JP2019194378A - バナナ仮茎を原料として用いるセルロース微細繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】資源の枯渇が懸念される繊維素材(麻やコットンなど)を代替でき、かつ、産業廃棄物であるバナナの仮茎(偽茎)を原料としたセルロース微細繊維、不織布、並びに強化繊維複合樹脂成形体の製造方法の提供。【解決手段】バショウ科バショウ属バナナの仮茎を原料として精製パルプを得る工程;及び得られた精製パルプを叩解処理してスラリーを得る叩解工程;を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満であるセルロース微細繊維の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、バナナ仮茎を原料として用いるセルロース微細繊維の製造方法、並びにこれを用いたセルロース微細繊維不織布、及び強化繊維複合樹脂成形体の製造方法に関する。
以下の特許文献1に記載されるように、一般的な繊維構造物は、大別すれば、天然繊維又は合成繊維を原料として作られており、合成繊維の大部分は、石油資源からスタートし石油化学製品を経て合成され、他方、天然繊維は、動物繊維と植物繊維とに分けられ、羊、アルパカなどの動物や蚕の飼育、綿の木、麻などを農耕栽培し、羊毛、綿花(コットン)、蚕糸などを得て、それらを原料繊維としている。しかしながら、これら天然繊維や合成繊維は、必ずしも永久に入手できる原料とはいえず、例えば、天然繊維については、世界的な人口増加により食糧危機が叫ばれ、衣料用繊維を得る手段とし、動物の飼育や農耕栽培を行なうことが困難な時代背景となりつつあり、また、合成繊維についても、同様に、石油資源の枯渇が懸念されている。こうした従来繊維構造物に使用されていた繊維原料が将来的には枯渇する恐れがあるという状況から、近年になって、従来の手段に限定せず衣料用の素材を開発する動きも活発である。
他方、バナナは、主にアジア、アフリカ、中南米などの熱帯地方の開発途上国で生産されており、その生産量は世界全体で年間1億トン以上にもなっている。バナナは数か月から1年以内で生長し、花をつけ、実を収穫することができるが、その頃には根元から新しい仮茎が出てきて、古い方の仮茎は一度収穫すると2度と実を結ばないため全て根元で切り倒しそのまま大量の廃棄物となっているのが現状である。その上、この産業廃棄物とされているバナナの茎は、高強度の繊維が得られるが、繊維束が太くて剛直であるため、ロープ、網、粗布などジュートの代用品としての産業資材用途が主であり、そのままで一般的な衣料品の原料として使用することが困難であった。
かかる状況下、特許文献1では、バナナの茎が産業廃棄物として大量に発生していることに注目し、その利用を図るべく、図1、2に示すように、バナナの茎(のようなもの)の構造について研究し、バナナの茎のようなものは、中心に非繊維質の花軸があり、その周囲にはやわらかい葉鞘が幾重にも巻き付き重なり合って仮茎を構成し、各葉鞘は繊維束からなり、その繊維束を表皮で保持していることを観察し、繊維を効率よく採取するために、表皮を剥ぎ取った葉鞘(繊維束)を精錬し(精製パルプを得)、平均繊維長が10mm〜50mm、平均繊度が0.5dtex〜80dtexであるバナナ短繊維を得、これを用いて軽く、吸湿性に優れ、嵩高性に富み、シャリ感に優れる繊維構造物を得ることを、提案している。しかしならが、こうして得られるバナナ短繊維の用途は衣料品であり、また、平均繊維系1000nm未満のセルロース微細繊維ではなく、また、これを用いて不織布や強化繊維複合樹脂成形体を製造することは、特許文献1には一切記載されていない。
また、以下の特許文献2には、微細な微細セルロース繊維からなる通気性を保有し、かつ、強度の高いセルロース不織布を提供すべく、セルロースミクロフィブリルから成り、水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体からなる群から選択される単数または複数の水溶性高分子を合計0.5重量%以上20重量%以下含有し、目付が3g/m以上80g/m以下、かつ、目付10g/m相当の透気抵抗度が10s/100ml以上500s/100ml以下であるセルロース微細繊維不織布、及び該不織布の製法が開示されている。しかしながら、かかるセルロースミクロフィブリルは、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ又はワラ由来パルプを原料として得られると記載されており、バナナの仮茎を原料とすることができることは一切記載されていない。
特開2010−095805号公報 特開2010−90486号公報
前記したように、特許文献1には、バナナの仮茎を原料として精製パルプを得る工程を開示しているものの、得られるバナナ繊維の平均繊度は0.5〜80dtex(比重1.3で約0.55μm〜88.5μm)であり、精製パルプからなるスラリーに更に叩解処理を施して、平均繊維径1000nm未満のセルロース微細繊維とすることは記載されておらず、また、特許文献2には、コットンリンターやアバカ等を原料として数平均繊維径1000nm未満(例えば、108nm)のセルロース微細繊維(セルロースナノファイバー)及びその不織布の製造方法が開示されているものの、バナナ仮茎を原料として用いることができることは記載されていない。
かかる状況下、本発明が解決しようとする課題は、セルロース微細繊維の原料として用いた場合に得られるセルロース微細繊維不織布の引張強度が高いことが知られているアバカ等に代えて、原料としてバナナ仮茎を用いることで、アバカ等由来のものに比較して引張強度を更に高め、かつ、透気抵抗度にも優れたセルロース微細繊維不織布を得るために用いることができ、かつ、歩留まりも向上した新規セルロース微細繊維の製造方法を提供することである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]以下の工程:
バショウ科バショウ属バナナの仮茎を原料として精製パルプを得る工程;及び
得られた精製パルプを叩解処理してスラリーを得る叩解工程;
を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満であるセルロース微細繊維の製造方法。
[2]以下の工程:
バショウ科バショウ属バナナの仮茎を太さ50μm〜1000μmの太さの繊維束まで破砕してバナナ仮茎破砕繊維束を得る破砕工程;
得られたバナナ仮茎破砕繊維束に、水酸化ナトリウムを含む蒸解液を添加し、100℃〜170℃で2〜10時間時、蒸解処理する蒸解工程;
得られた蒸解産物を、ビーターを用いて解繊・洗浄する解繊・洗浄工程;
未離解物又は不純物を除去し、精製パルプを得る不純物除去工程;
得られた精製パルプを、ビーター及びディスクレファイナーからなる群から選ばれる叩解装置を用いてJIS P 8121に準拠するCSF値を指標として、叩解処理して、所定の叩解度に調整したスラリーを得る叩解工程;
を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満のであるセルロース微細繊維の製造方法。
[3]前記叩解工程の後に、高せん断エネルギー処理し、比表面積相当の平均繊維径が100nm以下であり、かつ、光学顕微鏡で確認できる平均繊維径が20μm以下であるセルロース微細繊維を得る微細化工程をさらに含む、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]高せん断エネルギー処理後に得られるセルロース微細繊維の比表面積相当の平均繊維径が50nm以下である、前記[3]に記載の方法。
[5]以下の工程:
前記[3]又は[4]に記載の方法で得られたセルロース微細繊維0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.15重量%以上10重量%以下、水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体からなる群から選択される単数又は複数の水溶性高分子を合計0.003重量%以上0.1重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む、該油性化合物が水相に分散したエマルジョンである水系分散液を調製する水系分散液調製工程、
得られた水系分散液を構成する水の一部を抄紙機で脱水することによって、セルロース微細繊維の濃度及び油性化合物の濃度を該水系分散液中のものよりも増加させた濃縮組成物を得る抄紙工程、並びに
得られた濃縮組成物を加熱することによって、該濃縮組成物から油性化合物及び水の一部を蒸発させて除去する乾燥工程、
を含む、該水溶性高分子を合計0.5重量%以上20重量%以下含有し、目付が3g/m以上80g/m以下であり、かつ、目付10g/m相当の透気抵抗度が10s/100ml以上500s/100ml以下であるセルロース微細繊維不織布の製造方法。
[6]前記油性化合物が、1−ヘキサノール、n−デカン、及び1−ヘプタノールからなる群から選ばれる、前記[5]に記載の方法。
[7]前記乾燥工程の後に、さらにカレンダー工程を含む、前記[5]又は[6]に記載の方法。
[8]以下の工程:
前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法により得られたセルロース微細繊維を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に配合して、又は前記[5]〜[7]のいずれかに記載の方法により得られたセルロース微細繊維不織布に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させて、強化繊維樹脂組成物を調製する工程;
を含む、強化繊維樹脂組成物の製造方法。
[9]前記[8]に記載の方法により得られた強化繊維樹脂組成物を硬化させて成形体を得る成形工程;
をさらに含む、繊維強化複合樹脂成形体の製造方法。
本発明のセルロース微細繊維の製造方法によれば、該方法における叩解工程の後に、高せん断エネルギー処理し、比表面積相当平均繊維径100nm以下のセルロース微細繊維を得る微細化工程において、原料としてアバカ等を用いた場合に比較して歩留まりが改善する。また、本発明のセルロース微細繊維の製造方法においては、バナナの仮茎の微細化工程に適した破砕工程を含み、さらに、叩解工程に先立って、精製パルプを乾燥させる必要がないため、繊維が十分に膨潤した状態を維持することができ、叩解により微細繊維化する過程で容易にリグニン等が固形分の表面へ露出し、溶出される。さらに、本発明のセルロース微細繊維の製造方法により得たセルロース微細繊維を用いて製造されるセルロース微細繊維不織布は、アバカ由来のものに比較して引張強度が高く、かつ、透気抵抗度にも優れたものとなる。
バナナの生長過程を示す図である。 バナナの葉鞘からなる仮茎を示す図である。 バナナの仮茎由来、及びアバカ由来のミクロフィブリル化セルロースにより作製した不織布サンプルの表面のSEM画像(倍率:10000倍、右下目盛の1目盛が0.5μmに相当)である。 バナナの仮茎由来、及びアバカ由来のセルロース微細繊維のビーターによる叩解処理後の光学顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態のセルロース微細繊維の製造方法は、以下の工程:
バショウ科バショウ属バナナの仮茎を原料として精製パルプを得る工程;及び
得られた精製パルプを叩解処理してスラリーを得る叩解工程;
を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満であるセルロース微細繊維の製造方法である。
本実施形態のセルロース微細繊維の製造方法は、より詳しくは、以下の工程:
バショウ科バショウ属バナナの仮茎を太さ50μm〜1000μmの繊維束まで破砕してバナナ仮茎破砕繊維束を得る破砕工程;
得られたバナナ仮茎破砕繊維束に、水酸化ナトリウムを含む蒸解液を添加し、100℃〜170℃で2〜10時間、蒸解処理する蒸解工程;
得られた蒸解産物を、ビーターを用いて解繊・洗浄する解繊・洗浄工程;
未離解物又は不純物を除去し、精製パルプを得る不純物除去工程;
得られた精製パルプを、ビーター及びディスクレファイナーからなる群から選ばれる叩解装置を用いてJIS P 8121に準拠するCSF値を指標として、叩解処理して、所定の叩解度に調整したスラリーを得る叩解工程;
を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満であるセルロース微細繊維の製造方法である。
前記叩解工程の後に、高せん断エネルギー処理し、比表面積相当の平均繊維径が100nm以下であり、かつ、光学顕微鏡で確認できる平均繊維径が20μm以下であるルロース微細繊維を得る微細化工程をさらに含むことが好ましい。高せん断エネルギー処理後に得られるセルロース微細繊維の比表面積相当平均繊維径は、好ましくは50nm以下である。
[精製パルプを得る工程]
精製パルプを得る工程は、バショウ科バショウ属バナナの仮茎を原料として精製パルプを得る工程である。ここで、精製パルプとは、特に限定されないが、例えば、以下に説明する叩解工程を施す対象物を得るまでに原料であるバナナの仮茎に前処理も施したものをいう。前処理とは、例えば、以下に説明する粉砕工程、蒸解工程、解繊・洗浄工程、不純物除去工程をいう。
[破砕工程]
破砕工程は、バショウ科バショウ属バナナの仮茎を太さ50μm〜1000μmの繊維束まで破砕してバナナの仮茎の破砕繊維束を得る工程である。
原料としてバショウ科バショウ属バナナの仮茎を入手する。バナナは、よくバナナの木と言われるように、高さ2〜10mに生長するが、バナナは竹類などと同様に「草木」で、図1、2に示すように、高く伸びた茎のような部分は、花軸の周りに柔らかい葉鞘が幾重にも巻き付き重なりあって茎状をなしており、正しくは仮茎(偽茎)と呼ばれる。バナナは、畑へ植えつけられてから6ヶ月から18ヶ月ほどで生長し、花をつけ、実を収穫することができるようになる。その頃には根元から新しい仮茎が出ており、これは3〜6ヶ月で実をつける。このようなサイクルが次々に起こるため、収穫が終わった仮茎は根元で切り倒しそのまま廃棄されている。
次に、バナナの仮茎から葉鞘を剥ぎ取る。繊維が傷んでいる部分は除去をする。通常、実を収穫した後、不要となった仮茎を切断したものを対象とするが、植えられた状態のまま剥ぎ取ることも可能である。剥がされた葉鞘の表面にある表皮を剥皮機又は人手で剥ぎ取り、内皮を取り出すことが一般的ではあるが、労力が掛かる上、嵩張るといった問題がある。更に、その後に蒸解工程、叩解工程を行うことを考慮すれば、この段階で繊維束である必要はない。そこで、破砕装置を用いて、葉鞘の表面にある表皮を剥ぎ取らずに、バナナの仮茎を太さ50μm〜1000μmの太さの繊維束まで破砕することができる。勿論、表皮は剥ぎ取っても構わない。破砕装置としては、カッターミル、ボールミル、ロッドミルなど、連続破砕処理が可能な装置が挙げられる。カッターミルは、投入した粗破砕物(一般に木材)を回転刃と固定刃によって連続的に剪断粉砕する装置であり、ボールミルは、セラミックなどの硬球と、粗破砕物を容器に入れて回転させることによって、硬球で粗破砕物を破砕する装置であり、ロッドミルは、ドラムの中に多数の鋼棒を入れ、ドラムの回転に伴い互いに平行に転動して衝突する鋼棒によって、粗破砕物を比較的均一に破砕する装置である。このような破砕装置等を用いてバナナの仮茎を太さ50μm〜1000μmの太さの繊維束まで破砕することで、以降の蒸解工程により、不純物であるリグニン、ヘミセルロース(全セルロース量からα−セルロース量を差し引いたもの)を効率良く溶出することができる。一般には、得られる繊維束を乾燥する。乾燥方法は特に限定されないが、エネルギーを消費しない観点からも自然乾燥が望ましい。
α−セルロース含有率が95重量%以上であると、耐熱性や耐溶剤性も高度なセルロース微細繊維不織布を製造することができる。これは、リグニン成分やヘミセルロース等の主にパルプの植物原材料中に含まれる不純物が残存していると、耐熱性や耐溶剤性に悪影響を与えることによる。α−セルロース含有率の評価は、日本木材学会編,木質科学実験マニュアル,文永堂出版,p95−p96,2000年4月10日発行に記載されている全セルロース量の評価方法に従い、試料xg中の全セルロース量xgをまず評価し、次に、xg得られた全セルロース試料を用いて、該文献中に記載の方法に従い、α−セルロース量の評価を行う。ここで得られたα−セルロースの量をxgとすると、最初に用いた試料重量(xg)からのα−セルロースの含有率、x×100/x(%)をα−セルロース含有率と定義する。原料パルプのうち、α−セルロース以外の成分(不純物)としては、リグニン等を挙げることができるが、これらの成分の一部は叩解工程や微細化程において水相へ溶出し、抄紙工程で系外へ排出されるものの、一部はセルロースミクロフィブリルの表面近傍等に残存し、得られる不織布の耐熱性や耐久性を損ねることがある。
[蒸解工程]
蒸解工程は、得られたバナナ仮茎破砕繊維束に、水酸化ナトリウムを含む蒸解液を添加し、100℃〜170℃で2〜10時間時、蒸解処理する蒸解工程である。
得られた繊維束を蒸解する。蒸解方法は特に限定されるものではなく、通常のパルプの調製に用いられる方法を使用することができる。例えば、蒸解釜において、植物原料に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)と硫化ソーダ(硫化ナトリウム)を主成分とする蒸解薬液(白液)を加え、一般に100から120℃程度の温度で植物原料に蒸解薬液を浸透させた後、100℃から170℃で約2〜10時間保持することで蒸解ができる。高圧下で蒸解処理を行なうことで処理時間の大幅な短縮が図られる。蒸解条件は、好ましくは145℃で2時間程度である。
蒸解条件としては、例えば、原繊維束の乾燥重量に対して、水酸化ナトリウム15%、アントラキノン0.2%を添加し、液比1:4として、回転式蒸解釜(熊谷理機工業製)で145℃を2時間保持するものが挙げられる。
[解繊・洗浄工程]
解繊・洗浄工程は、得られた蒸解産物を、ビーターを用いて解繊・洗浄する工程である。
蒸解工程後、ナギナタビーター等を用いて解繊と洗浄処理を行う。解繊と洗浄の時間、回数は特に限定されるものではないが、1時間の解繊と洗浄を2回程度実施することが好ましい。
解繊・洗浄工程においては、さらに漂白(不純物除去)処理を施してもよい。漂白処理の方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に使用される方法を用いることができる。蒸解工程によりパルプ中の着色物質であるリグニンが溶解して取り除かれるが、さらにこうした漂白処理を行なうことにより、より白色度の高いセルロース系原料を得ることができる。セルロース系原料の白色度は、ISO 2470に基づいて、65%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
漂白処理の条件としては、例えば、蒸解産物の乾燥重量に対して、過酸化水素20%、過酸化水素漂白用助剤(マイネックス TRP-2BF)6%で液比1:15の溶液に2時間浸漬させものが挙げられる。
[不純物除去工程]
不純物除去工程は、未離解物及び不純物を除去し、精製パルプを得る工程である。
解繊・洗浄工程後、漂白処理を施した場合には、ビーター等を用いて洗浄処理した後、更にフラットスクリーン等を用いて未離解部分や不純物を除去して精製パルプを得る。
[叩解工程]
叩解工程は、得られた精製パルプを、ビーター及びディスクレファイナーからなる群から選ばれる叩解装置を用いてJIS P 8121に準拠するCSF値を指標として、叩解処理して、所定の叩解度に調整したスラリーを得る工程である。
叩解処理方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に使用される方法を用いることができる。例えば、原料パルプを0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば、0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、以降の微細化工程における高圧ホモジナイザー等の条件を緩和でき、有効な場合がある。
好ましい所定の叩解度は、水中に分散させたセルロースをJIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法ともいう。)のCSF値で評価することができる。叩解処理を行うにつれCSF値は経時的に減少していき、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると増大していく傾向が見られる。未叩解からCSF値が減少する過程でのCSF値を***↓、ゼロとなった後に増大する傾向におけるCSF値を***↑と表現する。
CSF値は少なくともゼロ、その後の増大傾向の値をもつことが好ましい。このような叩解度に調製した水分散体(以下、「スラリー」ともいう。)では、フィブリル化が高度に進行していると同時にスラリーの均一性が増大し、以降の微細化工程における高圧ホモジナイザー等での詰まりを軽減でき、また、微細化処理条件を負担の少ない条件(例えば、パス回数の軽減)につなげられる。
叩解工程では、水で膨潤させた精製パルプに対して強い圧縮力とせん断力が与えられる。すなわち、最終的にセルロース繊維を微細化するために、破砕装置を用いてバナナ仮茎を破砕し、蒸解処理を行うことでリグニン等の不純物を効率良く溶出することができ、精製パルプの乾燥は、その後の叩解処理で再び水で膨潤させることを考えれば、本来は不要な工程である。この工程を削減することにより、乾燥に必要なエネルギーや膨潤時間の削減、乾燥による凝集をさせないことで効率的に叩解処理が進む効果が奏される。更には、乾燥工程を無くすことで繊維が十分に膨潤した状態を維持できるため、叩解により微細繊維化する過程で容易にリグニンが固形分の表面へ露出し、溶出される。
バナナやアバカ等は、主にアジア、アフリカ、中南米などの熱帯地方の開発途上国で生産されており、精製パルプを日本に輸入する際には、一般にシート状にして乾燥させるか、又は嵩張るが、原麻(繊維束を乾燥させた状態)で輸入するかのどちらかである。この後の叩解処理(水で膨潤させたパルプに対して強い圧縮力とせん断力が与えられる)を考えれば、乾燥させるのはエネルギーと時間が無駄な工程となるため、バナナを生産した場所で叩解処理、微細化、加工まで一貫して行うことが好ましい。
[微細化工程]
微細化工程は、叩解工程の後に、高せん断エネルギー処理し、比表面積相当平均繊維径100nm以下のセルロース微細繊維を得る工程である。
叩解後のパルプに対し、さらに高せん断エネルギー処理により微細化する。高せん断エネルギー処理による微細化方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に使用される方法を用いることができる。使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザーなどを挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザーなどの高圧衝突型の微細化処理機などを挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
セルロース微細繊維の繊維径は、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件(装置の選定、操作圧力、パス回数)又は微細化処理前の工程条件(例えば、蒸解処理(オートクレーブ処理)、酵素処理、叩解処理等)によって制御することができる。
高圧ホモジナイザー等による微細化処理において、バナナの仮茎を原料とした場合には、対アバカ比で歩留りが非常に良いことが分かった。更には、アバカでは詰まりが発生する可能性のある濃度であっても、バナナの仮茎では詰まりが発生せず、効率的な微細化処理が達成できる。バナナの仮茎を原料とした場合、対アバカ比でフィブリル化が非常に進みやすいため、消費エネルギー及びコストの低減を図ることができ、更には、アバカでは実現困難な濃度のスラリーも生産が可能になる。さらに、こうして得られたセルロース微細繊維を用いて製造した不織布は、アバカ由来のセルロース微細繊維不織布を凌駕する引張強度であり、アバカ由来のものと比較して約2倍の濃度でも太繊維が少なく、より均質な不織布となる。
本発明の他の実施形態は、以下の工程:
前記のようにして得られたセルロース微細繊維0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.15重量%以上10重量%以下、水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体からなる群から選択される単数又は複数の水溶性高分子を合計0.003重量%以上0.1重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む、該油性化合物が水相に分散したエマルジョンである水系分散液を調製する水系分散液調製工程、
得られた水系分散液を構成する水の一部を抄紙機で脱水することによって、セルロース微細繊維の濃度及び油性化合物の濃度を該水系分散液中のものよりも増加させた濃縮組成物を得る抄紙工程、並びに
得られた濃縮組成物を加熱することによって、該濃縮組成物から油性化合物及び水の一部を蒸発させて除去する乾燥工程、
を含む、該水溶性高分子を合計0.5重量%以上20重量%以下含有し、目付が3g/m以上80g/m以下であり、かつ、目付10g/m相当の透気抵抗度が10s/100ml以上500s/100ml以下であるセルロース微細繊維不織布の製造方法(以下、エマルジョン抄紙法ともいう。)である。
前記油性化合物は、1−ヘキサノール、n−デカン、及び1−ヘプタノールからなる群から選ばれることが好ましく。前記乾燥工程の後に、さらにカレンダー工程を含むことが好ましい。
セルロース微細繊維不織布を構成する繊維の数平均繊維径は2nm以上300nm以下、好ましくは10nm以上150nm以下の範囲にあると、微細かつ均一なネットワーク構造を有する不織布を低目付で得ることができるのでそのような不織布を望む場合には特に有効である。数平均繊維径が2nmよりも小さいセルロースミクロフィブリルの報告は文献上存在せず、現実的に作ることは困難と考えられる。また、数平均繊維径が300nmよりも大きな場合には、微細なネットワーク構造に基づく微小な孔径の不織布となり難くなるため、一般的な紙に対する差別性が低くなる。
ここで、ミクロフィブリル化セルロースの数平均繊維径は以下のようにして定義される。すなわち、該ミクロフィブリル化セルロースをシート状に成形して乾燥させて得たセルロース不織布の表面に関して、無作為に少なくとも2箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当以上30000倍以下の範囲で、繊維径がはっきりと認識できる倍率で行う。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数える。こうして2つのラインに交差するすべての繊維について繊維径の測定結果を用いて数平均繊維径を算出する。さらに同じサンプルについて観察した別の場所を撮影した同じ倍率のSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計2画像分の結果の平均値を対象とする試料の数平均繊維径とする。
セルロース微細繊維不織布においては、水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体からなる群から選択される単数又は複数の水溶性高分子を合計0.5重量%以上20重量%以下、好ましくは0.8重量%以上15重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上10重量%以下含有することが極めて重要である。ここで、該水溶性高分子の役割は、バインダーとしてセルロースミクロフィブリルからなるネットワークの接触点強度を強固にすることである。基材であるセルロースミクロフィブリルに対し、化学構造が類似している水溶性多糖または水溶性多糖誘導体を共存させることにより、セルロース不織布における引張り強度の発現に優れた効果が奏される。
水溶性多糖とは、水溶性の多糖類を意味し、天然物としても多種の化合物が存在する。例えば、でんぷんや可溶化でんぷん、アミロース、プルランに代表されるα−1,4−グルカン類、デキストランに代表されるα−1,6−グルカン類、カードラン、レンチナンに代表されるβ−1,3−グルカン、アミロペクチン、グリコーゲンに代表される分岐糖類、キシラン、ガラクタン、マンナン、グルコマンナン、グルコマンノグリカン、ガラクトグルコマンノグリカン、グアランに代表されるヘテログリカンからなる化合物群を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
水溶性多糖誘導体は、上述した水溶性多糖の誘導体、例えば、アルキル化物、ヒドロキシアルキル化物、アセチル化物であって、水溶性のものが含まれる。あるいは、誘導体化する前の多糖がセルロース、スターチなどの様に水に不溶性であっても、誘導体化、例えばヒドロキシアルキル化やアルキル化、カルボキシアルキル化によって、水溶性化されたものも該水溶性多糖誘導体に含まれる。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチなどのヒドロキシアルキルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、さらには、ヒドロキシエチルメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースのように、2種類以上の官能基で誘導体化された水溶性多糖誘導体も含まれるが、これらに限定されるものではない。
これらのうち、特に水溶性セルロース誘導体は、分子鎖骨格がセルロースミクロフィブリル基材におけるセルロースと同一の構造を有し、セルロースミクロフィブリル表面への相互作用力(接着力)も強固である場合が多い点、広範な構造を有する誘導体が工業的に生産され、入手し易い点、特に、後述するエマルジョン系原液からの抄紙により本発明のセルロース不織布を製造する場合には、エマルジョン安定化(すなわち、乳化剤又は乳化安定剤)としても機能する点から特に好ましい。この点において、上述した水溶性セルロース誘導体のうち、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは乳化性能にも優れているため、バインダー性能をもつ水溶性多糖誘導体として特に好ましい。
水溶性多糖、水溶性多糖誘導体は、以下の方法で抽出される該当成分を意味し、その含有率の合計量は以下のようにして評価する。すなわち、不織布1gを、500gの冷水(5℃以下のイオン交換水を使用)に分散させ、家庭用ミキサーで5分間分散させる。次に分散液の温度を5℃以下に保持しながら、緩やかな攪拌下で30分間攪拌を続け、繊維に付着している水溶性高分子を完全に水相へ溶解させる。この後、得られた繊維の分散液をガラスフィルター等で濾過し、濾液を回収し、さらにエバポレーターにて該濾液の濃縮を行い、得られた濃縮液を、内部標準を加えた重水中に適量溶かし、1H−NMRのピーク強度により溶解している各成分の濃度を評価する。
重水へ濃縮液の溶解量、先に行った濃縮工程の濃縮度等を考慮し、1H−NMRによる溶解成分の濃度から、セルロース不織布中の溶解成分の含有率を算出する。仮に、水溶性多糖でもなく水溶性多糖誘導体でもない水溶性成分が該濃縮液中に含有され、しかも該水溶性成分の1H−NMRにおけるピーク位置が水溶性多糖または水溶性多糖誘導体のピーク位置と重なる場合には、適当な濃度条件で、液体クロマトグラフまたはゲルパーミエーションクロマトグラフの手法により各成分を分離したうえで1H−NMRによる分析を行うものとする。
セルロース微細繊維不織布の製造においては、ナノファイバーであるセルロースミクロフィブリルからなる不織布を製膜する際に、所定の目付範囲で、所定の透気抵抗度を有するように、特定の水溶性高分子を所定の含有率に制御すればよい。製膜方法としては、特に限定されず、塗布法、抄紙法のどちらでも構わないが、エマルジョン抄紙法が好ましい。
以下、エマルジョン抄紙法について説明する。
エマルジョン抄紙法は、所定のセルロースミクロフィブリルの水系分散液から抄紙法により湿紙を製膜し、該湿紙を乾燥させるシンプルなものである。
第一の工程である水系分散液調製工程で調整する水系分散液は、セルロースミクロフィブリル0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.5重量%以上10重量%以下、水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体からなる群から選択される単数又は複数の水溶性高分子を合計0.003重量%以上0.1重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む水系分散液であることが必要である。
エマルジョン抄紙法用の水系分散液中のセルロースミクロフィブリルの濃度は、0.05重量%以上0.5重量%以下、好ましくは、0.08重量%以上0.35重量%以下であると好適に安定な抄紙を実施することができる。該水系分散液中のセルロースミクロフィブリル濃度が0.05重量%よりも低いと濾水時間が非常に長くなり生産性が著しく低くなると同時に膜質均一性(地合い)も著しく悪くなるため好ましくない。また、セルロースミクロフィブリル濃度が0.5重量%よりも高いと、分散液の粘度が上がり過ぎてしまうため、均一に製膜することが困難になり、やはり好ましくない。
次に、調製工程で調製する水系分散液中には、0.15重量%以上10重量%以下の、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下である油性化合物がエマルジョンとして、85重量%以上99.5重量%以下の水から成る水相に分散していることが好ましい。これは、該水系分散液中に含有されるセルロースミクロフィブリルが、油性化合物から成るO/W型エマルジョンと相互作用し、安定化させる性質を有することに起因する(H.Ono, Y.Shimaya, T.Hongo and C. Yamane,” New Aqueous Dispersion of Cellulose Sub-micron Particles: Preparation and Properties of Transparent Cellulose HydroGel (TCG)” Trans.Matr.Soc.Jpn., 26, 569 (2001)参照)。
エマルジョン抄紙法においては、上述した条件下で形成されるエマルジョンにおいて、水と比較して油性化合物が、抄紙機における濾過を意味する抄紙工程により濾液側に移動せずに、水不溶性の親水性高分子であるセルロースの近傍に効率的に残存し、実質的に油性化合物の濃縮化が進行することを特徴とする。すなわち、乾燥工程に到る際に、水不溶性の親水性高分子が水に比べ、表面張力の低い油性化合物に取り囲まれることは、乾燥時に高分子間の融着を防御し、通気性を有するセルロース不織布を形成する原動力となる(先述した有機溶剤による置換法と原理的には同じ)。そうした環境を作るために、油性化合物と水から成るエマルジョンが一定割合で含まれることが本発明の必須条件となる。
乾燥時に上記油性化合物が除去されないと通気性を有する不織布となり得ないため、用いる油性化合物は、乾燥工程で除去可能なことが必要である。したがって、水系分散液にエマルジョンとして含まれる油性化合物は、一定の沸点範囲にあることが必要であり、具体的には、大気圧下での沸点が50℃以上200℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、60℃以上190℃以下であれば、工業的生産プロセスとして水系分散液を操作し易く、また、比較的効率的に加熱除去することが可能となる。油性化合物の大気圧下での沸点が50℃未満であると水系分散液を安定に扱うために低温制御下で扱うことが必要となり、効率上好ましくなく、さらに油性化合物の大気圧下での沸点が200℃を超えると、乾燥工程で油性化合物を加熱除去するのに多大なエネルギーが必要となるため、やはり好ましくない。
さらに、上記油性化合物の25℃での水への溶解度は5重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であることが油性化合物の必要な構造の形成への効率的な寄与という観点で望ましい。以下に油性化合物の具体例を示す。
例えば、炭素数6〜炭素数14の範囲の炭化水素、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカンやそれらの異性体(例えば、イソヘキサン、イソオクタン、イソデカン)に代表される鎖状飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘキセンのような環状炭化水素類、ジイソブチレンやシクロヘキセンのような鎖状または環状の不飽和炭化水素類、及びベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、次に、炭素数5〜炭素数9の範囲であり一価かつ一級のアルコール、具体的には、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、(2E,4E)−2,4−ヘキサジエン−1−オール、2−メチル−2−ヘキサノール、イソヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、イソオクタノール、1,3−ベンゾジオキソール−5−メタノール等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。一級のアルコールではないが、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、シクロヘプタノール、4−ヘプタノール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチニルシクロペンタノール、2−オクタノール、(S)−2−オクタノール、シクロオクタノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、1−オクチン−3−オール等の炭素数5〜炭素数9の範囲である一価のアルコールも油性化合物として好適に使用できる。
上述した油性化合物のうち、特に、油性化合物が炭素数5〜炭素数9の範囲であり一価かつ一級のアルコールの中から選ばれる少なくとも一つの化合物、さらに好ましくは、該アルコールの中の、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールの中から選ばれる少なくとも一つの化合物を用いると特に好適に本発明のセルロース不織布を製造することができる。これは、エマルジョンの油滴サイズが極めて微小(通常の乳化条件で、1μm以下)となるため、高空孔率かつ微細な多孔質構造を有する不織布の製造に適していると考えられる。
これらの油性化合物は単体として配合してもよいし、複数の混合物を配合してもよい。さらには、エマルジョン特性を適当な状態に制御するために、これら油性化合物中に例えば、水溶性のアルコール類、例えば、エチルセロソルブ等の水溶性の有機溶剤を少量溶解させて使用してもよい。この際の水溶性の有機溶媒は、油性化合物に対し25重量%以下であることが好ましい。これ以上の添加量とすると油性化合物のエマルジョンの形成能が低下するため、好ましくない。
次に、該油性化合物の抄紙用水系分散液中の濃度は0.15重量%以上10重量%以下、好ましくは0.3重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上3重量%以下である。油性化合物の濃度が10重量%を超えてもセルロース不織布を得ることはできるが、製造プロセスとして使用する油性化合物の量が多くなり、それに伴う、安全上の対策の必要性やコスト上の制約が発生するため好ましくない。また、油性化合物の濃度が0.15重量%よりも小さくなると所定の透気抵抗度範囲よりも高い透気抵抗度のシートしか得られなくなるため、やはり好ましくない。
上述した油性化合物は、調整工程における水系分散液中にエマルジョンとして分散していることが重要である。この場合、油滴が水相に分散しているO/W型のエマルジョンである。油滴サイズに該当した網目構造が乾燥後の構造体に反映されるため、油滴サイズは小さく、安定に分散していることが好ましい。
エマルジョン抄紙用の水系分散液中には、前述した特定の水溶性高分子が水相中に溶解していることが重要である。これらの水溶性高分子のO/W型エマルジョンにおける作用としては、コロイド科学の分野で保護コロイドとして知られている(川口正美著,「高分子の界面・コロイド科学」1999年,コロナ社,p170参照)。すなわち、水溶性高分子が水相に分散した油滴粒子の表面近傍(水と油滴の界面)に局在する傾向が強く、エマルジョンの安定化に寄与しているとされる。水溶性高分子の中で特に乳化性能の高いものでは、油滴表面への局在率が高いと考えられる。こうして油滴表面に局在した水溶性高分子は、上述したエマルジョン抄紙の機構、すなわち、セルロースミクロフィブリルの作る緩やかな会合対中に油滴ごと取り込まれ、抄紙の過程で湿紙中に残存するため、高い残存率で湿紙中に残存することになる。
エマルジョン抄紙法では、特定の水溶性高分子を使用することにより、湿紙中、すなわち乾燥後のセルロース不織布中にも該特定の水溶性高分子が高い効率で残存する。
上述したように、エマルジョン抄紙用の水系分散液中には、前述した特定の水溶性高分子が水相中に溶解していることが必要であるが、該特定の水溶性高分子の濃度は、0.003重量%以上0.1重量%以下、より好ましくは、0.005重量%以上0.08重量%以下、さらに好ましくは、0.006重量%以上0.07重量%以下の量であると、セルロース不織布が得られ易いと同時に、水系分散液の状態が安定化することが多いので好ましい。該濃度が0.003重量%よりも小さいと、上記特定の水溶性高分子の添加効果が現れ難いので好ましくなく、また、該濃度が0.1重量%を超えると泡立ち等の添加量増大に伴う負の効果が現れ易くなるため好ましくない。エマルジョンを安定化させる目的で、水系分散液中に上記特定の水溶性高分子以外に界面活性剤、その他の水溶性高分子のうちの少なくとも一種が、上記特定の水溶性高分子との合計量が上記濃度範囲で含まれていても構わない。
この場合の界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、アルキルポリオキシエチレンエーテルや脂肪酸グリセロールエステル等のノニオン性界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、上記のその他の水溶性高分子として、具体例としては、ポリビニルアルコール(ケン化度が高過ぎないグレードがより安定化に寄与し、また、末端をアルキル修飾したものも安定化剤として有効である)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(エチレン組成が低く、水溶性のグレード)やビニルアルコールとブチラール等その他のモノマー類との共重合体構造を有するもの、ポリエチレンオキサイドあるいはその末端をアルキル修飾したもの、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチラール系樹脂(水溶性のグレード)のようなノニオン性の水溶性高分子、アクリル酸モノマー単位およびアクリル酸塩モノマー単位、メタクリル酸モノマー単位およびメタクリル酸塩モノマー単位のようなアニオン性のモノマー単位が分子鎖骨格中に含まれるアニオン系水溶性高分子、アクリル酸の有機アミノ誘導体エステル、メタクリル酸の有機アミノ誘導体エステル、エチレンイミン誘導体のようなカチオン性のモノマー単位が分子鎖骨格中に含まれるカチオン系水溶性高分子、あるいはアニオン性のモノマー単位とカチオン性のモノマー単位が両方、分子鎖骨格中に含まれる両性水溶性高分子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
水系分散液中には、目的に応じて種々の添加物が添加されていても構わない。例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子のような無機系粒子状化合物、樹脂微粒子、各種塩類、調味料、食材、食品添加物、エマルジョンの安定性を阻害しない程度の有機溶剤等、悪影響を及ぼさない範囲(種類の選択や組成の選択)で添加することができる。
調製工程で調製する水系分散液は、上述した化合物群から成るエマルジョン組成物であるが、エマルジョンの形成においては、乳化方法のあらゆる方法を採用することができる。すなわち、機械的乳化、転相乳化、液晶乳化、転相温度乳化、D相乳化、可溶化領域を利用した超微細乳化(マイクロエマルジョン乳化)等の方法によりO/W型エマルジョンを調製する。
最終的な水系分散液中では水以外の成分は、85重量%以上99.5重量%以下、好ましくは90重量%以上99.4重量%以下、さらに好ましくは92重量%以上99.2%以下の組成の水中に分散または溶解していることが好ましい。水系分散液中の水の組成が85重量%より低くなると、粘度が増大するケースが多く、エマルジョンを分散液中に均一に分散し難くなり、均一な構造の通気性を有するセルロース不織布が得られ難くなるため好ましくない。また、水系分散液中の水の組成が99.5重量%を超えると、配合組成としてエマルジョンの含有量が低減され、濃縮組成物中の油性化合物濃度が低くなってしまい、通気性の構造体が得られ難くなるため、やはり好ましくない。
水系分散液の調製は、一切の添加物を水中へ混入し、適当な乳化方法により水系エマルジョン分散液とするか、あるいは予め油性化合物と乳化剤からなる水系エマルジョンを上述したような適当な乳化方法で調製しておき、別途調製したセルロースミクロフィブリルおよびその他の添加物からなる水系分散液と混合して水系分散液とすればよい。
第二の工程は、第一の工程で調製した水系分散液を抄紙機で脱水することにより、セルロースミクロフィブリルを濾過し、エマルジョン濃度を濃縮化する抄紙工程である。該抄紙工程は、基本的に、水を含む分散液から水を脱水し、水不溶性の親水性高分子が留まるようなフィルターや濾布(製紙の技術領域ではワイヤーとも呼ばれる)を使用する操作であればどのような装置を用いて行ってもよい。上述したようにエマルジョン中の油滴は、セルロースミクロフィブリルのその近傍に局在する性質を有するため、脱水操作により液相が系外に排出されてもフィルターや濾布上に留まり、実質的にエマルジョン成分の濃縮化が進行することになる。
抄紙機としては、傾斜ワイヤー式抄紙機、長網式抄紙機、円網式抄紙機のような装置を用いると好適に欠陥の少ないシート状のセルロース不織布を得ることができる。抄紙機は連続式であってもバッチ式であっても目的に応じて使い分ければよい。
ミクロフィブリル化セルロース等を使用して調製した水系分散液を抄紙する方法は、基本的には、国際公開第2006/004012号に記載されている技術に準じる。差異は、抄紙用の水系分散液中に油性化合物と水から成るエマルジョンが含まれている点であるが、この文献に開示されている抄紙の条件により良好に抄紙を実施できる。その理由は、調整工程で調製する水系分散液中でエマルジョン成分がミクロフィブリル化セルロースから成る会合体中(軟凝集体)に取り込まれて存在している点にあると考えられる。
すなわち、調製工程により得られる水系分散液(抄紙用の水系分散液)を用いて抄紙工程により脱水を行うが、抄紙はワイヤー又は濾布を用いて水系分散液中に分散している微細セルロース等の軟凝集体を濾過する工程であるため、ワイヤーあるいは濾布の目のサイズが重要である。本質的には、上述した条件により調製した抄紙用の水系分散液を、該分散液中に含まれるセルロース等を含む水不溶性成分の歩留まり割合が70重量%以上、好ましくは、95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上で抄紙することのできるようなワイヤーあるいは濾布であればどんなものでも使用できる。但し、セルロース等の歩留まり割合が70重量%以上であっても濾水性が高くないと抄紙に時間がかかり、著しく生産効率が悪くなるため、大気圧下25℃でのワイヤー又は濾布の水透過量が、好ましくは0.005ml/cm・s以上、さらに好ましくは0.01ml/cm・s以上であると、生産性の観点からも好適な抄紙が可能となる。上記水不溶成分の歩留まり割合が70重量%よりも低くなると、生産性が著しく低減するばかりか、用いるワイヤーや濾布内にセルロース等の水不溶性成分が目詰まりしていることになり、製膜後のセルロース不織布の剥離性も著しく悪くなる。
ここで、大気圧下25℃でのワイヤーまたは濾布の水透過量は次のようにして評価するものとする。バッチ式抄紙機(例えば、熊谷理機工業社製の自動角型シートマシーン)に評価対象となるワイヤー又は濾布を設置するにおいて、ワイヤーの場合はそのまま、濾布の場合は、80〜120メッシュの金属メッシュ(濾水抵抗がほとんど無いものとして)上に濾布を設置し、抄紙面積がxcmの抄紙機内に十分な量(ymlとする)の水を注入し、大気圧下で濾水時間を測定する。濾水時間がzs(秒)であった場合の水透過量を、y/(xz)(ml/cm・s)と定義する。
ミクロフィブリル化セルロースの抄紙に使用できる、上記の条件を満たすワイヤーや濾布は限定される。極めて微細なミクロフィブリル化セルロース繊維に対しても使用できるフィルターまたは濾布として、SEFAR社(スイス)製のTETEXMONODLW07−8435−SK010(PET製)、敷島カンバス社製NT20(PET/ナイロン混紡)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
抄紙工程による脱水では、エマルジョンの濃縮化と同時に高固形分化が進行し、セルロースミクロフィブリルの濃度と油性化合物の濃度を水系分散液より増加させた濃縮組成物である湿紙を得る。湿紙の固形分率は、抄紙のサクション圧(ウェットサクションやドライサクション)やプレス工程によって脱水の程度を制御し、好ましくは固形分濃度が6重量%以上25重量%以下、さらに好ましくは固形分濃度が8重量%以上20重量%以下の範囲に調整する。湿紙の固形分率が6重量%よりも低いと湿紙としての自立性がなく、工程上問題が生じ易くなる。また、湿紙の固形分率が25重量%を超える濃度まで脱水すると水相だけでなく、濃縮したエマルジョンが系外に排出されてしまい、セルロースミクロフィブリル近傍の水層の存在によって、却って油性化合物の濃度が低下してしまうため、有効に通気性のあるセルロース不織布を形成できなくなり、相応しくない。上述したように本発明では、抄紙工程によってエマルジョンが濃縮化され、脱水前の水系分散液中の油性化合物濃度に対し、脱水工程後の湿紙では該油性化合物濃度が約5倍以上、好適な場合には10倍以上に濃縮化される。
第三の工程である乾燥工程において、抄紙工程で得た湿紙は、加熱による乾燥工程で油性化合物及び水の一部を蒸発させることによって、セルロース不織布となる。乾燥工程は、ドラムドライヤーのような幅を定長とした状態で、水と油性化合物(以下、水と油性化合物を合わせて「分散媒」という。)を乾燥し得るタイプの定長乾燥型の乾燥機を使用すると、より透気抵抗度の低いセルロース不織布を安定に得ることができるため、好ましい。乾燥温度は、条件に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは、45℃以上180℃以下、さらに好ましくは、60℃以上150℃以下の範囲とすれば、好適に通気性のあるセルロース不織布を製造することができる。乾燥温度が45℃未満では、多くの場合に分散媒の揮発速度が遅いため、生産性が確保できないため好ましくなく、180℃より高い乾燥温度とすると、構造体を構成する親水性高分子が熱変性を起こしてしまうケースがあり、また、コストに影響するエネルギー効率も低減するため、やはり好ましくない。場合によっては、100℃以下の低温乾燥で組成調製を行い、次段で100℃以上の温度で乾燥する多段乾燥を実施することも、均一性の高いセルロース不織布を得るうえでは有効であることもある。
上述した乾燥工程で得られたセルロース不織布にカレンダー装置によって平滑化処理を施す平滑化工程を設けてもよい。該平滑化工程を経ることにより表面が平滑化され、薄膜化された本発明のセルロース不織布を得ることもできる。以下に、その概要を説明する。
すなわち、乾燥後のセルロース不織布に対し、さらにカレンダー装置による平滑化処理を施す工程を含むことにより、薄膜化が可能となり、広範囲の、膜厚/通気度/強度の組み合わせの本発明のセルロース不織布を提供することが可能となる。例えば、10g/m以下の目付の設定下で20μm以下(下限は3μm程度)の膜厚のセルロース不織布を容易に製造することが可能である。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、カレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定することにより多種の物性バランスをもつセルロース不織布を得ることができる。
乾燥後のセルロース不織布に対するカレンダー処理の作用原理には2通りが考えられる。まず、セルロース不織布の製造工程では、抄紙用原料として使用するセルロースミクロフィブリルの繊維長に対し、製造時に使用するワイヤーメッシュや濾布の表面凹凸のピッチが大幅に長いため、得られる不織布の表面はワイヤーメッシュや濾布の凹凸が転写され易い。第一点としては、カレンダー処理は、この凹凸を平坦化させる効果を有する。第二点目として、一定空孔率を有する不織布のネットワーク構造そのものを押し潰す効果である。二番目の効果により不織布の空孔率は低減し、平均孔径も小さくなることになり、結果的に、通気抵抗度は増大し、引張り強度や突刺し強度が増大することもある。実際には、設定したカレンダー処理条件に応じて、上記一番目の効果と二番目の効果が混在し(種々の貢献率となって)、得られるセルロース不織布の構造や物性が決まる。 また、エンボス加工を表面に施したカレンダー処理用金属ロールを使用して、任意の表面パターンにより凹凸を加えたセルロース不織布もセルロース不織布として好適に使用することができる。
特にセルロース不織布を連続的に製膜するためには、調製工程を除き、上述した抄紙工程、乾燥工程、場合によってはカレンダー処理による平滑化工程を連続的に実施する必要がある。この際、使用するワイヤーメッシュ(以下、単に「ワイヤー」ともいう。)はエンドレス仕様のものを用いて全工程を一つのワイヤーで行うかあるいは途中で次工程のエンドレスワイヤーまたはエンドレスのフェルト布にピックアップして渡すあるいは転写させて渡すか、あるいは、連続製膜の全工程又は一部の工程を、濾布を使用するロールtoロールの工程とするかいずれかをとり得る。
さらに、抄紙機による抄紙工程において、抄紙機に通水性を有するシート状の支持体をのせて、水系分散液を構成する水の一部を該支持体上で脱水(抄紙)を行い、該支持体上に本発明のセルロース不織布の湿紙を積層化させ、一体化させることにより、少なくとも2層以上の積層構造を有する多層化シートを製造することができる。
本発明のさらに他の実施形態は、以下の工程:
前記のようにして得られたセルロース微細繊維を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に配合して、又は前記のようにして得られたセルロース微細繊維不織布に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させて、強化繊維樹脂組成物を調製する工程;
を含む、強化繊維樹脂組成物の製造方法である。
得られた強化繊維樹脂組成物を硬化させて成形体を得る成形工程をさらに含むことが好ましい。
これらの方法の条件は、特に限定はなく、当業者に周知の常法により実施可能である。
以下の実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例、比較例で用いた物性の測定方法等を説明する。
[目付(g/m)]
セルロース微細繊維不織布から10.0cm×10.0cmの正方形片を切り取り、その重量W(g)を測定した。これを基に以下の式:
W0=100×W
を用いて膜の目付W0(g/m)を算出した。
[膜厚(μm)]
膜厚(d(μm))は、一つの不織布サンプルについて膜厚計により測定された5点以上の測定値の平均値を意味する。特に、膜厚計は、空孔率の高い本発明の不織布サンプルを潰さずに評価できる観点から、面接触型のタイプ(Mitutoyo(株)製面接触型膜厚計(Code No.547−401))を使用した。9等分にエリア分けしたシートの各中央9点について面内の厚みを測定し、その平均値をセルロース微細繊維不織布の膜厚(μm)とした。
[トルエン透過率(%)]
トルエン透過率(%)とは、試験管の内面に不織布が貼り付いた状態でトルエンを満たし、不織布に対し垂直な方向から試験管に対して850nmの波長の光を照射し、試験管に沿って長さ方向に40μmごとに合計30000μm(データ点数750)の長さ分を走査した際に各々得られる透過率の平均値Tr,1と、不織布を除いてトルエンのみ注入された状態で同じ測定を行って得られる透過率の平均値Tr,2の比によって、以下の式:
r,av=Tr,1/Tr,2
で定義される平均透過率Tr,avを求めた値である。Tr,avの測定において、TurbiscanTM MA−2000(英弘精機社)を使用する。
20℃での屈折率が1.496のトルエンに対し、若干の屈折率差のあるセルロースを含有する不織布(Polymer Handbook, 3rd Edition”Ed. by J. Brandrup and E. H. Immergood, John Wiley & Sons, New York, 1989, pp V126によれば、セルロースの種類及び試料の配向性によって屈折率は1.51−1.62の範囲)を浸液させた際、不織布を構成する繊維が可視波長400nm程度より十分に小さくない繊維径の繊維を多数含む場合には、その界面での散乱が不織布膜の光透過の阻害因子として働くので、上記条件下での平均透過率の値は、不織布の構成繊維の微細性又は不織布のネットワーク構造の微細性を反映した物性値となる。
[透気抵抗度(s/100mL)]
透気抵抗度とは、試料に対しガーレー式デンソメータ((株)東洋精機製、型式G−B2C)を用いて100mlの空気の透過時間(単位s/100ml)の測定を室温で行った結果である。一つの不織布サンプルに対して種々の異なる位置について5点の測定を行い、その平均値を透気抵抗度(s/100mL)とした。
[引張強度(kg/15mm)]
個々の試料の引張り強度の評価は、JIS P 8113にて定義される方法に従い、熊谷理機工業(株)の卓上型横型引張試験機(No.2000)を用い、幅15mmのサンプル2点について測定し、その平均値を引張強度(kg/15mm)とした。
[比表面積相当の平均繊維径(nm)]
セルロース微細繊維のサンプルを、0.20重量%の固形分濃度で水中に分散、ミキサー処理などの分散処理を行い、抄紙用分散液を調製した。得られた分散液を用いてバッチ抄紙機にて歩留まり性を考慮した濾布(敷島カンバス社製NT20)上で抄紙を行い、湿紙を作製し、大過剰のイソブタノール浴に浸漬、15分間の置換処理を2度繰り返した後、置換後のウェットシートを100℃以上の温度で乾燥処理して得られる白色の多孔質シートを作製した。こうして得た多孔質シートサンプルについて、比表面積計(カンタクローム社製NOVA4200e)を用い、窒素吸着によるBET法により比表面積測定を行い、セルロース密度をd(g/cm)、繊維径をD(μm)とした際に、以下の式:
比表面積=4/(d×D) (m/g)
に比表面積の測定結果、及びセルロースの密度d=1.55g/mを代入することで比表面積相当の平均繊維径(nm)を求めた。
[光学顕微鏡で確認できる平均繊維径]
セルロース微細繊維のサンプルの水分散体を採取し、(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープ(VHX−5000)を用い、試料に応じて100〜2000倍相当の倍率で観察を行った。得られたマイクロスコープ画像に対し、任意の5本の繊維の繊維径を実測し、その平均値を光学顕微鏡で確認できる平均繊維径(μm)とした。
[地合い]
得られた不織布の地合いについて目視判定を行い、地合いが良好なものを「〇」、中程度のものを「△」、不良なものを「×」とした。
[スラリー製造例1]
原料としてフィリピン産のバショウ科バショウ属バナナの仮茎を入手し、葉鞘を剥ぎ取った。繊維が傷んでいる部分は除去した。破砕装置を用いてバナナの仮茎を50μm〜1000μmの太さの繊維束まで破砕し、得られた繊維束を自然乾燥した。
次に、バナナ繊維の蒸解処理として、原麻の乾燥重量に対して、水酸化ナトリウム15%、アントラキノン0.2%を添加し、液比1:4として、回転式蒸解釜(熊谷理機工業製)で145℃を2時間保持した。蒸解処理後は洗浄脱水を行い、ナギナタビーターで解繊処理を1時間、2回ほど行った。次いで、漂白処理として乾燥重量に対して、過酸化水素20%、過酸化水素漂白用助剤(マイネックス TRP 2BF)6%で液比1:15の溶液に2時間浸漬後、洗浄処理を行った。そしてフラットスクリーンにより未離解部分を除去し、膨潤パルプを得た。冷暗所で保存をすることで該膨潤パルプは、カビも生えず数か月の保存が可能であった。
次いで、得られた膨潤パルプを固形分1.0重量%となるように水中に分散させて水分散体とし、ビーター(熊谷理機工業株式会社 試験用ナイヤガラビーター)を用い、叩解処理を実施した。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していく傾向が確認された。以下の表1に示すようにバナナのスラリー(固形分濃度:1.0重量%)では90分後にCSFがゼロになった。また、バナナのスラリーを固形分濃度2.0重量%とし、90min後にCSFを測定したところ192mlであり、180minほどで叩解できた。得られた固形分濃度2.0重量%、叩解処理90min後のバナナの水系スラリーを、スラリー製造例1とした。
[スラリー製造例2]
スラリー製造例1を継続して叩解処理したところ、180min後にCSF値がゼロになった。更に240min後まで継続した。得られた固形分濃度2.0重量%、叩解処理240min後のバナナの水系スラリーを、スラリー製造例2とした。
[スラリー製造例3]
固形分濃度1.0重量%、叩解処理240minの叩解スラリーを、そのまま石臼式粉砕機(増幸産業社製 セレンディピターMKCA6−2)を用いて微細化処理を実施した。その結果、以下の表2に示す通り予備解繊等を含めて計4回で十分にナノ化が進んだ(比表面積相当平均繊維径が100nm以下のセルロース微細繊維が得られた)。得られた固形分濃度1.0重量%、叩解処理240min、さらにパス回数4の石臼式粉砕機を用いた微細化処理後のバナナの水系スラリーを、スラリー製造例3とした。
[スラリー製造例4]
固形分濃度2.0重量%、叩解処理240min後のバナナの水系スラリー(スラリー製造例2)を高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製 スターバーストHJP−25008)を用いて微細化処理を実施した。10回のパスで目詰まりなく微細化セルロースの水分散体が得られた。得られた固形分濃度2.0重量%、叩解処理240min、さらにパス回数10の高圧ホモジナイザーを用いた微細化処理後のバナナの水系スラリーを、スラリー製造例4とした。
[スラリー比較製造例1]
高強度で知られるフィリピン産のアバカ原料を用い、スラリー製造例1と同様に叩解処理を実施した。以下の表1に示す通り、アバカのスラリー(固形分濃度:1.0重量%)では180分後にCSFがゼロになった。得られた固形分濃度1.0重量%、叩解処理240min後のアバカの水系スラリーを、スラリー比較製造例1とした。
[スラリー比較製造例2]
アバカを固形分濃度2.0重量%とし、スラリー製造例1と同様に叩解処理を実施した。その結果、ビーター内のローラー部で目詰まりを起こし、叩解処理が完結できなかった。叩解処理が完結できなかったが、本例で得られたスラリーを便宜上スラリー比較製造例2とした。
[スラリー比較製造例3]
固形分濃度1.0重量%から得られた叩解スラリー(スラリー比較製造例1)を、スラリー製造例3と同様に、そのまま石臼式粉砕機(増幸産業社製マスコロイダー)を用いて微細化処理を実施した。その結果、以下の表2に示す通り、予備解繊等を含めて計6回で十分にナノ化が進んだ(比表面積相当の平均繊維径が100nm以下のセルロース微細繊維を得た)。得られた固形分濃度1.0重量%、叩解処理240min、さらにパス回数6の石臼式粉砕機を用いた微細化処理後のアバカの水系スラリーを、スラリー比較製造例3とした。
高度に叩解が進めば、フィブリル化が高度に進行すると同時にスラリーの均一性が増大し、その後の高圧ホモジナイザー等による微細化処理での詰まりを軽減でき、またその処理条件を負担の少ない条件(例えば、パス回数の軽減)につなげられるので好ましい。表1の結果から、バナナはアバカに比べてフィブリル化が進行しやすいことが分かった。また、アバカのスラリーを固形分濃度2.0重量%にしたときは叩解処理自体ができなかった。これに反し、バナナのスラリーは固形分濃度2.0重量%以上でも叩解処理が可能であることが確認できた。従って、これまで実績の無かったバナナ仮茎を叩解処理することでアバカと比較して歩留まりの向上と高濃度の叩解スラリーが得られることが分かった。
アバカの叩解スラリーを高圧ホモジナイザーで微細化するのは目詰まりのリスクがあるため、石臼式粉砕機を用いて実施したが、表2に示す通りアバカが6パス掛かったのに対してバナナは4パスで処理が完了した。また、バナナのスラリーは固形分濃度2.0重量%にした場合でも高圧ホモジナイザーで目詰まりなく微細化が行えた。従って、これまで実績の無かったバナナ仮茎を叩解、微細化処理することでアバカと比較して歩留まりの向上と高濃度の微細化セルロースの水分散体が得られることが分かった。
[不織布の作製]
スラリー製造例1〜4、スラリー比較製造例1〜3で得たセルロース繊維のスラリーを用いて、以下の抄紙法により不織布を作製した。尚、スラリー製造例1、2、スラリー比較製造例1、2の叩解後スラリーは、「水系」抄紙により、そしてスラリー製造例3、4、スラリー比較製造例3の高エネルギーせん断後スラリーは、「エマルジョン抄紙」により、それぞれ不織布を作製した。
以下は、不織布作製に関する実施例、比較例である。
[実施例1]
スラリー製造例1のスラリーを固形分濃度0.30重量%まで希釈し、家庭用ミキサーで4分撹拌することで650gの抄紙スラリーを作製した。抄紙スラリー625gをPET/ナイロン混紡製の平織物{敷島カンバス社製NT20、大気下25℃での水透過量:0.03ml/(cm・s)、セルロース微細繊維を大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり}をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付30g/mのセルロースシートを目安に、上記調整した抄紙スラリーを投入し、その後、大気圧に対する減圧度を50KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙をワイヤー上から剥がし、1kg/cmの圧力で1分間プレスした。湿紙面をドラム面に接触させるようにして、濾布/湿紙/濾布の3層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーに湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させた。得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色のセルロース微細繊維不織布S1(25cm×25cm、セルロース微細繊維目付30g/m)を得た。
[実施例2]
スラリー製造例2のスラリーを用いた以外は実施例1と同様に、白色のセルロース微細繊維不織布S2(25cm×25cm、セルロース微細繊維目付30g/m)を得た。
[実施例3]
スラリー製造例3のスラリーを固形分濃度0.30重量%まで希釈し、1−ヘキサノール及び水溶性多糖誘導体としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製ヒプロメロース60SH−4000)の2重量%水溶液を添加し、家庭用ミキサーで4分撹拌することで661.7gの抄紙スラリーを作製した。次いで、抄紙工程においては実施例1と同様の方法を用いた。
得られた濾布上に乗った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙をワイヤー上から剥がし、濾布/湿紙の2層の状態で温度が100℃に設定されたオーブンで10分間乾燥させた。得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色のセルロース微細繊維不織布S3(25cm×25cm、セルロース微細繊維目付30g/m)を得た。
[実施例4]
スラリー製造例4のスラリーを用いた点以外は実施例3と同様に、白色のセルロース微細繊維不織布S4(25cm×25cm、セルロース微細繊維目付30g/m)を得た。
[比較例1]
スラリー比較製造例1のスラリーを用いた点以外は実施例1と同様に、白色のセルロース微細繊維不織布RS1(25cm×25cm、セルロース微細繊維目付30g/m)を得た。
[比較例2]
スラリー比較製造例2ではパルプを叩解することができなかったため、不織布を作製しなかった。
[比較例3]
スラリー比較製造例3のスラリーを用いた点以外は実施例3と同様に、白色のセルロース微細繊維不織布RS3(25cm×25cm、セルロース微細繊維目付30g/m)を得た。
以下の表3に、用いた抄紙スラリーの組成を纏めて示す。
不織布作製に関する実施例1〜4、比較例1〜4で得た不織布の物性等を以下の表4に示す。
実施例2と比較例2を対比して、アバカのスラリーを固形分濃度2.0重量%にしたときは叩解処理自体が出来なかったことに対し、バナナのスラリーは固形分濃度2.0重量%以上でも叩解処理が可能であることが確認できた。従って、これまで実績の無かったバナナ仮茎を叩解処理することでアバカと比較して歩留まりの向上と高濃度の叩解スラリーが得られる。
実施例3と比較例3は、同じ固形分濃度1.0重量%で製造した不織布であるが、高強度で知られるアバカと対比してもバナナは透気抵抗度、引張強度共に数値が同等以上であることが分かった。これまで主に繊維を取る為に生産されてきたアバカに対し、産業廃棄物とされてきたバナナ仮茎が、対アバカ比でフィブリル化が非常に進みやすく(消費エネルギー及びコストの低減を図ることができる)、更には、アバカでは実現困難な濃度のスラリーも生産が可能になり、こうして得られたセルロース微細繊維を用いて製造した不織布はアバカ由来のセルロース微細繊維不織布を凌駕する引張強度であり、アバカ由来のものと比較して約2倍の濃度でも太繊維が少なく、より均質な不織布となることが分かった。
本発明に係るセルロース微細繊維の製造方法は、セルロース系繊維の麻や綿などに代えて、産業廃棄物であるバナナ仮茎を原料として使用し、特に高強度といった優れた特性を有するアバカと比較して歩留りが良く、得られるセルロース微細繊維を用いて製造した不織布は、引張強度等の特性も同等以上である。また、本発明に係るセルロース微細繊維の製造方法によれば、セルロース微細繊維を得るという微細化をターゲットとすることで従来技術における繊維束を取り出すような労力が不要となり、バナナの仮茎を破砕し、セルロース微細繊維を効率的に得ることで、地球にやさしい微細化繊維の商業的生産が可能となる。さらに、本発明に係るセルロース微細繊維の製造方法は、産業廃棄物の有効利用という観点に加え、微細化繊維を開発途上国で生産すれば、発展の手助けにもるという観点からも、産業上利用可能なかつ有用な技術である。

Claims (9)

  1. 以下の工程:
    バショウ科バショウ属バナナの仮茎を原料として精製パルプを得る工程;及び
    得られた精製パルプを叩解処理してスラリーを得る叩解工程;
    を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満であるセルロース微細繊維の製造方法。
  2. 以下の工程:
    バショウ科バショウ属バナナの仮茎を太さ50μm〜1000μmの太さの繊維の束まで破砕してバナナ仮茎破砕繊維束を得る破砕工程;
    得られたバナナ仮茎破砕繊維束に、水酸化ナトリウムを含む蒸解液を添加し、100℃〜170℃で2〜10時間時、蒸解処理する蒸解工程;
    得られた蒸解産物を、ビーターを用いて解繊・洗浄する解繊・洗浄工程;
    未離解物又は不純物を除去し、精製パルプを得る不純物除去工程;
    得られた精製パルプを、ビーター及びディスクレファイナーからなる群から選ばれる叩解装置を用いてJIS P 8121に準拠するCSF値を指標として、叩解処理して、所定の叩解度に調整したスラリーを得る叩解工程;
    を含む、比表面積相当の平均繊維径が1000nm未満であるセルロース微細繊維の製造方法。
  3. 前記叩解工程の後に、高せん断エネルギー処理し、比表面積相当の平均繊維径が100nm以下であり、かつ、光学顕微鏡で確認できる平均繊維径が20μm以下であるセルロース微細繊維を得る微細化工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 高せん断エネルギー処理後に得られるセルロース微細繊維の比表面積相当平均繊維径が50nm以下である、請求項3に記載の方法。
  5. 以下の工程:
    請求項3又は4に記載の方法で得られたセルロース微細繊維0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.15重量%以上10重量%以下、水溶性多糖及び水溶性多糖誘導体からなる群から選択される単数又は複数の水溶性高分子を合計0.003重量%以上0.1重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む、該油性化合物が水相に分散したエマルジョンである水系分散液を調製する水系分散液調製工程、
    得られた水系分散液を構成する水の一部を抄紙機で脱水することによって、セルロース微細繊維の濃度及び油性化合物の濃度を該水系分散液中のものよりも増加させた濃縮組成物を得る抄紙工程、並びに
    得られた濃縮組成物を加熱することによって、該濃縮組成物から油性化合物及び水の一部を蒸発させて除去する乾燥工程、
    を含む、該水溶性高分子を合計0.5重量%以上20重量%以下含有し、目付が3g/m以上80g/m以下であり、かつ、目付10g/m相当の透気抵抗度が10s/100ml以上500s/100ml以下であるセルロース微細繊維不織布の製造方法。
  6. 前記油性化合物が、1−ヘキサノール、n−デカン、及び1−ヘプタノールからなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
  7. 前記乾燥工程の後に、さらにカレンダー工程を含む、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 以下の工程:
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られたセルロース微細繊維を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に配合して、又は請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法により得られたセルロース微細繊維不織布に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含浸させて、強化繊維樹脂組成物を調製する工程;
    を含む、強化繊維樹脂組成物の製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法により得られた強化繊維樹脂組成物を硬化させて成形体を得る成形工程;
    をさらに含む、繊維強化複合樹脂成形体の製造方法。
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