(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、例えばエンジンと手動式変速機(マニュアルトランスミッション)とを搭載した車両に具体化しており、その車両制御システムを図1に示す。
図1に示すように、エンジン10の出力軸(クランク軸)11にはクラッチ装置12を介して変速機13が接続されている。エンジン10は例えば多気筒ガソリンエンジンであり、気筒ごとに燃料噴射手段としてのインジェクタ14と点火手段としての点火装置15(イグナイタ等)とを備えている。また、エンジン10には、エンジン始動時において当該エンジン10に初期回転(クランキング回転)を付与する始動装置としてのスタータ16が設けられている。なお、エンジン10はガソリンエンジンに限定されず、ディーゼルエンジンであってもよい。
クラッチ装置12は、エンジン出力軸11に接続されたエンジン10側の円板12a(フライホイール等)と、トランスミッション入力軸21に接続された変速機13側の円板12b(クラッチディスク等)とを備えており、ドライバによるクラッチペダル17の踏込み操作又は踏込みの解除操作により、両円板12a,12b同士が接触及び離間のいずれかの状態に切り替えられるようになっている。すなわち、クラッチペダル17の踏込み操作に応じてクラッチ装置12の断続が行われる。詳しくは、ドライバによりクラッチペダル17が踏み込まれると、両円板12a,12bが相互に離れてエンジン10から変速機13への動力が遮断され、その踏込み操作が解除されると、両円板12a,12bが相互に接触してエンジン10から変速機13に動力が伝達されるようになっている。なお、クラッチ装置12及びクラッチペダル17により、ドライバによる操作に応じて動力の遮断及び伝達を行うクラッチ手段が構成されている。
また、変速機13は、ドライバによるシフト装置22の手動操作により変速比が切り替えられるマニュアルトランスミッションであり、複数段の前進ギアと、後退ギアと、ニュートラルギアとを備えている。変速機13では、都度のシフト位置に応じた変速比により、トランスミッション入力軸21の回転がトランスミッション出力軸23の回転に変換される。
トランスミッション出力軸23には、ディファレンシャルギア25やドライブシャフト26等を介して車輪(駆動輪)27が接続されている。また、車輪27には、図示しない油圧回路等により駆動され、各車輪27に対して制動力を付与するブレーキアクチュエータ28が設けられている。
ECU30は、周知のマイクロコンピュータ等を備えてなる電子制御装置(制御手段)であり、本システムに設けられている各種センサの検出結果等に基づいて、インジェクタ14による燃料噴射量制御、点火装置15による点火制御など各種エンジン制御や、スタータ16の駆動制御、ブレーキアクチュエータ28による制動制御を実施する。センサ類について詳しくは、ECU30には、アクセル操作部材としてのアクセルペダル(図示略)の踏込み操作量を検出するアクセルセンサ31、クラッチペダル17の踏込み操作量(クラッチストローク)を検出するクラッチセンサ32、ブレーキペダル(図示しない)の踏込み操作量を検出するブレーキセンサ33、シフト装置22のシフト位置を検出するシフト位置センサ34、車速を検出する車速センサ35等が接続されており、これら各センサの検出信号がECU30に逐次入力されるようになっている。その他、本システムには回転速度センサや負荷センサ(エアフロメータ、吸気圧センサ)等も設けられているが、図示は省略している。
次に、上記のシステム構成において実施されるアイドルストップ制御について詳述する。アイドルストップ制御は、概略として、エンジン10のアイドル運転時に所定の停止条件が成立すると当該エンジン10を自動停止させるとともに、その後、所定の再始動条件が成立するとエンジン10を再始動させるものである。エンジン停止条件としては、例えば、アクセル操作量が0になったこと(アイドル状態になったこと)、ブレーキペダルの踏込み操作が行われたこと、車速が所定値以下まで低下したこと等の少なくともいずれかが含まれる。
また、エンジン再始動条件としては、クラッチペダル17の踏込み解除操作(クラッチリリース操作)の開始が含まれ、エンジン停止状態において、ドライバがクラッチペダル17を完全に踏み込んだ状態からその踏込みを解除し始めると、エンジン再始動条件が成立する。上記のクラッチ踏込み解除操作が、「動力遮断状態から動力伝達状態へのドライバによるクラッチ手段の操作」に相当する。
ところで、上記のようにクラッチペダル17の踏込み解除操作の開始が再始動条件として設定されている構成では、エンジン再始動の意思(車両発進の意思でもある)は無いがドライバがうっかりクラッチペダル17の踏込みをやめてしまうと、ドライバの意思とは無関係にエンジンの再始動処理が行われることが考えられる。そして、こうして意図しないエンジン再始動が行われると、エンジン始動不良や車両の意図しない発進動作が生じるおそれがある。
上記の不都合を解消すべく、本実施形態では、クラッチ装置12が動力遮断状態から動力伝達状態に移行する際のクラッチ操作状態、すなわちクラッチペダル17の踏込み解除時における操作状態を検出し、その操作状態に基づいてエンジンの再始動を許可又は禁止するようにしている。より具体的には、ドライバにエンジン再始動の意思がある場合にはクラッチ繋ぎ操作に時間を要するため、クラッチペダル17の踏込み解除操作がゆっくり行われるのに対し、ドライバにエンジン再始動の意思が無い場合には一気にクラッチペダル17の踏込み解除が行われることに着眼し、クラッチ繋ぎ操作の所要時間に応じてクラッチ操作状態を判断するようにしている。そして、エンジンの再始動を禁止する場合には、例えばエンジン再始動処理が開始されている状態で、その再始動処理が強制終了されるようになっている。
図2は、エンジン再始動制御についての処理手順を示すフローチャートであり、本処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実行される。
図2において、ステップS11では、今現在エンジン10が自動停止された状態であり、かつクラッチペダル17が完全に踏み込まれた後であるか否かを判定する。また、ステップS12では、シフト位置センサ34の検出信号に基づいて、今現在の変速機13のシフト位置が所定の前進ギア位置(例えば1速位置)であるか否かを判定する。ステップS11,S12は、エンジン再始動を行うことの前提条件を判定するための処理である。そして、ステップS11,S12が共にYESであれば後続のステップS13に進み、同ステップS11,S12の何れかがNOであれば本処理を終了する。なお、ステップS11,S12の各条件が成立した場合には、それがフラグ情報等により記憶され、その後、エンジン再始動が行われて始動完了するか又はエンジン再始動が強制終了されるまでその記憶内容(フラグ情報等)が保持される。これにより、ステップS11,S12の各条件が成立すると、それ以降、フラグ情報等に基づいてステップS11,S12が継続して肯定されるようになっている。
ステップS13では、クラッチセンサ32により検出したクラッチストロークSTがしきい値TH1以下であるか否かを判定する。このとき、クラッチストロークSTは踏込み量が大きいほど大きい値となるものであり、しきい値TH1は、クラッチペダル17の完全踏込み位置(クラッチストローク=100%の位置)付近に定められている。つまり、ドライバが、クラッチペダル17の完全踏込み状態からその踏込みを緩めると(すなわち、クラッチ踏込み解除操作が開始されると)、それに伴いST≦TH1となり、ステップS13が肯定判定されて処理がステップS14に進む。一方、ST>TH1であれば、そのまま本処理を一旦終了する。
ステップS14では、エンジン10の再始動処理を実行する。具体的には、燃料噴射指令、点火指令及びスタータ駆動指令をそれぞれ出力する。これにより、スタータ16によるクランキングが開始されるとともに各気筒に対してインジェクタ14による燃料噴射及び点火装置15による点火が開始される。
その後、ステップS15では、クラッチストロークSTがしきい値TH2以下であるか否かを判定する。このとき、しきい値TH2は、上述したしきい値TH1よりも小さい値として定められており(TH2<TH1)、さらに、エンジン10から変速機13に動力が伝達され始めるクラッチ繋ぎ点を基準に定められている。本実施形態では、しきい値TH2が、クラッチ繋ぎ点に相当するクラッチストロークよりも大きいクラッチストロークとして定められている。そして、ST≦TH2であれば、後続のステップS16に進み、ST>TH2であればそのまま本処理を終了する。ただし、しきい値TH2が、クラッチ繋ぎ点に相当するクラッチストロークとして定められていてもよい(TH2=クラッチ繋ぎ点でもよい)。
ステップS16では、ST≦TH2である場合における経過時間TXの計測を実施する。つまり、ST≦TH2になると、それ以後の経過時間が「TX」として計測される。この経過時間TXがクラッチ繋ぎ操作の所要時間に相当する。その後、ステップS17では、アクセルセンサ31の検出信号に基づいて、ドライバによりアクセルペダルが踏込み操作されたか否かを判定する。ステップS17がYESであればステップS18に進み、ステップS17がYESであればステップS19に進む。
ステップS18では、経過時間TXの計測を終了した後、本処理を終了する。かかる場合、燃料噴射指令や点火指令、スタータ駆動指令の出力(ステップS14)が中断されることはなく、エンジン再始動処理が継続されることとなる。つまり、ドライバによるアクセル操作が行われた場合にはクラッチ操作状態に関係なくエンジン再始動が許可され、これにより、エンジン10の始動が完了する。
一方、ステップS19では、クラッチストロークSTがしきい値TH3以下であるか否かを判定する。このとき、しきい値TH3は、上述したしきい値TH2よりも小さい値として定められており(TH3<TH2)、特にクラッチ繋ぎ点よりも小さい値として定められている。なお本実施形態では、しきい値TH2が「第1しきい値」に、しきい値TH3が「第2しきい値」に相当し、TH2〜TH3の範囲が「所定の操作量範囲」に相当する。
そして、ST≦TH3になると、ステップS20に進んで経過時間TXの計測を終了し、続くステップS21では、その時の経過時間TXが所定のしきい値K1未満であるか否かを判定する。ここで、ステップS21における経過時間TXは、クラッチストロークがしきい値TH2になった後、更にしきい値TH3になるまでの所要時間である。TX<K1である場合には、クラッチ操作の所要時間が比較的短くクラッチ踏込みの解除操作速度が大きいため(これがクラッチペダル17の短時間操作に相当する)、ドライバにエンジン再始動の意思が無い、すなわちドライバがうっかりクラッチペダル17を離してしまったと推測できる。これに対し、TX≧K1である場合には、クラッチ操作の所要時間が比較的長くクラッチ踏込みの解除操作速度が小さいため、ドライバにエンジン再始動の意思がある、すなわちドライバが半クラッチ操作をしていると推測できる。
そして、TX<K1である場合(ステップS21がYESの場合)にはステップS22に進み、TX≧K1である場合(ステップS21がNOの場合)にはそのまま本処理を終了する。TX≧K1である場合、燃料噴射指令や点火指令、スタータ駆動指令の出力(ステップS14)が中断されることはなく、エンジン再始動処理が継続されて、エンジン10の始動が完了する。
ステップS22では、エンジン10の再始動処理を中断する。具体的には、燃料噴射指令、点火指令及びスタータ駆動指令の出力をそれぞれ停止する。これにより、スタータ16によるクランキングが中断されるとともに各気筒に対する燃料噴射及び点火が停止される。加えて、同ステップS22では、ブレーキアクチュエータ28に対してブレーキ指令を出力する。ブレーキ指令は、ブレーキアクチュエータ28により各車輪27に対して制動力を付与する処理であり、同指令により、車両の動きが抑制される。
なお、エンジン10の再始動処理を中断する場合(エンジン再始動を強制終了する場合)には、その旨をドライバに通知することが望ましい。その通知手段としては、視覚や聴覚によりドライバへの通知を行うことが考えられ、具体的にはインストルメントパネル等の表示部にメッセージを表示することで通知したり、或いは音声メッセージにより通知したりする。
図3は、エンジン再始動処理をより具体的に説明するためのタイムチャートである。図3において、(a)は、ドライバの発進意思のもと、クラッチリリース(踏込み解除)に伴うエンジン再始動が行われる場合について示し、(b)は、ドライバによりうっかりクラッチリリース(踏込み解除)が行われ、エンジン再始動が行われなかった場合について示している。
さて、図3(a)において、タイミングt1以前には、エンジン停止状態にあり、かつクラッチペダル17が完全な踏込み状態(MAX)にある。そして、タイミングt1以降、クラッチペダル17の踏込み操作が解除され始める。これによりクラッチストロークが減少し、タイミングt2でしきい値TH1に達すると、エンジン10の再始動処理が実行される。すなわち、スタータ16によるクランキングや、インジェクタ14による燃料噴射、点火装置15による点火が開始される。
その後、ドライバによりクラッチ繋ぎ操作が行われることで、クラッチ装置12が半クラッチ状態となり、クラッチ繋ぎ期間αにてクラッチストロークがほぼ一定のまま保持される。このとき、タイミングt3では、クラッチストロークがしきい値TH2に達するため、経過時間TXの計測が開始される。そして、クラッチ繋ぎ期間αにおいてエンジン10から変速機13への動力伝達が行われるようになると、ドライバの意思に応じて車両が発進する(車両走行が開始される)。タイミングt4では、クラッチストロークがしきい値TH3に達し、経過時間TXの計測が終了される。このとき、TX≧K1であるため、エンジン再始動の強制終了が行われることはない。そしてその後、クラッチペダル17の踏込みが完全に解除されることで、クラッチストロークが0になる。
一方、図3(b)では、図3(a)と同様に、タイミングt11以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、エンジン10の再始動処理が実行される(タイミングt12)。ただし、図3(b)では、ドライバが他事に気を取られるなどしてクラッチペダル17の踏込みをうっかり解除してしまう場合を想定しており、クラッチストロークが一定値で保持されることなく、一気に0まで減少変化している。かかる場合、クラッチストロークがしきい値TH2からしきい値TH3に変化するまでの所要時間(t13〜t14間の時間)が短く、TX<K1となる。したがって、エンジン再始動の強制終了とブレーキ指令とが行われる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
エンジン再始動に際し、再始動処理の開始後においてクラッチリリース(踏込み解除)に伴い変化するクラッチ操作状態が検出され、該検出されたクラッチ操作状態に基づいてエンジンの再始動が許可又は禁止される構成としたため、ドライバにエンジン再始動の意思があるか無いかを考慮した上でエンジン再始動を許可又は禁止することができる。その結果、ドライバの意思に反するエンジン再始動を抑制し、エンジン再始動の適正化を図ることができる。
クラッチペダル17の踏込み解除時におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間(経過時間TX)を計測し、その所要時間が所定値よりも小さい場合にエンジン再始動を停止(強制終了)させる構成としたため、ドライバにエンジン再始動の意思が無くクラッチペダルの踏込み解除(クラッチリリース)が短時間で行われる場合に、エンジン再始動を確実に停止させることができる。ゆえに、ドライバの意思に相応したエンジン再始動を行わせることが可能となる。
クラッチペダル17の踏込み解除時において、クラッチストロークが、クラッチ繋ぎ点(クラッチミートポイント)を含む操作量範囲(TH2〜TH3の範囲)内にある場合に、クラッチ繋ぎ操作の所要時間(経過時間TX)を計測する構成としたため、ドライバによるエンジン再始動の意思を判断する上で好適な構成を実現できる。これは、クラッチ繋ぎ点付近で、ドライバのクラッチ操作が一時的に遅くなるためである。
特に、操作量範囲を規定するしきい値TH2が、クラッチ繋ぎ点に相当するクラッチストロークとして定められている場合には、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点に達したタイミング以降で所要時間が計測されることになる。そのため、クラッチ繋ぎ操作をするかしないかのドライバの意思を一層正確に把握できるようになる。
クラッチペダル17の踏込み解除時において、ドライバによるアクセル操作が行われた場合にはクラッチ操作状態に関係なくエンジン再始動が許可されるため、ドライバによる車両の発進意思が明らかに存在している場合に、その発進意思に応じてエンジンを再始動させることができる。
クラッチペダル17のうっかりリリースに伴いエンジン再始動が禁止される場合において、ブレーキアクチュエータ28による制動動作が行われる構成としたため、エンジン再始動が行われない場合における車両の予期せぬ発進を抑制できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、上述した第1の実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1の実施形態では、クラッチ繋ぎ操作の所要時間によりクラッチ操作状態を検出する構成であったが、本実施形態では、クラッチペダルの踏込み力(クラッチペダル踏力)によりクラッチ操作状態を検出する構成とする。そして、クラッチペダルの踏込みを解除する際に検出されたクラッチペダル踏力の減少側への変化量に基づいてエンジンの再始動を停止させる。
システム構成上の主たる相違点としては、図4に示すように、クラッチペダル踏力を検出するためのクラッチペダル踏力センサ41が設けられ、同センサ41の検出信号がECU30に逐次入力される。クラッチペダル踏力センサ41は、例えば、クラッチマスタシリンダの作動液の圧力(油圧)やピストン位置を検出することで、クラッチペダル踏力を検出する。
図5は、エンジン再始動制御についての処理手順を示すフローチャートであり、本処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実行される。
図5において、ステップS31〜S34は上述した図2のステップS11〜S14と同様の処理であり、これら各処理が実施されることで、エンジン10の再始動処理が開始される。その後、ステップS35では、アクセルセンサ31の検出信号に基づいて、ドライバによりアクセルペダルが踏込み操作されたか否かを判定する。ステップS35がNOであればステップS36に進み、ステップS35がYESであればそのまま本処理を終了する。
ステップS36では、クラッチストロークSTがしきい値TH10以下であるか否かを判定する。このとき、しきい値TH10は、ステップS33のしきい値TH1よりも小さい値として定められており(TH10<TH1)、クラッチ繋ぎ点(クラッチミートポイント)又はその近傍に定められるものなっている。本実施形態では、しきい値TH10が、クラッチ繋ぎ点に相当するクラッチストロークとして定められている。そして、ST≦TH10であれば、後続のステップS37に進み、ST>TH10であればそのまま本処理を終了する。
ステップS37では、クラッチペダル踏力センサ41により検出したクラッチペダル踏力がしきい値K2よりも大きいか否かを判定する。ここで、ステップS37は、クラッチストロークがしきい値TH10(クラッチ繋ぎ点)に達した時点でのクラッチペダル踏力の大きさを判定する処理であり、クラッチペダル踏力>K2である場合には、ドライバにエンジン再始動の意思があるためにクラッチペダル踏力の減少量が比較的小さくなっていると推定できる。これに対し、クラッチペダル踏力≦K2である場合には、ドライバにエンジン再始動の意思が無いために(すなわちドライバがうっかりクラッチペダル17を離してしまったために)クラッチペダル踏力の減少量が比較的大きくなっていると推定できる。
そして、クラッチペダル踏力>K2である場合にはそのまま本処理を終了する。このとき、エンジン再始動処理が継続されてエンジン10の始動が完了する。また、クラッチペダル踏力≦K2である場合にはステップS38に進む。ステップS38では、エンジン10の再始動処理を中断するとともに、ブレーキ指令を出力する(図2のステップS22と同様)。
図6は、エンジン再始動処理を具体的に説明するためのタイムチャートである。図6において、(a)は、ドライバの発進意思のもと、クラッチリリース(踏込み解除)に伴うエンジン再始動が行われる場合について示し、(b)は、ドライバによりうっかりクラッチリリース(踏込み解除)が行われ、エンジン再始動が行われなかった場合について示している。図6(a)のクラッチストローク推移は図3(a)のそれと同様であり、図6(b)のクラッチストローク推移は図3(b)のそれと同様である。
さて、図6(a)において、タイミングt21以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、エンジン10の再始動処理が実行される。タイミングt21以降、クラッチペダル踏力も減少する。その後、ドライバによりクラッチ繋ぎ操作が行われることで、クラッチ装置12が半クラッチ状態となる。クラッチストロークSTがしきい値TH10に達するタイミングt22では、クラッチペダル踏力がしきい値K2よりも大きいため、エンジン再始動処理が継続される(再始動処理の強制終了は行われない)。そしてその後、クラッチペダル17の踏込みが完全に解除されることで、クラッチペダル踏力が0になる。
一方、図6(b)では、タイミングt31以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、エンジン10の再始動処理が実行される。ただし、図5(b)では、ドライバが他事に気を取られるなどしてクラッチペダル17の踏込みをうっかり解除してしまう場合を想定しており、クラッチストロークSTがしきい値TH10に達するタイミングt32では、クラッチペダル踏力がしきい値K2未満となるため、エンジン再始動処理が強制終了される。
以上詳述した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ドライバの意思に反するエンジン再始動を抑制し、エンジン再始動の適正化を図ることができる。
また、クラッチペダルの踏込み解除(クラッチリリース)の際に検出されたクラッチペダル踏力の変化に基づいてエンジンの再始動を停止させる構成としたため、ドライバにエンジン再始動の意思が無く一気に踏込み解除が行われる場合に、エンジン再始動を確実に停止させることができる。ゆえに、ドライバの意思に相応したエンジン再始動を行わせることが可能となる。
クラッチペダル17の踏込み解除時において、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点(又はその付近)に達した時点でのクラッチペダル踏力に基づいてエンジンの再始動を停止させる構成としたため、ドライバによるエンジン再始動の意思を判断する上で好適な構成を実現できる。
ところで、クラッチペダルが踏込み操作されている状況で、ドライバによる車両運転以外の動作が検出された場合に、クラッチ操作状態に関係なくエンジン再始動が許可されないように構成してもよい。具体的には、車両ドアを開放する動作を検出する、又は運転席のシートベルトを取り外す動作を検出することにより、ドライバによる車両運転以外の動作を検出する。システム構成上の相違点としては、図4に示すように、車両ドアの開放を検出するドアスイッチ42、シートベルトの着脱を検出するシートベルトスイッチ43が設けられ、各スイッチ42,43の検出信号がECU30に逐次入力される。ドアスイッチ42、シートベルトスイッチ43がドライバ動作検出手段に相当する。そして、ECU30は、クラッチペダルの踏込み解除操作中に上記各スイッチ42,43によりドア開放やシートベルト取り外しが検出されると、仮に半クラッチ状態であることが検出されるような状況であっても、エンジン再始動を強制終了する。上記構成によれば、ドライバにより車両運転以外の動作がなされることで車両の発進意思が無いと考えられる場合に、意図しない車両発進(エンジン再始動)を抑制できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、上述した第1の実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1の実施形態では、所定の操作量範囲TH2〜TH3におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間によりクラッチ操作状態を検出する際、上記しきい値TH2をクラッチ繋ぎ点よりも大きい値とし、しきい値TH3をクラッチ繋ぎ点よりも小さい値としたが、本実施形態では、しきい値TH2,TH3を共にクラッチ繋ぎ点よりも大きい値とする。
なお、しきい値TH2,TH3は、両者が異なる値であれば、エンジンの再始動を判定するためのしきい値TH1との関係は特に限定しない。すなわち、しきい値TH2,TH3は、しきい値TH1よりも小さい値でもよいし大きい値でもよい。あるいは、しきい値TH1と同じ値であってもよい。
図7は、本実施形態のエンジン再始動処理を具体的に説明するためのタイムチャートである。図7において、(a)は、ドライバの発進意思のもと、クラッチリリース(踏込み解除)に伴うエンジン再始動が行われる場合について示し、(b)は、例えばドライバがクラッチペダル17からうっかり足を滑らせるなどしてクラッチリリース(踏込み解除)が一気に行われ、エンジン再始動が行われなかった場合について示している。図7(a)のクラッチストローク推移は図3(a)のそれと同様である。また、図7(b)のクラッチストローク推移は図7(a)よりも減少の傾きが大きく一気にストローク=0まで推移するものとなっている。なお、図7(b)では、図7(a)のクラッチストローク推移を二点鎖線で示す。また、図7では、しきい値TH2,TH3を共にしきい値TH1よりも小さい値としている。
さて、図7(a)において、タイミングt41以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、そのタイミングt42でエンジン10の再始動処理が実行される。その後、タイミングt43では、クラッチストロークがしきい値TH2に達することにより、経過時間TXの計測が開始される。また、タイミングt44では、クラッチストロークがしきい値TH3に達することにより、経過時間TXの計測が終了される。このとき、TX≧K1であるため、エンジン再始動の強制終了が行われることはない。そしてその後、ドライバによりクラッチ繋ぎ操作が行われることで、クラッチ装置12が半クラッチ状態となり、クラッチ繋ぎ期間αにてクラッチストロークがほぼ一定のまま保持される。このクラッチ繋ぎ期間αにおいてエンジン10から変速機13への動力伝達が行われるようになると、ドライバの意思に応じて車両が発進する(車両走行が開始される)。またその後、クラッチペダル17の踏込みが完全に解除されることで、クラッチストロークが0になる。
一方、図7(b)では、図7(a)と同様に、タイミングt51以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、エンジン10の再始動処理が実行される(タイミングt52)。ただし、図7(b)では、ドライバが他事に気を取られるなどしてクラッチペダル17をうっかり踏み外してしまう場合を想定しており、クラッチストロークが一定値で保持されることなく、一気に0まで減少変化している。またこのとき、ドライバにはクラッチ装置12を半クラッチ状態にする意思がない、すなわちドライバが目標ストロークを定めてクラッチペダル17の踏込み解除を行っている訳ではないため、クラッチペダル17の踏込み解除の際にはクラッチペダル17が一気に踏込み解除位置(クラッチストローク0の位置)に戻る。
なお、ドライバの意図しないクラッチ解除操作では、クラッチペダル17に設けられた図示しないリターンスプリングの付勢力により、クラッチペダル17がクラッチストローク0の位置まで一気に跳ね返る。
したがって、ドライバにエンジン再始動の意思が無い場合のクラッチ解除操作では、ドライバがエンジン再始動の意思を持って目標ストロークを定めて行うクラッチ解除操作の場合に比べて、クラッチペダル17の踏込み解除時における単位時間当たりのクラッチストロークの変化量ΔSTが大きくなる。かかる場合、クラッチストロークがしきい値TH2からしきい値TH3に変化するまでの所要時間(t53〜t54間の時間)が短く、TX<K1となる。したがって、エンジン再始動処理が強制終了される。
以上詳述した第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ドライバの意思に反するエンジン再始動を抑制し、エンジン再始動の適正化を図ることができる。
また、クラッチ繋ぎ点よりもクラッチストロークが大きい操作量範囲でのクラッチ繋ぎ操作の所要時間によりクラッチ操作状態を検出し、その検出したクラッチ操作状態に基づいてエンジン10の再始動処理を強制終了させる構成としたため、ドライバの意思とは無関係に開始された再始動処理をできるだけ早期に強制終了させることができる。その結果、ドライバがエンジン再始動の意思が有していない場合における車両の予期せぬ発進を好適に抑制することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について、上述した第1の実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1の実施形態では、所定の操作量範囲TH2〜TH3におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間によりクラッチ操作状態を検出する構成であったが、本実施形態では、クラッチ踏込みの解除操作速度の変化によりクラッチ操作状態を検出する構成とする。本実施形態では、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点よりも大きい操作量範囲内において、前後に異なる複数タイミングでの解除操作速度を検出し、その操作解除速度により同速度変化を検出する。
より具体的には、クラッチ踏込みの解除操作速度の変化として、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点よりも大きい操作量範囲内に設定された第1操作量範囲と、クラッチ繋ぎ点よりも大きい操作量範囲内において第1操作量範囲よりもクラッチ繋ぎ点側に設定された第2操作量範囲とにおけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間をそれぞれ検出し、それら所要時間により解除操作速度の変化をモニタする。そして、その解除操作速度の変化に基づいてエンジンの再始動を停止させる。
クラッチ踏込みの解除操作速度の変化に基づくエンジン再始動の停止処理について、図8を用いて詳細に説明する。図8は、本実施形態のエンジン再始動処理を具体的に説明するためのタイムチャートである。図8において、(a)は、ドライバの発進意思のもと、クラッチリリース(踏込み解除)に伴うエンジン再始動が行われる場合について示し、(b)は、例えばドライバがクラッチペダル17からうっかり足を滑らせるなどしてクラッチリリース(踏込み解除)が一気に行われ、エンジン再始動が行われなかった場合について示している。図8(a)のクラッチストローク推移は、基本的には図3(a)のそれと同様であるが、実際のストローク変化に合わせてクラッチ繋ぎ点付近で徐々にストローク変化が小さくなる様子を示している。また、図8(b)のクラッチストローク推移は図3(b)のそれと同様である。
なお、本実施形態では、図8中、TH1〜TH4はいずれもクラッチ繋ぎ点よりもクラッチストローク大の値であり、このうちTH1が最も大きくTH4が最も小さい値に定められている。また、TH1〜TH2の範囲が「第1操作量範囲」に、TH3〜TH4の範囲が「第2操作量範囲」に相当する。これら「第1操作量範囲」及び「第2操作量範囲」について、本実施形態では同じストローク幅になっている。また、本実施形態では、便宜上、第1操作量範囲の境界値の一方をTH1としたが、TH1とは異なる値であってもよい。
ドライバがエンジン再始動の意思を持ってクラッチ踏込み解除を行う場合、ドライバは通常、クラッチ繋ぎ点又はその近傍を目標にクラッチ装置12を半クラッチ状態にする。そのため、図8(a)に示すように、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点に近付くにつれて、クラッチ操作速度の変化が次第に緩慢になる。つまり、ドライバがエンジン再始動の意思を持ってクラッチペダル17の踏込み解除を行う場合には、その解除操作の開始からの経過時間に応じてクラッチ踏込みの解除操作速度が異なり、踏込み解除の開始当初では解除操作速度が大きいのに対し、クラッチ繋ぎ点付近では解除操作速度が小さくなる。
これに対し、ドライバがエンジン再始動の意思を持たずにクラッチ踏込み解除を行った場合には、ドライバにはクラッチ装置12を半クラッチ状態にする意思がない。そのため、クラッチペダル17の踏込み解除の際には、クラッチペダル17に設けられた図示しないリターンスプリングの付勢力によりクラッチペダル17が一気にはね上がる。したがって、図8(b)に示すように、クラッチペダル17の踏込み解除の際における単位時間当たりのクラッチストロークの変化量ΔST、すなわちクラッチ踏込みの解除操作速度が、クラッチペダル17の踏込み解除の開始当初からその踏込みが完全に解除されるまでほぼ一定の状態が継続される。この事象を利用し、本実施形態では、クラッチ踏込み解除の際のクラッチ解除操作速度の変化に応じてエンジン再始動の停止を実行することとしている。
すなわち、図8(a)において、タイミングt61以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、そのタイミングt62でエンジン10の再始動処理が実行される。このタイミングt62では、経過時間TY1の計測が開始され、タイミングt63において、経過時間TY1の計測が終了される。また、タイミングt64では、クラッチストロークがしきい値TH3に達することにより、経過時間TY2の計測が開始され、タイミングt65において、クラッチストロークがしきい値TH4に達することにより、経過時間TY2の計測が終了される。このとき、経過時間TY1とTY2とを比較すると、TY1よりもTY2の方が長くなり(TA<TB)、時間経過に伴いクラッチ踏込みの解除操作速度の変化が大きくなっている。かかる場合、エンジン再始動の強制終了は行われない。
そしてその後、ドライバによりクラッチ繋ぎ操作が行われることで、クラッチ装置12が半クラッチ状態となり、クラッチ繋ぎ期間αにてクラッチストロークがほぼ一定のまま保持される。このクラッチ繋ぎ期間αにおいてエンジン10から変速機13への動力伝達が行われるようになると、ドライバの意思に応じて車両が発進する(車両走行が開始される)。またその後、クラッチペダル17の踏込みが完全に解除されることで、クラッチストロークが0になる。
一方、図8(b)では、図8(a)と同様に、タイミングt71以降、クラッチストロークが減少してしきい値TH1に達すると、エンジン10の再始動処理が実行される(タイミングt72)。ただし、図8(b)では、ドライバが他事に気を取られるなどしてクラッチペダル17をうっかり踏み外してしまう場合を想定しており、クラッチストロークが一定値で保持されることなく、一気に0まで減少変化している。つまり、クラッチペダル17の踏込み解除開始当初のタイミングt71からその踏込みが完全に解除されるまで、クラッチ踏込みの解除操作速度がほぼ同じ状態のままクラッチストロークが変化している。したがって、クラッチストロークがしきい値TH1からしきい値TH2に変化するまでの所要時間TY1(t72〜t73間の時間)と、しきい値TH3からしきい値TH4に変化するまでの所要時間TY2(t74〜t75間の時間)とが時間TCでほぼ同じになっている。かかる場合、エンジン再始動処理が強制終了される。
図9は、エンジン再始動制御についての処理手順を示すフローチャートであり、本処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実行される。
図9において、ステップS41〜S44は上述した図2のステップS11〜S14と同様の処理であり、これら各処理が実施されることで、エンジン10の再始動処理が開始される。その後、ステップS45では、ST≦TH1である場合における経過時間TY1の計測を実施する。つまり、ST≦TH1になると、それ以後の経過時間が「TY1」として計測される。この経過時間TY1が、第1操作範囲におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間に相当する。その後、ステップS46では、アクセルセンサ31の検出信号に基づいて、ドライバによりアクセルペダルが踏込み操作されたか否かを判定する。ステップS46がYESであればステップS47に進み、ステップS46がNOであればステップS48へ進む。
ステップS47では、経過時間TY1の計測を終了した後、本処理を終了する。かかる場合、燃料噴射指令や点火指令、スタータ駆動指令の出力(ステップS44)が中断されることはなく、エンジン再始動処理が継続されることとなる。つまり、ドライバによるアクセル操作が行われた場合にはクラッチ操作状態に関係なくエンジン再始動が許可され、これにより、エンジン10の始動が完了する。
一方、ステップS48では、クラッチストロークSTがしきい値TH2以下であるか否かを判定する。そして、ST≦TH2になると、ステップS49へ進んで経過時間TY1の計測を終了し、その計測終了時の経過時間TY1を記憶しておく。
続くステップS50では、クラッチストロークSTがしきい値TH3以下であるか否かを判定する。ST≦TH3になると、ステップS51へ進んで経過時間TY2の計測を実施する。つまり、ST≦TH3になると、それ以後の経過時間が「TY2」として計測される。この経過時間TY2が、第2操作範囲におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間に相当する。その後、ステップS52では、アクセルセンサ31の検出信号に基づいて、ドライバによりアクセルペダルが踏込み操作されたか否かを判定し、ステップS52がYESであればステップS53に進み、ステップS52がNOであればステップS54へ進む。
ステップS53では、経過時間TY2の計測を終了した後、本処理を終了する。この場合、燃料噴射指令や点火指令、スタータ駆動指令の出力(ステップS44)が中断されることはなく、エンジン再始動処理が継続されることとなる。一方、ステップS54では、クラッチストロークSTがしきい値TH4以下であるか否かを判定する。そして、ST≦TH4になると、ステップS55へ進んで経過時間TY1の計測を終了し、その計測終了時の経過時間TY2を記憶しておく。
続くステップS56では、記憶した経過時間TY1,TY2を読み出し、経過時間TY2とTY1との差分ΔTY(=TY2−TY1)が所定の判定値K3以下であるか否かを判定する。差分ΔTYが判定値K3以下の場合には、時間の経過に伴うクラッチ踏込みの解除操作速度の変化が比較的小さいため、ドライバにエンジン再始動の意思が無い、すなわちドライバがうっかりクラッチペダル17を離してしまったと推測できる。これに対し、差分ΔTYが判定値K3よりも大きい場合には、時間の経過に伴うクラッチ踏込みの解除操作速度の変化が比較的大きいため、ドライバにエンジン再始動の意思がある、すなわちドライバが半クラッチ操作をしていると推測できる。
そして、ΔTY≦K2である場合(ステップS56がYESの場合)にはステップS57へ進み、ΔTY>K2である場合(ステップS56がNOの場合)にはそのまま本処理を終了する。ΔTY>K2である場合、燃料噴射指令や点火指令、スタータ駆動指令の出力(ステップS44)が中断されることはなく、エンジン再始動処理が継続されて、エンジン10の再始動が完了する。
ステップS57では、エンジン10の再始動処理を中断する。具体的には、燃料噴射指令、点火指令及びスタータ駆動指令の出力をそれぞれ停止する。これにより、スタータ16によるクランキングが中断されるとともに各気筒に対する燃料噴射及び点火が停止される。加えて、同ステップS57では、ブレーキアクチュエータ28に対してブレーキ指令を出力する。ブレーキ指令は、ブレーキアクチュエータ28により各車輪27に対して制動力を付与する処理であり、同指令により、車両の動きが抑制される。
以上詳述した第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ドライバの意思に反するエンジン再始動を抑制し、エンジン再始動の適正化を図ることができる。
また、クラッチペダル17の踏込み解除(クラッチリリース)の際に検出された解除操作速度の変化に基づいてエンジン10の再始動を停止させる構成としたため、今回のクラッチ踏込み解除が、ドライバの意思に基づくものか又はそうでないかを適切に判断することができる。これにより、ドライバの意思に相応したエンジン再始動を好適に行わせることができる。
クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点よりも大きい操作量範囲内において、前後に異なる複数タイミング(本実施形態では2つのタイミング)での解除操作速度を検出することにより解除操作速度の変化を検出する構成としたため、ドライバの意思によるエンジン再始動か否かをクラッチ繋ぎ点に到達する前の時点で判断することができる。よって、ドライバの意思とは無関係に開始された再始動処理をできるだけ早期かつ正確に強制終了させることができる。また、前後に異なる複数タイミングでの解除操作速度によれば、解除操作速度の変化を正確に検出できる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記第1の実施形態では、クラッチペダル17の踏込み解除時におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間(経過時間TX)をクラッチ操作状態として検出したが、これを変更する。例えば、クラッチペダル17の踏込み解除時における単位時間当たりのクラッチストロークの変化量ΔSTをクラッチ操作状態として検出する。このとき、クラッチミートポイント付近でのクラッチストローク変化量ΔSTを検出するのが望ましい。かかる場合、クラッチストローク変化量ΔSTが所定値よりも小さければエンジン再始動を許可(継続)し、クラッチストローク変化量ΔSTが所定値よりも大きければエンジン再始動を禁止(強制終了)する。後者の場合が、クラッチペダル17の短時間操作に相当する。なお、エンジン再始動の意思が無い状態でのクラッチペダルの踏込み解除(うっかりリリース)が行われる場合には、その踏込み解除操作の所要時間が短くなる一方、クラッチストローク変化量ΔSTが大きくなる。ゆえに、クラッチストローク変化量ΔSTは前記所要時間に対して相関があり、同所要時間の相関値に相当する。
・クラッチペダル17の踏込み解除時において、クラッチ装置12が半クラッチ状態であることをクラッチ操作状態として検出し、半クラッチ状態であることが検出されない場合にエンジンの再始動を停止させる構成としてもよい。クラッチ装置12が半クラッチ状態であることの検出は、例えば、クラッチ繋ぎ点付近の所定のクラッチストローク(クラッチ操作位置)で所定時間継続して、同クラッチストローク又はクラッチ装置12の状態が保持されることを検出することで行われる。その他、上述したクラッチ繋ぎ操作の所要時間に基づいて半クラッチ状態を判定したり、クラッチストローク変化量に基づいて半クラッチ状態を判定したりすることも可能である。
・上記第1の実施形態において、エンジンの再始動条件を判定するためのしきい値TH1と、クラッチ繋ぎ操作に関する所要時間の計測開始を判定するためのしきい値TH2とを1つにしてもよい。すなわち、1つのしきい値にて、エンジンの再始動条件を判定するとともに、クラッチ繋ぎ操作に関する所要時間の計測開始を判定する構成としてもよい。
・上記各実施形態では、クラッチ操作位置(クラッチストローク)を検出する構成としてクラッチセンサ32を用い、同クラッチセンサ32の検出信号により都度のクラッチ操作位置を検出したが、これを変更してもよい。例えば、クラッチ操作位置が所定位置(所定ストローク)に達すると出力信号の論理レベルを変えるようにしたクラッチスイッチを用いてもよい。この場合、例えば第1の実施形態への適用を考えると、3つのクラッチスイッチを用い、それぞれがしきい値TH1,TH2,TH3で出力レベルをL→Hに変更するものであればよい。
・上記各実施形態では、エンジン再始動を禁止(強制終了)する場合にブレーキ指令を出力する構成としたが(図2のステップS22参照)、ブレーキ指令の出力を行わない構成であってもよい。また、再始動停止処理として点火停止を行うか行わないかは任意である。
・上記各実施形態では、クラッチ操作部材としてクラッチペダルを想定したが、同操作部材はペダル形状のもの以外に、グリップ形状のもの等であってもよい。
・上記第2の実施形態において、クラッチペダル踏力に基づくエンジン再始動意思の有無の判定を実施するためのしきい値TH10をクラッチ繋ぎ点よりも大きい値としてもよい。このとき、しきい値TH10は、エンジンの再始動条件を判定するためのしきい値TH1よりも大きくてもよいし小さくてもよい。ドライバにエンジン再始動の意思がない場合には、クラッチペダルの踏込み解除が一気に行われることにより、踏込み解除の初期の時点からエンジン再始動の意思がある場合に比べてクラッチペダル踏力が小さいことが考えられる。したがって、しきい値TH10をクラッチ繋ぎ点よりも大きい値とした場合であっても、ドライバにエンジン再始動の意思が無く一気に踏込み解除が行われるときにエンジン再始動を確実に停止できるといった効果を得ることができる。特に、本構成によれば、ドライバにエンジン再始動の意思が無い場合におけるエンジン再始動の停止をクラッチ繋ぎ点に至る前に判断でき、これにより、ドライバにエンジン再始動の意思が無い場合における車両の予期せぬ発進を好適に抑制できる点で有意である。
・クラッチペダル踏力の変化に基づいてドライバのエンジン再始動意思の有無を判定してもよい。例えば、異なる複数タイミングでのクラッチペダル踏力から単位時間当たりのクラッチペダル踏力の変化量を求め、その変化量に基づいてエンジンの再始動を停止させる。かかる場合、クラッチペダル踏力の変化量が判定値よりも小さければエンジン再始動を許可(継続)し、クラッチペダル踏力の変化量が判定値よりも大きければエンジン再始動を禁止(強制終了)する。
・上記第4の実施形態では、第1操作量範囲TH1〜TH2及び第2操作量範囲TH3〜TH4におけるクラッチ繋ぎ操作の所要時間として経過時間TY1,TY2を計測し、その計測時間の比較によりクラッチ踏込みの解除操作速度の変化を検出する構成であったが、クラッチ踏込みの解除操作速度の変化を検出するための方法はこれに限定しない。例えば、クラッチペダル17の踏込み解除開始からの経過時間に対するクラッチストロークを都度検出し、そのクラッチストロークと経過時間との関係に基づいてクラッチ踏込みの解除操作速度を都度算出することで、解除操作速度の変化を検出してもよい。
・上記第4の実施形態では、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点よりも大きい操作量範囲内における異なる2つの操作量範囲(第1操作量範囲TH1〜TH2、第2操作量範囲TH3〜TH4)の経過時間を計測し、その計測結果に基づいてクラッチ操作状態を検出したが、3つ以上の操作量範囲の経過時間を計測し、その計測結果に基づいてクラッチ操作状態を検出してもよい。つまり、クラッチストロークがクラッチ繋ぎ点よりも大きい操作量範囲内において、前後に異なる3以上のタイミングでの解除操作速度を検出し、それら検出結果により同速度変化を検出してもよい。