[1]に記載の耐水性セルロースシート。
]前記[1]又は[2]に記載の耐水性セルロースシートを含む濾過材。
]前記[]に記載の濾過材を含むフィルターカートリッジ。
]前記[1]〜[]のいずれかに記載の耐水性セルロースシートを含む血液分離膜。
]前記[1]〜[]のいずれかに記載の耐水性セルロースシートを含む研磨テープ。
本発明の耐水性セルロースシートは、セルロース特有の耐熱性、耐薬品性、高弾性率と表面活性の高さに由来した高吸着性能を有し、かつ高い空孔率と水に対する高い耐久性を有するので、濾過材として水系から有機溶剤系まで広い溶剤範囲で利用できると同時に血液分離膜・吸着膜として有効に利用できる。また本発明の耐水性セルロースシートは、半導体製造ラインにおいて研磨テープとして利用できる。
本発明の耐水性セルロースシートは、数平均繊維径は500nm以下の微細セルロース繊維からなるセルロース不織布から構成される。
ここで、本発明で定義する微細セルロース繊維の数平均繊維径は、以下の方法にて算出する。
(数平均繊維径の算出方法)
シートの表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行った時に、得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数える。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出する。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計3画像分の結果を平均化し、対象とする試料の数平均繊維径とする。
微細セルロース繊維の数平均繊維径が500nm以下であると、微細繊維同士の交絡点増加により引張強度が上昇する傾向があると共に乾湿強度比が高くなる。微細セルロース繊維の数平均繊維径が500nmよりも大きな場合には、引張強度の乾湿強度比が50%以上のセルロースシートを得ることができない。その理由は明らかではないが、例えば、耐性付与方法の一つとして架橋剤での処理があるが、繊維径が大きいと繊維表面の極一部しか架橋処理の効果が及ばないものと推測する。強度発現及び乾湿強度比向上の観点から微細セルロース繊維の数平均繊維径は、10nm以上350nm以下、より好ましくは30nm以上300nm以下である。尚、本発明の微細セルロース繊維は、短繊維状(ステープル状)の微細繊維であって、エンドレスの長繊維状(フィラメント状)のものは含まない。
本発明の耐水性セルロースシートは、最大繊維径1500nmを超えるセルロース繊維が含まれていないことが好ましい。本発明において、上記太い繊維径のセルロース繊維を含まないとは、シートの表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行った時に、得られた全てのSEM画像中に繊維径が1500nmを超える繊維が平均2本未満であることをいう。最大繊維径が1500nmを超えるセルロース繊維が含まれていると、強伸度などの機械的物性が部分的に変動する場合がある。セルロース繊維の最大繊維径は、より好ましくは1200nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。
本発明の耐水性セルロースシートは、微細セルロース繊維の重量比率が、1重量%以上99重量%以下である。微細セルロース繊維の重量比率が1重量%未満であると均一な微細孔径の形成が困難であるので、粗大ピンホールが多数形成され、また比表面積が低下することから、濾過材或いは分離膜としての捕集効率が大幅に低下する。一方、上記セルロース繊維の重量比率が99重量%を超えると機械的強度が低下し、取扱性に劣るものとなる。本発明の耐水性セルロースシートにおける微細セルロース繊維の重量比率は、好ましくは3重量%以上95重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以上90重量%以下である。
本発明の耐水性セルロースシートは、空孔率が50%以上である。本発明の耐水性セルロースシートは50%以上の空孔率を有することで、濾過材又は分離膜として利用する場合、高い捕集効率を発揮できる。更に、研磨テープは、研磨砥粒とバインダー樹脂を混練したものを基材となる不織布に塗布して製造されるが、本発明の耐水性セルロースシートは、高い空孔率を有しているので、研磨砥粒を効率的に把持できるし、また、バインダー樹脂との一体性が向上し、研磨工程における剥がれなどのトラブルが生じない。好ましい空孔率の範囲は60%以上、より好ましくは70%以上である。空孔率の上限値については特に限定する必要はないが、制御できる範囲としては98%以下、好ましくは95%以下である。
本発明の耐水性セルロースシートの目付10g/m相当の引張強度は6N/15mm以上である。シートの引張強度はその目付の大小に影響されるが、目付10g/m相当の引張強度が6N/15mm未満であるとシートの取扱い時の破損につながる。好ましくは、7N/15mm以上、より好ましくは8N/15mm以上である(いずれも目付10g/m相当)。一方、本発明の耐水性セルロースシートの引張強度の上限値は特にないが、目付10g/m当り100N/15mmを超えることは実質ありえない。尚、本発明における引張強度は、105℃に温度制御された乾燥機内で6時間乾燥後、デシケータ内で30分以上保管した後に測定する。
本発明の耐水性セルロースシートは、引張強度の乾湿強度比が50%以上であることが必要である。本発明で定義する乾湿強度比とは、上記所定の条件で乾燥シートの引張強度を乾燥強度とし、当該乾燥シートを、シートを浸すに十分な水をはった容器内に5分間浸漬した後に測定した引張強度を湿潤強度とし、下記式(1):
乾湿強度比(%)=(湿潤強度)/(乾燥強度)×100 式(1)
にて算出したものをいう。尚、ここでは乾燥強度、湿潤強度ともに目付10g/m相当に換算する必要はない。
本発明の耐水性セルロースシートは、引張強度の乾湿強度比が50%以上であるので、水を含む溶液系の濾過材或いは血液分離膜として利用する場合、平均孔径が経時的に変化することなく、長期間安定的に捕集効果を維持発揮することができ、また、研磨材として利用する場合もその使用寿命が長期化する。本発明の耐水性セルロースシートの乾湿強度比は60%以上が利用上の利点(濾過材や研磨材としての長寿命化)から好ましく、より好ましくは70%以上である。また、本発明の耐水性セルロースシートは、透水後の平均孔径変化率が40%以下であることが濾過材や研磨材としての長寿命化の観点から好ましく、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。平均孔径は、パームポロメータ(西華産業製 CFE−1200AEX)を用いた細孔径分布測定試験において評価される。透水後の平均孔径変化率は、透水前後の平均孔径の違いを下記式(2):
透水後の平均孔径変化率(%)=(透水後の平均孔径−透水前の平均孔径)/透水前の平均孔径×100 式(2)
にて算出するものである。
ここで、透水後の平均孔径は、シートを水漏れのないように濾過器にセットし、送液ポンプを用いて超純水を圧力1kg/cmで60分間送液し、その後、水分をエタノールで完全置換されたサンプルを用いて評価する。
本発明の耐水性を構成する微細セルロース繊維は、架橋剤にて架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、セルロースとの反応性からジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、多官能エポキシ化合物、及びイソシアネート化合物からなる群からなる少なくとも1種の架橋剤が選ばれる。
多官能エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリシトール、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、水分散性のポリイソシアネートが挙げられ、水分散性のポリイソシアネートとしては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2、2‘−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3‘−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、キシリレン−1,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,3’−ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添加トリレンジジイソシアネート、水添加キシリレンジイソシアネート、水添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート及びこれらの化合物と活性水素基含有化合物との反応によるNCO基末端化合物等が挙げられる。
また、水分散性のポリイソシアネートとして、有機イソシアネートにポリオールを付加させるとともにイソシアヌレート化触媒を加え、イソシアヌレート環構造を導入したポリイソシアネートの代わりに、ジイソシアネートの重合体や2官能以上のポリオール等とジイソシアネートあるいはポリメトリック体との反応で得られるプレポリマー的なイソシアネート化合物を用いても構わない。これらのポリイソシアネートは単独又は2種以上の混合物で使用することができる。
以上列挙した架橋剤のうち、安全性やセルロースとの反応性の高さ、更に架橋剤の安定性、着色抑制の観点から、ジビニルスルホン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
また、本発明の耐水性を構成する微細セルロース繊維は、本発明の目的を阻害しない範囲内で化学修飾されていてもよい。例えば、微細セルロース繊維(微細セルロース繊維)の表面に存在する一部あるいは大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステルを含むエステル化されたもの、メチルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテルを含むエーテル化されたもの、またTEMPO酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったものを含むことができる。また、タンパク除去フィルターとして利用する場合は、これらの化学修飾されたセルロース繊維に抗体を固定化してもよいし、また、セルロース表面にポリエチレングリコール等のアルキルエーテル類をグラフトさせてもよく、期待する特性によって適宜選択することができる。
本発明の耐水性セルロースシートが好適に機能するためには、微細な網目構造を有しかつ一定の通気性を有することが重要であって、目付が5g/m以上200g/m以下かつ透気抵抗度が10s/100ml以上2000s/100ml以下のバランスで制御されている必要がある。目付が5g/mよりも小さなシートは薄過ぎて取扱性が著しく悪くなり、一方、目付が200g/mよりも大きくなると、空孔率が小さくなる。
透気抵抗度とは、気体や液体等流体の流れやすさの指標であって、透気抵抗度の数値が低い程、流体が流れ易く、逆に数値が大きいと流体の流れに難さ表す。本発明における透気抵抗度は、25cm角の濾材を10等分にエリア分けし、当該10区画についてガーレー式デンソメーター((株)東洋精機製、型式G−B2C)を用いて、100mlの空気の透過時間を測定した値の平均値であるが、1箇所でも10s/100mlを下回る部分、或いは2000s/100mlを越える部分がある場合、本発明に規定する透気抵抗度からは除外される。膜質均一性の悪さを示唆するものであるからである。本発明の定義による方法にて評価された透気抵抗度が10s/100ml未満であると濾過材・分離膜として捕集効率が著しく低下する一方、研磨材としては、研磨砥粒の効率的把持ができない。一方、透気抵抗度は、2000s/100mlを超えると濾過材・分離膜として利用する場合、濾過速度が著しく低下するとともに、濾過工程において、圧力損失が大きく、濾過膜の破裂を引き起こす。本発明の濾材の目付は、8g/m以上180g/m以下であることが取扱性と低圧力損失という観点から好ましく、最も好ましくは10g/m以上150g/m以下である。また透気抵抗度は捕集効率と濾過時の濾膜破損防止の観点から好ましくは20s/100ml以上1500s/100ml以下の範囲である。
本発明の濾材における微細セルロース繊維からなるセルロース不織布は、糖、多価アルコール、アルコール誘導体、及び水溶性高分子からなる群から選択される1種以上の水溶性化合物を含有していてもよい。
ここで、糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、トレハロース、セロビオース、及びマルトース、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びグリセリン、アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、水溶性多糖、および水溶性多糖誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで、水溶性多糖は、水溶性の多糖を意味し、天然物としても多種の化合物が存在する。例えば、でんぷんや可溶化でんぷん、アミロース、プルランに代表されるα−1,4−グルカン、デキストランに代表されるα−1,6−グルカン、カードラン、レンチナンに代表されるβ−1,3−グルカン、アミロペクチン、グリコーゲンに代表される分岐糖、キシラン、ガラクタン、マンナン、グルコマンナン、グルコマンノグリカン、ガラクトグルコマンノグリカン、グアランに代表されるヘテログリカンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、水溶性多糖誘導体は、上述した水溶性多糖の誘導体、例えば、アルキル化物、ヒドロキシアルキル化物、アセチル化物であって、水溶性のものが含まれる。あるいは、誘導体化する前の多糖がセルロース、スターチなどの様に水に不溶性であっても、誘導体化、例えばヒドロキシアルキル化やアルキル化、カルボキシアルキル化によって、水溶性化されたものも該水溶性多糖誘導体に含まれる。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチなどのヒドロキシアルキルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、さらには、ヒドロキシエチルメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースのように、2種類以上の官能基で誘導体化された水溶性多糖誘導体も含まれるが、これらに限定されるものではない。
上述した水溶性化合物のうち、水溶性高分子である水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体は、耐熱性の高いものが多く、セルロース不織布の強度を向上させる効果も大きいので、そのような性質の水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体を使用すれば、得られるセルロース不織布は、セルロースが元来有する耐熱性を損なわない高強度のものとなるので、特に好ましい。
耐水性セルロースシートに上記水溶性化合物が含まれることによって、当該水溶性化合物が微細なセルロー繊維間の接触点強度を補強するバインダーとして機能する。水溶性化合物の含有量としては、濾材重量に対して0.5重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.8重量%以上15重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上10重量%以下である。尚、上述した水溶性化合物は、2%水溶液の溶液粘度(B型粘度計)が、500〜6,000mPa・sであることが、上記バインダー効果発現のためには好ましく、また、後述するシートの製造工程におけるエマルジョン系の抄紙用分散液の分散安定性のためにも水溶性化合物の溶液粘度がこの範囲にあることが好ましい。
尚、本発明の耐水性セルロースシートは、シート重量に対して10重量%未満、かつ本発明の目的を阻害しない範囲内で、ポリプロピレンの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の複合繊維、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の複合繊維、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の複合繊維等のバインダー繊維を含有することができる。また、本発明の耐水性セルロースシートは、シート重量に対して10重量%未満、かつ本発明の奏する効果を害さない範囲で、シリカ粒子、アルミナ粒子、ダイヤモンド粒子、窒化硼素、炭化珪素、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子のような無機系粒子状化合物、また架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機系微粒子を含有することができる。
本発明の耐水性セルロースシートは、数平均繊維径0.5μm以上30μm以下の有機繊維からなる層を、濾材重量に対して1重量%以上95重量%以下の重量比率で配することができる。
有機繊維から成る層と本発明で特定する微細セルロース繊維からなる不織布とを組み合わせることで、シートとしての取扱性が改善されると同時に、有機繊維層を液層に配すると濾過材・分離膜としての寿命が改善される場合がある(大きな粒径のものを有機繊維層で濾別するためと思われる)。有機繊維の数平均繊維径は数平均繊維径0.5μm以上30μm以下であることが、シートの強度改善と柔軟性維持、更には、膜質均一性のために好ましい。また、有機繊維の数平均繊維径がこの範囲にあることで有機繊維層が数μm〜数十μmの空孔を形成し、粗大粒子の濾材としても作用する。また、有機繊維の耐水性セルロースシートに対する重量比率は、1重量%以上95重量%以下であることが好ましく、1重量%以上であることでシートの強度が改善される。有機繊維の重量比率が95重量%を超えると微細セルロース繊維の特長(比表面積の高さによる高吸着性能)が阻害される。好ましい有機繊維の繊維径は1μm以上25μm以下、より好ましくは1.5μm以上20μm以下であって、好ましい有機繊維層の重量比率は5重量%以上90重量%以下、より好ましくは10重量%以上80重量%以下である。
ここで有機繊維とは、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、木材パルプやコットンリンター等の天然セルロース繊維、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨン等の再生セルロース繊維及びリヨセルやテンセル等の精製セルロース繊維の群から選ばれる少なくとも1種である。前記有機繊維からなる層は短繊維不織布、長繊維不織布いずれでもよいが、取扱性向上の観点から長繊維不織布が好ましい。
前記有機繊維からなる層に対して微細セルロース繊維が厚み方向に入り込み、更に、その入り込み深さは、当該有機繊維からなる層の厚みを100%とした場合、当該有機繊維からなる層の表層部から5%以上であることが好ましい。微細セルロース繊維が有機繊維層に5%以上入り込んでいることで、微細セルロース繊維不織布層と有機繊維層との剥離が防止される。また、微細セルロース繊維の濾材からの滑落が防止される。更には、有機繊維層の表層部から深層部にかけて濾材の孔径サイズ分布が形成され、粗大粒子から微粒子まで広い粒径分布の粒子を効率的に濾過分別できる高性能濾材として機能することができる。有機繊維層に対する微細セルロース繊維の入り込み深さは、当該有機繊維からなる層の厚みを100%とした場合、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。
尚、微細セルロース繊維不織布と有機繊維層からなるシートの構造は、有機繊維層の支持体上に微細セルロース繊維が積層化された2層構造であっても、有機繊維層の表裏両面に該セルロース不織布を配した3層構造をもつものでもよい。また、異なる有機繊維からなる多層化不織布の片面又は表裏両面に微細セルロース繊維不織布を配してもよく、これら多層構造の濾材の片面或いは表裏両面に更に有機繊維層を配してもよいが、この場合微細セルロース繊維の有機繊維層への入り込み深さは、異なる有機繊維からなる多層化不織布に対する入り込み深さで判断すべきであり、有機繊維層のシート重量に対する重量比率は、使用された有機繊維層全ての重量で判断する。
本発明の耐水性セルロースシートは、セルロース特有の耐熱性、耐薬品性、高弾性率と表面活性の高さに由来した高吸着性能を有し、かつ高い空孔率と水に対する高い耐久性を有しているので、水を含む溶液系の濾過材、或いは血液分離膜、また、研磨テープの基材として有効に利用することができる。
以下、本発明の耐水性セルロースシートの製造方法の例について説明するが、特にこの方法に限定されるものではない。
本発明で使用するセルロース不織布は、まず、微細セルロース繊維(微細セルロース繊維)の水分散液を調製し、該分散液を用いて以下に記載する方法により製膜して得る。
微細セルロース繊維は、ミクロフィブリルと呼ばれる2nm〜200nmの繊維径のセルロース繊維又はその集束体を意味する。より具体的には、バクテリアセルロースと呼ばれる酢酸菌やバクテリア類の産生するセルロースか、あるいはミクロフィブリル化セルロースと呼ばれるパルプ等の植物由来のセルロース、あるいはホヤセルロースのような動物由来のセルロースを高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、グラインダー等の高度にせん断力の加わる装置で微細化処理することにより得られる、繊維表面から引き剥がれた独立したミクロフィブリルあるいはそれらが収束した微細繊維(非特許文献1;A.F.Turbak, F.W.Snyder and K.R.Sandberg, ” Microfibrilated Cellulose, A New Cellulose Product: Properties, Uses, and Commercial Potential” J.Appl.Polym.Sci.: Appl. Polym. Symp., 37, 815 (1983))を意味する。このうち、本発明では、コストや品質管理の面からミクロフィブリル化セルロースを原料として使用することがより好ましい。
ミクロフィブリル化セルロース原料としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等のいわゆる木材パルプと非木材パルプを使用することができる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプ,ワラ由来パルプを挙げることができる。コットン由来パルプ,麻由来パルプ,バガス由来パルプ,ケナフ由来パルプ,竹由来パルプ、ワラ由来パルプは、各々、コットンリントやコットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産またはフィリピン産のものが多い)、ザイサルや、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料を蒸解処理による脱リグニン等の精製工程や漂白工程を経て得られる精製パルプを意味する。この他、海藻由来のセルロースやホヤセルロースの精製物もミクロフィブリル化セルロースの原料として使用することができる。
次に、セルロース繊維の微細化の方法について記載する。
セルロース繊維の微細化は、前処理工程、叩解処理工程及び微細化工程を経ることが好ましい。
前処理工程においては、100〜150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、酵素処理等、又はこれらの組み合わせによって、原料パルプを微細化し易い状態にしておくことは有効である。これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロースなどの不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、セルロース不織布の耐熱性の向上に大変有効であることもある。
叩解処理工程においては、原料パルプを0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
好ましい叩解処理の程度は以下のように定められる。
我々の検討において、叩解処理を行うにつれCSF値(セルロースの叩解の程度を示す。JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法で評価)が経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると再び増大していく傾向が確認され、水系分散液を調整するに当たって使用するミクロフィブリル化セルロースは、CSF値が一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けCSF値が増加している状態まで叩解することが好ましいことが分かった。本発明では、未叩解からCSF値が減少する過程でのCSF値を***↓、ゼロとなった後に増大する傾向におけるCSF値を***↑と表現する。該叩解処理においては、CSF値は少なくともゼロ又はその後増大する***↑の値をもつことが好ましく、より好ましくはCSF50↑である。このような叩解度に調製した水分散体(以下「スラリー」ともいう。)では、フィブリル化が高度に進行し、数平均繊維径500nm以下の微細セルロース繊維を容易に提供できると同時に、当該スラリーから得られたセルロース不織布からなる耐水性セルロースシートは、微細セルロース繊維同士の接着点の増加からか、引張強度が向上する傾向がある。また、CSF値が少なくともゼロ又はその後増大する***↑の値をもつ高度に叩解されたスラリーは均一性が増大し、その後の高圧ホモジナイザー等による微細化工程での詰まりを軽減できるという製造効率上の利点がある。
セルロース繊維の微細化には、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等を用いることができる。この際の水分散体中の固形分濃度は、上述した叩解処理に準じ、0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度とすると詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザーなどを挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザーなどの高圧衝突型の微細化処理機を意味し、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
微細セルロース繊維の繊維径は、高圧ホモジナイザー等による微細化工程の条件(装置の選定や操作圧力及びパス回数)又は該微細化処理前の前処理の条件(例えば、オートクレーブ処理、酵素処理、叩解処理等)によって制御することができる。
また、上記した前処理工程、叩解処理工程、微細化工程を経なくても下記方法であれば、容易に数平均繊維径500nm以下の微細セルロース繊維を調製することができる。すなわち、前処理として原料パルプをTEMPO酸化触媒によって6位の水酸基を酸化し、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)を導入し(カルボキシル基量≧0.3mmol/g)、ホモジナイザーやミキサー等により水中で攪拌することで、極めて容易に数平均繊維径500nm以下の微細セルロース繊維を調製することができる。この方法は、繊維径の均一性に優れた微細セルロース繊維を調製するためにも極めて有効である。
次に、耐水性セルロースシートの製造方法について説明する。
耐水性セルロースシートの製造方法には、一旦、高空孔率の微細セルロース繊維からなるセルロース不織布を抄紙製造した後、後処理で耐水性能を付与する「後処理法」とセルロース不織布を抄紙製造と耐水性付与を同時に行う「簡便法」の2種類がある。以下、それぞれの方法について詳細に説明する。
まず、「後処理法」について説明する。
「後処理法」は、(a)〜(c)のエマルジョン抄紙工程、及び(d)架橋剤を利用した後処理工程ならなる。
エマルジョン抄紙工程は(a)水系分散液の調製工程、(b)抄紙工程、及び(c)乾燥工程からなる。
(a)調製工程で使用する水系分散液(エマルジョン)は、微細化工程で調製した微細セルロース繊維0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.5重量%以上10重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む水系分散液であることが好ましい。
水系分散液中の微細セルロース繊維の濃度は、0.05重量%以上0.5重量%以下、より好ましくは0.08重量%以上0.35重量%以下であると好適に安定な抄紙を実施することができる。該水系分散液中の微細セルロース繊維濃度が0.05重量%よりも低いと濾水時間が非常に長くなり生産性が著しく低くなると同時に膜質均一性も著しく悪くなるため好ましくない。また、微細セルロース繊維濃度が0.5重量%よりも高いと、分散液の粘度が上がり過ぎてしまうため、均一に製膜することが困難になり、やはり好ましくない。
次に、調製工程で調製する水系分散液中には、0.15重量%以上10重量%以下の、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下である油性化合物がエマルジョンとして、85重量%以上99.5重量%以下の水から成る水相に分散していることが好ましい。
油性化合物の抄紙用水系分散液中の濃度は0.15重量%以上10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上3重量%以下である。油性化合物の濃度が10重量%を超えても本発明のセルロース不織布を得ることはできるが、製造プロセスとして使用する油性化合物の量が多くなり、それに伴う、安全上の対策の必要性やコスト上の制約が発生するため好ましくない。また、油性化合物の濃度が0.15重量%よりも小さくなると所定の透気抵抗度範囲よりも高い透気抵抗度のシートしか得られなくなるため、やはり好ましくない。エマルジョン抄紙法においては、上述した条件下で形成されるエマルジョンにおいて、水と比較して油性化合物が、抄紙機における濾過を意味する抄紙工程により濾液側に移動せずに、水不溶性の親水性高分子であるセルロースの近傍に効率的に残存し、実質的に油性化合物の濃縮化が進行することを特徴とする。すなわち、乾燥工程に到る際に、水不溶性の親水性高分子が水に比べ、表面張力の低い油性化合物に取り囲まれることは、乾燥時に高分子間の融着を防御し、通気性を有するセルロース不織布を形成する原動力となる(先述した有機溶剤による置換法と原理的には同じ)。また、本発明に用いる水系分散液には、好適に水溶性高分子を添加することができるが、上述した条件下で形成されるエマルジョンは、該水溶性高分子を油滴表面に局在させ、結果的に水溶性高分子がセルロース表面に効率的に残存させ、バインダーとして有効に作用する。
乾燥時に上記油性化合物が除去されないと通気性を有する不織布となり得ないため、用いる油性化合物は、乾燥工程で除去可能なことが必要である。したがって、本発明において、水系分散液にエマルジョンとして含まれる油性化合物は、一定の沸点範囲にあることが必要であり、具体的には、大気圧下での沸点が50℃以上200℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、60℃以上190℃以下であれば、工業的生産プロセスとして水系分散液を操作し易く、また、比較的効率的に加熱除去することが可能となる。油性化合物の大気圧下での沸点が50℃未満であると水系分散液を安定に扱うために低温制御下で扱うことが必要となり、効率上好ましくなく、また、油性化合物の大気圧下での沸点が200℃を超えると、乾燥工程で油性化合物を加熱除去するのに多大なエネルギーが必要となるため、やはり好ましくない。
さらに、上記油性化合物の25℃での水への溶解度は5重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であることが油性化合物の必要な構造の形成への効率的な寄与という観点で望ましい。以下に油性化合物の具体例を示す。
例えば、炭素数6〜炭素数14の範囲の炭化水素、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカンやそれらの異性体(例えば、イソヘキサン、イソオクタン、イソデカン)に代表される鎖状飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘキセンのような環状炭化水素類、ジイソブチレンやシクロヘキセンのような鎖状または環状の不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、炭素数5〜炭素数9の範囲であり一価かつ一級のアルコール、具体的には、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、(2E,4E)−2,4−ヘキサジエン−1−オール、2−メチル−2−ヘキサノール、イソヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、イソオクタノール、1,3−ベンゾジオキソール−5−メタノール等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
一級のアルコールではないが、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、シクロヘプタノール、4−ヘプタノール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチニルシクロペンタノール、2−オクタノール、(S)−2−オクタノール、シクロオクタノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、1−オクチン−3−オール等の炭素数5〜炭素数9の範囲である一価のアルコールも油性化合物として好適に使用できる。
上述した油性化合物のうち、特に、油性化合物が炭素数5〜炭素数9の範囲であり一価かつ一級のアルコールの中から選ばれる少なくとも一つの化合物、さらに好ましくは、該アルコールの中の、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールの中から選ばれる少なくとも一つの化合物を用いると特に好適に本発明のセルロース不織布を製造することができる。これは、エマルジョンの油滴サイズが極めて微小(通常の乳化条件で、1μm以下)となるため、高空孔率かつ微細な多孔質構造を有する不織布の製造に適していると考えられる。
これらの油性化合物は単体として配合してもよいし、複数の混合物を配合してもよい。さらには、エマルジョン特性を適当な状態に制御するために、これら油性化合物中に本発明で使用するセルロース不織布に含有する特定の水溶性化合物を溶解させてもよい。但し、この際の特定の水溶性化合物の混合量は、油性化合物に対し25重量%以下であることが好ましい。これ以上の添加量とすると油性化合物のエマルジョンの形成能が低下するため、好ましくない。
上述した油性化合物は、調製工程における水系分散液中にエマルジョンとして分散していることが重要である。この場合、油滴が水相に分散しているO/W型のエマルジョンである。油滴サイズに該当した網目構造が乾燥後の構造体に反映されるため、油滴サイズは小さく、安定に分散していることが好ましい。
ここで、水系分散液中には、前述した特定の水溶性化合物が水相中に溶解していても構わない。これらの水溶性高分子は、油滴粒子の表面近傍に局在し、スラリーの安定化に寄与するとともにエマルジョン抄紙の機構、すなわち、微細セルロース繊維の作る緩やかな会合体中に油滴ごと取り込まれ、抄紙の過程で湿紙中に残存するため、高い残存率で湿紙中に残存することになるので、均一で微細な孔を高い比率で形成するために好ましい。
エマルジョン抄紙法では、特定の水溶性化合物を使用することにより、湿紙中、すなわち乾燥後のセルロース不織布中にも該特定の水溶性化合物が高い効率で残存する。この点で、エマルジョン抄紙法は、本発明で使用するセルロース不織布の製造方法としてより好ましい方法である。
エマルジョン抄紙用の水系分散液中には、前述した特定の水溶性化合物が水相中に溶解していることが好ましい。該特定の水溶性高分子の濃度は、0.003重量%以上0.3重量%以下、より好ましくは、0.005重量%以上0.08重量%以下、さらに好ましくは、0.006重量%以上0.07重量%以下の量であり、この範囲であると、本発明で使用するセルロース不織布が得られ易いと同時に、水系分散液の状態が安定化することが多いので好ましい。該濃度が0.003重量%よりも低いと、上記特定の水溶性化合物の添加効果が現れ難いので好ましくなく、また、該濃度が0.3重量%を超えると泡立ち等の添加量増大に伴う負の効果が現れ易くなるため好ましくない。エマルジョンを安定化させる目的で、水系分散液中に上記特定の水溶性化合物以外に界面活性剤が、上記特定の水溶性高分子との合計量が上記濃度範囲で含まれていても構わない。
この場合の界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、アルキルポリオキシエチレンエーテルや脂肪酸グリセロールエステル等のノニオン性界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
この他、水系分散液中には、目的に応じて種々の添加物が添加されていても構わない。例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ダイヤモンド粒子、窒化硼素、炭化珪素、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子のような無機系粒子状化合物、また、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機系微粒子、さらに、各種塩類、エマルジョンの安定性を阻害しない程度の有機溶剤等は、本発明の高空孔率構造体の製造に悪影響を及ぼさない範囲(種類の選択や組成の選択)で添加されていても構わない。
水系分散液中では水以外の成分は、85重量%以上99.5重量%以下、好ましくは90重量%以上99.4重量%以下、さらに好ましくは92重量%以上99.2%以下の組成の水中に分散又は溶解していることが好ましい。水系分散液中の水の組成が85重量%より低くなると、粘度が増大するケースが多く、エマルジョンを分散液中に均一に分散し難くなり、均一な構造の高い空孔率を有するセルロース不織布が得られ難くなるため好ましくない。また、水系分散液中の水の組成が99.5重量%を超えると、配合組成としてエマルジョンの含有量が低減され、濃縮組成物中の油性化合物濃度が低くなってしまい、通気性の構造体が得られ難くなるため、やはり好ましくない。
抄紙用水系分散液中の微細セルロース繊維の分散平均径は、3μm以上200μm以下であることが好ましい。
抄紙用水系分散液中の微細セルロース繊維の分散平均径(以下、Rという。)は、水の透過性、抄紙の効率の点から3μm以上、不織布の均一性の点から200μm以下が好ましい。分散平均径(R)とは、抄紙用分散液をレーザ散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920、下限検出値は0.02μm)を用い、室温で測定して求められる体積平均の算術平均径のことを意味する。また、本測定ではMieの散乱理論(M.Kerker,“The Scattering of Light”,U.S.A.,Academic Press,New York,N.Y.,1969,Cap.5.)により体積分布に関する算術平均径を使用するが、その際に使用するセルロースの水の屈折率に対する相対屈折率は1.20とする。
水系分散液(スラリー)のRは、より好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは10μm以上120μm以下の範囲にあると、より均一性に優れたセルロース不織布を提供することができる。
調製工程で調製する水系分散液は、上述した化合物群から成るエマルジョン組成物であるが、エマルジョンの形成においては、乳化方法のあらゆる方法を採用することができる。すなわち、機械的乳化、転相乳化、液晶乳化、転相温度乳化、D相乳化、可溶化領域を利用した超微細乳化(マイクロエマルジョン乳化)等の方法によりO/W型エマルジョンを調製する。
水系分散液の調製は、一切の添加物を水中へ混入し、適当な乳化方法により水系エマルジョン分散液とするか、あるいは予め油性化合物と乳化剤からなる水系エマルジョンを上述したような適当な乳化方法で調製しておき、別途調製した微細セルロース繊維及びその他の添加物からなる水系分散液と混合して水系分散液とすればよいが、その際分散平均径が1μm以上300μm以下になるようにブレンダーのようなカッティング機能をもつ羽根を高速回転させるタイプの分散機や高圧ホモジナイザーで制御して調整することが好ましい。
次に、(b)第一の工程で調製した水系分散液を抄紙機で脱水することにより、微細セルロース繊維を濾過し、エマルジョン濃度を濃縮化する抄紙工程である。該抄紙工程は、基本的に、水を含む分散液から水を脱水し、水不溶性の親水性高分子が留まるようなフィルターや濾布(製紙の技術領域ではワイヤーとも呼ばれる)を使用する操作であればどのような装置を用いて行ってもよい。上述したようにエマルジョン中の油滴は、微細セルロース繊維から成る分散平均径3μm以上200μm以下の会合体中(軟凝集体)に取り込まれて存在しているため、脱水操作により液相が系外に排出されてもフィルターや濾布上に留まり、実質的にエマルジョン成分の濃縮化が進行することになる。
抄紙機としては、傾斜ワイヤー式抄紙機、長網式抄紙機、円網式抄紙機のような装置を用いると好適に欠陥の少ないシート状のセルロース不織布を得ることができる。抄紙機は連続式であってもバッチ式であっても目的に応じて使い分ければよい。
上記抄紙機を用いて抄紙を行うが、抄紙はワイヤーまたは濾布を用いて水系分散液中に分散している微細セルロース等の軟凝集体を濾過する工程であるため、ワイヤー又は濾布の目のサイズが重要である。本発明においては、本質的には、上述した条件により調製した抄紙用の水系分散液を、該分散液中に含まれるセルロース等を含む水不溶性成分の歩留まり割合が70重量%以上、好ましくは、95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上で抄紙することのできるようなワイヤー又は濾布であればどんなものでも使用できる。
但し、セルロース等の歩留まり割合が70重量%以上であっても濾水性が高くないと抄紙に時間がかかり、著しく生産効率が悪くなるため、大気圧下25℃でのワイヤーまたは濾布の水透過量が、好ましくは0.005ml/cm・s以上、さらに好ましくは0.01ml/cm・s以上であると、生産性の観点からも好適な抄紙が可能となる。上記水不溶成分の歩留まり割合が70重量%よりも低くなると、生産性が著しく低減するばかりか、用いるワイヤーや濾布内にセルロース等の水不溶性成分が目詰まりしていることになり、製膜後のセルロース不織布の剥離性も著しく悪くなる。
ここで、大気圧下25℃でのワイヤー又は濾布の水透過量は、次のようにして評価するものとする。
バッチ式抄紙機(例えば、熊谷理機工業社製の自動角型シートマシーン)に評価対象となるワイヤー又は濾布を設置するにおいて、ワイヤーの場合はそのまま、濾布の場合は、80〜120メッシュの金属メッシュ(濾水抵抗がほとんど無いものとして)上に濾布を設置し、抄紙面積がxcmの抄紙機内に十分な量(ymlとする)の水を注入し、大気圧下で濾水時間を測定する。濾水時間がzs(秒)であった場合の水透過量を、y/(xz)(ml/cm・s)と定義する。
極めて微細なセルロース繊維に対しても使用できるフィルター又は濾布の例として、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07−8435−SK010(PET製)、敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のシートは、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維等の有機繊維層を配することができるが、この場合当該有機繊維層を支持体として抄紙を行うことが好ましい。またこの場合、抄紙機のワイヤー又は濾布は当該支持体との組み合わせで、歩留まり割合や水透過量に係わる要件を満足できる素材を選択すれば足りる。
抄紙工程による脱水では、エマルジョンの濃縮化と同時に高固形分化が進行し、微細セルロース繊維の濃度と油性化合物の濃度を水系分散液より増加させた濃縮組成物である湿紙を得る。湿紙の固形分率は、抄紙のサクション圧(ウェットサクションやドライサクション)やプレス工程によって脱水の程度を制御し、好ましくは固形分濃度が6重量%以上25重量%以下、さらに好ましくは固形分濃度が8重量%以上20重量%以下の範囲に調整する。湿紙の固形分率が6重量%よりも低いと湿紙としての自立性がなく、工程上問題が生じ易くなる。また、湿紙の固形分率が25重量%を超える濃度まで脱水すると水相だけでなく、濃縮したエマルジョンが系外に排出されてしまい、微細セルロース繊維近傍の水層の存在によって、却って油性化合物の濃度が低下してしまうため、空孔率の高いセルロース不織布を形成できなくなり、相応しくない。上述したようにエマルジョン抄紙法では、抄紙工程によってエマルジョンが濃縮化され、脱水前の水系分散液中の油性化合物濃度に対し、脱水工程後の湿紙では該油性化合物濃度が約5倍以上、好適な場合には10倍以上に濃縮化される。
尚、有機繊維層である支持体を用いる場合、ワイヤー又は濾布をセットした抄紙機に当該支持体を載せて、水系分散液を構成する水の一部を該支持体上で脱水(抄紙)を行い、該支持体上に微細セルロース繊維からなるセルロース不織布の湿紙を積層化させ、一体化させることにより、少なくとも2層以上の多層構造体からなる多層化シートを製造することができる。3層以上の多層化シートを製造するためには、2層以上の多層構造を有する支持体を使用すればよい。また、支持体上で2層以上の本発明のセルロース不織布の多段抄紙を行って3層以上の多層シートとしてもよい。
抄紙工程で得た湿紙は、加熱による乾燥工程(c)で油性化合物及び水分を蒸発させることによって、セルロース不織布となる。乾燥工程は、ドラムドライヤーのような幅を定長とした状態で、水と油性化合物(以下、水と油性化合物を合わせて「分散媒」という。)を乾燥し得るタイプの定長乾燥型の乾燥機を使用すると、より空孔率の高いセルロース不織布を安定に得ることができるため、好ましい。乾燥温度は、条件に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは、45℃以上180℃以下、さらに好ましくは、60℃以上150℃以下の範囲とすれば、好適に空孔率の高いセルロース不織布を製造することができる。乾燥温度が45℃未満では、多くの場合に分散媒の揮発速度が遅いため、高い生産性が確保できず好ましくなく、180℃より高い乾燥温度とすると、構造体を構成する親水性高分子が熱変性を起こしてしまうケースがあり、また、コストに影響するエネルギー効率も低減するため、やはり好ましくない。場合によっては、100℃以下の低温乾燥で組成調製を行い、次段で100℃以上の温度で乾燥する多段乾燥を実施することも、孔径均一性に優れたセルロース不織布を得るうえでは有効であることもある。
上記エマルジョン抄紙工程に引き続いて、(d)架橋剤を利用した後処理工程について説明する。
エマルジョン抄紙で得られたセルロース不織布を、各種架橋剤を分散或いは溶解させた溶媒中に浸漬し、水洗、乾燥することでセルロース不織布に耐水性能を付与する。
ここで利用される架橋剤としては、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、多官能エポキシ化合物、イソシアネート化合物が挙げられる。
また、溶媒としては、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの含塩素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなど非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。また、これらの溶媒には水が含まれていてもよいが、その濃度はセルロース不織布が膨潤・崩壊しない範囲で制御する必要がある。
上記溶媒に各種架橋剤を分散或いは溶解させるが、この場合架橋剤の濃度は0.1〜15重量%が好ましい。架橋剤濃度が0.1%未満であると目的とする乾湿強度比を有するセルロースシートが得られない。架橋剤濃度が15重量%を超えると乾湿強度比は高くなるが、乾燥強度が低くなる傾向がある。より好ましくは0.2〜10重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%である。
後処理の温度と時間は、特に限定はなく最終シートの乾湿強度比と各種溶媒の安全性(引火性、爆発性)を考慮して設定すればよいが、処理温度が200℃を超えるとセルロース不織布が熱劣化し、引張強度が低下するので、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。また、処理温度が低いと処理に長時間要するので、15℃以上が好ましく、より好ましくは25℃以上である。処理時間の適正範囲は温度によって異なるが、30秒間〜24時間である。
所定温度・時間で浸漬処理されたセルロース不織布を流水で30〜60分水洗した後、乾燥させるが、この場合の乾燥温度はエマルジョン抄紙工程の(c)乾燥工程条件に準ずる。
以上が「後処理法」による本発明の耐水性セルロースシートの製造方法である。
次に、セルロース不織布の抄紙製造と耐水性付与を同時に行う「簡便法」を説明する。
「簡便法」には、(I)架橋剤を用いる方法と、(II)バインダー繊維を用いる方法の2種類がある。
まず、(I)架橋剤を用いる方法について説明する。
「簡便法」−(I)架橋剤を用いる場合には、上述したエマルジョン抄紙法の(a)水系分散液の調製工程において、0.01〜10重量%濃度の各種架橋剤を水系分散液に添加する。架橋剤としては、ビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、多官能エポキシ化合物、イソシアネート化合物が挙げられる。この場合、溶液のpHを使用する架橋剤の反応性に応じて、pH調整剤を用いて調製することが好ましいが、強酸性或いは強アルカリ性領域では乾燥工程において、セルロース不織布が加水分解し、著しい強度低下が起こる。好ましい水系分散液のpH範囲としては、pH5.0〜9.0であり、より好ましくはpH5.5〜8.5である。
引き続き上述したエマルジョン抄紙法の(b)抄紙工程に準じて抄紙された湿紙を加熱による乾燥工程(c)で油性化合物及び水分を蒸発させると同時に熱処理(架橋反応促進)することによって、耐水性セルロースシートとなる。乾燥温度は、条件に応じて適宜選択すればよいが、架橋反応性の観点から45℃以上180℃以下が好ましく、60℃以上160℃以下がより好ましい。乾燥温度が45℃未満では、架橋反応速度が遅く、180℃より高いと強度低下を引き起こす場合がある。乾燥時間は、乾燥温度と最終シートの乾湿強度比を考慮して選定すればよいが、30秒間〜30分間の範囲が好ましく、ドラムドライヤーのような乾燥機を用いる場合、送り速度の調整やロール径で調整することができる。
次に、(II)バインダー繊維を用いる方法について説明する。
「簡便法」−(II)バインダー繊維を用いる場合には、上述したエマルジョン抄紙法の(a)水系分散液の調製工程において、バインダー繊維を水系分散液に添加する。バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の複合繊維、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の複合繊維、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)等の溶融系バインダー繊維が挙げられる。バインダー繊維の添加量は0.01〜0.5重量%の範囲が好ましく、0.01重量%以下であると微細セルロース繊維同士を効率的に接着できず、0.5重量%を超えると引き続く(c)乾燥工程にてバインダー繊維がフィルム状に伸ばされ、微細セルロース繊維が形成する微細な空孔を塞いでしまう(空孔率の低減)。好ましいバインダー繊維濃度は0.02〜0.2重量%であり、より好ましくは0.03〜0.1重量%である。またバインダー繊維の数平均繊維径は、0.5〜20μmの範囲であることが微細な空孔を塞がないという観点から好ましく、より好ましくは1〜15μmであり、2μm〜12μmが最も好ましい。
引き続き上述したエマルジョン抄紙法の(b)抄紙工程に準じて抄紙された湿紙を加熱による乾燥工程(c)で油性化合物及び水分を蒸発させると同時に熱処理(バインダー繊維による融着)してもよいし、また、一旦油性化合物及び水分を蒸発させた後に別途熱処理を行ってもよい。乾燥温度或いは熱処理温度は、用いるバインダー繊維に応じて適宜選択すればよい。
上述した各方法にて得られた耐水性セルロースシートにカレンダー装置によって平滑化処理を施す平滑化工程を設けてもよい。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、カレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を、目的に応じて選定することにより多種の物性バランスをもつ耐水性セルロースシートを得ることができる。
以上の条件を満たすことにより、セルロース特有の耐熱性、耐薬品性、高弾性率と表面活性の高さに由来した高吸着性能を有し、かつ高い空孔率と水に対する高い耐久性を有する耐水性セルロースシートを提供することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)微細セルロース繊維の数平均繊維径
微細セルロース繊維からなるシートの表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行う。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数える。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出する。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計3画像分の結果を平均化し、対象とする試料の数平均繊維径とする。
(2)有機繊維の数平均繊維径
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を1000倍相当の倍率で行う以外は、微細セルロース繊維の数平均繊維径の評価同様に行う。
(3)微細セルロース繊維の最大繊維径
微細セルロース繊維の最大繊維径が1500nm以下であることは、SEM画像によって確認する。
微細セルロース繊維からなる不織布濾材の表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行った時に、得られたすべてのSEM画像中の繊維径1500nmを越える繊維の数をカウントし、その平均値をとる。但し、画像において、数本の微細繊維が多束化して1500nm以上の繊維径となっていることが明確に確認できる場合には、1500nm以上の最大繊維径の繊維とは見なさないものとする。
(4)シートにおける微細セルロース繊維の重量比率(P)
予めシートを105℃に温度制御された乾燥機内で6時間乾燥し、デシケータ中で30分間冷却した後重量を求める(W)。
シートをシート重量に対して10倍量のセルロースの溶解能のない溶媒中で攪拌(30分間)−濾過(孔径2mmの篩)−洗浄し、の後20倍量の使用溶媒で同様の操作を2回繰返し、残ったセルロースを濾別する。溶媒の沸点以上の温度で6時間乾燥し、デシケータ中で30分間冷却した後重量を求める(容器と微細セルロース繊維の総量;W)。微細セルロース繊維の重量比率(P)は、下記式(3):
微細セルロース繊維の重量比率(P)=(W−W)/W×100 式(3)
にて求める。
(5)目付
濾材の目付は、P−8124に準じて、算出する。
(6)透気抵抗度
25cm角のシートを10等分にエリア分けし、当該10区画についてガーレー式デンソメーター((株)東洋精機製、型式G−B2C)を用いて、100mlの空気の透過時間を測定し、10点の平均値をとる。ここで、1箇所でも10s/100mlを下回る部分、或いは2000s/100mlを越える部分がある場合、本発明の透気抵抗度範囲には入らない。
(7)引張強伸度
引張強度の評価は、JIS P 8113にて定義される方法に従い、熊谷理機工業(株)の卓上型横型引張試験機(No.2000)を用い、幅15mmのサンプル10点について測定し、その平均値を引張強伸度とした。目付けの違いを考慮して、強度は10g/m目付け相当の値で評価する。
(8)引張強度の乾湿強度比
(7)で評価した引張強度を乾燥強度とし、シートを浸すに十分な水をはった容器内に5分間浸漬した後に測定した引張強度を湿潤強度とし、下記式(1):
乾湿強度比(%)=(湿潤強度)/(乾燥強度)×100 式(1)
にて算出する。ここでは乾燥強度、湿潤強度ともに目付10g/m相当に換算しない。
(9)空孔率
シートの空孔率Pr(%)は、10cm角の膜厚d(μm)とその重さW(g)から、以下の式(4):
Pr=(d−W×67.14)×100/d (4)
を用いて算出する。
(10)平均孔径
平均孔径は、パームポロメータ(西華産業製 CFE−1200AEX)を用いた細孔径分布測定試験において、エタノールに完全に濡らしたサンプルに対して空気圧を5cc/minで増大させて評価する。透水後の平均孔径変化率は、透水前後の平均孔径の違いを下記式(2):
透水後の平均孔径変化率(%)=(透水後の平均孔径−透水前の平均孔径)/透水前の平均孔径×100 式(2)
にて算出する。
ここで、透水後の平均孔径は、シートを水漏れのないように濾過器にセットし、送液ポンプを用いて超純水を圧力1kg/cmで60分間送液し、その後水分をエタノールで完全置換されたサンプルを用いて評価する。
[実施例1]
重合度(DP)1750のコットンリンター原綿を10重量%となるように水に浸液させてオートクレーブ内で130℃,4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。
該膨潤パルプを固形分1.5重量%となるように水中に分散させて水分散体(400L)とし、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして400Lの該水分散体に対して、20分間叩解処理を進めた後、引き続いてクリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから10分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で73ml↑の叩解スラリーを得た。得られた叩解スラリーを、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、ミクロフィブリル化セルロースの水系分散液M1(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
次にこのM1及び油性化合物を以下の表1に示すとおりに添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散を行った。この水系分散液の分散平均径Rvは168μmであった。
PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20・・・大気下25℃での水透過量:0.03ml/cm・s、ミクロフィブリル化セルロースを大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m2のセルロース不織布を目安に、上記調整した水系分散液312.5gを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cmの圧力で1分間プレスした後、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにやはり湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させ、得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色の均一な微細セルロース繊維から構成されるセルロースシートを得た。
架橋剤として1,6’−ヘキサメチレンジイソシアネートをトルエンに2重量%濃度で溶解したトルエン溶液にセルロースシートを25℃×1時間浸漬し、流水で30分間水洗した後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにやはり湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させて、S1を得た。
S1の表面を10000倍の倍率でSEM画像解析を行ったところ、S1の表面における微細セルロース繊維で1500nmを超えるものは認められず、数平均繊維径は158nmであった。
また、S1は以下の表2に示すとおり、高い空孔率を有し、高い強度及び乾湿強度比を有するものであった。
[実施例2]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製 60SH−4000)を以下の表1に示す組成で水系分散液に添加する以外は、実施例1と同様に微細化、スラリー調製、抄紙乾燥及び後加工を行い、S2を得た。S2は以下の表2に示すとおり、本発明に規定する物性範囲にあり、高い空孔率と水に対する耐性を有するものであった。
[実施例3]
架橋剤による後処理時間を12時間にした以外は、実施例2と同様に微細化、スラリー調製、抄紙乾燥及び後加工を行い、S3を得た。S3は以下の表2に示すとおり、本発明に規定する物性範囲にあり、高い空孔率と水に対する耐性を有するものであった。
[実施例4〜6]
架橋剤に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用い、また架橋剤濃度を以下の表1に示す条件で実施した以外は、実施例3と同様に微細化、スラリー調製、抄紙乾燥及び後加工を行い、S4〜S6を得た。S4〜S6の物性を以下の表2に示す。
[実施例7]処理方法違い
架橋剤にブロックジイソシアネートを用いた以外は、実施例3と同様に微細化、スラリー調製、抄紙乾燥及び後加工を行い、S7を得た。S7の物性を以下の表2に示す。
[比較例1]
架橋剤による後処理を実施しない以外は、実施例2と同様に微細化、スラリー調製、抄紙乾燥を行い、C1を得た。C1は高い空孔率や乾燥強度を有するものの、水に対する耐久性が低く、水に浸漬した時点で崩壊し、湿潤強度を評価することができなかった。
[比較例2]
架橋剤濃度を0.05重量%で実施した以外は、実施例4と同様に微細化、スラリー調製、抄紙乾燥及び後加工を行い、C2を得た。C2は、高い空孔率や乾燥強度を有するものの、水に対する耐久性が低く、乾湿強度比が低く、透水後の平均孔径変化率が大きかった。
[比較例3]
以下の表1に示す条件で水系分散液を調製した以外は、実施例4と同様に微細化、抄紙乾燥及び後加工を行い、C3を得た。C3は、空孔率が低く、乾湿強度比が50%を下回った。C3は緻密膜であるために、膜内部まで架橋処理の効果が浸透しなかったことが原因と思われる。
[比較例4]
セルロース繊維の数平均繊維径を以下の表1に示す条件で実施した以外は、実施例4と同様に抄紙乾燥及び後加工を行い、C4を得た。C4は、乾湿強度比が50%を下回り、透水後の平均孔径変化率も大きかった。C3は繊維径が太いために、架橋処理の効果が十分に発揮できなかったものと思われる。
Figure 0005697379
Figure 0005697379
[実施例8〜13]
実施例8〜13は、抄紙と架橋剤による耐水性能付与を同時に行う簡便法−(I)による処理を以下の表3に示す条件で実施した以外は、実施例4と同様に抄紙乾燥及び後加工を行い、S8〜S13を得た。以下の表4に示すとおりS8〜S13は、いずれも高い空孔率と乾燥強度を有し、かつ耐水性も改善されていた。
[比較例5及び6]
以下の表3に示す条件で実施した以外は、実施例8と同様に抄紙乾燥及び後加工を行い、C5及びC6を得た。C5は、高い空孔率や乾燥強度を有するものの、水に対する耐久性が低く、乾湿強度比が低く、透水後の平均孔径変化率が大きかった。C6は、水に対する耐久性が低く、水に浸漬した時点で崩壊し、湿潤強度を評価することができなかった。また、C6は、透水テストに破損し、透水後の平均孔径評価を実施できなかった。
Figure 0005697379
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参考例14〜16]
参考例14〜16は、抄紙とバインダー繊維による耐水性能付与を同時に行う簡便法−(II)による処理を以下の表5に示す条件し、かつ200φのフラットロールで線圧16kg/cm×185℃で熱処理した以外は、実施例4と同様に抄紙乾燥及び後加工を行い、S14〜S16を得た。以下の表6に示すとおりS14〜S16は、いずれも高い空孔率と乾燥強度を有し、かつ耐水性も改善されていた。
[比較例7及び8]
以下の表5に示す条件で実施した以外は、参考例14と同様に抄紙乾燥及び後加工を行い、C7及びC8を得た。C7は、熱プレス処理によりポリプロピレン繊維がセルロース繊維表面を覆い、緻密膜が形成されてしまった。そのため、C7の空孔率は低いものであった。C8は、繊維径の太いポリプロピレン繊維を用いたために、部分的にセルロース繊維表面を覆い、透気抵抗度のバラツキが非常に大きかった。また、乾燥強度は、10回の測定のうち6N/15mmを下回るものが4点発生し、ばらつきの大きいものであった。湿潤強度、平均孔径評価も同様にばらつきの大きいものであった。
Figure 0005697379
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本発明の耐水性セルロースシートは、セルロース特有の耐熱性、耐薬品性、高弾性率と表面活性の高さに由来した高吸着性能を有し、かつ高い空孔率と水に対する高い耐久性を有するので、濾過材として水系から有機溶剤系まで広い溶剤範囲で利用できると同時に血液分離膜・吸着膜として有効に利用できる。また本発明の耐水性セルロースシートは、半導体製造ラインにおいて研磨テープとして利用できる。

Claims (6)

  1. 数平均繊維径が500nm以下の微細セルロース繊維から構成される不織布からなる耐水性セルロースシートであって、該微細セルロース繊維は、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン、多官能エポキシ化合物、及びイソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤によって架橋されており、かつ、下記(1)〜(4)の要件:
    (1)微細セルロース繊維の重量比率:96.6重量%以上99重量%以下
    (2)空孔率:50%以上
    (3)目付10g/m相当の引張強度:6N/15mm以上
    (4)引張強度の乾湿強度比:50%以上
    のすべてを満足する耐水性セルロースシート。
  2. 透水後の平均孔径変化率が40%以下である、請求項1に記載の耐水性セルロースシート。
  3. 請求項1又は2に記載の耐水性セルロースシートを含む濾過材。
  4. 請求項3に記載の濾過材を含むフィルターカートリッジ。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐水性セルロースシートを含む血液分離膜。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の耐水性セルロースシートを含む研磨テープ。
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