JP5607439B2 - 色素増感太陽電池用電解液及びそれを備えた色素増感太陽電池 - Google Patents
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Description
第4級アンモニウム塩類、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、ピロリジニウム塩等のオニウム塩は、カチオン及びアニオン種の組合せによっては室温で液状を呈するイオン液体となることは一般的に知られており、色素増感太陽電池も含めて電解液を使用する多くのデバイスへの使用が検討されている(例えば特許文献1〜7)。
しかしながら、イオン液体は有機溶媒に比べて大幅に粘度が高いため、イオン液体を溶媒として用いた電解液を色素増感太陽電池に用いても高い変換効率を得ることが困難である欠点がある。
しかしながら、ヨウ化物のイオン液体であっても上述の他のイオン液体同様、粘度が高いことに加えて、ヨウ素アニオンの濃度が高いため漏れ電流が大きくなり、実用的な高い変換効率を得ることが困難である欠点がある。
しかしながら、難揮発化の程度は、塩自体が室温で液状であるか否かとは本質的に無関係であり、また、混合する有機溶媒との親和性についても塩が室温で液状であるか否かとは、必ずしも高い変換効率と電気化学的安定性を両立できない問題がある。
また、特許文献11ではヨウ化物アニオン以外のアニオンを有するイオン液体を電解質として共存させているが、酸化還元対としてキャリアの輸送に寄与しない電解質を余分に混合することは電解液の粘度を上昇させ、返って変換効率を低下させてしまう問題がある。
従来は、ヨウ化物塩がイオン液体であるかどうかにのみ注目し、ヨウ化物塩の構造が有機溶媒への溶解性に及ぼす影響や、太陽電池特性との関係性は評価されていない。したがって、ヨウ化物塩がイオン液体か否かに係わらず、有機溶媒に合わせてヨウ化物の構造を最適化、すなわち、ヨウ化物アニオンと塩を構成するカチオンの分子構造を最適化する必要がある。
非特許文献1で開示されているように、ヨウ化イミダゾリウム塩は比較的良好な変換効率が得られるものの、電気化学的安定性は不十分であるという課題もある。
前記電解質層が[1]から[3]のいずれかに記載の色素増感太陽電池用電解液を含んでなることを特徴とする色素増感太陽電池である。
電解質層10は、本発明の色素増感太陽電池用電解液を含有する電解質層である。前記色素増感太陽電池用電解液は、三ヨウ化物アニオン(I3 −)とヨウ化物アニオン(I−)とを含有する酸化還元対、ヨウ化ピロリジニウム塩、イオン性を有さない有機溶媒を含有しているものである。
炭素数が4を超えると、分子サイズが大きくなり移動度が低下し、変換効率が下がるため好ましくない。炭素数を1〜4にすることで高い変換効率を得ることができる。
また、R1とR2が環を形成しないことが望ましく挙げられる。R1とR2で6員環以上の大きさの環を形成すると移動度が低下するため望ましくなく、5員環、即ちビピリロリジニウム塩では、溶媒への溶解度が低下するため望ましくない。また、4員環では耐熱性が低いため望ましくない。
さらに、ヨウ化ピロリジニウム塩におけるR1及びR2の少なくとも一つがメチル基であり、かつ、R1とR2の炭素数の合計が2〜5であることが望ましい。
これらの中でも特に、ヨウ化N−エチル−N−メチルピロリジニウム又はヨウ化N,N−ジメチルピロリジニウムが好ましく挙げられる。理由としては、分子サイズが小さく、かつ、有機溶媒における溶解性に優れているため、移動度が大きくなり、その結果、色素増感太陽電池の変換効率が高くなると考えられる。
また、単独では室温で固体であっても、他の有機溶媒や酸化還元対と混合することで凝固点降下を起こし、使用範囲温度で液状であれば、単独では固体であっても構わない。
電極基体3を構成する透明基体1は、可視光を透過するものが使用でき、透明なガラスが好適に利用できる。また、ガラス表面を加工して入射光を散乱させるようにしたもの、半透明なすりガラス状のものも使用できる。また、ガラスに限らず、光を透過するものであればプラスチック板やプラスチックフィルム等も使用できる。
透明導電膜2としては、可視光を透過して、かつ導電性を有するものが使用でき、このような材料としては、例えば金属酸化物が挙げられる。特に限定はされないが、例えばフッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と略記する。)や、酸化インジウム、ITO、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛等が好適に用いることができる。
多孔質金属酸化物半導体4としては、特に限定はされないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等が挙げられ、特に二酸化チタン、さらにはアナターゼ型二酸化チタンが好適である。
増感色素層5としては、太陽光により励起されて前記金属酸化物半導体層4に電子注入できるものであればよく、一般的に色素増感太陽電池に用いられている色素を用いることができるが、変換効率を向上させるためには、その吸収スペクトルが太陽光スペクトルと広波長域で重なっていて、耐光性が高いことが望ましい。
増感色素は、特に限定はされないが、ルテニウム錯体、特にルテニウムポリピリジン系錯体が望ましく、さらに望ましいのは、Ru(L)(L’)(X)2で表されるルテニウム錯体が望ましい。ここでLは4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、もしくはその4級アンモニウム塩及びカルボキシル基が導入されたポリピリジン系配位子であり、L’はLと同一、もしくは4,4’−置換2,2’−ビピリジンであり、L’の4,4’位の置換基は、長鎖アルキル基、アルキル置換ビニルチエニル基、アルキル又はアルコキシ置換スチリル基、チエニル基誘導体などが挙げられる。また、XはSCN、Cl、CNである。例えば、ビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体等が挙げられる。
太陽電池の内部抵抗を小さくするため対極の導電性基体7は電気伝導度が高いことが望ましい。また、上記のように本発明では電解質中に酸化還元対として三ヨウ化物アニオン(I3 −)とヨウ化物アニオン(I−)を用いているため、該導電性基体にはヨウ素電解液に対する耐蝕性が高いことが望ましい。
導電性基体7の表面に担持された触媒8は、電解質層10中に含まれる酸化還元対、本発明では、三ヨウ化物アニオン(I3 −)をヨウ化物アニオン(I−)に還元することができれば特に限定はされず、既知の物質が使用できるが、例えば、遷移金属、導電性高分子材料、又は炭素材料等を好適に用いることができる。
その形状は、用いる触媒の種類により異なるため特には限定されない。上述の触媒材料のうち少なくとも1種類以上からなる触媒材料を、導電性基体7の表面に設けて形成することができる。あるいは導電性基体7を構成する材料の中へ上記触媒材料を組み込むことも可能である。
実施例に用いるヨウ化物塩の加熱乾燥特性と電解液における電気化学的安定性の評価結果を実施した。
ヨウ化物塩を真空下100℃で16時間乾燥させた際の加熱乾燥特性を評価した。なお、0.1%未満まで乾燥できた場合には○、0.1%以上の水分が残って場合には×として評価した。評価結果を表1に示す。
電気化学的安定性の評価方法は、プロピレンカーボネートに、各ヨウ化物塩を0.50mol/Lの濃度で溶解させ、作用極を、面積を1cm2に規定したFTOガラス、対極を白金線、参照極をAg/Ag+電極として、掃引速度5mV/secでリニアスイープボルタンメトリーを行ない、電位窓測定を実施した。評価結果を表1に示す。
以下の表2、3に、有機溶媒をそれぞれエチルイソプロピルスルホン、メトキシプロピオニトリルとして、ヨウ素濃度0.05mol/L、各ヨウ化物塩濃度0.7mol/L調製時における、ヨウ化物塩の溶解性評価結果を示す。なお、室温で完全に溶解した場合を○、飽和して完全には溶解しなかった場合に×とした。
<多孔質金属酸化物半導体層の形成>
透明導電膜付きの透明基体としてFTOガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に酸化チタンペースト(日揮触媒化成工業株式会社製チタニアペースト PST-18NR)をスクリーン印刷し、100℃で1時間乾燥後、大気雰囲気下550℃で60分間焼成してそのまま室温となるまで放置し、15μm前後の厚さの多孔質酸化チタン層を形成させた。さらに、前記多孔質酸化チタン層の上に、酸化チタンペースト(日揮触媒化成工業株式会社製チタニアペースト PST-400C)をスクリーン印刷で重ね塗りした後、同様に焼成を行なって、20μm前後の厚さとした多孔質金属酸化物半導体層を完成させ、多孔質酸化チタン半導体電極とした。
増感色素として、一般にN719dyeと呼ばれるビス(4−カルボキシ−4’−テトラブチルアンモニウムカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体(Solaronix社製)を使用した。70℃にした前記多孔質酸化チタン半導体電極を、色素濃度0.5mmol/Lのアセトニトリル・t−ブチルアルコール(1:1)混合溶液中に浸漬し、遮光下48時間ゆっくりと浸透させた。その後脱水アセトニトリルにて余分な色素を洗浄してから風乾することで、太陽電池の光電極として完成させた。
対極として、アンカー層として、スパッタ法によりガラス基板上にTi(膜厚50nm)を成膜したのち、該Ti層上にスパッタ法によりPt(膜厚150nm)を成膜させた白金対極(ジオマテック製)を使用した。
実施例1〜4では、それぞれ電解液(1)〜(4)を用い、比較例1、2では、それぞれ電解液(5)、(6)を用いた。
前記のように作製した光電極と、電気ドリルで0.6mmφの電解液注入孔を2個設けた対極を対向するよう設置し、両電極間に、スペーサーとして厚み50μmのPFA樹脂シートと、スペーサーの外周に熱可塑性シート(タマポリ製アイオノマー樹脂 HM−52、膜厚50μm)を重ならないように挟み、熱圧着する事により両電極を接着した。次に、前記のように作製した電解液を電解液注入孔から毛管現象にて両電極間に含浸させ、電解液注入孔上に可塑性シートを挟んで1mm厚のガラス板を置き、再度加熱圧着することで封止を実施し、太陽電池素子を作製した。
上記の太陽電池セルについて、5mm角の窓をつけた光照射面積規定用マスクを装着させた上で、分光計器製ソーラシュミレータを用い、光量100mW/cm2、AM1.5の条件で光源の照射強度を調整した擬似太陽光を照射しながら、エーディーシー製直流電圧電流発生装置を用いて開放電圧(以下、「Voc」と略記する。)、短絡電流密度(以下、「Jsc」と略記する。)、形状因子(以下、「FF」と略記する。)、及び光電変換効率を評価した。評価結果を表4に併せて示す。
「Voc」、「Jsc」、「FF」及び光電変換効率の各測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。
実施例5〜8及び比較例3〜6は、表5に対応する電解液を用いて、実施例1と同様に太陽電池セルを作製し、評価した。表5に太陽電池セルの光電変換特性の評価結果を示す。
ここで、比較例5で使用したヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムは室温で液状を示すヨウ化物塩のイオン液体であるが、実施例5、6で使用した、固体であるヨウ化N,N−ジメチルピロリジニウム及びヨウ化N−ブチル−N−メチルピロリジニウムの方が優れていることが判る。すなわち、イオン液体を用いれば固体塩を用いるよりも必ずしも優れた変換効率が得られるわけではないことが判る。
ヨウ化ピロリジニウム塩に置換するアルキル基の炭素数が4までは優れた変換効率が得られるが、炭素数が6であるヨウ化N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウム(比較例3)になると、変換効率が低くなることがわかる。また、比較例4より、ヨウ化ピロリジニウム塩に置換するアルキル基の炭素数が4でも、メトキシエチル基では変換効率が低くなることが判る。
2 透明導電膜
3 電極基体
4 多孔質金属酸化物半導体層
5 増感色素層
6 光電極
7 導電性基体
8 触媒層
9 対極
10 電解質層
Claims (3)
- 三ヨウ化物アニオンとヨウ化物アニオンとを含有する酸化還元対と、イオン性を有しない有機溶媒と、ヨウ化N−エチル−N−メチルピロリジニウム又はヨウ化N,N−ジメチルピロリジニウムを含有することを特徴とする色素増感太陽電池用電解液。
- イオン性を有しない有機溶媒が、ニトリル類、ラクトン類、環状カーボネート類、鎖状スルホン類、環状スルホン類からなる群より選ばれる1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池用電解液。
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