以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第一の実施形態は、インクジェット記録装置で用いるシアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)それぞれのインクについて、2回の走査に分けてインク吐出を行うことにより記録を行う形態に関する。この場合、2回の走査に分割した記録動作に対応して、C、M、Yインクそれぞれの記録ヘッドを駆動するための2値データ(以下、「ドットデータ」あるいは「吐出データ」とも言う)が存在する。本明細書では、これらの色および走査で区別される画像データ(2値データまたは多値データ)の画素ごとに配列した集合を、「プレーン」と呼ぶ。
図2は、プリンタで実行される2パス記録における記録ヘッドと記録媒体の関係を模式的に示す図である。以下で説明するように、2パス記録の場合、記録ヘッドの2回の走査によって記録媒体の所定の単位領域に記録すべき画像を完成させる。
シアン、マゼンタ、イエローの各色ノズル群は第1グループおよび第2グループの2つのグループに分割され、各グループには128個ずつのノズルが含まれている。従って、各色のノズル数は、それぞれ256個ずつで構成されている。
各色ノズル群はノズル配列方向と略直交する方向(図の矢印で示した「ヘッド走査方向」)へ走査しながら記録媒体の、ノズルグループの配列幅に対応した各単位領域にインクを吐出する。この例では、C,M,Yの2値の画像データに基づいて、各単位領域に対してC,M,Yのインク吐出が行われる。また、走査が終了するたびに、記録媒体は走査方向と直交する方向(図の矢印で示した「記録媒体搬送方向」)に1つのブループの幅分(ここでは、単位領域の幅と同じ128画素分)ずつ搬送される。これにより、各単位領域は2回の走査によって画像が完成する。
具体的には、第1走査で記録媒体上の領域Aに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いてC、M、Yの順番で記録が行われる。次に、第2走査で、第1走査での記録が終了した領域Aに対して、Cノズル群の第2グループ、Mノズル群の第2グループ、Yノズル群の第2グループをY、M、Cの順番で用いて残りの記録が行われる。これとともに、未記録状態の領域Bに対して、Cノズル群の第1グループ、Mノズル群の第1グループ、Yノズル群の第1グループを用いてY、M、Cの順番で記録が行われる。さらに、このような動作を続けることで、C1、M1、Y1、Y2、M2、C2の順番、あるいはY1、M1、C1、C2、M2、Y2の順番で各単位領域(領域A、領域B)について記録が行われていく。
図3(a)および(b)は、上記図2のようにC、M、Yのインクを用いて2パスのマルチパス記録を行う場合の、単位領域に対する記録順を説明する図である。
図3(a)は、往走査、復走査の順で記録される領域(図2の領域A)の画像が完成していく様子を示したものである。1回目の走査である往走査(1パス目)では、最初に、図5にて後述されるデータ(パス)分割/2値化処理よって生成したシアンのドットデータに基づいてシアン画像を記録する。続いて同じ走査で、マゼンタおよびイエローについても同様にデータ(パス)分割/2値化処理によって生成したドットデータに基づいて記録する。すなわち、マゼンタ画像をそれより前に記録したシアン画像に重ねて、さらに、イエロー画像をそれより前のシアン、マゼンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、2回目の走査である復走査(2パス目)では、同様に、順次、後述のデータ分割/2値化によって生成したそれぞれイエロー、マゼンタおよびシアンのドットデータに基づき、それより前に記録した画像に重ねて順次記録する。
一方、図3(b)は、復走査、往走査の順で記録される領域(図2の領域B)の画像が完成していく様子を示したものである。1回目の走査である復走査(1パス目)では、最初に、同じく後述のデータ(パス)分割/2値化処理によって生成したイエローのドットデータに基づいてイエロー画像を記録する。続いて同じ走査で、マゼンタおよびシアンそれぞれについて同じく後述のデータ(パス)分割/2値化処理によって生成したドットデータに基づいて記録する。すなわち、マゼンタ画像をそれより前に記録したイエロー画像に重ねて、さらに、シアン画像をそれより前に記録したイエロー、マゼンタ画像に重ねて順次記録する。記録媒体を所定量搬送した後の、2回目の走査である往走査(2パス目)では、同様に、順次、同様に生成したそれぞれシアン、マゼンタおよびイエローのドットデータに基づき、それより前に記録した画像に重ねて順次記録する。
本実施形態は、C、M、Yの3色インクによって区別される2値データはディザパターンを用いて生成するが、走査ごとのデータ生成(パス分割)もこのディザパターンを用いた一連の処理の過程で行う。具体的には、C、M、Y各8ビット256値のデータを、5ビット17値のデータとする。そして、このデータの値に2パス記録の走査回数2に基づく1/2を乗じた値のデータに対してディザパターンを用いて2値化し、このデータを1パス目のドットデータとする。また、同様に上記17値データに2/2を乗じた値のデータ(元のままのデータ)に対してディザパターンを用いて2値化して得られたドットデータから、上記1パス目のデータを除いたデータを2パス目のドットデータとする。
これにより6プレーンのドットデータ生成をマスクパターンを用いずに行うことから、そのパターンデータを格納するメモリ領域を省くことができ、メモリ容量の増大を防ぐことができる。
本実施形態のディザパターンは、本願人の出願に係る特許文献3に記載されたパターンを用いる。このディザパターンは、色ごとに用いられるパターンにおける閾値の配置がそれぞれのパターン内で分散しているとともに、色ごとのパターン相互でも閾値の配置が分散したものである。これにより、本実施形態のパス分割/2値化処理によって得られる6プレーンのドットデータを、相互に分散したものとすることができる。その結果、いくつかのプレーンの重ね合わせである中間画像におけるドットの偏りをできるだけ抑制し、前述したグレインないしビーディングを良好に低減することが可能となる。
例えば、図3(a)の順で記録される各走査(以下、パスとも言う)における記録ヘッドの吐出順序である、1パス目のC、1パス目のM、1パス目のY、2パス目のY、2パス目のM、2パス目のCの順でそれぞれ重ねたときに得られる、「1パス目のC+1パス目のM」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM」、「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM+2パス目のC」それぞれのプレーンの重なりにおけるドット分布が、できるだけ偏りがないように、上記の各プレーンの2値データを生成することができる。特に、最終の重なりである「1パス目のC+1パス目のM+1パス目のY+2パス目のY+2パス目のM+2パス目のC」の分散性はもちろんのこと、それ以外の、プレーンの中間の重なり(以下、本明細書では「中間画像」とも言う。)におけるドットの分布も、偏りが少なくするような2値データ生成を行うことができる。
また、図3(b)の順で記録される領域でも同様である。1パス目のY、1パス目のM、1パス目のC、2パス目のC、2パス目のM、2パス目のYの順でそれぞれ重ねたときに得られる同様の中間画像のドットの分布が偏りがないようにデータ生成を行うことができる。以下の説明では、図3(a)の領域について詳細に説明するが、図3(b)に示す領域でも、インクの打ち込まれる順番が異なるだけで、その打ち込み順に沿って同様の処理を行っていけばよい。また、本実施形態において処理対象とするプレーンの画素数は、128画素(ノズル配列方向)×記録幅に相当する画素数(主走査方向)となっている。
なお、ブラック(Bk)を加えた4色のインクを用いる場合、さらには濃度の低い淡インクやレッド、ブルー、グリーンなどの特色インクをさらに加えて用いる場合についても、同様に本発明を適用できることは、以下の説明からも明らかである。
図4は、本発明の第一の実施形態に係る画像処理装置(画像データ生成装置)としてのパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとも言う)のハードウェアおよびソフトウェアの構成を主に示すブロック図である。
図4において、ホストコンピュータであるPC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウェア101、プリンタドライバ103、モニタドライバ105の各ソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ104は、モニタ106に表示する画像データを作成するなどの処理を実行する。
プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウェア101からOS102へ発行される画像データ等を画像処理して、最終的にプリンタ104で用いる2値の吐出データを生成する。詳しくは、図5で後述される画像処理を実行することにより、C、M、Yの多値の画像データから、プリンタ104で用いるC、M、Yの2値の画像データを生成する。こうして生成した2値の画像データは、プリンタ104へ転送される。
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェアとして、CPU108、ハードディスクドライブ(HD)107、RAM109、ROM110などを備える。すなわち、CPU108は、ハードディスク107やROM110に格納されている上記のソフトウェアプログラムに従ってその処理を実行し、RAM109はその処理実行の際にワークエリアとして用いられる。
本実施形態のプリンタ104は、図2にて説明した通り、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して走査し、その間にインクを吐出して記録を行ういわゆるシリアル方式のプリンタである。C、M、Yそれぞれのインクに対応した各吐出口群を有する記録ヘッドがキャリッジに装着されることにより、記録用紙などの記録媒体に対して走査することができる。記録ヘッドの各吐出口に連通する流路には、電気熱変換素子や圧電素子等の記録素子が設けられ、これら記録素子を駆動することにより吐出口からインクが吐出される。各吐出口の配列密度は2400dpiであり、それぞれの吐出口から3.0ピコリットルのインクが吐出される。また、各色吐出口群の吐出口の数は256個である。
プリンタ104は、不図示のCPU、メモリ等を備えている。ホストコンピュータ100から転送されてきた2値の画像データは、プリンタ104のメモリに格納される。そして、プリンタのCPUの制御の下、メモリに格納されている2値の画像データが読み出され、記録ヘッドの駆動回路へ送られる。駆動回路は、送られてきた2値の画像データに基づいて記録ヘッドの記録素子を駆動し、吐出口からインクを吐出させる。
本実施形態の記録方式は、図2にて上述したように、2回の走査で所定の領域の記録を順次完成して行く、いわゆる2パスのマルチパス方式である。この2パス記録において、各走査でそれぞれの吐出口からインクを吐出するための2値の画像データは、図5にて後述する画像処理によって生成されるものである。これによって、図3(a)で説明したように、1パス目のC、1パス目のM、1パス目のY、2パス目のY、2パス目のM、2パス目のCの順でそれぞれ重ねたときに得られるプレーンのそれぞれの重なりにおけるドット分布の偏りが少ないものとすることができる。
図5は、本発明の第一の実施形態に係る画像処理の手順を示すフローチャートである。また、図6は比較のために示す従来の、ディザパターンを用いた2値化とマスクパターンを用いたパス分割を含む画像処理のフローチャートである。以下、画像処理のうち、特にプレーンごとの画像データ生成処理について従来例の画像処理と比較しながら、本実施形態に係る画像処理を説明する。
先ず、ステップS301、S401で、アプリケーションなどによって得られた画像のR、G、Bデータについて入力γ補正などの色調整処理を行う。次に、ステップS302、S402で、RGBの画像データについて、R、G、Bによる色域からプリンタで用いるインクの色成分C、M、Yによる色域への変換、ならびに変換した色域における色を表現する色成分データC、M、Yの生成を行う。これらの処理は、通常ルックアップテーブルに補間演算を併用して行う。この処理によって、R、G、Bの各8ビットの画像データは、C、M、Yの各8ビットデータ(多値の画像データ)に変換される。次に、ステップS303、S403で出力γ補正を行い、プリンタ104で用いられる記録ヘッドの入出力階調特性を調整する。次に、ステップS304、S404で、それぞれ17値化処理を行ない、17値の多値画像データを得る。この17値化処理は、例えば、誤差拡散処理などの擬似階調処理によって行なうことができる。
次に、図6に示す従来例では、ステップS405で、C、M、Yの17値画像データそれぞれに対して、ディザパターンを用いて2値化を行い2値データを得る。次に、ステップS406で、得られた2値の画像データを、2パスそれぞれの記録で用いる2値データを得るべくパス分割を行う。このパス分割は、図1で前述したようにマスクパターンを用いて行う。この場合、前述したように、マスクパタ−ンと2値の画像パターンのパターン干渉を生じる場合がある。また、これらのマスクパターンは、それらによって生成されるC、M、Yそれぞれ2パス分の合計6プレーンのドットデータが、相互のドット配置について特に良好な分散性を考慮していないものである。その結果として、図8(a)〜図8(d)を参照して後述するように、グレインの問題を生じることがある。
これに対し、本実施形態では、ステップS305において、C、M、Yの17値画像データそれぞれに対して、パス分割と2値化を同時の処理として行う。また、この処理はディザパターンを用いて行なうが、本実施形態では、特許文献3に開示される方法によってインク色ごとに作成されたディザパターンを用いる。このディザパターンは、その閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分散したものである。また、これらのディザパターンはインク色相互においても閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分散したものである。この「分散している」とは、上記閾値の配置の周波数成分を考えたとき、低周波成分(例えば、周波数成分が存在する範囲の半分以下)のパワースペクトルが、高周波数成分より少ないことを意味している。
このように閾値の配置が分散したディザパターンを用いて、2値化だけでなくパス分割も併せて行うことにより、以下に説明するように、パスごとに形成されるドットの配置が、それぞれのパスにおいて分散しているとともに、パス間でも分散したものとなる。さらに、異なるインク色のパス間でもドット配置が分散したものとなる。これにより、記録の途中で形成されるドットの偏りをなくしてグレインないしビーディングを低減することができる。なお、この「分散」とは、上記と同様、ドット配置の低周波成分のパワースペクトルが、高周波数成分より少ないことを意味している。
図7は、図5のステップS305のパス分割/2値化処理を模式的に示す図である。なお、同図では、図2に示す2パス記録の単位領域幅の128ノズル分に対応した128画素×128画素のサイズのディザパターンおよびそれによって処理されるデータのプレーンを、説明および図示の簡略化のために、4画素×4画素で表している。
図7において、ディザパターンPは特許文献3に開示される方法によって生成された、一つの色シアン(C)用のディザパターンである。同図に示すように、閾値1〜16はその大きさの順序に関して分散している。また、17値の画像データは、一例として総ての画素の値が「4」である、いわゆるベタ画像を表している。
本実施形態の2パス用のパス分割/2値化処理では、先ず、画像データの各値をパス数2で割る処理(分割処理)を行う。すなわち、この2を分母としたとき、先ず、分子を1とした比率1/2を画像データの各値に掛ける演算を行なう。このように1パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率と同じ「1/2」にしている。これにより、総ての画素の値が「2」である、分割された17値データを得る。
次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行う。これにより、1パス目の2値(ドット)データB(1パス目で記録する分割画像に対応したドットデータ)を得る。図7に示すように、ドットデータBは、ディザパターンの閾値が「1」、「2」に対応する画素に“1”(○印)が配置されたデータとなる。
次に、上記比率に1/2を加えた比率(1/2+1/2)によって得られる分割率と画像データの各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値に2/2を掛ける演算を行なう。このように2パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/2」にしている。これは、上記1パス目のドットデータ生成において分割率1/2を掛けた画像データによるドット配置を累積して次の2パス目のドット配置に反映させるためである。換言すれば、ディザパターンPにおける、上記閾値が「1」、「2」に対応する画素には1パス目で既にドットが配置されていることを反映させる。なお、本例のように2パスの場合は、上記分割率が2/2となるので、この分割率を掛けて求めるデータは元の画像データとなる。このため、この分割率との積を求める演算は行わないアルゴリズムとしてもよい。そして、この元の画像データに対してディザパターンPを用いて2値化を行う。これにより、2値(ドット)データAを得る。最後に、このデータAからデータBを引いて2パス目のドットデータC(2パス目で記録する分割画像に対応したドットデータ)を得る。具体的には、データAとデータBの否定との論理積を対応する画素間で求める。以上のようなディザパターンを適用したパス分割および2値化処理を、128画素(ノズル配列方向)×記録幅に相当する画素数(主走査方向)の1プレーン分のドットデータを得るまで繰返す。
このように本実施形態によれば、各パス(各記録動作)に対応した異なる分割率に従って多値の画像データを分割し、分割された多値データ夫々を同じディザパターンにより2値化し、2値化の結果に基づいて各パスのドットデータを生成する。この際、各パスにおいてドットが異なる位置に記録されるように各パスのドットデータを生成する。
なお、以上の説明から明らかなように、上記「比率」は最終的に分割される各画像の記録率に対応している。また、上記の説明では、1パス目データと2パス目データをこの順序で順次に求めるように説明したが、これは説明の便宜上であって、処理の手順はこれに限られない。画像データに分割率1/2と分割率2/2を掛ける処理はどちらが先に行われてもよい。また、それらの分割率を掛けた結果に対するディザパターンを用いた2値化処理もどのような順序で行われてもよい。さらには、この2値化の結果であるドットデータについて、2つのデータ間で差し引きして最終的にパスごとのドットデータを得る処理もどのような順序で行われてもよい。結果的に、1パス目のドットと2パス目のドットが異なる位置に記録されるように、言い換えれば、1パス目ドットデータと2パス目ドットデータが重ならないように、各パスのドットデータが生成されればよい。これは、以下で説明する実施形態でも同様である。
以上説明したように、本実施形態によれば、ディザパターンを用いるだけで、パスごとの分割データを得るとともに、2値化を行うことができる。この結果、従来、2値化のためのディザパターンと、パス分割のためのマスクパターンの両方が必要であったのに対し、ディザパターンのみを用いればよく、パターンデータを格納するメモリの容量増大を防ぐことができる。また、最終的に2値化の結果を得るまでの処理を、ディザパターンを用いた、2値化とパス分割の同時処理とすることができ、CPUの処理負荷を軽減することが可能となる。
また、ディザパターンの閾値がその大きさの順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各分割率を掛けて得られる分割された17値データに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる1パス目および2パス目のドットデータB、Cは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分散した配置となる。また、インク色ごとのディザパターンが、特許文献3に記載されるように、インク色間で分散した閾値配置となっているので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したものとなる。その結果、いわゆるグレインの問題の発生を抑制することができる。以下、このグレインについて、詳細に説明する。
ディザパターンを用いて2値化を行い、その2値データに対してマスクパターンを用いてパス分割を行うシステムにおいて、ディザパターンとマスクパターンそれぞれの内容について相互の関連を特に考慮しない場合、マスクパターンとドットデータとの干渉あるいはそれに起因したビーディングの問題を生じる場合がある。インク色および走査に対応したマスクパターン相互の関連を考慮しない場合も同様の問題を生じることがある。
特に、近年のインクジェット記録システムでは、その高速化、高密度化、およびインクの種類の多様化が目覚しく進むにつれて、ビーディングに関する新たな問題が発生していることが確認されている。すなわち、高速化、高密度化、インクの種類の増大は、単位時間当たりおよび記録媒体の単位面積あたりに付与されるインクの量を増大させる。この場合、記録媒体によっては、付与されるインクの総てを最終的には吸収可能であったとしても、その吸収速度がインクの付与速度に対応できない場合がある。すなわち、付与されたインクの総てが、最終的には全て吸収され、定着性やスミアなどの問題を発生させない場合であっても、画像を完成する前の何回かの走査の段階で、記録媒体の表面でまだ吸収されていないインク滴同士が接触することがある。そして、これが後々の画像においてビーディングの問題を引き起こす場合が確認されている。
例えば、シアンインクとマゼンタインクで表現されるブルーの画像を、2パスのマルチパス記録方式で記録する場合を考える。シリアル型のインクジェット記録装置の多くは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの基本4色インクの記録ヘッドがその主走査方向に並列に配置されている。従って、同一の記録走査では記録媒体の同一の領域に各色インクが付与される。すなわち上記の場合、シアンおよびマゼンタのドットデータをマスクパターンでそれぞれ1/2に間引いて得られるシアンおよびマゼンタのデータに基づくインクが、同一の記録走査における極めて短い時間差で記録媒体に付与される。このとき、付与されるシアンインクとマゼンタインクが同じ画素あるいは隣接する画素に位置する場合など相互に近傍に位置するとき、互いの表面張力によって引き合い、2つ分あるいはそれ以上の大きなドット(以下、グレインと称す)が形成されることがある。一度このようなグレインが形成されると、次にその近傍位置に付与されたインクはそのグレインに引き寄せられやすくなる。すなわち、最初に発生したグレインが核となって徐々に成長し、やがて大きなグレインを形成する。このようなグレインは、主にインクの付与量が多い高濃度領域において顕著に現れる。そして、一様な画像領域においては、このようなグレインが不規則に散らばった状態で散在したものとして認識され、ビーディングという画像弊害となる。
上記グレインの現象は、基本的に、比較的短い時間で複数のインクが近傍に付与されることによって生じ、その際の引き合う程度はインク同士の表面張力による。しかし、グレインの形成は、インク同士の表面張力にのみに依存するものではない。例えば、インクとそのインクに反応して凝集などを生じる液体が同じ走査で付与される場合、接触した各液体はより強固な化学反応によって結合しこれがグレイン核を形成する場合もある。
また、同一の走査で、同色のインクを2列のノズル列を用いて記録するように、同じ走査で同色のインクが付与される場合もこれらの間でグレインが発生することがある。さらに、記録媒体のインクに対する吸収特性によっては、マルチパス記録における異なる走査で付与されるインク同士が近接して付与されるときに上記グレインを生じることもある。
また、以上のようなグレインの問題を生じさせる他の原因として、マスクパターンと2値化されたドットデータとの干渉問題がある。
図8(a)〜(d)はこの干渉の問題の説明する図である。同図(a)はシアンの2値画像データのパターンを示し、同図(b)はシアンの2パス用マスクパターンのうち1パス目のマスクパターン(50%が記録許容画素)を示す。同図(a)の2値画像データのパターンの大きさは4×4であり、これに対し、同図(b)のマスクパターンは4×4サイズの記録許容画素を配置したマスクで2値画像データのパターンに一対一に対応している。
この場合、1パス目では、マスクパターンと2値画像データパターンのアンドデータである、同図(c)に示すドットパターンが記録されることになる。すなわち、図8(a)の2値画像データは形成すべきドットが4個であるが、1パス目で実際に形成するドットは0個になる。逆に、図8(d)に示す2パス目では残りの4個のドットの総てが形成されることになる。このように、マスクパターンと2値画像データ(ドットデータ)との干渉が生じ、それによって、マルチパス記録本来の効果が十分に発揮されないなど様々な弊害をもたらすことがある。図8に示す例以外にも、逆のケースつまり1パス目で4個のドットが形成され、2パス目で0個ということもあり得る。また、この干渉は、もちろんデータのサイズにかかわらず様々な2値画像データパターンとそれに対応したパスマスクパターンとの組合せにおいて生じる可能性がある。
以上のような干渉は、2値画像データ全体に対する走査ごとのマスク処理において、所々で起こる可能性がある。そして、以上に示した干渉による、ある走査に対するドットの偏りは、上述したマルチパス記録における複数回の走査で画像を完成する場合の途中の段階の画像(以下、「中間画像」ともいう)を生成するときのグレインの発生にもつながることがある。
以上のように、ディザパターンとマスクパターンを用いて走査ごとの最終的なドットデータを求める場合に、走査ごとあるいはインク色ごとに生成されるドットデータ相互の関連が考慮されていない場合には、上述したグレインなどの問題を生じることがある。そして、このグレインは、本実施形態によれば、ディザパターンの閾値がその大きさの順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各分割率を掛けて得られる分割されたディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる各パスのドットデータは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分散した配置となる。また、インク色ごとのディザパターンが、インク色間で分散した閾値配置となっているので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したものとなる。このように本発明の実施形態によれば、メモリの容量増大や処理負荷の抑制とともに、上述したようにグレインの問題の発生を抑制することが可能となる。
(第2実施形態)
上述した第1の実施形態は、256値の画像データを17値化し、その画像データに対してディザパターンを用い2値化とパス分割を併せて行う例を示した。これに対し、本発明の第2の実施形態は、256値の画像データに対して、ディザパターンを用い2値化とパス分割を併せて行う例に関するものである。
図9〜図11は、本発明の第2実施形態に係るパス分割および2値化処理を同時の処理として行う場合の、ディザパターン、および2値化されたデータの二例を示す図である。すなわち、以下に説明するように、画像データは、8ビット256値の画像データが直接2値化される例を示している。
本実施形態の記録方式は、図2にて上述したように、第1実施形態と同じく2回の走査で所定の領域の記録を順次完成して行く、2パスのマルチパス方式である。この2パス記録において、各走査でそれぞれの吐出口からインクを吐出するための2値の画像データは、図12にて後述する画像処理によって生成されるものである。これによって、図3(a)で説明したように、1パス目のC、1パス目のM、1パス目のY、2パス目のY、2パス目のM、2パス目のCの順でそれぞれ重ねたときに得られるプレーンのそれぞれの重なりにおけるドット分布の偏りが少ないものとすることができる。
図12は、本発明の第2の実施形態に係る画像処理の手順を示すフローチャートである。図12に示すステップS1201〜S1203の処理は、図5のステップS301〜S303の処理と同様である。
すなわち、先ず、ステップS1201で、アプリケーションなどによって得られた画像のR、G、Bデータについて入力γ補正などの色調整処理を行う。次に、ステップS1202で、RGBの画像データについて、R、G、Bによる色域からプリンタで用いるインクの色成分C、M、Yによる色域への変換、ならびに変換した色域における色を表現する色成分データC、M、Yの生成を行う。この処理によって、R、G、Bの各8ビットの画像データは、C、M、Yの各8ビットデータ(多値の画像データ)に変換される。
そして、このようにして得られる8ビットの256値のC、M、Yの画像データそれぞれに対して、ステップS1204で、パス分割と2値化を同時の処理として行う。本実施形態で用いるディザパターンは、第1実施形態と同様、特許文献3に開示される方法によってインク色ごとに作成されたディザパターンである。すなわち、このディザパターンは、その閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分散したものである。また、これらのディザパターンはインク色相互においても閾値の配置が閾値の大きさの順序に関して分散したものである。
このように閾値の配置が分散したディザパターンを用いることにより、第1実施形態の場合と同様、2値化だけでなくパス分割も併せて行うことにより、パスごとに形成されるドットの配置が、それぞれのパスにおいて分散しているとともに、パス間でも分散したものとなる。さらに、異なるインク色のパス間でもドット配置が分散したものとなる。これにより、記録の途中で形成されるドットの偏りをなくしてグレインないしビーディングを低減することができる。
図13は、図12のステップS1204のパス分割/2値化処理を模式的に示す図である。なお、図13では、図2に示す2パス記録の単位領域幅の128ノズル分に対応した128画素×128画素のサイズのディザパターンおよびそれによって処理されるデータのプレーンを、説明および図示の簡略化のために、4画素×4画素で表している。
図13において、ディザパターンPは、特許文献3に開示される方法によって生成された、一つの色シアン(C)用のディザパターンである。同図に示すように、閾値1〜256はその大きさの順序に関して分散している。また、画像データは、一例として総ての画素の値が「64」である、いわゆるベタ画像を表している。
本実施形態の2パス用のパス分割/2値化処理では、先ず、画像データの各値をパス数2で割る処理を行う。すなわち、この2を分母としたとき、先ず、分子を1とした比率1/2を画像データの各値に掛ける演算を行なう。このように1パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率と同じ「1/2」にしている。これにより、総ての画素の値が「32」である、分割されたデータを得る。
次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行う。これにより、1パス目の2値(ドット)データBを得る。図13に示すように、ドットデータBは、ディザパターンの閾値が「16」、「32」に対応する画素に“1”(○印)が配置されたデータとなる。
次に、上記比率に1/2を加えた比率(1/2+1/2)によって得られる分割率と画像データの各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値に2/2を掛ける演算を行なう。このように2パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/2」にしている。これは、第1実施形態でも説明したように、上記1パス目のドットデータ生成において分割率1/2を掛けた画像データによるドット配置を累積して次の2パス目のドット配置に反映させるためである。換言すれば、ディザパターンPにおける、上記閾値が「16」、「32」に対応する画素には1パス目で既にドットが配置されていることを反映させる。なお、本例のように2パスの場合は、上記分割率が2/2となるので、この分割率を掛けて求めるデータは元の画像データとなる。このため、この分割率との積を求める演算は行わないアルゴリズムとしてもよい。そして、この元の画像データに対してディザパターンPを用いて2値化を行う。これにより、2値(ドット)データAを得る。最後に、このデータAからデータBを引いて2パス目のドットデータCを得る。具体的には、データAとデータBの否定との論理積を対応する画素間で求める。以上のようなディザパターンを適用したパス分割および2値化処理を、128画素(ノズル配列方向)×記録幅に相当する画素数(主走査方向)の1プレーン分のドットデータを得るまで繰返す。
このように本実施形態では、各パス(各記録動作)に対応した異なる分割率に従って多値の画像データを分割し、分割された多値データ夫々を同じディザパターンにより2値化し、2値化の結果に基づいて各パスのドットデータを生成する。この際、各パスにおいてドットが異なる位置に記録されるように各パスのドットデータを生成する。
なお、以上の説明から明らかなように、上記「比率」は最終的に分割される各画像の記録率に対応している。また、上記の説明では、1パス目データと2パス目データをこの順序で順次に求めるように説明したが、これは説明の便宜上であって、処理の手順はこれに限られない。画像データに分割率1/2と分割率2/2を掛ける処理はどちらが先に行われてもよい。また、それらの分割率を掛けた結果に対するディザパターンを用いた2値化処理もどのような順序で行われてもよい。さらには、この2値化の結果であるドットデータについて、2つのデータ間で差し引きして最終的にパスごとのドットデータを得る処理もどのような順序で行われてもよい。結果的に、1パス目のドットと2パス目のドットが異なる位置に記録されるように、言い換えれば、1パス目ドットデータと2パス目ドットデータが重ならないように、各パスのドットデータが生成されればよい。また、図13では、ディザパターンは、説明を簡易にするために単純な閾値配置を示しているが、図9〜図11に示す例では、特許文献3に記載の方法によって定めれるものの、1〜256の閾値の配置はより複雑なものになっている。
図9は、8ビット256値の画像データを2値化するための128画素×128画素のサイズのディザパターンを示しており、特許文献3に記載の方法によって生成されたものである。すなわち、1から256の閾値がその大きさの順序に関して分散して配置されたものである。なお、図9は、各画素における閾値をその大きさに応じた濃度のパターン(8ビットマップデータのパターン)として表している。
図10は、各画素25%濃度(画素値64)の8ビットベタ画像を画像データとしたときに、そのままの画像データを図9に示すディザパターンによって2値化した結果であるドットデータを示す図である。これは図13に示すドットデータAに相当する。
また、図11は、上記25%濃度の画像データの各画素値に対して、1/2を掛けて得られる(12.5%濃度の)データを、図9に示すディザパターンで2値化した結果であるドットデータを示す図である。これは、図13に示す1パス目のドットデータBに相当する。そして、図13に示す2パス目のドットデータCに相当するデータは、図10に示すデータから図11に示すデータを引くことによって得られる。すなわち、図10のデータと図11のデータの否定との論理積によって、2パス目のデータを得ることができる。図11、および図11と図10との関係から明らかなように、各パスのドット配置が良好に分散していることがわかる。
なお、用いるディザパターンは、上記の例に限られないことはもちろんである。例えば、特許文献2に開示されるような、色間の分散は考慮していないが1つのディザパターンにおいて上記と同様に閾値の配置が分散したものを用いることもできる。これによれば、少なくとも各色についてパス間のドット配置を分散したものとすることができる。
さらには、特許文献3、特許文献2に記載されるディザパターンに限らず、一般に用いられるその他のディザパターンを用いることもできる。これによれば、最終的に得られるパスごとのドット配置が良好に分散していない場合でも、ディザパターンを用いるだけで、パスごとの分割データを得るとともに、2値化を行うことができる。その結果、パターンデータを格納するメモリの容量増大を防ぐことができるという効果を得ることができる。
以上のとおり、本発明の第2の実施形態によれば、ディザパターンを2値化とパス分割に併用することにより、メモリの容量増大や処理負荷の抑制とともに、グレインの問題の発生を抑制することが可能となる。
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態は、4パス記録のためのパス分割および2値化処理に関するものである。詳しくは、8ビット、256値の画像データを一旦17値化し、17値データに対して、2値化と4パスのパス分割を同時に行うものである。
図14は、本実施形態のパス分割/2値化処理を説明する図である。図14に示すディザパターンおよび17値の画像データの内容は、それぞれ図7に示したものと同じものである。なお、上記第1実施形態と同じノズル数の記録ヘッドを用いる場合は、適用するディザパターンおよびそれによってパス分割および2値化の対象となる画像データの、図14における縦方向(ノズル配列方向に対応)のサイズは、実際は図に示すものの半分である。しかし、説明の簡略化のため第1実施形態の2パスの場合と同じもので説明する。
先ず、画像データの各値をパス数4で割る処理を行う。すなわち、この4を分母としたとき、先ず、分子を1とした比率(記録率)1/4を画像データの各画素値に掛ける演算を行なう。このように1パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率と同じ「1/4」にしている。これにより、総ての画素の値が「1」である、分割された17値データを得る。次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行う。これにより、1パス目の2値(ドット)データAを得る。図14に示すように、ドットデータAは、ディザパターンPの閾値「1」に対応する画素に“1”(○印)が配置されるデータとなる。
次に、上記比率に比率1/4を加えて得られる分割率(1/4+1/4)と画像データの各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値に2/4を掛ける演算を行なう。このように2パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/4」にしている。これは、図7にて説明したのと同様に、1パス目のドット配置を累積的に2パス目のドット配置に反映させるためである。上記演算により、総ての画素の値が「2」である、分割された17値データを得る。次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行い、2値(ドット)データBを得る。このデータのドット配置は、ディザパターンPの閾値「1」、「2」に対応する画素にそれぞれ“1”(○印)が配置されたものとなる。そして、この2/4(この場合、第1の分割率)をかけて得られるデータBから1/4(この場合、第2の分割率)をかけて得られるデータAを引いたデータを2パス目のドットデータCとする。すなわち、データBとデータAの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータCとする。
同様に、3パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に3/4(1/4+1/4+1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「3」である、分割された17値データを得る。このように3パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「3/4」にしている。次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行い、2値(ドット)データDを得る。このデータのドット配置は、ディザパターンPの閾値が「1」、「2」、「3」に対応する画素にそれぞれ“1”(○印)が配置されたものとなる。そして、上記と同様、この3/4(この場合、第1の分割率)をかけて得られるデータDから2/4(この場合、第2の分割率)をかけて得られるデータBを引いたデータを3パス目のドットデータEとする。すなわち、データDとデータBの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータEとする。
最後に、4パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に4/4(1/4+1/4+1/4+1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「4」である、分割された17値データを得る。このように4パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「4/4」にしている。なお、このデータは元の画像データと同じものであるので、この4/4を掛ける処理を行わずに元のデータをそのまま用いるアルゴリズムとしてもよい。次に、このデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行い、2値(ドット)データFを得る。このデータのドット配置は、ディザパターンPの閾値が「1」、「2」、「3」、「4」に対応する画素にそれぞれ“1”(○印)が配置されたものとなる。そして、同様に、このデータFからデータDを引いたデータを4パス目のドットデータGとする。すなわち、データFとデータDの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータGとする。
以上説明したように、本実施形態でも、ディザパターンを用いるだけで、パスごとの分割データを得るとともに、2値化を行うことができる。この結果、従来、2値化のためのディザパターンと、パス分割のためのマスクパターンの両方が必要であったのに対し、ディザパターンのみを用いればよく、パターンデータを格納するメモリの容量増大や負荷処理の増大を防ぐことができる。また、ディザパターンPの閾値がその大きさの順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各比率を掛けて得られる分割の17値データに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる1パス目から4パス目のドットデータA、C、E、Gは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分散した配置となる。また、インク色ごとのディザパターンPが、特許文献3に記載されるように、インク色間で分散した閾値配置となっているので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したものとなる。
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態は、ディザパターンを利用して、8ビット、256値の画像データを直接2値化し、しかも同時に4パスのパス分割を行うものに関する。
図15は、本実施形態のパス分割/2値化処理を説明する図であり、図12に示すステップS1204の処理と同じ処理を示している。ただし、4パスに分割する点が、ステップS1204の処理と異なる点である。また、図15に示すディザパターンおよび画像データの内容は、それぞれ図13に示したものと同じものである。
先ず、画像データの各値をパス数4で割る処理を行う。すなわち、この4を分母としたとき、先ず、分子を1とした比率(記録率)1/4を画像データの各画素値に掛ける演算を行なう。このように1パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率と同じ「1/4」にしている。これにより、総ての画素の値が「16」である、分割された8ビット、256値の画像データを得る。次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行う。これにより、1パス目の2値(ドット)データAを得る。図15に示すように、ドットデータAは、ディザパターンPの閾値「16」に対応する画素に“1”(○印)が配置されるデータとなる。
次に、上記比率に比率1/4を加えて得られる分割率(1/4+1/4)と画像データの各値との積によるデータを求める。すなわち、画像データの各画素の値に2/4を掛ける演算を行なう。このように2パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「2/4」にしている。これは、図14にて説明したのと同様に、1パス目のドット配置を累積的に2パス目のドット配置に反映させるものである。上記演算により、総ての画素の値が「32」である、分割された8ビットデータを得る。次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行い、2値(ドット)データBを得る。このデータのドット配置は、ディザパターンPの閾値「16」、「32」に対応する画素にそれぞれ“1”(○印)が配置されたものとなる。そして、この2/4(この場合、第1の分割率)をかけて得られるデータBから1/4(この場合、第2の分割率)をかけて得られるデータAを引いたデータを2パス目のドットデータCとする。すなわち、データBとデータAの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータCとする。
同様に、3パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に3/4(1/4+1/4+1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「48」である、分割されたデータを得る。このように3パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「3/4」にしている。次に、この分割されたデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行い、2値(ドット)データDを得る。このデータのドット配置は、ディザパターンPの閾値が「16」、「32」、「48」に対応する画素にそれぞれ“1”(○印)が配置されたものとなる。そして、上記と同様、この3/4(この場合、第1の分割率)をかけて得られるデータDから2/4(この場合、第2の分割率)をかけて得られるデータBを引いたデータを3パス目のドットデータEとする。すなわち、データDとデータBの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータEとする。
最後に、4パス目のデータを求める場合は、先ず、画像データの各画素の値に4/4(1/4+1/4+1/4+1/4)を掛ける演算を行ない、総ての画素の値が「64」である、分割された8ビットデータを得る。このように4パス目のドットデータを得るために、ここでは、画像データの分割率を、上記比率を加算して得られる「4/4」にしている。次に、このデータに対してディザパターンPを用いて2値化を行い、2値(ドット)データFを得る。このデータのドット配置は、ディザパターンPの閾値が「16」、「32」、「48」、「64」に対応する画素にそれぞれ“1”(○印)が配置されたものとなる。そして、同様に、このデータFからデータDを引いたデータを4パス目のドットデータGとする。すなわち、データFとデータDの否定との論理積を対応する画素間で求め、これをドットデータGとする。なお、図15では、ディザパターンは、特許文献3に記載の方法によって定められるものであるが、実際は、図9のように、その閾値配置はより複雑なものになっている。
以上説明したように、本実施形態によっても、ディザパターンを用いるだけで、パスごとの分割データを得るとともに、2値化を行うことができる。この結果、従来、2値化のためのディザパターンと、パス分割のためのマスクパターンの両方が必要であったのに対し、ディザパターンのみを用いればよく、パターンデータを格納するメモリの容量増大や負荷の増大を防ぐことができる。また、ディザパターンPの閾値がその大きさの順序に関して分散していることにより、このパターンを用いた、各比率を掛けて得られる分割のデータに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる1パス目から4パス目のドットデータA、C、E、Gは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分散した配置となる。また、インク色ごとのディザパターンPが、特許文献3に記載されるように、インク色間で分散した閾値配置となっているので、最終的に得られる各パスのドット配置は、色間でも分散したものとなる。
(第5実施形態)
本実施形態は、パスごとになだらかな記録率(ドットの配列密度)の変化(グラデーション)が設定されている場合の例に関する。このグラデーションとは、ノズル列端部に対応するラスターの記録率が低く、中央部に対応するラスターの記録率が高く設定されているような、ノズル位置に応じて記録率が異なる記録パターンを言う。このような記録パターンによれば、マルチパス記録で各パスの記録領域の境界で弊害の原因となりやすい端部ノズルの吐出頻度を相対的に少なくすることにより、画像品位を向上させる効果が得られる。
ここで、「記録率」とは、上述したように、一定の領域に含まれる全画素数(ドットを記録する画素とドットを記録しない画素の和)に対する上記ドットを記録する画素数の割合である。例えば、単一ノズルに対応する領域の記録率とは、その単一ノズルに対応する領域(単一ラスター領域)に含まれる全画素数に対するドット記録画素の割合である。なお、上述した第1から第4実施形態で述べた「比率」がこの記録率に相当するものとなる。
なお、このグラデーション記録は、従来、マスクパターン(いわゆるグラデーションマスク)を用いて行なうのが一般的である。すなわち、マスクパターンにおける記録許容画素と非記録許容画素の和に対する上記記録許容画素の割合を記録率とするとき、上記のようにノズル位置に応じて記録率を変化させたマスクを用いてマスク処理を行う。ここで、記録許容画素は、画像データにおける対応する画素のデータをそのまま出力する画素を言う。また、非記録許容画素は、画像データにおける対応する画素のデータをマスクする画素を言う。
図16(a)および(b)は、本実施形態の2パス記録おけるパスごとのグラデーション記録を説明する図である。
図16(b)は、従来使用されているグラデーションマスクを1つのパスの記録パターンとして示すものである。すなわち、グラデーションマスクにおける記録許容画素を記録すべきドット(黒のドット)として表したものである。図16(b)において、C1は、100%濃度のベタ画像を2パスで記録する場合の1パス目のドットデータを示し、C2は、同じくベタ画像の2パス目のドットデータを示す。これらデータのドット配置は相互に補完の関係にあり、2回の走査で上記の100%濃度のベタ画像が完成する。また、これらドットデータは256個のノズル配列と対応しており、図の縦方向においてそれぞれ128画素からなる、データC1の上側、およびデータC2の下側がノズル配列の中央側に対応する。また、データC1の下側、およびデータC2の上側がノズル配列のそれぞれの端部側に対応している。
図16(a)は、上記256個のノズルからなるノズル配列ごとの記録率を示している。同図に示す例では、ノズル配列において中央部の番号127、128のノズルに対応する記録率が0.7で、ノズル配列のそれぞれの端の番号0、255のノズルに対応する記録率が0.3である。そしてデータC1がノズル128〜255に、データC2がノズル0〜127に対応する。
本発明の第5の実施形態は、このようなグラデーション記録用のドットデータの生成を、ディザパターンを用いてパス分割と2値化を同時に行うものである。
2パス記録の場合について、図7を参照して説明する。すなわち、グラデーション記録の場合は、図7にて説明した1/2の代わりに、画像データのラスターごとに図16(a)にて説明した記録率を掛ける演算を行う。
128×128のディザなど大きいサイズを模式化することは難しいため、4×4の簡単な図で説明する。図7に示す4画素×4画素のサイズの画像データは、上述したようにノズル列の半分のノズル列(図16(a)の例では、ノズル0〜127またはノズル128〜255)に対応している。この画像データの走査方向のそれぞれの行を、図7に示すようにラスターr1、r2、r3、r4とするとき、このラスターごとに記録率を異ならせる。例えば、中央ノズルに対応したラスターr1に0.7、ラスターr2に0.56、ラスターr3に0.43、端部ノズルに対応したラスターr4に0.3を割り当てる。そして、それぞれの記録率を対応するラスターの各画素値に掛けることにより、分割された画像データを得ることができる。上記の記録率の場合、ラスターr1の画素値は4×0.7=2.8、ラスターr2の画素値は4×0.56=2.24、ラスターr3の画素値は4×0.44=1.76、ラスターr4の画素値は4×0.3=1.2となる。
この分割画像データに対して、ディザパターンPを用いて2値化することにより、1パス目のドットデータを得る。図7に示すディザパターンと画像データの場合、この1パス目のドットデータは、ディザパターンPの閾値が「1」である画素に対応する画素にドットが配置されたものとなる。
次に、第1実施形態について図7にて説明したのと同様に、上記1パス目の記録率が累積的に加えられた記録率を画像データに掛ける演算を行う。具体的には、2パス目のドットパターンは、図16(a)に示すように、グラデーションが逆になり、中央ノズルに対応したラスターr4に0.7、ラスターr3に0.56、ラスターr2に0.44、端部ノズルに対応したラスターr1に0.3を割り当てる。このとき、記録率は、1パス目の記録率が累積的に加えられたものであり、1パス目の記録率(0.7、0.56、0.44、0.3)を、ラスターごとに上記2パス目のパターンの記録率(0.3、0.44、0.56、0.7)に加えたものとなる。すなわち、記録率は各ラスターとも1(0.7+0.3、0.56+0.44、0.44+0.56、0.3+0.7)となる。
すなわち、第1および第2実施形態の場合と同様、最後のパスは、画像データをそのまま用い、これに対してディザパターンを用いて2値化を行う。具体的には、そのままの画像データに対するディザパターンPによる2値化の結果であるドットデータAから上記1パス目のドットデータを引き、2パス目のドットデータを得る。この2パス目のドットデータは、ディザパターンPの閾値が「2」、「3」、「4」である画素にそれぞれ対応する画素にドットが配置されたものとなる。
以上の説明は、8ビット、256値の画像データを17値化した後、その17値データに対して、2値化と2パスのパス分割を行う例に関するものである。次に、図16で示したグラデーション形状を再現する例として、256値の画像データを直接2値化し、2パスの各パスでグラデーションパターンの記録を行う例について説明する。以下でも、図13にて説明した1/2の代わりに、画像データのラスターごとに図16(a)にて説明した記録率を掛ける演算を行う。
図13に示す4画素×4画素のサイズの画像データは、上述したようにノズル列の半分のノズル列(図16(a)の例では、ノズル0〜127またはノズル128〜255)に対応している。この画像データの走査方向のそれぞれの行を、図13に示すようにラスターr1、r2、r3、r4とするとき、このラスターごとに記録率を異ならせる。例えば、中央ノズルに対応したラスターr1に0.7、ラスターr2に0.56、ラスターr3に0.43、端部ノズルに対応したラスターr4に0.3を割り当てる。そして、それぞれの記録率を対応するラスターの各画素値に掛けることにより、分割された画像データを得ることができる。上記の記録率の場合、ラスターr1の画素値は64×0.7=44.8、ラスターr2の画素値は64×0.56=35.84、ラスターr3の画素値は64×0.44=28.16、ラスターr4の画素値は64×0.3=19.2となる。説明の簡単のために4×4のディザで説明し、r1、r2、r3、r4のラスター比率を0.7、0.56、0.43、0.3としたが、実際には図9に示すディザパターンを用い、記録比率は図16(a)に示すものを用いる。
この分割画像データに対して、ディザパターンPを用いて2値化することにより、1パス目のドットデータを得る。図13に示すディザパターンと画像データの場合、この1パス目のドットデータは、ディザパターンPの閾値が「16」である画素に対応する画素にドットが配置されたものとなる。
次に、第2実施形態について図13にて説明したのと同様に、上記1パス目の記録率が累積的に加えられた記録率を画像データに掛ける演算を行う。具体的には、2パス目のドットパターンは、図16(a)に示すように、グラデーションが逆になり、中央ノズルに対応したラスターr4に0.7、ラスターr3に0.56、ラスターr2に0.44、端部ノズルに対応したラスターr1に0.3を割り当てる。このとき、記録率は、1パス目の記録率が累積的に加えられたものであり、1パス目の記録率(0.7、0.56、0.44、0.3)を、ラスターごとに上記2パス目のパターンの記録率(0.3、0.44、0.56、0.7)に加えたものとなる。すなわち、記録率は各ラスターとも1(0.7+0.3、0.56+0.44、0.44+0.56、0.3+0.7)となる。
すなわち、第1および第2実施形態の場合と同様、最後のパスは、画像データをそのまま用い、これに対してディザパターンを用いて2値化を行う。具体的には、そのままの画像データに対するディザパターンPによる2値化の結果であるドットデータAから上記1パス目のドットデータを引き、2パス目のドットデータを得る。この2パス目のドットデータは、ディザパターンPの閾値が「32」、「48」、「64」である画素にそれぞれ対応する画素にドットが配置されたものとなる。
図17は、上述した1パス目のドットデータの一例を示す図である。この例は、各画素50%濃度(画素値128)の8ビットベタ画像に対して、図9に示すディザパターンを用いて、グラデーション記録のパス分割および2値化をした結果を示すドットデータである。これは、図7に示すドットデータBに相当するものである。
図18は、図13に示すドットデータAに相当するものであり、各ラスターに記録比率1を掛けた画像データ、すなわち、そのままの画像データを図9に示すディザパターンで2値化した結果を示している。そして、図19は、図18のドットデータから図17のドットデータを引いた結果である2パス目のドットデータを示している。すなわち、図19は図18の画像データと図17のドットデータの否定との論理積を示す。これらの図から明らかなように、分割された中間画像である1、2パス目のドットデータや最終画像であるドットデータは、本来のグラデーションの成分を除いて、非周期で低周波成分をもたないドット配置とすることができる。
(第6実施形態)
本発明の第6の実施形態は、4パスのマルチパス記録におけるグラデーション記録のドットデータ生成に関するものである。
図20は、ノズル配列に対応した記録率の一例を示す図である。同図に示す例では、256個のノズルのうち、番号192〜255のノズルが1パス目の記録に用いられる。以下同様に、番号128〜191のノズルが2パス目、番号64〜127のノズルが3パス目、番号0〜63のノズルが4パス目のそれぞれ記録に用いられる。そして、番号192〜255のノズルに対応するラスターの記録率は0.1〜0.25、番号128〜191のノズルに対応するラスターの記録率は0.25〜0.4である。さらに、番号64〜127のノズルに対応するラスターの記録率は0.25〜0.4、番号0〜63のノズルに対応するラスターの記録率は0.1〜0.25である。
このときの本実施形態のパス分割/2値化を、図14を参照して説明する。図14に示す比率1/4の代わりに、ラスターに応じて記録率0.1〜0.25を用いる。以下、第5実施形態にて説明したのと同様に、2/4の代わりに記録率(0.1+0.25〜0.25+0.4)、3/4の代わりに記録率(0.1+0.25+0.4〜0.25+0.4+0.25)を用いる。また、4/4の代わりに、記録率(0.1+0.25+0.4+0.25〜0.25+0.4+0.25+0.1)を用いる。つまり、総てのラススターについて記録率1を用いる。その他は、図14にて説明した処理と同様である。
また、他の例として、8ビット、256値を直接2値化する場合、すなわち、図9に示すディザパターンを用いた場合は、パス分割/2値化は、図15を参照して説明すると、次のようになる。この場合も同様に、図15に示す比率1/4の代わりに、ラスターに応じて記録率0.1〜0.25を用いる。以下、第5実施形態にて説明したのと同様に、2/4の代わりに記録率(0.1+0.25〜0.25+0.4)、3/4の代わりに記録率(0.1+0.25+0.4〜0.25+0.4+0.25)を用いる。また、4/4の代わりに、記録率(0.1+0.25+0.4+0.25〜0.25+0.4+0.25+0.1)を用いる。つまり、総てのラススターについて記録率1を用いる。その他は、図15にて説明した処理と同様である。この場合も説明の簡単のために4×4のディザで説明し、r1、r2、r3、r4のラスター比率を0.7、0.56、0.43、0.3としたが、実際には図9のディザパターンを用い、記録比率は図20示すものを用いる。
(第7実施形態)
上述した各実施形態では、ドット配置が累積的に反映されたドットデータからその前の処理に係るパスのドットデータを引いて、該当するパスのドットデータを得るものとした。具体的には、反映されたドットデータとその前のドットデータの否定との論理積演算を行い、該当するパスのドットデータを得ている。これに対し、本発明の第7の実施形態は、ディザパターンにおける閾値に処理を加えることによって、上記の論理積演算を省略するものである。
図21は、本実施形態のパス分割/2値化処理を説明するブロック図であり、一例として、画像データDが8ビットの64の場合を示している。図において、P1、P2は、それぞれディザパターンを示す。実際には、図9に示すパターンのように、「1」〜「256」までの256個の閾値が格納されているが、説明の簡略化のために4×4の画素に16個の閾値が格納されているものとしている。
先ず、上述した各実施形態と同様、2パスのパス分割に対応して、画像データDに分割率1/2を掛けて分割画像データD1を得る。図示の例では総ての画素値が32となる。この画像データD1の各画素値とディザパターンP1の対応する閾値との比較により、2値化を行い1パス目のドットデータA1を決定する。図21に示すように、ドットデータA1は、ディザパターンP1の閾値が「16」、「32」に対応する画素に“1”(○印)が配置されたデータとなる。
次に、ディザパターンP1とドットデータA1との比較による演算を行う。詳しくは、ドットデータA1で“1”(○印)が配置された画素に対応するディザパターンP1における閾値を消去する。図に示す例では、閾値が「16」、「32」が消去される。そして、このディザパターンP1とドットデータA1との比較演算の結果、ディザパターンP2が得られる。
次に、上記各実施形態と同様、記録比率(1/2+1/2)を画像データDに掛けることにより、2パス目用の画像データD2を得る。図に示す例では、このデータの各画素の値は64となる。そして、画像データD2と上記のようにして得られたディザパターンP2の閾値との比較によって2値化を行い、2パス目のドットデータA2を得る。
ここで、閾値が「消去」されている状態とは、そのディザパターンによる2値化において閾値が消されている箇所に対応した、画像データの画素については“1”(○印)が配置されないことを意味する。換言すれば、閾値と画素値との相対的な関係において、上述の例では2パス目用データ生成で閾値「16」、「32」が無限大の大きさ(具体的には、256がオフセットされた大きさ)に設定され、8ビットデータのどのような画素値に対しても、2値化の結果が“0”(ドットが記録されない)となることである。ちなみに、第1〜第6実施形態は、閾値と画素値との相対的な関係が逆の関係によってパス分割/2値化が行われていることになる。すなわち、画素値が分割率もしくは記録率のパスごとの加算に応じた値となって、閾値に対する相対的な大きさがパスごとに増す。その結果として、パスごとのドットの配置が累積的に定まることになる。
以上のとおり、本実施形態によれば、パス分割/2値化処理において、各パスのドットデータを求める際に、ドット配置が累積的に反映されたドットデータと、その前の処理に係るパスのドットデータの否定との論理積演算を省略することができ、さらに演算負荷を軽減することができる。
また、上述の各実施形態と同様、ディザパターンの閾値がその大きさの順序に関して分散している場合、このパターンを用いた、各分割率を掛けて得られる分割された画像データに対するディザ処理の結果は、上記大きさの順序に関した分散に従って分散したドットデータとなる。その結果、最終的に得られる各パスのドットデータは、それぞれのパスのプレーンで分散した配置であるとともに、これらドットデータ間でも分散した配置とすることができる。
また、上述した第7実施形態の変形例として、ディザパターンにおける各閾値が、分割する各パスに予め対応付けられた形態がある。例えば、図21に示す2パスの例では、ディザパターンPにおいて、予め、閾値「16」が1パス目、閾値「32」が2パス目、・・・、閾値「240」が1パス目、閾値「256」が2パス目にそれぞれ対応付けられている。この変形例によれば、多値の画像データの分割処理と2値化処理を1つのディザパターンによって同時に行うことができる。
本変形例の処理は、先ず1パス目用のドット生成では、ディザパターンPにおいて、2パス目に対応する閾値「32」、「64」、・・・、「256」を、上記と同様「消去」する。そして、2パス目に対応する閾値が消去されたディザパターンを直接各画素値が64の画像データDに対して適用して2値化を行う。これにより、生成されるドットデータでは、閾値が「16」、「48」に対応するそれぞれの画素に“1”(○印)が配置される。次に、2パス目用のドット生成では、ディザパターンPにおいて、1パス目に対応する閾値「16」、「48」、・・・、「240」を、上記と同様「消去」する。そして、この1パス目に対応する閾値が消去されたディザパターンを直接各画素値が64の画像データDに対して適用して2値化を行う。これにより、生成されるドットデータでは、閾値が「32」、「64」に対応するそれぞれの画素に“1”(○印)が配置される。
このように、本変形例によれば、パス分割/2値化処理の負荷をさらに低減することが可能となる。また、閾値の小さい順に1パス、2パス・・・・と順次対応付けられることにより、この閾値とパスとの対応付けの順序の分散特性に応じて、パス間のドット配置の分散あるいは1つのパスにおける分散を良好に定めることができる。例えば、ドット記録を特定パス(例えば、1パス目)に偏って分配しようとする場合は、例えば、閾値「16」〜「208」を1パス目、閾値「224」〜「256」は2パス目とすることができる。
(その他の実施形態)
上記の例は2パスまたは4パス記録の場合に2分割または4分割する例を示しているが、この例に限られないことはもちろんである。一般にマルチパス記録がN回の走査で画像を完成するNパス記録の場合は、N分割する。その際、分割する各パスの比率もしくは上記記録率は、第1、第2実施形態に示した均等記録の場合はラスターにかかわらず同じ記録率が設定され、それらがパスごとに加算される。こうして記録率を加算することで分割率が得られる。但し、1パス目の分割率は記録率に等しい。また、第3、第4実施形態に示したグラデーション記録の場合は、ラスターごとにグラデーションに応じた記録率が設定され、それらがパスごとに加算される。
また、上述の例では、上記分割率を画像データに掛ける例を示したがこれに限られない。逆に、パスごとに上記分割率の逆数ないしその加算をディザパターンの各閾値に掛けるようにしてもよい。
さらに、上記の実施形態では、図5の処理のうち特にステップS305のパス分割および2値化をパーソナルコンピュータで動作するプリンタドライバが実行するものとしたが、これに限られないことはもちろんである。例えば、画像記録装置(図4のプリンタ104)におけるASICなどのハードウェアによって、上記データ分割を実行するようにしてもよい。例えば、図5の一連の画像処理工程を実行可能なプリンタ104内であれば、図5の画像処理を行う専用のASICを設け、プリンタのCPUの制御の下、ASICを使用してデータ生成を行ってもよい。この場合、プリンタが、本発明の特徴的な画像処理(パス分割とディザ処理)を実行する画像処理装置(画像データ生成装置)として機能することになる。
さらに、上記の実施形態は、C、M、Yインクを用いたマルチパス記録を例にとり説明したが、1色のインクを用いる場合のマルチパス記録における、走査回数に応じた複数のプレーンのドットデータ生成についても本発明を適用できることは明らかである。
また、同じ記録ヘッドが単位領域を往復して、すなわち、対応するノズルを異ならせずに記録を行うようなマルチパス記録を実行して画像を完成する場合の、データ生成についても本発明を適用できることは明らかである。
さらには、上述した各実施形態のようないわゆるシリアルタイプの記録装置による複数回の記録動作、すなわち複数回の走査によって画像を完成する場合に限られない。例えば、いわゆるフルラインタイプの記録装置によって、複数回の記録動作それぞれで分割画像を記録することによって画像を完成する場合においても、上記分割画像のドットデータ生成に本発明を適用することができる。この場合、1回の記録動作は1つの記録ヘッドにより達成され、複数回の記録動作は複数の記録ヘッドによって達成される。
以上の各実施形態によれば、結果として中間画像の段階でインク浸透が必ずしも十分に行われなくてもよいことを考慮すると、プリンタ104において、各プレーン間の記録時間差、つまり吐出時間差を短くすることが可能となる。例えば、キャリッジ速度もしくは吐出周波数を大きくでき、あるいはマルチパス記録におけるパス数を、例えばインクが十分に浸透することを考慮して4パスとしているところ、より少ない2パスにした記録を実行することができる。
なお、インクと無色透明の液体またはインク同士が混合して、不溶化物を生成する反応系のインク等を用いる記録システムについても、上記と同様の構成を適用することができる。すなわち、反応系インクまたは液体の2値データのプレーンについて、上記と同様のパス分割/2値化を行うことにより、複数のプレーンが重なったもののドット分布を低周波成分の少ない分散性の良好なものとすることができる。これにより、中間画像の段階で、例えば浸透が不十分な隣接するインク等同士が不必要に反応して不溶化物の塊が形成される確率を小さくでき、また、そのような塊ができてもそれを目立たなくすることができる。
さらに、本発明は、上述した実施形態の機能を実現する、図5に示したフローチャートのステップS305を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体並びにプログラム自体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
更に、プログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
本出願は、2006年12月19日に出願された日本国特許出願第2006−341389号に基づいて優先権を主張し、前記日本国特許出願は、これらの参照によって本明細書に含まれる。