JP5477463B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
H2→2H++2e− (I)
式(I)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、式(I)で生じたプロトンは、水和した状態で、固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に、電気浸透により移動する。
2H++(1/2)O2+2e−→H2O (II)
カソードで生成した水は、主としてガス拡散層を通り、外部へと排出される。このように、燃料電池は、水以外の排出物がなく、クリーンな発電装置である。
白金及び白金合金は、白金の高い触媒性能のため、燃料電池のカソード及びアノードにおける電極触媒として好んで使用されている。しかし、燃料電池を商品化するにあたって、従来の白金触媒を用いたカソードにおける酸素還元反応速度の遅さ、及び、白金の高いコストが、重大な障害となっていた。このような課題を解決することを目的とした触媒として、特許文献1には、白金原子の原子的薄層によって被覆されたパラジウム又はパラジウム合金を含む粒子複合材が開示されている。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、コアシェル型触媒微粒子を電極触媒層に含み、当該コアシェル型触媒微粒子の触媒活性を高く維持できる燃料電池を提供することを目的とする。
(上記式(1)及び式(2)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1は前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R2は前記金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。)
(上記式(1)及び式(4)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1は前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R3は前記金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。)
(上記式(1)、式(2)及び式(4)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1は前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R2は前記第1の金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
R3は前記第2の金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。)
このような課題に対し、発明者らは、コア部と、当該コア部を被覆するシェル部を備えるコアシェル型触媒に着目した。当該コアシェル型触媒は、コア部に比較的材料コストの低い材料を用いることにより、触媒反応にほとんど関与しない粒子内部を、低いコストで形成することができる。また、シェル部に高い触媒活性を有する材料を用いると、当該材料をバルクで用いた場合よりも、より高い触媒活性を示すという利点がある。
また、コアシェル型触媒も、従来の白金触媒と同様に、オストワルド熟成に従い、相対的に粒径の小さな粒子が溶解し、相対的に粒径の大きな粒子が成長する。このような現象は、粒子の大きさに関係なく、粒径の異なる粒子が共に存在すると必ず生じる。コアシェル型触媒の場合、触媒粒子が単に溶解するだけでなく、溶出したイオンが別の触媒粒子の成長を促進させることにより、触媒活性の低下が引き起こされる。
なお、本発明における粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による平均粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
本発明においてコアシェル型触媒微粒子を採用することにより、上述したように、シェル部における高い触媒活性と、コアシェル構造を採用することによるコスト削減の2つの効果を得ることができる。
図2中の破線のグラフは、白金担持カーボン(以下、Pt/Cと称する場合がある)触媒微粒子の、触媒活性と触媒粒径との相関を示し、縦軸に白金表面積当たりの活性(mA/cm2)を、横軸に粒径(nm)をとったグラフである。図から分かるように、触媒粒径が大きくなる程、触媒活性は高くなる。しかし、触媒活性の伸び率は、触媒粒径が大きくなる程小さくなる。
図から分かるように、コアシェル型触媒微粒子、及び、Pt/C触媒微粒子の貴金属コスト当たりの表面積は、いずれも、粒径が大きくなるほど低下する。また、粒径の増加に伴う貴金属コスト当たりの表面積の減少率は、コアシェル型触媒微粒子の方がPt/C触媒微粒子と比較して小さい。さらに、どの粒径においても、コアシェル型触媒微粒子の貴金属コスト当たりの表面積は、Pt/C触媒微粒子の貴金属コスト当たりの表面積よりも大きい。これらの結果は、Pt/C触媒微粒子と比較して、コアシェル型触媒微粒子の貴金属コスト当たりの表面積が高く、粒径増加に比較的影響されにくいことを示している。
まず、Pt/C触媒微粒子について検討する。白金表面積当たりの活性を示す破線のグラフは、粒径4nm以上が目標ラインである。これに対し、Pt/C触媒微粒子の貴金属コスト当たりの表面積を示す実線のグラフは、粒径2nm以下が目標ラインである。したがって、Pt/C触媒微粒子は、低い貴金属コスト及び高い触媒活性を同時に達成することができない。
次に、コアシェル型触媒微粒子について検討する。コアシェル型触媒微粒子についても破線のグラフを適用する。上述したように、白金表面積当たりの活性を示す破線のグラフは、粒径4nm以上が目標ラインである。これに対し、コアシェル型触媒微粒子の貴金属コスト当たりの表面積を示す実線のグラフは、粒径10nm以下が目標ラインである。したがって、粒径4〜10nmのコアシェル型触媒微粒子であれば、低い貴金属コスト及び高い触媒活性を同時に達成することができる。
図3中に矢印で示すように、Pt/C触媒微粒子の貴金属コスト当たりの活性の最大値は、粒径が2nmの時に0.6mA/(cm2・円)であった。これに対し、コアシェル型触媒微粒子の貴金属コスト当たりの活性の最大値は、粒径が10nmの時に1.8mA/(cm2・円)であった。したがって、コアシェル型触媒微粒子の貴金属コスト当たりの活性の最大値は、Pt/C触媒微粒子の貴金属コスト当たりの活性の最大値の3倍である。
上述した触媒活性及びコストの観点からは、コアシェル型触媒微粒子の粒径は4〜10nmが好ましい。
図から分かるように、触媒粒径が大きくなる程、ECSA維持率は高くなる。しかし、ECSA維持率の伸び率は、触媒粒径が大きくなる程小さくなる。
図から分かるように、平均粒径が4nmの場合、及び、2nmの場合のいずれにおいても、分散が小さい方が、ECSA維持率は高くなる。また、平均粒径が4nmの場合は、2nmの場合と比較して、ECSA維持率は高くなることが分かる。したがって、粒径分布が単一分散に近く、且つ、平均粒径が大きい方が、ECSA維持率は高くなることが分かる。
なお、本発明に使用されるコアシェル型触媒微粒子の平均粒径は、後述するオストワルド熟成の考察を併せて検討すると、6〜20nmであることが好ましく、6〜10nmであることが特に好ましい。
仮に、コア部に対するシェル部の被覆率が、0.8未満であるとすると、電気化学反応においてコア部が溶出してしまい、その結果、コアシェル型触媒微粒子が劣化してしまうおそれがある。
X線光電子分光(XPS:X−ray photoelectron spectroscopy)や、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS:Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)等を用いて、コアシェル型触媒微粒子の最表面に存在する成分を調べることによって、コア部に対するシェル部の被覆率を算出することもできる。
一方、シェル部としては、結晶系が立方晶系であり、a=3.7〜4.3Åの格子定数を有する金属結晶を含むシェル部を採用することができる。このような金属結晶を形成する材料の例としては、白金、金、イリジウム、ルテニウム、白金−イリジウム合金(PtIr)、白金−ルテニウム合金(PtRu)等の金属材料を挙げることができ、この中でも、白金をシェル部に含むことが好ましい。
上記格子定数を有するコア金属材料、及び、上記格子定数を有する金属結晶を含むシェル部を共に採用することにより、コア部−シェル部間において格子不整合が生じることがなく、したがって、コア部に対するシェル部の被覆率の高いコアシェル型触媒微粒子を得ることができる。
担体として使用できる導電性材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;導電性酸化物;が挙げられる。
コアシェル型触媒微粒子の製造方法は、少なくとも、(1)コア微粒子を準備する工程、及び、(2)コア部にシェル部を被覆する工程を有する。本製造方法は、必ずしも上記2工程のみに限定されることはなく、上記2工程以外にも、例えば、後述するようなろ過・洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)及び(2)並びにその他の工程について、順に説明する。
本工程は、上述したコア金属材料を含むコア微粒子を準備する工程である。
コア微粒子として、当該微粒子の表面に、コア金属材料の{100}面を少ない割合で有する微粒子を準備してもよい。コア金属材料の{100}面以外の結晶面を選択的に有するコア微粒子の製造方法は、従来から知られている方法を採用できる。
例えば、パラジウム微粒子表面に、Pd{111}面が選択的に現れたものを製造する方法は、文献(乗松 他,触媒 vol.48(2),129(2006))等に記載されている。
コア微粒子上の結晶面を測定する方法としては、例えば、TEM等によってコア微粒子の表面の数か所を観察する方法が挙げられる。
ただし、コア微粒子としてパラジウム微粒子を使用する場合には、パラジウム微粒子の平均粒径が大きい程、粒子表面に占めるPd{111}面の面積の割合が高くなる。これは、Pd{111}面、Pd{110}面及びPd{100}面の内、Pd{111}面が最も化学的に安定した結晶面であるためである。したがって、コア微粒子としてパラジウム微粒子を使用する場合には、パラジウム微粒子の平均粒径は、10〜100nmであることが好ましい。なお、パラジウム微粒子1つ当たりのコストに対する、パラジウム微粒子の表面積の割合が高いという観点から、パラジウム微粒子の平均粒径は、10〜20nmであることが特に好ましい。
本工程は、上記コア微粒子をコア部として、当該コア部にシェル部を被覆する工程である。
コア部に対するシェル部の被覆は、一段階の反応を経て行われてもよいし、多段階の反応を経て行われてもよい。
以下、2段階の反応を経てシェル部の被覆が行われる例について主に説明する。
特に、コア微粒子としてパラジウム微粒子を使用し、シェル部に白金を使用する場合には、Cu−UPD法によって、白金の被覆率が高く耐久性に優れるコアシェル型触媒微粒子を製造できる。これは、Cu−UPD法によって、Pd{111}面やPd{110}面に銅を被覆率1で析出させることができるためである。
まず、導電性炭素材料に担持されたパラジウム(以下、Pd/Cと称する)粉末を水に分散させ、ろ過して得たPd/Cペーストを電気化学セルの作用極に塗工する。当該作用極としては、白金メッシュや、グラッシーカーボンを用いることができる。
次に、電気化学セルに銅溶液を加え、当該銅溶液中に上記作用極、参照極及び対極を浸し、Cu−UPD法により、パラジウム粒子の表面に銅の単原子層を析出させる。具体的な析出条件の一例を下記に示す。
・銅溶液:0.05mol/L CuSO4と0.05mol/L H2SO4の混合溶液(窒素をバブリングさせる)
・雰囲気:窒素雰囲気下
・掃引速度:0.2〜0.01mV/秒
・電位:0.8V(vsRHE)から0.4V(vsRHE)まで掃引した後、0.4V(vsRHE)で電位を固定する。
・電位固定時間:5秒間〜10分間
なお、電位固定時間は作業時間によって決定される。電位固定時間は短い方が好ましい。上記5秒間〜10分間という電位固定時間は、μgスケールの場合に限られる。
上記置換メッキによって、パラジウム粒子表面に白金の単原子層が析出した、コアシェル型触媒微粒子が得られる。
上記コア微粒子を準備する工程の前には、コア微粒子の担体への担持が行われてもよい。コア微粒子の担体への担持方法には、従来から用いられている方法を採用することができる。
上記コア部にシェル部を被覆する工程の後には、コアシェル型触媒微粒子のろ過・洗浄、乾燥及び粉砕が行われてもよい。
コアシェル型触媒微粒子のろ過・洗浄は、製造された微粒子のコアシェル構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該ろ過・洗浄の例としては、純水を溶媒にして、ろ紙(Whatman社製、#42)等を用いて吸引ろ過して分離する方法が挙げられる。
コアシェル型触媒微粒子の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されない。当該乾燥の例としては、80℃の温度条件下、16時間真空乾燥する方法が挙げられる。
コアシェル型触媒微粒子の粉砕は、固形物を粉砕できる方法であれば特に限定されない。当該粉砕の例としては、乳鉢等を用いた粉砕や、ボールミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等のメカニカルミリングが挙げられる。
コアシェル型触媒微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する金属ナノ微粒子は、主に、コアシェル型触媒微粒子の代わりに溶解する役割を担う(以下、このような金属ナノ微粒子を第1の金属ナノ微粒子と称する)。
このように第1の金属ナノ微粒子が溶解し、コアシェル型触媒微粒子周囲のシェル金属材料のイオン濃度が高くなることによって、電極内の濃度平衡により、コアシェル型触媒微粒子のシェル部の溶出速度をさらに遅くすることができる。
(上記式(1)及び式(2)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1はコアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R2は第1の金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。)
k1は、白金溶解反応(Pt→Pt2++2e−)の速度定数である。また、n1は当該反応に関わる電子数(すなわち2)である。
θvacは、酸化物で覆われていない白金表面の割合であり、初期値は0を入力する。θvacは、1からθPtOを差し引いた値である。θPtOは、酸化物で覆われている白金表面の割合であり、以下の微分方程式を解くことにより算出できる。
U1 θは、白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャルであり、パラメータフィッティングにより変動する。例えば、U1 θ=1.178とすることができる。
上記式(1)及び式(2)中の大カッコの中は、eを底とする指数関数である第1項と、同様にeを底とする指数関数と白金イオン濃度との積である第2項からなる。当該第1項は溶解に寄与する項であり、当該第2項中のeを底とする指数関数は析出に寄与する項である。後述する実施例において示すように、溶解が問題となる開回路電圧(Open circuit voltage:以下、OCVと称する)時においては、第2項中のeを底とする指数関数は、第1項と比較して無視できる値となる。したがって、上記式(1)及び式(2)に示す反応速度r1及びr2は、いずれも正の値となる。
上記式(1)中のr1と、上記式(2)中のr2とが、上記式(3)の関係を満たすような場合、すなわち、第1の金属ナノ微粒子の溶解速度r2が、コアシェル型触媒微粒子の溶解速度r1よりも大きい場合には、第1の金属ナノ微粒子の溶解がコアシェル型触媒微粒子の溶解よりも速やかに進行するため好ましい。
例えば、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子と、平均粒径が2nmの第1の金属ナノ微粒子を使用する場合には、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が2nmの第1の金属ナノ微粒子を18分の1の量だけ添加すればよい。
一方、例えば、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子と、平均粒径が2nmの第1の金属ナノ微粒子を使用する場合、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が2nmの第1の金属ナノ微粒子を15分の1の量だけ添加すればよい。
さらに、例えば、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子と、平均粒径が2nmの第1の金属ナノ微粒子を使用する場合、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が2nmの第1の金属ナノ微粒子を11分の1の量だけ添加すればよい。
このように、オストワルド熟成の観点からは、コアシェル型触媒微粒子と第1の金属ナノ微粒子の各平均粒径によって、耐久性に効果がある添加量が異なる。
コアシェル型触媒微粒子の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する金属ナノ微粒子は、主に、コアシェル型触媒微粒子の代わりに、コアシェル型触媒微粒子から溶出したシェル金属材料を吸収し、表面にシェル金属材料を析出させて粒径成長する役割を担う(以下、このような金属ナノ微粒子を第2の金属ナノ微粒子と称する)。
(上記式(1)及び式(4)中、k1、θvac、αa,1、n1、F、R、T、E、U1 θ、σPt、MPt、ρPt、R1、CPt2+、αc,1は上述した通りであり、R3は第2の金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)である。)
後述する実施例において示すように、コアシェル型触媒微粒子表面上へのシェル金属材料の析出が問題となる出力点時においては、上記式(1)及び式(4)中の大カッコの中の第1項は、第2項中のeを底とする指数関数と比較して無視できる値となる。したがって、上記式(1)及び式(4)に示す反応速度r1及びr3は、いずれも負の値となる。
上記式(1)中のr1と、上記式(4)中のr3とが、上記式(5)の関係を満たすような場合、すなわち、第2の金属ナノ微粒子の析出速度r3の絶対値が、コアシェル型触媒微粒子の析出速度r1の絶対値よりも大きい場合には、第2の金属ナノ微粒子へのシェル金属材料の析出が、コアシェル型触媒微粒子へのシェル金属材料の析出よりも速やかに進行するため好ましい。
卑金属酸化物の例としては、チタン酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等が挙げられる。これらの卑金属酸化物は、溶出しがたい酸化物であるためコア部分として用いるのに適切である。
ポリマー微粒子の例としては、ポリアミド微粒子、ポリエチレン微粒子、ポリプロピレン微粒子等が挙げられる。
第2の金属ナノ微粒子のシェル部分は単原子層であることが好ましい。
例えば、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子と、平均粒径が20nmの第2の金属ナノ微粒子を使用する場合には、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が20nmの第2の金属ナノ微粒子を2.3分の1の量だけ添加すればよい。
一方、例えば、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子と、平均粒径が20nmの第2の金属ナノ微粒子を使用する場合、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が20nmの第2の金属ナノ微粒子を1.7分の1の量だけ添加すればよい。
さらに、例えば、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子と、平均粒径が20nmの第2の金属ナノ微粒子を使用する場合、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が20nmの第2の金属ナノ微粒子を1.4分の1の量だけ添加すればよい。
このように、オストワルド熟成の観点からは、コアシェル型触媒微粒子と第2の金属ナノ微粒子の各平均粒径によって、耐久性に効果がある添加量が異なる。
上記3種類の微粒子を併用する場合には、コアシェル型触媒微粒子への析出防止よりも、コアシェル型触媒微粒子の溶解防止を優先させることが好ましい。仮にコアシェル型触媒微粒子の表面にシェル金属材料が析出したとしても、析出量が少なければ、コアシェル型触媒微粒子は触媒能を失わない。しかし、コアシェル型触媒微粒子自体が溶解した場合には、触媒能は消失してしまう。
シェル金属材料が白金である場合には、電位Eにおいて、上記式(1)中に示す反応速度r1と上記式(2)中に示す反応速度r2とが上記式(3)の関係を満たすように、コアシェル型触媒微粒子の平均粒径R1と、第1の金属ナノ微粒子の平均粒径R2が設定され、且つ、上記式(1)中に示す反応速度r1と上記式(4)中に示す反応速度r3とが上記式(5)の関係を満たすように、コアシェル型触媒微粒子の平均粒径R1と、第2の金属ナノ微粒子の平均粒径R3が設定されていてもよい。
図1は、本発明の燃料電池の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。燃料電池100は、水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ということがある)1と、前記電解質膜1を挟んだ一対のカソード電極6及びアノード電極7とでなる膜・電極接合体8を含み、さらに前記膜・電極接合体8を電極の外側から挟んだ一対のセパレータ9及び10とでなる。セパレータと電極の境界にはガス流路11及び12が確保されている。通常は電極として、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とを積層して構成されたものが用いられる。すなわち、カソード電極6はカソード触媒層2とガス拡散層4とを積層したものからなり、アノード電極7はアノード触媒層3とガス拡散層5とを積層したものからなる。
高分子電解質膜は、上述した第1の金属ナノ微粒子及び/又は第2の金属ナノ微粒子を含んでいてもよい。
アノード触媒層及びカソード触媒層はいずれも、上述したコアシェル型触媒微粒子、導電性材料及び高分子電解質を含有する触媒インクを用いて形成することができる。触媒インクは、上述した第1の金属ナノ微粒子及び/又は第2の金属ナノ微粒子を含んでいてもよい。
高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜同様の材料を用いることができる。
ガス拡散層シートは、上述した第1の金属ナノ微粒子及び/又は第2の金属ナノ微粒子を含んでいてもよい。
上記したような方法によって触媒層を形成した電解質膜及びガス拡散層シートは、適宜、重ね併せて熱圧着等し、互いに接合することで、膜・電極接合体が得られる。
計算機:VersaPro VY16A/W−3(:商品名、NEC製)
ソフトウェア:主力プロセスモデリング解析ソフト(商品名:gPROMS、PSEジャパン製)
k1=3.4×10−10(mol・cm−2・s−1)
θvac(i,z)=0(初期値)
αa,1=0.5
n1=2(equiv.・mol−1)
F=96485(C・equiv.−1)
R=8.314(J・K−1・mol−1)
T=353(K)
U1 θ=1.188(V)
σPt=2.37×10−4(J・cm−2)
MPt=195(g・mol−1)
ρPt=21.95(g・cm−3)
CPt2+(z)=0(mol・L−1)(初期値)
αc,1=0.5
一方、OCV時の析出速度と、出力点時の析出速度とを比較すると、出力点時の析出速度は、OCV時の析出速度の105倍程度である。すなわち、OCV時においては、白金微粒子の析出は無視できることが分かる。
以上の計算結果から、出力点時においては、専ら白金微粒子の析出について検討すればよく、OCV時においては、専ら白金微粒子の溶解について検討すればよいことが分かる。
表2に記載された値が高い程、コアシェル型触媒微粒子と白金微粒子を同じ量添加した時に、コアシェル型触媒微粒子の破壊を未然に防ぐ効果が高いことを示す。
一方、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の溶解速度に対する、平均粒径が2nmの白金微粒子の溶解速度の比は15倍であることから、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が2nmの白金微粒子を15分の1の添加することによって、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の耐久性が2倍向上することが分かる。
また、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子の溶解速度に対する、平均粒径が2nmの白金微粒子の溶解速度の比は11倍であることから、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が2nmの白金微粒子を11分の1の添加することによって、平均粒径が6nmのコアシェル型触媒微粒子の耐久性が2倍向上することが分かる。
また、コアシェル型触媒微粒子の平均粒径と、白金微粒子の平均粒径との差が大きい程、溶解に対する耐久性の効果が高いことが分かる。
表3に記載された値が高い程、コアシェル型触媒微粒子と白金微粒子を同じ量添加した時に、コアシェル型触媒微粒子のシェル部の厚みの増加を未然に防ぐ効果が高いことを示す。
一方、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の析出速度に対する、平均粒径が20nmの白金微粒子の析出速度の比は1.7倍であることから、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が20nmの白金微粒子を1.7分の1の添加することによって、平均粒径が8nmのコアシェル型触媒微粒子の耐久性が2倍向上することが分かる。
また、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子の析出速度に対する、平均粒径が20nmの白金微粒子の析出速度の比は1.4倍であることから、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子の添加量に対し、平均粒径が20nmの白金微粒子を1.4分の1の添加することによって、平均粒径が10nmのコアシェル型触媒微粒子の耐久性が2倍向上することが分かる。
また、コアシェル型触媒微粒子の平均粒径と、白金微粒子の平均粒径との差が大きい程、析出に対する耐久性の効果が高いことが分かる。
ただし、白金微粒子の平均粒径が大きい程、析出に対する耐久性の効果と共にコストも上昇するため、実際に添加できる白金微粒子の平均粒径の上限値は、白金のコストによって変わる。
2 カソード触媒層
3 アノード触媒層
4,5 ガス拡散層
6 カソード電極
7 アノード電極
8 膜・電極接合体
9,10 セパレータ
11,12 ガス流路
100 燃料電池
Claims (9)
- 高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層及びガス拡散層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層及びガス拡散層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体を備える単セルを備える燃料電池であって、
コア部、及び、当該コア部を被覆し、シェル金属材料を含むシェル部を備えるコアシェル型触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層の少なくともいずれか一方に含み、
前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径とは異なる平均粒径を有し、且つ、前記シェル金属材料を含む金属ナノ微粒子を、前記高分子電解質膜、前記アノード触媒層、前記アノード側ガス拡散層、前記カソード触媒層及び前記カソード側ガス拡散層の少なくともいずれか一方に含むことを特徴とする、燃料電池。 - 前記金属ナノ微粒子が、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径を有する、請求項1に記載の燃料電池。
- 前記シェル金属材料が白金であり、
電位Eにおいて、下記式(1)中に示す反応速度r1と下記式(2)中に示す反応速度r2とが下記式(3)の関係を満たすように、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径R1と、前記金属ナノ微粒子の平均粒径R2が設定される、請求項1又は2に記載の燃料電池。
(上記式(1)及び式(2)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1は前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R2は前記金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。) - 前記金属ナノ微粒子が、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する、請求項1に記載の燃料電池。
- 前記金属ナノ微粒子が、当該微粒子表面のみに前記シェル金属材料を含む、請求項4に記載の燃料電池。
- 前記シェル金属材料が白金であり、
電位Eにおいて、下記式(1)中に示す反応速度r1と下記式(4)中に示す反応速度r3とが下記式(5)の関係を満たすように、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径R1と、前記金属ナノ微粒子の平均粒径R3が設定される、請求項1、4又は5に記載の燃料電池。
(上記式(1)及び式(4)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1は前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R3は前記金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。) - 前記金属ナノ微粒子を2種類以上含み、
異なる種類の金属ナノ微粒子の内、第1の金属ナノ微粒子が、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径よりも小さい平均粒径を有し、第2の金属ナノ微粒子が、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する、請求項1に記載の燃料電池。 - 前記第2の金属ナノ微粒子が、当該微粒子表面のみに前記シェル金属材料を含む、請求項7に記載の燃料電池。
- 前記シェル金属材料が白金であり、
電位Eにおいて、下記式(1)中に示す反応速度r1と下記式(2)中に示す反応速度r2とが下記式(3)の関係を満たすように、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径R1と、前記第1の金属ナノ微粒子の平均粒径R2が設定され、且つ、下記式(1)中に示す反応速度r1と下記式(4)中に示す反応速度r3とが下記式(5)の関係を満たすように、前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径R1と、前記第2の金属ナノ微粒子の平均粒径R3が設定される、請求項1、7又は8に記載の燃料電池。
(上記式(1)、式(2)及び式(4)中、
k1は白金溶解反応の速度定数(mol・cm−2・s−1)、
θvacは酸化物で覆われていない白金表面の割合、
αa,1は白金溶解反応の酸化方向移動係数、
n1は白金溶解反応に関わる電子数(equiv.・mol−1)、
Fはファラデー定数(C・equiv.−1)、
Rは気体定数(J・K−1・mol−1)、
Tは温度(K)、
Eは電位(V)、
U1 θは白金溶解反応の標準熱動力学ポテンシャル(V)、
σPtは白金粒子の表面張力(J・cm−2)、
MPtは白金原子質量(g・mol−1)、
ρPtは白金の密度(g・cm−3)、
R1は前記コアシェル型触媒微粒子の平均粒径(cm)、
R2は前記第1の金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
R3は前記第2の金属ナノ微粒子の平均粒径(cm)、
CPt2+は白金イオン濃度(mol・L−1)、
αc,1は白金溶解反応の還元方向移動係数である。)
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