JP2019011535A - 多孔質シート及び多孔質積層シート - Google Patents

多孔質シート及び多孔質積層シート Download PDF

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一文 河原
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Abstract

【課題】1)多孔質構造が均一である、2)湿潤乾燥操作を繰り返しても透気抵抗度が変化しない、を同時に満たす微細セルロース繊維を含む多孔質シート及び多孔質積層シートの提供。【解決手段】以下の(1)〜(6)の要件:(1)平均繊維径が2〜1000nmの微細セルロース繊維で構成されていること、(2)目付10g/m2あたりの透気抵抗度が7000sec/100ml以下であること、(3)目付が0.5〜40g/m2であること、(4)厚みが1〜100μmであること、(5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、(6)シート中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下であること、を全て満たす多孔質シート。【選択図】図2

Description

本実施形態は、微細セルロース繊維を含む多孔質シート及び多孔質積層シートに関する。
近年、セルロース系繊維を高レベルで叩解、粉砕して、繊維径1μm以下まで微細化(フィブリル化)させた微細セルロース繊維が注目されている。繊維径がナノオーダーになることで比表面積が増大するため、例えば微細セルロース繊維シートに樹脂を含浸させた複合シートを作製した際、樹脂単独フィルムと比較し熱膨張係数が大幅に低下し、弾性率は増大する。また、繊維径が細くなったことで、厚み10μm以下の薄膜シートの作製も可能となっている。近年、電子部品における基板や層間絶縁材には低い熱膨張係数及び薄膜性等の性能が求められているが、微細セルロース繊維シートはその目的において優れた芯材となりうる。また、高比表面積及び薄膜性を利用することで、高捕集効率で圧損が低いフィルターとしての展開が期待される。さらに、セルロースの高い親水性と薄膜性を利用することで、高い透湿性能を有した全熱交換機用隔膜としての展開が期待される。
樹脂複合フィルムやフィルター等の用途を考えた場合、シートとしては多孔質体であることが好ましいが、微細セルロース繊維シートを多孔質化することは容易ではない。セルロース系繊維のフィブリル化は基本的に水を多量に含む状態で行われ、最終的に微細セルロース繊維が水中に分散したスラリーの形態で得られる。このスラリーを脱水・乾燥することで微細セルロース繊維シートを作製できる。しかし、1)繊維が高比表面積、2)繊維表面が親水的、3)表面張力の高い溶媒である水のため、乾燥に伴って著しい収縮が発生し、空気透過性のない緻密膜が形成する(角化現象)。そのため、微細セルロース繊維シートの多孔質化は当該分野における一つの重要な課題であり、これまでにも様々な手法が試みられてきた。
特許文献1には、水を含む状態の微細セルロース繊維シートを作製した後、表面張力の低い有機溶剤で置換し乾燥する方法が示されている。特許文献2には水よりも高沸点な有機溶剤を含むエマルジョンを微細セルロース繊維に添加して得た微細セルロース繊維スラリーを抄紙し、有機溶剤も含め乾燥する方法が示されている。
一方、特許文献3では平均繊維径430nmの微細セルロース繊維スラリーを抄紙し、乾燥する方法が示されている。特許文献4ではパルプから微細セルロース繊維を製造する際に疎水化剤を添加して繊維表面が疎水化された微細セルロース繊維を製造し、抄紙・乾燥する方法が示されている。
特開2006−193858号公報 特開2010−53461号公報 国際公開第2016/047764号 特開2016−160554号公報
特許文献1及び2に記載されるシートは、例えば全熱交換機用隔膜に使用した場合、適切な多孔質状態である使用初期には所望の透湿性能を発揮できるが、長期間使用すると湿度変動や結露−乾燥によって徐々に緻密化し、透湿性能が低下するという問題がある。また、液体フィルター(例えば水処理用フィルター)として用いた場合、乾燥させると細孔径の著しい減少やろ過圧の上昇により想定の分画性能が発揮されないという問題がある。さらに、水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールなどとの複合フィルム製造においては、水の揮発に伴うフィルムの乾燥収縮が大きいため寸法制御させる厳密な工程管理が必要となるという問題がある。すなわち、特許文献1及び2に記載される手法で得られた多孔質シートは、製造直後は多孔質であっても使用時に水でシートが濡れた後乾燥すると乾燥収縮が発生し、緻密化する。したがって、湿潤乾燥操作を経ても多孔質構造が変化しない、具体的には透気抵抗度が変化しないシートが求められる。
また、これらの手法は大量の有機溶剤を使用するため高コストになる他、排気ガス処理が必須であるため工業的生産や環境問題の観点で不利な手法である。したがって、製造プロセスの観点からも排気ガス処理が不要な完全水系での多孔質化が望まれる。
一方、特許文献3及び4に記載される方法は水系で微細セルロース繊維シートを多孔質化する方法であり、さらに得られたシートは湿潤乾燥操作を経ても透気抵抗度は変化しにくい。しかし、これらのシートは、例えば全熱交換機隔膜に使用した場合、透湿性能を向上させる透湿剤(塩化カルシウムなど)が長期使用の間に流出し、透湿性能が低下するという問題がある。また、液体フィルター(例えば水処理用フィルター)として用いた場合、補足率の低下等が生じるという問題がある。また、樹脂複合フィルムを作製した場合、理論値と比べての熱膨張係数の上昇や弾性率の低下が起きるという問題がある。水系で製造されたシートの多孔質構造を断面SEM画像にて本発明者らが検討したところ、長径が10μmを超える大きな細孔と長径が数100nmオーダーの小さな細孔とを有する不均一な多孔質構造が見られた。全熱交換隔膜では大きな細孔を伝って透湿剤が流出し、液体フィルターでは大きな細孔を捕捉目標が通り抜け、樹脂複合フィルムでは大きな細孔の部分は微細セルロース繊維を含まない樹脂のみの領域となるため、微細セルロース繊維による熱膨張係数や弾性率への効果が限定的となる。したがって、シート内の多孔質構造が均一であることが望まれていた。
本発明が解決しようとする課題は、1)多孔質構造が均一である、2)湿潤乾燥操作を繰り返しても透気抵抗度が変化しない、という特徴を同時に満たすことが可能な、微細セルロース繊維を含む多孔質シート及び多孔質積層シートを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、本開示の構成によれば上記課題が解決しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。
[1] 以下の(1)〜(6)の要件:
(1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、
(2)目付10g/m2あたりの透気抵抗度が7000sec/100ml以下であること、
(3)目付が0.5g/m2以上40g/m2以下であること、
(4)厚みが1μm以上100μm以下であること、
(5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、
(6)シート中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下であること、
を全て満たす多孔質シート。
[2] 目付10g/m2あたりの水系湿潤強度が0.3kg/15mm以上である上記態様1に記載の多孔質シート。
[3] 目付10g/m2あたりの非水系湿潤強度が0.3kg/15mm以上である上記態様1又は2に記載の多孔質シート。
[4] 1層以上の基材シート層と1層以上の微細セルロース繊維層とを含む多孔質積層シートであって、微細セルロース繊維層が以下の(1)〜(3)の要件:
(1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、
(2)層厚みが1μm以上100μm以下であること、
(3)層中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下であること、
を全て満たし、多孔質積層シートが以下の(4)〜(7)の要件:
(4)透気抵抗度が20000sec/100ml以下であること、
(5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、
(6)目付が2g/m2以上1000g/m2以下であること、
(7)厚みが2μm以上1000μm以下であること、
を全て満たす多孔質積層シート。
[5] 5cm×5cmの多孔質積層シートを200mlのイオン交換水に浸漬し、振とう機を用いて23℃にて200rpmで10分間振とうした後に微細セルロース繊維層が基材シート層から剥離しない、上記態様4に記載の多孔質積層シート。
[6] 水系湿潤強度が0.5kg/15mm以上である上記態様4又は5に記載の多孔質積層シート。
[7] 非水系湿潤強度が0.7kg/15mm以上である上記態様4〜6のいずれかに記載の多孔質積層シート。
[8] 多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、該スラリーを抄紙法により脱水することによって湿紙を形成する製膜工程、及び、該湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質シートを得る多孔質シート形成工程、を含む、上記態様1〜3のいずれかに記載の多孔質シートの製造方法。
[9] 前記スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、前記多孔質シート形成工程が、前記湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む、上記態様8に記載の多孔質シートの製造方法。
[10] 前記多孔質シート形成工程が、前記湿度を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む、上記態様8又は9に記載の多孔質シートの製造方法。
[11] 前記多孔質シートが、目付10g/m2あたりの水系湿潤強度0.3kg/15mm以上、及び/又は目付10g/m2あたりの非水系湿潤強度0.3kg/15mm以上を有し、前記多孔質シート形成工程が、前記湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理及びカレンダー処理を含み、前記カレンダー処理が、前記熱キュア処理の前、前記熱キュア処理と同時、又は前記熱キュア処理の後に行われる、上記態様9に記載の多孔質シートの製造方法。
[12] 多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、該スラリーを、基材シート上で抄紙法により脱水することによって多層湿紙を形成する製膜工程、及び、該多層湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質積層シートを得る多孔質積層シート形成工程、を含む、上記態様4〜7のいずれかに記載の多孔質積層シートの製造方法。
[13] 前記スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、前記多孔質積層シート形成工程が、前記多層湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む、上記態様12に記載の多孔質積層シートの製造方法。
[14] 前記多孔質積層シート形成工程が、前記多層湿紙を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む、上記態様12又は13に記載の多孔質積層シートの製造方法。
[15] 前記多孔質積層シート形成工程が、前記多層湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理及びカレンダー処理を含み、前記カレンダー処理が、前記熱キュア処理の前、前記熱キュア処理と同時、又は前記熱キュア処理の後に行われる、上記態様13に記載の多孔質積層シートの製造方法。
本実施形態の多孔質シートは、例えば、樹脂複合フィルムに使用される場合、均一な多孔質構造によって低い熱膨張率と高い弾性率とを実現できる。その樹脂複合フィルムを例えば配線基板における層間絶縁膜として用いた場合、半導体等の高集積化・高密度化に寄与できる。また、本実施形態の多孔質シートが例えば液体フィルターに使用される場合、均一な多孔質構造によって高い捕捉率での液体のろ過が可能となる。さらに、本実施形態の多孔質シートが例えば全熱交換機用隔膜に使用される場合、高温多湿地域での長期間の使用を経ても、透気抵抗度の変化が抑えられ透湿性能を良好に維持できる。
多孔質シートの平均最大長径の算出方法を説明する図である。 実施例12で得られた多孔質シートの断面SEM像を示す図である。 比較例5で得られたシートの断面SEM像を示す図である。 比較例16で得られたシートの断面SEM像を示す図である。
以下、本発明を実施するための例示の実施形態(以下「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の多孔質シートは微細セルロース繊維で構成される。本開示で、「微細セルロース繊維」とは、数平均繊維径が2〜1000nmであるセルロース繊維を意味する。
本実施形態の微細セルロース繊維は結晶構造がセルロースI型及び/又はII型であることが好ましい。結晶構造はグラファイトで単色化したCuKα(λ=0.15418nm)を用いた広角X線回折より得られる回折プロファイルより同定することが可能である。セルロースI型は2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置にピークを有する。セルロースII型は2θ=10°〜19°に1つのピークと、2θ=19°〜25°に2つのピークとを有する。セルロースI型及びセルロースII型が混合した場合、2θ=10°〜25°の範囲で最大6本のピークが観測される。
本実施形態の微細セルロース繊維は結晶化度が20%以上であることが好ましい。結晶化度はX線回折法や固体NMR法によって求められる。結晶化度は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。結晶化度が上記範囲である場合、耐熱性及び低線膨張率の発現の点で特に優れた性能が期待できる。
本実施形態の微細セルロース繊維は重合度(DP)100以上12000以下であることが好ましい。重合度はセルロース分子鎖を形成する無水グルコース単位の繰返し数である。セルロース繊維の重合度が100以上であることで、繊維自体の引張強度や弾性率が向上する。その結果、シートの強度の向上及びシートの取扱性の格段の向上により、例えば、水処理フィルターのプリーツ加工時の破れや濾過工程でのフィルターの破裂等が抑制される。また、重合度が100以上であることは、低熱膨張係数或いは高弾性率な樹脂複合フィルムが得られる点でも有利である。微細セルロース繊維の重合度に特に上限はないが、12000を超える重合度のセルロースは実質的に入手が困難であり、工業的な利用が難しい傾向がある。取扱性及び工業的実施の観点からセルロース繊維の重合度は、150〜8000が好ましい。重合度は、まず、銅エチレンジアミン溶液を用いたセルロース希薄溶液の極限粘度(JIS P 8215:1998)を求めた後、セルロースの極限粘度と重合度DPが下記式(1)の関係であることを利用して、重合度DPとして求められる。
極限粘度[η]=K×DPa (1)
ここでK及びaは高分子の種類によって決まる定数であり、セルロースの場合、Kは5.7×10-3、aは1である。
本実施形態の微細セルロース繊維は化学修飾されていてもよい。例えば、微細セルロース繊維の表面に存在する一部又は大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル等にエステル化されたもの、メチルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテル等にエーテル化されたもの、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル)酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったものが挙げられる。化学修飾は、セルロース繊維の特に表面で生じていることが好ましい。
微細セルロース繊維は、短繊維(ステープル)であることが好ましい。好ましい態様において、微細セルロース繊維はエンドレスの長繊維状(フィラメント状)のものを実質的に含まない。繊維の数平均繊維長は特に限定されるものではないが、好ましくは200nm以上、より好ましくは1000nm以上であり、且つ、好ましくは数平均繊維径の100倍以上、より好ましくは500倍以上、さらに好ましくは1000倍以上である。数平均繊維長が数平均繊維径の100倍以上であると、微細セルロース繊維が高度に絡み合い、シート強度が良好であり好ましい。
本実施形態の微細セルロース繊維は数平均繊維径が2nm以上1000nm以下、好ましくは2nm以上500nm以下、より好ましくは2nm以上300nm以下である。この範囲は、シートの強度及び寸法安定性の保持、微小かつ均一な孔径形成において有利である。数平均繊維径が2nm未満であると、特にセルロース繊維が化学修飾されている場合にセルロース繊維が水に溶解する場合がある。このような場合、微細繊維としての物性(剛性等の機械強度、及び寸法安定性)が発現せず、シート作製用の微細セルロース繊維としては利用できない。一方、微細セルロース繊維の平均繊維径が1000nm超の場合、繊維の交絡点が減少し、単位目付あたりのシート強度が低下するため薄膜化が困難となる場合がある。
数平均繊維径は、多孔質シート表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行うことで測定される値である。具体的には、得られたSEM画像に対し、縦方向とこれに直交する横方向とにラインを1本ずつ引き、ラインに交差した繊維の繊維径と個数を実測する。そして、一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出する。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同様に数平均繊維径を算出し、合計3画像分の結果を平均化し、対象とするシートの数平均繊維径とする。但し、得られた数平均繊維径が100nm未満の場合、50000倍の倍率で無作為に3箇所観察を行い、前記と同様の手法を用いてより正確な数平均繊維径を算出し、この値を採用する。
本実施形態の多孔質シートはシート目付Wが0.5g/m2以上40g/m2以下、好ましくは1g/m2以上30g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上20g/m2以下である。0.5g/m2未満であると良好な膜質均一性を得るのが困難となり、好ましくない。また、40g/m2を超えると抄紙時の濾水や乾燥に時間が掛かり膜質均一性を良好にするのが困難となり、好ましくない。目付の評価は室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプルを20cm×20cmに裁断し(面積0.04m2)、重量W1(g)を計測し、下記式(2)より算出する。
目付W(g/m2)=W1/0.04 式(2)
本実施形態の多孔質シートは、厚みが1μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上90μm以下、より好ましくは1μm以上80μm以下である。1μmよりも薄いと多孔質シートをピンホール無く均一に製膜することが困難となる。一方、100μmを超えると、樹脂複合フィルム作製時に樹脂含浸の時間が長大となるため連続生産する上で好ましくない。
厚みの測定方法としては、多孔質シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、倍率1000倍でSEM観察を3視野行う。つづいて、得られたそれぞれの断面SEM像において、シート片側の表面から任意に3点選択する。それぞれの点を開始点として垂線を引きシート下表面との交点を3箇所得た後、開始点と交点との距離を計測する。そして、合計9点の距離の平均値を膜厚(μm)とする。
本実施形態の多孔質シートは目付10g/m2あたりの平均透気抵抗度が、7000sec/100ml以下、好ましくは6000sec/100ml以下、より好ましくは5000sec/100ml以下である。透気抵抗度が7000sec/100mlを超えるものは空孔率が低くなり、フィルターの本来の機能に乏しい他、シート中への樹脂含浸が困難となり樹脂複合フィルムを作製できず、好ましくない。また、シートの性質上透気抵抗度は低い方が好ましいものの、ネットワークの微細性から透気抵抗度は1sec/100mlよりも小さなものは作り難いため、目付10g/m2あたりの平均透気抵抗度は1sec/100ml以上であることが好ましい。
透気抵抗度とは100mlの空気がシートを通過するのに要する時間であり、数値が大きいほど緻密といえる。測定には王研式透気抵抗試験機(例えば旭精工(株)製、型式EG01)を用いる。一つのシートサンプル(20cm×20cm)に対して異なる位置で10点の測定を室温で行い、その平均値を平均透気抵抗度(AR)とする。なお、この時、予め測定していた原紙の目付Wを用いて下記式(3)より10g/m2目付あたりの値として算出する。
目付10g/m2あたり透気抵抗度=AR/W×10 式(3)
本実施形態の多孔質シートは、湿潤乾燥操作前後での多孔質保持性に優れる。具体的には湿潤乾燥操作前後での透気抵抗度の変化率が100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。全熱交換機は湿潤環境で使用されるため結露と乾燥が繰り返される。この時、用いる多孔質シートの多孔質保持性が悪い(具体的には変化率が100%超)と、結露と乾燥で透気抵抗度が変化(典型的には上昇)しやすく熱交換効率の低下につながるため、好ましくない。一方、変化率の下限値は特になく、変化率は小さいほど好ましい。
湿潤乾燥操作とは、静置した多孔質シートに対しシート水分率が300重量%以上400重量%以下になるように水を均一に掛けた後、オーブンで乾燥する操作のことをいう。この操作前後でシートの透気抵抗度を測定し、その変化を透気抵抗度の上昇率とする。なお、シート水分率は下記式(4)より初期シート重量W2及び湿潤シート重量W3を用いて算出する。
シート水分率=(W3−W2)/W2×100 式(4)
具体的な測定方法は、23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質シート(20cm×20cm)を5cm×5cmに裁断し、そこから5枚を選ぶ。この5枚のサンプルに対してそれぞれ1点ずつ透気抵抗度を測定し、その測定場所に印をつける。この透気抵抗度を初期透気抵抗度R1とし、5枚の平均値をAR1とする。つづいて、そのサンプルを金属プレート上に置き、霧吹きで水を万遍なくかけ、サンプル周囲に付着した水滴を拭き取る。この湿潤操作前後でのシート重量を測定し、式(4)に従いシート水分率を測定する。この時の水分率が300重量%以上400重量%以下である事を確認した後、80℃のオーブンにて1時間乾燥させ、印をつけた場所の透気抵抗度を再度測定した。この透気抵抗度を操作後透気抵抗度R2とし、5枚のサンプルの平均値をAR2とする。最終的に下記式(5)より透気抵抗度上昇率(%)を算出する。
透気抵抗度上昇率(%)=(AR2−AR1)/AR1×100 式(5)
本実施形態の多孔質シートは、多孔質構造が均一である。具体的には、多孔質シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、倍率5000倍でSEM観察を10視野行う。得られた10枚の断面SEM像より、それぞれ多孔質シート中央部の細孔の中で最も大きな長径を計測した後、10枚の平均値(平均最大長径)を算出する。この平均最大長径が小さいほど多孔質構造が均一であると見なすことができる。多孔質シート中央部とは、多孔質シート断面を厚み方向に4等分した時(表層部1−中央部1−中央部2−表層部2)、表層部1及び2を除いた部分を指す。4等分はシート左右端をそれぞれ4等分になるようマークし、お互いを結び、分割することで行う(図1参照)。例えば、多孔質シート厚みが20μmの場合、両側の表層部5μmを除いた10μmを多孔質シート中央部とする。
本実施形態の多孔質シートは平均最大長径が10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。平均最大長径が10μmを超えると、樹脂複合フィルム作製時に微細セルロース繊維を含まない樹脂の領域が増えるため、微細セルロース繊維複合化によって得られる低熱膨張化や高弾性率化等の効果が限定的となり好ましくない。
本実施形態の多孔質シートは目付10g/m2あたりの乾燥強度が0.4kg/15mm以上が好ましく、0.5kg/15mm以上がより好ましく、0.6kg/15mm以上がさらに好ましい。0.4kg/15mm以上の場合、シート作製時の取り扱いが容易であり、特に連続生産においてシート乾燥・巻取工程において破断が発生しにくく好ましい。一方、本実施形態の多孔質シートの乾燥強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは目付10g/m2あたり例えば10.0kg/15mm以下である。
乾燥強度の測定方法としては、まず室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付(W)を前記の手法で測定する。次に、15mm幅に裁断し、卓上型横型引張試験機(例えば熊谷理機工業(株)製のNo.2000)を用いてチャック間距離100mm、引張速度10mm/minとして10点の引張強度を測定し、その平均値を乾燥強度(DS)とする。この時、予め測定していた原紙の目付(W)を用いて下記式(6)より10g/m2目付あたりの値(kgf/15mm)として算出する。
10g/m2目付あたり乾燥強度(kgf/15mm)=DS/W×10 式(6)
本実施形態の多孔質シートは、目付10g/m2あたりの水系湿潤強度が0.3kg/15mm以上であることが好ましく、0.4kg/15mm以上がより好ましく、0.5kg/15mm以上がさらに好ましい。0.3kg/15mm以上の場合、水と接触する使用環境である水処理フィルターや細胞培養基材、全熱交換機用隔膜として多孔質シートを良好に使用できる。一方、本実施形態の多孔質シートの水系湿潤強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは目付10g/m2あたり例えば6.0kg/15mm以下である。
水系湿潤強度の測定方法としては、まず室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付(W)を上述の方法で測定する。次に、15mm幅に裁断し、15mm幅試験片中央50mmを水に10秒間浸漬させる。つづいて、卓上型横型引張試験機(例えば熊谷理機工業(株)製のNo.2000)を用いてチャック間距離100mm(濡れた50mmが中央になるように配置)、引張速度10mm/minで10点の引張強度を濡れた状態で測定し、その平均値を水系湿潤強度(WS)とする。この時、予め測定していた原紙の目付(W)を用いて下記式(7)より10g/m2目付あたりの値(kgf/15mm)として算出する。
10g/m2目付あたり水系湿潤強度(kgf/15mm)=WS/W×10 式(7)
本実施形態の多孔質シートは、目付10g/m2あたりの非水系湿潤強度が0.3kg/15mm以上であることが好ましく、0.4kg/15mm以上がより好ましく、0.5kg/15mm以上がさらに好ましい。0.3kg/15mm以上の場合、非水系液体と接触する使用環境であるろ過フィルターや樹脂複合フィルム作製の樹脂含浸工程において、シート破断が発生しにくいため、使用及び製造が容易である。一方、本実施形態の多孔質シートの非水系湿潤強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは目付10g/m2あたり例えば8.0kg/15mm以下である。なお、ここでいう非水系液体とはメチルセロソルブのことである。
非水系湿潤強度の測定方法としては、水系湿潤強度の測定方法の溶媒をメチルセロソルブに変更する以外は同じ方法を用いる。10点の引張強度の平均値を非水系湿潤強度(NWS)とし、10g/m2目付あたり非水系湿潤強度(kgf/15mm)は予め測定していた原紙の目付(W)を用いて下記式(8)より算出する。
10g/m2目付あたり非水系湿潤強度(kgf/15mm)=NWS/W×10 式(8)
本実施形態の多孔質シートの空孔率は20%以上90%以下であることが好ましい。空孔率が20%以上である場合、細孔が小さすぎず多孔質シートとして良好に機能し、フィルターや樹脂複合フィルムの芯材として好適に利用できる。一方、空孔率が90%以下である場合、シートとしての強度が良好に維持されており、フィルターや樹脂複合フィルムの芯材として好適に利用できる。
空隙率とは多孔質シート中における空隙の体積率を意味する。空隙率は、多孔質シートの面積、厚み及び質量から、下記式(9)によって求めることができる。
空隙率(体積%)={(1−B/(M×A×t)}×100 式(9)
ここで、Aは多孔質シート面積(cm2)、tは厚み(cm)、Bは多孔質シート質量(g)、Mはセルロースの密度(本実施形態では1.5g/cm3)とする。
本実施形態の多孔質シートの比表面積は、好ましくは1m2/g以上1000m2/g以下、より好ましくは3m2/g以上500m2/g以下、さらに好ましくは5m2/g以上100m2/g以下である。上記比表面積は、窒素ガス吸着法で測定したBET比表面積を意味する。多孔質シートの比表面積が1m2/g以上であれば、多孔質とみなすことができ、樹脂含浸フィルムや液体ろ過フィルター等に良好に利用可能である。一方、1000m2/g以下であれば、多孔質シートの製造が容易である。
本実施形態の多孔質シートは、揮発性有機溶剤(大気圧下での沸点が250℃未満)の多孔質シート重量に対する含有率が100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。揮発性有機溶剤の含有率が100ppm以下である多孔質シートを全熱交換機用隔膜に使用した場合、揮発性有機溶剤が悪臭として室内に放出されることを回避でき、好ましい。一方、含有率の下限値は特になく、含有率は小さいほど好ましい。揮発性有機溶剤の例としては特開2010−053461号公報に記載される多孔質微細セルロース繊維シート製造のために製法上添加される1−ヘキサノール等を挙げることができる。
本実施形態の多孔質積層シートは1層以上の基材シート層と1層以上の微細セルロース繊維層とを含み、典型的にはこれらから構成される。例えば、基材シート上に微細セルロース繊維層が配置された多孔質積層シート、微細セルロース繊維層が基材シートに挟まれた3層以上からなる多孔質積層シート、基材シートの両面に微細セルロース繊維層が配置された多孔質積層シートが挙げられる。多孔質積層シートによれば、多孔質シート目付が小さくても基材シートにより引張強度等が強化されて丈夫になり取扱い性が改善される。また、多孔質積層シート中に2層以上の基材シート層、或いは、2層以上の微細セルロース繊維層が含まれる場合には、2種類以上の基材シート層、或いは、2種類以上の微細セルロース繊維層で構成されていても良い。
本実施形態の基材シートの形態はシート状で有ればよく、織物、編物、長繊維不織布、短繊維不織布、微多孔膜等の形態が挙げられる。基材シートの厚みは1μm以上1000μm以下であることが好ましい。厚みの測定方法としては、多孔質積層シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、倍率250倍でSEM観察を3視野行う。つづいて、得られたそれぞれの断面SEM像の基材シートにおいて、基材シート表面(微細セルロース繊維との界面)から任意に3点選択する。それぞれの点を開始点として垂線を引き、基材シート下表面との交点を3箇所得た後、開始点と交点との距離を計測する。そして、合計9点の距離の平均値を基材シートの膜厚(μm)とする。
基材シートを構成する織物、編物、長繊維不織布、又は短繊維不織布の構成繊維としては特に限定されるものではないが、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、セルロース誘導体繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、これらの繊維の混紡糸等が挙げられる。また、これらの繊維は単独又は複数用いられても良い。これら繊維の数平均繊維径は、好ましくは0.1μm以上30μm以下、より好ましくは0.5μm以上25μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上20μm以下であり、上記数平均繊維径は、多孔質積層シートの強度改善と柔軟性維持、更には膜質均一性のために好ましい。数平均繊維径の測定としては、基材シートの電子顕微鏡写真(倍率1000倍)から、任意の10本の繊維を選択し、選択した繊維の直径を測定し、その数平均を求める。
微多孔膜としては特に限定されるものではないが、再生セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
本実施形態の多孔質積層シートは透気抵抗度が20000sec/100ml以下、好ましくは10000sec/100ml以下、より好ましくは7000sec/100ml以下である。該透気抵抗度が20000sec/100mlを超えるものは空孔率が低くなり、フィルターの本来の機能に乏しく好ましくない。また、シートの用途の観点から透気抵抗度は基本的には低い方が好ましいものの、ネットワークの微細性から透気抵抗度は1sec/100ml以上のものが製造容易であるため、好ましい下限は1sec/100mlである。
多孔質積層シートの透気抵抗度の測定方法は前記多孔質シートでの透気抵抗度の測定方法に準じる。
本実施形態の多孔質積層シートは、湿潤乾燥操作前後での多孔質保持性に優れる。具体的には湿潤乾燥操作前後での透気抵抗度の変化率が100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。全熱交換機は湿潤環境で使用されるため、結露と乾燥によって透気抵抗度が変化(典型的には上昇)する場合がある。したがって、上記変化率が100%を超えると全熱交換機用隔膜として用いた場合に熱交換効率の低下につながるため好ましくない。一方、変化率の下限値は特になく、変化率は小さいほど好ましい。
湿潤乾燥操作とは、静置した多孔質積層シートに対し水を均一に掛け、微細セルロース繊維層のシート水分率が300重量%以上400重量%以下になるようにした後、オーブンで乾燥する操作のことをいう。この操作前後で多孔質積層シートの透気抵抗度を測定し、その変化を透気抵抗度の変化率とする。なお、シート水分率は初期多孔質積層シート重量W4、湿潤後多孔質積層シート重量W5、微細セルロース繊維層推定初期重量W6を用い、下記式(10)より算出する。
シート水分率=(W5−W4)/W6×100 式(10)
W6は、後述する断面SEM観察より算出した微細セルロース繊維層厚み(D1、μm)が微細セルロース繊維目付に凡そ正比例することを利用し、下記式(11)より算出する。
微細セルロース繊維層推定初期重量W6(g)=
微細セルロース繊維層厚みD1(μm)×1(g/μm/m2) 式(11)
透気抵抗度変化率の測定方法は前記多孔質シートでの測定方法に準じる。
本実施形態の多孔質積層シートはシート目付が2g/m2以上1000g/m2以下、好ましくは2g/m2以上900g/m2以下、より好ましくは2g/m2以上800g/m2以下である。2g/m2未満であるとシート強度が弱く、良好な膜質均一性を得るのが困難となるため、好ましくない。また、1000g/m2を超えると多孔質積層シートに対する多孔質シートの割合が少なすぎるため、多孔質シートの特徴(例えば、比表面積の高さによる高吸着性能)を発揮できず、好ましくない。
測定方法は前記多孔質シートでの目付の測定方法に準じる。
本実施形態の多孔質積層シートは厚みが2μm以上1000μm以下、好ましくは2μm以上900μm以下、より好ましくは2μm以上800μm以下、さらに好ましくは2μm以上700μm以下である。2μmよりも薄いと多孔質積層シートをピンホール無く均一に製膜することが困難となる。一方、1000μmを超えると、樹脂複合フィルム作製時に基材シート層への樹脂含浸の時間が長大となるため連続生産する上で不利である他、乾燥ムラが発生しやすくなり、好ましくない。
厚みの測定方法としては、多孔質積層シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、倍率250倍でSEM観察を3視野行う。つづいて、得られたそれぞれの断面SEM像において、微細セルロース繊維層表面から任意に3点選択する。それぞれの点を開始点として垂線を引き、基材シート下表面との交点を3箇所得た後、開始点と交点との距離を計測する。そして、合計9点の距離の平均値を基材シートの膜厚(μm)とする。
本実施形態の多孔質積層シートにおける微細セルロース繊維層は前述の微細セルロース繊維で構成される。
本実施形態の多孔質積層シートにおける微細セルロース繊維層は厚みが1μm以上100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。1μmよりも薄いと微細セルロース繊維層をピンホール無く均一に製膜することが困難となる。一方、100μmを超えると、樹脂複合フィルム作製時に樹脂含浸の時間が長大となるため連続生産する上で好ましくない。
厚みの測定方法としては、多孔質積層シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、倍率1000倍でSEM観察を3視野行う。つづいて、得られたそれぞれの断面SEM像の微細セルロース繊維層において、層表面から任意に3点選択する。それぞれの点を開始点として垂線を引き層下表面(基材シートとの界面)との交点を3箇所得た後、開始点と交点との距離を計測する。そして、合計9点の距離の平均値を微細セルロース繊維層の膜厚(μm)とする。
本実施形態の多孔質積層シートにおける微細セルロース繊維層は、多孔質構造が均一である。具体的には、多孔質積層シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、微細セルロース繊維層のSEM観察を倍率5000倍で10視野行う。得られた10枚の断面SEM像より、それぞれ微細セルロース繊維層中央部の細孔の中で最も大きな長径を計測した後、10枚の平均値(平均最大長径)を算出する。この平均最大長径が小さいほど多孔質構造が均一であると見なすことができる。微細セルロース繊維層中央部とは、微細セルロース繊維層断面を厚み方向に4等分した時(外層部1−中央部1−中央部2−外層部2)、外層部1及び2を除いた部分を指す。4等分は微細セルロース繊維層左右端をそれぞれ4等分になるようマークし、お互いを結び、分割することで行う。例えば、微細セルロース繊維層厚みが20μmの場合、両面の外層部5μmを除いた10μmを微細セルロース繊維層中央部とする。本実施形態の多孔質積層シートの微細セルロース繊維層は平均最大長径が10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。平均最大長径が10μmを超えると、ろ過フィルターでの利用において粗大粒子の透過に繋がり、分画性能が下がるため好ましくない。
本実施形態の多孔質積層シートにおける微細セルロース繊維の重量比率は、0.1重量%以上50重量%以下が好ましく、0.5重量%以上50重量%以下がより好ましく、1重量%以上50重量%以下であることがさらに好ましい。50重量%以下であることで多孔質微細セルロース繊維層を含むシート全体強度が基材シートによる補強で効果的に改善される。一方、0.1重量%以上の場合、多孔質積層シートの特徴(例えば、比表面積の高さによる高吸着性能)が良好に維持される。
重量比率の測定方法としては、まず室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付(W)を前記の手法で測定する。つづいて、微細セルロース繊維推定目付W6(g/m2)を上述した断面SEM像から求めた微細セルロース繊維層厚み(D1、μm)を用いて算出する。そして、多孔質積層シートにおける微細セルロース繊維の重量比率(%)を下記式(12)より算出する。
多孔質積層シートにおける微細セルロース繊維の重量比率(%)= W6/W×100 式(12)
本実施形態の多孔質積層シートは基材シートと微細セルロース繊維層とが水中での接着性を有していることが好ましい。ここで、水中での接着性を有しているとは、5cm×5cmの多孔質積層シートを200mlのイオン交換水の入ったボトルに浸漬し、23℃にて200rpmで10分間振とう機で振とうした後にも、微細セルロース繊維層が基材シートから目視観察で剥離していないことを意味する。この操作後も剥離が生じていなければ、水と長時間接触する水系フィルター、細胞培養シート、又は高湿潤下での高い寸法安定性が要求される全熱交換器用隔膜等に多孔質積層シートを利用することが可能になるため、好ましい。
本実施形態の多孔質積層シートは、水系湿潤強度が0.5kg/15mm以上が好ましく、0.7kg/15mm以上であることがより好ましく、1.0kg/15mm以上であることがさらに好ましい。0.5kg/15mm以上の場合、水と接触する使用環境である水処理フィルターや細胞培養基材、全熱交換機用隔膜として多孔質積層シートを良好に使用できる。一方、本実施形態の多孔質積層シートの水系湿潤強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは例えば8.0kg/15mm以下である。
水系湿潤強度の測定方法としては、幅15mm×長さ200mmの試験片の長さ方向中央50mmの部分を水に10秒間浸漬させる。つづいて、卓上型横型引張試験機(例えば熊谷理機工業(株)製のNo.2000)を用いてチャック間距離100mm(濡れた50mmが中央になるように配置)、引張速度10mm/minで10点の引張強度を濡れた状態で測定し、その平均値を水系湿潤強度とする。なお、多孔質積層シートが破断しなくても、微細セルロース繊維層が破断或いは基材シートから剥離した時点でサンプル破断と見做し、その値を多孔質積層シートの水系湿潤強度とする。
本実施形態の多孔質積層シートは、非水系湿潤強度が0.7kg/15mm以上が好ましく、0.9kg/15mm以上であることがより好ましく、1.0kg/15mm以上であることがさらに好ましい。0.7kg/15mm以上の場合、非水系液体と接触する使用環境であるろ過フィルターや樹脂複合フィルム作製の樹脂含浸工程において、シート破断が発生しにくいため使用及び製造が容易である。一方、本実施形態の多孔質積層シートの非水系湿潤強度の上限値は特にないが、実現可能性の観点からは例えば10.0kg/15mm以下である。なお、ここでいう非水系液体とはメチルセロソルブのことをいう。
非水系湿潤強度の測定方法としては、前記水系湿潤強度の測定方法の溶媒をメチルセロソルブに変更する以外は同じ方法を用いる。なお、多孔質積層シートが破断しなくても、微細セルロース繊維層が破断或いは基材シートから剥離した時点でサンプル破断と見做し、その値を多孔質積層シートの非水系湿潤強度とする。
本実施形態の多孔質積層シートは、揮発性有機溶剤(大気圧下での沸点が250℃未満)の多孔質積層シート重量に対する含有率が100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。揮発性有機溶剤の含有率が100ppm以下である多孔質積層シートを全熱交換機用隔膜に使用した場合、揮発性有機溶剤が悪臭として室内に放出されることを回避でき、好ましい。一方、含有率の下限値は特になく、含有率は小さいほど好ましい。揮発性有機溶剤の例としては特開2010−053461号公報に記載される多孔質微細セルロース繊維シート製造のために製法上添加される1−ヘキサノール等を挙げることができる。
以下、本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの製造方法の例について説明するが、特にこの方法に限定されるものではない。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートはシート中に多孔質化剤を含んでいても良い。シート中に含まれる多孔質化剤は微細セルロース繊維重量の0.1重量%以上100重量%以下が好ましく、0.1重量%以上50重量%以下がより好ましく、0.1重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。
通常、水と微細セルロース繊維のみからなる微細セルロース繊維スラリーを抄紙、乾燥させると緻密膜が形成する。これに対し、多孔質化剤を含むスラリーを抄紙、乾燥すると多孔質シートとなる。また、乾燥後も多孔質化剤がシート中に残存するため、湿潤乾燥操作を行っても透気抵抗度の上昇を抑えることができる。多孔質化剤の量が0.1重量%以上の場合、多孔質化剤量が十分であり、所望の透気抵抗度を良好に達成できる。100重量%以下の場合、細孔が多孔質化剤で埋まることによる透気抵抗度の上昇を回避でき、また、液体状の多孔質化剤がシートから染み出さず連続生産において好ましい。
多孔質化剤としては、微細セルロース繊維シートを多孔質化できる種々の化合物を使用でき、具体的には1)大気圧下での沸点が250℃以上、好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上であって、2)水に溶解しない化合物が好ましい。シート製造の乾燥工程の温度は通常250℃未満であり、多孔質化剤の沸点が大気圧下で250℃以上であれば、乾燥工程で気化しにくいため、排気設備等の導入が不要となり、連続生産における負荷を軽減できる。一方、沸点の上限は特にないが、実現可能性の観点からは例えば400℃以下であってよい。
ここでいう「水に溶解しない」とは、固形分1重量%にした多孔質化剤の水分散体が23℃において白濁している、又は、水層と油層に分離することを意味する。具体的には100mlガラスバイアルにイオン交換水99g、多孔質化剤(固形分100重量%)1gを添加した後、50℃に温調しながらマグネチックスターラー750rpmで1時間撹拌した後、23℃まで降温して撹拌を止めた状態での濁度及び外観から判断する。まず、目視において2層に分離しているかを確認し、2層に分離していれば「水に溶解しない」と判断する。また、2層に分離していない場合は濁度計を用いて濁度を測定し、濁度が1NTU以上の場合を「水に溶解しない」と判断する。濁度は1NTU以上が好ましく、3NTU以上がより好ましく、5NTU以上がさらに好ましく、10NTU以上が極めて好ましい。濁度の測定方法としては、濁度計(例えばTN100(Eutech製))を用い、測定バイアルに泡が入らないように10ml入れて測定する。なお、多孔質化剤の固形分が100重量%未満の場合は、最終の水分散体が1重量%となるようにイオン交換水の添加量を調整する。
微細セルロース繊維スラリー中においては、多孔質化剤はスラリー中で溶解しないため油滴として存在し、その油滴の周りを微細セルロース繊維が覆っていると思われる。そして、抄紙時に一部又は全ての油滴がシート上に残存し多孔質化すると考えられる。したがって、水中で液滴として存在しうること、すなわち水に溶解しないことが多孔質化剤として望まれる。この液滴としてはリン脂質のような水中で自己集合してベシクル構造を形成し、白濁するような形態でも使用することができる。また、静置すると完全に相分離するような場合であっても、ミキサー等で強撹拌することで液滴として存在できるため使用できる。さらに、水に溶解しない疎水的な化合物を界面活性剤等で強制乳化させ、水中でも安定した液滴であっても使用できる。一方、多孔質化剤が水に完全に溶解した場合、抄紙時にほとんどの多孔質化剤はろ液として流出するため、多孔質化剤が微細セルロース繊維に留まらず、多孔質化剤として良好に機能しない。
多孔質化剤としては、前記の特徴を備えている種々の化合物を使用できるが、炭化水素基又はパーフルオロアルキル基又はオルガノシロキサン構造の3種類のうち1種類以上を化合物の骨格中に含んでいると好ましく、中でも炭化水素基を含む化合物は樹脂複合体を製造する上で樹脂との親和性に優れるためより好ましい。化合物中に上記3種類のうち1種類だけが含まれていてもよく、2種類以上が同時に含まれていても良い。また、化合物は低分子化合物でも高分子化合物でも良い。
上記の炭化水素基としては、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、炭素数が2〜40の基が好ましい。炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族基(直鎖状、分岐状若しくは脂環式)、芳香族基、又はこれらの組合せであってよい。
上記のパーフルオロアルキル基としては、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、炭素数が、1〜10、例えば1〜8、特に1〜6、特別には4又は6である基が好ましく、例えば、−CF3、−CF2CF3、−CFCFCF、−CF(CF32、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF32、−C(CF33、−(CF24CF3、−(CF22CF(CF32、−CF2C(CF33、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF25CF3、−(CF23CF(CF32、−(CF24CF(CF32、−(CF27CF3、−(CF25CF(CF32、−(CF26CF(CF32、−(CF29CF3等が挙げられる。
上記のオルガノシロキサン構造としては、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、平均組成が一般式(1):
1 aSiO(4-a)/2 (1)
[式中、R1は、分子中で同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基、炭素数1〜20の置換又は非置換の1価の炭化水素基、及び炭素数1〜20の置換又は非置換のアルコキシ基から選択され、aは、1.0〜3.0の自然数である。]
で表される構造が好ましい。
一般式(1)のR1は、水に対する溶解性が低くかつ樹脂との親和性に優れるという観点で、非置換の1価の炭化水素基であることが好ましいが、この場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピル等のアラルキル基をあげることができる。
1が、置換の1価の炭化水素基である場合の炭化水素の置換基の例としては、アミノ基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、ニトリル基、ポリオキシアルキレン基等をあげることができる。アルコキシ基としては、炭素数1〜3のメトキシ基、エトキシ基、プロピル基を挙げることができる。
一般式(1)のaは、ポリシロキサンのケイ素原子に結合するR1の平均数を示すもので、1.0〜3.0である。平均組成が一般式(1)で表されるオルガノシロキサン分子構造は直鎖のみならず、分岐する構造を有していても良いが、好ましくは、直鎖型の構造を有するものである。多孔質化剤がオルガノシロキサンである場合の好ましい具体例として、トリメチルシロキシ末端ジメチルシリコーン、ヒドロキシ末端ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシロキサンを挙げることができ、トリメチルシロキシ末端ジメチルシリコーン、及びヒドロキシ末端ジメチルシリコーンが好ましい。
本実施形態の多孔質化剤は前記炭化水素基、パーフルオロアルキル基、及び/又はオルガノシロキサン構造を含む、ビニル系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー及びスチレン系モノマーよりなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマー単位を含む高分子化合物であっても良く、高分子化合物骨格中に2種類以上のモノマー単位が同時に含まれていても良い。
炭化水素基を含むモノマーとして、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロデシルメチル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、芳香環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
パーフルオロアルキル基を含むモノマー及びオルガノシロキサン構造を含むモノマーとして、特に限定されないが、例えば、以下のものを例示できる。
CH2=CR'COOCH2CH2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH2CH3)CORf、
CH2=CR'COOCH(CH3)CH2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH3)SO2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH3)CORf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH3)SO2Rf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH3)CORf、
CH2=CR'COOCH2CH2N(CH2CH2CH3)SO2Rf、
CH2=CR'COOCH(CH2Cl)CH2OCH2CH2N(CH3)SO2Rf。
[上記式中、R'は、水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基であり、Rfは、前記パーフルオロアルキル基又は前記オルガノシロキサン構造である。]
本実施形態の多孔質化剤は前述の炭化水素基、パーフルオロアルキル基、及び/又はオルガノシロキサン構造を化合物中に1つ以上含む両親媒性化合物であっても良い。両親媒性化合物とは分子骨格中に疎水ブロックと親水ブロックを同時に含む化合物のことを言う。疎水ブロックに相当する部分としては前記の炭化水素基、パーフルオロアルキル基、オルガノシロキサン構造及びこれらを含む高分子構造が挙げられる。親水ブロックに相当する部分としては親水性官能基を含む構造や親水性高分子構造が挙げられる。
なお、両親媒性化合物が高分子の場合、重合形態は特に限定されるものではないが、例えばブロック共重合体、グラジエント共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、テーパード共重合体、周期共重合体が挙げられる。中でもブロック共重合体及びグラフト共重合体は水中で自己乳化し、白濁しやすいため好ましい。
上記の親水性官能基としては、特に限定されないが、水酸基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基或いは、−OM、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、または−M2PO4で表される基(Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)、1〜3級アミン及び4級アンモニウム塩(カウンターアニオンとして水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硝酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート等)等が挙げられる。本実施形態の多孔質化剤は分子骨格中にこれらの親水基を1つ以上含んでいて良く、また、2種類以上の異なる親水基を同時に含んでいても良い。
上記の親水性高分子構造として、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリビニルピリジン、セルロース、デキストラン、ポリアルキレンオキシド、ポリ(メチレンエーテル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)(メタ)アクリレート系モノマーの重合体等の重合体の構造が挙げられる。本実施形態の多孔質化剤は分子骨格中にこれらの親水性高分子構造を1つ以上含んでいて良く、また、2種類以上の異なる親水性高分子を同時に含んでいても良い。
(メタ)アクリレート系モノマーとして、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等のグリコールエーテル系(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルグリシジルエーテル、(メタ)アクリロイロキシエトキシエチルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、及びそれらイソシアネートのε−カプロラクトンやメチルエチルケトオキシム、ピラゾール等でイソシアネートをブロックしてあるモノマー等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレート;オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有環状(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート及びその4級アンモニウム型等が挙げられる。なお、上記における「ポリ」及び「(ポリ)」は、いずれもn=2以上を意味する。
本実施形態における炭化水素基を含む両親媒性化合物において、親水基としては大きく分けてイオン性基(アニオン性、カチオン性、両性)とノニオン性基の2種類が挙げられる。
アニオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば以下の化合物が挙げられる。
(1)直鎖状又は分岐鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(2)直鎖状又は分岐鎖状のアルカンスルホン酸塩。
(3)α−オレフィンスルホン酸塩。
(4)直鎖状又は分岐鎖状のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩。
(5)アルキレンオキシドが平均0.5〜10モル付加された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルエーテル硫酸塩又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を有するアルケニルエーテル硫酸塩;ただし、前記アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)とが混在したもの(モル比でEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)が挙げられる。
(6)アルキレンオキシドが平均3〜30モル付加された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルフェニルエーテル硫酸塩又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を有するアルケニルフェニルエーテル硫酸塩;ただし、前記アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はEOとPOとが混在したもの(モル比でEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)が挙げられる。
(7)アルキレンオキシドが平均0.5〜10モル付加された、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルエーテルカルボン酸塩又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を有するアルケニルエーテルカルボン酸塩;ただし、前記アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキシドのいずれか、又はEOとPOとが混在したもの(モル比でEO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)が挙げられる。
(8)直鎖状又は分岐鎖状のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
(9)飽和若しくは不飽和のα−スルホ脂肪酸塩又はそのメチル、エチル若しくはプロピルエステル塩。
(10)長鎖モノアルキルリン酸塩、長鎖ジアルキルリン酸塩又は長鎖セスキアルキルリン酸塩。
(11)ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンジアルキルリン酸塩又はポリオキシエチレンセスキアルキルリン酸塩。
(12)長鎖モノアルキルスルホン酸塩、長鎖ジアルキルスルホン塩又は長鎖セスキアルキルスルホン塩。
(13)直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有する脂肪酸及び塩。
(14)直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有する多価カルボン酸及び塩。
なお、カウンターカチオンとしてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アミン塩、アンモニウム塩等として用いることができる。なかでも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
カチオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば以下の化合物が挙げられる。
(1)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
(2)モノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
(3)トリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
ただし、上記の「長鎖アルキル」は炭素数5〜26、好ましくは8〜18のアルキル基を示す。
「短鎖アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル基に加えて、フェニル基、ベンジル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基等を包含するものとする。また、炭素原子間にエーテル結合を有していてもよい。具体的には、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基;ベンジル基;炭素数2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基;炭素数2〜4、好ましくは2〜3のポリオキシアルキレン基が好適なものとして挙げられる。
両性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば、イミダゾリン系、アミドベタイン系の化合物が挙げられる。具体的には、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びラウリン酸アミドプロピルベタインが好適なものとして挙げられる。
ノニオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物として、特に限定されないが、例えば、以下に示すものが挙げられる。
(1)炭素数6〜22、好ましくは炭素数8〜18の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドが平均1〜30モル、好ましくは5〜20モル付加された、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル。この中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテルが好適なものとして挙げられる。
ここで使用される脂肪族アルコールとしては、第1級アルコール、及び第2級アルコールが挙げられ、第1級アルコールが好ましい。また、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
(2)ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル。
(3)長鎖脂肪酸アルキルエステルのエステル結合間にアルキレンオキシドが付加された、例えば下記一般式(2)で表される脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート。
1CO(OA)qOR2 ・・・(2)
[式中、R1COは、炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪酸残基を示し;OAは、炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)の付加単位を示し;qはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、一般に3〜30、好ましくは5〜20の数である。R2は、炭素数1〜3の置換基を有していてもよい、炭素数1〜4の低級アルキル基を示す。]
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。
(5)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル。
(6)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル。
(7)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油。
(8)グリセリン脂肪酸エステル。
(9)下記一般式(3)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド
3a−A−〔(R3bO)p−R3c〕q (3)
[式中、R3aは、炭素数6以上18以下、好ましくは炭素数8以上16以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基を示し、R3cは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子を示し、pはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって、好ましくは2以上100以下、より好ましくは5以上80以下、更に好ましくは5以上60以下、より更に好ましくは10以上60以下の数を示し、Aは−CONH−、−NH−、−CON<、又は−N<を示し、Aが−CONH−又は−NH−の場合qは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合qは2である。]
(10)1つ以上の水酸基を有する1価アルコール又は多価アルコール
ノニオン性基及び炭化水素基を有する両親媒性化合物については、HLBが12未満であると水への溶解性が下がり、多孔質化剤として好適である。なお、上記の「HLB」とは、Griffinの方法により求められた値である(吉田、進藤、大垣、山中共編、「新版界面活性剤ハンドブック」,工業図書株式会社,1991年,第234頁参照)。
パーフルオロアルキル基を含む両親媒性化合物としては、特に限定されないが、例えば、親水基がアニオン性又はノニオン性の化合物が挙げられる。
アニオン性親水性基及びパーフルオロアルキル基を含む両親媒性化合物としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性親水性基及びパーフルオロアルキル基を含む両親媒性化合物としては、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート等を挙げることができる。
具体例として、LE−604、LE−605、LINC−151−EPA(共栄社化学社製)、メガファック(登録商標)F171、172、173、F444、F477(DIC社製)、フロラード(登録商標)FC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG(登録商標)710、サーフロン(登録商標)S−382、SC−101、102、103、104、105(旭硝子社製)等を挙げることができる。
オルガノシロキサン構造を含む両親媒性化合物としては、特に限定されないが、オルガノシロキサンの末端或いは分子鎖中に親水基を導入したものが挙げられる。例えば、ポリオキシエチレン変性オルガノシロキサン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性オルガノシロキサン、ポリオキシエチレンソルビタン変性オルガノシロキサン、ポリオキシエチレングリセリル変性オルガノシロキサン等の親水基で変性されたオルガノシロキサン等が挙げられる。
具体例として、DBE−712、DBE−821(アヅマックス社製)、KF−6011、KF−6012、KF−6013、KF−6014、KF−6015、KF−6016、KF−6100(信越化学工業社製)、ABIL−EM97(ゴールドシュミット社製)、ポリフローKL−100、ポリフローKL−401、ポリフローKL−402、ポリフローKL−700(共栄社化学製)等を挙げることができる。
本実施形態における多孔質化剤としては、前述の、1)大気圧下での沸点が250℃以上であって、2)水に溶解しないという特性を有する紙用嵩高剤も用いることができる。例えば高級アルコールのアルキレンオキシド付加物(国際公開第WO98/03730号に記載)、多価アルコールが油脂、糖アルコール、糖等である多価アルコール型非イオン性界面活性剤(特開平11−200283号公報に記載)、脂肪酸のアルキレンオキシド付加物(特開平11−200284号公報に記載)、カチオン性化合物、アミン、アミンの酸塩(特開平11−269799号公報、特開2001-355197号公報に記載)、両性化合物(特開平11−269799号公報に記載)、多価アルコール脂肪酸エステル(特許第2971447号、特開平11−350380号公報に記載)、(A)オルガノシロキサン、(B)グリセリルエーテル、(C)アミド、(D)アミン、(E)アミン酸塩、(F)4級アンモニウム塩、(G)イミダゾール、(H)多価アルコールと脂肪酸のエステル、及び(I)多価アルコールと脂肪酸のエステル(特許第3283248号、特開2003-105685号公報等)、脂肪族カルボン酸とポリアミンとを反応させて得られるアミド化合物を尿素で架橋し、その後、アルキル化剤を反応させて得られる化合物、若しくは前記アミド化合物にアルキル化剤を反応させ、その後、尿素で架橋して得られる化合物(特開2005−60891号公報に記載)等が挙げられる。
本実施形態における多孔質化剤は単独でも、或いは、2種類以上を混合して使用しても良い。さらに、周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等により乳化分散されても良い。
本実施形態における多孔質化剤の融点は特に限定はされないが、50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下であると、スラリー添加時に温和な加温で液体として扱えるため、製造上好適である。融点とは、JIS K 0064−1992「化学製品の融点及び溶融範囲測定方法」に記載されている融点測定法によって測定された値である。
多孔質シート及び多孔質積層シート中に多孔質化剤、より具体的には炭化水素基、パーフルオロアルキル基、及び/又はオルガノシロキサン構造が含まれていることは、シートそのものを固体NMRやFT−IR等の分光法や熱分解GC−MSやTOF−SIMSのような質量分析法により直接的分析する方法で確認できる。また、アセトンやジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の溶剤で多孔質シート及び多孔質積層シートを洗浄し、洗浄液中に溶出した多孔質化剤を溶液NMR、FT−IR、LC−MS、GC−MS等で分析することもできる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層は、微細セルロース繊維に加えてバインダーを含んでもよい。バインダーとしての効果に優れる点でポリウレタンが好適である。
ポリウレタンはポリイソシアネート化合物を主剤とし、ポリオール化合物等の活性水素を有する化合物(活性水素化合物)を硬化剤とした樹脂である。
ポリイソシアネート化合物は少なくとも2個以上のイソシアネート基を含有するものであれば特に制限されない。ポリイソシアネートの基本骨格としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、ポリイソシアネート誘導体等が挙げられる。中でも、黄変性が少ないという観点から脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートがより好ましい。
芳香族ポリイソシアネートの原料としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、粗製MDI、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの原料としては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記のポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体、5量体、7量体等)の他に、ポリイソシアネートを活性水素含有化合物の1種類又は2種類以上と反応させて得られた化合物が挙げられる。その化合物はアロファネート変性体(例えば、ポリイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体等)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネートとアルコール類との反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)等)、ビウレット変性体(例えば、ポリイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体等)、ウレア変性体(例えば、ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体等)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン等)、カルボジイミド変性体(ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体等)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体等が挙げられる。
活性水素含有化合物として、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを含む1〜6価の水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。また、空気中或いは反応場に存在する水や二酸化炭素等も含まれる。
1〜6価のアルコール(ポリオール)としては、例えば、非重合ポリオールと重合ポリオールがある。非重合ポリオールとは重合を履歴しないポリオールであり、重合ポリオールはモノマーを重合して得られるポリオールである。
非重合ポリオールとしてはモノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等が挙げられる。モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i―ブタノール、s−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−ノナノール、2−エチルブタノール、2,2−ジメチルヘキサノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。また、テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
重合ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオールや、多価アルコールを用いてε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属シアン化合物錯体等を使用して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム或いはブロック付加して得られるポリエーテルポリオール類や、エチレンジアミン類等のポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類が挙げられる。これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等も挙げられる。
前記多価アルコール化合物としては、
1)例えばジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、
2)例えばエリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、
3)例えばアラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
4)例えばトレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、
5)例えばラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、
6)例えばスタキオース等の四糖類、
等がある。
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル等、グリセリンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル等、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル等の群から選ばれた単独又は混合物を必須成分とし、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独又は混合物の存在下、又は非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。更に、炭素数50以下のモノアルコール化合物である、イソブタノール、n−ブタノール、2エチルヘキサノール等を併用することができる。
アミノ基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミン及びアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数2〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等)及びジシアンジアミド等が挙げられる。
チオール基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エチルチオール等のアルキルチオール、フェニルチオール及びベンジルチオール)及び多価のチオール化合物(エチレンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
カルボキシル基含有化合物としては、例えば、1価のカルボン酸化合物(酢酸等のアルキルカルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸)及び多価のカルボン酸化合物(シュウ酸やマロン酸等のアルキルジカルボン酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等)等が挙げられる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートは、それぞれ、ポリウレタン固形分重量比率が微細セルロース繊維重量100重量%に対して、好ましくは0.5重量%以上100重量%以下、より好ましくは1重量%以上70重量%以下、より好ましくは1重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは1重量%以上30重量%以下である。微細セルロース繊維は比表面積が大きい為、上記重量比率が0.5重量%未満では繊維表面を全面ポリウレタンで被覆することが容易ではなく、水系湿潤強度又は非水系湿潤強度が低くなる傾向がある。一方、100重量%以下であれば、微細セルロース繊維の周りが過剰にポリウレタンで被覆されることを防止し、高い耐熱性や加飾性等のセルロースが本来持つ性質を良好に維持できる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートにおいては、シート中の微細セルロース繊維とポリウレタンとが化学的に結合されていることが好ましい。化学的な結合とは共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合等であって、特に限定されるものではないが、共有結合が好ましい。例えば、微細セルロース繊維表面に多数存在する水酸基との反応によるウレタン結合や微量に存在するカルボキシル基との反応によるアミド尿素結合等が挙げられる。さらに、前記の化学修飾セルロース繊維についても活性水素を有する官能基が繊維表面に存在すれば共有結合を形成可能である。活性水素を有する官能基としては、例えば水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等が挙げられる。化学的な結合が微細セルロース繊維に対し3次元で形成されることでシートの乾燥強力、水系湿潤強度及び非水系湿潤強度が向上する。
化学的な結合が形成されていることは、固体NMRやFT−IR、X線光電子分光法等の分光法やTOF−SIMSのような質量分析法により直接的に確認できる。また、アセトンやジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の溶剤で多孔質シートを洗浄し、洗浄液中にポリウレタンが溶出していないことで化学的な結合が形成されていると間接的に見做すこともできる。ポリウレタンの溶出による分析方法には、燃焼イオンクロマトグラフ法や、溶液NMR、ICP、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、質量分析、FT−IR、CHN分析等を選択すればよい。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートがポリウレタンを含む場合、当該ポリウレタンの分布状態は特に限定されないが、ポリウレタンが多孔質シート中又は多孔質積層シートの微細セルロース繊維層中に均一に分布していることが好ましい。ポリウレタンが均一に分布することでシートの水系湿潤強度及び非水系湿潤強度が均一になるため、樹脂含浸による複合フィルムを連続製造する際に、シート破断の回数を減らすことができる。なお、多孔質シート及び微細セルロース繊維層において、ポリウレタンが均一に分布しているとは、ポリウレタンがシート内で平面方向及び厚み方向の両者で均一に分布していることを意味する。
具体的には、シート平面方向でのポリウレタンの分布の均一性は、多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層の任意の点でのポリウレタン量(P1)とセルロース量(C1)の比(P1/C1)が一定であることをいう。ここで、一定とは、20cm×20cmのシートで任意の4か所におけるP1/C1のバラツキが50%以下の変動係数であることをいう。
シート厚み方向でのポリウレタンの分布の均一性は、多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層を厚み方向に3等分したときの上部、中部及び下部のポリウレタン量とセルロース量との比が同じであることをいう。ここで、同じとは、20cm×20cmのシートで任意の4か所における上部のP1/C1の平均、中部のP1/C1の平均、下部のP1/C1の平均を算出したときに、これら3つの平均値の間でのバラツキが50%以下の変動係数であることをいう。
シート平面方向及びシート厚み方向でのポリウレタンの分布において、上記変動係数はそれぞれ50%以下であることが好ましい。変動係数が50%超の場合、同量のポリウレタンを均一に含むシートと比べ、水系湿潤強力、及び非水系湿潤強力が低い傾向がある。なお、変動係数とは相対的なばらつきを表す値であり、下記式(13)より算出できる。
変動係数(CV)=(標準偏差/相加平均)×100 (13)
ポリウレタン量とセルロース量の比は、例えば国際公開第WO2015/008868号に記載のスパッタエッチングを伴うTOF−SIMSによる3次元組成分析から求められる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シート中のポリウレタンはブロックポリイソシアネートを原料としても良い。ブロックポリイソシアネートとは、(1)ポリイソシアネート及びポリイソシアネート誘導体等のポリイソシアネート化合物を基本骨格とする、(2)ブロック剤によってイソシアネート基がブロックされている、(3)常温では活性水素を有する官能基とは反応しない、(4)解離温度以上の熱処理により、ブロック基が脱離し活性なイソシアネート基が再生され、活性水素を有する官能基と反応し結合を形成する。
ブロック基を有さない通常のイソシアネート化合物は、水と容易に反応するため抄紙スラリー中に添加することはできない。しかしながら、ブロックポリイソシアネートは、抄紙スラリー中で水と反応しないため抄紙スラリーに添加することが可能である。さらに、ブロック剤の解離温度未満で湿紙を乾燥することで、イソシアネート化合物の湿紙中の水との反応を防ぐことができる。そして、最終的に乾燥したシートをブロック剤の解離温度以上で熱処理することで、ブロックポリイソシアネートは自身の硬化と共に、微細セルロース繊維や多孔質積層シートの基材シート表面に存在する活性水素を有する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等)と効果的に共有結合を形成する。
ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものである。このブロック基は常温において安定であるが、熱処理温度(通常約100〜約250℃)に加熱した際、ブロック剤が脱離し遊離イソシアネート基を再生しうるものである。
このような要件を満たすブロック剤としては、以下のものを例示できる。
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類、
(2)アルキルフェノール系:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、
(3)フェノール系:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
(4)活性メチレン系:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系:アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系:イミダゾール、2−メチルイミダゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等、
(9)尿素系:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等、
これらのブロック剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本実施形態のブロックポリイソシアネートは微細セルロース繊維スラリー中に均一に混合して使用するため、それ自身が水分散体として安定した形態であり、かつ、微細セルロース繊維等との混合時も安定していることが好ましい。ブロックポリイソシアネート水分散体は、ブロックポリイソシアネートに親水性化合物を直接結合させ乳化させた化合物(自己乳化型)であっても、界面活性剤等で強制乳化させた化合物(強制乳化型)であってもよい。それぞれの方法で得られたエマルジョンは、どちらも表面にアニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれかの親水基が露出している。
自己乳化型ブロックポリイソシアネートはブロックポリイソシアネート骨格にアニオン性基又はノニオン性基又はカチオン性基を有する活性水素基含有化合物を結合させたものである。
アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。より具体的には、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸等のジヒドロキシルカルボン酸、例えば、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸等のジアミノカルボン酸、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸及び/又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等を挙げることができる。
また、スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
また、リン酸基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート等を挙げることができる。
また、ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、N−メチルジエタノールアミン等の3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物等を挙げることができる。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させることによってアルキレンオキシド変性体としてもよい。
また、これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
ノニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ノニオン性基として通常のアルコキシ基を含有しているポリアルキレンエーテルポリオール等が使用される。通常のノニオン性基含有ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等も使用される。
高分子ポリオールとしては、数平均分子量500〜10,000、特に500〜5,000のものが好ましく使用される。
カチオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではないが、ヒドロキシル基又は1級アミノ基のような活性水素含有基と3級アミノ基を有する脂肪族化合物、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン等が挙げられる。また、3級アミンを有するN,N,N−トリメチロールアミン、N,N,N−トリエタノールアミンを使用することもできる。なかでも、3級アミノ基を有し、かつイソシアネート基と反応性のある活性水素を2個以上含有するポリヒドロキシ化合物が好ましい。
また、これらカチオン性基を有する活性水素基含有化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加させることによってアルキレンオキシド変性体としてもよい。また、これらカチオン性基を有する活性水素基含有化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
カチオン性基はアニオン性基を有する化合物で中和することで、塩の形で水中に分散せやすくすることもできる。アニオン性基とは、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が、スルホン基を有する化合物としては、例えば、エタンスルホン酸等が、隣酸基を有する化合物としては、例えば隣酸、酸性隣酸エステル等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物が好ましく、更に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸である。中和する場合のブロックポリイソシアネートに導入されたカチオン性基:アニオン性基の当量比率は1:0.5〜1:3であり、好ましくは1:1〜1:1.5である。また、導入された三級アミノ基は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。
本実施形態でブロックポリイソシアネートと上記親水基導入を目的とした活性水素基含有化合物とを反応させる際の比率は、イソシアネート基/活性水素基の当量比が好ましくは1.05〜1000、より好ましくは2〜200、さらに好ましくは4〜100の範囲である。当量比が1.05以上である場合、親水性ポリイソシアネート中のイソシアネート基含有率が低くなり過ぎないため、ブロックポリイソシアネートの硬化速度が良好であるとともに硬化物の脆弱化が起きにくく、加えて微細セルロース繊維との架橋点が少なくなり過ぎず、多孔質シート及び多孔質積層シートの水系湿潤強度及び非水系湿潤強度が良好である。当量比が1000以下である場合、界面張力を下げる効果が大きく、親水性が良好に発現される。なお、本実施形態で1分子中にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物とを反応させる方法としては、両者を混合させて、通常のウレタン化反応を行う方法を例示できる。
強制乳化型ブロックポリイソシアネートは、周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等によりブロックポリイソシアネートが乳化分散された化合物である。中でもアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤はコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルカルボン酸塩系化合物、アルキルサルフェート系化合物、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、1級〜3級アミン、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらの乳化剤を使用する場合の使用量は、特に制限を受けず任意の量を使用することができるが、ブロックポリイソシアネートの質量を1としたときの質量比で、0.01以上である場合、良好な分散性が得られ、0.3以下である場合、耐水性、機能化剤固定性等の物性を良好に維持できるため、0.01〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。
なお、上記ブロックポリイソシアネート水分散体は、自己乳化型及び強制乳化型ともに水以外の溶剤を好ましくは20重量%まで含むことができる。この場合の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等を挙げることができる。これら溶剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、23℃での水への溶解度が5重量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
上記、ブロックポリイソシアネート水分散体の平均分散粒子径は1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは10〜200nmである。
上記ブロックポリイソシアネート水分散体の表面はアニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれであってもよいが、より好ましくはカチオン性である。その理由は、抄紙スラリーを製造する段階で、希薄な微細セルロース繊維スラリー(固形分濃度0.01〜0.5重量%)中でブロックポリイソシアネート水分散体(固形分濃度0.0001〜0.5重量%)を効果的に微細セルロース繊維に吸着させるうえで、静電相互作用を利用することが有効であるからである。一般的なセルロース繊維表面はアニオン性(蒸留水中ゼータ電位−30〜−20mV)であることが知られている(非特許文献1 J.Brandrup(editor) and E.H.Immergut(editor)“Polymer Handbook 3rd edition”V−153〜V−155参照)。したがって、ブロックポリイソシアネート水分散体表面はカチオン性であることがより好ましい。ただし、ノニオン性であってもエマルジョンの親水基のポリマー鎖長や剛直性等によっては十分に微細セルロース繊維に吸着させることは可能である。さらに、アニオン性のような静電反発により吸着がより困難な場合であっても、一般的に周知なカチオン性吸着助剤を用いることで、微細セルロース繊維上に吸着させることができる。カチオン性吸着助剤として、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基、ピリジニウム、イミダゾリウム、及び四級化ピロリドンを有するポリマーが挙げられ、具体的にはカチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミン、キトサン等の水溶性のカチオン性ポリマー等が挙げられる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層がポリウレタンを含む場合、水系湿潤強度及び非水系湿潤強度が強化され、水中及び有機溶剤中でのシートの使用がより容易になる。さらに、本実施形態において多孔質化剤とポリウレタンとを併用する場合、湿潤乾燥操作を行っても多孔質が良好に保持される。ポリウレタン単独使用では、水系湿潤強度及び非水系湿潤強度は強化されるが、湿潤乾燥操作での多孔質の保持が困難である傾向があるが、多孔質化剤をさらに用いることでこれらの両立が容易になる。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの微細セルロース繊維層は、それぞれ、無機粒子、高分子粒子、無機繊維及び高分子繊維からなる群から選択される1種以上のフィラー材を含んでも良い。
無機粒子としては特に限定されないが、例えば金、銀、銅、鉄、亜鉛、錫、ニッケル、チタンや各種合金(例えばステンレス)等の化学的に安定な金属粒子、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化銅、酸化銀、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子、チタン酸バリウム等の複合金属酸化物粒子、窒化アルミニウム等の金属窒化物粒子、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、ゼオライト、マイカ、スメクタイト等のシリカ系粒子、活性炭やグラファイト、カーボンナノチューブ等の炭素系粒子を挙げることができる。
高分子粒子としては特に限定されないが、例えばスチレン−ブタジエン系(SB)ラテックス、アクリル系ラテックス、各種ゴム系ラテックス、ポリ塩化ビニリデン系ラテックス、ウレタン系ラテックスをはじめとする各種ラテックスの他に、ポリオレフィン系粒子、ポリメチルメタクリレート系粒子、ポリアミド系粒子、ポリエステル系粒子、全芳香族ポリアミド系粒子、ポリイミド系粒子、ポリカーボネート系粒子、結晶セルロースのようなセルロース系粒子、ポリアセタール系粒子等を挙げることができる。
無機繊維としては特に限定されないが、例えば後述する分散媒体に溶解しない繊維であって、ガラス繊維、金属繊維や高分子繊維を焼成、炭化させて得られるカーボンナノチューブなどの炭素系繊維を挙げることができる。
高分子繊維としては特に限定されないが、例えば各種合繊(ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリケトン、全芳香族ポリアミド、ポリイミド等)、天然繊維(綿、絹、羊毛等)、或いは再生セルロース繊維を叩解、或いは高圧ホモジナイザー等による微細化処理により高度にフィブリル化させた微細繊維、各種ポリマーを原料としてエレクトロスピニング法によって得られる微細繊維、各種ポリマーを原料としてメルトブロウン法によって得られる微細繊維等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの中でも、特に全芳香族ポリアミドであるアラミド繊維を高圧ホモジナイザーにより微細化した微小繊維状アラミド、ティアラ(登録商標)(ダイセル化学工業(株)製)は、平均繊維径0.2〜0.3μm、平均繊維長500〜600μmとされ、アラミド繊維の高耐熱性、高い化学的安定性により繊維状フィラーとして好適に使用することができる。
本実施形態の多孔質シート中に含まれるフィラー材は多孔質シート重量の1重量%以上50重量%以下が好ましく、1重量%以上30重量%以下がより好ましく、1重量%以上10重量%以下がさらに好ましい。
本実施形態の多孔質積層シート中に含まれるフィラー材は多孔質積層シート重量の0.1重量%以上50重量%以下が好ましく、0.1重量%以上30重量%以下がより好ましく、0.1重量%以上10重量%以下がさらに好ましい。
また、多孔質積層シート中の微細セルロース繊維層に含まれるフィラー材は、微細セルロース繊維の体積100体積%に対して1体積%以上100体積%以下が好ましく、1体積%以上50体積%以下がより好ましく、1体積%以上20体積%以下がさらに好ましい。
微細セルロース繊維とフィラー材とは断面SEM観察において電子密度差に起因したコントラストにより見分けることができる。これを利用し、具体的には、多孔質積層シートの断面SEM観察用サンプルを作製し、微細セルロース繊維層のSEM観察を倍率5000倍で3視野行う。得られた断面SEM像の画像解析により、微細セルロース繊維とフィラー材のそれぞれの面積(A1、A2、μm2)を求め、下式(14)より微細セルロース繊維に対するフィラー材の体積比率を算出し、3視野の平均を採用する。
微細セルロース繊維に対するフィラー材の体積比率(%)=A2/A1×100 (14)
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートは、填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤など公知の抄紙用材料を、本実施形態の目的とする効果を損なわない範囲で適宜使用することが可能である。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートの製造方法としては、抄紙法及び塗工法が好ましい。抄紙法は、典型的には、(1)セルロース繊維の微細化による微細セルロース繊維製造工程、(2)該微細セルロース繊維を含む抄紙スラリーの調製工程、(3)該抄紙スラリーをろ過(すなわち脱水)して湿紙を形成する抄紙工程、及び(4)該湿紙を乾燥し乾燥シートを得る乾燥工程を含む。また、塗工法は、典型的には、上記(1)及び(2)と同様の工程により塗工スラリーを調製する工程、(3)該塗工スラリーを支持体に塗工して塗工フィルムを形成する塗工工程、及び(4)該塗工フィルムを乾燥させる乾燥工程を含む。塗工法は、本実施形態の多孔質積層シートを製造するのにも有用である。この場合、基材シートを上記支持体として用いてよい。以下に本実施形態の微細セルロース繊維を含む抄紙スラリー又は塗工スラリーの調製方法、及び抄紙法による多孔質シート及び多孔質積層シートの形成方法について説明する。
本実施形態は、本開示の多孔質シートの製造方法であって、多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、該スラリーを抄紙法により脱水することによって湿紙を形成する製膜工程、及び、該湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質シートを得る多孔質シート形成工程、を含む、方法を提供する。
本実施形態はまた、本開示の多孔質積層シートの製造方法であって、多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、該スラリーを、基材シート上で抄紙法により脱水することによって多層湿紙を形成する製膜工程、及び、該多層湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質積層シートを得る多孔質積層シート形成工程、を含む、方法を提供する。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートを構成する微細セルロース繊維としては、1)バクテリア類の産生する微細セルロース繊維、2)エレクトロスピニング法により得られた再生セルロース又はセルロース誘導体の微細セルロース繊維、3)セルロースミクロフィブリルの集束体である天然セルロース繊維又は再生セルロース繊維又はセルロース誘導体繊維を微細化処理することで得られるミクロフィブリル化セルロース、等を使用できる。コストや品質管理の面からミクロフィブリル化セルロースが好ましい。
ミクロフィブリル化セルロースの原料として、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロース等)、高等植物由来のセルロース繊維、再生セルロース繊維、化学的に合成されたセルロース誘導体繊維が挙げられる。
高等植物由来のセルロース繊維として、例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹等の木材パルプ等)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポック等)、ジン皮繊維(例えば、麻、ケナフ、コウゾ、ミツマタ等)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻、アバカ麻等)等が挙げられる。これらの原料は蒸解処理による脱リグニン等の精製工程や漂白工程を経て、精製パルプとして提供されるが、目的に応じてパルプ中の残存リグニン量及びヘミセルロース量は変えることができる。
再生セルロース繊維として、例えば、レーヨン、キュプラ、リヨセル、テンセル等が挙げられる。
セルロース誘導体繊維として、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステル;硝酸酢酸セルロース等の混酸エステル;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロースが挙げられる。
これらの繊維は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本実施形態のミクロフィブリル化セルロースは、セルロース繊維原料前処理工程、叩解処理工程及び微細化工程を経ることが好ましい。前処理工程においては、100〜150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、化学処理、酵素処理等、又はこれらの組み合わせによって、セルロース繊維原料を微細化し易い状態にしておくことを目的とする。
化学処理はアニオン基又はカチオン基をミクロフィブリルに導入する手法である。これらの官能基の存在により、静電反発及び浸透圧効果が発現し、高圧ホモジナイザーのような高エネルギーを要する微細化装置を使用することなく、少ないエネルギーで微細セルロース繊維を得ることができる。
アニオン化剤としては、複数のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその無水物、或いはそれらの塩、リン原子を含むオキソ酸又はその塩、オゾン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル等が挙げられる。
カチオン化剤としては、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライド又はそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
酵素処理は、セルラーゼ等によって主にアモルファス部のセルロースを分解する処理である。
これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロース等の不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、多孔質シート及び多孔質積層シートの耐熱性の向上に有効である。
叩解処理工程においては、原料パルプを好ましくは0.5重量%以上4重量%以下、より好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば、0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
微細セルロース繊維の製造には、上述した叩解工程に引き続き、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等による微細化処理を施すことが好ましい。この際の水分散体中の固形分濃度は、上述した叩解処理に準じ、好ましくは0.5重量%以上4重量%以下、より好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下である。この範囲の固形分濃度の場合、詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモジナイザー等を挙げることができる。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシンのアルティマイザー等の高圧衝突型の微細化処理機を挙げることができる。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができる。なお、これらの以外の装置であっても、ほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば使用しても構わない。
微細セルロース繊維の繊維径は、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件(装置の選定や操作圧力及びパス回数)又は該微細化処理前の前処理の条件(例えば、オートクレーブ処理、化学処理、酵素処理、叩解処理等)によって制御することができる。
なお、本実施形態では、上記の原料の異なる微細セルロース繊維や微細化度の異なる微細セルロース繊維、表面を化学処理された微細セルロース繊維を2種類以上、任意の割合で混合して用いても良い。
本実施形態の抄紙スラリー調製工程において、スラリーに含まれる微細セルロース繊維は抄紙スラリー重量の0.01重量%以上0.5重量%以下が好ましく、0.01重量%以上0.35重量%以下がより好ましい。0.01重量%以上である場合、濾水時間が長くなりすぎず、生産性が良好であると同時に、膜質均一性が良好でありめ好ましい。また、0.5重量%以下である場合、分散液の粘度が上がり過ぎないため、均一に製膜することが容易であり好ましい。
また、塗工スラリー調整工程においては、水の組成は80重量%以上99.8重量%以下が好ましく、85重量%以上99.5重量%以下がより好ましく、90重量%以上99重量%以下がさらに好ましい。
抄紙スラリー調整工程において、添加する多孔質化剤はスラリー重量の0.0001重量%以上0.5重量%以下が好ましく、0.0001重量%以上0.3重量%以下がより好ましい。0.0001重量%以上の場合、多孔質化剤がその種類にもよるが概ね良好な溶解度を有することができるため、多孔質化の効果が大きい。0.5重量%以下の場合はスラリー粘度が上昇しすぎず、撹拌による泡の生成が抑えられ、均質な製膜が容易になる。
また、塗工スラリー調製工程においては、添加する多孔質化剤量はスラリー重量の0.001重量%以上0.5重量%以下が好ましく、0.001重量%以上0.3重量%以下がより好ましい。
多孔質化剤をスラリー中に均一に分散するための混合装置として、アジテーター、ホモミキサー、パイプラインミキサー、ブレンダーのようなカッティング機能をもつ羽根を高速回転させるタイプの分散機や高圧ホモジナイザー等が挙げられる。泡が生成せずに、微細セルロース繊維と多孔質化剤が均一に分散する限りにおいて撹拌装置は特に限定されない。特に、多孔質化剤が水中で自己乳化する場合、或いは既に乳化されている場合はアジテーターのような低せん断な撹拌装置でも構わない。一方、多孔質化剤が水中で相分離し、乳化しない場合はホモミキサーや高圧ホモジナイザーのような強せん断な混合手法がより好ましい。
抄紙スラリー又は塗工スラリーには、シートの水系湿潤強度、非水系湿潤強度の向上を目的として、水分散性ブロックポリイソシアネートも添加しても良い。さらに、多孔質化剤及びブロックポリイソシアネート以外に前記公知の抄紙用材料を、本実施形態の目的とする効果を損なわない範囲で適宜使用することが可能であり、抄紙スラリー中の0.0001重量%以上0.5重量%以下の範囲で任意に変えることができる。
なお、多孔質化剤及びブロックポリイソシアネート等の他の添加物の添加の順序は本実施形態の目的とする効果を損なわない限りにおいて、特に限定されるものではない。
本実施形態の抄紙工程においては、抄紙スラリーを通水性の基材上でろ過することにより湿紙を形成する。
この抄紙工程では、抄紙スラリーから水を脱水し、微細セルロース繊維が留まるようなフィルターや濾布(製紙の技術領域ではワイヤーとも呼ばれる)を使用する操作であればどのような装置を用いてもよい。
抄紙機としては、傾斜ワイヤー式抄紙機、長網式抄紙機、円網式抄紙機のような装置を用いると好適に欠陥の少ない多孔質シートを得ることができる。抄紙機は連続式であってもバッチ式であっても目的に応じて使い分ければよい。
本実施形態の塗工工程においては、スプレーコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、含浸コーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター等を用い、調製した塗工スラリーを通水性の基材上或いは無孔質フィルム上に塗工して良い。通水性基材を用いた場合は後述する脱水及びそれに続く乾燥を行い、無孔質フィルムの場合は直接加熱乾燥を行う。
抄紙工程はワイヤー又は濾布を用いて抄紙スラリー中に分散している微細セルロース繊維等の軟凝集体を濾過する工程であるため、ワイヤー又は濾布の目のサイズが重要である。本実施形態においては、本質的には、抄紙スラリー中に含まれる微細セルロース繊維等を含む水不溶性成分の歩留まり割合が例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%で抄紙することのできるような任意のワイヤー又は濾布を使用できる。
但し、微細セルロース繊維等の歩留まり割合が70重量%以上であっても濾水性が高くないと抄紙に時間がかかり、著しく生産効率が悪くなるため、大気圧下25℃でのワイヤー又は濾布の水透過量が、好ましくは0.005ml/(cm2・sec)以上、より好ましくは0.01ml/(cm2・sec)以上であると、生産性の観点からも好適な抄紙が可能となる。上記水不溶成分の歩留まり割合が70重量%以上である場合、生産性が良好であり、用いるワイヤーや濾布内に微細セルロース繊維等の水不溶性成分が目詰まりする現象や、製膜後の多孔質シートの剥離性の悪化を回避できる。
大気圧下でのワイヤー又は濾布の水透過量は次のように評価する。バッチ式抄紙機(例えば、熊谷理機工業社製の自動角型シートマシーン)に評価対象となるワイヤー又は濾布を設置し、ワイヤーの場合はそのまま、濾布の場合は、80〜120メッシュの金属メッシュ(濾水抵抗がほとんど無いものとして)上に濾布を設置し、抄紙面積がx(cm2)の抄紙機内に十分な量(y(ml)とする)の水を注入し、大気圧下で濾水時間を測定する。濾水時間がz(sec)であった場合の水透過量を、y/(x・z)(ml/(cm2・s))と定義する。
本実施形態のワイヤー又は濾布の例として、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07−8435−SK010(PET製)、敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)、TT30(PET製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態の抄紙工程による脱水では高固形分化が進行し、抄紙スラリーの微細セルロース繊維濃度よりも高い濃縮組成物の湿紙を得る。湿紙の固形分率は、抄紙のサクション圧(ウェットサクションやドライサクション)やプレス工程によって脱水の程度を制御し、好ましくは固形分濃度が6重量%以上25重量%以下、より好ましくは固形分濃度が8重量%以上20重量%以下の範囲に調整する。湿紙の固形分率が6重量%以上の場合、湿紙としての自立性が良好で、工程上問題が生じ難い。また、湿紙の固形分率が25重量%以下となる濃度まで脱水する場合、微細セルロース繊維のワイヤー又は濾布への顕著な貫入が生じず、シートに凹凸が転写されたり、ワイヤー又は濾布の目詰まりが発生したりする問題を回避できる。
本実施形態の多孔質積層シートの製造においては、基材シートとして特にセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の不織布を支持体としてワイヤー又は濾布上に置いて抄紙を行う。この方法により、少なくとも2層以上の多層構造体からなる多孔質積層シートを製造することができる。3層以上の多層化シートを製造するためには、2層以上の多層構造を有する基材シートを使用すればよい。また、基材シート上で2層以上の本実施形態の微細セルロース繊維層の多段抄紙を行って3層以上の積層シートとしてもよい。
基材シートは透気抵抗度が100sec/100ml以下、かつ、厚みが1μm以上1000μm以下であることが好ましい。透気抵抗度の測定方法は前記多孔質シートでの透気抵抗度の測定方法に準じる。厚みの測定方法は23℃、50%RHの環境で1日静置した多孔質積層シート(20cm×20cm)に対して、卓上オフライン接触式膜厚計(例えば山文電気製のTOF―5R01)を用い、150mmの長さを0.1mmピッチで1回ずつ測定し、その数平均値を膜厚(μm)とする。
本実施形態の基材シート表面は親水的であると好ましい。基材シート表面が親水的であると、多孔質積層シートの接着性に優れ、また抄紙法で多孔質積層シートを製造する際の濾水性が向上するため好ましい。親水性官能基としては特に限定されないが、水酸基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基、硫酸基或いは、−OM、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−HMPO4、又は−M2PO4で表される基(Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す)、1〜3級アミン及び4級アンモニウム塩が挙げられる。
また、基材シート表面には活性水素を有する官能基の導入がなされていても良い。基材シート表面の官能基が活性水素を有する官能基であると、ポリウレタンによる化学的な結合を形成でき、ポリウレタンを介して基材シートと多孔質シートが強固に接着されるため好ましい。ここでいう活性水素を有する官能基とは、例えば水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等のことを言い、水酸基の場合はウレタン結合、カルボキシル基の場合はアミド尿素結合等が形成される。
親水的表面を有した、或いは、活性水素基を有した基材シートとしては、セルロースやナイロンのように元々その性質を有した基材シートを選択でき、又は、抄紙前にコロナ放電処理やプラズマ処理を実施し、シート表面の親水化や活性水素を有する官能基の形成を行って得た基材シートを使用することもできる。
本実施形態の乾燥工程においては、上述した抄紙工程(製膜工程)で得た湿紙を加熱することによって水を蒸発させることにより、多孔質シート又は多孔質積層シートを得ることができる。乾燥方法は特に限定されるものではないが、ドラムドライヤーやピンテンターのような幅を定長とした状態で、水を乾燥させ得るタイプの定長乾燥型の乾燥機を使用すると、透気抵抗度の低い多孔質シート又は多孔質積層シートを安定に得ることができるため好ましい。乾燥温度は条件に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは45℃以上250℃以下、より好ましくは60℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上200℃以下の範囲である。乾燥温度が45℃以上の場合には、多くの場合で水の蒸発速度が比較的速いため、生産性を良好に確保でき好ましく、250℃以下の乾燥温度とすると、多孔質化剤が熱変性を起こしてしまうケースを回避でき、また、エネルギー効率が良好で低コストとなるため好ましい。100℃以下の低温乾燥で組成調製を行い、次段で100℃以上の温度で乾燥する多段乾燥を実施することも、均質性の高い多孔質シート又は多孔質積層シートを得るうえで有効である。
好ましい態様においては、スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、多孔質シート形成工程又は多孔質積層シート形成工程が、湿紙又は多層湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む。すなわち、ブロックポリイソシアネートを用いた場合、湿紙又は多層湿紙の乾燥によって得た乾燥シートを熱キュア処理(加熱処理)することにより、シート内に含まれるブロックポリイソシアネートのブロック基の解離、それに続く微細セルロース繊維との化学的な結合が形成される。また、多孔質積層シートにおいては、該ブロックポリイソシアネートにより基材シートと微細セルロース繊維との架橋も同時に進行する。
熱キュア処理には、対流伝熱、伝導伝熱、放射伝熱等を利用した既知の方法を採用することができ、熱風や赤外線、熱接触による加熱を用いることができる。均一かつ短時間での加熱処理の観点から、加熱ローラーへの接触加熱が好ましい。シートへ引火する熱エネルギー量はロール温度、ロール径、送り速度等によって調整できる。
ブロックポリイソシアネートは常温において安定であるが、ブロック剤の解離温度以上に熱処理することでブロック基が解離してイソシアネート基が再生し、活性水素を有する官能基との化学的な結合が形成できる。加熱温度は用いられるブロック剤により異なるが、80℃以上300℃以下、好ましくは100℃以上280℃以下、より好ましくは120℃以上250℃以下の範囲で、ブロック基の解離温度以上に加熱する。ブロック基の解離温度未満の場合は、イソシアネート基が再生しないため架橋化が起きない。また、300℃以下の温度で加熱すると微細セルロース繊維やブロックポリイソシアネートの熱劣化、及びこれによる着色を回避でき好ましい。
加熱時間は、下限を1秒以上とし、上限は5分以下、好ましくは3分以下、より好ましくは1分以下である。加熱温度がブロック基の解離温度より十分に高い場合は、加熱時間をより短くすることができる。また、加熱温度が200℃以上の場合、5分超の加熱を行うとシート内の水分が極端に減少するため、5分以内の加熱とすることが、加熱直後のシートの脆化を回避し、取扱い性を容易にする点で好ましい。
好ましい態様においては、多孔質シート形成工程又は多孔質積層シート形成工程が、湿紙又は多層湿紙を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む。すなわち、乾燥によって得た乾燥シートに、カレンダー装置によってカレンダー処理(平滑化処理)を施してもよい。カレンダー処理を経ることにより表面が平滑化され、薄膜化された多孔質シート又は多孔質積層シートを得ることもできる。すなわち、乾燥シートに対し、さらにカレンダー装置による平滑化処理を施すことにより、薄膜化が可能となり、広範囲の膜厚/透気抵抗度/強度の組み合わせの本実施形態の多孔質シート又は多孔質積層シートを提供することができる。例えば、10g/m2以下の目付の設定下で20μm以下の膜厚の多孔質シート及び多孔質積層シートを容易に製造することが可能である。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、及びカレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定すればよい。
ブロックポリイソシアネートを含む多孔質シート又は多孔質積層シートの製造において熱キュア処理を行う場合、カレンダー処理は、乾燥と熱キュア処理との間に行う他に、乾燥及び熱キュア処理の後に行っても良く、熱カレンダー処理によって熱キュア処理とカレンダー処理(平滑化処理)とを同時に行っても良い。好ましい態様においては、多孔質積層シート形成工程において、多層湿紙を乾燥させること、熱キュア、及びカレンダー処理をこの順で行う。熱キュア処理及びカレンダー処理の組合せを含む方法によって多孔質シートを製造することは、目付10g/m2あたりの水系湿潤強度0.3kg/15mm以上、及び/又は目付10g/m2あたりの非水系湿潤強度0.3kg/15mm以上を有する多孔質シートの製造において特に有利である。
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明する。なお、物性の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)微細セルロース繊維の数平均繊維径
サンプル表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行った。得られたSEM画像に対し、縦方向と横直方向にライン1本ずつを引き、ラインに交差した繊維の繊維径と個数を実測した。そして、一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出した。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同様に数平均繊維径を算出し、合計3画像分の結果を平均化し、対象とするシートの数平均繊維径とした。なお、得られた数平均繊維径が100nm未満の場合、50000倍の倍率で無作為に3箇所観察を行い、前記と同様の手法を用いてより正確な数平均繊維径を算出し、この値を採用した。
(2)目付
室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプルを20cm×20cmに裁断し(面積0.04m2)、重量W1(g)を計測し、下記式より算出した。
目付W(g/m2)=W1/0.04 式(15)
(3)厚み
多孔質シート及び多孔質積層シートの厚みは断面SEM観察により行った。断面SEM測定用サンプル作製にあたり、Broad−Ion−Beam BIB装置(日本電子製、SM−09010、加速電圧3.5kV)を用いて加工し、シートの断面出しを行った。つづいて、導電処理としてオスミウムを1nm程度コーティングして検鏡用試料とした。そして、断面SEM観察を倍率1000倍で3視野行った(日立ハイテク製、S−4800、加速電圧1.0kV、下方検出器)。得られたそれぞれの断面SEM像において、シート片側の表面から任意に3点選択した。それぞれの点を開始点として垂線を引きシート下表面との交点を3箇所得た後、開始点と交点との距離を計測した。そして、合計9点の距離の平均値を膜厚(μm)とした。
(4)目付10g/m2あたり透気抵抗度
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプル(20cm×20cm)に対して目付(W)を測定した後、王研式透気抵抗試験機(旭精工(株)製、型式EG01)を用いて、10点測定し、その平均値を平均透気抵抗度AR(sec/100ml)とした。この時、下記式に従い、10g/m2目付あたりの値を算出した。なお、本装置で測定できる透気抵抗度の上限は100万sec/100mlであり、上限を超えた値については100万sec/100mlとして計算を行った。
目付10g/m2あたり透気抵抗度(sec/100ml)=AR/W×10 式(16)
(5)多孔質化剤水溶性
100mlガラスバイアルにイオン交換水99g、多孔質化剤(固形分100重量%)1gを添加した後、50℃に温調しながらマグネチックスターラー750rpmで1時間撹拌した後、23℃まで降温して撹拌を止めた状態での外観及び濁度から判断した。まず、目視において2層に分離していた場合を×とした。次に、2層に分離していない場合は、濁度計を用いて濁度を測定した。濁度が1NTU以上の場合も×とし、1NTU未満の場合を○とした。なお、多孔質化剤の固形分が100重量%未満の場合は、最終の水分散体が1重量%となるように多孔質化剤の添加量を調整した。
(6)多孔質化剤含有率
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプル(20cm×20cm)の重量W1(g)を測定した後、2cm角に裁断し、アセトン200mlが入ったビーカーに入れ、超音波を10分間照射した後、ろ過を行った。ろ過物は同じ手法でさらに2回アセトンで抽出を行った。合計600mlのろ液をエバポレーターで乾固させ、固形分の重量W7(g)を測定した。以下の式より微細セルロース繊維重量に対する多孔質化剤含有率を算出した。
多孔質化剤含有率(%)=W7/(W1−W7)×100 式(17)
(7)多孔質保持性
23℃、50%RHの環境で1日静置したサンプル(20cm×20cm)を5cm×5cmに裁断し、そこから5枚を選んだ。この5枚のサンプルに対してそれぞれ1点ずつ透気抵抗度を測定し、その測定場所に印をつけた。この透気抵抗度を初期透気抵抗度R1とし、5枚の平均値をAR1とした。つづいて、そのサンプルを金属プレート上に置き、霧吹きで水を万遍なくかけ、サンプル周囲に付着した水滴を拭き取った。この湿潤操作前後でのシート重量を測定しシート水分率を測定した。この時のシート水分率が300重量%以上400重量%以下である事を確認した後、80℃のオーブンにて1時間乾燥させ、印をつけた場所の透気抵抗度を再度測定した。この透気抵抗度を操作後透気抵抗度R2とし、5枚のサンプルの平均値をAR2(sec/100ml)とした。最終的に下記式18より透気抵抗度上昇率(%)を算出した。透気抵抗度上昇率が100%以上の場合は×、100%未満の場合は○とした。
透気抵抗度上昇率(%)=(AR2−AR1)/AR1×100 式(18)
なお、シート水分率は多孔質シートの場合、式19を用い初期多孔質シート重量W2(g)及び湿潤後多孔質シート重量W3(g)より算出した。
シート水分率=(W3−W2)/W2×100 式(19)
多孔質積層シートの場合、式20を用い、初期多孔質積層シート重量W4(g)、湿潤後多孔質積層シート重量W5(g)、微細セルロース繊維層推定初期重量W6(g)より算出した。なお、W6は、断面SEM観察より算出した微細セルロース繊維層厚みD1(μm)が微細セルロース繊維目付に凡そ正比例することを利用し、下記式21より算出した。
シート水分率=(W5−W4)/W6×100 式(20)
微細セルロース繊維層推定初期重量W6(g)=
微細セルロース繊維層厚みD1(μm)×1(g/μm/m2) 式(21)
断面SEM測定用サンプル作製においては、Broad−Ion−Beam BIB装置(日本電子製、SM−09010、加速電圧3.5kV)を用いて加工し、シートの断面出しを行った。つづいて、導電処理としてOsを1nm程度コーティングして検鏡用試料とした。SEM観察は倍率1000倍で3視野行い、得られたそれぞれのSEM画像で任意の3点の厚みを測定した。合計9点の厚みの平均値を多孔質積層シートの微細セルロース繊維層の厚みD1(μm)とした(日立ハイテク製、S−4800、加速電圧1.0kV、下方検出器)。
(8)10g/m2あたり乾燥強度
室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付W(g/m2)を測定した。15mm幅試験片を作製し、熊谷理機工業(株)の卓上型横型引張試験機(No.2000)を用いてチャック間距離100mm、引張速度10mm/minとして10点の引張強度を測定し、その平均値を乾燥強度(DS)とした。この時、予め測定していた原紙の目付Wを用いて10g/m2目付あたりの値として算出した。
10g/m2目付あたり乾燥強度(kgf/15mm)=DS/W×10 式(22)
(9)水系湿潤強度、10g/m2あたり水系湿潤強度
室温23℃、湿度50%RHに制御された環境下に24時間保管したサンプル(20cm×20cm)の目付W(g/m2)を測定した。次に、15mm幅に裁断し、15mm幅試験片中央50mmを水に10秒間浸漬させた。つづいて、熊谷理機工業(株)の卓上型横型引張試験機(No.2000)を用いてチャック間距離100mm、引張速度10mm/minで10点の引張強度を濡れた状態で測定し、その平均値を水系湿潤強度WS(kgf/15mm)とした。この時、多孔質シートサンプルについては予め測定していた原紙の目付Wを用いて下記式(22)より10g/m2目付あたりの値(kgf/15mm)として算出した。一方、多孔質積層シートについては基材シートのMD方向についてWSのみを測定した。破断強度は微細セルロース繊維層が破断又は基材シートから剥離した時点での強度を採用した。
10g/m2目付あたり水系湿潤強度(kgf/15mm)=WS/W×10 式(23)
(10)非水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度
使用する液体をメチルセロソルブに変更した以外は前記水系湿潤強度及び10g/m2あたり非水系湿潤強度の測定方法と同じ手法で非水系湿潤強度NWS(kgf/15mm)を算出し、10g/m2目付あたり非水系湿潤強度(kgf/15mm)を下記式(24)より算出した。
10g/m2目付あたり非水系湿潤強度(kgf/15mm)=NWS/W×10 式(24)
(11)多孔質構造均一性
断面SEM測定用サンプル作製にあたり、Broad−Ion−Beam BIB装置(日本電子製、SM−09010、加速電圧3.5kV)を用いて加工し、シートの断面出しを行った。つづいて、導電処理としてオスミウムを1nm程度コーティングして検鏡用試料とした。そして、断面SEM観察を倍率5000倍で10視野行った(日立ハイテク製、S−4800、加速電圧1.0kV、下方検出器)。得られた10枚の断面SEM像より、それぞれ多孔質シート中央部の細孔の中で最も大きな長径を計測した後、10枚の平均値(平均最大長径)を算出した。なお、多孔質シート中央部とは、多孔質シート断面を厚み方向に4等分した時(表層部1−中央部1−中央部2−表層部2)、表層部1及び2を除いた部分を指す。例えば、多孔質シート厚みが20μmの場合、両側の表層部5μmを除いた10μmを多孔質シート中央部とした。また、多孔質積層シートの場合は、微細セルロース繊維層について同様に厚み方向に4等分し、平均最大長径を算出した。平均最大長径が10μm以上の場合は×、10μm未満の場合は○とした。
(12)多孔質積層シート接着性
多孔質積層シートについては、5cm×5cmで切り取り、イオン交換水が100ml入ったプラスチックボトル中に浸漬し、23℃の環境で振とう機を用い200rpmで10分間振とうした。振とう後に微細セルロース繊維層が基材シートから剥離したかどうかを目視で観察した。剥離した時を×、剥離しなかった時を○として評価した。
製造例1
微細セルロース繊維スラリー5種類を下記の方法で製造した。
[製造例1−1]
日本紙パルプ商事(株)より入手したコットンリンターパルプを10重量%となるように水に浸漬させてオートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行った。得られた膨潤パルプは水洗し、水を含む精製パルプを得た。つづいて、精製パルプを固形分1.5重量%となるように水中に分散させて(400L)、ディスクリファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmで400Lの該水分散体を20分間叩解処理した。それに引き続き、クリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で徹底的に叩解を行い、叩解水分散体(固形分濃度:1.5重量%)を得た。得られた叩解水分散体を、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NSO15H)を用いて操作圧力100MPa下で10回の微細化処理を実施し、微細セルロース繊維スラリーA−1(固形分濃度:共に1.5重量%)を得た。
[製造例1−2]
製造例1−1における高圧ホモジナイザー処理を1回のみ実施し、微細セルロース繊維スラリーA−2(固形分濃度:共に1.5重量%)を得た。
[製造例1−3]
日本紙パルプ商事(株)より入手したアバカパルプをセルロース原料とし、製造例1−1と同様の方法で微細セルロース繊維スラリーA−3(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
[製造例1−4]
微細セルロース繊維スラリーA1/A3=50/50( g / g)となるように混合し、微細セルロース繊維スラリーA−4(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
[製造例1−5]
双日(株)より入手した再生セルロース繊維であるテンセルカット糸(3mm長)を洗浄用ネットに入れて界面活性剤を加え、洗濯機で何度も水洗することにより、繊維表面の油剤を除去した。得られた精製テンセル繊維(カット糸)を製造例1と同様の手法で微細化を行い、微細セルロース繊維スラリーA−5(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
製造例2
抄紙スラリー5種類を下記の方法で製造した。抄紙スラリーの組成は表1、表2に示す。
[製造例2−1]
微細セルロース繊維スラリーAを固形分濃度B重量%まで希釈したスラリーCgをスリーワンモーターで撹拌させながら下記に示す多孔質化剤(D、1%水溶液)をEg滴下し、3分間撹拌することで抄紙スラリーを得た(M1〜26)。なお、多孔質化剤は水に溶解しないため、添加する直前に手で激しく振とうした上で分取した。微細セルロース繊維重量に対する添加した多孔質化剤固形分重量をF%とした。
D1:KF―6013、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、信越化学社製
D2:KF―6100、ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサン、信越化学社製
D3:ペレックスTR、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、花王社製
D4:メガファックF−444、パーフルオロアルキル基含有ポリオキシエチレン、DICD社製
D5:エレガノールNZ―800、カチオン性ポリマー乳化物(紙用嵩高剤)、明成化学工業社製
D6:エマルゲン103、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB8.1、花王社製
D7:エマルゲン106、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB10.5、花王社製
D8:エマルゲン408、オレイルポリオキシエチレン、HLB10.0花王社製
D9:アミート102、ポリオキシエチレンアルキルアミン、HLB6.3、花王社製
D10:レオドールSP―L10、ソルビタンラウレート、HLB8.6、花王社製
[製造例2−2]
微細セルロース繊維スラリーAを固形分濃度B重量%まで希釈したスラリーCgに下記に示す多孔質化剤(D、1%水溶液)をEg滴下した後、家庭用ミキサーで10分間撹拌を行い、抄紙スラリーを得た(M26〜29)。なお、多孔質化剤は水に溶解しないため、添加する直前に手で激しく振とうした上で分取した。微細セルロース繊維重量に対する添加した多孔質化剤固形分重量をF%とした。
D11:エマルゲン102KG、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB6.3、花王社製
D12:ルナックO―V、オレイン酸、花王社製
D13:オクタデカン、和光純薬工業社製
[製造例2−3]
製造例2−1又は2−2の方法で製造した多孔質化剤を含む抄紙スラリーをスリーワンモーターで撹拌させながら、下記ブロックポリイソシアネート(G、固形分濃度1.0重量%まで希釈)をHg滴下し、3分間撹拌することで抄紙スラリーを得た(M30〜38,M40〜42,M48〜50)。微細セルロース繊維重量に対する添加したブロックポリイソシアネート固形分重量をI%とした。
G1:メイカネートCX、カチオン性、明成化学工業社製
G2:メイカネートWEB、カチオン性、明成化学工業社製
G3:メイカネートTP−10、ノニオン性、明成化学工業社製
G4:MF−25K、ノニオン性、第一工業製薬社製
G5:E−37、アニオン性、第一工業製薬社製
[製造例2−4]
製造例2−3に記載の方法で製造した多孔質化剤及びブロックポリイソシアネートを含む抄紙スラリーをスリーワンモーターで撹拌させながら、下記ポリカチオン(J、固形分濃度1.0重量%まで希釈)をKg滴下し、3分間撹拌することで抄紙スラリーを得た(M39,51)。微細セルロース繊維重量に対する添加したポリカチオン固形分重量をL%とした。
J1:PAS−H−10L、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ニットーボーメディカル社製
[製造例2−5]
微細セルロース繊維スラリーAを固形分濃度B重量%まで希釈し、微細セルロース繊維のみを含む抄紙スラリーCgを得た(L43−47)。
[製造例2−6]
微細セルロース繊維スラリーAを固形分濃度B重量%まで希釈したスラリーCgをスリーワンモーターで撹拌させながら、前記ブロックポリイソシアネート(G、固形分濃度1.0重量%まで希釈)をHg滴下し、3分間撹拌することで抄紙スラリーを得た(M30〜38,M40〜42,M48〜50)。微細セルロース繊維重量に対する添加したブロックポリイソシアネート固形分重量をI%とした。
[製造例2−7]
微細セルロース繊維スラリーAを固形分濃度B重量%まで希釈したスラリーCgをスリーワンモーターで撹拌させながら下記に示す多孔質化剤(D、1%水溶液)をEg滴下し、3分間撹拌することで抄紙スラリーを得た(M1〜20,24〜29)。なお、多孔質化剤は水に溶解しないため、添加する直前に手で激しく振とうした上で分取した。微細セルロース繊維重量に対する添加した多孔質化剤固形分重量をF%とした。
D14:エマルゲン108、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB12.1、花王社製
D15:エマルゲン220、ポリオキシエチレンセチルエーテル、HLB14.2、花王社製
D16:KF−6011、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、信越化学社製
D17:コータミン60W、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、花王社製
[製造例2−8]
微細セルロース繊維スラリーAを固形分濃度B重量%まで希釈したスラリーCgに1−ヘキサノール及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC,商品名「60SH−4000」、信越化学工業製)をそれぞれ1.2重量%(3.9g)、0.012重量%(0.039g)添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散化させ、抄紙スラリーを得た(M56)。
[製造例2−9]
製造例2−8で得た抄紙スラリーをスリーワンモーターで撹拌させながら前記ブロックポリイソシアネート(G、固形分濃度1.0重量%まで希釈)をHg滴下し、3分間撹拌することで抄紙スラリー(M57)を得た。微細セルロース繊維重量に対する添加したブロックポリイソシアネート固形分重量をI%とした。
[実施例1−29]
PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20・・・大気下25℃での水透過量:0.03ml/(cm2・s)、微細セルロース繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m2の多孔質シートを目安に、抄紙スラリー(M1〜29)を投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)し、湿紙を得た。
得られた湿紙に同じPET/ナイロン混紡製の平織物を被せ布として被せた後、濾布ごと抄紙機から剥がした。つづいて、ボール紙に挟んで1kg/cm2の圧力で1分間プレスした後、表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに被せ布面がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させた。得られた被せ布/シート/濾布の3層体から被せ布及び濾布を剥離させることで、微細セルロース繊維から構成される多孔質シート(25cm×25cm)を得た。結果を表3に示す。
代表例として実施例12のシートの断面SEM像(図2)が示すように多孔質構造は均一で、湿潤乾燥後も多孔質が保持された。
[実施例30−39]
抄紙スラリー(L30〜39)について実施例1と同じ手法で製膜したブロックポリイソシアネートを含む多孔質シートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで170℃、3分間の熱処理を行い、ウレタンで架橋された多孔質シートを得た。結果を表4に示す。
シートの多孔質構造は均一で、湿潤乾燥後も多孔質が保持された。さらに、ポリウレタン架橋により10g/m2あたり水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度が向上した。
[実施例40−46]
PET/ナイロン混紡製の平織物の上に下記に示した基材シートL(27cm×27cm)を置き、抄紙スラリー(M4、33、37、38、40〜42)を実施例1と同じ方法で抄紙し、乾燥することで多孔質積層シートを得た。実施例41−46については実施例30と同様の方法で熱キュアを行い、ポリウレタン架橋された多孔質積層シートを得た。シートの多孔質構造は均一で、湿潤乾燥後も多孔質が保持された。結果を表5に示す。
実施例40については多孔質積層シートの接着性は弱く、剥離が確認された。実施例41−46については、ポリウレタン架橋により水系湿潤強度、非水系湿潤強度が向上し、接着性も改善した。
L1:ベンリーゼSA14G、キュプラ長繊維不織布、目付14g/m2、厚み70μm、旭化成社製
L2:ベンリーゼSE103、キュプラ長繊維不織布、目付100g/m2、厚み540μm、旭化成社製
L3:エルタスNO1020、ナイロンスパンボンド不織布、目付20g/m2、厚み150μm、旭化成社製
L4:エルタスEO1020、ポリエステルスパンボンド不織布、目付20g/m2、厚み140μm、旭化成社製、使用前にコロナ放電処理を実施
L5:エルタスPO3020、ポリプロピレンスパンボンド不織布、目付20g/m2、厚み190μm、旭化成社製、使用前にコロナ放電処理を実施
L6:エルタスアクアPA3020、透水性ポリプロピレンスパンボンド不織布、目付20g/m2、厚み190μm、旭化成社製
[実施例47−48]
実施例4及び実施例32で作製したシートを20cm×20cmに裁断し、金属製鏡面ロール(上部ロール)、樹脂製ロール(硬度D85、下部ロール)間を23℃、線圧1.0トンで2m/minの走行速度でカレンダー処理を施した。結果を表6に示す。
どちらのシートも多孔質構造は均一で、湿潤乾燥後も多孔質が保持された一方、厚みは実施例4、32のシートよりも薄くなった。さらに、実施例48については、ポリウレタン架橋により10g/m2あたり水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度が向上した。
[比較例1−5]
抄紙スラリーM43〜47について実施例1と同じ手法で製膜し、微細セルロース繊維シートを得た。結果を表7に示す。
比較例1−4については多孔質ではなかった。比較例5は図3に示すように多孔質ではあるものの、最大孔径が著しく大きく、均一ではなかった。
[比較例6−9]
抄紙スラリーM48〜51について実施例30と同じ手法で製膜し、微細セルロース繊維シートを得た。結果を表7に示す。
いずれのシートもポリウレタン架橋により10g/m2あたり水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度が向上したが、多孔質構造ではなかった。
[比較例10−13]
抄紙スラリーM52〜55について実施例1と同じ手法で製膜し、微細セルロース繊維シートを得た。結果を表7に示す。
添加した多孔質化剤が水溶性であったため、いずれのシートも多孔質構造ではなかった。多孔質化に寄与しなかった。
[比較例14]
比較例1で得られた乾燥する前の湿紙を濾布ごとアセトン中に浸漬し、約10分間置換処理を行った。その後、トルエン/アセトン=50/50(g/g) の混合溶媒中に浸漬し、同様に10分間置換処理を行った。その後、金属製容器に濾布を下にして貼り付け、50℃で60分間乾燥させ、多孔質シートを得た。結果を表7に示す。
シートの多孔質構造は均一ではあったが、湿潤乾燥後に著しい収縮が発生し、多孔質構造は保持されなかった。
[比較例15]
1、6’−ヘキサメチレンジイソシアネートを2重量%溶解させたテトラヒドロフランに比較例14のシートを3分間浸漬した後、ボール紙に挟んで1kg/cm2の圧力で1分間プレスした後、風乾した。その後、乾燥したシートを2枚のSUS製金枠(25cm×25cm)で挟み、クリップで固定し、オーブンで170℃、3分間の熱処理を行い、ウレタン架橋された多孔質シートを得た。結果を表7に示す。
シートの多孔質構造は均一ではあり、ポリウレタン架橋により10g/m2あたり水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度は向上した。しかし、湿潤乾燥後の収縮は抑制されたものの多孔質構造の保持には至らなかった。
[比較例16]
抄紙スラリーM56について実施例1と同じ手法で製膜し、微細セルロース繊維シートを得た。結果を表7に示す。
図4に示すように長径10μmを超える細孔を有しており、多孔質構造は不均一であった。また、湿潤乾燥後に著しい収縮が発生し、多孔質構造は保持されなかった。
[比較例17]
抄紙スラリーM57について実施例30と同じ手法で製膜し、ポリウレタン架橋された微細セルロース繊維シートを得た。結果を表7に示す。
長径10μmを超える細孔を有しており、多孔質構造は不均一であった。比較例14と比べ、ポリウレタン架橋により10g/m2あたり水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度は向上し、湿潤乾燥後の収縮も抑制されたが、多孔質構造は保持には至らなかった。
[比較例18]
抄紙スラリーM47について実施例40と同じ手法で基材シートL1上に製膜し、微細セルロース繊維積層シートを得た。シートは多孔質ではあるものの、最大孔径が著しく大きく、均一ではなかった。結果を表8に示す。
[比較例19]
抄紙スラリーM43について実施例40と同じ手法で基材シートL1上に抄紙した後、乾燥する前の湿紙を濾布ごとアセトン中に浸漬し、約10分間置換処理を行った。その後、トルエン/アセトン=50/50(g/g)の混合溶媒中に浸漬し、同様に10分間置換処理を行った。その後、金属製容器に濾布を下にして貼り付け、50℃で60分間乾燥させ、微細セルロース繊積層維シートを得た。結果を表8に示す。
シートの多孔質構造は均一ではあったが、湿潤乾燥後に著しい収縮が発生し、多孔質構造は保持されなかった。
[比較例20]
抄紙スラリーM56について実施例40と同じ手法で基材シートL1上に製膜し、微細セルロース繊維積層シートを得た。結果を表8に示す。
シートは多孔質ではあるものの、長径10μmを超える細孔を有しており、多孔質構造は不均一であった。また、湿潤乾燥後に著しい収縮が発生し、多孔質構造は保持されなかった。
[比較例21]
抄紙スラリーM57について実施例41と同じ手法で製膜し、ポリウレタン架橋された微細セルロース繊維シートを得た。結果を表8に示す。
シートは多孔質ではあるものの、長径10μmを超える細孔を有しており、多孔質構造は不均一であった。比較例20と比べ、ポリウレタン架橋により10g/m2あたり水系湿潤強度、10g/m2あたり非水系湿潤強度は向上し、湿潤乾燥後の収縮も抑制されたが、多孔質構造は保持には至らなかった。
本実施形態の多孔質シート及び多孔質積層シートはろ過フィルターや細胞培養基材、全熱交換機用素子、各種機能紙、吸収材料、医療材料用の支持体等の材料、繊維強化プラスチックの支持体として適用できる。特に、熱硬化性化合物や光硬化性化合物、これらの化合物を熱硬化又は光硬化した樹脂、熱可塑性樹脂を含浸させて製造した樹脂複合フィルムは、例えば電子材料分野において、プリント配線基板、絶縁フィルム、コア材に好適に使用できる。また、鋼板、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックの代替としても好適に使用できる。具体的には、産業用機械部品(例えば電磁機器筐体、ロール材、搬送用アーム、医療機器部材など)、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品(例えば外板、シャシー、空力部材、座席など)、船舶部材(例えば船体、座席など)、航空関連部品(例えば、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材など)、宇宙機、人工衛星部材(モーターケース、主翼、構体、アンテナなど)、電子・電気部品(例えばパーソナルコンピュータ筐体、携帯電話筐体、OA機器、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品など)、建築・土木材料(例えば、鉄筋代替材料、トラス構造体、つり橋用ケーブルなど)、生活用品、スポーツ・レジャー用品(例えば、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、テニスやバトミントンのラケットなど)、風力発電用筐体部材等、また容器・包装部材、例えば、燃料電池に使用されるような水素ガスなどを充填する高圧力容器用の材料、透明材料(例えば、自動車や建物のガラス、OA機器やAV機器のディスプレイのカバーガラスなど)となり得る。

Claims (15)

  1. 以下の(1)〜(6)の要件:
    (1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、
    (2)目付10g/m2あたりの透気抵抗度が7000sec/100ml以下であること、
    (3)目付が0.5g/m2以上40g/m2以下であること、
    (4)厚みが1μm以上100μm以下であること、
    (5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、
    (6)シート中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下であること、
    を全て満たす多孔質シート。
  2. 目付10g/m2あたりの水系湿潤強度が0.3kg/15mm以上である請求項1に記載の多孔質シート。
  3. 目付10g/m2あたりの非水系湿潤強度が0.3kg/15mm以上である請求項1又は2に記載の多孔質シート。
  4. 1層以上の基材シート層と1層以上の微細セルロース繊維層とを含む多孔質積層シートであって、微細セルロース繊維層が以下の(1)〜(3)の要件:
    (1)平均繊維径が2nm以上1000nm以下の微細セルロース繊維で構成されていること、
    (2)層厚みが1μm以上100μm以下であること、
    (3)層中央部の細孔の平均最大長径が10μm以下であること、
    を全て満たし、多孔質積層シートが以下の(4)〜(7)の要件:
    (4)透気抵抗度が20000sec/100ml以下であること、
    (5)湿潤乾燥前後の透気抵抗度の変化率が100%以下であること、
    (6)目付が2g/m2以上1000g/m2以下であること、
    (7)厚みが2μm以上1000μm以下であること、
    を全て満たす多孔質積層シート。
  5. 5cm×5cmの多孔質積層シートを200mlのイオン交換水に浸漬し、振とう機を用いて23℃にて200rpmで10分間振とうした後に微細セルロース繊維層が基材シート層から剥離しない、請求項4に記載の多孔質積層シート。
  6. 水系湿潤強度が0.5kg/15mm以上である請求項4又は5に記載の多孔質積層シート。
  7. 非水系湿潤強度が0.7kg/15mm以上である請求項4〜6のいずれか一項に記載の多孔質積層シート。
  8. 多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、
    該スラリーを抄紙法により脱水することによって湿紙を形成する製膜工程、及び、
    該湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質シートを得る多孔質シート形成工程、を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質シートの製造方法。
  9. 前記スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、
    前記多孔質シート形成工程が、前記湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む、請求項8に記載の多孔質シートの製造方法。
  10. 前記多孔質シート形成工程が、前記湿度を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む、請求項8又は9に記載の多孔質シートの製造方法。
  11. 前記多孔質シートが、目付10g/m2あたりの水系湿潤強度0.3kg/15mm以上、及び/又は目付10g/m2あたりの非水系湿潤強度0.3kg/15mm以上を有し、
    前記多孔質シート形成工程が、前記湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理及びカレンダー処理を含み、前記カレンダー処理が、前記熱キュア処理の前、前記熱キュア処理と同時、又は前記熱キュア処理の後に行われる、請求項9に記載の多孔質シートの製造方法。
  12. 多孔質化剤と、微細セルロース繊維と、水とを含むスラリーを調製する調製工程、
    該スラリーを、基材シート上で抄紙法により脱水することによって多層湿紙を形成する製膜工程、及び、
    該多層湿紙を少なくとも乾燥させることによって多孔質積層シートを得る多孔質積層シート形成工程、
    を含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の多孔質積層シートの製造方法。
  13. 前記スラリーがブロックポリイソシアネートをさらに含み、
    前記多孔質積層シート形成工程が、前記多層湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理を含む、請求項12に記載の多孔質積層シートの製造方法。
  14. 前記多孔質積層シート形成工程が、前記多層湿紙を乾燥させた後に行われるカレンダー処理を含む、請求項12又は13に記載の多孔質積層シートの製造方法。
  15. 前記多孔質積層シート形成工程が、前記多層湿紙を乾燥させた後に行われる熱キュア処理及びカレンダー処理を含み、前記カレンダー処理が、前記熱キュア処理の前、前記熱キュア処理と同時、又は前記熱キュア処理の後に行われる、請求項13に記載の多孔質積層シートの製造方法。
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