JP5688321B2 - 多孔質炭素及びその製造方法 - Google Patents
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しかしながら、このようにして作製された炭素材料では、当該文献に記載の如く、気孔径は数十μmであり、ミクロ細孔はほとんど無いと考えられる。また、ホウ素含有量及び比表面積について記載されていないが、結果として製造される炭素材の比表面積は極めて小さいと推測される。
これらの提案において、BET比表面積について明確に示されていないが、カーボンブラックの一般的なBET比表面積は、最大でも300m2/gに満たない。したがって、上記提案によって得られる多孔質炭素のBET比表面積も300m2/g未満と考えられる。以上のことから、上記方法で作製したカーボンブラックであっても、高性能の多孔質炭素とはならない。
従来技術で示したカーボンブラックでは、ミクロ孔やメソ孔が著しく少ない。このため、BET比表面積が大きな多孔質炭素を得ることができなかった。これに対して、上記構成の多孔質炭素では、メソ孔と、このメソ孔周辺に生じるミクロ孔とが存在するので、BET比表面積が300m2/g以上となるような多孔質炭素を得ることができる。
また、上記構成の如く、多孔質炭素の表面に結合が存在していることで、親水性や電解液との親和性が向上する。加えて、本発明の多孔質炭素では、結合の存在から明らかなように、ホウ素は炭素と化学結合して炭素表面に安定に保持されている(即ち、単に、炭素中に担持されているだけではない)。したがって、多孔質炭素からホウ素が離脱するのを抑制することができるので、親水性や電解液との親和性の向上効果が長期間持続される(耐久性が高くなる)。
また、メソ孔容積が1.79ml/g以上であることが望ましい。
また、BET比表面積の上限は限定するものではないが、余りに大きくなると、炭素壁の形状が保てなくなり粒子が崩壊するおそれがあるので、BET比表面積は1500m2/g以下であることが望ましい。
尚、本明細書では、細孔径が2nm未満のものをミクロ孔、細孔径が2〜50nmのものをメソ孔、50nm以上のものをマクロ孔と称する。
また、少なくとも表面にC−B−O結合構造が存在し、77Kにおける窒素吸着等温線から求められるBET比表面積が300m 2 /g以上であり、77Kにおける窒素吸着等温線から求めた全細孔容積が、77Kにおける窒素吸着等温線からDR法で求めたミクロ孔容積より1ml/g以上大きいことを特徴とする。
このように、メソ孔の容積が大きければ、上記の作用効果が一層発揮される。
このように、ホウ素濃度が高ければ、多孔質炭素を電磁波吸収剤として用いた場合の性能が飛躍的に向上する。
このように、親水性が良好であれば、上記の作用効果が一層発揮される。
上記製造方法の如く、ホウ酸とクエン酸マグネシウムとの混合物を、所定の雰囲気で加熱焼成すると、先ず、クエン酸マグネシウムが分解して、酸化マグネシウムとクエン酸とが生成すると共に、ホウ酸から生じた酸化ホウ素が溶融する。次に、更に昇温すると、酸化マグネシウムと酸化ホウ素との反応生成物が酸化マグネシウムの外周に形成され、当該反応生成物と酸化マグネシウムとにより鋳型が形成されると共に、この鋳型の周囲に、炭素が配置される。その後、鋳型を除去することにより、上述の多孔質炭素を得ることができる。
但し、ホウ素源としてはホウ酸に限定するものではなく、酸化ホウ素等、他のホウ素化合物であっても良い。
若干でもホウ酸を含んでいれば、本発明の作用効果は発揮されるので、上記割合は0重量%を超えていれば足る。一方、ホウ素含有量が余り多くなると、ミクロ孔容積が減少するので、上記割合は100重量%以下に規制するのが望ましい。尚、本発明の作用効果を十分に発揮し、且つ、ミクロ孔容積の減少を十分に抑制するためには、上記割合は1質量%以上50重量%以下であることが一層望ましい。
当該温度が500℃未満では炭素化が不十分で細孔の発達が十分ではない場合がある一方、1500℃を超えると、細孔の鋳型である酸化物(酸化マグネシウムなど)が焼結し粗大化するため、細孔サイズが大きくなって比表面積が小さくなる。加えて、1500℃を超えると、C−B−O結合を有する表面官能基は分解してしまう。また、炭化ホウ素(B4C)が析出することになるからである。
(1)第1の形態
本発明の炭素化物は、鋳型源と炭素源とを兼ね備える有機酸(例えば、クエン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、或いはシュウ酸カルシウム等)と、ホウ素源としてのホウ酸とを、溶液又は粉末状態において湿式もしくは乾式混合し、混合物を非酸化性雰囲気下、又は、減圧下〔133Pa(1torr)以下〕、或いは、還元性雰囲気下で、500℃以上1500℃以下の温度で炭化し、得られた炭化物を洗浄処理することによって、鋳型を除去する。このような工程を経て作製することができる。このような製造方法であれば、鋳型によってメソ孔をダイレクトに形成しつつ、多孔質炭素の少なくとも表面に、ホウ素元素を同時導入することができる。
また、鋳型と炭素との割合を調整するには、鋳型源と炭素源とを兼ね備える有機酸と、下記第2の形態に示す樹脂等との割合を調整すれば良い。
本発明の炭素化物は、単位構造中に少なくとも一つ以上の窒素もしくはフッ素原子を含むポリイミドもしくは炭素収率が40重量%以上の樹脂、例えばフェノール樹脂(ポリビニルアルコール)やピッチ等の熱可塑性樹脂等と、鋳型と、ホウ素源としてのホウ酸とを、上記と同様に、溶液又は粉末状態において湿式もしくは乾式混合し、混合物を非酸化性雰囲気下、減圧下、或いは、還元性雰囲気下で、500℃以上1500℃以下の温度で炭化し、得られた炭化物を洗浄処理することでも得ることができる。このような製造方法であれば、上記第1の形態と同様に、少なくとも表面にはC−B−O結合構造が存在し、77Kにおける窒素吸着等温線から求められるBET比表面積が300m2/g以上の多孔質炭素を作製できる。
具体的には、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を成膜し、溶媒を加熱除去することによりポリアミド酸膜を得る。次に、得られたポリアミド酸膜を200℃以上で熱イミド化することによりポリイミドを製造することができる。
また、ポリイミド前駆体の溶媒として用いる有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
更に、ポリイミド以外の樹脂としては、石油系タールピッチ、アクリル樹脂など40重量%以上の炭素収率を持つものが使用できる。
(実施例1)
先ず、鋳型源と炭素源とを兼ね備えるクエン酸マグネシウム(一水和物)とホウ酸(H3BO3、常温では粉末状の固体となっている)とを用意し、上記クエン酸マグネシウムに対する上記ホウ酸の割合が4重量%となるように両者を乳鉢で混合して、図1(a)に示すように、クエン酸マグネシウム1とホウ酸2との混合物を得た。次に、この混合物を、10℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、更に、900℃で1時間保持した。この後、得られた炭素を1mol/lの割合で添加された希硫酸溶液で洗浄して、酸化マグネシウム(MgO)や、酸化マグネシウムと酸化ホウ素との反応生成物を硫酸中に略完全に溶出させた。最後に、水洗することにより、少なくとも表面にはC−B−O結合構造が存在する多孔質炭素を得た。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A1と称する。
クエン酸マグネシウムに対するホウ酸の割合を20重量%となるようにした他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A2と称する。
クエン酸マグネシウムに対するホウ酸の割合を50重量%となるようにした他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A3と称する。
ホウ酸を添加しない他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、比較炭素Z1と称する。
ホウ酸の代わりにホウ素金属を用い、且つ、クエン酸マグネシウムに対するホウ素金属の割合が5重量%となるようにした他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、比較炭素Z2と称する。
本発明炭素A1、A3及び比較炭素Z1における酸化マグネシウムの収率と、炭素の収率とを調べた。その結果を表1に示す。
本発明炭素A1、A3及び比較炭素Z1を製造する段階における炭素材料(具体的には、硫酸溶液で洗浄する前の炭素材料)のX線回折を行ったので、その結果を図2に示す。
図2から明らかなように、比較炭素Z1の製造段階における炭素材料では、酸化マグネシウムのピークしか認められないのに対して、本発明炭素A1の製造段階における炭素材料では、酸化マグネシウムのピークの他にMg3(BO3)2のピークが認められる。更に、本発明炭素A3の製造段階における炭素材料では、酸化マグネシウムのピークのピークは殆どみとめられず、Mg3(BO3)2のピークとMg2B2O5のピークとが認められる。このように、もともと鋳型である酸化マグネシウムとホウ酸とが反応していることが分かる。
2Mg3(BO3)2+2H3BO3→3Mg2B2O5+3H2O・・・(2)
本発明炭素A1〜A3及び比較炭素Z1のX線回折の測定を行ったので、その結果を図3に示す。
図3から明らかなように、本発明炭素A1〜A3及び比較炭素Z1で大きな変化は無く、ホウ素を添加しても結晶性などに目立った変化はないことがわかる。
比較炭素Z2のX線回折の測定を行ったので、その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、硫酸溶液で洗浄してしても金属ホウ素を除去できず、金属ホウ素が多量に残存していることが認められる(図4のA参照)。
本発明炭素A1、A3及び比較炭素Z1を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察したので、その結果を図5〜図7(図5は本発明炭素A1の写真、図6は本発明炭素A3の写真、図7は比較炭素Z1の写真である)に示す。また、本発明炭素A3を、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて観察したので、その結果を図8に示す。
上記本発明炭素A3のXPS(X線光電子分光)分析を行ったので、その結果を図9に示す。また、比較炭素Z1のXPS分析を行ったので、その結果を図10に示す。
図9から明らかなように、表面状態の分析において、B−O結合〔酸化ホウ素(BO3)に起因する結合〕、B−C結合〔炭化ホウ素(B4C)に起因する結合〕がほとんど認められない一方、C−B−O結合に起因するピークが顕著に認められる。したがって、本発明炭素A3の表面においけるホウ素の状態は、単に付着、担持、吸着しているのではなく、更には、酸化ホウ素や炭化ホウ素の状態で存在するものでもなく、炭素表面にC−B−Oという結合状態で存在していることがわかる。
一方、図10から明らかなように、比較炭素Z1では、ホウ素に起因するピークは認められなかった。
本発明炭素A1〜A3及び比較炭素Z1を、77Kで窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線を求めたので、その結果を図11に示す。また、同様の方法で、比較炭素Z2の窒素吸着等温線を求めたので、その結果を図12に示す。尚、図12においては、比較炭素Z1の窒素吸着等温線についても記載している。
図11から明らかなように、低圧力領域では、本発明炭素A1〜A3は比較炭素Z1に比べて、吸着等温線が下方に移動していることが認められるが、高圧力領域では、本発明炭素A1〜A3は吸着等温線が上方に移動していることが認められる。これのような結果となったのは、本発明炭素A1〜A3は比較炭素Z1に比べて、ミクロ孔が減少し、比較的大きなメソ孔、あるいはマクロ孔が増えたためである。
本発明炭素A1〜A3及び比較炭素Z1のホウ素含有量(重量割合)を、蛍光X線装置を用いて測定した。また、上述の77Kにおける窒素吸着等温線からBET比表面積と全細孔容積とを求めると共に、77Kにおける窒素吸着等温線からDR法でミクロ孔容積を求めた。更に、上記全細孔容積から上記ミクロ孔容積を減算することにより、メソ孔容積を求めた。これらの結果を表2に示す。
本発明炭素A1〜A3及び比較炭素Z1におけるメソ孔の細孔径分布を図13に示す。
図13から明らかなように、ホウ酸の添加量が高くなるに連れて、大きなメソ孔の割合が高くなっていることが認められる。メソ孔の鋳型となる酸化マグネシウムとホウ酸が反応することにより、鋳型の体積が大きくなり、メソ孔容量が増大した可能性がある。
本発明炭素A1〜A3及び比較炭素Z1において、水に対する分散性を確認すべく、以下に示す実験を行ったので、その結果を表3に示す。実験は、イオン交換水100gに各多孔質炭素を0.03重量%加え、40kHzの超音波を3分印加した後16時間放置し、その後、波長550nmにおける透過率を測定した。測定は、紫外可視吸光光度計にて光路長1cmのセルを用いて行った。
2:ホウ酸
3:酸化ホウ素
4:酸化マグネシウム
6:分解途中のクエン酸マグネシウム
7:鋳型
Claims (8)
- 少なくとも表面にC−B−O結合構造が存在し、77Kにおける窒素吸着等温線から求められるBET比表面積が300m2/g以上であり、
メソ孔容積が1.23ml/g以上であることを特徴とする多孔質炭素。 - メソ孔容積が1.79ml/g以上である、請求項1に記載の多孔質炭素。
- 少なくとも表面にC−B−O結合構造が存在し、77Kにおける窒素吸着等温線から求められるBET比表面積が300m 2 /g以上であり、
77Kにおける窒素吸着等温線から求めた全細孔容積が、77Kにおける窒素吸着等温線からDR法で求めたミクロ孔容積より1ml/g以上大きいことを特徴とする多孔質炭素。 - ホウ素の含有量が、100〜10000ppmである、請求項1〜3の何れか1項に記載の多孔質炭素。
- イオン交換水100gに多孔質炭素を0.03重量%加え、40kHzの超音波を3分印加し、更に16時間放置した後に、波長550nmの光線を用いた場合の透過率が80%以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載の多孔質炭素。
- ホウ酸とクエン酸マグネシウムとを混合して混合物を作製するステップと、
上記混合物を、真空雰囲気、非酸化性雰囲気、又は還元性雰囲気で加熱焼成し、ホウ酸から生じた酸化ホウ素と酸化マグネシウムとの反応生成物からなる鋳型を含む焼成物を作製するステップと、
上記焼成物中の上記鋳型を除去するステップと、
を有することを特徴とする多孔質炭素の製造方法。 - クエン酸マグネシウムに対するホウ酸の割合が、0重量%を超え100重量%以下に規制される、請求項6に記載の多孔質炭素の製造方法。
- 上記加熱焼成時の温度が500℃以上1500℃以下である、請求項6又は7に記載の多孔質炭素の製造方法。
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