JP5092474B2 - 放電器、像保持体ユニットおよび画像形成装置 - Google Patents
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Description
前記非接触放電型の帯電器として、下記の特許文献1〜3記載の技術が従来公知である。
特許文献2(特開2004−198909号公報)には、放電生成物による板状グリッド表面の錆の発生を防止するために、板状グリッド(123)のグリッド基材の表面に、グラファイトを含む導電性塗料スプレー法で均一に塗布して、導電層を形成する技術が記載されている。
被帯電体に対向して配置された放電電極部材と、
前記放電電極部材に対向して配置された対向電極部材と、
前記放電電極部材と前記対向電極部材との間に放電を発生させる放電電圧を印加する電源回路と、
を有し、前記対向電極部材の表面に炭素原子、または炭素原子と所望の他の原子あるいは他の複数原子を主成分として、炭素原子によるSP3構造を有する被覆材で被覆した層を成膜したことを特徴とする。
前記放電電極部材に対向する側の表面にのみ前記被覆材で被覆した層が成膜された前記対向電極部材、
を備えたことを特徴とする。
前記放電電極部材に対向する側の表面と、前記被帯電体に対向する裏面とに前記被膜材の層が成膜された前記対向電極部材を備え、
前記放電電極部材に対向する側の表面に被覆した前記被覆材の層厚は、裏面に被覆した前記被覆材の層厚に比較して厚く被覆したこと特徴とする。
前記被帯電体側が開放され且つ前記放電電極部材の周囲を囲む包囲電極部材と、前記包囲電極部材の前記被帯電体側の開放された部位に対応して配置された網状電極部材と、を有する前記対向電極部材、
を備えたことを特徴とする。
前記対向電極部材の内部を通過する気体流路に沿って気体を移送する気体移送装置、
を備えたことを特徴とする。
前記対向電極部材の表面を清掃する電極清掃部材、
を備えたことを特徴とする。
電圧が印加される通電部を有する前記対向電極部材と、
前記対向電極部材の表面に、窒素原子、クロム原子、チタン原子のいずれかまたは複数が炭素原子に添加され、且つ炭素原子によるSP3構造を有する前記被覆材と、
を備えたことを特徴とする。
画像を表面に保持して回転する被帯電体としての像保持体と、
請求項1ないし7のいずれかに記載の放電器により構成された帯電器と、
を備えたことを特徴とする。
画像を表面に保持して回転する被帯電物としての像保持体と、
請求項1ないし7のいずれかに記載の放電器により構成された帯電器と、
前記帯電器により帯電された像保持体表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体表面に形成された潜像を可視像に現像する現像器と、
前記像保持体表面の可視像を媒体に転写する転写装置と、
を備えたことを特徴とする。
被帯電体に対向して配置された放電電極部材と、
前記放電電極部材に対向して配置された対向電極部材と、
前記放電電極部材と前記対向電極部材との間に放電を発生させる放電電圧を印加する電源回路と、
を有し、前記対向電極部材に炭素原子、または炭素原子と所望の他の原子あるいは他の複数原子を主成分として、炭素原子によるSP3構造を有する被覆材で被覆した層を成膜すると共に、前記電源回路が印加した放電電圧が通電される通電部は前記被覆材で被覆しないことを特徴とする。
請求項2記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、放電生成物が発生する放電電極部材側の表面での放電生成物による酸化等を効率的に低減できる。
請求項3記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、耐磨耗性および耐酸化性のあるテトラヘデラルアモルファスカーボンの層に放電生成物が吸着等することを低減できる。
請求項4記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、網状電極部材により被帯電体が均一に帯電できる。
請求項6記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、機械的強度の高いテトラヘデラルアモルファスカーボンの表面層を清掃部材で清掃できると共に、清掃時に表面層の破損を低減でき、放電器を長寿命化できる。
請求項7記載の発明によれば、炭素以外の原子が添加されることで、対向電極部材の耐酸化性や導電性を使用条件に応じて調整することができ、対向電極部材に設けられた通電部における電気抵抗値を適正化することができる。
請求項9記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、放電生成物による帯電器の性能の低下を低減でき、像保持体表面の劣化や帯電不良に起因する白筋や像流れ等の画質低下を低減することができる。
請求項10記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、通電部における電気抵抗が高くなることを低減でき、放電電圧の印加を確実に行うことができる。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
図1において、画像形成装置Uは、操作部の一例としてのユーザインタフェースUI、画像情報入力装置の一例としてのイメージ入力装置U1、給紙装置U2、画像形成装置本体U3、および用紙処理装置U4を有している。
前記イメージ入力装置U1は、自動原稿搬送装置および画像読取装置の一例としてのイメージスキャナ等により構成されている。図1において、イメージ入力装置U1では、図示しない原稿を読取って画像情報に変換し、画像形成装置本体U3に入力する。
給紙装置U2は複数の給紙部の一例としての給紙トレイTR1〜TR4、前記各給紙トレイTR1〜TR4に収容された媒体の一例としての記録用紙Sを取り出して画像形成装置本体U3に搬送する給紙路SH1等を有している。
また、画像形成装置本体U3は、制御部C、および、前記制御部Cにより制御される潜像書込装置駆動回路の一例としてのレーザ駆動回路D、前記制御部Cにより制御される電源回路E等を有している。制御部Cにより作動を制御されるレーザ駆動回路Dは、前記イメージ入力装置U1から入力されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の画像情報に応じたレーザ駆動信号を所定のタイミングで、各色の潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。
前記各色の潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの下方には、像形成ユニット用引出部材U3bが左右一対の案内部材R1,R1により、画像形成装置本体U3の前方に引き出された引出位置と画像形成装置本体U3内部に装着された装着位置との間で移動可能に支持されている。
図1、図2において、黒の像保持体ユニットUKは、像保持体の一例としての感光体ドラムPk、帯電器CCk、および像保持体用清掃器の一例としてのクリーナCLkを有している。なお、実施例1では、前記クリーナCLkは、クリーナユニットにより構成されている。そして、他の色(Y,M,C)の像保持体ユニットUY,UM,UCも、感光体ドラムPy,Pm,Pc、放電器の一例としての帯電器CCy,CCm,CCc、クリーナCLy,CLm,CLcを有している。なお、実施例1では、使用頻度の高く表面の磨耗が多いK色の感光体ドラムPkは、他の色の感光体ドラムPy,Pm,Pcに比べて大径に構成され、高速回転対応および長寿命化がされている。
前記各像保持体ユニットUY,UM,UC,UKと現像ロールR0(図2参照)を有する現像器GY,GM,GC,GKとによりトナー像形成部材(UY+GY),(UM+GM),(UC+GC),(UK+GK)が構成されている。前記像形成ユニット用引出部材U3b(図1参照)には、前記像保持体ユニットUY,UM,UC,UKおよび現像器GY,GM,GC,GKが着脱可能に装着される。
なお、黒画像データのみの場合はK(黒)の感光体ドラムPkおよび現像器GKのみが使用され、黒のトナー像のみが形成される。
1次転写後、感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面の残留トナーは感光体ドラム用のクリーナCLy,CLm,CLc,CLkによりクリーニングされる。
前記ベルトモジュールBMは、前記中間転写ベルトBと、中間転写体支持部材の一例としてのベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)と、前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kとを有している。ベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)は、中間転写体駆動部材の一例としてのベルト駆動ロールRd、張力付与部材の一例としてのテンションロールRt、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRfおよび二次転写対向部材の一例としてのバックアップロールT2aを有する。そして、前記中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)により矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
前記コンタクトロールT2cには制御部Cにより制御される電源回路から所定のタイミングでトナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
なお、媒体案内部材SGrはレジロールRrとともに、画像形成装置本体U3に固定されている。
前記中間転写ベルトB上のトナー像は、前記2次転写領域Q4を通過する際に前記2次転写器T2により前記記録用紙Sに転写される。なお、フルカラー画像の場合は中間転写ベルトB表面に重ねて1次転写されたトナー像が一括して記録用紙Sに2次転写される。
前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1k、中間転写ベルトB、二次転写器T2、ベルトクリーナCLB等により、感光体ドラムPy〜Pk表面の画像を記録用紙Sに転写する転写装置(T1+B+T2+CLB)が構成されている。
前記記録用紙S上のトナー像は定着領域Q5を通過する際に定着装置Fにより加熱定着される。前記定着装置Fの下流側には搬送路切替部材GT1が設けられている。前記搬送路切替部材GT1は用紙搬送路SH2を搬送されて定着領域Q5で加熱定着された記録用紙Sを、用紙処理装置U4の用紙排出路SH3または用紙反転路SH4側のいずれかに選択的に切り替える。前記用紙排出路SH3に搬送された用紙Sは、用紙処理装置U4の用紙搬送路SH5に搬送される。
前記画像形成装置本体U3の用紙反転路SH4の下流端には、用紙循環路SH6および用紙反転路SH7が接続されており、その接続部にもマイラーゲートGT3が配置されている。前記切替ゲートGT1を通って用紙搬送路SH4に搬送された用紙は、前記マイラーゲートGT3を通過して前記用紙処理装置U4の用紙反転路SH7側に搬送される。両面印刷を行う場合には、用紙反転路SH4を搬送されてきた記録用紙Sは、前記マイラーゲートGT3をそのまま一旦通過して、用紙反転路SH7に搬送された後、逆方向に搬送、いわゆる、スイッチバックさせられると、マイラーゲートGT3により搬送方向が規制され、スイッチバックした記録用紙Sが用紙循環路SH6側に搬送される。前記用紙循環路SH6に搬送された記録用紙Sは前記給紙路SH1を通って前記転写領域Q4に再送される。
前記符号SH1〜SH7で示された要素により用紙搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,Ra,Rr,Rh,SGr,SG1,SG2,BH、GT1〜GT3で示された要素により用紙搬送装置SUが構成されている。
図3は本発明の実施例1の帯電器の斜視説明図である。
図4は本発明の実施例1の帯電器の要部断面説明図であり、図4Aは帯電器の右側の要部説明図、図4Bは帯電器の左側の要部説明図である。
図3,図4において、実施例1の帯電器CCy〜CCkは、前後方向に延び、感光体ドラムPr〜Pk側が開放されたコの字形の包囲電極部材の一例としてのシールド電極1を有する。前記シールド電極1は、上壁2と、上壁2の左右両側から下方に延びる左側壁3および右側壁4を有する。
前記上壁2の左側には、前後方向に延びる給気口2aが形成されている。前記上壁2の前端部には、ばね用爪部2bが形成され、後端部には、端部材用抜け止め孔2cが形成されている。図4Bにおいて、前記左側壁3の後端部には、対向電極端子3aが形成されており、画像形成装置Uの電源回路Eから所定の対向電極電圧が印加される。なお、図3では、装着用保護部材の一例としての後側カバー5が取り外された状態の帯電器CCy〜CCkが図示されている。
図3〜図5において、前記端部材6,8の間には、前記シールド電極1の下側の開口位置、すなわち、像保持体Py〜Pkの対向領域である帯電領域に網状電極部材12が支持されている。前記網状電極部材12は、中央の網部12aと、前記網部12aを囲む枠部12bと、前記枠部12bの前側に形成された前側被支持部12cと、枠部12bの後側に形成された後側被支持部12dとを有する。前記前側被支持部12cの前端には、前記網状電極張架用ばね7の電極用爪部7bに対応して形成された左右一対の爪引っ掛け孔12c1が形成されており、実施例1の爪引っ掛け孔12c1は通電部の機能も有している。前記後側被支持部12dには、前記網状電極一端支持部8eに装着される装着孔12d1が形成されている。したがって、実施例1の網状電極部材12は、網状電極一端支持部8eに装着孔12d1が固定され且つ網状電極張架用ばね7に装着されるため、網状電極張架用ばね7により、所定の張力で張架された状態で支持される。
図5において、実施例1の網状電極部材12は、ステンレスにより構成されており、その放電電極11に対向する面には、膜厚0.05[μm]のテトラヘデラルアモルファスカーボンによる表面層が成膜、すなわち、コーティングがされている。なお、以下、テトラヘデラルアモルファスカーボンは、簡略化してta−Cと記載する。ここで、前記網状電極部材12は、網部12a、枠部12bの内面にのみ、すなわち、放電電極部材11に対向する面に、ta−Cによる表面層が成膜されている。前記ta−Cは、膜厚により異なるが体積抵抗率が108[Ω・cm]〜1010[Ω・cm]程度の半導電性であり、導電体に比べて電気抵抗が少し高いため、網状電極部材12の全面ではなく、放電生成物による問題が顕著となる一部の面にのみ形成されている。すなわち、網状電極部材12に電源が供給される通電部の一例としての爪引っ掛け部12c1の部分の電気抵抗が高まることを抑えるため、前側被支持部12cには、ta−Cによる表面層は形成されていない。
前記シールド電極1および網状電極部材12の内側には、電極清掃部材17が収容されている。前記電極清掃部材17は、清掃部材本体18と、前記清掃部材本体18に固定支持された網状電極清掃体19と、清掃部材本体18に移動可能に支持された放電電極清掃体21とを有する。前記清掃部材本体18は、上部に前記給気口2aを介して上方に配置されて上壁2を挟み込む形状の上壁挟み部18aと、右側壁4と網状電極部材12の枠部12bとの間の隙間を通じて下方に延び、右側壁4を回り込んで前記回転軸16まで延びる移動伝達部18bとを有する。前記移動伝達部18bの先端には、前記回転軸16のねじ山16aにネジ嵌合するネジ嵌合部18cが形成されている。なお、図4において、清掃部材本体18には、上壁2との間に、摩擦抵抗を減らすための接触突起18dが形成されている。
前記位置規制部19cの下側に配置された前記放電電極清掃体21は、放電電極清掃体本体21aと、放電電極清掃体本体21aに支持され且つ放電電極11に接触して清掃する放電電極清掃部21bとを有する。実施例1の放電電極清掃部21bは、布状の材料により構成されている。前記放電電極清掃体本体21aは、図示しないばねにより、放電電極清掃部21bが放電電極11に押付けられる方向に付勢されており、前記放電電極清掃体本体21aが前記位置規制部19cにより位置が規制され、放電電極清掃部21bが放電電極11に所定の力で押し当てられている。
なお、実施例1では、電極清掃部材17が、図3に示す待機位置に移動した状態では、後側端部材8の放電清掃押付け解除部8fが、放電電極清掃体本体21aと位置規制部19cとの間に進入して、放電電極清掃部21bが放電電極11から離隔した状態に保持されると共に、電極清掃部材17が前方に移動することで、放電電極押付け解除部8fが放電電極清掃体本体21aと位置規制部19cとの間から離脱するように構成されている。このため、電極11,12の清掃動作が終了し、画像形成動作が行われる場合には、前記待機位置に移動することで放電電極11は所定の位置にセットされ、安定した放電が可能となると共に、清掃動作時には放電電極押付け解除部8fが離脱して放電電極清掃部21bが放電電極11に押し当てられて清掃される。
前記構成を備えた本発明の実施例1の画像形成装置Uでは、放電電極部材11と対向電極部材(1+12)とに電圧が印加されることで、電位差が発生すると、放電が発生し、感光体ドラムPy〜Pk表面が帯電される。実施例1では、前記網状電極部材12により電荷が一様に感光体ドラムPy〜Pkに供給され、一様に帯電される。
帯電器CCy〜CCkでの放電時に、帯電器CCy〜CCk内部には、オゾンO3や窒素酸化物NOx等の放電生成物が発生する。これら放電生成物がシールド電極1や網状電極部材12に付着するか、または放電生成物と前記網状電極部材12が反応し、金属酸化物、いわゆる、錆となる。前記酸化物付着または錆が発生すると、前記酸化物等が絶縁物であるため、帯電性の異常が発生する恐れがあり、特に網状電極部材12に錆が発生すると帯電を均一化する能力が低下するが、実施例1では、耐酸化性があり反応性が低いta−Cの表面層により、網状電極部材12の錆の発生が低減される。このとき、実施例1の帯電器CCy〜CCkには、給気口2aから空気が給気され、内部の空気が入れ替えられる際に、帯電器CCy〜CCk内部の放電生成物や、網状電極部材12に付着して反応していない放電生成物が空気と共に排出される。
以下、実施例1の構成に基づいて行った実験の結果を以下に示す。
(実験1)
実験1では、ta−Cの表面層を設けない従来の構成について、副走査方向の帯電不良に起因する筋状の画像欠陥の発生の有無を検証した。
実験は、先ず、ta−Cを設けない従来技術について、富士ゼロックス株式会社製のDC5000を使用して、ハーフトーン画像を印刷する実験を行った。実験は、比較例1が21℃10%RHの中温低湿環境のみで実験を行い、比較例2、3、4については、同一の機種で、場所と日時を変えて様々な環境下で実験を行った。なお、比較例2〜4の実験を行った環境は、28℃85%RHの高温高湿(以下、「A Zone」と記載)、22℃55%RHの中温中湿(以下、「B Zone」)、10℃15%RHの低温低湿(以下、「C Zone」)、21℃10%の中温低湿、(以下、「J Zone」)、であった。すなわち、比較例1〜4の実験は、各環境における実験データの数を増やすために行ったものと見なすこともできる。
前記比較例1〜5において、画像に発生した白筋、すなわち、筋状の画像欠陥について、目視で確認して、グレードを付与した。確認できない場合、すなわち、画質劣化がない場合にグレード0と評価し、白筋が目立つほど、すなわち、画質が悪くなるほど高いグレードとし、0.5刻みで評価を行いグレードが2.0以下を合格とし、グレード2.5以上を不合格とした。なお、仮の条件として、帯電器の寿命を200kPVに設定して実験を行った。実験結果を図6に示す。
図6Aにおいて、比較例1〜4の結果から、ta−Cの表面層を設けない従来技術の場合、A Zone、B Zone、C Zoneでは、白筋の画像欠陥が発生しなかったが、J Zoneでは、白筋の画像欠陥が発生し、印刷枚数が多くなるほど、悪化していくことが確認された。なお、このとき、白筋が発生した部分の感光体ドラムPy〜Pkの表面電位VHを測定すると、白筋が発生しなかった部分の表面電位に比べて20〜30V高いことが確認された。これは、放電時に網状電極部材12表面が放電生成物等による酸化や現像剤に含まれる外添剤の付着により絶縁化して、絶縁化した場所に対応する位置で表面電位VHが上昇ためと推定される。
また、比較例5の結果から、J Zoneのみでは、100kPV、すなわち、10万枚の印刷で不合格となることがわかると共に、白筋の画像欠陥が発生後にC Zoneに変更しても改善も悪化も見られないことが確認された。なお、環境をJ ZoneからA ZoneまたはB Zoneに変更する場合には、図6Aの比較例4の結果から、A ZoneやB Zoneに変更後、白筋が発生しなくなり、すなわちグレードが0となった。これらのことから、特に、J Zoneにおいて白筋の画像欠陥が発生しやすいことが確認された。
(実験2)
実験2では、前記実験1の結果から、白筋を改善する方法について検討した実験を行った。以下の比較例6〜11および実験例1では、前記実験1の場合と同様に、富士ゼロックス株式会社製のDC5000を使用して、ハーフトーン画像を印刷する実験を行った。
比較例6では、電極清掃部材17による清掃間隔、すなわち、クリーニング間隔を5kPVから3kPVとして電極部材1,11,12をこまめに清掃するようにしたが、J Zoneで120kPVの時点で、グレードが2.5となり、比較例1〜5に対して改善効果が見られなかった。
比較例7では、清掃ブラシ、すなわち網状電極清掃部19bのブラシの網状電極部材12への食い込み量を0.5mm大きくして清掃能力を高めたが、50kPVの時点で、グレードが2.0〜2.5となり、比較例1〜5に対して改善効果が見られなかった。
比較例9では、空気流出口31から給気される空気の量を変更せず、空気排出口32から排気される量を1/2としたが、100kPVの時点で、グレードが2.5となり、比較例1〜5に対して改善効果が見られなかった。
比較例10では、現像器GY〜GKの上流側に密閉部材、すなわち、シール部材を設けて、現像器GY〜GKから現像剤が流れ込むことを防止したが、50kPVの時点で、グレードが2.0となり、比較例1〜5に対して改善効果が見られなかった。但し、比較例10では、後側のみグレードは良化したが、前後方向、すなわち、走査方向の画像濃度の差が大きくなる問題が発生した。
実験例1では、網状電極部材12の放電電極部材11側の表面にta−Cの表面層を製麻櫛、防錆性を高めた。このとき、J Zoneで206kPV印刷してもグレードが0〜0.5であり、比較例1〜5に対して大きな改善効果が見られた。
実験3では、網状電極部材12に形成されたta−Cの表面層の厚みの適正値について検討するための実験を行った。実験は、ta−Cの層厚と、そのときの放電電極部材11に供給する電流値と感光体ドラムPy〜Pk表面の帯電電位VHとの関係、5kpv毎の電極清掃部材17による摺擦に対する表面層の機械的な強度、前記DC5000を使用して且つJ Zoneでハーフトーン画像の印刷を実行した場合の白筋の発生について実験を行った。実験例2では層厚を100Å=10nmとし、実験例3では500Å=50nmとし、実験例4では1000Å=0.1μmとし、実験例5では10000Å=1μmとした。図8Aに実験結果を示す。また、放電電極部材11に供給する電流値と感光体ドラムPy〜Pk表面の帯電電位VHとの関係については、実験例2〜5に加え、実験例6として、網状電極部材12の両面に500Å=50nmのta−C表面層を形成したものについても実験を行った。実験結果を図8Bに示す。
図8Aにおいて、実験例2〜4の実験結果から、導電体に比べて体積抵抗率が大きなta−Cの膜厚が100Å〜1000Åであれば、感光体ドラムPy〜Pk表面の帯電電位VHを、ta−Cの表面層がない比較例1の場合と同程度とすることができ、その他の部材について設計変更等することなく、そのまま組み込むことができることが確認された。また、網状電極清掃部19bにより摺擦に対する機械的な強度も高く、金メッキ等に比べて、表面層が剥離、破損等することもないことが確認された。さらに、J Zoneで、製品寿命である200kpv以上動作させても白筋が発生することが無いことも確認された。なお、実験例4については実機での実験を省略した。
図8A、図8Bにおいて、実験例6では、電気的な特性も実験例2〜4と同様の結果が得られることがわかった。また、放電電極部材11側の表面に放電生成物が付着しやすいので、両面にta−C層を形成しても、機械的な特性は、網状電極清掃部19bが上面側に配置されているため実験例3と同様の結果となり、実機での使用も同様の結果となった。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
実施例2の帯電器CCy〜CCkでは、網状電極部材12だけでなく、シールド電極1の内面にもta−Cの表面層を形成した以外は、実施例1の場合と同様に構成されている。
図9は感光体が低抵抗化する原理の説明図であり、図9Aは放電開始時の説明図、図9Bは放電継続中の状態の説明図、図9Cは放電終了後に窒素酸化物が放出される状態の説明図、図9Dは感光体が低抵抗化した状態の説明図である。
図9において、ta−Cの表面層が形成されていない従来の帯電器01のシールド電極02では、図9Aに示すように、放電電極03の放電によりにオゾンO3やNO,NO2,NO3等の窒素酸化物が発生する。このうちオゾンO3はNOと反応しやすく、NO2,NO3に変化しやすく、検出されにくい。図9Bにおいて、放電中、すなわち、画像形成動作中に生成されたNO,NO2,NO3は、シールド電極02や網状電極部材04に付着したり、濃度が上昇すると固体であるN2O5に変化して付着する。N2O5に変化すると、画像形成動作中はNO2,NO3の濃度が高いため、NO2,NO3に戻りにくい。
これに対し、前記構成を備えた実施例2の画像形成装置Uでは、付着、吸着された放電生成物がta−Cにより離れやすいため、空気の流れに伴って、ほとんどの放電生成物が放出、排気される。また、シールド電極1の内面に形成されたta−Cの表面層に、放電生成物が付着しても錆となることが低減され、実施例1と同様の作用を有する。
実験4では、ta−Cの表面層を成膜した場合と、成膜しない場合において、放出されるガスがどのように変化するかを測定した。
実験は、まず、帯電器に放電生成物を蓄積し、その後、実機に帯電器を取付けて窒素酸化物の濃度を測定した。帯電器への放電生成物蓄積条件は、帯電器を両端が開放された円筒状のガラス管内に入れ、乾燥空気をガラス管内の一方から、1リットル/分で入れ、もう一方より排出させるようにした。温湿度条件は24℃,3%RHの条件下、放電条件が−400μAで、20時間連続放電を行った。前記放電生成物蓄積条件下で、帯電器に放電生成物を蓄積させた後、J Zone環境下に設置した実機内に、通常配置の状態で帯電器を取り付けた。前記帯電器には、窒素酸化物測定用の管をつけ、150ミリリットルで吸引し、帯電器より放出される窒素酸化物を島津製作所製CLAD−1000で測定した。測定結果を図10に示す。
図10Aに示すように、実験例7では放電時にNOやNO2の濃度が上昇するが、速やかに排気されているため、放電終了後時間が経過しても濃度が高くならない。この結果、シールド電極1から再放出される窒素酸化物が少なくなり、感光体ドラムPy〜Pkが低抵抗化することを低減できる。これに対して、図10Bに示すように、比較例12では、時間の経過と共に、シールド電極1から窒素酸化物が放出されてNOの濃度が上昇していることが確認され、感光体ドラムPy〜Pkが低抵抗化されやすいことが確認された。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H09)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としての複写機に限定されず、プリンタ、FAX等の画像形成装置にも適用可能である。また、カラーの画像形成装置に限定されず、モノクロの画像形成装置にも適用可能である。さらに、タンデム型の画像形成装置に限定されず、ロータリ型の画像形成装置にも適用可能である。
(H03)前記実施例2において、網状電極部材12は省略することが可能である。
(H04)前記実施例において、像保持体としての感光体ドラムPy〜Pkの表面が、窒素酸化物による低抵抗化に耐性のある材料で構成されている場合には、実施例1の構成を採用することが望ましく、耐性の低い材料で構成されている場合には実施例2の構成を採用することが望ましいが、耐性のある材料で構成されている場合に実施例2の構成を採用することも可能である。
(H06)前記実施例において、空気の流路は実施例記載の構成に限定されず、任意の流路構成とすることも可能である。このとき、給気口2aの位置も流路に応じて変更することも可能である。また、待機時の空気の送風・排出の流量を上げることも可能である。
(H07)前記実施例において、帯電器CCy〜CCkは、像保持体ユニットとして画像形成装置Uに着脱可能に構成したが、この構成に限定されず、画像形成装置Uに固定支持する構成とすることも可能である。
(H09)前記実施例において、ta−Cのみにより構成された表面層を例示したが、帯電器の構成上、例えば、通電部と電極を兼用する場合、網状電極部材に対向電極端子3aのように給電が行われる通電部を設けた場合や、小型で対向電極の抵抗の影響がある場合などは、低抵抗化するために、若干耐酸化性能を落ちるものの、SP3比率を落とし、N2、Cr、Ti等をドープ(添加)して導電率や耐酸化性を調整し、炭素原子によるSP3構造を主構造としたta−C膜としたり、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)で成膜したり、使用条件及び目的に応じて、適宜変更しても差し支えない。なお、SP3構造の割合や、薄膜の厚さ、表面、裏面の両方に形成するか、いずれか一面のみに形成するかも、設計等に応じて変更可能である。
1+12…対向電極部材、
11…放電電極部材、
12…網状電極部材、
17…清掃部材、
CCy,CCm,CCc,CCk…放電器,帯電器、
E…電源回路、
GY,GM,GC,GK…現像器、
Py,Pm,Pc,Pk…被帯電体,像保持体、
ROSy,ROSm,ROSc,ROSk…潜像形成装置、
T1+B+T2+CLB…転写装置、
U…画像形成装置、
UY,UM,UC,UK…像保持体ユニット。
Claims (10)
- 被帯電体に対向して配置された放電電極部材と、
前記放電電極部材に対向して配置された対向電極部材と、
前記放電電極部材と前記対向電極部材との間に放電を発生させる放電電圧を印加する電源回路と、
を有し、前記対向電極部材の表面に炭素原子、または炭素原子と所望の他の原子あるいは他の複数原子を主成分として、炭素原子によるSP3構造を有する被覆材で被覆した層を成膜したことを特徴とする放電器。 - 前記放電電極部材に対向する側の表面にのみ前記被覆材で被覆した層が成膜された前記対向電極部材、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の放電器。 - 前記放電電極部材に対向する側の表面と、前記被帯電体に対向する裏面とに前記被膜材の層が成膜された前記対向電極部材を備え、
前記放電電極部材に対向する側の表面に被覆した前記被覆材の層厚は、裏面に被覆した前記被覆材の層厚に比較して厚く被覆したこと特徴とする請求項1に記載の放電器。 - 前記被帯電体側が開放され且つ前記放電電極部材の周囲を囲む包囲電極部材と、前記包囲電極部材の前記被帯電体側の開放された部位に対応して配置された網状電極部材と、を有する前記対向電極部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の放電器。 - 前記対向電極部材の内部を通過する気体流路に沿って気体を移送する気体移送装置、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の放電器。 - 前記対向電極部材の表面を清掃する電極清掃部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の放電器。 - 電圧が印加される通電部を有する前記対向電極部材と、
前記対向電極部材の表面に、窒素原子、クロム原子、チタン原子のいずれかまたは複数が炭素原子に添加され、且つ炭素原子によるSP3構造を有する前記被覆材と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の放電器。 - 画像を表面に保持して回転する被帯電体としての像保持体と、
請求項1ないし7のいずれかに記載の放電器により構成された帯電器と、
を備えたことを特徴とする像保持体ユニット。 - 画像を表面に保持して回転する被帯電物としての像保持体と、
請求項1ないし7のいずれかに記載の放電器により構成された帯電器と、
前記帯電器により帯電された像保持体表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
前記像保持体表面に形成された潜像を可視像に現像する現像器と、
前記像保持体表面の可視像を媒体に転写する転写装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。 - 被帯電体に対向して配置された放電電極部材と、
前記放電電極部材に対向して配置された対向電極部材と、
前記放電電極部材と前記対向電極部材との間に放電を発生させる放電電圧を印加する電源回路と、
を有し、前記対向電極部材に炭素原子、または炭素原子と所望の他の原子あるいは他の複数原子を主成分として、炭素原子によるSP3構造を有する被覆材で被覆した層を成膜すると共に、前記電源回路が印加した放電電圧が通電される通電部は前記被覆材で被覆しないことを特徴とする放電器。
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