(1)画像形成部
図1は本発明に従う転写装置を2次転写装置として用いた画像形成装置例の概略構成図である。
この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いた、4連ドラム方式(タンデム方式・インライン方式)の電子写真フルカラー画像形成装置である。
この画像形成装置は、図面上左から右に順に直列に配設した第1から第4の4つの画像形成部Y・M・C・Kを有する。これらの各画像形成部Y・M・C・Kは何れも同様の構成を有するレーザー走査露光方式の電子写真プロセス機構であり、第1の像担持体としての回転可能なドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1を有する。そして、このドラム1に作用するプロセス手段である、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、1次転写ローラ5、ドラムクリーナ6等を有する。但し、第1の画像形成部Yの現像装置4には現像剤としてイエロートナーを、第2の画像形成部Mの現像装置4にはマゼンタトナーを、第3の画像形成部Cの現像装置4にはシアントナーを、第4の画像形成部Kの現像装置4にはブラックトナーを収納してある。各ドラム1は、例えば、アルミニウム製のシリンダに有機感光体(OPC)を主成分とする感光体を成膜して構成したものである。
また、第2の像担持体としての無端状で可撓性の中間転写ベルト(周回移動可能な中間転写体:以下、ベルトと記す)7を有する。このベルト7は、駆動ローラ8と、従動ローラ9と、2次転写対向ローラ(2次転写内ローラ)10と、の並行3本のローラ間に架け回し、テンションローラ11にて張りを与えてある。駆動ローラ8は第4の画像形成部K側に、従動ローラ9は第1の画像形成部Y側に、2次転写対向ローラ10は駆動ローラ8と従動ローラ9の間で、該両ローラよりも下方の位置に配設してある。駆動ローラ8と従動ローラ9との間のベルト部分の上面と各画像形成部Y・M・C・Kのドラム1の下面とを接触させてある。各画像形成部Y・M・C・Kの1次転写ローラ(一次転写手段)5は、駆動ローラ8と従動ローラ9との間のベルト部分の内側に配設されていて、それぞれ、ベルト7を挟んでドラム1の下面に圧接させてある。各画像形成部Y・M・C・Kのドラム1とベルト7との接触部が、それぞれ、1次転写ニップ部A1である。従動ローラ9のベルト巻き架け部の外側には、ベルト7の外面を清掃するベルトクリーナ12を配設してある。
本実施例における中間転写ベルト7は、基層、および基材の表面に形成された弾性層、および弾性層の表面に形成された表面層の3層構成である。基層は、厚さ85μmのポリイミド樹脂フィルムを基材としており、カーボンブラックを分散して、表面抵抗率で1×1012Ω/□、体積抵抗率で1×109.5Ω・cmとなるように抵抗調整した。また、基材の弾性率を1.5〜8GPaとなるように調整した。弾性層は、フッ素系ゴムにより形成される。なお、弾性層の体積抵抗率は109.5Ωcmとなるように形成されており、厚みは250μmである。弾性層の弾性率は、0.1〜1000MPaとなるように調整した。表面層は、トナーの離型性が高い素材が好ましく、本実施例においては、PFAにより形成されており、体積抵抗率は1012Ωcm、厚みは15μmである。表面層の弾性率は、0.01〜1GPaとなるように調整した。本実施例において、弾性率として引張弾性率と規定した。引張弾性率の試験方法はJIS K7161に準じ、試験片はJIS K7262に準じる。試験条件としては、測定は、(株)オリエンテック製卓上型材料試験機STA−1225を用いて行い、クロスヘッド速度100mm/min、試験片幅5mm、試験片長さ100mmであり、23℃、50%Rh環境下で行った。
各1次転写ローラ5は、鋼鉄製の芯金に、発泡処理をしたEPDMを基材とする、発泡ゴム層を設けたスポンジローラとした。ローラの抵抗値は、23℃・50%Rh環境下で、106.5Ω(100V印加時)となるように、イオン伝導性の抵抗調整剤を分散することで抵抗調整を行った。
2次転写対向ローラ10のベルト巻き架け部の外側には、2次転写装置13を配設してある。この2次転写装置13の記録材搬送ベルト14と中間転写ベルト7とを接触させて2次転写ニップ部A2を形成させている。この2次転写装置13については次の(2)項で詳述する。
2次転写装置13の記録材搬送方向上流側にはレジストローラ対18を配設してある。また、2次転写装置13の記録材搬送方向下流側には定着装置21を配設してある。
フルカラー画像を形成するための動作は次のとおりである。第1から第4の画像形成部Y・M・C・Kが不図示の制御部により画像形成の所定の制御タイミングに合わせて順次に駆動される。その駆動により各ドラム1が矢印の反時計方向に所定の同じ速度で回転駆動される。また中間転写ベルト7も駆動ローラ8により矢印の時計方向にドラム1の回転速度と同じ速度で回転される。この駆動に同期して1次帯電ローラ2がドラム1の表面を所定の極性・電位に一様に帯電する。本実施例においては、ドラム1はマイナス極性の所定の電位に一様に帯電される。そのドラム1の帯電面が露光装置3により画像露光される。本実施例においては、露光装置3はレーザースキャナであり、不図示の制御部から入力する時系列電気デジタル画像情報信号に対応して変調したレーザー光を出力して、ドラム1の帯電面を走査露光する。これにより、ドラム面に走査露光パターンに対応した静電像(静電潜像)が形成される。形成された静電像は現像装置4によりトナー像として現像される。本実施例においては、1次帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4がドラム1上(像担持体上)にトナー像を形成するトナー像形成手段である。
静電像形成方式として、帯電したドラム表面に画像情報のバックグランド部に対応して露光して静電像を形成するバックグランド露光方式と、逆に画像情報部に対応して露光して静電像を形成するイメージ露光方式とがある。そして、バックグランド露光方式の場合の静電像の現像は、バックグランド部以外の部分を現像する正規現像方式が、イメージ露光方式の場合の静電像の現像は、非露光部分を現像する反転現像方式が用いられる。本実施例では、イメージ露光方式と反転現像方式の組み合わせを用いている。
上記のような電子写真プロセスにより、第1の画像形成部Yでは、ドラム1面にフルカラー原画像の色分解成分像の内のイエロー成分像に対応したイエロートナー像が形成される。第2の画像形成部Mでは、マゼンタ成分像に対応のマゼンタトナー像が、第3の画像形成部Cでは、シアン成分像に対応のシアントナー像が、第4の画像形成部Kでは、ブラック成分像に対応のブラックトナー像が、それぞれ、所定の制御タイミングで形成される。
そして、第1の画像形成部Yの1次転写ニップ部A1において、ドラム1に形成されるイエロートナー像が回転駆動(周回移動)されているベルト7上に1次転写されていく。次いで、第2の画像形成部Mの1次転写ニップ部A1において、ドラム1に形成されるマゼンタトナー像が、ベルト7上の上記イエロートナー像に重ねられて一次転写される。更に、同様にして、第3の画像形成部Cと第4の画像形成部Kの各1次転写ニップ部A1において、ベルト7上にマゼンタトナー像とブラックトナー像が順次に1次転写される。すなわち、ベルト7上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの都合4色の色トナー像が順次に所定に重ね合わされて重畳(多重)転写されて、フルカラーの未定着トナー画像が合成形成される。
各1次転写ニップ部A1において、ドラム1からベルト7へのトナー像の1次転写は、1次転写ローラ5に対して不図示の1次転写電源部から所定の1次転写バイアスが印加されて、ドラム1からベルト7へトナー像が静電転写されることでなされる。本実施例において、1次転写バイアスは、トナーの帯電極性であるマイナス極性とは逆極性のプラス極性で、所定電位の直流電圧である。
また、各画像形成部Y・M・C・Kにおいて、1次転写ニップ部通過後のドラム1面はドラムクリーナ6により1次転写残トナーの除去を受けて清掃され、繰り返して作像に供される。
上記のようにしてベルト7上に合成形成されたフルカラー画像の未定着トナー画像は、ベルト7の引き続く回転により搬送されて、ベルト7と2次転写装置(二次転写手段)13の記録材搬送ベルト14との接触部である2次転写ニップ部(二次転写ニップ部)A2に至る。
一方、不図示の制御部により、所定の制御タイミングで不図示の給紙機構部から記録媒体としてのシート状の記録材(転写材)Pが1枚分離給紙され、その記録材Pの先端がその時点では回転を停止しているレジストローラ対18のニップ部に受け止められる。これにより、記録材Pは斜行修正される。その記録材Pが所定の制御タイミングで回転駆動されたレジストローラ対18により再給紙され、ガイド部材19に案内されて2次転写ニップ部A2に搬送される。すなわち、ベルト7上に形成されたフルカラーの未定着トナー画像の画像先端が2次転写ニップ部A2に到達するタイミングで、その2次転写ニップ部A2に記録材Pのプリント開始位置が一致するようにレジストローラ対18の回転開始が制御される。そして、記録材Pが2次転写ニップ部A2を挟持搬送されていく過程において、2次転写装置13の2次転写ローラ15に対して2次転写電源部HV(図2)からトナーの帯電極性とは逆極性で、所定電位の転写バイアスが印加される。本実施例において、2次転写バイアスは、トナーの帯電極性であるマイナス極性とは逆極性のプラス極性で、所定電位の直流電圧である。これにより、ベルト7上のフルカラーの未定着トナー画像(中間転写体上のトナー像)が記録材Pに対して一括して2次転写される。
2次転写ニップ部A2を出た記録材Pは、記録材搬送ベルト14上に静電的に保持されて中間転写ベルト7の面から分離し、記録材搬送ベルト14の引き続く回転で定着装置21に向って搬送され、記録材搬送ベルト14から分離してガイド部材20に案内されて定着装置21に導入される。
本実施例における定着装置21は、ヒートローラと加圧ローラのローラ対を基本構成部材とする熱圧定着装置であり、記録材Pは上記ローラ対の圧接部である定着ニップ部に導入されて挟持搬送されることで、熱と圧力を受ける。これにより、各色トナー像のトナーが溶融混色してフルカラープリント画像として記録材表面に定着(固着画像化)され、フルカラープリントが機外に排出される。
記録材分離後の中間転写ベルト7の面は、ベルトクリーナ12によって2次転写残トナーの除去を受けてクリーニングされ、次の作像工程に備える。
(2)2次転写装置13
図2は図1における2次転写装置13部分の拡大図である。この転写装置13は無端状で可撓性の記録材搬送ベルト(以下、2次転写ベルトと記す)14と、転写帯電部材15として2次転写ローラ(転写帯電ローラ)15を用いた装置である。
2次転写ベルト14は半導電性の誘電体である。本実施例において、このベルト14は、フッ素系ゴム弾性層により形成され、体積抵抗率は1010Ωcmとなるように形成されており、厚みは300μmである。弾性層の弾性率は、10〜100MPaとなるように調整した。
このベルト14は、転写帯電部材としての2次転写ローラ(2次転写外ローラ)15と、これに並行に配列したベルト張架ローラ16との間に懸回張設してある。そして、2次転写ローラ15を2次転写対向ローラ10に対して、中間転写ベルト7と記録材搬送ベルト14とを挟ませて所定の押圧力にて圧接させてある。中間転写ベルト7と2次転写ベルト14との接触部が2次転写ニップ部A2である。ベルト張架ローラ16は2次転写ローラ15よりも記録材搬送方向下流側に位置させてある。
2次転写ローラ15は、本実施例においては、鋼鉄製の芯金に、発泡処理をしたNBR(ニトリルブタジエンゴム)を基材とする発泡ゴム層を設けたスポンジローラとした。ローラの抵抗値は、23℃・50%Rh環境下で、107.5Ω(2kV印加時)となるように、イオン伝導性の抵抗調整剤を分散することで抵抗調整を行った。また、ローラの硬度は、AskerC硬度で48度となるように調整を行った。この2次転写ローラ15には2次転写電源部HVから所定の2次転写バイアスが所定の制御タイミングで印加される。
ベルト張架ローラ16は、本実施例においては、SUS製のローラであり、接地されている。
2次転写ベルト14は、2次転写ローラ15が不図示の駆動機構により矢印の反時計方向に回転駆動されることで、矢印の反時計方向に中間転写ベルト7の回転速度と同じ速度で回転される。ベルト張架ローラ16はベルト14の回転に従動して回転する。なお、2次転写ベルト14を2次転写ニップ部A2における中間転写ベルト7との摩擦力でベルト7の回転に従動回転させる構成にすることもできる。
また、2次転写ニップ部A2から2次転写ベルト14の移動方向下流側のベルト部分(ローラ15・16間のベルト部分)の内側には、ベルト14に対して非接触の状態で、かつ平行に電極部材(電位規制部材:電極板)17を配設してある。本実施例において、この電極部材17は、厚さ1mm、記録材搬送方向長さ40mm、幅330mmのSUS製の板形状であり、ベルト14の内面と2mmの距離をもって、ベルト14に対してほぼ平行に配設されている。
本実施例においては、この電極部材17に対して、電極バイアスとして、2次転写ローラ15に印加する2次転写バイアス電圧と同じ電圧を2次転写電源部HVから、2次転写ローラ15に2次転写バイアス電圧を印加している間印加するようにしている。
上記の2次転写装置13による、中間転写ベルト7から記録材Pへのトナー像の転写と、2次転写ベルト14による記録材Pの搬送について図3と図4の模式図と、図5により説明する。
2次転写ニップ部A2においては、2次転写ローラ15と2次転写対向ローラ10との間に挟持された場所において、2次転写バイアス電圧を印加することで、中間転写ベルト7から記録材Pへ帯電されたトナーTを静電的に転写させる。このとき、図3に示すように、2次転写ローラ15と2次転写対向ローラ10と間に、2次転写電界E2trが印加される。2次転写される前の時点では、中間転写ベルト7上のマイナス帯電したトナーTは、ベルト7中に注入されていたトナー担持用のプラス電荷によって、静電的に担持されている。この状態で、2次転写ニップ部A2に到達して2次転写電界E2trを印加されると、半導電の2次転写ベルト14に対して、2次転写ローラ15からプラス電荷が注入される。また、絶縁体の記録材Pにおいては、2次転写電界E2trに対して、自発分極EPが発生する。記録材Pの内部においては、自発分極EPによって、記録材Pのトナー担持面にはプラス電荷が誘起され、2次転写ベルト14に接触する面にはマイナス電荷が誘起され、その電荷量は、2次転写ベルト14に注入されたプラス電荷量と等量になる。また、記録材Pのトナー担持面に誘起されたプラス電荷によって、中間転写ベルト7上のマイナス帯電したトナーTが静電的に引き寄せられる。これによって、2次転写ニップ部A2部において、中間転写ベルト7から記録材Pへトナー像が静電的に転写される。
このとき、2次転写後において、中間転写ベルト7内に存在していたトナー担持用のプラス電荷は、トナーがなくなることによって、ベルト7内に取り残される。一部は2次転写電界にしたがって、2次転写対向ローラ10に向けて減衰するが、すべてのプラス電荷が2次転写対向ローラ10に吸収されず、一部は中間転写ベルト7内に残存するものと考えられる。
接触面において、プラス電荷とマイナス電荷が相対する面に存在するときには、非静電的な付着力に加えて、静電的な吸着力が働くものと考えられる。2次転写ニップ部A2を抜けた際には、図3に示すように、記録材Pと2次転写ベルト14との間に吸着力Fpが、また記録材Pと中間転写ベルト7との間に吸着力Fiが働き、それぞれについて、静電的な付着力も含まれるものと考えられる。
2次転写ニップ部A2において、上記の吸着力Fpが上記の吸着力Fiよりも大きければ、トナーTを転写された記録材Pは、2次転写ニップ部A2を出たとき、中間転写ベルト7から離間する。そして、2次転写ベルト14に吸着されて、該ベルト14の回転で定着装置21へと搬送されるものと考えられる。
逆に、上記の吸着力Fpが上記の吸着力Fiよりも小さい場合においては、トナーTを転写された記録材Pは、2次転写ニップ部A2を出たとき、記録材Pは中間転写ベルト7から分離しないものと考えられる。
このような記録材分離不良が発生するおそれがある場合として、以下が考えられる。
たとえば、長期にわたる使用によって、2次転写ベルト14の表面に微細な傷がついてしまい、このベルト14と記録材Pとの間の接触面積が小さくなってしまう場合が考えられる。ベルト14は、紙粉などが付着した状態で回転駆動を受け、2次転写ニップ部A2で加圧されることによって、摺擦されて傷がついてしまう恐れがある。あるいは、記録材Pの先端が2次転写ニップ部A2に挟持された瞬間において、紙先端部に2次転写ニップ部での加圧が集中するため、ベルト14に傷が発生する恐れがある。
上記のようにベルト14の表面に傷が発生すると、ベルト14と記録材Pとの接触面積が低下し、記録材Pとベルト14との間に吸着力Fpが低下することに起因する、2次転写ニップ部A2での記録材分離不良が発生する恐れがある。
また、一方で、記録材Pと中間転写ベルト7との間に働く吸着力Fiについて、静電的な吸着力については、2次転写ベルト14と中間転写ベルト7間の電界強度に依存する。
図4に示すように、2次転写ニップ部A2を抜けた後は、2次転写ベルト14は2次転写ローラ15から離間し、空気ギャップαを持つようになる。2次転写において、ベルト14に対して注入されるプラス電荷量は、画像形成装置における最大濃度に対応するトナー総帯電電荷量に対応する電荷量を付与する。しかし、全面すべてに最大濃度が乗る画像が取られる場面は少なく、ほとんどの場合においては、ベルト14に対して転写トナーの帯電量よりも多い、余剰なプラス電荷が付与されている。余剰な電荷が付与された記録材搬送ベルト14は、2次転写ローラ15から離間することで、所定の電位に制御された2次転写ローラ15との間に、空気ギャップαという、理想的なコンデンサを介してプラス電荷が空気中に置かれた状態とみなされる。このような場合においては、空気コンデンサの静電容量はギャップ長が大きくなるほど小さくなり、一定の電荷量が存在する場合においては、空気コンデンサ間の電位差は大きくなっていく。したがって、余剰なプラス電荷が付与されたベルト14は、2次転写ニップ部A2を通過した後は、電位がプラス方向に大きくなっていく。
このとき、図5の実線グラフに示すように、2次転写ベルト14と2次転写ローラ15との間の電位差は大きくなっていく。
しかしながら、2次転写ベルト14と2次転写対向ローラ10、あるいは2次転写ローラ15と中間転写ベルト7などの空気ギャップも大きくなるため、図5の一点鎖線グラフに示すように、電界強度はある位置で極大値を持つものと考えられる。この電界強度は2次転写電界E2trよりも大きくなるものと考えられ、2次転写ニップ部Aよりも記録材搬送方向下流での構成によっては、電界強度が大きくなりすぎると、剥離放電が発生し、画像不良が発生する恐れもある。
記録材Pと中間転写ベルト7との間に働く吸着力Fiについて、2次転写ニップ部下流側における静電的な吸着力は、2次転写ベルト14と2次転写ローラ15と間に働く電界強度に比例するため、2次転写ニップ部下流側においてもっとも大きくなる。
従って、上記吸着力Fpよりも、2次転写ニップ部下流側における記録材Pと中間転写ベルト7との間に働く吸着力Fiのほうが大きくなれば、2次転写ニップにおいて一旦2次転写ベルト14に静電吸着された記録材Pがベルト7に向けて引き寄せられる。そのために中間転写ベルト7からの記録材の分離不良が発生するおそれがある。
以上、説明してきたように、長期にわたる使用によって2次転写ベルト14の表面性が悪化することで、2次転写ニップ部において2次転写ベルト14と記録材Pの吸着力が低下する。2次転写ベルト14の2次転写ニップ部通過後の電位上昇によって該ベルト14と記録材の吸着力が上昇する。これらの場合に、特に薄紙のような腰の弱い記録材Pにおいては、2次転写ニップ部通過後に2次転写ベルト14に吸着されず、中間転写ベルト7から分離しない、記録材分離不良が発生する恐れがある。
図1と図2の2次転写装置13に配設した電極部材17は、2次転写ニップ部A2において余剰な電荷が付与された2次転写ベルト14が引き続く回転で2次転写ローラ15から離れることでベルト電位が上昇する現象を抑える。
これは、2次転写ローラ15と電気的に同電位となるように設定された電極部材17がベルト14に沿って平行に配設されることで、余剰電荷との距離を一定に保持することが可能となるからである。
図5の実線グラフに示したように、2次転写ベルト14の電位が2次転写ローラ15から離れるほど電位が上昇するのは、ベルト14の2次転写ローラ15からの距離が長くなり続けることに起因する。つまり、ベルト14の2次転写ローラ15からの距離が長くなるほど、2次転写ローラ15との間の空気ギャップαが電気的にコンデンサとして作用する。そのため、ギャップ長が長くなるほど静電容量が小さくなり、一定の電荷量が保持されたコンデンサの両端電圧が増大するからである。
これに対し、帯電転写部材としての2次転写ローラ15と同電位の電極部材17がベルト14に対して所定の距離をもって、非接触の状態で平行に配接されることで、ベルト14は電極部材17との距離が広がらない。そのため、電極部材17あるいは2次転写ローラ15との電位差が大きくならない。
電極部材17の存在により、電極部材と2次転写ベルトとの電位差が、2次転写ベルトの帯電電荷量とベルトと電極部材間の空気ギャップによって形成されるコンデンサ容量とから導出される所定の電位差に規定される。このとき、図5の実線グラフに示すように、2次転写ニップを通過した直後から2次転写ベルトと2次転写ローラとの電位差は大きくなるが、電極部材17に近づくことで、2次転写ベルトの電位は、電極部材に印加された電位と、所定の電位差をもって保持される。したがって、電極部材17あるいは2次転写ローラ15との電位差が大きくならない。
このとき、電極部材に印加する電位としては、転写バイアスと同極で絶対値が同じとする。転写バイアスと逆極性のバイアスを印加した場合、2次転写工程で2次転写ベルトに印加されたトナー担持用のプラス電荷が電極部材に向けて引き寄せられてしまうため、転写材上での静電的トナー担持力が減少し、画像不良が発生するおそれがある。一方、転写バイアスと同極で、絶対値がより大きい電位を電極部材に印加すると、上述した、電極部材によって2次転写ベルトの電位上昇を抑える効果がなくなってしまう。したがって、電極部材17に対する電極バイアスは、2次転写ローラ15に印加する転写バイアスと同極で、かつ絶対値が同じことが好ましい。電極部材17は電極バイアス印加によりベルトの電位を規制する。
これによって、2次転写ベルト14の電位上昇が抑えることができる。その一方で、回転によって2次転写ベルト14と中間転写ベルト7との距離は拡大するので、2次転写ベルト14と中間転写ベルト7との間の2次転写ニップ部下流部における電界強度は小さくなる。ひいては中間転写ベルト7と記録材Pとの間の静電吸着力が小さくなることから、相対的に、前記の吸着力Fiが上記吸着力Fpよりも小さくなり、装置の耐久の間、常に吸着力Fp>吸着力Fiの状態を維持させることが可能となる。したがって、特に薄紙のような腰の弱い記録材Pの場合においても、中間転写ベルト7からの記録材Pの分離不良を有効に回避できる。
なお、本実施例では4色のトナー像を形成する画像形成装置について説明したが、画像形成部(作像手段)の数は4に限定されない。
図6は本実施例の画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いた、1ドラム方式の電子写真フルカラー画像形成装置である。すなわち、矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される1つのドラム1上にイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの4つの色トナー像を順次に重ねて形成してフルカラー画像の未定着トナー画像を合成形成する。この合成トナー画像を1次転写ニップ部A1で中間転写ベルト7上に一括して転写し、更に2次転写ニップ部A2で記録材P上に一括して2次転写し、その記録材Pを定着装置21に導入する。
現像装置4は、イエロートナー現像器4Y、マゼンタトナー現像器4M、シアントナー現像器4C、ブラックトナー現像器4Kの4つの現像器を回転可能な支持体41に搭載したロータリー現像装置である。支持体41が矢印の時計方向に所定の回転角度順次に回転移動されることで、現像器4Y・4M・4C・4Kが順次にドラム1との対向位置(現像位置)に切り換え移動される。
1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7をドラム1面に圧接させて1次転写ニップ部A1を形成させた実線示の第1位置と、ドラム1から離れて中間転写ベルト7をドラム1面から離間させた2点鎖線示の第2位置とに切り換え移動される。22と23は、1次転写ローラ5を中にして中間転写ベルト移動方向上流側と下流側とにそれぞれ配設したベルト張架ローラである。
ドラムクリーナ6は、ドラム1に作用する実線示の第1位置と、ドラム1から離間させた2点鎖線示の第2位置(非作用位置)とに切り換え移動される。
1次転写ローラ5とドラムクリーナ6が第2位置に切り換え移動されている状態において、回転するドラム1面に、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4Yにより、フルカラー原画像の色分解成分像の内のイエロー成分像に対応したイエロートナー像が形成される。露光装置3は実施例1の画像形成装置と同様にレーザースキャナであり、イメージ露光方式と反転現像方式の組み合わせを用いている。
このドラム1上のイエロートナー像に重ねて、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4Mにより、フルカラー原画像の色分解成分像の内のマゼンタ成分像に対応したマゼンタトナー像が形成される。
また、このドラム1上のイエロートナー像+マゼンタトナー像に重ねて、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4Cにより、フルカラー原画像の色分解成分像の内のシアン成分像に対応したシアントナー像が形成される。
そして、このドラム1上のイエロートナー像+マゼンタトナー像+シアントナー像に重ねて、帯電ローラ2、露光装置3、現像器4Kにより、フルカラー原画像の色分解成分像の内のブラック成分像に対応したブラックトナー像が形成される。
このようにして、回転する1つのドラム1上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの都合4色の色トナー像が順次に所定に重ね合わされて、フルカラーの未定着トナー画像が合成形成される。
次いで、所定の制御タイミングで1次転写ローラ5が第1位置に切り換え移動されるとともに、1次転写ローラ5に対して所定の1次転写バイアスが印加される。これにより、1次転写ニップ部A1において、回転するドラム1面側から、回転する中間転写ベルト7側に、ドラム1面側のフルカラーの未定着トナー画像が順次に一括転写されていく。また、ドラムクリーナ6が第1位置に切り換え移動されて、ドラム1上の1次転写残トナーを除去する。
ベルト7上のフルカラーの未定着トナー画像は、ベルト7の引き続く回転により搬送されて、ベルト7と2次転写装置13の2次転写ベルト14との接触部である2次転写ニップ部A2に至る。そして、実施例1の画像形成装置と同様にベルト7上のフルカラーの未定着トナー画像が記録材Pに対して一括して2次転写される。2次転写ニップ部A2を出た記録材Pは、2次転写ベルト14上に静電的に保持されて中間転写ベルト7の面から分離し、ベルト14の引き続く回転で定着装置21に向って搬送され、ベルト14から分離してガイド部材20に案内されて定着装置21に導入される。
2次転写装置13は、実施例1の画像形成装置における2次転写装置13と同様な構成を有しており、実施例1の2次転写装置13と同様な効果を得ることができる。すなわち、帯電転写部材としての2次転写ローラ15と同電位の電極部材17が記録材搬送ベルトである2次転写ベルト14に対して所定の距離をもって、非接触の状態で平行に配接されることで、ベルト14は電極部材17との距離が広がらない。そのため、電極部材17あるいは2次転写ローラ15との電位差が大きくならない。これによって、ベルト14の電位上昇が抑えることができる。その一方で、回転によって2次転写ベルト14と中間転写ベルト7との距離は拡大するので、2次転写ベルト14と中間転写ベルト7との間の2次転写ニップ部下流部における電界強度は小さくなる。ひいては中間転写ベルト7と記録材Pとの間の静電吸着力が小さくなることから、相対的に、前記の吸着力Fiが上記吸着力Fpよりも小さくなり、装置の耐久の間、常に吸着力Fp>吸着力Fiの状態を維持させることが可能となる。したがって、特に薄紙のような腰の弱い記録材Pの場合においても、中間転写ベルト7からの記録材Pの分離不良を有効に回避できる。
電極部材17に対する電極バイアスは、2次転写ローラ15に印加する転写バイアスと同極で、かつ絶対値が同じである。
1・・像担持体、7・・中間転写ベルト、A・A1・A2・・1次転写ニップ又は2次転写ニップ、5A・13・・転写装置又は2次転写装置、5・15・・転写帯電部材(1次転写ローラ又は2次転写ローラ)、14・・記録材搬送ベルト、17・・電極部材、HV・・電源部