(第1の実施形態)
以下、本発明によるカメラ駆動装置の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態であるカメラ駆動装置151を示す分解斜視図であり、図2は、カメラ駆動装置151を斜め上方から見た斜視図である。また、図3は、一部の構成要素(パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303、パンニング磁気ヨーク203、チルティング用磁気ヨーク204)を取り除いた状態にあるカメラ駆動装置151を斜め上方から見た斜視図である。図4はカメラ駆動装置151を上方から見た平面図である。図5は、カメラ駆動装置151の光軸10およびチルティング方向回転軸11を含む平面での断面図である。これらの図を参照してカメラ駆動装置151の主な構成を説明する。
カメラ駆動装置151は、カメラ部100と、カメラ部100を支持する可動ユニットと、固定ユニットとを備える。可動ユニットは、固定ユニットに対して、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22、チルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21およびパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20に自在に回転する。
図1に示すように、カメラ部100は、撮像素子(図示せず)と、撮像素子の撮像面に被写体像を結像させる光軸10を有したレンズ(図示せず)と、レンズを保持するレンズ鏡筒(図示せず)とを含む。
固定ユニットは、ベース200と、突起部202と、突起支持部201とを含む。突起支持部201は十字形状を有している。図5に示すように、突起部202は、球心202Aを有する球面の少なくとも一部の形状を有している。以下、球面の少なくとも一部の形状を有する部分を部分球面という。また、突起部202の少なくとも一部は磁性体からなる。図1および図5に示すように、突起部202は、突起支持部201の十字形状の中心部に圧入され固定されており、突起部202が固定された突起支持部201は、図1から図3に示すように、十字形状の4つの末端部において、それぞれ4つの連結部210を介してベース200に固定される。
可動ユニットは、第1の可動部102と、第2の可動部101とを含む。図1および図5に示すように、第1の可動部102は、吸着用磁石404と接触面102Cを有する。接触面102Cは、内側に円錐形状を有し、先端が下方に位置するように第1の可動部102に配置されている。吸着用磁石404は円錐形状の先端であり、第1の可動部102の底部に配置される。第1の可動部102は、好ましくは樹脂材料などの非磁性材料からなる。
図5に示すように、固定ユニットの突起部202は、第1の可動部102の円錐形状の接触面102Cの内側に挿入されている。突起部202の一部は磁性体からなるため、底部に設けられた吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより、突起部202は接触面102Cと接触し、遊嵌する。
これにより、第1の可動部102は、円錐状の接触面102Cと突起部202の部分球面とが接触しながら、球面の球心202Aに対して、自在に回転する。より具体的には、球心202Aに対して、光軸10に直交し中心201Aを通るパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20と、光軸10およびパンニング方向回転軸12に直交するチルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21の2種類の傾斜方向の回転と、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22の回転を行うことができる。
第2の可動部101は、図1から図3および図5に示すように、カメラ部100を搭載し、第1の可動部102に固定されている。具体的には、レンズの光軸が、第2の可動部101の十字形状の中心を貫き、好ましくは、円錐形状の接触面102Cの中心軸と一致するようにカメラ部100が第2の可動部101に固定されている。また、十字形状の4つの末端部が、固定ユニットの突起支持部201の4つの十字形状末端部と立体的に干渉しないように、突起支持部201を挟みこんだ状態で、第1の可動部102に分散的に結合される。このため、図2から図4に示すように、可動ユニットの第2の可動部101および固定ユニットの突起支持部201のそれぞれの十字形状の4つの末端部は、光軸10方向から見た光軸10と垂直な平面上の円周において、互いに45度の角度をなすように分散配置される。このように、固定ユニットの断面が存在しない複数の領域において、第2の可動部101が第1の可動部102に取り付けられ、固定されるため、固定ユニットと可動ユニットの干渉を避け、装置の低背化を実現することができる。
このように、本実施形態によれば、カメラ部100を搭載した可動ユニットは、重心位置で固定ユニットによって集中的に支持される。したがって、摩擦による負荷の低減や駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑圧することができる。
また、吸着用磁石404は、回動角度に影響されることなく、一定の磁気吸引力Fで、突起部202と円錐状の接触面102Cとの間に一定の垂直抗力を付加する。このため、回動角度による摩擦負荷の変動を抑制し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また突起部202の表層部分を樹脂部材(図示せず)で被覆すれば、接触する円錐状の接触面102Cと突起部202との摩擦をさらに低減させることが可能であり、耐摩耗性に優れた支持構造を実現できる。
可動ユニットは固定ユニットから脱落しないように脱落防止構造を備える。図5に示すように、第2の可動部101が突起支持部201に対して全可動範囲で自在に回動可能になるように、光軸10方向には所定の空隙50が第2の可動部101と突起支持部201との間に設けられている。具体的には、突起支持部201には、球心202Aを中心とする凸状の部分球面201Aが設けられている。また、第2の可動部101には、球心202Aを中心とする凹状の部分球面形状を有する脱落防止用規制面101Aが設けられている。部分球面201Aと脱落防止用規制面101Aとの間には、固定ユニットの突起支持部201が第1の可動部102の接触面102C接触した状態で、空隙50が生じている。また、部分球面201Aおよび脱落防止用規制面101Aは、それぞれ、レンズの光軸10に対しておおよそ対称な形状を有する。
この空隙50は、接触面102Cが突起部202から離間しても、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより接触面102Cが突起部202と接触する状態へ戻ることが可能な距離に設定されている。つまり、可動ユニットが下方へ空隙50に等しい距離だけ移動し、部分球面201Aと脱落防止用規制面101Aとが接触した状態でも、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより可動ユニットは、接触面102Cが突起部202と接触する元の状態へ戻ることができる。
このため、本実施形態によれば、たとえ可動ユニットが瞬間的に所定の位置から脱落した場合においても吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより即座に元の良好な支持状態に復帰できる耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、球心202Aを中心とする脱落防止用規制面101Aの半径を極力小さくすれば、脱落防止用規制面101Aを設けるために要する空間を小さくでき、装置の小型化に寄与できる。
次に、可動ユニットを駆動するための構造を説明する。カメラ駆動装置151は、固定ユニットに対してカメラ部100を搭載した可動ユニットをパンニング方向20およびチルティング方向21へ傾斜させるための第1の駆動部と、固定ユニットに対してカメラ部100をレンズの光軸10を中心とする回転である回転ローリング方向22に回転させる第2の駆動部とを備える。
第1の駆動部は、2対の傾斜駆動用磁石と、2対の磁気ヨークと、磁気ヨークに設けられた駆動コイルとを含む。より具体的には、第1の可動部102には、可動ユニットをパンニング方向20に回転駆動するために、球心202Aに対してチルティング方向回転軸11上で対称に配置された1対のパンニング駆動磁石401と、可動ユニットをチルティング方向21に回転駆動するために、球心202Aに対してパンニング方向回転軸12上で対称に配置された1対のチルティング駆動磁石402を含む。図1に示すように、これらは、第1の可動部102に設けられた当接面102B(図1参照)および当接面102Aにそれぞれ固定されている。パンニング駆動磁石401は、チルティング方向回転軸11方向に磁束を有するように1極に着磁されており、同様にチルティング駆動磁石402は、パンニング方向回転軸12方向に磁束を有するように1極に着磁されている。つまり、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402においてそれぞれチルティング方向回転軸11方向およびパンニング方向回転軸12方向に異極が配置される。
また、1対のパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204が、1対のパンニング駆動磁石401および1対のチルティング駆動磁石402にそれぞれ対向するように、光軸10を中心としたベース200の円周上にそれぞれ設けられている。
図6および図7は、1対のパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204に設けられた駆動コイルを示す分解斜視図および斜視図である。図6および図7に示すように、1対のパンニング磁気ヨーク203のそれぞれには、パンニング磁気ヨーク203を巻回するパンニング駆動コイル301とパンニング駆動コイル301上に積層するように貼付された1対のローリング駆動コイル303が設けられている。同様に1対のチルティング磁気ヨーク204のそれぞれには、チルティング磁気ヨーク204を巻回するチルティング駆動コイル302とチルティング駆動コイル302上に積層するように貼付された1対のローリング駆動コイル303が設けられている。言い換えれば、図6に示したパンニング駆動コイル301またはチルティング駆動コイル302と、1対のローリング駆動コイル303からなるコイルユニット600が光軸10を中心とする円周上において、90度の間隔で4つ配置されている。
また、図5に示すように、パンニング駆動コイル301とチルティング駆動コイル302およびローリング駆動コイル303の光軸10方向における中心の高さ位置は球心202Aの位置とほぼ等しい。
1対のパンニング駆動コイル301に通電することにより、1対のパンニング駆動磁石401は偶力の電磁力を受け、第1の可動部102、つまり可動ユニットは、パンニング方向回転軸12を中心にパンニング方向20に回転駆動される。
同様に、1対のチルティング駆動コイル302に通電することにより、1対のチルティング駆動磁石402は偶力の電磁力を受け、可動ユニットは、チルティング方向回転軸11を中心にチルティング方向21に回転駆動される。
さらにパンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302に同時に通電することにより、カメラ部100が搭載された可動ユニットを2次元的に傾斜させることができる。
また光軸10を中心とした円周上に配置された8つのローリング駆動コイル303に通電することにより、1対のパンニングおよびチルティング駆動磁石401、402は電磁力を受け、カメラ部100を搭載した可動ユニットは、光軸10を中心にローリング方向22に回転駆動される。
このように、本実施形態は、可動ユニットにパンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402を設けたムービングマグネット駆動方式を採用している。この構成では、一般的に可動ユニットの重量が増大するという問題が考えられる。しかし、この構成によれば、可動ユニットに駆動用配線の懸架は不必要である。また、パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303の発熱をパンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204、ベース200および連結部210によって冷却できるという大きな利点がある。さらに、パンニング方向20およびチルティング方向21への傾斜角度と、ローリング方向22の回転角度とを10度以上にする上では、可動ユニットを小型化、軽量化できる点で有利である。ムービングコイル駆動方式では駆動コイルがあまりにも肥大化し、可動ユニットの重量が増加する可能性がある。
また、本実施形態によれば、ローリング方向22への駆動するための専用の駆動磁石を設けず、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402がローリング方向22への駆動磁石を兼ねている。このため可動ユニットを軽量化することができ、また、構成部品の数を減らすことができる。
次に、磁気吸引力Fを利用した可動ユニットの中立位置への復帰機能を説明する。図4および図6に示すように、パンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204の光軸10に面する側面はそれぞれ、光軸10側に凸状となる部分円柱側面形状を有している。このため、ローリング方向22の回転角度が0である場合、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402とパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204との磁気ギャップがそれぞれ最小となる。したがって、ローリング駆動コイル303に通電しない場合、磁気吸引力変動を利用した磁気バネ効果により、可動ユニットをローリング方向22の中立位置、つまり、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402がパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204へそれぞれもっとも近接する位置に維持することができる。
同様に、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402のパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204に対向する側面が、チルティング方向回転軸11およびパンニング方向回転軸12の線上の1点を中心とした凸状の部分球面形状(図示せず)を有していてもよい。これにより、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の回転角度がそれぞれ0である場合、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402とパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204との磁気ギャップがそれぞれ最小となる。したがって、パンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204に通電しない場合、磁気吸引力変動を利用した磁気バネ効果により、可動ユニットをローリング方向22の中立位置に加えてパンニング方向20およびチルティング方向21の中立位置、つまり、光軸10に垂直な面が水平となるように可動ユニットを維持することができる。
このように、本実施形態によれば、カメラ部100、第2の可動部101、第2の可動部101に設けられた脱落防止用規制面101A、突起支持部201に設けられた凸状の球面部201A、第1の可動部102および吸着用磁石404の中心軸が、すべて、支持中心であり駆動中心でもある球心202Aを通る光軸1と一致し、かつこの順で配置される。したがって、可動ユニットの重心が球心202Aと一致し、可動ユニットを重心で支持するとともに、重心を通り互いに直交する3軸回りの回転駆動を実現することができる。また、可動ユニットの脱落を防止することができる。
カメラ駆動装置151は、可動ユニットの振幅増大係数(Q値)を低減するため、粘性部材60を備えていてもよい。この場合、図8に示すように、円錐状の接触面102Cと接触面102Cとの近傍に粘性部材60を充填する。これにより、可動ユニットに設けられるパンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402とベース200に設けられたパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204との間に発生する磁気吸引力変動を利用した磁気バネ効果による振動の振幅増大係数(Q値)や機械的な固有振動のQ値を低減でき、良好な制御特性を得ることができる。
また、第1の可動部102と第2の可動部101によって、円錐形状の接触面120Cおよび部分球面形状を有する脱落防止規制面101Aで規定される閉鎖的な空間が形成される。このため、可動ユニットが回動しても、充填した粘性部材60が外部へ漏れ出しにくく、良好な粘性減衰特性を維持することができる。
なお、粘性部材60に磁性流体を添加してもよい。この場合、吸着磁石40の磁気吸引力F4によって、磁性流体の添加された粘性部材60を接触面102Cが形成する内部空間により確実に保持することが可能となる。また、磁性流体が粘性も有している場合には、粘性部材60の替わりに磁性流体のみを用いてもよい。
さらに、可動ユニットの全可動範囲において、接触面102Cおよび突起部202のうち、互いに接触しない領域の表面に凸凹状形状(図示せず)を設けてもよい。凸凹状形状によって粘性部材60との接触面積が拡大し、粘性抵抗の増大を図ることができ、大幅な粘性減衰特性の向上を実現できる。
次に可動ユニットの傾きや回転の検出について説明する。カメラ駆動装置151は、固定ユニットに対するカメラ部100が搭載された可動ユニットの傾斜角度およびレンズの光軸10回りの回転角度を検出するための検出器を備える。具体的には、可動ユニットの2次元の傾斜角度、つまり、パンニング方向20およびチルティング方向21の回転角度を検出するための第1の検出部と、レンズの光軸10回りの傾斜角度を検出するための第2の検出部とを備える。
まず、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における可動ユニットの傾斜角度の検出について説明する。図1に示すように、可動ユニットの傾斜角度を検出するために、カメラ駆動装置151は第1の検出部である第1の磁気センサー501を備える。第1の磁気センサー501は、2軸周りの傾きあるいは回転を検出可能であり、光軸10方向に1極に着磁された吸着用磁石404に対向するように配置され、回路基板502を介してベース200に固定されている。
第1の磁気センサー501の内部には、光軸10を中心にホール素子(図示せず)がチルティング方向回転軸11およびパンニング方向回転軸12上にそれぞれ1対ずつ対称に配置されている。第1の磁気センサー501は、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における傾斜動作によって生じる吸着用磁石404の磁力変化を2軸成分としてそれぞれ差動検出し、パンニング傾斜角度およびチルティング傾斜角度を算出することができる。
このように、本実施形態によれば、吸着用磁石404が突起部202に磁気吸引力Fを付与する機能に加えて、傾斜角度を検出するための磁石としても機能するため、構成部品点数の低減と装置の小型化を図ることができる。また、吸着用磁石404と球心202Aとの間隔を短くでき、第1の磁気センサー501を小型化できるという利点も得られる。
図9は、可動ユニットの光軸10回りの回転角度を検出するための第2の検出部である第2の磁気センサー503の配置を示す斜視図である。図9に示すようにカメラ駆動部151は、1対の第2の磁気センサー503と、1対の回転検出用磁石403とを備える。第1の可動部102は、光軸10に直交し、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなす直線13の直線上であって、球心202Aに対して対称に配置された当接面102Eを有し、当接面102に1対の回転検出用磁石403が固定されている。
1対の回転検出用磁石403は、光軸10と直交する平面において、光軸10を中心とする円の円周方向にそれぞれ2極に分割着磁されており、1対の回転検出用磁石403における磁極は、球心202Aを通る方向に着磁され、互いに異極となるように配置されている。また1対の回転検出用磁石403の2極分割着磁の中心境界上に対向するように2つの回転検出用磁気センサー503が連結部210(図22)の側面に固定されている。
ローリング方向22に可動ユニットが回転した場合、1対の回転検出用磁石403の磁極が移動することによって生じる急峻な磁気変化を第2の磁気センサー503が差動検出する。これにより、可動ユニットの光軸10周りの回転角度を高精度で検出することができる。
また、パンニング方向20およびチルティング方向21に可動ユニットの第1の可動部102が傾斜した場合、ローリング方向22へのクロストーク出力が発生し得る。しかし、このクロストーク出力は、第2の磁気センサー503が、1対の回転検出用磁石403による磁気を差動検出することによって得られる出力を用いてキャンセルすることができる。したがって、可動ユニットの傾斜可能な範囲においてローリング方向22の回転角度のみを正しく抽出して検出することができる。
また、図1および図9に示すように、1対の第2の磁気センサー503が光軸10を挟んで、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなす直線13上に配置される。このため、光軸10を中心とした大きな半径の円周上に駆動部を設けて駆動モーメント力を向上させるとともに、小さな半径の円周上に第2の磁気センサー503を配置することができ、空間を有効に活用することができる。
このように、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、カメラ部のレンズの光軸上に、固定ユニットの突起部に設けられた部分球面の球心と、可動ユニットの円錐状の接触面の中心軸を配置し、2つに分割された可動ユニットを、突起部を中心とし、かつ、包み込むように接合する構造を採用する。このため、可動ユニットを重心で支持する構造が実現し、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、突起部と可動ユニットの接触面とによって構成されるピポッドにおいて、可動ユニットの回動角度に影響を受けにくい磁気吸引力によって、一定の垂直抗力を付加することができるため、回動角度による摩擦負荷変動を低減し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また、2つに分割された可動ユニットは、固定ユニットの断面が存在しない複数の領域において、接合されているため、固定ユニットと可動ユニットの干渉を避け、装置の低背化を実現することができる。
また、従来、磁気吸引力による支持構造に特有の大きな課題であった振動・衝撃等の外乱等による可動ユニットの脱落を防止するため、分割された可動ユニットの一方に回動可能な所定の空隙を介して脱落防止規制面を設けている。このため装置の大型化を回避しながら確実に可動ユニットの脱落防止を実現できる。
さらに可動ユニットにおいて、脱落防止規制面と円錐状の接触面は、球心を中心としてレンズの光軸上に、対称に配置される。また、可動ユニットを支持する突起部の部分曲面の球面の球心は光軸上に配置される。このため、可動ユニットが回動する全範囲に対して最小面積で凹状の脱落防止規制面を設けることができ、装置の小型化を実現できる。
また、可動ユニットの脱落防止規制面に固定ユニットが当接するまで可動ユニットが固定ユニットから脱落した場合でも、磁気吸引力Fによって、固定ユニットの突起部と可動ユニットの接触面とが再び接触し、ピポッドを構成することができるように脱落防止規制面の位置が決定されている。このため、たとえ可動ユニットが瞬間的に脱落した場合においても即座に元の良好な支持状態に復帰できる極めて耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動部は、光軸と垂直な平面上において直交する2つの線上にそれぞれ配置され、可動ユニットに固定された2対の磁石と、光軸に直交し、可動ユニットの回転中心を通る平面において、光軸を中心とする円周状に配置され、磁石に対向するように固定ユニットにそれぞれ配設された2対の駆動コイルを含む。これらが配置される光軸方向の高さ位置は、突起部の球心の高さ位置にほぼ等しい。このため可動ユニットを、重心を中心として駆動することができ、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、磁気ヨークのパンニングおよびチルティング駆動磁石に対向する側面を凸状の曲面に構成することによって、可動ユニットの傾斜角度および回転角度が0度の場合、磁気ヨークとこれらの駆動磁石との磁気ギャップが最小となるように磁気バネが働く。これにより可動ユニットが中立位置に復帰することができる。
また、磁気ヨークに対向する駆動磁石の側面を凸状の球面に構成することによって、可動ユニットの傾斜角度および回転角度が0度の場合、磁気ヨークと駆動磁石との磁気ギャップを最小となるように磁気バネが働く。これにより可動ユニットが中立位置に復帰することができる。
また、突起部の表面部分を樹脂部材で被覆し、内部に磁気吸引用の磁性体を設けることにより、低摩擦で耐摩耗性に優れた支持構造が実現する。
また、可動ユニットの円錐状の接触面および固定ユニットの突起部の近傍の空間に粘性部材または磁性流体を含む粘性部材を充填することにより、可動ユニットに設けられた磁石と固定ユニットに設けられた磁気ヨークとの間に発生する磁気吸引力の磁気バネ効果による振動の振幅増大係数(Q値)や機械的な固有振動のQ値を低減することができ、良好な制御特性を得ることができる。
また、吸着用磁石に対向するように固定ユニットに第1の磁気センサーを設けることによって、可動ユニットの傾斜および回転による吸着用磁石の磁力変化を検出し、傾斜角度と回転角度算出をすることができる。また、固定ユニットと可動ユニットをピポッド構造で支持するための吸着用磁石を角度検出用磁石として利用できるため、部品点数の削減と装置の小型化を実現できる。
また、光軸と垂直な平面において光軸の位置を中心とする円周方向に互いに逆向きに着磁された1対の回転検出磁石を可動ユニット部に設け、磁気変化を固定ユニットに設けた第2の磁気センサーによって検出する。この検出出力を用いて、パンニングとチルティング方向に可動ユニットを回動した場合に発生するクロストーク出力をキャンセルすることができるため、可動ユニットの回動可能な範囲でローリング方向の角度のみを抽出して検出することができる。
また、1対の第2の磁気センサーが光軸を挟んで、チルティング方向回転軸またはパンニング方向回転軸に対して45度をなす直線上に配置される。このため、光軸を中心とした大きな半径の円周上に駆動部を設けて駆動モーメント力を向上させるとともに、小さな半径の円周上に第2の磁気センサーを配置することができ、空間を有効に活用することができる。
また、吸着用磁石に光軸方向に着磁された複数の磁極を設けることにより、吸着用磁石のみで可動ユニットの傾斜ならびに回転による磁力変化を第2および第2の磁気センサーにより検出し、2次元の傾斜角度と回転角度を算出することができる。これにより、部品点数の削減と装置の小型化が実現できる。
したがって、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、パンニング方向およびチルティング方向に±10度以上の大きな角度で可動ユニットを傾斜させ、また、ローリング方向に±10度以上の大きな角度で可動ユニットを回転させることができる。また、50Hz程度までの広帯域の周波数領域で良好な振れ補正制御を実現できる。その結果、カメラ部の高速パンニング・チルティング・ローリング動作を実現するとともに、歩行撮影時の手振れで発生する撮影画像の像振れを補正することのできるカメラ駆動装置が実現する。また、小型で堅牢な脱落防止構造を備えるため、振動や落下衝撃等の外部からの衝撃に対する耐衝撃性の強いカメラ駆動装置が実現する。
(第2の実施形態)
以下、本発明によるカメラ駆動装置の第2の実施形態を説明する。図10は、第2の実施形態であるカメラ駆動装置152の構成を示す分解斜視図であり、図11は、カメラ駆動装置152を上から見た平面図である。これらの図において第1の実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付している。
図10および図11に示すように、カメラ駆動装置152は、ローリング方向22に可動ユニットを回転駆動させるため、専用の駆動部を第1の可動部102に備えている点で、第1の実施形態のカメラ駆動装置151と異なる。
カメラ駆動装置152は、可動ユニットをローリング方向22に回転させるため、1対のローリング駆動磁石800および1対のローリング磁気ヨーク701を備える。
1対のローリング駆動磁石800は、チルティング方向回転軸11およびパンニング方向回転軸12に対して45度をなし、かつ、直線13に直交する直線14の線上において球心202Aに対して対称となるように第1の可動部102に配置されている。ローリング駆動磁石800は、直線14方向に磁束を有するように1極に着磁されている。また、1対のローリング駆動磁石800にそれぞれ対向するように1対のローリング磁気ヨーク701が、ベース200の光軸10を中心とした円周上にそれぞれ設けられている。
また、1対の磁気ヨーク701をそれぞれ巻回するローリング駆動コイル700が設けられている。ローリング駆動コイル700の巻回中心軸(図示せず)は、パンニング駆動コイル301とチルティング駆動コイル302の巻回中心軸に対して直交するよう設けられている。言い換えれば、光軸10を中心とする円周上に、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の駆動部がそれぞれ独立に分散して配置されている。
このような構造によれば、パンニング磁気ヨーク203とパンニング用磁石401との間の磁気ギャップ、および、チルティング磁気ヨーク204とチルティング用磁石402との間の磁気ギャップを第1の実施形態の場合に比べてローリング駆動コイル303の厚み寸法分だけ狭く設けることができる。このため、それぞれの磁束密度を向上させることができ、パンニング方向20およびチルティング方向21への駆動効率が大幅に改善される。
さらに第1の実施形態と比較して、ローリング駆動コイル303による磁気的な飽和が軽減できるため、パンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204のチルティング方向回転軸11およびパンニング方向回転軸12方向の厚さをさらに小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
なお、第1および第2の実施形態では、ローリング方向22の回転角度を検出するために、1対の回転検出用磁石403と1対の第2の磁気センサー503をそれぞれ設けていた。しかし、吸着用磁石404に光軸10方向と垂直な平面において少なくとも4分割した多極着磁を施すことにより、第1の磁気センサー501でパンニング方向20およびチルティング方向21の傾斜角度を算出し、かつ、ローリング方向22の回転角度を算出することができる。これにより、回転検出用磁石403および第2の磁気センサー503を省略することができ、部品点数の大幅な削減を図ることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明によるカメラ駆動装置の第3の実施形態を説明する。図12は、本発明の第3の実施形態であるカメラ駆動装置153を示す分解斜視図であり、図13は、カメラ駆動装置153を斜め上方から見た斜視図である。また、図14は、一部の構成要素(パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303、パンニング磁気ヨーク203、チルティング用磁気コイル204、連結部材210)を取り除いた状態にあるカメラ駆動装置153を斜め上方から見た斜視図である。図15はカメラ駆動装置153を上方から見た平面図である。図16は、カメラ駆動装置153の図15に示す直線16と光軸10を含む平面での断面図である。また、図17は、図16に示すカメラ駆動装置153の断面図における主要の模式的断面図である。これらの図を参照してカメラ駆動装置153の主な構成を説明する。
本実施形態のカメラ駆動装置153では、突起支持部および磁気ヨークの形状が第1の実施形態のカメラ駆動装置151対応する構成要素と異なっている。
カメラ駆動装置153は、カメラ部100と、カメラ部100を支持する可動ユニットと、固定ユニットとを備える。可動ユニットは、固定ユニットに対して、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22、チルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21およびパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20に自在に回転する。
図12に示すように、カメラ部100は、撮像素子(図示せず)と、撮像素子の撮像面に被写体像を結像させる光軸10を有したレンズ(図示せず)と、レンズを保持するレンズ鏡筒(図示せず)とを含む。
固定ユニットは、ベース200と、突起部202と、突起支持部201とを含む。突起支持部201は片持ち梁形状を有し、端部に突起部202が設けられている。図17に示すように、突起部202は、球心202Aを有する球面の少なくとも一部の形状を有している。以下、球面の少なくとも一部の形状を有する部分を部分球面という。また、突起部202の少なくとも一部は磁性体からなる。突起支持部201は、ベース200に固定される。
可動ユニットは、第1の可動部102と、第2の可動部101とを含む。図12および図17に示すように、第1の可動部102は、吸着用磁石404と接触面102Cを有する。接触面102Cは、内側に円錐形状を有し、先端が下方に位置するように第1の可動部102に配置されている。吸着用磁石404は円錐形状の先端であり、第1の可動部102の底部に配置される。第1の可動部102は、好ましくは樹脂材料などの非磁性材料からなる。
図17に示すように、固定ユニットの突起部202は、第1の可動部102の円錐形状の接触面102Cの内側に挿入されている。突起部202の一部は磁性体からなるため、底部に設けられた吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより、突起部202は接触面102Cと接触し、遊嵌する。
これにより、第1の可動部102は、円錐状の接触面102Cと突起部202の部分球面とが接触しながら、球面の球心202Aに対して、自在に回転する。より具体的には、球心202Aに対して、光軸10に直交し中心201Aを通るパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20と、光軸10およびパンニング方向回転軸12に直交するチルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21の2種類の傾斜方向の回転と、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22の回転を行うことができる。
第2の可動部101は、図12から図14および図17に示すように、カメラ部100を搭載し、第1の可動部102に固定されている。具体的には、レンズの光軸が、第2の可動部101の中心を貫き、好ましくは、円錐形状の接触面102Cの中心軸と一致するようにカメラ部100が第2の可動部101に固定されている。また、固定ユニットの突起支持部201のアーチ状の片持ち梁形状と立体的に干渉しないように、突起支持部201を挟みこんだ状態で、第1の可動部102に結合される。固定ユニットの断面が存在しない領域において、第2の可動部101が第1の可動部102に取り付けられ、固定されるため、固定ユニットと可動ユニットの干渉を避け、装置の低背化を実現することができる。
このように、本実施形態によれば、カメラ部100を搭載した可動ユニットは、重心位置で固定ユニットによる集中的に支持される。したがって、摩擦による負荷の低減や駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑圧することができる。
また、吸着用磁石404は、回動角度に影響されることなく、一定の磁気吸引力Fで、突起部202と円錐状の接触面102Cとの間に一定の垂直抗力を付加する。このため、回動角度による摩擦負荷の変動を抑制し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また突起部202の表層部分を樹脂部材(図示せず)で被覆すれば、接触する円錐状の接触面102Cと突起部202との摩擦をさらに低減させることが可能であり、耐摩耗性に優れた支持構造を実現できる。
可動ユニットは固定ユニットからの脱落しないように脱落防止構造を備える。図16および図17に示すように、第2の可動部101が突起支持部201に対して全可動範囲で自在に回動可能になるように、光軸10方向には所定の空隙50が第2の可動部101と突起支持部201との間に設けられている。具体的には、突起支持部201には、球心202Aを中心とする凸状の部分球面201Aが設けられている。また、第2の可動部101には、球心202Aを中心とする凹状の部分球面形状を有する脱落防止用規制面101Aが設けられている。部分球面201Aと脱落防止用規制面101Aとの間には、固定ユニットの突起支持部201が第1の可動部102の接触面102C接触した状態で、空隙50が生じている。また、部分球面201Aおよび脱落防止用規制面101Aは、それぞれ、レンズの光軸10に対しておおよそ対称な形状を有する。
この空隙50は、接触面102Cが突起部202から離間しても、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより接触面102Cが突起部202と接触する状態へ戻ることが可能な距離に設定されている。つまり、可動ユニットが下方へ空隙50に等しい距離だけ移動し、部分球面201Aと脱落防止用規制面101Aとが接触した状態でも、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより可動ユニットは、接触面102Cが突起部202と接触する元の状態へ戻ることができる。
このため、本実施形態によれば、たとえ可動ユニットが瞬間的に所定の位置から脱落した場合においても吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより即座に元の良好な支持状態に復帰できる耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、球心202Aを中心とする脱落防止用規制面101Aの半径を極力小さくすれば、脱落防止用規制面101Aを設けるために要する空間を小さくでき、装置の小型化に寄与できる。
次に、可動ユニットを駆動するための構造を説明する。カメラ駆動装置153は、固定ユニットに対してカメラ部100を搭載した可動ユニットをパンニング方向20およびチルティング方向21へ傾斜させるための第1の駆動部と、固定ユニットに対してカメラ部100をレンズの光軸10を中心とする回転である回転ローリング方向22に回転させる第2の駆動部とを備える。
第1の駆動部は、2対の傾斜駆動用磁石と、8個の磁気ヨークと、磁気ヨークに設けられた駆動コイルとを含む。より具体的には、図12および図14に示すように、可動ユニットをパンニング方向20に回転駆動するための、球心202Aに対してチルティング方向回転軸11上で対称に配置された1対のパンニング駆動磁石401と、可動ユニットをチルティング方向21に回転駆動するための、球心202Aに対してパンニング方向回転軸12上で対称に配置された1対のチルティング駆動磁石402とが、第1の可動部102に設けられている。図12および図21に示すように、これらは、第1の可動部102に設けられた当接面102Aおよび当接面102Bにそれぞれ固定されている。パンニング駆動磁石401は、チルティング方向回転軸11方向に磁束を有するように1極に着磁されており、同様にチルティング駆動磁石402は、パンニング方向回転軸12方向に磁束を有するように1極に着磁されている。つまり、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402においてそれぞれチルティング方向回転軸11方向およびパンニング方向回転軸12方向に異極が配置される。
また、図12および図13に示すように、1対のパンニング駆動磁石401とチルティング駆動磁石402にそれぞれ対向し、駆動磁石の回転に対して均一な磁気ギャップを構成するように、それぞれの一つの駆動磁石に対して1対のパンニング磁気ヨーク203および1対のチルティング磁気ヨーク204が、谷を対向するようにV字型に配置されている。
図18および図19は、1対のパンニング磁気ヨーク203および1対のチルティング磁気ヨーク204に設けられた駆動コイルを示す分解斜視図および斜視図である。図18および図19に示すように、1対のパンニング磁気ヨーク203および1対のチルティング磁気ヨーク204には、パンニング駆動コイル301とチルティング駆動コイル302が巻回されている。さらにこれらの磁気ヨークと駆動コイルは光軸10を中心とした円周上に位置するように、連結部210によってベース200に固定されている。このように、第1の駆動部は、2つのパンニング駆動磁石401および2つのチルティング駆動磁石402と、それぞれに4つの合計8つの磁気ヨークおよび駆動コイルとから構成されている。
次にローリング方向22に可動ユニットを回転駆動する第2の駆動部を説明する。図12、図14に示すように、第1の可動部102には、光軸10を中心に回転するローリング方向22に可動ユニットを回転駆動するために、パンニング方向20もしくはチルティング方向21に対して45度をなす直線15上で球心202Aに対して対称に配置された1対のローリング駆動磁石405が設けられている。これらは、第1の可動部102に設けられた当接面102Fにおいて固定されている。ローリング駆動磁石405は、直線15方向に磁束を有するように1極に着磁されている。
また、図12、図13、図18および図19に示すように、1対のローリング駆動磁石405のそれぞれに対向し、駆動磁石の回転に対して均一な磁気ギャップを構成するように、1対のローリング磁気ヨーク205が、谷を対向させるようにV字型に配置されている。ローリング磁気ヨーク205のそれぞれにはローリング駆動コイル303がパンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302と直交するよう巻回されている。
さらにパンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204およびローリング磁気ヨーク205とパンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302およびローリング駆動コイル303は、光軸10を中心とした円周上に位置するよう、連結部210によってベース200にそれぞれ固定されている。
また、パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302およびローリング駆動コイル303の光軸10方向における中心の高さ位置は、突起部202の球心202Aの高さ位置に等しい。
1対のパンニング駆動コイル301に通電することにより、1対のパンニング駆動磁石401は偶力の電磁力を受け、第1の可動部102、つまり可動ユニットは、パンニング方向回転軸12を中心にパンニング方向20に回転駆動される。
同様に、1対のチルティング駆動コイル302に通電することにより、1対のチルティング駆動磁石402は偶力の電磁力を受け、可動ユニットは、チルティング方向回転軸11を中心にパンニング方向21に回転駆動される。
さらにパンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302に同時に通電することにより、カメラ部100が搭載された可動ユニットを2次元的に傾斜させることができる。
また1対のローリング駆動コイル303に通電することにより、1対のローリング駆動磁石405は電磁力を受け、カメラ部100を搭載した可動ユニットは、光軸10を中心にローリング方向22に回転駆動される。
このように、本実施形態は、可動ユニットにパンニング駆動磁石401、チルティング駆動磁石402およびローリング駆動磁石405を設けたムービングマグネット駆動方式を採用している。この構成では、一般的に可動ユニットの重量が増大するという問題が考えられる。しかし、この構成によれば、可動ユニットに駆動用配線の懸架は不必要である。また、パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303の発熱をパンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204、ローリング磁気ヨーク205、ベース200および連結部210によって冷却できるという大きな利点がある。
さらに、パンニング方向20およびチルティング方向21への傾斜角度と、ローリング方向22の回転角度とを20度以上にする上では、可動ユニットを小型化、軽量化できる点で有利である。ムービングコイル駆動方式では駆動コイルがあまりにも肥大化し、可動ユニットの重量が増加する可能性がある。
また、本実施形態によれば、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22への駆動に関してそれぞれ独立した専用の駆動磁石と磁気回路を設けているため、駆動を併用する構成に比べて可動部ユニットの駆動効率を向上させることができる。
また、図17に示すようにパンニング駆動磁石401、チルティング駆動磁石402およびローリング駆動磁石405の側面が、球心202Aを中心とする凸状の部分球面形状を有するように構成することによって、これらの駆動磁石と、パンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204およびローリング磁気ヨーク205とで構成される磁気ギャップを均一化することができ、磁気吸引力の変動を抑制することができることができる。
さらにパンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204およびローリング用パンニング磁気ヨーク205のパンニング駆動磁石401、チルティング駆動磁石402およびローリング駆動磁石405に対向する側面が 球心202Aを中心とする凹状の部分球面形状を有することによって、磁気吸引力の変動をより抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、カメラ部100、第2の可動部101、第2の可動部101に設けられた脱落防止用規制面101A、突起支持部201に設けられた凸状の球面部201A、第1の可動部102および吸着用磁石404の中心軸が、すべて、支持中心であり駆動中心でもある球心202Aを通る光軸1と一致し、かつこの順で配置される。したがって、可動ユニットの重心が球心202Aと一致し、可動ユニットを重心で支持するとともに、重心を通り互いに直交する3軸回りの回転駆動を実現することができる。また、可動ユニットの脱落を防止することができる。
カメラ駆動装置153は、可動ユニットの振幅増大係数(Q値)を低減するため、粘性部材60を備えていてもよい。この場合、図20に示すように、円錐状の接触面102Cと接触面102Cとの近傍に粘性部材60を充填する。これにより、可動ユニットに設けられるパンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402とベース200に設けられたパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204との間に発生する磁気吸引力変動を利用した磁気バネ効果による振動の振幅増大係数(Q値)や機械的な固有振動のQ値を低減でき、良好な制御特性を得ることができる。
また、第1の可動部102と第2の可動部101によって、円錐形状の接触面120Cおよび部分球面形状を有する脱落防止規制面101Aで規定される閉鎖的な空間が形成される。このため、可動ユニットが回動しても、充填した粘性部材60が外部へ漏れ出しにくく、良好な粘性減衰特性を維持することができる。
なお、粘性部材60に磁性流体を添加してもよい。この場合、吸着磁石40の磁気吸引力F4によって、磁性流体の添加された粘性部材60を接触面102Cが形成する内部空間により確実に保持することが可能となる。また、磁性流体が粘性も有している場合には、粘性部材60の替わりに磁性流体のみを用いてもよい。
さらに、可動ユニットの全可動範囲において、接触面102Cおよび突起部202のうち、互いに接触しない領域の表面に凸凹状形状(図示せず)を設けてもよい。凸凹状形状によって粘性部材60との接触面積が拡大し、粘性抵抗の増大を図ることができ、大幅な粘性減衰特性の向上を実現できる。
次に可動ユニットの傾きや回転の検出について説明する。カメラ駆動装置153は、固定ユニットに対するカメラ部100が搭載された可動ユニットの傾斜角度およびレンズの光軸10回りの回転角度を検出するための検出器を備える。具体的には、可動ユニットの2次元の傾斜角度、つまり、パンニング方向20およびチルティング方向21の回転角度を検出するための第1の検出部と、レンズの光軸10回りの傾斜角度を検出するための第2の検出部とを備える。
まず、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における可動ユニットの傾斜角度の検出について説明する。図12、図13、図16および図17に示すように、可動ユニットの傾斜角度を検出するために、カメラ駆動装置153は第1の検出部である第1の磁気センサー501を備える。第1の磁気センサー501は、2軸周りの傾きあるいは回転を検出可能であり、光軸10方向に1極に着磁された吸着用磁石404に対向するように配置され、回路基板502を介してベース200に固定されている。
第1の磁気センサー501の内部には、光軸10を中心にホール素子(図示せず)がチルティング方向回転軸11およびパンニング方向回転軸12上にそれぞれ1対ずつ対称に配置されている。第1の磁気センサー501は、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における傾斜動作によって生じる吸着用磁石404の磁力変化を2軸成分としてそれぞれ差動検出し、パンニング傾斜角度およびチルティング傾斜角度を算出することができる。
このように、本実施形態によれば、吸着用磁石404が突起部202に磁気吸引力Fを付与する機能に加えて、傾斜角度を検出するための磁石としても機能し、構成部品点数の低減と装置の小型化を図ることができる。また、吸着用磁石404と球心202Aとの間隔を短くでき、第1の磁気センサー501を小型化できるという利点も得られる。
図21は、可動ユニットの光軸10回りの回転角度を検出するための第2の検出部である第2の磁気センサー503の配置を示す斜視図である。図21に示すようにカメラ駆動部153は、1対の第2の磁気センサー503と、1対の回転検出用磁石403とを備える。第1の可動部102は、光軸10に直交し、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなす直線13の直線上であって、球心202Aに対して対称に配置された当接面102Eを有し、当接面102に1対の回転検出用磁石403が固定されている。
1対の回転検出用磁石403は、光軸10と直交する平面において、光軸10を中心とする円の円周方向にそれぞれ2極に分割着磁されており、1対の回転検出用磁石403における磁極は互いに逆方向に配置されている。また1対の回転検出用磁石403の2極分割着磁の中心境界上に対向するように2つの回転検出用磁気センサー503が突起支持部201とベース200(図12)の側面に固定されている。
ローリング方向22に可動ユニットが回転した場合、1対の回転検出用磁石403の磁極が移動することによって生じる急峻な磁気変化を第2の磁気センサー503が差動検出する。これにより、可動ユニットの光軸10周りの回転角度を高精度で検出することができる。
また、パンニング方向20およびチルティング方向21に可動ユニットの第1の可動部102が傾斜した場合、ローリング方向22へのクロストーク出力が発生し得る。しかし、このクロストーク出力は、第2の磁気センサー503が、1対の回転検出用磁石403による磁気を差動検出することによって得られる出力を用いてキャンセルすることができる。したがって、可動ユニットの傾斜可能な範囲においてローリング方向22の回転角度のみを正しく抽出して検出することができる。
また、図12、図16および図21に示すように、1対の第2の磁気センサー503が光軸10を挟んで、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなす直線13上に配置される。このため、光軸10を中心とした大きな半径の円周上に駆動部を設けて駆動モーメント力を向上させるとともに、小さな半径の円周上に第2の磁気センサー503を配置することができ、空間を有効に活用することができる。
このように、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、カメラ部のレンズの光軸上に、固定ユニットの突起部に設けられた部分球面の球心と、可動ユニットの円錐状の接触面の中心軸を配置し、2つに分割された可動ユニットを、突起部を中心とし、かつ、包み込むように接合する構造を採用する。このため、可動ユニットを重心で支持する構造が実現し、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、突起部と可動ユニットの接触面とによって構成されるピポッドにおいて、可動ユニットの回動角度に影響を受けにくい磁気吸引力によって、一定の垂直抗力を付加することができるため、回動角度による摩擦負荷変動を低減し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また、2つに分割された可動ユニットは、固定ユニットの断面が存在しない複数の領域において、接合されているため、固定ユニットと可動ユニットの干渉を避け、装置の低背化を実現することができる。
また、従来、磁気吸引力による支持構造に特有の大きな課題であった振動・衝撃等の外乱等による可動ユニットの脱落を防止するため、分割された可動ユニットの一方に回動可能な所定の空隙を介して脱落防止規制面を設けている。このため装置の大型化を回避しながら確実に可動ユニットの脱落防止を実現できる。
さらに可動ユニットにおいて、脱落防止規制面と円錐状の接触面は、レンズの光軸に対し、対称に配置される。また、可動ユニットを支持する突起部の部分曲面の球面の球心は光軸上に配置される。このため、可動ユニットが回動する全範囲に対して最小面積で凹状の脱落防止規制面を設けることができ、装置の小型化を実現できる。
また、可動ユニットの脱落防止規制面に固定ユニットが当接するまで可動ユニットが固定ユニットから脱落した場合でも、磁気吸引力Fによって、固定ユニットの突起部と可動ユニットの接触面とが再び接触し、ピポッドを構成することができるように脱落防止規制面の位置が決定されている。このため、たとえ可動ユニットが瞬間的に脱落した場合においても即座に元の良好な支持状態に復帰できる極めて耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動部は、光軸と垂直な平面上において直交する2つの線上にそれぞれ配置され、可動ユニットに固定された2対の磁石と、光軸に直交し、可動ユニットの回転中心を通る平面において、光軸を中心とする円周状に配置され、磁石に対向するように固定ユニットにそれぞれ配設された2対の駆動コイルを含む。これらが配置される光軸方向の高さ位置は、突起部の球心の高さ位置にほぼ等しい。このため可動ユニットの重心を中心として駆動することができ、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、光軸方向から見て、光軸と垂直な平面に投影した場合の投影領域が、パンニング方向またはチルティング方向と45度をなす一つの直線上に位置するように突起支持部をベースに固定し、突起支持部を、端部に突起部を有する片持ちの梁形状にすることにより、光軸方向から見た突起部の投影領域を小さくすることができ、可動ユニットを駆動するための駆動部を設ける領域を大きくすることができる。
このため、本実施形態によれば、可動ユニットをローリング方向に回転させる第2の駆動部、つまり、ローリング磁気ヨークおよびローリング駆動コイルも、ベースの光軸を中心とする円周上で対称に配置することが可能となる。パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動部は、光軸と垂直な平面上において直交する2つの線上にそれぞれ配置され、可動ユニットに固定された2対の磁石と、光軸に直交し、可動ユニットの回転中心を通る平面において、光軸を中心とする円周状に配置され、磁石に対向するように固定ユニットにそれぞれ配設された2対の駆動コイルを含む。これらが配置される光軸方向の高さ位置は、突起部の球心の高さ位置にほぼ等しい。このため可動ユニットを、重心を中心として駆動することができ、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、光軸を中心とする円周状に、パンニング駆動部、チルティング駆動部およびローリング駆動部を配設することができ、各駆動部の磁石と磁気ヨークとから構成される磁気ギャップを同一距離に設定することができる。したがって、磁束密度を高め、パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動効率を向上させるとともに均一化させることができる。
また、それぞれ1対のパンニング磁気ヨーク、チルティング磁気ヨークおよびローリング磁気ヨークは、略V字形状で、かつV字形状の谷部分が対向するように光軸に対して、対称に配置されている。このため、可動ユニットが大きな傾斜角度および回転角度をとった状態でも、駆動磁石と磁気ヨークとの磁気ギャップを小さくすることができ、パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動効率を向上させることができる。
また、パンニング磁気ヨーク、チルティング磁気ヨークおよびローリング磁気ヨークのそれぞれの駆動磁石に対向する側面が、突起部の中心を中心とする凹状の部分球面形状を有することによって、磁気吸引力の変動をより抑制できる。
また、突起部の表面部分を樹脂部材で被覆し、内部に磁気吸引用の磁性体を設けることにより、低摩擦で耐摩耗性に優れた支持構造が実現する。
また、可動ユニットの円錐状の接触面および固定ユニットの突起部の近傍の空間に粘性部材または磁性流体を含む粘性部材を充填することにより、可動ユニットに設けられた磁石と固定ユニットに設けられた磁気ヨークとの間に発生する磁気吸引力の磁気バネ効果による振動の振幅増大係数(Q値)や機械的な固有振動のQ値を低減することができ、良好な制御特性を得ることができる。
また、可動ユニットと固定ユニットをピポッド構造で支持するための吸着用磁石の磁力変化を第1および第2の磁気センサーで検出し、可動ユニットのヨーング方向およびチルティング方向の傾斜角度とローリング方向の回転角度算出とを算出することができるため、回転角度を検出するための磁石を別途設ける必要がなく、部品点数の削減と装置の小型化を実現することができる。
さらに突起支持部を片持ちの梁形状にすることにより、組立て時において突起部を可動ユニットに設けられた円錐状の接触面に挿入させることが可能となる。したがって、第1および第2の可動部を一体的に形成することが可能となり、部品点数の削減と組立性の向上を図ることができる。
したがって、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、パンニング方向およびチルティング方向に±20度以上の大きな角度で可動ユニットを傾斜させ、また、ローリング方向に±20度以上の大きな角度で可動ユニットを回転させることができる。また、50Hz程度までの広帯域の周波数領域で良好な振れ補正制御を実現できる。その結果、カメラ部の高速パンニング・チルティング・ローリング動作を実現するとともに、歩行撮影時の手振れで発生する撮影画像の像振れを補正することのできるカメラ駆動装置が実現する。また、小型で堅牢な脱落防止構造を備えるため、振動や落下衝撃等の外部からの衝撃に対する耐衝撃性の強いカメラ駆動装置が実現する。
(第4の実施形態)
以下、本発明によるカメラ駆動装置の第4の実施形態を説明する。図22は、本発明の第4の実施形態であるカメラ駆動装置154を示す分解斜視図であり、図23は、カメラ駆動装置154を斜め上方から見た斜視図である。また、図24は、一部の構成要素(パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303、パンニング磁気ヨーク203、チルティング用磁気コイル204)を取り除いた状態にあるカメラ駆動装置154を斜め上方から見た斜視図である。図25はカメラ駆動装置153を上方から見た平面図である。図26は、カメラ駆動装置154の図25に示す破線12と光軸10を含む平面での断面図である。図27は、カメラ駆動装置154の図25に示す破線14と光軸10を含む平面での断面図である。また、図28は、図26に示すカメラ駆動装置154の断面図における主要の模式的断面図である。図29および図30は、駆動磁石と磁気ヨークの配置を示す斜視図および平面図である。これらの図を参照してカメラ駆動装置154の主な構成を説明する。
本実施形態のカメラ駆動装置154は、可動ユニットの主要な筐体が第1の可動部によってのみ構成され、第2の可動部を含まない点で第1の実施形態のカメラ駆動装置151と異なっている。また、可動ユニットを駆動させるための磁気構造が最適化されている。
第1の実施形態と同様、カメラ駆動装置154は、カメラ部100と、カメラ部100を支持する可動ユニットと、固定ユニットとを備える。可動ユニットは、固定ユニットに対して、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22、チルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21およびパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20に自在に回転する。
図22に示すように、カメラ部100は、撮像素子(図示せず)と、撮像素子の撮像面に被写体像を結像させる光軸10を有したレンズ(図示せず)と、レンズを保持するレンズ鏡筒(図示せず)とを含む。
固定ユニットは、ベース200と、突起部202と、突起支持部201とを含む。図28に示すように、突起部202は、球心202Aを有する球面の少なくとも一部の形状を有している。以下、球面の少なくとも一部の形状を有する部分を部分球面という。また、突起部202の少なくとも一部は磁性体からなる。図22および図28に示すように、突起部202は、突起支持部201の中心部に圧入され固定されており、突起部202が固定された突起支持部201は、図22から図24に示すようにベース200に固定される。
本実施形態では、可動ユニットは、第1の可動部102のみを含み、第2の可動部を含まない。図22および図28に示すように、第1の可動部102は、吸着用磁石404と接触面102Cを有する。接触面102Cは、内側に円錐形状を有し、先端が下方に位置するように第1の可動部102に配置されている。吸着用磁石404は円錐形状の先端であり、第1の可動部102の底部に配置される。第1の可動部102は、好ましくは樹脂材料などの非磁性材料からなる。
図28に示すように、固定ユニットの突起部202は、第1の可動部102の円錐形状の接触面102Cの内側に挿入されている。突起部202の一部は磁性体からなるため、底部に設けられた吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより、突起部202は接触面102Cと接触し、遊嵌する。
これにより、第1の可動部102は、円錐状の接触面102Cと突起部202の部分球面とが接触しながら、球面の球心202Aに対して、自在に回転する。より具体的には、球心202Aに対して、光軸10に直交し中心201Aを通るパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20と、光軸10およびパンニング方向回転軸12に直交するチルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21の2種類の傾斜方向の回転と、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22の回転を行うことができる。
第1の可動部102は、好ましくは、カメラ部100のレンズの光軸10が、接触面102Cの円錐形状の軸と一致するように、かつ、固定ユニットと立体的に干渉しないようにカメラ部100を支持する。具体的には、固定ユニットの突起支持部201の断面が存在しない複数の領域において、カメラ部100が第1の可動部102に取り付けられ、固定される。このため、固定ユニットと可動ユニットの干渉を避け、装置の低背化を実現することができる。
このように、本実施形態によれば、カメラ部100を搭載した可動ユニットは、重心位置で固定ユニットによる集中的に支持される。したがって、摩擦による負荷の低減や駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑圧することができる。
また、吸着用磁石404は、回動角度に影響されることなく、一定の磁気吸引力Fで、突起部202と円錐状の接触面102Cとの間に一定の垂直抗力を付加する。このため、回動角度による摩擦負荷の変動を抑制し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また突起部202の表層部分を樹脂部材(図示せず)で被覆すれば、接触する円錐状の接触面102Cと突起部202との摩擦をさらに低減させることが可能で、耐摩耗性に優れた支持構造を実現できる。
本実施形態では、可動ユニットは第2の可動部を備えない。このため、可動ユニットが固定ユニットから脱落するのを防止するための脱落防止規制面はカメラ部100に設けられる。
図28に示すように、カメラ部100が突起支持部201に対して全可動範囲で自在に回動可能になるように、光軸10方向には所定の空隙50がカメラ部100と突起支持部201との間に設けられている。具体的には、突起支部201には、球心202Aを中心とする凸状の部分球面201Aが設けられている。また、カメラ部100のレンズが設けられていない側の面には、球心を中心とする凹状の部分球面形状を有する脱落防止用規制面100Aが設けられている。部分球面201Aと脱落防止用規制面100Aとの間には、固定ユニットの突起支持部201が第1の可動部102の接触面102C接触した状態で、空隙50が生じている。また、部分球面201Aおよび脱落防止用規制面100Aは、それぞれ、レンズの光軸10に対しておおよそ対称な形状を有する。
この空隙50は、接触面102Cが突起部202から離間しても、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより接触面102Cが突起部202と接触する状態へ戻ることが可能な距離に設定されている。つまり、可動ユニットが下方へ空隙50に等しい距離だけ移動し、部分球面201Aと脱落防止用規制面100Aとが接触した状態でも、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより可動ユニットは、接触面102Cが突起部202と接触する元の状態へ戻ることができる。
このため、本実施形態によれば、たとえ可動ユニットが瞬間的に所定の位置から脱落した場合においても吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより即座に元の良好な支持状態に復帰できる耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、球心202Aを中心とする脱落防止用規制面100Aの半径を極力小さくすれば、脱落防止用規制面100Aを設けるために要する空間を小さくでき、装置の小型化に寄与できる。
次に、可動ユニットを駆動するための構造を説明する。カメラ駆動装置154は、固定ユニットに対し、カメラ部100を搭載した可動ユニットをパンニング方向20およびチルティング方向21へ傾斜させるための第1の駆動部と、固定ユニットに対してカメラ部100をレンズの光軸10を中心とする回転である回転ローリング方向22に回転させる第2の駆動部とを備える。
第1の駆動部は、2対の傾斜駆動用磁石と、2対の磁気ヨークと、磁気ヨークに設けられた駆動コイルとを含む。より具体的には、図22、図23、図24、図29および図30に示すように、第1の可動部102には、可動ユニットをパンニング方向20に回転駆動するために、球心202Aに対してチルティング方向回転軸11上で対称に配置された1対のパンニング駆動磁石401と、可動ユニットをチルティング方向21に回転駆動するために、球心202Aに対してパンニング方向回転軸12上で対称に配置された1対のチルティング駆動磁石402が設けられている。図22に示すように、これらは、第1の可動部102に設けられた当接面102A(図22)および当接面102Bにそれぞれ固定されている。パンニング駆動磁石401は、チルティング方向回転軸11方向に磁束を有するように1極に着磁されており、同様にチルティング駆動磁石402は、パンニング方向回転軸12方向に磁束を有するように1極に着磁されている。つまり、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402においてそれぞれチルティング方向回転軸11方向およびパンニング方向回転軸12方向に異極が配置される。
また、図22および図23に示すように、1対のパンニング駆動磁石401とチルティング駆動磁石402にそれぞれ対向するように、1対のパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204が光軸10を中心としたベース200の円周上にそれぞれ配置されている。
このように、本実施形態によれば、カメラ部100、カメラ部100に設けられた脱落防止規制面100A、突起支持部201に設けられた凸状の球面部201A、第1の可動部102および吸着用磁石404の中心軸が、すべて、支持中心であり駆動中心でもある球心202Aを通る光軸10と一致し、かつこの順で配置される。したがって、可動ユニットの重心が球心202Aと一致し、可動ユニットを重心で支持するとともに、重心を通り互いに直交する3軸回りの回転駆動を実現することができる。また、可動ユニットの脱落を防止することができる。
次にローリング方向22に可動ユニットを回転駆動する第2の駆動部を説明する。図27、図29および図30に示すように、第1の可動部102には、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなす直線14(図29参照)の線上に球心202Aに対して対称に配置された1対のローリング駆動磁石800が設けられている。ローリング駆動磁石800は、直線14方向に磁束を有するように1極に着磁されている。また、1対のローリング駆動磁石800にそれぞれ対向するように1対のローリング磁気ヨーク701が光軸10を中心としたベース200の円周上にそれぞれ設けられている。
また、1対の磁気ヨーク701をそれぞれ巻回するローリング駆動コイル700が設けられている。ローリング駆動コイル700の巻回中心軸(図示せず)は、パンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302の巻回中心軸に対して直交するよう設けられている。
このように、光軸10を中心とするベース200の円周上に、パンニング方向20、チルティング方向21、ローリング方向22の駆動部がそれぞれ独立に分散して配置されている。
また、パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302およびローリング駆動コイル303の光軸10方向における中心の高さ位置は、突起部202の球心202Aの高さ位置に等しい。
1対のパンニング駆動コイル301に通電することにより、1対のパンニング駆動磁石401は偶力の電磁力を受け、第1の可動部102、つまり可動ユニットは、パンニング方向回転軸12を中心にパンニング方向20に回転駆動される。
同様に、1対のチルティング駆動コイル302に通電することにより、1対のチルティング駆動磁石402は偶力の電磁力を受け、可動ユニットは、チルティング方向回転軸11を中心にパンニング方向21に回転駆動される。
さらにパンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302に同時に通電することにより、カメラ部100が搭載された可動ユニットを2次元的に傾斜させることができる。
また1対のローリング駆動コイル303に通電することにより、1対のローリング駆動磁石405は電磁力を受け、カメラ部100を搭載した可動ユニットは、光軸10を中心にローリング方向22に回転駆動される。
このように、本実施形態は、第1の可動部102にパンニング駆動磁石401、チルティング駆動磁石402およびローリング駆動磁石800を設けたムービングマグネット駆動方式を採用している。この構成では、一般的に可動ユニットの重量が増大するという問題が考えられる。しかし、この構成によれば、可動ユニットに駆動用配線の懸架は不必要である。また、パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303の発熱をパンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204、ローリング磁気ヨーク701、ベース200および連結部210によって冷却できるという大きな利点がある。
さらに、パンニング方向20およびチルティング方向21への傾斜角度と、ローリング方向22の回転角度とを10度以上にする上では、可動ユニットを小型化、軽量化できる点で有利である。ムービングコイル駆動方式では駆動コイルがあまりにも肥大化し、可動ユニットの重量が増加する可能性がある。
図31は第1の駆動部であるチルティング駆動磁石402およびチルティング磁気ヨーク204の形状および配置を示した断面図であり、図32は第2の駆動部であるローリング駆動磁石800およびローリング磁気ヨーク701の形状および配置を示した断面図である。
図31に示すように、チルティング磁気ヨーク204に対向するチルティング駆動磁石402の側面は、突起部202の球心202Aを中心とし、光軸10と垂直であり、球心202Aを通る平面において、中心からそれぞれの駆動磁石の側面の中点までの距離R1を半径とする凸球面の一部を有していることが好ましい。同様に、パンニング磁気ヨーク203に対向するパンニング駆動磁石401の側面も距離R1を半径とする凸球面の一部を有していることが好ましい。
また1対のローリング磁気ヨーク701に対向するローリング駆動磁石800の側面は、球心202Aと一致した中心を有し、光軸10と垂直であり、球心202Aを通る平面において、中心から回転駆動用磁石800の側面の中点までの距離R2を半径とする第2の凸球面の一部を有していることが好ましい。
一方、チルティング駆動磁石402の凸球面に対向するチルティング磁気ヨーク204の側面は、光軸10に垂直であり、球心202Aを通る平面における中心とチルティング駆動磁石402の側面の中点とを結ぶ延長線上の点を中心とし、上述の平面における延長線上の点からチルティング磁気ヨーク204の側面の中点までの距離L1より大きい半径R3の凹球面の一部を有していることが好ましい。同様にパンニング駆動磁石401の凸球面に対向するパンニング磁気ヨーク203の側面も、半径R3の凹球面の一部を有していることが好ましい。より好ましくは、R3は距離L1の1.2倍から2倍程度である。
またローリング駆動磁石800の凸球面に対向するローリング磁気ヨーク701の側面は、上述の平面における球心202Aとローリング駆動磁石800の側面の中点を結ぶ延長線上の点を中心とし、上述の平面における延長線上の点からローリング磁気ヨーク701の側面の中点までの距離L2より大きい半径R4の凹球面の一部を有していることが好ましい。より好ましくは、R4は距離L2の1.2倍から2倍程度である。
このような駆動磁石および磁気ヨークの構成による効果を説明する。図33は、チルティング磁気ヨーク204が平板である場合の構成を示す図であり、図34は本実施形態のチルティング駆動磁石402およびチルティング磁気ヨーク204の形状および配置を示した図である。
図33に示したチルティング磁気ヨーク204の場合の磁気ギャップGは、G=d+R1×(1−COSθ1)で表される。ここで、dは第1の可動部102の傾斜角度および回転角度が0度である場合における磁気ギャップの最小距離であり、θ1は、チルティング角度である。
また図34に示した本実施形態の場合、磁気ギャップGは、G=d+R1×(1−COSθ1)−R3×(1−COSθ2)で表される。ここで、θ1はチルティング角度であり、θ2はチルティング角度がθ1である場合のチルティング駆動磁石402の中点をチルティング磁気ヨーク204の側面へ水平方向に投影した点と半径R3の中心Pを結ぶ線が水平方向に対してなす角度である。θ1とθ2とは、R3×SINθ2=R1×SINθ1の関係を満たす。
図35は、チルティング傾斜角度に対する磁気ギャップの変化を示した特性図であり、チルティング磁気ヨーク204が平板である場合(四角)およびR3=2×L1を満たす凹状部分球面である場合(丸)を示している。
図35からわかるように、傾斜角度が30度になると、平板形状の磁気ヨークでは、磁気ギャップが最小磁気ギャップ距離d(ここでは0.5mm)の約5倍にまで急激に増加する。しかし、凹状部分球面形状の磁気ヨークでは、磁気ギャップの変化が最小磁気ギャップ距離d(ここでは0.5mm)の3倍程度までに抑えられている。
また図36は、チルティング磁気ヨーク204が平板である場合(四角)およびR3=1.2×L1を満たす凹状部分球面である場合(丸)におけるチルティング傾斜角度に対する磁気ギャップの変化を示した特性図である。
図36からわかるように、傾斜角度が30度になっても、凹状部分球面形状の磁気ヨークでは、磁気ギャップの変化が最小磁気ギャップ距離d(ここでは0.5mm)の2倍程度までに抑えられている。
このようにチルティング駆動磁石の側面を半径R1の凸状部分球面に構成し、チルティング磁気ヨーク204の側面を半径R3の凹状部分球面に構成し、R1およびR3を調節することにより、磁気ギャップの変化を制御させることが可能となる。
ここで、R3をL1に一致させた場合、磁気ギャップ変化を完全に抑制することが可能であり、チルティング傾斜角度にかかわらず磁気ギャップは一定になる。
しかし、この場合、磁気吸引力を利用した第1の可動部102の中点復帰機能が損なわれ、磁気バネ効果によって、カメラ部100を搭載した第1の可動部102を、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22における中立位置に保つことができない。その結果、カメラ部100の3次元での中立位置を保持するためには、定常的な駆動電流をパンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302およびローリング駆動コイル303に印加させる必要が生じ、カメラ駆動装置としての効率が大きく低下してしまう。これらのことから、磁気バネ効果を利用するためには、R3>L1を満たすことが好ましいことがわかる。
一方、磁気ギャップ変化を急峻にさせることで磁気吸引力を積極的に利用して第1の可動部102の中点復帰機能を高めた場合、パンニング、チルティングおよびローリングの3方向の磁気バネ付勢力の合力により、第1の可動部102の3方向の周波数応答特性へ悪影響が生じる。このため、良好なサーボ駆動帯域を得られない。
したがって、3方向の中点復帰機能と周波数応答特性の両立は、カメラ駆動装置における非常に重要な設計課題となり、駆動磁石の凸球面に対する磁気ヨークの凹球面の半径の設定を最適化させることが課題解決のための重要な一手段となる。
図35および図36に示すように、傾斜角度が30度以内である場合、L1およびR3が1.2L1≦R3≦2Lの関係を満たせば、磁気ギャップの距離変化を2倍から3倍以内にすることができる。詳細な検討の結果、磁気ギャップの距離変化がこの範囲であれば、中点復帰機能および周波数応答特性を両立させることが可能となることがわかった。
パンニング磁気ヨーク203およびパンニング駆動磁石401のL1およびR3についても同様であり、L1およびR3は1.2×L1≦R3≦2×L1の関係を満たすことが好ましい。また、ローリング駆動磁石800およびローリング磁気ヨーク701のL2およびR4にいても同様であり、L2およびR4は1.2×L2≦R4≦2×L2の関係を満たすことが好ましい。
次に可動ユニットの傾きや回転の検出について説明する。カメラ駆動装置154は、固定ユニットに対するカメラ部100が搭載された可動ユニットの傾斜角度およびレンズの光軸10回りの回転角度を検出するための検出器を備える。具体的には、可動ユニットの2次元の傾斜角度、つまり、パンニング方向20およびチルティング方向21の回転角度を検出するための第1の検出部と、レンズの光軸10回りの傾斜角度を検出するための第2の検出部とを備える。
まず、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における可動ユニットの傾斜角度の検出について説明する。図22、図26、図27および図28に示すように、可動ユニットの傾斜角度を検出するために、カメラ駆動装置154は第1の検出部である第1の磁気センサー501を備える。第1の磁気センサー501は、2軸周りの傾きあるいは回転を検出可能であり、光軸10方向に1極に着磁された吸着用磁石404に対向するように配置され、回路基板502を介してベース200に固定されている。
第1の磁気センサー501の内部には、光軸10を中心にホール素子(図示せず)がチルティング方向回転軸11およびパンニング方向回転軸12上にそれぞれ1対ずつ対称に配置されている。第1の磁気センサー501は、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における傾斜動作によって生じる吸着用磁石404の磁力変化を2軸成分としてそれぞれ差動検出し、パンニング傾斜角度およびチルティング傾斜角度を算出することができる。
このように、本実施形態によれば、吸着用磁石404が突起部202に磁気吸引力Fを付与する機能に加えて、傾斜角度を検出するための磁石としても機能し、構成部品点数の低減と装置の小型化を図ることができる。また、吸着用磁石404と球心202Aとの間隔を短くでき、第1の磁気センサー501を小型化できるという利点も得られる。
次に、可動ユニットの光軸10回りの回転角度を検出するための第2の検出部を説明する。図22に示すようにカメラ駆動部154は、1対の第2の磁気センサー503と、2対の回転検出用磁石403とを備える。2対の回転検出用磁石403が、光軸10に直交し、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなし、互いに直交する2本の直線上において、球心202Aに対して対称となるよう、第1の可動部102に固定されている。4つの回転検出用磁石403のそれぞれは、光軸10を中心とし、光軸10と垂直な平面上の円の円周方向に2極に着磁されている。また、光軸10に対して対称に配置された一対の回転検出用磁石403は互いに着磁方向が逆になっている。
また1対の回転検出用磁石403の2極分割着磁の中心境界上において対向するように2つの回転検出用磁気センサー503がベース200に固定されている。
ローリング方向22に可動ユニットが回転した場合、1対の回転検出用磁石403の磁極が移動することによって生じる急峻な磁気変化を第2の磁気センサー503が差動検出する。これにより、可動ユニットの光軸10周りの回転角度を高精度で検出することができる。
また、パンニング方向20およびチルティング方向21に可動ユニットの第1の可動部102が傾斜した場合、ローリング方向22へのクロストーク出力が発生し得る。しかし、このクロストーク出力は、第2の磁気センサー503が、1対の回転検出用磁石403による磁気を差動検出することによって得られる出力を用いてキャンセルすることができる。したがって、可動ユニットの傾斜可能な範囲においてローリング方向22の回転角度のみを正しく抽出して検出することができる。
また、図22に示すように、1対の第2の磁気センサー503が光軸10を挟んで、チルティング方向回転軸11またはパンニング方向回転軸12に対して45度をなす直線13上に配置される。このため、光軸10を中心とした大きな半径の円周上に駆動部を設けて駆動モーメント力を向上させるとともに、小さな半径の円周上に第2の磁気センサー503を配置することができ、空間を有効に活用することができる。
このように、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、カメラ部のレンズの光軸上に、固定ユニットの突起部に設けられた部分球面の球心と、可動ユニットの円錐状の接触面の中心軸を配置し、2つに分割された可動ユニットを、突起部を中心とし、かつ、包み込むように接合する構造を採用する。このため、可動ユニットを重心で支持する構造が実現し、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、突起部と可動ユニットの接触面とによって構成されるピポッドにおいて、可動ユニットの回動角度に影響を受けにくい磁気吸引力によって、一定の垂直抗力を付加することができるため、回動角度による摩擦負荷変動を低減し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また、従来、磁気吸引力による支持構造に特有の大きな課題であった振動・衝撃等の外乱等による可動ユニットの脱落を防止するため、分割された可動ユニットの一方に回動可能な所定の空隙を介して脱落防止規制面を設けている。このため装置の大型化を回避しながら確実に可動ユニットの脱落防止を実現できる。
さらに可動ユニットにおいて、脱落防止規制面と円錐状の接触面は、レンズの光軸に対し、対称に配置される。また、可動ユニットを支持する突起部の部分曲面の球面の球心は光軸上に配置される。このため、可動ユニットが回動する全範囲に対して最小面積で凹状の脱落防止規制面を設けることができ、装置の小型化を実現できる。
また、可動ユニットの脱落防止規制面に固定ユニットが当接するまで可動ユニットが固定ユニットから脱落した場合でも、磁気吸引力Fによって、固定ユニットの突起部と可動ユニットの接触面とが再び接触し、ピポッドを構成することができるように脱落防止規制面の位置が決定されている。このため、たとえ可動ユニットが瞬間的に脱落した場合においても即座に元の良好な支持状態に復帰できる極めて耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動部は、光軸と垂直な平面上において直交する2つの線上にそれぞれ配置され、可動ユニットに固定された2対の磁石と、光軸に直交し、可動ユニットの回転中心を通る平面において、光軸を中心とする円周状に配置され、磁石に対向するように固定ユニットにそれぞれ配設された2対の駆動コイルを含む。これらが配置される光軸方向の高さ位置は、突起部の中心の高さ位置にほぼ等しい。このため可動ユニットの重心を中心として駆動することができ、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、パンニング、チルティング磁気ヨークに対向するパンニング、チルティング駆動磁石の側面は、突起部の球面の球心を中心とし、中心からそれぞれの駆動磁石の側面の中心までの距離R1を半径とする球面の一部形状を有し、ローリング磁気ヨークに対向するローリング駆動磁石の側面は、突起部の球面の球心を中心とし、中心からそれぞれの駆動磁石の側面の中心までの距離R2を半径とする球面の一部形状を有する。
パンニング、チルティング駆動磁石の凸球面に対向するパンニング、チルティング磁気ヨークの側面は、中心からパンニング、チルティング磁気ヨークの側面までの距離L1より大きい半径R3の凹状球面の一部形状を有し、ローリング駆動磁石の凸球面に対向するローリング磁気ヨークの側面は、中心からローリング磁気ヨークの側面までの距離L2より大きい半径R4の凹状球面の一部形状を有する。
これにより、可動ユニットの傾斜角度および回転角度に対する磁気ヨークと駆動磁石とのそれぞれの磁気ギャップ変化をすべての可動範囲において、予定の範囲内に抑制することができる。また、駆動磁石の凸状球面の半径と磁気ヨークの凹状球面の半径を調節することによって、磁気ギャップの変化量を制御することが可能となる。
一般的に、磁気吸引力は磁束密度の2乗に比例し、磁束密度は磁気ギャップに反比例する。したがって、磁気吸引力は磁気ギャップの2乗に反比例することになり、動作角度の変化に伴う急激な磁気ギャップ変化は磁気バネのバネ定数を増加させる。そこで、可動ユニットに設けた駆動磁石の回転曲率半径に応じた駆動磁石の凸状球面の半径および磁気ヨークの凹状球面の半径を調節することにより磁気ギャップの変化量を適切に設定し、可動ユニットの中立位置への復帰を3次元的に実現するとともに、駆動制御周波数帯域における周波数応答特性を悪化させない磁気バネ特性を実現させることができる。
特に磁気ヨークの凹状球面の半径を、中心から磁気ヨークの側面までの距離の1.2倍以上2倍以下に設定する場合、可動ユニットの中立位置への復帰と良好な周波数応答特性の両立を図ることができる。
また、ムービングマグネット駆動方式では、傾斜角度および回転角度の増大に比例して磁気吸引力が大きくなるため、磁気吸引力に逆らって動作角度を維持させる必要がある。その結果、不必要な駆動電流が必要となり駆動効率を著しく低下させるという特有の課題があった。本実施形態のカメラ駆動装置によれば、動作角度範囲における磁気ギャップの変化量を緩やかに設定することができるため、可動ユニットの中立位置への復帰を実現しつつ、駆動効率の低下を抑制することができる。
また可動ユニットに搭載しているパンニングおよびチルティング駆動磁石およびローリング駆動磁石の回転曲率半径を距離R1および距離R2と異ならせることによって、パンニングおよびチルティング駆動磁石とローリング駆動磁石との磁気結合を回避し、磁気吸引力の急激な変動を防止することができる。
また、1対の第2の磁気センサーが光軸を挟んで、チルティング方向回転軸またはパンニング方向回転軸に対して45度をなす直線13上に配置するため、光軸10を中心とした大きな半径の円周上に駆動部を設けて駆動モーメント力を向上させるとともに、小さな半径の円周上に第2の磁気センサーを配置することができ、装置として省スペース化を実現できる。
したがって、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、パンニング方向およびチルティング方向に±10度以上の大きな角度で可動ユニットを傾斜させ、また、ローリング方向に±10度以上の大きな角度で可動ユニットを回転させることができる。また、50Hz程度までの広帯域の周波数領域で良好な振れ補正制御を実現できる。その結果、カメラ部の高速パンニング・チルティング・ローリング動作を実現するとともに、歩行撮影時の手振れで発生する撮影画像の像振れを補正することのできるカメラ駆動装置が実現する。また、小型で堅牢な脱落防止構造を備えるため、振動や落下衝撃等の外部からの衝撃に対する耐衝撃性の強いカメラ駆動装置が実現する。
(第5の実施形態)
以下、本発明によるカメラ駆動装置の第5の実施形態を説明する。図37は、本発明の第5の実施形態であるカメラ駆動装置155を示す分解斜視図であり、図38は、カメラ駆動装置155を斜め上方から見た斜視図である。図39(a)および(b)は、カメラ駆動装置155は平面図および側面図である。図40および図41は、それぞれ図39(a)におけるA−A線断面図およびB−B線断面図である。図42はカメラ駆動装置155の突起部202近傍を拡大して示す要部断面図である。図43は、図39(b)におけるC−C線断面図である。これらの図を参照してカメラ駆動装置155の主な構成を説明する。
カメラ駆動装置155は、カメラ部100と、カメラ部100を支持する可動ユニットと、固定ユニットとを備える。カメラ駆動装置155は、カメラ部100を搭載した第1の可動部102および第2の可動部101が第3の可動部103に対して、チルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21およびパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20に自在に回転し、第3の可動部103が固定ユニットに対して、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22に自在に回転する点で第1から第4の実施形態と異なっている。
図37および図38に示すように、カメラ部100は、撮像素子(図示せず)と、撮像素子の撮像面に被写体像を結像させる光軸10を有したレンズ(図示せず)と、レンズを保持するレンズ鏡筒(図示せず)とを含む。
可動ユニットは、第1の可動部102、第2の可動部101、第3の可動部103、突起支持部201および突起部202を含む。
図37に示すように、突起支持部201は、略アーチ状の両持ち梁形状を有し、梁の中央に設けられた孔に、突起部202が圧入固定されている。図41および図42に示すように、突起部202は、球心202Aを有する球面の少なくとも一部の形状を有している。また、突起部202の少なくとも一部は磁性体からなる。突起支持部201は、第3の可動部103に固定される。
第1の可動部102は、接触面102Cと吸着用磁石404とを有する。接触面102Cは、内側に円錐形状を有し、先端が下方に位置するように第1の可動部102に配置されている。吸着用磁石404は円錐形状の先端であり、第1の可動部102の底部に配置される。第1の可動部102は、好ましくは樹脂材料などの非磁性材料からなる。
図42に示すように、突起部202は、第1の可動部102の円錐形状の接触面102Cの内側に挿入されている。突起部202の一部は磁性体からなるため、底部に設けられた吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより、突起部202は接触面102Cと接触し、遊嵌する。
これにより、第1の可動部102は、円錐状の接触面102Cと突起部202の部分球面とが接触しながら、球面の球心202Aに対して、自在に回転する。より具体的には、球心202Aに対して、光軸10に直交し中心201Aを通るパンニング方向回転軸12を中心に回転するパンニング方向20と、光軸10およびパンニング方向回転軸12に直交するチルティング方向回転軸11を中心に回転するチルティング方向21の2種類の傾斜方向の回転と、レンズ光軸10を中心に回転するローリング方向22の回転を行うことができる。
第2の可動部101は、カメラ部100を搭載し、第1の可動部102に固定されている。具体的には、レンズの光軸10が、第2の可動部101の中心を貫き、好ましくは、円錐形状の接触面102Cの中心軸と一致するようにカメラ部100が第2の可動部101に固定されている。また、突起支持部201と立体的に干渉しないように、第1の可動部102に結合される。
図37に示すように、第3の可動部103は、突起支持部201を支持し、固定ユニットのベース200に設けられた光軸10を中心軸とするローリング回動中心孔200sに、第3の可動部103に設けられたローリング回動軸103sに嵌合され、ベース200に回動自在に支持される。これにより、突起支持部201を介して支持されている第1の可動部102および第2の可動部101は、光軸10を中心にローリング方向22に回転することができる。
また、第1の可動部102の下方(球心202Aに対して第2の可動部101と反対)には、カウンターウエイト150が取り付けられる。これにより、球心202Aを中心として、第1の可動部102に固定されるカメラ部100との重量バランスをとることができるため、搭載するカメラ部100の設計および搭載自由度が広がる。また、カメラ部100、第1の可動部102および第2の可動部101とカウンターウエイト150からなる全可動ユニットの重心位置を突起部202の球心202A近傍で集中的に支持することが可能となる。このため、摩擦による負荷を低減し、駆動周波数領域における機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、吸着用磁石404は、回動角度に影響されることなく、一定の磁気吸引力Fで、突起部202と円錐状の接触面102Cとの間に一定の垂直抗力を付加する。このため、回動角度による摩擦負荷の変動を抑制し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
なお、突起部202の表層部分を潤滑性の高い樹脂部材(図示せず)などで被覆してもよい。この場合、接触する円錐状の接触面102Cとの摩擦をさらに低減させることが可能であり耐摩耗性の優れた支持構成を実現できる。
また、図42に示すように、第2の可動部101が、突起支持部201に対して全可動範囲で自在に回動可能になるように、光軸10方向には所定の空隙50が第2の可動部101と突起支持部201との間に設けられている。したがって、突起支持部201には、球心202Aを中心とする凸状の球面部201Aが設けられ、空隙50を介して第2の可動部101には、球心202Aを中心とする凹状の球面の脱落防止用規制面101Aが設けられている。
この空隙50は、接触面102Cが突起部202から離間しても、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより接触面102Cが突起部202と接触する状態へ戻ることが可能な距離に設定されている。つまり、第1の可動部102が下方へ空隙50に等しい距離だけ移動し、部分球面201Aと脱落防止用規制面101Aとが接触した状態でも、吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより可動ユニットは、接触面102Cが突起部202と接触する元の状態へ戻ることができる。
このため、本実施形態によれば、たとえ第1の可動部102が瞬間的に所定の位置から脱落した場合においても吸着用磁石404の磁気吸引力Fにより即座に元の良好な支持状態に復帰できる耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、球心202Aを中心とする脱落防止用規制面101Aの半径を極力小さくすれば、脱落防止用規制面101Aを設けるために要する空間を小さくでき、装置の小型化に寄与できる。
次に、可動ユニットを駆動するための構造を説明する。カメラ駆動装置155は、カメラ部100を搭載した第1の可動部102および第2の可動部101を第3の可動部103に対してパンニング方向20およびチルティング方向21へ傾斜させるための第1の駆動部と、ベース200に対して第3の可動部103をローリング方向22に回転させる第2の駆動部とを備える。
第1の駆動部は、パンニング駆動磁石401と、パンニング磁気ヨーク203と、パンニング駆動コイル301からなるパンニング駆動部と、チルティング駆動磁石402と、チルティング磁気ヨーク204と、チルティング駆動コイル302からなるチルティング駆動部を含む。
図37、図41および図44を参照して、パンニング駆動部およびチルティング駆動部の構成について説明する。
図44は、カメラ駆動装置155におけるパンニング駆動部およびチルティング駆動部の構成を示す分解斜視図である。なお、図41は、チルティング方向回転軸11に沿ったパンニング駆動部の断面図である。パンニング駆動部とチルティング駆動部は、回転軸が90度異なるだけで、基本的な構成は同じである。このためパンニング方向回転軸12に沿ったチルティング駆動部の断面図は省略し、相当する構成要素は括弧内に示している。
パンニング駆動部は、第1の可動部102を、パンニング方向回転軸12を中心にパンニング方向20に回転駆動する。このために、パンニング駆動部は、第1の可動部102に取り付けられたパンニング駆動磁石401と、パンニング駆動磁石401に対向するように、連結部210に取り付けられたパンニング磁気ヨーク203と、パンニング磁気ヨーク203に取り付けられたパンニング用ボビン206と、パンニング用ボビン206に巻回されたパンニング駆動コイル301とを含む。
パンニング駆動磁石401は、球心202Aに対してチルティング方向回転軸11上において対称に配置された1対の磁石であり、チルティング方向回転軸11方向に磁束を有するようにそれぞれ1極に着磁されている。
パンニング磁気ヨーク203は、1対のパンニング駆動磁石401に対向する1対の磁性体で構成された磁気ヨークである。パンニング駆動磁石401の矢印20A方向および矢印20B方向の回転に対して、急激な磁気ギャップの変動を起こさないように、パンニング駆動磁石401に対向する面は、チルティング方向回転軸11上に中心を持つ部分円柱側面形状を有する。
部分円柱側面形状を有するパンニング磁気ヨーク203にパンニング駆動コイル301を巻く(取り付ける)ために、パンニング用ボビン206は、パンニング磁気ヨーク203に取り付けられている。パンニング用ボビン206は、パンニング駆動磁石401の矢印20A方向および矢印20B方向の回転に対して、パンニング駆動コイル301を略V字型に配置するように、パンニング駆動コイル301とパンニング磁気ヨーク203の隙間を埋めるように構成されている。
パンニング駆動コイル301は、1つのパンニング駆動磁石401に対して、球心202Aの高さで2分割されて、上述したパンニング用ボビン206に巻回されている。
これらの1対のパンニング磁気ヨーク203とパンニング駆動コイル301は、光軸10を中心に対称に配置された1対の連結部210(図37)を介して、それぞれ第3の可動部103に固定されている。
同様に、チルティング駆動部は、第1の可動部102を、チルティング方向回転軸11を中心にチルティング方向21に回転駆動する。このために、チルティング駆動部は、第1の可動部102に取り付けられたチルティング駆動磁石402と、チルティング駆動磁石402に対向するように、連結部210に取り付けられたチルティング磁気ヨーク204と、チルティング磁気ヨーク204に取り付けられたチルティング用ボビン207と、チルティング用ボビン207に巻回されたチルティング駆動コイル302とを含む。
チルティング駆動磁石402は、球心202Aに対してパンニング方向回転軸12上において対称に配置された1対の磁石であり、パンニング方向回転軸12方向に磁束を有するようにそれぞれ1極に着磁されている。
チルティング磁気ヨーク204は、1対のチルティング駆動磁石402に対向する1対の磁性体で構成された磁気ヨークである。チルティング駆動磁石402の矢印21A方向および矢印21B方向の回転に対して、急激な磁気ギャップの変動を起こさないように、チルティング駆動磁石402に対向する面は、パンニング方向回転軸12上に中心を持つ部分円柱側面形状を有する。
部分円柱側面形状を有するチルティング磁気ヨーク204にチルティング駆動コイル302を巻く(取り付ける)ために、チルティング用ボビン207は、チルティング磁気ヨーク204に取り付けられている。チルティング用ボビン207は、チルティング駆動磁石402の矢印21A方向および矢印21B方向の回転に対して、チルティング駆動コイル302を略V字型に配置するように、チルティング駆動コイル302とチルティング磁気ヨーク204の隙間を埋めるように構成されている。
チルティング駆動コイル302は、1つのチルティング駆動磁石402に対して、球心202Aの高さで2分割されて、前述したチルティング用ボビン207に巻回されている。
これらの1対のチルティング磁気ヨーク204とチルティング駆動コイル302は、光軸10を中心に対称配置された1対の連結部210(図37)を介して、それぞれ第3の可動部103に固定されている。
したがって、パンニング方向20およびチルティング方向21の回転駆動に関しては、それぞれ2つのパンニング駆動磁石401とチルティング駆動磁石402に対して、2つの磁気ヨークと、4つの駆動コイルとから構成されている。
次に、図41、図45および図46を参照して、パンニング駆動部およびチルティング駆動部の傾斜動作と磁気吸引力を利用した第1の可動部102の中立位置復帰機能について説明する。
図45は、カメラ駆動装置155の図39に示すA−A線の位置における断面図であり、パンニング方向(チルティング方向)に駆動した場合の断面図である。図45は、チルティング方向回転軸11上でのパンニング駆動部の断面図であるが、パンニング駆動部とチルティング駆動部は、回転軸が90度異なるだけで、基本的な構成は同じである。このため、パンニング方向回転軸12に沿ったチルティング駆動部の断面図は省略し、相当する構成要素は括弧内に示している。
図46は、カメラ駆動装置155におけるチルティング駆動磁石204とチルティング駆動用チルティング磁気ヨーク204の位置関係を示す要部断面図である。図46は、ピッチング駆動部の要部断面図であるが、パンニング駆動部とチルティング駆動部は、回転軸が90度異なるだけで、基本的な構成は同じである。このため、パンニング駆動部の要部断面図は省略し、相当する構成要素は括弧内に示している。
図41および図45に示すように、4つの駆動コイルからなるパンニング駆動コイル301に通電することにより、1対のパンニング駆動磁石401は、偶力の電磁力を受けるため、第1の可動部102は、球心202A(パンニング方向回転軸12)を中心にパンニング方向20Aまたは20Bに回転駆動される。図41の傾斜角度0の中立位置の状態から、パンニング駆動コイル301に所定の方向へ通電すると、図45に示すように、第1の可動部102は、矢印20A方向に駆動され、前述した所定の方向と逆向きの方向に通電すると、第1の可動部102は、矢印20B方向に駆動される。
同様に、4つの駆動コイルからなるチルティング駆動コイル302に通電することにより、1対のチルティング駆動磁石402は、偶力の電磁力を受けるため、第1の可動部102は、球心202A(チルティング方向回転軸11)を中心にチルティング方向21Aまたは21Bに回転駆動される。図41の傾斜角度0の中立位置の状態から、チルティング駆動コイル302に所定の方向へ通電すると、図45に示すように、第1の可動部102は、矢印21A方向に駆動され、前述した所定の方向と逆向きの方向に通電すると、第1の可動部102は、矢印21B方向に駆動される。
したがって、パンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302へ同時に通電することにより、第1の可動部102に固定される第2の可動部およびにカメラ部100を、球心202Aを中心に2次元的に傾斜させることができる。また、パンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302に流す電流の向きを変えることによって、カメラ部100を、パンニング方向20Aまたは20Bおよびチルティング方向21Aまたは21B方向へ任意に駆動することができる。
なお、本実施形態では、パンニング磁気ヨーク203の凹状のR面とパンニング駆動磁石401との磁気ギャップに関して、図41に示す第1の可動部102の傾斜角度が0度の場合の磁気ギャップG0と、図45に示す第1の可動部102が矢印20A方向に傾斜した場合の磁気ギャップG1との関係がG0<G1となるように、パンニング磁気ヨーク203の側面は、凹状の部分円柱側面形状を有している。したがって、図41に示す第1の可動部102の傾斜角度が0度の場合の磁気吸引力が、図45に示す第1の可動部102が矢印20A方向に傾斜した場合に対して大きくなるので、磁気吸引力による磁気バネを利用して、第1の可動部102を中立位置(傾斜角度が0度)に保持することができる。
チルティング駆動部に関しても、回転軸が90度異なるだけで、基本的な構成は同じである。つまり、同様に、第1の可動部102を中立位置(傾斜角度が0度)に保持することができる。
さらに、本実施形態では、図46に示すように、チルティング駆動磁石402のチルティング磁気ヨーク204と対向する面402Aは、凸状の部分球面形状を有する。これにより、チルティング駆動磁石402と対向するチルティング磁気ヨーク204の中心部との磁気ギャップD0を、チルティング磁気ヨーク204の端部との磁気ギャップD1より小さく構成できる。その結果、チルティング磁気ヨーク204の中心部での磁気吸力が大きくなり、磁気吸引力による磁気バネを利用して、第1の可動部102をチルティング磁気ヨーク204中心部に沿って保持して駆動することができる。
パンニング駆動磁石401とパンニング磁気ヨーク203においても、同様に、磁気吸引力による磁気バネを利用して、第1の可動部102をパンニング磁気ヨーク203中心部に沿って保持して駆動することができる。
したがって、ローリング方向22にも自由度がある球状の突起部202によるピポッド支持構成において、パンニング方向20およびチルティング方向21の2つの駆動軸のみの支持が実現でき、従来に比べ、小さいスペースで2つの駆動軸支持を構成することができる。
次に、ベース200に対して第3の可動部103をローリング方向22に回転させる第2の駆動部であるローリング駆動部を説明する。図47は、カメラ駆動装置155におけるローリング駆動部の構成を示す分解斜視図である。
ローリング駆動部は、第3の可動部103を、光軸10を中心にローリング方向22に回転駆動を行い、第3の可動部103に取り付けられたローリング駆動磁石405と、ローリング駆動磁石405に対向するように、ベース200に取り付けられたローリング磁気ヨーク205と、ローリング磁気ヨーク205に取り付けられたローリング用ボビン208と、ローリング用ボビン208に巻回されたローリング駆動コイル303とを含む。
ローリング駆動磁石405は、パンニング方向回転軸12またはチルティング方向回転軸11に対して45度をなす直線15上(図43)において、光軸10に対して対称に配置された1対の磁石であり、直線15方向に磁束を有するようにそれぞれ1極に着磁されている。
ローリング磁気ヨーク205は、1対のローリング駆動磁石405に対向する1対の磁性体で構成された磁気ヨークである。第3の可動部103を、磁気吸引力変動を利用した磁気バネ効果により、ローリング方向22の中立位置に保持するために、ローリング駆動磁石405に対向する面は、中立位置で磁気ギャップが最小となるような凸状の部分円柱側面形状を有する。
部分円柱側面形状を有するローリング磁気ヨーク205にローリング駆動コイル303を巻くために、ローリング用ボビン208は、ローリング磁気ヨーク205に取り付けられている。また、ローリング用ボビン208は、ローリング駆動コイル303を直線15に直交する方向に配置するように、ローリング駆動コイル303とローリング磁気ヨーク205の隙間を埋めるように構成されている。
ローリング駆動コイル303は、1対のローリング用ボビン208にパンニング駆動コイル301とチルティング駆動コイル302と直交する方向に巻回されている。
これらの1対のローリング磁気ヨーク205とローリング駆動コイル303は、球心202Aの高さより下方に構成されており、光軸10方向から見た平面位置は、パンニングもしくはチルティング駆動部に対して45度をなすように配置されている。このため、パンニングもしくはチルティング駆動部との干渉をさけ、高さ領域を有効に活用して装置の低背化を図ることができる。
また、ローリング駆動部を球心202Aより下方に設けることにより、パンニングおよびチルティング駆動部との磁気回路の高さ位置を変えて、パンニングおよびチルティング駆動磁石401、402との磁気結合の影響を低減し、磁気回路の干渉による駆動中のクロストークの発生を抑制することができる。
次に、図43および図48を参照して、ローリング駆動部の回転動作と磁気吸引力を利用した第3の可動部103の中立位置復帰機能について説明する。
図48は、カメラ駆動装置155の図39(b)のC−C線における断面図でありローリング方向に駆動した場合の断面図である。
図43および図48に示すように、対をなすローリング駆動コイル302に通電することにより、1対のローリング駆動磁石405は、偶力の電磁力を受ける。このため、第3の可動部103は、光軸10を中心にローリング方向22Aまたは22Bに回転駆動される。図7の回転角度0の中立位置の状態から、ローリング駆動コイル303に所定の方向へ通電すると、図48に示すように、第3の可動部103は、矢印22A方向に駆動され、前述した所定の方向と逆向きの方向に通電すると、第3の可動部103は、矢印22B方向に駆動される。
したがって、ローリング駆動コイル303に流す電流の向きを変えることで、突起支持部201を介して第3の可動部103に支持されているカメラ部100を、ローリング方向22Aまたは22B方向へ任意に駆動することができる。
なお、本実施形態では、前述したようにローリング磁気ヨーク205のローリング駆動磁石405と対向する面が凸状の部分円柱側面形状を有しているため、図43に示す第3の可動部103の回転角度が0度の場合のローリング磁気ヨーク205とローリング駆動磁石405との磁気ギャップが、図48に示す第3の可動部103が矢印22A方向に回転した場合の磁気ギャップに比べ小さくなっている。このため、図43に示す第3の可動部103の回転角度が0度の場合の磁気吸引力が、図48に示す第3の可動部103が矢印22A方向に回転した場合に対して大きくなり、磁気吸引力による磁気バネを利用して、第3の可動部103を中立位置(回転角度が0度)に保持することができる。
次に可動ユニットの傾きや回転の検出について説明する。カメラ駆動装置155は、第3の可動部103に対するカメラ部100の2次元の傾斜角度を検出するための第1の検出部と、カメラ部100のレンズの光軸10回りの回転角度を検出するための第2の検出部とを備える。
まず第1の検出部の説明をする。カメラ部100のパンニング方向20およびチルティング方向21の傾斜角度を検出するため、カメラ駆動装置155は、第1の磁気センサー501と、第1の磁気センサー501を実装する回路基板502をさらに備える。
図37および図41に示すように、第1の磁気センサー501は、光軸10方向に1極に着磁された吸着用磁石404に対向するように、回路基板502を介して、第3の可動部103に取り付けられる。
第1の磁気センサー501の内部には、光軸10を中心にホール素子(図示せず)が、パンニング方向回転軸12およびチルティング方向回転軸11上にそれぞれ1対ずつ対称配置されている。第1の磁気センサー501は、可動ユニットのパンニング方向20およびチルティング方向21における傾斜動作によって生じる吸着用磁石404の磁力変化を2軸成分としてそれぞれ差動検出し、パンニング傾斜角度およびチルティング傾斜角度を算出することができる。
また、吸着用磁石404の第1の磁気センサー501と対向する面は、突起部202の球心202Aを中心とする球面の一部である凸状の部分球面形状を有し、±20度以上の大きな傾斜においても、磁石表面と第1の磁気センサー501との距離変化がなく、磁石の端部による急峻な磁気変化がない。このため、第1の磁気センサー501の出力が飽和することがなく、第1の可動部102の大きな傾斜角度を検出することができる。言い換えると、吸着用磁石404が球心202Aを中心とする凸状の部分球面形状を有することによって、磁気センサーの角度検出範囲の拡大を図ることができる。
このように、本実施形態によれば、吸着用磁石404が突起部202に磁気吸引力Fを付与する機能に加えて、傾斜角度を検出するための磁石としても機能し、構成部品点数の低減と装置の小型化を図ることができる。
次に第2の検出部を説明する。カメラ駆動装置155は、第3の可動部103に取り付けられた1対の回転検出用磁石403と、回転検出用磁石403に対向するように、ベース200に取り付けられたローリング方向22の回転角度を検出するための第2の磁気センサー503をさらに備える。
図37および図40に示すように、1対の回転検出用磁石403は、パンニング方向回転軸12またはチルティング方向回転軸11に対して45度をなし球心202Aに対して対称に配置されるように第3の可動部103に固定されている。
また、1対の回転検出用磁石403は、光軸10に直交する平面上において光軸10を中心とする円の円周方向に着磁され、球心202Aを通る方向にそれぞれ2極に分割(図37、図43)されている。1対の回転検出用磁石403において、2つの磁極はローリング方向22に対して互いに逆順に配置される。
1対の第2の磁気センサー503は、第3の可動部103のローリング方向22の回転動作によって生じる回転検出用磁石403の磁気変化を差動検出して、ローリング方向の回転角度を算出することできる。回転検出用磁石403は2極に分割着磁されているため、第3の可動部103のローリング方向22の回転動作によって、急峻な磁気変化が得られ、この磁気変化を差動検出することで、高感度な回転角度検出が可能となる。
本実施形態のカメラ駆動装置155は、第1の可動部102にパンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402を設けたムービングマグネット駆動方式を採用する。この構成では、一般的に第1の可動部102の重量が増大するという問題が考えられる。しかし、第1の可動部102に駆動用配線の懸架が不必要なこと、および、パンニング駆動コイル301およびチルティング駆動コイル302の発熱を、パンニング磁気ヨーク203、チルティング磁気ヨーク204、第3の可動部103および連結部210やカメラ駆動装置155以外の部品で冷却できるという大きな利点がある。
また、本実施形態のカメラ駆動装置155は、ローリング駆動についてもムービングマグネット駆動方式を採用している。このため、ローリング駆動コイル303の発熱を、ローリング磁気ヨーク205およびベース200やカメラ駆動装置155以外の部品で冷却できるという大きな利点がある。
また、本実施形態によれば、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22への駆動に関してそれぞれ独立した専用の駆動磁石と磁気回路を設けているため、駆動を併用する構成に比べて可動ユニットの駆動効率を向上させることができる。
なお、本実施形態では、パンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204のそれぞれの駆動磁石と対向する側面は、凹状の部分円柱側面形状を有しており、その断面形状は図46に示すように、それぞれの駆動磁石に対してほぼ平らである。しかし、これに限定されることなく、たとえば、図49に示すように、それぞれの駆動磁石と対向するパンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204の側面は、凸状の部分球面形状を有していてもよい。これにより、パンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204の中心部とそれぞれの駆動磁石との磁気ギャップD0を、磁気ヨーク端部との磁気ギャップD1との差をより大きくすることができるため、パンニング磁気ヨーク203およびチルティング磁気ヨーク204の中心部での磁気バネ効果をより高めて、第1の可動部102のパンニング方向、チルティング方向への保持力を高めることができる。
また、本実施形態では、パンニングおよびチルティング駆動磁石401、402のそれぞれの磁気ヨークと対向する面401A、402Aを、凸状の球面形状で構成しているが、これに限定されることなく、たとえば、前述するように、対向する磁気ヨークが凸状の部分円柱側面形状を有し、パンニング駆動磁石401およびチルティング駆動磁石402が凸状の部分円柱側面形状を有していてもよい。
また、本実施形態では、第2の駆動部であるローリング駆動部として、ローリング駆動磁石405と、ローリング駆動コイル303を用いた電磁力で駆動を行っている。しかし、これに限定されることなく、第2の駆動部は、たとえば、DCモータやステッピングモータなどの回転モータを含んでいてもよい。
また、本実施形態では、ローリング駆動部を、球心202Aの高さより下方に構成している。しかし、これに限定されることなく、光軸10方向から見た平面位置を、パンニング駆動部またはチルティング駆動部に対して45度をなすように配置していれば、球心202Aの上方で構成してもよい。
また、本実施形態では、ローリング駆動の検出手段として、回転検出用磁石403および第2の磁気センサー503による磁気変化を検出する構成を採用している。しかし、これに限定されることなく、たとえば、フォトインタラプタを使ったエンコーダやステッピングモータによる駆動ステップなどを用いてローリング方向の回転角度を検出してもよい。
このように、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、カメラ部のレンズの光軸上に、第3の可動部に支持された突起部に設けられた部分球面の球心と、第1の可動部102の円錐状の接触面の中心軸を配置し、第1および第2の可動部を、突起部を中心とし、かつ、包み込むように接合する構造を採用する。このため、第1および第2の可動部を重心で支持する構造が実現し、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、突起部と第1の可動部の接触面とによって構成されるピポッドにおいて、第1の可動部の回動角度に影響を受けにくい磁気吸引力によって、一定の垂直抗力を付加することができるため、回動角度による摩擦負荷変動を低減し、駆動周波数領域において良好な位相・ゲイン特性を実現できる。
また、従来、磁気吸引力による支持構造に特有の大きな課題であった振動・衝撃等の外乱等による可動ユニットの脱落を防止するため、分割された可動ユニットの一方に回動可能な所定の空隙を介して脱落防止規制面を設けている。このため装置の大型化を回避しながら確実に可動ユニットの脱落防止を実現できる。
さらに可動ユニットにおいて、脱落防止規制面と円錐状の接触面は、レンズの光軸に対し、対称に配置される。また、可動ユニットを支持する突起部の部分曲面の球面の球心は光軸上に配置される。このため、可動ユニットが回動する全範囲に対して最小面積で凹状の脱落防止規制面を設けることができ、装置の小型化を実現できる。
また、可動ユニットの脱落防止規制面に固定ユニットが当接するまで可動ユニットが固定ユニットから脱落した場合でも、磁気吸引力Fによって、固定ユニットの突起部と可動ユニットの接触面とが再び接触し、ピポッドを構成することができるように脱落防止規制面の位置が決定されている。このため、たとえ可動ユニットが瞬間的に脱落した場合においても即座に元の良好な支持状態に復帰できる極めて耐衝撃性に優れたカメラ駆動装置を提供できる。
また、パンニングおよびチルティング方向の駆動部は、光軸を中心とする円周状に配置された互いに直交する第1の可動部に固定された1対のパンニング駆動磁石と1対のチルティング駆動磁石と、それぞれの駆動磁石に対向するよう第3の可動部に配設された1対ずつのパンニング用およびチルティング磁気ヨークとそれぞれに巻回されたパンニングおよびチルティング駆動コイルとを含む。これらが配置される光軸方向の高さ位置は、突起部の中心の高さ位置にほぼ等しい。このため可動ユニットを、重心を中心として駆動することができ、駆動周波数領域において機械的共振を大幅に抑制することができる。
また、パンニング駆動磁石およびチルティング駆動磁石の磁気ヨークと対向する面が凸状の部分球面形状または部分円柱側面形状を有することにより、それぞれの駆動磁石に対向する磁気ヨーク中心部との磁気ギャップを小さくできる。このため、磁気バネ効果を利用し、第1および第2の可動部がローリング方向に回転するのを抑制しながら、2対の磁気ヨークに沿ってパンニング方向およびチルティング方向に回転させることができる。したがって、ローリング方向にも自由度がある球状の突起部によるピポッド支持を用いながら、実質的にパンニング方向およびチルティング方向の2つの駆動軸のみによる支持を実現できる。その結果、従来に比べ、省スペースで2つの駆動軸による支持を構成することができる。
また、第3の可動部に固定される突起支持部の光軸方向から見た投影領域を、パンニング方向またはチルティング方向と45度をなす一つの直線上に配し、突起支持部が、球状の突起部を中心とした対称形状の両持ちの梁形状を有することにより、パンニング方向およびチルティング方向の駆動部を設ける領域を大きくし、構成の自由度を高めるともに、第2の可動部の剛性を向上させることができ、第2の可動部の機械的共振を大幅に抑圧することができる。
また、1対のパンニング駆動コイルおよびチルティング駆動コイルは、それぞれ球心の高さ位置で2分割された略V字形状を有し、V字形状の谷部分を対向するように光軸を中心に対称に配置される。これにより、可動ユニットの傾斜角度および回転角度が大きくても、駆動磁石と磁気ヨークとから構成される磁気ギャップを小さくすることができる。このため、パンニング、チルティングおよびローリング方向の駆動効率を向上させることができる。また、パンニング磁気ヨークおよびチルティング磁気ヨークのそれぞれの駆動磁石に対向する側面が、突起部の球心を含み光軸に直交する平面上に中心をもつ凹状の部分球面形状または部分円柱側面形状を有することによって、駆動時の磁気吸引力変動をより抑制できる。
さらに、第1の可動部の傾斜角度が0度の場合に、パンニング磁気ヨークおよびチルティング磁気ヨークとそれぞれの駆動磁石との磁気ギャップとの磁気ギャップが最小となるように、パンニング磁気ヨークおよびチルティング磁気ヨークの凹状の部分球面または部分円柱側面を構成することにより、磁気吸引力による磁気バネで可動ユニットを中立位置に保持することができる。
また、ローリング駆動部は、ベースに回動支持された第3の可動部に設けられた1対のローリング駆動磁石と、ローリング駆動磁石に対向するようベースにそれぞれ配設されたローリング磁気ヨークと、ローリング磁気ヨークに巻回されたローリング駆動コイルとを含む。ローリング駆動部の光軸方向から見た平面位置は、パンニング駆動磁石またはチルティング駆動磁石に対して45度をなすように配置され、ローリング駆動部の光軸方向の高さ位置は、光軸に垂直な方向から見た投影中心が、光軸に垂直で球心を含む平面上にないように構成されている。したがって、パンニング駆動部またはチルティング駆動部とローリング駆動部との干渉をさけ、光軸方向の高さ領域を有効に活用して装置の低背化を図ることができる。また、ローリング駆動部と、パンニング駆動部およびチルティング駆動部との磁気回路の高さ位置が異なるため、磁気回路の干渉による駆動中のクロストークの発生を抑制することができる。
また、ローリング磁気ヨークの駆動磁石に対向する側面が凸状の部分円柱側面形状を有し、第3の可動部の回転角度が0度の場合に、磁気ヨークとローリング駆動磁石との磁気ギャップを最小にすることにより、磁気吸引力による磁気バネで可動ユニットをローリング方向の中立位置に保持することができる。
また、吸着用磁石の第1の磁気センサーと対向する面が突起部の球心を中心とする凸状の部分球面形状を有することによって、±20度以上の大きな傾斜においても、磁石表面と磁気センサーとの距離変化がなく、磁石の端部による急峻な磁気変化がしょうじない。このため、磁気センサーの出力が飽和することなく、可動部の大きな傾斜角度を検出することができる。言い換えると、吸着用磁石に突起部の球心を中心とする凸状の球面を構成することで、磁気センサーの角度検出範囲の拡大を図ることができる。
また、ピポット支持を維持するための吸着用磁石を、第2の可動部のパンニング方向およびチルティング方向の傾きを検出するために利用することができる。
したがってカメラ駆動装置を構成する部品点数を減らし、装置の小型化を実現できる。
また、搭載するカメラ部に応じてカウンターウエイトの重量を調整することにより、搭載するカメラ部の設計および搭載自由度が広がり、第1および第2の可動部を重心の位置で駆動することが可能となる。加えて、第1および第2の可動部中立位置で保持するために必要なオフセット電流を低減でき、可動ユニットの駆動効率を向上させ、消費電力の低減を図ることができる。
また、ローリング駆動部を別の支持系で構成することより、ローリング駆動が必要ない用途で利用する場合において、第3の可動部を機械的に固定するだけで装置の設計を変更することなく容易に転用でき、カメラ駆動装置の利用用途の拡大を図ることができる。
したがって、本実施形態のカメラ駆動装置によれば、パンニング方向およびチルティング方向に±20度以上の大きな角度で可動ユニットを傾斜させ、また、ローリング方向に±20度以上の大きな角度で可動ユニットを回転させることができる。また、50Hz程度までの広帯域の周波数領域で良好な振れ補正制御を実現できる。その結果、カメラ部の高速パンニング・チルティング・ローリング動作を実現するとともに、歩行撮影時の手振れで発生する撮影画像の像振れを補正することのできるカメラ駆動装置が実現する。また、小型で堅牢な脱落防止構造を備えるため、振動や落下衝撃等の外部からの衝撃に対する耐衝撃性の強いカメラ駆動装置が実現する。
(第6の実施形態)
本発明によるカメラユニットの実施形態を説明する。本実施形態のカメラユニット156は、第1から第5の実施形態のいずれかのカメラ駆動装置と制御部とを含み、歩行時の像振れを補正することができる。図50は、カメラユニット156の主要部を示す斜視図であり、図51はカメラユニット156のブロック図である。
図50および図51に示すように、カメラユニット156は、カメラ駆動装置151と、角速度センサー900、901、902と、演算処理部94と、駆動回路96p、96t、96rとを含む。本実施形態では、一例として第1の実施形態であるカメラ駆動装置151を用いているが、第2から第5の実施形態のカメラ駆動装置152から155のいずれを用いてもよい。
角速度センサー900、901、902は、カメラ駆動装置のベース200もしくはベース200を固定するカメラユニット本体(図示せず)に取り付けられている。各角速度センサー900、901、902は、図において破線で示す軸周りの角速度を検出する。具体的には、角速度センサー900、901、902は、それぞれ、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の角速度をそれぞれ検出する。なお、図50では3つの独立した角速度センサー900、901、902を示しているが、3軸周りの角速度を検出できる1つの角速度センサーを用いてもよい。また、角速度センサーは、直交する3軸周りの角速度を検出できば、3軸は、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22と一致している必要はない。角速度センサーが検出する角速度の軸が、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22と一致していない場合には、演算処理部94において、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の角速度に変換すればよい。
たとえば、撮影時の手振れによるパンニング方向20とチルティング方向21の振れ角は、それぞれ角速度センサー900および901によって検出される。また、歩行撮影時の歩行重心移動によって発生するローリング方向22の振れ角は角速度センサー902によって検出される。図51に示すように、角速度センサー900、901、902によって検出した振れ角に関する情報は、それぞれ、角速度信号80p、80t、80rとして出力される。
角速度信号80p、80t、80rは、演算処理部94において演算処理を行うのに適した信号に変換される。具体的には、角速度信号80p、80t、80rはアナログ回路91p、91t、91rに入力され、ノイズ成分やDCドリフト成分が除去される。ノイズ成分およびDCドリフト成分が除去された角速度信号81p、81t、81rは、増幅回路92p、92t、92rに入力され、それぞれ適切な出力値の角速度信号82p、82t、82rが出力される。その後、AD変換器93p、93t、93rにより、それぞれデジタル信号に変換され、デジタル化された角速度信号83p、83t、83rが演算処理部94に入力される。
演算処理部94は、角速度を手振れの角度に変換する積分処理を行い、パンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の振れ角を逐次算出する。また、3軸の振れ補正処理が行われる。演算処理部94で行われる3軸の振れ補正処理は、それぞれの角速度センサー900、901、902で検出された角速度信号83p、83t、83rに応じて角速度を抑制するようにカメラ部100を搭載した可動ユニットを駆動する開ループ制御である。演算処理部94は、カメラ駆動装置151の周波数応答特性と位相補償およびゲイン補正等を含めた最適なデジタルの振れ補正量として逐次目標回転角度信号84p、84t、84rを出力する。
目標回転角度信号84p、84t、84rはDA変換器95p、95t、95rによりアナログ化され、アナログの目標回転角度信号85p、85t、85rとして駆動回路96p、96t、96rに入力される。
一方、カメラ駆動装置151においては、カメラ部100を搭載した可動ユニットのベース200に対する回転角度を検出する第1および第2の磁気センサー501、503からパンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の回転角度信号86p、86t、86rが出力される。回転角度信号86p、86t、86rは、アナログ回路97p、97t、97rによってノイズ成分やDCドリフト成分が除去され、回転角度信号87p、87t、87rとなる。さらに増幅回路98p、98t、98rにより適切な出力値の回転角度信号88p、88t、88rが得られる。回転角度信号88p、88t、88rは、駆動回路96p、96t、96rに入力される。
駆動回路96p、96t、96rは、目標の角度信号85p、85t、85rに対して回転角度信号88p、88t、88rを帰還するフィードバック系で構成される。したがって、カメラユニット156に外部からの力が作用しない場合は、所定の回転角度位置となるようにカメラ部100を搭載した可動ユニットのパンニング方向20、チルティング方向21およびローリング方向22の角度を制御している。
目標の角度信号85p、85t、85rおよび回転角度信号88p、88t、88rに基づき、パンニング駆動コイル301、チルティング駆動コイル302、ローリング駆動コイル303を駆動する駆動信号が駆動回路96p、96t、96rから出力される。これによりカメラ駆動装置151において、角度位置のフィードバック制御が実行され、回転角度信号88p、88t、88rが目標回転角度信号85p、85t、85rに等しくなるようにカメラ部100を搭載した可動部102が駆動される。
この一連の駆動制御により、カメラ部100の振れ補正が実施され、歩行時においても良好な安定撮影が実現可能となる。
本実施形態では、角速度センサーの出力を積分した回転角度信号を主とした制御系を示した。しかし、AD変換器を介してカメラ駆動装置の第1および第2の磁気センサ501、503からの回転角度信号88p、88t、88rを演算処理部94に取り込み、微分演算処理を行うことにより、カメラ部100の回転角速信号を検出することも可能である。これにより、演算処理部94において、カメラ装置の角速度信号83p、83t、83rとカメラ部100の回転角度信号を用いた角速度フィードバック系をさらに構築することができ、より高い精度で手ぶれおよび歩行振れを抑制することができる。
本発明のカメラ駆動装置およびカメラユニットは、上記各実施形態で説明したように、従来の手振れ補正装置に比べて、より大きな角度でカメラ部を回転させることができる。このため、本発明のカメラ駆動装置およびカメラユニットは、画像処理等を用い、画像中で特定した被写体が、たとえば、画面の中央に位置するように被写体を追尾することのできるカメラ駆動装置を実現することもできる。
また、カメラ部をパンニング方向またはチルティング方向に回転させながら撮影を行い、撮影した静止画や動画を逐次合成することによって、静止画や動画の超広角撮影が可能なカメラ駆動装置を実現することができる。