JP4862414B2 - 車両用操舵制御装置 - Google Patents
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Description
運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部に操舵反力を付与する操舵反力アクチュエータと、
前記転舵部に転舵力を付与する転舵アクチュエータと、
前記操作部と前記転舵部とを機械的に断接するバックアップクラッチと、
前記バックアップクラッチの開放により前記操作部と前記転舵部を切り離し、前記操作部の操作状態に応じた転舵角となるように前記転舵アクチュエータを駆動する制御指令を出力すると共に、前記転舵部の転舵状態に応じた操舵反力を付与するように前記操舵反力アクチュエータを駆動する制御指令を出力するステアバイワイヤ制御手段と、
ステアバイワイヤ制御中、前記操作部の操作方向に対して前記転舵部の駆動方向が逆方向となった場合、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定するクラッチ締結判定手段と、
を備えたことを特徴とする。
すなわち、ステアバイワイヤ制御中、車速が高い場合や操舵の切り始め等において、操舵角に対する指令転舵角のステアリングギヤ比を機械的に結合されたときのステアリングギヤ比よりも小さくすることがあり、バックアップクラッチが開放状態であると、操作の変化方向と転舵アクチュエータの駆動方向は同じ方向になる。つまり、操作の変化方向と転舵アクチュエータの駆動方向が逆であるということは、操舵/転舵の双方が関係するバックアップクラッチに異常が発生していることになる。したがって、この関係を利用すれば、バックアップクラッチの誤締結判定を行うことができる。しかも、操作の変化方向と転舵アクチュエータの駆動方向が逆であることを利用するため、各々の変化方向が解ればよく、バックアップクラッチの状態検出等に長い時間をかけることが無く、誤締結を判定できる。
この結果、ステアバイワイヤ制御中、バックアップクラッチの誤締結を短時間にて判定することで、バックアップクラッチの誤締結が発生してもスムーズなハンドル操作を行うことができる。
[全体構成]
図1は、実施例1の車両用操舵制御装置を適用したステアバイワイヤ(SBW)システムの構成図である。
実施例1のSBWシステムは、ハンドル(操作部)1と、操舵反力モータ2(操舵反力アクチュエータ)と、操舵角センサ3と、バックアップクラッチ4と、バックアップケーブル5と、転舵モータ6(転舵アクチュエータ)と、転舵角センサ7と、舵取り機構8(転舵部)と、右前輪9a(操向輪)と、左前輪9b(操向輪)と、操舵反力コントローラ10(ステアバイワイヤ制御手段)と、転舵コントローラ11(ステアバイワイヤ制御手段)と、車速センサ12と、を備えている。
そして、実施例1のSBWシステムはソフト系として、前記バックアップクラッチ4の開放により前記ハンドル1と前記舵取り機構8を切り離し、前記ハンドル1の操作状態に応じた転舵角となるように前記転舵モータ6を駆動する制御指令を出力する転舵装置用コントローラ11と、前記舵取り機構8の転舵状態に応じた操舵反力を付与するように前記操舵反力モータ2を駆動する制御指令を出力する操舵反力装置用コントローラ10と、を備えている。
図2は、実施例1のSBW制御の制御系を示すブロック図である。
入力情報をもたらすセンサとしては、前記操舵反力モータ2のモータ軸に設けられた操舵反力モータ角検出手段としての操舵角センサ3と、車速検出手段としての車速センサ12と、前記転舵モータ6のモータ軸に設けられた転舵モータ角検出手段としての転舵角センサ7と、を備えている。
前記転舵コントローラ11では、指令転舵角算出手段により算出された指令転舵角θtaに対し、例えば、図3の転舵角制御ブロック図に示すように、予め与えておいた所望の特性に一致させるためのモデルマッチング補償器と、モデル化誤差を含む制御阻害要因を外乱として推定しキャンセルさせるためのロバスト補償器と、で構成されたロバストモデルマッチング手法を採用し、実転舵角θtを得るように転舵モータ6を駆動する。
前記バックアップクラッチ締結判定手段は、図4に示すフローチャートにしたがって、SBW制御中、バックアップクラッチ4が締結状態であるか否かの判定を行う。
図4は、実施例1の操舵反力コントローラ10及び転舵コントローラ11にて実行されるバックアップクラッチ締結判定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(クラッチ締結判定手段)。
ここで、操作変化方向算出処理は、例えば、今回取得した実操舵角θs(n)の値から前回取得した実操舵角θs(n-1)の値を差し引いて、その値の符号により操作の変化方向を算出する。
すなわち、ハンドル1と舵取り機構8とが連結状態になるような指令を出していると判定されたため、バックアップクラッチ4を意図的に締結していることになる。よって、バックアップクラッチ4は誤締結している可能性が無くなるので、誤締結判定回数Neのカウント値をクリアする。
ここで、転舵モータ6の駆動変化方向算出処理は、今回取得した転舵電流It(n)の値から前回取得した転舵電流It(n-1)の値を差し引いて、その値の符号により駆動の変化方向を算出する。
ここで、バックアップクラッチ4に締結指令を出した後は、操舵反力アクチュエータ3と転舵アクチュエータ5の一方を駆動するSBW制御からアシスト制御に切り替えても良いし、また、図外のワーニングランプを点灯させ、運転者にアシスト制御への切り替え等を警告してもよい。
[背景技術]
しかしながら、SBWシステムの一部に異常が認められてバックアップクラッチを締結するのではなく、バックアップクラッチが誤締結(意図的に締結していない)した場合、転舵側ではSBW制御を継続してしまう。
さらに、操舵角に対する指令転舵角のステアリングギヤ比が機械的に結合されたときのステアリングギヤ比よりも小さくなるようなSBW制御を行っている場合(車速が高い場合や、操舵の切り始め等)に誤締結をしてしまうと、誤締結をしたときの操舵角と実転舵角の比(機械的結合により決まる比)を、SBW制御での操舵角に対する指令転舵角の比により決まる転舵角に戻すように転舵モータを駆動することになる。
このため、バックアップクラッチが誤締結されている状態ではその角度から切り増し、または、切り戻しと、その角度に戻すように、トルクが発生することになる。つまり、この位置からハンドル操作し難い状態になってしまう。
この状態になると転舵側は、その位置を保持しようとするため、駆動力を発生し、その駆動力は、操舵する方向と逆になる。そのため、運転者がこの状態から操舵を行うための操舵力は、その角度からの切り増し量、または、切り戻し量が大きいほど大きくなり、又時間が長いほど大きくなる。
これに対し、実施例1の車両用操舵制御装置では、操舵角に対する指令転舵角のステアリングギヤ比が機械的に結合されたときのステアリングギヤ比よりも小さくなるようなSBW制御を行っている場合、クラッチ誤締結であると操作方向と転舵の駆動方向とが逆方向になる点に着目し、SBW制御中、バックアップクラッチ4の誤締結を短時間にて判定することができるようにした。
そして、瞬間的に操作変化方向と転舵モータ6の駆動変化方向とが同方向であると判定されると、ステップS106→ステップS108へと進み、誤締結判定回数Neがカウントダウンされるものの、操作変化方向と転舵モータ6の駆動変化方向とが逆であるとの判定が継続し、ステップS109における、カウントされた誤締結判定回数Neが所定値Nej(例えば、10回程度)以上という条件が成立すると、ステップS110へ進み、バックアップクラッチ4が誤締結していると判定し、誤締結判定回数Neのカウント値をクリアし、次のステップS111では、バックアップクラッチ4に締結指令が出される。
操舵角θsに対する指令転舵角θtaのステアリングギヤ比(=θta/θs)が機械的連結時のステアリングギヤ比よりも小さい場合において、図5に誤締結してさらに切り増した時の各舵角と転舵電流の関係を示し、図6に誤締結して切り戻した時の各舵角と転舵電流の関係を示す。
図5及び図6に示す何れの場合にも、バックアップクラッチ4が誤締結を起こすと、操作の変化方向と転舵電流の変化方向とが逆になることが言える。
しかも、操作の変化方向と転舵モータ6の駆動方向が逆であることを利用するため、各々の変化方向が解ればよく、バックアップクラッチ4の状態検出等に長い時間をかけることが無く、誤締結を判定できる。
図7においては、指令転舵角と実転舵角の偏差を無くそうと転舵電流が積算され、増加してゆくが(転舵制御に積分要素がある場合)、指令転舵角と実転舵角の関係は、保舵後、一定値を保つ関係となる。また、図8においては、指令転舵角と実転舵角の偏差がない状態で保舵しているため、転舵電流はほとんど増減しないし、指令転舵角と実転舵角の関係は、保舵後、一定値を保つ関係となる。
よって、バックアップクラッチ4の誤締結が発生した後、保舵している状態では、操作の変化方向が出ないことで、バックアップクラッチ4の誤締結判定は行われないものの、誤締結状態のままでも保舵を妨げることにはならない。
実施例1の車両用操舵制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
ちなみに、実施例1の発明により、誤締結を素早く検知し、アシスト制御等に制御を遷移させることで、10N程度の小さな操作力変化だけで操舵することが可能になる。
なお、システム構成については、図1〜図3に示した実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
図9は、実施例2の操舵反力コントローラ10及び転舵コントローラ11にて実行されるステアリングギヤ比変更処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(ステアリングギヤ比変更手段)。
ここで、転舵モータ6の駆動力Ftの所定値Ftjは、通常の転舵に必要な駆動力よりも大きい値に設定される。
[ステアリングギヤ比変更作用]
SBW制御中であって、転舵モータ6の駆動力Ftが、通常の転舵に必要な駆動力よりも大きい時には、図9のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS203→ステップS204→ステップS206へと進む。すなわち、ステップS203では、転舵モータ6の駆動力Ftが所定値Ftj以上であると判定され、次のステップS204では、駆動力判定回数Nfをカウントアップされるが、次のステップS206では、カウントアップされた駆動力判定回数Nfが、所定値Nfj(例えば、5回程度)未満であることで、ステップS201へ戻る。
そして、瞬間的に駆動力Ftが所定値Ftj未満であると判定されると、ステップS203→ステップS205へと進み、駆動力判定回数Nfがカウントダウンされるものの、駆動力Ftが所定値Ftj以上であるとの判定が継続し、ステップS206における、カウントされた駆動力判定回数Nfが所定値Nfj(例えば、5回程度)以上という条件が成立すると、ステップS207へ進み、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grが、1よりも小さな値に決定される。
そして、ステアリングギヤ比Grを1よりも小さな値に設定した後、図4に示すフローチャートにしたがって、バックアップクラッチ4の誤締結判定処理が実行される。
しかし、バックアップクラッチ4が誤締結している時の操向輪の転舵負荷は、操向輪である左右前輪9a,9bが路面から受ける路面抵抗力と、ハンドル1側からバックアップクラッチ4を介して入力される転舵抵抗力(運転者による操舵力またはモータによる操舵反力)と、の和に相当し、この路面抵抗力と転舵抵抗力との和に対抗できる駆動力を転舵アクチュエータに付与する必要があり、正常時における転舵に必要な駆動力よりも大きな駆動力となってしまう。この点は、図7に示すように、誤締結して保舵したときに転舵電流が上昇特性を示すことからも明かである。
よって、転舵モータ6の駆動力Ftが所定値Ftj(通常の転舵に必要な駆動力よりも大きい値)以上であるという判定ロジックにより、バックアップクラッチ4の誤締結可能性が大であることを判定することができる。
また、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grを1よりも大きな値に設定したまま、つまり、クイック制御を継続したときのハンドル1の取られを防止することができる。
さらに、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grを1よりも小さな値に設定することで、指令転舵角θtaの変位分を小さくできるため、転舵モータ6の駆動力を抑える(負荷を小さくする)ことができ、誤締結したときの操舵力の増加を抑えることができる。
実施例2の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(3)に加え、下記に列挙する効果が得られる。
なお、システム構成については、図1〜図3に示した実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
図10は、実施例3の操舵反力コントローラ10及び転舵コントローラ11にて実行されるステアリングギヤ比変更処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(ステアリングギヤ比変更手段)。なお、ステップS301、ステップS307〜ステップS310は、図9に示すフローチャートのステップS201、ステップS207〜ステップS210にそれぞれ相当するステップであるため、説明を省略する。
ここで、転舵角偏差Δθtの所定値Δθtjは、通常の転舵モータ6のモータ制御応答性が想定される値よりも大きい値に設定される。
[ステアリングギヤ比変更作用]
SBW制御中であって、実操舵角θに応じた指令転舵角θtaから推定される推定転舵角θt^に対する実転舵角θtの転舵角偏差Δθtが、通常の転舵モータ6のモータ制御応答性が想定される値よりも大きい時には、図10のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS304→ステップS306へと進む。すなわち、ステップS303では、転舵角偏差Δθtが所定値Δθtj以上であると判定され、次のステップS304では、偏差判定回数Naをカウントアップされるが、次のステップS306では、カウントアップされた偏差判定回数Naが、所定値Naj(例えば、5回程度)未満であることで、ステップS301へ戻る。
そして、瞬間的に転舵角偏差Δθtが所定値Δθtj未満であると判定されると、ステップS303→ステップS305へと進み、偏差判定回数Naがカウントダウンされるものの、転舵角偏差Δθtが所定値Δθtj以上であるとの判定が継続し、ステップS306における、カウントされた偏差判定回数Naが所定値Naj(例えば、5回程度)以上という条件が成立すると、ステップS307へ進み、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grが、1よりも小さな値に決定される。
そして、ステアリングギヤ比Grを1よりも小さな値に設定した後、図4に示すフローチャートにしたがって、バックアップクラッチ4の誤締結判定処理が実行される。
しかし、バックアップクラッチ4が誤締結している時の転舵制御においては、実操舵角θに応じて指令転舵角θtaが計算されると、指令転舵角θtaを得る駆動指令が転舵モータ6に出力されることでのモータ駆動力と、ハンドル1側からバックアップクラッチ4を介して入力される転舵方向の力と、を合わせた力により、操向輪である左右前輪9a,9bが転舵し、実転舵角θtが発生する。したがって、バックアップクラッチ4が誤締結すると、指令転舵角θtaと実転舵角θtとの関係は、モータ制御応答遅れ分により追従する関係が崩れ、転舵モータ6のモータ制御応答性から想定される応答遅れ分より大きな転舵角偏差を持つことになる。この点は、図5及び図6に示すように、誤締結してさらに切り増した時、あるいは、切り戻した時の実転舵角と指令転舵角との偏差が時間の経過にしたがって徐々に拡大する特性を示すことからも明かである。
よって、転舵角偏差Δθtが所定値Δθtj(転舵モータ6のモータ制御応答性が想定される値よりも大きい値)以上であるという判定ロジックにより、バックアップクラッチ4の誤締結可能性が大であることを判定することができる。
また、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grを1よりも大きな値に設定したまま、つまり、クイック制御を継続したときのハンドル1の取られを防止することができる。
さらに、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grを1よりも小さな値に設定することで、指令転舵角θtaの変位分を小さくできるため、転舵モータ6の駆動力を抑える(負荷を小さくする)ことができる。
実施例3の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の(1),(2),(3)及び実施例2の(4)の効果に加え、下記の効果が得られる。
なお、システム構成については、図1〜図3に示した実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
図11は、実施例4の操舵反力コントローラ10及び転舵コントローラ11にて実行されるバックアップクラッチ締結判定処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(クラッチ締結判定手段)。なお、ステップS401〜ステップS406は、図4のフローチャートのステップS101〜ステップS106のそれぞれのステップに対応するので、説明を省略する。
すなわち、転舵に必要な電流が小さいと思われる状況では、この転舵電流しきい値Ithを小さく設定することで、判定時間を短くすることが可能である。この転舵電流しきい値Ithは、車速、実転舵角等の車両状態量から車両モデルに基づいて、セルフアライニングトルクを算出し、想定される電流値から設定する。この場合、簡易的に、車速、実転舵角の組み合わせで予め設定しても良い。
例えば、以下のような状況での転舵電流しきい値Ithの決め方が挙げられる。
(a) 図12に示すように、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grが大きいほど(ただし、操作部と転舵部を直結したステアリングギヤ比よりも小さな値とする。)、転舵電流しきい値Ithを小さな値に設定する。
(b) 図13に示すように、実操舵角θsから操舵角速度θsp(=dθs/dt)を算出し、操舵角速度θspが低いほど、転舵電流しきい値Ithを小さな値に設定する。
(c) 図14に示すように、路面摩擦係数μeが低いほど、転舵電流しきい値Ithを小さな値に設定する。
つまり、車両に運動を発生させる力は、タイヤと路面との摩擦力から発生するので、路面μが変わると横力も変化し、セルフアライニングトルクも変化するため、同じ車速で同じ舵角を切るのに必要な電流も変化する。
また、ハンドル切り戻し時には、転舵側において切り増し方向に偏差が出るため、切り増し方向に駆動されるので、電流が大き目になる。逆に、ハンドル切り増し時には、転舵側において切り戻し方向に偏差が出るため、切り戻し方向に駆動されるので、電流が小さ目になる。よって、転舵電流しきい値Ithを、ハンドル切り戻し時に比べ、切り増し時に小さく設定する。
ここで、バックアップクラッチ4に締結指令を出した後は、操舵反力アクチュエータ3と転舵アクチュエータ5の一方を駆動するSBW制御からアシスト制御に切り替えても良いし、また、図外のワーニングランプを点灯させ、運転者にアシスト制御への切り替え等を警告してもよい。
[バックアップクラッチ誤締結判定作用]
実施例4の車両用操舵制御装置では、操舵角θsに対する指令転舵角θtaの比であるステアリングギヤ比Grが機械的に結合されたときのステアリングギヤ比Grよりも小さいSBW制御中、あるいは、小さく設定されたSBW制御中であって、バックアップクラッチ4が誤締結した場合、図11のフローチャートにおいて、ステップS401→ステップS402→ステップS403→ステップS405→ステップS406→ステップS407→ステップS408→ステップS409→ステップS410→ステップS412へと進む。すなわち、ステップS406では、操作変化方向と転舵モータ6の駆動変化方向とが逆であると判定され、ステップS409では、転舵電流Itが転舵電流しきい値Ith以上であると判定され、ステップS410では、電流判定回数Niがカウントアップされ、ステップS412では、カウントされた電流判定回数Niが、所定値Nij(例えば、5回程度)未満であることで、ステップS401へ戻る。
そして、瞬間的に転舵電流Itが転舵電流しきい値Ith未満であると判定されると、ステップS409→ステップS411へと進み、電流判定回数Niがカウントダウンされるものの、転舵電流Itが転舵電流しきい値Ith以上であるとの判定が継続し、ステップS412における、カウントされた電流判定回数Niが所定値Nij(例えば、5回程度)以上という条件が成立すると、ステップS413へ進み、バックアップクラッチ4が誤締結していると判定し、電流判定回数Niのカウント値をクリアし、次のステップS414では、バックアップクラッチ4に締結指令が出される。
つまり、転舵側に流れる電流により、操作方向とは逆の駆動方向が決まるので、転舵電流Itを利用することにより、より早いタイミングでバックアップクラッチ4の誤締結判定を行うことが可能となる。
加えて、転舵電流Itは、通常時のSBW制御で使用する電流値であるため、バックアップクラッチ4の誤締結判定の際、他のセンサを用いる必要もない。
実施例4の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1〜実施例3の効果に加え、下記に列挙する効果が得られる。
2 操舵反力モータ(操舵反力アクチュエータ)
3 操舵角センサ
4 バックアップクラッチ
5 バックアップケーブル
6 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
7 転舵角センサ
8 舵取り機構(転舵部)
9a 右前輪(操向輪)
9b 左前輪(操向輪)
10 操舵反力コントローラ(ステアバイワイヤ制御手段)
11 転舵コントローラ(ステアバイワイヤ制御手段)
12 車速センサ
Claims (11)
- 運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部に操舵反力を付与する操舵反力アクチュエータと、
前記転舵部に転舵力を付与する転舵アクチュエータと、
前記操作部と前記転舵部とを機械的に断接するバックアップクラッチと、
前記バックアップクラッチの開放により前記操作部と前記転舵部を切り離し、前記操作部の操作状態に応じた転舵角となるように前記転舵アクチュエータを駆動する制御指令を出力すると共に、前記転舵部の転舵状態に応じた操舵反力を付与するように前記操舵反力アクチュエータを駆動する制御指令を出力するステアバイワイヤ制御手段と、
ステアバイワイヤ制御中、前記操作部の操作方向に対して前記転舵部の駆動方向が逆方向となった場合、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定するクラッチ締結判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項1に記載された車両用操舵制御装置において、
前記クラッチ締結判定手段は、前記バックアップクラッチに対し締結解除指令を出力しているステアバイワイヤ制御中、前記操作部の操作方向に対して前記転舵部の駆動方向が逆方向と判定されると誤締結判定回数をカウントアップし、前記操作部の操作方向に対して前記転舵部の駆動方向が逆方向でないと判定されると誤締結判定回数をカウントダウンし、カウントアップされたときの誤締結判定回数が所定値以上となった場合、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載された車両用操舵制御装置において、
前記クラッチ締結判定手段は、ステアバイワイヤ制御中、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定した場合、前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、
ステアバイワイヤ制御中、前記バックアップクラッチが誤締結をしている可能性がある場合、前記操作部の操作量に対する前記転舵部の転舵量の比であるステアリングギヤ比を、前記操作部と前記転舵部とが機械的に連結されたときのステアリングギヤ比より小さく設定するステアリングギヤ比変更手段を設け、
前記クラッチ締結判定手段は、前記ステアリングギヤ比変更手段によりステアリングギヤ比が変更された場合、前記バックアップクラッチが締結状態であるか否かを判定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項4に記載された車両用操舵制御装置において、
前記ステアリングギヤ比変更手段は、前記転舵アクチュエータの駆動力値が所定値以上のとき、前記操作部の操作量に対する前記転舵部の転舵量の比であるステアリングギヤ比を、前記操作部と前記転舵部とが機械的に連結されたときのステアリングギヤ比より小さく設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項4または請求項5に記載された車両用操舵制御装置において、
前記ステアリングギヤ比変更手段は、前記操作部の操作量に応じた指令転舵角から推定される推定転舵角に対する実転舵角の偏差が所定角度以上のとき、前記操作部の操作量に対する前記転舵部の転舵量の比であるステアリングギヤ比を、前記操作部と前記転舵部とが機械的に連結されたときのステアリングギヤ比より小さく設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項1乃至6の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、
前記転舵アクチュエータは、転舵モータであり、
前記クラッチ締結判定手段は、ステアバイワイヤ制御中、前記操作部の操作方向に対して前記転舵部の駆動方向が逆方向となった場合で、且つ、前記転舵モータへのモータ電流値が転舵電流しきい値以上であるとき、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項7に記載された車両用操舵制御装置において、
前記クラッチ締結判定手段は、前記操作部の操作量に対する前記転舵部の転舵量の比であるステアリングギヤ比が大きいほど、前記転舵電流しきい値を小さな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項7または請求項8に記載された車両用操舵制御装置において、
前記クラッチ締結判定手段は、前記操作部の操作速度が低いほど、前記転舵電流しきい値を小さな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項7乃至9の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、
前記クラッチ締結判定手段は、路面摩擦係数が低いほど、前記転舵電流しきい値を小さな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部に操舵反力を付与する操舵反力アクチュエータと、
前記転舵部に転舵力を付与する転舵アクチュエータと、
前記操作部と前記転舵部とを機械的に断接するバックアップクラッチと、を備え、
前記バックアップクラッチの開放により前記操作部と前記転舵部を切り離し、前記操作部の操作状態に応じた転舵角となるように前記転舵アクチュエータを駆動する制御指令を出力すると共に、前記転舵部の転舵状態に応じた操舵反力を付与するように前記操舵反力アクチュエータを駆動する制御指令を出力するステアバイワイヤ制御を実行する車両用操舵制御装置において、
前記ステアバイワイヤ制御中、前記操作部の操作方向に対して前記転舵部の駆動方向が逆方向となった場合、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定することを特徴とする車両用操舵制御装置。
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