本発明は、茶(Camellia sinensis)中に含まれる主要ポリフェノールであるガレート型カテキンを主原料として得られる3−デオキシアントシアニジンの製造方法、トリセチニジン及びルテオリニジンを含有する酸性発酵茶添加用組成物及び発酵茶飲料に関する。
アントシアニンは、分子構造中にフラビリウムカチオンを有することを特徴とする化合物であり、一般に花、果実、葉などの植物組織を赤、紫又は青に呈色させる要因となっている。従来からアントシアニンは、鮮やかな色調の着色性を持つことから食品の着色用途に広く用いられてきた。
アントシアニンは、植物組織中において配糖体として存在する場合が多いが、アグリコンであるアントシアニジンが遊離して存在している場合もある。一般的なアントシアニジンは3位に水酸基を有するのに対し、3−デオキシアントシアニジンは3位が未置換のアントシアニジンであり、3位が水酸基で置換されている一般のアントシアニジンと比較して化合物の安定性が高いことが知られている(非特許文献1)。3−デオキシアントシアニジンの代表的な化合物として、5,7,3’−トリヒドロキシフラビリウム塩(アピゲニニジン、一般式(I)のR1及びR2は水素原子)、5,7,3’,4’−テトラヒドロキシフラビリウム塩(ルテオリニジン、一般式(I)のR1、R2のうちどちらか一方が水素原子、他方が水酸基)、5,7,3’,4’,5’−ペンタヒドロキシフラビリウム塩(トリセチニジン、一般式(I)のR1及びR2は水酸基)が挙げられ、イネ科のコウリャン種子に含まれているアピゲニニジンとルテオリニジンは、天然の赤褐色色素として食用色素に用いられている他、皮膚の着色(特許文献1)やインキ(特許文献2)などにも利用されている。
(I)
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示す)
しかしながら、現在市販されているコウリャン由来のアピゲニニジンとルテオリニジンを主成分とする3−デオキシアントシアニジンは、カラメルより多少赤味のあるブラウン色調を呈している(非特許文献2)。このため、発酵茶飲料等、鮮明な赤色を有する対象物へ上記組成物を添加しようとした場合、添加対象物本来の色調を損ねてしまい、さらには上記組成物を添加した対象物を加熱すると著しく色調が褐色化してしまうため、使用できる添加対象物の範囲が制限されていた。
また、従来の発酵茶飲料は、酸性飲料とすると色調が褐色化したり薄い色調に変化したりと中性発酵茶飲料とは明らかに色調の異なる飲料となってしまうという欠点があった。このことから、中性発酵茶飲料に近い鮮やかな赤色を呈した酸性発酵茶飲料が求められている。
一方、従来の3−デオキシアントシアニジンを工業的に得る手段としては、前記したコウリャンを原料として抽出する方法がある。しかしながら、コウリャン由来の3−デオキシアントシアニジンはpH6.0以下で不溶化する傾向があるため、広範な水系対象物への可溶化が容易ではない(非特許文献2)。さらに、ガレート型カテキンをカテコールオキシダーゼで反応させる手段(非特許文献3)や重合ポリフェノールを加水分解することで3−デオキシアントシアニジンを得る手法(特許文献3)では、カテキンが強力に酸化されて多種の副産物が生成する一方で、目的とする3−デオキシアントシアニジンの生成量が少ないことから、好適な方法とは言い難い。また、発酵茶葉中にも3−デオキシアントシアニジンは含まれているが、その量は極微量であることから(非特許文献4)、3−デオキシアントシアニジンを発酵茶葉から抽出し精製することは容易ではない。
したがって、溶解性に優れた3−デオキシアントシアニジンを簡便な手法で大量に得る手段はこれまでに提案されていなかった。
特開2005−232176号公報
特開2004−346099号公報
特開2001−279125号公報
Tetrahedron,37,pp.1481−1483(1981)
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社ホームページ「コウリャン色素」[online]「平成19年6月25日検索」インターネット[http://www.saneigenffi.co.jp/color/nkaolia.html]
J.Agr.Food Chem.,21(4),pp.727−733(1973)
J.Sci.Food Agric.,9(4),pp.217−223(1958)
そこで、本発明の第一の目的は、鮮明な赤色色調を有し、かつ、溶解性に優れた3−デオキシアントシアニジンを簡便且つ効率的に製造する方法を提供することである。また、本発明の第二の目的は、3−デオキシアントシアニジンを含有する酸性発酵茶添加用組成物を提供することであり、本発明の第三の目的は、鮮明な赤色色調を有する優れた発酵茶飲料を提供することである。さらに発酵茶飲料が液体状である場合には、加熱処理後の色調変化が少ない発酵茶飲料の提供を目的とする。
本発明者らは、3−デオキシアントシアニジンが発酵茶中には微量存在するものの、緑茶中には殆ど存在していないことから、発酵茶の製造工程中に3−デオキシアントシアニジンが二次的に生成していると考えた。そこで、茶葉成分を原料として3−デオキシアントシアニジンを生成させ得る条件について鋭意検討を重ねた結果、茶葉中に含まれるガレート型カテキンを主原料として粉末の状態で加熱する手段によって、鮮明な赤色色調を有し溶解性に優れた3−デオキシアントシアニジンを簡便な方法で大量に生成させることのできる3−デオキシアントシアニジンの製造方法を見出すに至った。
従来行われているコウリャンを原料として抽出する方法では、3−デオキシアントシアニジンのうちのアピゲニニジンとルテオリニジンしか得られず、トリセチニジンを得ることはできなかった。また、ガレート型カテキンをカテコールオキシダーゼで反応させる手段や重合ポリフェノールを加水分解する手段ではトリセチニジンへの変換効率が悪く、これまでにトリセチニジンを簡便且つ効率よく得る手法は存在していなかった。したがって本発明の3−デオキシアントシアニジンの製造法は、トリセチニジンを簡便な手法で大量に得ることを初めて見出したものである。
また、本発明者らは、トリセチニジン含有量およびルテオリニジン含有量を一定範囲内に調整した組成物が、酸性発酵茶に容易に溶解すること、さらに該組成物を添加した酸性発酵茶は、発酵茶らしい赤色色調を有し、加熱処理後の色調変化が少なくなることを見出した。従来の3−デオキシアントシアニジンは酸性溶液中で不溶化する傾向を持つため、酸性発酵茶に添加するための組成物として利用することが不可能だった。したがって本発明の酸性発酵茶添加用組成物は、3−デオキシアントシアニジンを酸性発酵茶飲料に添加する目的で用いた初めての例である。
さらに本発明者らは、発酵茶飲料中のトリセチニジン含有量およびルテオリニジン含有量を一定範囲内に調整することによって、鮮明な赤色色調を有し、さらに発酵茶飲料が液体状である場合には、加熱処理後の色調変化が少なくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1記載の本発明は、ガレート型カテキン含有組成物を粉末の状態で加熱することを特徴とする3−デオキシアントシアニジンの製造方法を提供するものである。
本発明における「ガレート型カテキン含有組成物」とは、アモルファス状態のガレート型カテキンを含有するものであれば何であってもよく、例えば、アモルファス状態のガレート型カテキンのみから構成されるものやアモルファス状態のガレート型カテキンを含有し複数の成分から構成される混合物(例えば、茶抽出物)等を含むものである。ここで、アモルファスとは、結晶構造を持たない粉末全てを意味する。本発明では、ガレート型カテキン含有組成物中に結晶状のガレート型カテキン類が含まれていてもかまわないが、結晶状のガレート型カテキン類からは本発明の製造方法を用いても3‐デオキシアントシアニジンを生成しにくいため、本発明におけるガレート型カテキン含有組成物の結晶状ガレート型カテキン類含有量は少ない方が好ましい。
なお、「ガレート型カテキン」とは、アモルファス状態のエピカテキンガレート、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピアフゼレキンガレート及びアフゼレキンガレートのうちいずれか一の単一化合物又は2種以上の単一化合物を混合したものを意味する。
同様に、本発明における「3−デオキシアントシアニジン」とは、トリセチニジン、ルテオリニジン及びアピゲニニジンのうち少なくとも一つ以上を含むものである。
請求項2記載の本発明は、ガレート型カテキン含有組成物が金属塩を含有するものである請求項1記載の3−デオキシアントシアニジンの製造方法を提供するものである。
請求項3記載の本発明は、ガレート型カテキン含有組成物が茶抽出物である請求項1又は2記載の3−デオキシアントシアニジンの製造方法を提供するものである。
請求項4記載の本発明は、原料のガレート型カテキン含有組成物が、次の成分(X)及び(Y):
(X)ガレート型カテキン 45%(w/w)以上
(Y)エピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレート
を含有し、当該成分(Y)及び(X)の含有重量比率〔(Y)/(X)〕が0.67以上となるものであって、
製造される3−デオキシアントシアニジンがトリセチニジンを0.1%(w/w)以上含有するものである請求項1乃至3記載の3−デオキシアントシアニジンの製造方法を提供するものである。
請求項5記載の本発明は、原料のガレート型カテキン含有組成物が、次の成分(X)、(Y)及び(Z):
(X)ガレート型カテキン 45%(w/w)以上
(Y)エピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレート
(Z)エピカテキンガレート及び/又はカテキンガレート
を含有し、(Y)及び(Z)の含有重量比率〔(Y)/(Z)〕が0.3〜80となるものであって、
製造される3−デオキシアントシアニジンの(A)トリセチニジン及び(B)ルテオリニジンの含有重量比率〔(A)/(B)〕が0.3〜80である請求項1乃至3記載の3−デオキシアントシアニジンの製造方法を提供するものである。
請求項6記載の本発明は、トリセチニジン(A)及びルテオリニジン(B)を含有し、その含有重量比率〔(A)/(B)〕が0.3〜80である、酸性発酵茶添加用組成物を提供するものである。
請求項7記載の本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)トリセチニジン 0.05mg/100mL以上
(B)ルテオリニジン
を含有し、(A)トリセチニジン及び(B)ルテオリニジンの含有重量比率〔(A)/(B)〕が0.3〜80である発酵茶飲料を提供するものである。
請求項8記載の本発明は、pHが4.5以下である請求項7記載の発酵茶飲料を提供するものである。
本発明における3−デオキシアントシアニジンの製造法は、特別な装置を必要とせず、一般的な製造設備を利用して簡便で効率よく製造することができる。本発明の製造方法により得られた3−デオキシアントシアニジンは、鮮明な赤色色調を有し、pH6.0以下の各種溶液に対しても可溶化し得るため、広範な対象物への可溶化が容易である。
また本発明のトリセチニジン及びルテオリニジンを含有する酸性発酵茶添加用組成物は、酸性発酵茶へ容易に溶解することができるため、発酵茶らしい赤色色調を呈する酸性発酵茶飲料を提供することが可能である。
また、本発明のトリセチニジン及びルテオリニジンを一定量含有した発酵茶飲料は、発酵茶本来の鮮やかな赤色色調を有し、さらに液体状の発酵茶飲料である場合には、加熱処理後も鮮明な色調を維持することができるため、発酵茶飲料のもつ本来の性状に影響を与えることなく使用することが可能である。
以下において、本発明を詳細に説明する。
本発明における3−デオキシアントシアニジンの製造法は、ガレート型カテキン含有組成物を粉末の状態で加熱することによって、3−デオキシアントシアニジンを得るものである。詳しくは、一般式(II)で表されるガレート型カテキンを主原料とし、これを粉末の状態で加熱することによって、一般式(I)で表される3−デオキシアントシアニジンを得るものである。
ここで、本発明における「ガレート型カテキン含有組成物」とは、アモルファスのガレート型カテキンを含有するものであれば何であってもよく、例えば、アモルファスのガレート型カテキンのみから構成されるものやアモルファスのガレート型カテキンを含有し複数の成分から構成される混合物(例えば、茶抽出物)等を含む。なお、「ガレート型カテキン」とは、一般式(II)で表されるアモルファスのエピカテキンガレート、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピアフゼレキンガレート及びアフゼレキンガレートのうちいずれか一の単一化合物又は2種以上の単一化合物を混合したものを意味する。
また、本発明における「3−デオキシアントシアニジン」とは、トリセチニジン、ルテオリニジン及びアピゲニニジンのうち少なくとも一つ以上を含むものである。
(II)
(式中、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示し、ベンゾピラン環の2位及び3位の立体配置はR配置、S配置のどちらであってもよい)
(I)
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示す)
この際、一般式(II)のR3及びR4が水酸基であるエピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレートを粉末の状態で加熱すれば、一般式(I)のR1及びR2が水酸基であるトリセチニジンを得ることができ、一般式(II)のR3、R4のうちどちらか一方が水素原子、他方が水酸基であるエピカテキンガレート及び/又はカテキンガレートを粉末の状態で加熱すれば、一般式(I)のR1、R2のうちどちらか一方が水素原子、他方が水酸基であるルテオリニジンを得ることができ、一般式(II)のR3及びR4が水素原子であるエピアフゼレキンガレート及び/又はアフゼレキンガレートを粉末の状態で加熱すれば、一般式(I)のR1及びR2が水素原子であるアピゲニニジンを得ることができる。このとき、一般式(II)のR3及びR4が水酸基であるエピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレートからはトリセチニジン以外にも微量のルテオリニジンやアピゲニニジンを得る場合があり、一般式(II)のR3、R4のうちどちらか一方が水素原子、他方が水酸基であるエピカテキンガレート及び/又はカテキンガレートからはルテオリニジン以外にも微量のアピゲニニジンを得る場合がある。
また、一般式(II)で表されるガレート型カテキンを2種以上含む混合物を原料として用いれば、得られる3−デオキシアントシアニジンも、トリセチニジン、ルテオリニジン、及びアピゲニニジンのうち少なくとも2種以上を含有した混合物とすることができ、例えば、一般式(II)のR3及びR4が水酸基であるエピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレート、並びに一般式(II)のR3、R4のうちどちらか一方が水素原子、他方が水酸基であるエピカテキンガレート及び/又はカテキンガレートの混合物を原料として用いれば、トリセチニジン及びルテオリニジンを含む混合物を得ることができる。
さらに本発明では、ガレート型カテキン含有組成物として、茶抽出物(茶抽出液を乾燥粉末化したもの)を用いれば、簡便に3−デオキシアントシアニジンを調製することができるため好ましい。茶抽出物を用いる場合も同様に、該抽出物中のガレート型カテキンの含有量が多いものを用いるほど3−デオキシアントシアニジンの生成量を高めることができる。このため、茶抽出物の中でも緑茶抽出物を原料として用いることが望ましい。茶抽出物は、茶葉を水や溶媒などで抽出して茶抽出液を調製後、それを乾燥粉末化して使用しても、市販の抽出物を使用してもよい。市販の茶抽出物としては、三井農林(株)の商品名「ポリフェノン」、(株)伊藤園の商品名「テアフラン」、太陽化学(株)の商品名「サンフェノン」、及びDSMニュートリショナルプロダクト社の商品名「テアビゴ」等が挙げられる。
本発明におけるガレート型カテキン含有組成物は、ガレート型カテキンが高含有であるほど3−デオキシアントシアニジンの生成量を高めることができるため、ガレート型カテキンの含有量は45%(w/w)以上が好ましく、55%(w/w)以上がより好ましく、70%(w/w)以上がさらに好ましい。
さらに3−デオキシアントシアニジンのうち、トリセチニジンの製造効率を高めるためには、原料として用いるガレート型カテキン含有組成物がエピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレートを30%(w/w)以上含有しているのが好ましく、35%(w/w)以上がより好ましく、45%(w/w)以上がさらに好ましく、また、ガレート型カテキンに対する、エピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレートの占める割合〔(エピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレート)/ガレート型カテキン〕は0.67以上が好ましい。
また、本発明におけるガレート型カテキン含有組成物は、上記したエピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレート含有量の条件に加え、さらにエピカテキンガレート及び/又はカテキンガレートを含有し、エピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレートとの含有重量比率〔(エピガロカテキンガレート及び/又はガロカテキンガレート)/(エピカテキンガレート及び/又はカテキンガレート)〕が0.3〜80、より好ましくは0.5〜50、さらに好ましくは1〜10の範囲となるように調製すると、製造される3−デオキシアントシアニジンのトリセチニジン及びルテオリニジンの含有重量比率を0.3〜80に調整するのが容易となり、その結果、好ましい色調の3−デオキシアントシアニジンを得ることが出来るため望ましい。
ガレート型カテキン含有組成物を粉末の状態で加熱するだけでも3−デオキシアントシアニジンを生成することはできるが、ガレート型カテキンと金属塩とを含有する粉末を用いることによって、3−デオキシアントシアニジンの生成効率をさらに上げることができる。金属塩を含有させる方法は特に制限されないが、例えば金属塩とガレート型カテキンを溶解混合後、再度粉末化する方法が挙げられる。
また、金属塩を多く含む粉末を調製する方が、得られる3−デオキシアントシアニジンの生成量も多くなるが、金属塩の種類によっては、金属塩を過剰量含有していると原料であるガレート型カテキンを分解してしまい3−デオキシアントシアニジンが生成しなくなってしまう場合もある。そのため、例えば、アルミニウム、マンガン、マグネシウム等の金属では、ガレート型カテキン量1モルに対して0.00000001〜1モルの金属を含有させるのが好ましい。
また、カルシウム、鉄(III)等の金属では、ガレート型カテキンに対して当モル以上含有させると過剰量となり3−デオキシアントシアニジンの生成を上手く進行させることが出来ないため、ガレート型カテキン量1モルに対して好ましくは0.00000001〜0.8モル、より好ましくは0.0000005〜0.5モルとなるように含有させるのがよい。金属は2価または3価であることが好ましく、アルミニウム、マグネシウム、マンガンの順でさらに好ましい。
そのため、例えば、アルミニウム、マンガン、マグネシウム等の金属ではガレート型カテキン/金属塩化物塩=1/0.000000005〜0.5(w/w)の金属を含有させるのが好ましい。また、カルシウム、鉄(III)等の金属では、ガレート型カテキン量に対して上記金属量と同等に含有させると過剰量となる場合があり、3−デオキシアントシアニジンの生成を上手く進行させることが出来ないため、カルシウムでは、好ましくはガレート型カテキン/金属塩化物塩=1/0.000000003〜0.3(w/w)、より好ましくは1/0.00000016〜0.16(w/w)、鉄(III)では、好ましくはガレート型カテキン/金属塩化物塩=1/0.000000006〜0.5(w/w)、より好ましくは1/0.0000003〜0.3(w/w)なるように含有させるのがよい。
原料であるガレート型カテキン含有組成物を乾燥粉末化する際には、凍結乾燥法、真空乾燥法、噴霧乾燥法等で粉末化するのが一般的であるが、アモルファスを形成する手法であればこれに限定されるものではない。
ここで、アモルファスとは、結晶構造を持たない粉末全てを意味する。
上記方法で得られた乾燥粉末を粉末の状態で加熱する方法は特に制限されないが、空気と接触する表面積が多くなるように開放系の耐熱性容器に粉末を広げて行うのが望ましく、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは100〜130℃、最も好ましくは110〜125℃の温度範囲で加熱を行うのがよい。80℃未満で加熱すると3−デオキシアントシアニジンを得る効率が著しく落ち、150℃を超えた温度で加熱すると、得られた粉末は3−デオキシアントシアニジン含有量が少なく、黒色で溶解性の著しく低いものとなってしまうことから、目的の3−デオキシアントシアニジンを得るための加熱温度としては好ましくない。なお、加熱の際には必要に応じて攪拌しても静置してもよい。
乾燥粉末の加熱時間は、加熱温度に依存する。長く加熱すれば3−デオキシアントシアニジンを多く得ることができるが、あまり長時間加熱を行うと、製造効率が悪いだけでなく、3−デオキシアントシアニジンの溶解性が低下してしまう。このため、120℃で加熱する場合には加熱時間は0.5〜7日間とするのが好ましい。原料がガレート型カテキンのみである場合は、120℃で3〜5日間の加熱がさらに好ましく、原料が茶抽出物などの混合物である場合は、120℃で0.5〜2日間の加熱がさらに好ましい。
上記のように、ガレート型カテキンを含む乾燥粉末を粉末の状態で加熱することによって得られた3−デオキシアントシアニジンを、一旦溶解後吸着樹脂を用いた分離法により精製すれば、より鮮やかな赤色を有する3−デオキシアントシアニジンの精製品を得ることができる。
吸着樹脂としては、吸着能力の高い合成吸着樹脂が好適である。具体的には、合成吸着樹脂を充填したカラムに、溶解した3−デオキシアントシアニジンを通液し、3−デオキシアントシアニジンを樹脂に吸着させ、酸性にした有機溶媒を用いて目的の3−デオキシアントシアニジンを樹脂より溶出し、精製3−デオキシアントシアニジンを得る。この操作は通常、合成吸着樹脂を充填したカラムを用いて行うが、カラムを用いずにバッチ式で行うこともできる。
この際使用可能な合成吸着樹脂としては、スチレンジビニルベンゼン系、メタクリル系、スチレン系、修飾スチレン系、アクリル系、アミド系、デキストラン系、セルロース系、ポリビニル系等の樹脂が使用可能であり、市販品では、例えばスチレンジビニルベンゼン系のダイアイオンHP−20、ダイアイオンHP−21(以上、三菱化学(株)製)、アンバーライトXAD−2、アンバーライトXAD−4(以上、米国ローム・アンド・ハース社製)、メタクリル系のダイアイオンHP−2MG(三菱化学(株)製)、スチレン系としてアンバーライトXAD−16(米国ローム・アンド・ハース社製)、修飾スチレン系としてセパビーズsp207(三菱化学(株)製)、アクリル系のダイアイオンWK−20(三菱化学(株)製)、アミド系のXAD−11(米国ローム・アンド・ハース社製)、デキストラン系のSephadex LH−20(ファルマシア社製)、セルロース系のINDION DS−3(フェニックスケミカルズ社製)、ポリビニル系のトヨパールHW−40(東ソー(株)製)等を挙げることができる。
溶出に用いる溶媒としては、水の他に例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトンなど、水と任意に混和する有機溶媒を用いることができる。用いる酸としては、酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など一般に工業的に用いられる酸であれば問題なく用いることができる。
特に好適な例としては、酢酸もしくは塩酸が挙げられ、得られる3−デオキシアントシアニジンはそれらと塩を形成する。樹脂と溶出溶媒の組み合わせとしては、上記のものを任意に組み合わせて使用することができるが、飲料などの用途に供する場合は食品衛生法の観点から、特に親水性ビニルポリマー樹脂に吸着させた後、塩酸酸性もしくは酢酸酸性のエタノール(含水しても良い)で溶出するのが好ましい。この溶出液を通常の方法で乾固し、目的の3−デオキシアントシアニジンを得ることができる。
本発明における3−デオキシアントシアニジン含有組成物の製造方法は、上記したとおり、ガレート型カテキン含有組成物を粉末の状態で加熱する必要があるが、このとき、粉末状のガレート型カテキン含有組成物であるインスタント粉末茶をそのまま加熱させれば、赤色色調を増強させた発酵茶らしい外観を有するインスタント粉末発酵茶を簡便に製造することができる。
ここで、インスタント粉末茶とは、水、湯、牛乳、茶類、果汁入りエキスおよび水溶性エキスなど水性媒体を用いて液体状に溶解して飲用等する粉末茶飲料における、液体状に溶解する前の粉末状態を意味する。一般的なインスタント粉末茶の製造方法としては、原料茶葉の抽出または圧搾・濃縮・乾燥・粒型化などの工程からなる。
この際、原料として用いられるインスタント粉末茶は、紅茶、ウーロン茶、緑茶、ほうじ茶等、ガレート型カテキンを含むインスタント粉末茶であればいかなるものであってもよい。また、本方法により得られるインスタント粉末茶は、発酵茶らしい赤色色調を増強させるという本発明の目的から、インスタント粉末紅茶、さらにはインスタント粉末酸性紅茶であるのが好ましい。
トリセチニジンは発酵茶抽出液や発酵茶抽出物中に極微量しか存在しないため(0.01mg/100mL未満)、発酵茶抽出液や発酵茶抽出物を出発物として3−デオキシアントシアニジンを抽出・精製等した場合は製造効率が悪く、トリセチニジンを多量に得ることは容易ではない。これに対し、本発明における3−デオキシアントシアニジンの製造法を用いると、従来に比べて簡便に多量のトリセチニジンを得ることが可能となる。
本発明における3−デオキシアントシアニジンは、好ましくはトリセチニジンを0.1%(w/w)以上、より好ましくは0.2%(w/w)以上、さらに好ましくは0.5%(w/w)以上、最も好ましくは1%(w/w)以上含有するものである。トリセチニジン含有量を上記範囲内に調整すると組成物の色調が赤色となるため好ましい。
また本発明の製造方法により得られる3−デオキシアントシアニジンは、好ましくはトリセチニジンおよびルテオリニジンの含有重量比率〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が0.3〜80、より好ましくは0.5〜50、さらに好ましくは1〜10となるものである。
さらに、本発明の製造方法により得られた3−デオキシアントシアニジンは、製造後全く精製しない場合、トリセチニジン及びルテオリニジンの総含有量が0.1〜30%(w/w)であるのが好ましく、より好ましくは0.2〜20%(w/w)、さらに好ましくは0.5〜15%(w/w)、最も好ましくは1〜10%(w/w)含有するものである。
従来市販されているコウリャン由来のアピゲニニジンとルテオリニジンを主成分とする3−デオキシアントシアニジン含有組成物は、元来有する色調が赤褐色〜茶褐色を呈しており、また、その組成物を溶解した液を加熱するとその溶液の色調は褐色化してしまい色調安定性に優れなかった。本発明の製造方法により得られた3−デオキシアントシアニジンは、上記トリセチニジンおよびルテオリニジンの含有重量比率や3−デオキシアントシアニジン中のトリセチニジン及びルテオリニジンの総含有量をとることにより、鮮明な赤色を呈し、かつ、3−デオキシアントシアニジンを溶解した液の水色は発酵茶らしい鮮明な橙〜赤色を有し、該溶液を加熱してもその色調を維持することが可能である。
さらに、3−デオキシアントシアニジンを製造後まったく精製工程を経ていない場合は、カテキン類を3%(w/w)以上、好ましくは4%(w/w)以上、より好ましくは5%(w/w)以上、さらに好ましくは6%(w/w)以上含有する3−デオキシアントシアニジンを得ることができる。これにより、カテキン類による抗酸化作用がはたらき、3−デオキシアントシアニジンの色調安定性をより高めることができる。なお、3−デオキシアントシアニジン中のカテキン類含有量が90%(w/w)を超えると、酸性発酵茶飲料へ添加した際に発酵茶本来の色調が失われ、またカテキン由来の苦渋味が強すぎてしまい、好ましくない。
本発明における3−デオキシアントシアニジンは安定性が高いため、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品など様々な対象物へ用いることが可能である。また、本発明の3−デオキシアントシアニジンは、組成物を溶解した液を加熱しても従来の3−デオキシアントシアニジンのように褐色化しないため、鮮明な赤色色調を有する対象物、特に発酵茶飲料などへ好適に用いることができる。
本発明における発酵茶飲料とは、発酵茶茶葉を熱水、温水、冷水、エタノール、含水エタノール等で抽出し、得られた抽出液、或いはその希釈液をさす。本発明では、このような液状タイプ以外にも、得られた抽出液を濃縮・乾燥・造粒化等して得られる粉末タイプのものも発酵茶飲料に含めることができる。粉末タイプであると保存時の安定性が高まり好ましい。
発酵茶飲料の一般的な製造方法としては、まず原料とする発酵茶茶葉を20〜50倍重量の温水又は熱水にて抽出する。ここで、本発明で用いる発酵茶茶葉とは、ツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹である「チャノキ」であるCamellia sinensisの中国種(var.sinensis)やアッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されるものを全て含み、例えば、強発酵茶あるいは発酵茶と呼ばれる紅茶の葉や、半発酵茶と呼ばれるウーロン茶の葉などが挙げられる。
本発明では、これら茶葉を単品で用いても、あるいは混合して用いてもどちらでもよいが、紅茶葉を含む茶葉を用いるのが好適である。抽出時間及び抽出温度は使用する発酵茶の産地や目的により適宜調整するが、通常は75℃以上95℃以下で3〜30分の抽出を行い、必要に応じて抽出中に撹拌を行う。次いで茶殻等の固形成分を濾過や遠心分離などの方法で固液分離することにより茶抽出液を得る。これに水を加えて茶飲料に適した濃度に希釈して調合液とする。
茶調合液には、必要に応じて、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、香料、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、乳化剤、保存料、甘味料、着色料、増粘安定剤、調味料、強化剤等の添加剤を単独又は組み合わせて配合することもできる。また、調合液のpH設定は、3−デオキシアントシアニジンの溶解性と添加後の色調を良好にする観点から、25℃換算値で2.0〜7.0が好ましく、2.5〜6.0がより好ましく、2.5〜4.5がさらに好ましい。このとき、pH調整剤として、クエン酸又はその塩等やレモン等の柑橘系果汁等を用いてもかまわない。このようにして調合した発酵茶飲料中には、3−デオキシアントシアニジンは極微量(0.01mg/100mL未満)含まれている。
本発明のトリセチニジンを発酵茶飲料に含有させる際には、粉末のまま含有させてもよいが、数%の水溶液またはアルコール水溶液あるいはアルコール溶液とし、発酵茶飲料中に含まれるトリセチニジンの最終濃度が0.05mg/100mL以上であり、好ましくは0.1〜5mg/100mL、より好ましくは0.2〜3mg/100mL、さらに好ましくは0.5〜2mg/100mLとなるように調製するのがよい。この範囲に調整すると好ましい赤色を呈した発酵茶飲料となる。
本発明における発酵茶飲料は、前記したトリセチニジン含有量の条件に加え、さらにルテオリニジンを含有し、トリセチニジン及びルテオリニジンの含有重量比率〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が0.3〜80、好ましくは0.5〜50、より好ましくは1〜10となるものである。発酵茶飲料中に含有しているトリセチニジンおよびルテオリニジンの重量比率〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が0.3未満である場合、発酵茶飲料の色調が黄色味を帯び、本発明の目的である発酵茶らしい赤色色調を呈していないため好ましくなく、〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が80を超える場合、赤色が強すぎるだけでなく、飲料を加熱した際に色調が褐色化してしまい好ましくない。
また、発酵茶飲料中に含まれるトリセチニジン及びルテオリニジンの総含有量は、好ましくは0.05mg/100mL以上であり、より好ましくは0.1〜6mg/100mL、さらに好ましくは0.2〜4mg/100mL、最も好ましくは0.5〜3mg/100mLとなるように調製するのがよい。溶液中のトリセチニジン及びルテオリニジンの総含有量が上限を超えると、均一に溶解させるのが困難となり、溶液中に沈殿物や浮遊物が発生し、澄明な溶液を得られないだけでなく、発酵茶としてふさわしくない色調を呈するため好ましくない。また、溶液中のトリセチニジン及びルテオリニジンの総含有量が下限に満たない場合、発酵茶本来の鮮明な赤色色調を有しておらず不適である。
トリセチニジン及びルテオリニジンの測定は、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)を用いて行うことができる。
(トリセチニジンの測定条件)
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mmI.D.×150mm(粒子径5μm、関東化学)、移動相:(A)超純水/リン酸/アセトニトリル=100/0.05/2.5(B)超純水/リン酸/アセトニトリル/メタノール=100/0.05/2.5/50、(A)100%で0〜3分まで保持、3〜25分で(B)0%→100%まで直線的にグラジエント溶出、25〜26分で(A)100%に戻し、26〜30分まで(A)100%で平衡化、流速:1mL/min、カラム温度:40℃、検出波長:500nm、注入量:10μL。
(ルテオリニジンの測定条件)
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mmI.D.×150mm(粒子径5μm、関東化学)、移動相:(A)超純水/リン酸/アセトニトリル=100/0.05/2.5(B)超純水/リン酸/アセトニトリル/メタノール=100/0.05/2.5/50、(A)100%で0〜3分まで保持、3〜25分で(B)0%→100%まで直線的にグラジエント溶出、25〜26分で(A)100%に戻し、26〜30分まで(A)100%で平衡化、流速:1mL/min、カラム温度:40℃、検出波長:500nm、注入量:10μL。
なお、精製度の高い3−デオキシアントシアニジンを使用した場合は、少量の添加でも発酵茶飲料等の色調改善効果が大きく認められる。また、カテキン類が多く混在している3−デオキシアントシアニジンを発酵茶飲料へ添加すれば、カテキン類がもつ抗酸化作用により3−デオキシアントシアニジンの色調安定性が高まり、品質の高い発酵茶飲料を提供することができる。さらに、ガレート型カテキンなどの原料が混在している3−デオキシアントシアニジンを使用した場合はポリフェノールであるカテキン類を増量できるという付加価値をもたせることができる。
ここで、カテキン類とは、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキンガレート、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピアフゼレキン、アフゼレキン、エピアフゼレキンガレート及びアフゼレキンガレートの総称を意味する。
カテキン類のうち、エピカテキン、カテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、エピカテキンガレート、カテキンガレート、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレートの8成分は一般的に以下の条件によりHPLCで定量分析することができる。
(カテキン類の測定条件)
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mmI.D.×150mm(粒子径5μm、関東化学)、移動相:(A)超純水/リン酸/アセトニトリル=100/0.05/2.5(B)超純水/リン酸/アセトニトリル/メタノール=100/0.05/2.5/50、(A)100%で0〜3分まで保持、3〜25分で(B)0%→100%まで直線的にグラジエント溶出、25〜26分で(A)100%に戻し、26〜30分まで(A)100%で平衡化、流速:1mL/min、カラム温度:40℃、検出波長:230nm、注入量:10μL。
本発明における発酵茶飲料が酸性発酵茶飲料である場合、その水色は橙色〜赤橙色を呈する。この場合の橙色〜赤橙色とは、日本工業規格JIS Z 8721のマンセル表色系において、色相が7.5R〜2.5Yの範囲であり、かつ明度が4〜9であり、かつ彩度が6〜12の範囲で示される橙色〜赤橙色であるのが好ましい。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、タンニン濃度の測定は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の公定法(酒石酸鉄試薬法)に従って求めた。
EGCg 2ミリモル(約0.92g)に対して0.001マイクロモルとなるようにアルミニウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、鉄(III)の金属塩化物をそれぞれ添加し、水で溶解後、100mLに定容した。その溶液を凍結乾燥機により乾燥させ、各金属添加EGCgを得た。これら金属添加EGCgと、対照として無処理の結晶状EGCgを、10mg秤量し、ガラスバイアルに入れて粉末を平らに敷き詰めた。次いで、予め120℃にしておいた乾熱乾燥機中にそれらのバイアルを静置し、1.5時間、3.0時間、6.0時間、8.0時間、および24.0時間加熱した。未加熱の粉末と加熱した粉末のトリセチニジン含量を、HPLCを用いて以下の条件により測定した。定量には単離したトリセチニジン標準品を用いた。結果を表1及び図1に示した。
(トリセチニジンの測定方法)
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mmI.D.×150mm(粒子径5μm、関東化学株式会社)、移動相:(A)超純水/リン酸/アセトニトリル=100/0.05/2.5(B)超純水/リン酸/アセトニトリル/メタノール=100/0.05/2.5/50、(A)100%で0〜3分まで保持、3〜25分で(B)0%→100%まで直線的にグラジエント溶出、25〜26分で(A)100%に戻し、26〜30分まで(A)100%で平衡化、流速:1mL/min、カラム温度:40℃、検出波長:500nm、注入量:10μL。
表1及び図1に示したとおり、結晶のEGCgを加熱してもトリセチニジンはほとんど検出されなかった。一方、金属を添加し、加熱したEGCgは金属種に限らずトリセチニジンを検出した。
EGCg 2ミリモル(約0.92g)に対して当量(2ミリモル)となるようにアルミニウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、鉄(III)の金属塩化物をそれぞれ添加し、水で溶解後、100mLに定容した。対照として金属を添加せず、水で溶解後、100mLに定容したものを調製した。それらの溶液を凍結乾燥機により乾燥させ、各金属を添加したEGCgおよび無添加のEGCgを得た。各金属を添加したEGCgおよび無添加のEGCgを、10mg秤量し、ガラスバイアルに入れて粉末を平らに敷き詰めた。予め120℃にしておいた乾熱乾燥機中にそれらのバイアルを静置し、7日間加熱した。未加熱の粉末と加熱した粉末のトリセチニジン含量を、実施例1と同様の方法によりHPLCを用いて測定した。定量には単離したトリセチニジン標準品を用いた。加熱した金属添加および無添加の各EGCg中のトリセチニジン量を定量した結果を表2および図2に示した。
未加熱の各EGCgからはトリセチニジンは検出されなかった。
表2及び図2に示したとおり、金属塩を添加せずとも、凍結乾燥で粉末化させ、加熱したEGCgからはトリセチニジンを0.29%(w/w)検出した。実施例1より、結晶のEGCgを加熱してもトリセチニジンは生成しなかったため(表1又は図1)、アモルファス化させることにより加熱処理でEGCgからトリセチニジンが生成することがわかった。
各金属をEGCg当量添加し加熱したEGCgでは、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム及びマンガン添加EGCgからトリセチニジンを検出し、マグネシウム、アルミニウム、マンガン添加EGCgからは約5〜6%(w/w)のトリセチニジンを含有する3−デオキシアントシアニジンを得た。その一方で、鉄(III)添加EGCgからはトリセチニジンは検出されなかった。また、カルシウム添加EGCgから生成したトリセチニジン量は約1.39%(w/w)であり、実施例1における24時間加熱品の2.34%(w/w)(表1)と比較して少なく、これより、鉄(III)とカルシウムは当量では過剰添加であると考えられた。
実施例1および実施例2の結果より、アモルファス状態のEGCgを加熱することでトリセチニジンが生成し、また、粉末化の際に金属イオンを添加することで、その生成効率が向上することが分かった。
ECg 2ミリモル(約0.88g)に対して当量(2ミリモル)となるようにマンガン塩化物塩を添加し、水で溶解後、100mLに定容した。その溶液を凍結乾燥機により乾燥させ、マンガン添加ECgを得た。それを、10mg秤量し、ガラスバイアルに入れて粉末を平らに敷き詰めた。予め120℃にしておいた乾熱乾燥機中にそれらのバイアルを静置し、1日、2日、3日、4日、7日、および14日間加熱した。未加熱の粉末と加熱した粉末のルテオリニジン含量を、HPLCを用いて以下の条件により測定した。定量には単離したルテオリニジン標準品を用いた。結果を表3及び図3に示した。
(ルテオリニジンの測定方法)
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mmI.D.×150mm(粒子径5μm、関東化学)、移動相:(A)超純水/リン酸/アセトニトリル=100/0.05/2.5(B)超純水/リン酸/アセトニトリル/メタノール=100/0.05/2.5/50、(A)100%で0〜3分まで保持、3〜25分で(B)0%→100%まで直線的にグラジエント溶出、25〜26分で(A)100%に戻し、26〜30分まで(A)100%で平衡化、流速:1mL/min、カラム温度:40℃、検出波長:500nm、注入量:10μL。
表3又は図3に示したとおり、マンガンを添加し加熱したECgからルテオリニジンを検出した。7日間加熱したところ、7.17%(w/w)のルテオリニジンを含有する3−デオキシアントシアニジンを得た。
市販の緑茶抽出物(商品名:ポリフェノン70A,三井農林株式会社製、EGCg+GCg=61%(w/w)、ECg+Cg=16%(w/w)、ガレート型カテキン=77%/(w)、(EGCg+GCg)/ガレート型カテキン=0.8、(EGCg+GCg)/(ECg+Cg)=3.9、金属イオン=250ppm以上含有)を500mg秤量し、ガラスバイアルに入れて粉末を平らに敷き詰めた。予め120℃にしておいた乾熱乾燥機中にそれらのバイアルを静置し、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間(2日間)、および72時間(3日間)加熱した。未加熱の粉末と加熱した粉末のトリセチニジンおよびルテオリニジン含量およびカテキン類含量を、HPLCを用いて測定した。トリセチニジンおよびルテオリニジン含量は実施例1および実施例3記載の測定方法、カテキン類含量は以下の分析条件でHPLCにより測定を行った。定量には単離したトリセチニジンおよびルテオリニジン標準品と、三井農林(株)製のカテキン類標準品を用いた。結果を表4及び図4に示した。
(カテキン類の測定方法)
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mmI.D.×150mm(粒子径5μm、関東化学)、移動相:(A)超純水/リン酸/アセトニトリル=100/0.05/2.5(B)超純水/リン酸/アセトニトリル/メタノール=100/0.05/2.5/50、(A)100%で0〜3分まで保持、3〜25分で(B)0%→100%まで直線的にグラジエント溶出、25〜26分で(A)100%に戻し、26〜30分まで(A)100%で平衡化、流速:1mL/min、カラム温度:40℃、検出波長:230nm、注入量:10μL。
表4又は図4に示したとおり、加熱した緑茶抽出物からトリセチニジンおよびルテオリニジンを検出した。72時間加熱したところ、トリセチニジンとルテオリニジンを合わせて4.32%(w/w)含有し、トリセチニジンおよびルテオリニジンの含有重量比率〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が3.32である3−デオキシアントシアニジンを得た。また、24時間加熱した緑茶抽出物には、カテキン類が合計で73.9%(w/w)含まれていた。得られた3−デオキシアントシアニジンは鮮明な赤色色調を有し、12ヶ月間保存したが色調・風味ともに変化はなく長期安定性に優れていた。
なお、未加熱の緑茶抽出物からトリセチニジンおよびルテオリニジンは生成しなかった。
紅茶葉(ダージリン)30gを75℃に加温した水約900gに加え、撹拌しながら5分間抽出を行い、100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した。20℃まで冷却後、濾紙(No.26、アドバンテック(株)製)を用いて濾過し、紅茶抽出液771.0g(酒石酸鉄試薬法により、タンニン濃度344.8mg/100mL)を得た。この紅茶抽出液を使用して、以下方法により酸性紅茶飲料及び中性紅茶飲料を調製した。
(酸性紅茶飲料の調製)
上記で得られた紅茶抽出液をタンニン濃度50mg/100mLとなるようにイオン交換水で希釈し、この溶液500mL当たりにクエン酸200mgを加え、pH3.4の酸性紅茶飲料とした。この溶液に、実施例4で調製した3−デオキシアントシアニジンの24時間加熱品(トリセチニジン(A)=1.64%(w/w)、ルテオリニジン(B)=0.52%(w/w)、(A)+(B)=2.17%(w/w)、(A)/(B)=3.14、カテキン類=73.9%(w/w))を表5に示した量ずつ9段階に添加した(実施品1〜8及び比較品2)。
また、3−デオキシアントシアニジン無添加品を比較品1とした。
(中性紅茶飲料の調製)
上記で得られた紅茶抽出液をタンニン濃度50mg/100mL、および全量500mLとなるようにイオン交換水で希釈し、これに炭酸水素ナトリウムを添加してpH6.0に調整し、中性紅茶飲料を得た(対照1)。
そして、得られた全ての紅茶飲料を13mmI.D.×40mmのバイアルに入れ、溶液の色調をマンセルカラーチャートから定義し、以下基準を基に、発酵茶本来の赤色色調を有しているかどうか評価をおこなった。
さらに、得られた全ての紅茶飲料を、ヒートブロックを用いて121℃で10分間加熱し、加熱前と加熱後の色調変化を比較し、以下基準を基に評価をおこなった。
また、3−デオキシアントシアニジンの溶解性について以下基準を基に目視評価をおこなった。
(色調に関する評価基準)
◎:対照1の色調と近く、好ましい赤色を呈している
○:対照1の色調と近い色調を有している
△:対照1の色調と比べ黄色味がかっている
×:対照1の色調と比べ黄色が強すぎる
(加熱後の色調安定性に関する評価)
○:加熱前と比べて色調に変化なし
△:加熱前と比べて色調の鮮明さが落ちた
×:加熱前と比べて褐色化した
(溶解性に関する評価基準)
○:完全に溶解した
△:溶解しきれず沈殿を生じた
また、各紅茶飲料中のトリセチニジン含有量、ルテオリニジン含有量およびカテキン類含有量を、HPLCを用いて測定した。トリセチニジンおよびルテオリニジンの含有量は実施例1および実施例3記載の測定方法、カテキン類含量は実施例4記載の測定方法により測定を行った。定量には単離したトリセチニジンおよびルテオリニジン標準品と、三井農林(株)製のカテキン類標準品を用いた。結果を表5に示す。
表5より、無添加の酸性紅茶飲料(比較品1)は薄い黄色と橙色の中間色を呈したのに対し、3−デオキシアントシアニジンを添加した酸性紅茶飲料(実施品1〜8)は、中性紅茶飲料(対照1)の色調と近い近橙色〜赤橙色を呈した。特に実施品2〜8、中でも実施品3〜6の色調は対照1と近く、発酵茶らしい赤色色調を有していた。一方で、本発明品を添加していない比較品1や、本発明品の添加量が微量である比較品2は、対照1の色調と比べ黄色味がかっていた。
また、実施品8は3−デオキシアントシアニジンが溶解しきれず沈殿を生じていた。さらに、本発明品を添加していない対照1と比較品1は、加熱後に色調が褐色化したが、本発明品を添加した比較品2および実施品1〜8は加熱前と比較してほとんど色調変化がなかった。
なお、表には示していないが、いずれの飲料も発酵茶本来の風味を有していたが、実施品8は紅茶飲料中に含まれるカテキン類量が多すぎて強烈な苦渋味を有していた。
実施例5で調合した酸性紅茶飲料に実施例4で調製した3−デオキシアントシアニジンの24時間加熱品(トリセチニジン(A)=1.64%(w/w)、ルテオリニジン(B)=0.52%(w/w)、(A)+(B)=2.17%(w/w)、(A)/(B)=3.14、カテキン類=73.9%(w/w))と、精製したトリセチニジンおよびルテオリニジンを添加し、トリセチニジンとルテオリニジンの含有重量比が異なる飲料を調製した。飲料中のトリセチニジンとルテオリニジンの合計含有量を1.3mg/100mLと固定し、各組成物の成分量を変化させることで異なる比率に調整した(実施品9〜19及び比較品3〜4)。
また、対照として無添加の中性紅茶飲料を実施例5と同様の方法で調製した(対照2)。そして、それら溶液の色調、加熱処理後の色調安定性及び溶解性を評価した。なお、溶液の色調に関する評価は以下基準を基におこない、加熱処理後の色調安定性と溶解性に関する評価は実施例5に記載した評価基準を用いた。結果を表6に示す。
(色調に関する評価基準)
◎:対照1の色調と近く、好ましい赤色を呈している
○:対照1の色調と近い色調を有している
△:対照1の色調と比べ黄色味がかっている
×:対照1の色調と比べ黄色もしくは赤色が強すぎる
表6より、トリセチニジンおよびルテオリニジンの含有重量比〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が0.25である比較品3は黄色を強く呈していたのに対し、実施品9〜19は橙色の好ましい色調を呈し、特に実施品11〜18は紅茶らしい赤色色調を有していた。また〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が80を超える比較品4は赤色色調が強すぎる上に加熱すると色調が褐色化されてしまい好ましくなかった。
実施例4で調製した3−デオキシアントシアニジンの24時間加熱品(トリセチニジン(A)=1.64%(w/w)、ルテオリニジン(B)=0.52%(w/w)、(A)+(B)=2.17%(w/w)、(A)/(B)=3.14、カテキン類=73.9%(w/w))と市販のムラサキイモ由来のアントシアニン含有組成物「粉末サンレッドYM」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、以下「組成物A」とする)、及び市販のコウリャン由来の3−デオキシアントシアニジン含有組成物「粉末サンブラウンK」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、以下「組成物B」とする)を使用し、紅茶飲料に対する組成物の溶解性、溶液の色調及び加熱後の色調安定性の比較を行った。
まず、実施例5において調合した酸性紅茶飲料に、上記した3種類の組成物を溶液中の3−デオキシアントシアニジンまたはアントシアニン含有量として1.3mg/100mLとなるように添加し(実施品20、比較品6及び9)、組成物Aのみ上記の5倍量および10倍量添加した紅茶溶液を調製した(比較品7及び8)。そして、それら紅茶飲料に対する各組成物の溶解性について実施例5と同じ基準で目視により評価した。また、組成物を添加した実施品20及び比較品6〜9並びに組成物無添加の比較品5を、ヒートブロックを用いて121℃で10分間加熱し、加熱処理後の色調安定性を実施例5と同じ基準で評価した。結果を表7に示した。
表7より、組成物A及びBを添加した比較品6〜9は加熱処理によって加熱前よりも飲料の色調が褐色化したのに対し、本発明組成物を添加した実施品20は加熱処理前後で色調の変化が見られなかった。
本発明組成物を添加した実施品20は組成物が完全に溶解し澄明な溶液であったが、3−デオキシアントシアニジンを含む組成物Bを添加した比較品9は、混合後しばらく静置しておくと沈殿物を生じていた。
また、組成物Aを本発明組成物と等濃度添加した比較品6は、薄い桃色の混じった色調を呈しており発酵茶本来の色調とは異なる色調であった。同様に組成物Bを本発明組成物と等濃度添加した比較品9は、カラメルのような茶褐色を呈しており発酵茶本来の色調が失われていた。
表5の実施品1(3‐デオキシアントシアニジン含有量=0.11mg/100mL)と表7の未加熱の比較品9(3‐デオキシアントシアニジン含有量=1.3mg/100mL)とが同じ色調を有していたため、実施品の色調改善効果は、市販品の12倍程度認められたと言える。
EGCgとECgの含有重量比を変化させた緑茶抽出物を調製して120℃で加熱し、トリセチニジンとルテオリニジン含有重量比の異なる3−デオキシアントシアニジンを得た(比較品10、11および実施品22〜27)。
また、得られた3−デオキシアントシアニジン(比較品10)にトリセチニジン精製品を添加して、トリセチニジンとルテオリニジン含有重量比〔トリセチニジン/ルテオリニジン〕が0.41となるような3−デオキシアントシアニジンを調製した(実施品21)。
得られた3−デオキシアントシアニジン(実施品21〜27及び比較品10、11)の粉末の色調、及び組成物を等重量ずつ酸性紅茶飲料に添加した(5mg/10mL)後の飲料の色調を目視により評価した。
(粉末の色調に関する評価)
◎:鮮明な赤色
○:赤色
(酸性紅茶飲料添加後の飲料の色調に関する評価)
○:橙色〜赤色の好ましい色調
△:黄色もしくは赤色が強い
×:黄色もしくは赤色が強すぎる
表8より、全ての組成物が赤色〜鮮明な赤色を呈していた。また、実施品21〜27を添加した紅茶飲料は好ましい橙色〜赤色色調を呈していたのに対し、比較品10を添加した紅茶飲料の色調は黄色が強すぎて好ましくなく、比較品11を添加した紅茶飲料の色調は赤色が強すぎて好ましくなかった。
実施例2で調製したアルミニウムを添加したEGCgを10mg秤量し、ガラスバイアルに入れて粉末を平らに敷き詰めた。それらのバイアルを乾熱乾燥機にて60℃および80℃で24時間、100℃で1、2、3週間、120℃で70および110時間、150℃で8、24、36時間加熱した。得られた組成物の色調を以下基準で目視評価し、得られた組成物中のトリセチニジンおよびルテオリニジン含量を実施例1および実施例3に記載した方法でHPLCを用いて測定した。定量には単離したトリセチニジンおよびルテオリニジン標準品を用いた。
また、ここで得られた組成物と、実施例4で緑茶抽出物を24時間、48時間、および72時間加熱して得られた3−デオキシアントシアニジンを、3−デオキシアントシアニジン含有量として紅茶飲料中に0.08mg/100mL含有するように実施例5で調合した酸性紅茶飲料に溶解し、その溶解性を実施例5と同様の基準で評価した。加熱時間を変えたアルミニウム添加EGCgの結果を表9および図5に示し、実施例4で得られた組成物の溶解性を評価した結果を表10に示した。
(粉末の色調に関する評価)
◎:鮮明な赤色
○:赤色
△:黒赤色
×:赤色の混じった黒色
表9に示したように、アルミニウム添加EGCgを60℃および80℃で24時間加熱した粉末からはトリセチニジンが検出されなかった。また、60℃で加熱した粉末は目視でも変色は確認出来なかったが、80℃で加熱した粉末はうっすらと桃色がかっていた。したがって、80℃では長期間加熱を行えば、トリセチニジンは検出されるようになると考えられる。100℃および120℃で加熱した粉末の色調は赤色で好ましいものだったが、150℃で24時間以上加熱した粉末は赤黒いような色調であり、さらに36時間加熱した粉末は溶解性が低かったため加熱時間として好ましくないと考えられた。
また、図5に示したように、150℃で24時間以上加熱すると生成したトリセチニジンの分解が見られた。また表には示していないが、加熱温度が150℃を超えるとトリセチニジンの分解がすすみ、粉末の色調は黒色化していた。
表10より緑茶抽出物を24時間および48時間加熱して得られた3−デオキシアントシアニジンを溶解した飲料は澄明であったのに対し、72時間加熱して得られた3−デオキシアントシアニジンを溶解した飲料には濁りが認められ、静置しておくと沈殿が生じていた。
以上の通り、本発明により、特別な装置を必要とせず、一般的な設備を利用して簡便にガレート型カテキンから3―デオキシアントシアニジンを効率よく製造することができる。また、本発明における3―デオキシアントシアニジンを発酵茶飲料に添加することにより、色調が改善された発酵茶飲料を提供することができる。
加熱時間に伴うトリセチニジン生成量
7日間加熱した金属添加および無添加EGCgのトリセチニジン生成量
加熱時間に伴うルテオリニジン生成量
加熱時間に伴うトリセチニジンおよびルテオリニジン生成量
加熱温度とトリセチニジン生成量