《第1の実施の形態》
図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置を搭載する車両の構成図である。図3は、アクセルペダル周辺の構成を示す図である。
まず、車両用運転操作補助装置の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを走査する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離及び存在方向はリスク度算出部50へ出力される。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。車速センサ20は、車輪の回転数などから自車両の走行車速を検出し、その検出信号をリスク度計算部30に出力する。
リスク度計算部30は、レーザレーダ10および車速センサ20から入力される信号に基づいて、自車両の周囲環境によるリスク度RPを算出する。リスク度計算部30は、算出したリスク度RPを反力制御装置80に出力し、リスク度RPに応じたアクセルペダル反力Fを発生させる。リスク度RPの算出については後述する。また、リスク度計算部30は、算出したリスク度RPを減速度計算部35へ出力する。
図3に示すように、アクセルペダル50にはリンク機構を介してサーボモータ60およびアクセルペダルストローク量検知部70が接続されている。アクセルペダルストローク量検知部70は、例えばストロークセンサを有し、リンク機構を介してサーボモータ60の回転角に変換されたアクセルペダル50のストローク量Sを検出する。アクセルペダルストローク量検知部70は、検出したストローク量Sを減速度計算部35および反力制御装置80へそれぞれ出力する。反力制御装置80は、リスク度計算部30で算出されたリスク度RPに応じてアクセルペダル反力増加量ΔFを算出する。図4に、リスク度RPに対するアクセルペダル反力増加量ΔFの変化特性の一例を示す。反力制御装置80は、図4に示すような特性に従って反力増加量ΔFを算出し、ストローク量Sに応じてアクセルペダル50に発生させるアクセルペダル反力Fを算出する。そして、反力制御装置80は、算出したアクセルペダル反力Fに応じてサーボモータ60で発生させるトルクと回転角とを制御し、運転者がアクセルペダル50を操作する際に発生する操作反力を任意に制御する。
減速度計算部35は、リスク度計算部30から入力されるリスク度RPと、アクセルペダルストローク量検知部70から入力されるストローク量Sとに基づいて、運転者に体感させる減速度ΔGを算出する。減速度計算部35は、算出した減速度ΔGを車両に発生させるようにエンジン制御コントローラ40に指令を出力する。エンジン制御コントローラ40は、減速度計算部35から入力される指令に応じてブレーキアクチュエータ41およびスロットルアクチュエータ42を制御して車両に制動力を発生させる。
次に第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を説明する。
リスク度計算部30は、先行車両までの車間距離D、相対速度Vr、自車両の走行車速Vfおよび先行車の車速Vaといった走行状態を認識し、走行状態に基づいて自車両の周囲環境によるリスク度RPを算出する。リスク度RPは、例えば(式1)に示す余裕時間TTCの関数として表すことができる。
TTC=D/Vr (式1)
余裕時間TTCは、先行車に対する自車両の現在の接近度合を示す物理量であり、現在の走行状況、すなわち自車速Vfおよび先行車速Vaが継続した場合に、何秒後に車間距離Dがゼロとなり自車両が先行車に追いつくかを示している。リスク度RPは、例えば以下の(式2)に示すような余裕時間TTCの逆数を用いる。
RP=1/TTC (式2)
(式2)は、自車両と先行車との余裕時間TTCが小さくなり接近度合が大きくなるほどリスク度RPが大きくなることを示している。
反力制御装置80は、図4に示すような特性に従って、リスク度RPに応じたペダル反力増加量ΔFを算出する。図4に示すように、所定の最小値RPminから所定の最大値RPminの間でリスク度RPが大きくなるほど、アクセルペダル反力増加量ΔFが指数関数的に大きくなるように設定する。これは以下の(式3)で表される。
ΔF=k・RPn (式3)
(式3)に示すように、アクセルペダル反力増加量ΔFは指数関数として表され、リスク度RPの最小値RPminから最大値RPmaxにかけて反力増加量ΔFを連続的に設定することができる。また、指数関数の定数k、nをそれぞれ適切に定義することにより、物理量である客観的なリスク度RPを、運転者が感覚として感じるアクセルペダル反力Fに適切に変換することができる。これにより、アクセルペダル反力Fの増加によって運転者にリスク度RPの変化を連続的に知らせることが可能となり、走行状況を効果的に運転者に知らせることができる。なお、定数k、nはそれぞれ車種等によって異なり、ドライブシミュレータ等による実地試験によって取得される結果から、リスク度RPが実際に人間が感じる感覚に即した値としてアクセルペダル反力Fに変換されるように設定する。
なお、図4に示すように、リスク度RPが大きくなるほど反力増加量ΔFは指数関数的に増加し、リスク度RPが最大値RPmaxとなると最大値ΔFmaxとなる。リスク度RPが最大値RPmaxを超えると反力増加量ΔFは上限値ΔFmmまで一気に増加し、その後上限値ΔFmmに固定される。反力増加量ΔFを最大値ΔFmmまで一気に増加させることにより、運転者はアクセルペダル50を開放するように促される。また、リスク度RPの最小値RPmin以下ではアクセルペダル反力Fを増加させないようにし、リスク度RPが非常に小さい場合に運転者に煩わしさを与えないようにする。リスク度RPの最小値RPminおよび最大値RPmaxは予め適切な値に設定する。
反力制御装置80は、算出した反力増加量ΔFを、アクセルペダル反力制御を行わない場合の通常のアクセルペダル反力特性に加算してアクセルペダル50に実際に発生させるアクセルペダル反力Fを算出する。そして、算出したアクセルペダル反力Fを発生させるようにサーボモータ60を制御する。なお、通常のアクセルペダル反力特性は、例えばストローク量Sが大きくなるほどペダル反力Fがリニアに増加するように設定する。通常のアクセルペダル反力特性は、例えばアクセルペダル50の回転中心に設けられたねじりバネ(不図示)のバネ力によって実現することができる。
本発明では、上述したようにリスク度RPに応じてアクセルペダル反力Fを増加させるとともに、運転者に減速度ΔGを体感させるように車両に制動力を発生させる。これにより自車速Vfが減少し、減速度ΔGを発生させない場合に比べて先行車との車間距離Dが広がり、リスク度RPの増加を抑制することができる。以下に、減速度計算部35による減速度ΔGの算出について説明する。
図5(a)にリスク度RPに対する減速度ΔGの特性、図5(b)にストローク量Sに対する減速度ΔGの特性の一例をそれぞれ示す。図5(a)に示すように、減速度ΔGは、リスク度RPの最小値RPminから最大値RPmaxの範囲でリスク度RPが大きくなるほど指数関数的に増加する。これは以下の(式4)で表される。
ΔG=k1・RPn1 (式4)
ここで、k1,n1は定数であり、ドライブシミュレータ等による実地試験の結果から最適な値に設定される。なお、リスク度RPが最大値RPmaxを超えると、減速度ΔGは最大値ΔGmaxに固定される。また、図5(b)に示すように、減速度ΔGはストローク量Sに対しては変化しない。
減速度計算部35は、ストローク量Sによらず、リスク度RPのみに応じた減速度ΔGを(式4)を用いて算出し、エンジン制御コントローラ40に減速度ΔGを発生するような指令を出力する。エンジンコントローラ40は、入力される指令に応じてブレーキアクチュエータ41およびスロットルアクチュエータ42を制御し、減速度ΔGを発生させる。なお、図5(a)(b)に示す減速度ΔGの特性は予め設定しておく。
次に、自車両が先行車両に追従走行している場合のアクセルペダル反力Fおよび減速度ΔGの制御を例として、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用をより詳細に説明する。図6(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vfおよび先行車速Vaの変化を示し、(b)は(a)に対応するリスク度RPの変化、(c)は(a)に対応するアクセルペダルストローク量Sの変化、(d)は(a)に対応するアクセルペダル反力Fの変化、(e)は(a)に対応する減速度ΔGの変化をそれぞれ示す。
図6(a)に示すように自車両が車間距離D=D1を保って先行車両に追従走行する場合、最小のリスク度RPminが発生しているとする。これにより、アクセルペダル50の反力増加量ΔFはΔFmin、運転者に体感させる減速度ΔGはΔGminとなる。時刻T=Taで先行車速Vaが低下し始めると、これに伴って車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少により図6(b)に示すようにリスク度RPが増加し、図6(d)(e)にそれぞれ示すようにリスク度RPに応じて反力増加量ΔFおよび減速度ΔGが増加する。アクセルペダル反力Fが増加することにより、運転者はアクセルペダル50を戻す方向へ誘導され、図6(c)に示すようにストローク量Sが徐々に減少する。ストローク量Sの減少に加えて、減速度ΔGを増加させるように車両に制動力が発生し、自車速Vfが低下して車間距離Dが増加する。その後、車間距離Dの増加によってリスク度RPが低下し、これに伴って反力増加量ΔFおよび減速度ΔGも減少する。反力増加量ΔFの減少および車間距離Dの増加を受けて運転者はアクセルペダル50を再び踏み込み、先行車両に追従走行を行うようにストローク量Sを徐々に増加しながら自車速Vfの調整を行う。
このように、運転者はペダル反力Fの変化によりリスク度RPの変化を感覚的に認識することができる。とくに、リスク度RPが増加する場合にはペダル反力Fを増加させるので、アクセルペダル50を戻す方向へと運転者の操作を促すことができる。リスク度RPが増加した際に車両に制動力を与えて減速度ΔGを発生させることで、ペダル反力Fを増加させるだけの場合に比べて車間距離Dが広がり、リスク度RPのさらなる増加を抑制することができる。すなわち、リスク度RPの上昇によりアクセルペダル50に発生する反力は増加してアクセルペダル50を戻す方向へと誘導するが、反力増加量ΔFの増加は抑制されるので、運転者はアクセルペダル50から足を離さずに継続してペダル操作を行うように促される。これにより、運転者はアクセルペダル50に発生する反力Fによりリスク度RPを継続的に認識しながら適切な運転操作を行うことができる。また、運転者は、車間距離Dの増加を視覚的に確認することができ、車両周囲の状況を冷静かつ正確に把握することができる。さらに、運転者は減速度ΔGによって発生する慣性力を体感することによってリスク度RPを容易に認識することができる。このように、リスク度RPを伝達するための表示装置等を別途設けることなく、運転者に車両周囲の状況を知らせることが可能となり、コストを削減することができる。
つぎに、以上説明したアクセルペダル反力制御および減速度制御の処理手順について図7を用いて説明する。図7は、第1の実施の形態におけるアクセルペダル反力制御及び減速度制御プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。これらの処理は、リスク度計算部30,減速度計算部35および反力制御装置80において実行される。なお、本処理内容は、例えば100msecに一回の周期で連続的に行われる。
まず、ステップS101で、リスク度算出部30はレーザレーダ10および車速センサ20で検出される車間距離D、自車速Vfおよび先行車速Va等の走行状態を読み込む。ステップS102で、ステップS101で読み込んだ走行状態からリスク度RPを算出する。ステップS103で、算出したリスク度RPが予め設定した最小値RPmin以上であるか否かを判定する。ステップS104が肯定判定されると、ステップS104へ進み、アクセルペダルストローク量検知部70で検出されるストローク量Sを読み込む。ステップS103が否定判定されると、ステップS101へ戻る。
ステップS105で反力制御装置80は、ステップS102で算出したリスク度RPに応じて反力増加量ΔFを算出し、反力増加量ΔFと通常のアクセルペダル反力特性とから、アクセルペダル50に実際に発生させるペダル反力Fを算出する。ステップS106では、算出したアクセルペダル反力Fを発生するようにサーボモータ60を制御する。ステップS107で減速度計算部35は、リスク度RPに応じて車両に発生させる減速度ΔGを算出する。ステップS108では、算出した減速度ΔGを発生させるような指令をエンジン制御コントローラ40に出力する。これにより、今回の処理を終了する。
上述したように、本発明の第1の実施の形態においては、以下の様な効果を奏することができる。自車両のリスク度RPに応じてアクセルペダル反力Fを制御するとともに、リスク度RPに応じた減速度ΔGを運転者に与えるようにした。これにより、リスク度RPをアクセルペダル反力Fとして直感的に認識することができるとともに、リスク度RPに応じた慣性力を体感することによってリスク度RPを容易に認識することができる。また、減速度ΔGを運転者に与えるように制動力を発生すると、自車両と先行車との車間距離Dが増加する。運転者は車間距離Dの変化を視覚的に認識し、冷静に車両周囲の状況を把握することができる。アクセルペダル反力Fおよび減速度ΔGによってリスク度RPを運転者に伝達するので、表示装置等を別途設ける必要がなく、コストの削減が可能となる。
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態の車両用運転操作補助装置の構成は、図1〜図3を用いて説明した第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。ここでは、第1の実施の形態との相違点である減速度制御の処理について主に説明する。
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様にリスク度RPに応じた反力増加量ΔFおよび減速度ΔGを発生させる。ただし、減速度ΔGは、ストローク量Sが所定値S0を下回る場合にのみ発生させる。図8(a)(b)に、リスク度RPに対する減速度ΔGの特性、およびストローク量Sに対する減速度ΔGの特性をそれぞれ示す。図8(a)に示すように、最小値RPminから最大値RPmaxの範囲でリスク度RPが大きくなるほど、減速度ΔGは指数関数的に増加する。そして、図8(b)に示すように、ストローク量Sが所定値S0を下回る範囲でのみリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させる。所定値S0未満でのみ減速度ΔGを発生させることにより、運転者の意図によりアクセルペダル50を踏み込んだ場合に減速度ΔGを発生しないようにする。所定値S0は、予め適切な値を設定しておく。
図9を用いて第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を説明する。図9(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vfおよび先行車速Vaの変化、(b)はリスク度RPの変化、(c)はストローク量Sの変化、(d)は反力増加量ΔFの変化、および(e)は減速度ΔGの変化の一例をそれぞれ示している。図9(a)に示すように自車両が車間距離D1を保って先行車速に追従走行を行っている場合、時刻T=Tbで先行車速Vaが低下を始めると、車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少によりリスク度RPが増加し、図9(d)に示すように反力増加量ΔFが増加する。アクセルペダル反力Fの増加を受けてストローク量Sは図9(c)に示すように徐々に減少する。ストローク量Sがさらに減少し所定値S0を下回ると、図9(e)に示すようにリスク度RPに応じた減速度ΔGが発生する。ストローク量Sの減少と減速度ΔGの発生により自車速Vfが減少し、車間距離Dが増加する。これに伴いリスク度RPが減少し、運転者はアクセルぺダル50を操作して再び先行車両に追従走行するよう自車速Vfを調節する。このとき、ストローク量Sが再び所定値S0以上となるまでリスク度RPに応じた減速度ΔGが発生する。なお、図9(e)は車両に発生する減速度を示しており、リスク度RPがマイナスの状態でアクセルペダル50が踏み込まれてストローク量Sが増加している場合は、マイナスの減速度、つまり車両に加速度が発生していることを示している。
このように、運転者はリスク度RPの変化をアクセルペダル反力Fの変化として感覚的に認識することができる。また、所定のストローク量S0未満でリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させるので、減速度ΔGを発生させない場合に比べて車間距離Dをより増加させることができる。運転者は車間距離Dの増加を視覚的に認識し、車両周囲の状況を正確に把握することができる。また、減速度ΔGによって車両に発生する慣性力を体感することにより、リスク度RPを容易に認識することができる。ストローク量Sが減少した後、再びアクセルペダル50を踏み込む場合、ストローク量Sが所定値S0以上の領域では減速度ΔGは発生しないため、アクセルペダル操作に応じて速やかに自車速Vfの調節を行うことができる。
つぎに、以上説明したアクセルペダル反力制御および減速度制御の処理手順について図10を用いて説明する。図10は、第2の実施の形態におけるアクセルペダル反力制御及び減速度制御プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。これらの処理は、リスク度計算部30,減速度計算部35および反力制御装置80において実行される。なお、本処理内容は、例えば100msecに一回の周期で連続的に行われる。
ステップS201〜ステップS206の処理は、図7に示す第1の実施の形態のステップS101〜ステップS106の処理と同様であるので説明を省略する。ステップS207で、ステップS204で読み込んだストローク量Sが所定値S0未満であるか否かを判定する。ステップS207でストローク量SがS<S0であると肯定判定されると、ステップS208へ進む。ステップS208で減速度計算部35は、ステップS202で算出したリスク度RPに応じて車両に発生させる減速度ΔGを算出する。一方、ステップS207が否定判定されると、ステップS209へ進む。ステップS209で減速度計算部35は、減速度ΔGを発生させないように減速度ΔG=0に設定する。ステップ210で、算出した減速度ΔGを発生させるような指令をエンジン制御コントローラ40に出力する。これにより、今回の処理を終了する。
上述したように、本発明の第2の実施の形態においては、以下のような効果を奏することができる。アクセルペダル50のストローク量Sが所定値S0を下回ると、リスク度に応じた減速度ΔGを発生させるようにした。ストローク量Sが小さくなり運転者の足とアクセルペダル50との接触状態が不安定となると、アクセルペダル反力Fの変化によってリスク度RPを運転者に知らせることは困難となる。この場合に減速度ΔGを発生するので、運転者に慣性力を体感させてリスク度RPを正確に認識させることができる。また、ストローク量SがS0より大きくなると減速度ΔGの発生を停止するようにしたので、運転者の意図によってアクセルペダル50を踏み込んでいる場合には減速度ΔGは発生せず、スムーズな運転操作を行うことができる。とくに、先行車を追い越す場合などに減速度ΔGが発生して先行車に接近しにくいといった煩わしさを低減することができる。
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第3の実施の形態の車両用運転操作補助装置の構成は、図1〜図3を用いて説明した第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。ここでは、第1の実施の形態との相違点である減速度制御の処理について主に説明する。
第3の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様にリスク度RPに応じた反力増加量ΔFおよび減速度ΔGを発生させる。ただし、減速度ΔGは、ストローク量Sが所定値S1を下回ってから、所定値S1よりも大きい所定値S2以上となるまで発生させる。図11(a)(b)に、リスク度RPに対する減速度ΔGの特性、およびストローク量Sに対する減速度ΔGの特性をそれぞれ示す。図11(a)に示すリスク度RPに対する減速度ΔGの特性は図5(a)に示した第1の実施の形態と同様である。図11(b)に示すように、ストローク量Sが減少し所定値S1を下回るとリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させる。その後、アクセルペダル50が再び踏み込まれてストローク量Sが所定値S2(S2>S1)に達するまで減速度ΔGを発生させる。これにより、運転者の意図によりアクセルペダル50を踏み込んだ場合に減速度ΔGを発生しないようにする。また、ストローク量Sが所定値S2となるまではリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させ、アクセルペダル50の踏み込み操作を再開した際のリスク度RPを運転者に体感させる。所定値S1およびS2は、予め適切な値を設定しておく。
図12を用いて第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を説明する。図12(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vfおよび先行車速Vaの変化、(b)はリスク度RPの変化、(c)はストローク量Sの変化、(d)は反力増加量ΔFの変化、および(e)は減速度ΔGの変化の一例をそれぞれ示している。図12(a)に示すように自車両が車間距離D1を保って先行車速に追従走行を行っている場合、時刻T=Tcで先行車速Vaが低下を始めると、車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少によりリスク度RPが増加し、図12(d)に示すように反力増加量ΔFが増加する。アクセルペダル反力Fの増加を受けてストローク量Sは図12(c)に示すように徐々に減少する。ストローク量Sがさらに減少し所定値S1を下回ると、図12(e)に示すようにリスク度RPに応じた減速度ΔGが発生する。ストローク量Sの減少と減速度ΔGの発生により自車速Vfが減少し、車間距離Dが増加する。これに伴いリスク度RPが減少し、運転者はアクセルペダル50を操作して再び先行車両に追従走行するよう自車速Vfを調節する。このとき、ストローク量Sが所定値S1よりも大きい所定値S2となるまでリスク度RPに応じた減速度ΔGが発生する。
このように、運転者はリスク度RPの変化をアクセルペダル反力Fの変化として感覚的に認識することができる。また、所定のストローク量S1未満でリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させるので、減速度ΔGを発生させない場合に比べて車間距離Dをより増加させることができる。運転者は車間距離Dの増加を視覚的に認識し、車両周囲の状況を正確に把握することができる。また、減速度ΔGによって車両に発生する慣性力を体感することにより、リスク度RPを容易に認識することができる。ストローク量Sが減少した後、再びアクセルペダル50の踏み込み操作を行う場合、ストローク量Sが所定値S2以上の領域では減速度ΔGは発生しないため、アクセルペダル操作に応じて速やかに自車速Vfの調節を行うことができる。所定値S2をS2>S1と設定することにより、アクセルペダル50の踏み込み操作を再開した場合に、減速度ΔGを体感することによりリスク度RPを認識しながら適切な運転操作を行うことができる。
つぎに、以上説明したアクセルペダル反力制御および減速度制御の処理手順について図13を用いて説明する。図13は、第3の実施の形態におけるアクセルペダル反力制御及び減速度制御プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。これらの処理は、リスク度計算部30,減速度計算部35および反力制御装置80において実行される。なお、本処理内容は、例えば100msecに一回の周期で連続的に行われる。
まず、この制御プログラムの開始直後には、ステップS301で初期値として減速制御を行っていないことを示すフラグFlg=0に設定する。つづくステップS302〜ステップS307の処理は、図7に示す第1の実施の形態のステップS101〜ステップS106の処理と同様であるので説明を省略する。ステップS308で、既に減速制御を行っていることを示すフラグFlg=1であるか否かを判定する。ステップS308が否定判定されると、ステップS309へ進む。ステップS309ではステップS305で読み込んだストローク量Sが所定値S1未満であるか否かを判定する。ステップS309でストローク量SがS<S1であると肯定判定されると、減速制御を開始するためにステップS310へ進んでフラグFlg=1にセットする。つづくステップS311で減速度計算部35は、ステップS303で算出したリスク度RPに応じて車両に発生させる減速度ΔGを算出する。一方、ステップS309が否定判定されると、ステップS312へ進み、減速度計算部35は減速度ΔG=0に設定する。
ステップS308で、フラグFlg=1であり既に減速制御を行っていると判定されると、ステップS313へ進む。ステップS313でストローク量Sが所定値S2未満であるか否かを判定する。ステップS313でストローク量S<S2であると肯定判定されると、ステップS311へ進んでリスク度RPに応じた減速度ΔGを算出する。一方、ステップS313が否定判定されると、ステップS314へ進み、減速制御を行わないことを示すフラグFlg=0にセットする。そしてステップS312へ進み、減速度計算部35は減速度ΔG=0に設定する。ステップS313で、算出した減速度ΔGを発生させるような指令をエンジン制御コントローラ40に出力する。ステップS313により今回の処理を終了し、その後ステップS302へ戻って以上の処理を繰り返す。
上述したように、本発明の第3の実施の形態においては、以下のような効果を奏することができる。アクセルペダル50のストローク量Sが所定値S1を下回ると、リスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させ、ストローク量Sが所定値S2(S2>S1)を上回ると減速度ΔGの発生を停止するようにした。これにより、運転者の足とアクセルペダル50との接触状態が不安定な場合には減速度ΔGを発生させてリスク度RPを運転者に体感させることができる。さらに、アクセルペダル50を再び踏み込む場合には減速度ΔGによってリスク度RPを体感しながら適切な運転操作を行うことができる。
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第4の実施の形態の車両用運転操作補助装置の構成は、図1〜図3を用いて説明した第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。ここでは、第1の実施の形態との相違点である減速度制御の処理について主に説明する。
第4の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様にリスク度RPに応じた反力増加量ΔFおよび減速度ΔGを発生させる。ただし、減速度ΔGは、アクセルペダル50の踏み込み速度Vsが負の所定値Vs1を下回ってから、正の所定値Vs2以上となるまで発生させる。ここで、アクセルペダル踏み込み速度Vsが負の場合(Vs<0)はアクセルペダル50を戻す方向へ操作し、ペダル踏み込み速度Vsが正の場合(Vs>0)はアクセルペダル50を踏み込んでいることを示す。
図14(a)(b)に、リスク度RPに対する減速度ΔGの特性、およびペダル踏み込み速度Vsに対する減速度ΔGの特性をそれぞれ示す。図14(a)に示すリスク度RPに対する減速度ΔGの特性は図5(a)に示した第1の実施の形態と同様である。図14(b)に示すように、アクセルペダル50が踏み込まれた状態から戻す方向へと操作され、ペダル踏み込み速度Vsが負の所定値Vs1未満となると、つまり所定値|Vs1|を上回る速度でアクセルペダル50を戻す方向へ操作されると、リスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させる。その後、アクセルペダル50を戻す方向の速度が遅くなり、アクセルペダル50が再び踏み込まれて踏み込み速度Vsが正の所定値Vs2に達するまで減速度ΔGを発生させる。これにより、アクセルペダル50を戻す方向へ操作している場合に減速度ΔGを発生させ運転者の操作を補助する。また、ペダル踏み込み速度Vsが所定値Vs2以上で、運転者の意図によりアクセルペダル50の踏み込みを再開した場合には、減速度ΔGを発生させない。所定値Vs1およびVs2は、予め適切な値を設定しておく。
図15を用いて第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を説明する。図15(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vfおよび先行車速Vaの変化、(b)はリスク度RPの変化、(c)はストローク量Sの変化、(d)は反力増加量ΔFの変化、および(e)は減速度ΔGの変化の一例をそれぞれ示している。図15(a)に示すように自車両が車間距離D1を保って先行車速に追従走行を行っている場合、時刻T=Tdで先行車速Vaが低下を始めると、車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少によりリスク度RPが増加し、図15(d)に示すように反力増加量ΔFが増加する。アクセルペダル反力Fの増加を受けてストローク量Sは図15(c)に示すように徐々に減少する。このとき、アクセルペダル50が所定値|Vs1|を上回る速度で戻し方向へ操作されると、図15(e)に示すようにリスク度RPに応じた減速度ΔGが発生する。ストローク量Sの減少と減速度ΔGの発生により自車速Vfが減少し、車間距離Dが増加する。これに伴いリスク度RPが減少し、運転者はアクセルペダル50を操作して再び先行車両に追従走行するよう自車速Vfを調節する。このとき、アクセルペダル50が所定値Vs2以上の速度で踏み込まれると、減速度ΔGは発生しない。
このように、運転者はリスク度RPの変化をアクセルペダル反力Fの変化として感覚的に認識することができる。また、所定の速度|Vs1|を上回る速度でアクセルペダル50が戻されるとリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させるので、減速度ΔGを発生させない場合に比べて車間距離Dをより増加させることができる。運転者は車間距離Dの増加を視覚的に認識し、車両周囲の状況を正確に把握することができる。また、減速度ΔGによって車両に発生する慣性力を体感することにより、リスク度RPを容易に認識することができる。アクセルペダル50を戻す方向から再びアクセルペダル50を踏み込む場合、踏み込み速度Vsが所定値Vs2以上の領域では減速度ΔGは発生しないため、アクセルペダル操作に応じて速やかに自車速Vfの調節を行うことができる。アクセルペダル50を再び踏み込む際に所定値Vs2未満で減速度ΔGを発生させることにより、減速度ΔGを体感してリスク度RPを認識しながら適切な運転操作を行うことができる。
つぎに、以上説明したアクセルペダル反力制御および減速度制御の処理手順について図16を用いて説明する。図16は、第4の実施の形態におけるアクセルペダル反力制御及び減速度制御プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。これらの処理は、リスク度計算部30,減速度計算部35および反力制御装置80において実行される。なお、本処理内容は、例えば100msecに一回の周期で連続的に行われる。
まず、この制御プログラムの開始直後には、ステップS401で初期値として減速制御を行っていないことを示すフラグFlg=0に設定する。つづくステップS402〜ステップS407の処理は、図7に示す第1の実施の形態のステップS101〜ステップS106の処理と同様であるので説明を省略する。ステップS408で、アクセルペダル50の踏み込み速度Vsを算出する。これは例えば、ステップS405で読み込んだ現在のストローク量Sと不図示のメモリに記憶された前回のストローク量とから算出することができる。ステップS409では、既に減速制御を行っていることを示すフラグFlg=1であるか否かを判定する。ステップS409が否定判定されると、ステップS410へ進む。ステップS410ではステップS408で算出したペダル踏み込み速度Vsが負の所定値Vs1未満であるか否かを判定する。ステップS410でペダル踏み込み速度VsがVs<Vs1であると肯定判定され、アクセルペダル50が所定値を上回る速度で戻し方向へ操作されている場合、減速度制御を開始するためにステップS411へ進んでフラグFlg=1にセットする。つづくステップS412で減速度計算部35は、ステップS403で算出したリスク度RPに応じて車両に発生させる減速度ΔGを算出する。一方、ステップS410が否定判定されると、ステップS413へ進み、減速度計算部35は減速度ΔG=0に設定する。
ステップS409で、フラグFlg=1であり既に減速制御を行っていると判定されると、ステップS414へ進む。ステップS414ではペダル踏み込み速度Vsが正の所定値Vs2未満であるか否かを判定する。ステップS414でペダル踏み込み速度Vs<Vs2であると肯定判定されると、ステップS412へ進んでリスク度RPに応じた減速度ΔGを算出する。一方、ステップS414が否定判定されると、ステップS415へ進み、減速度制御を行わないことを示すフラグFlg=0にセットする。そしてステップS413へ進み、減速度計算部35は減速度ΔG=0に設定する。ステップS416で、算出した減速度ΔGを発生させるような指令をエンジン制御コントローラ40に出力する。ステップS416により今回の処理を終了し、その後ステップS402へ戻って以上の処理を繰り返す。
上述したように、本発明の第4の実施の形態においては、以下のような効果を奏することができる。アクセルペダル50を戻す方向へ操作した場合の操作速度Vsが所定値Vs1より速くなるとリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させ、その後、アクセルペダル50を再び踏み込む場合の操作速度が所定値Vs2を上回るとリスク度RPに応じた減速度ΔGの発生を停止するようにした。これにより、アクセルペダル50を戻す方向へ素早く操作しているような、運転者の足とアクセルペダル50との接触状態が不安定な場合に、減速度ΔGを発生させて運転者にリスク度RPを体感させることができる。アクセルペダル50を再び踏み込んだ際に、所定値Vs2以上では減速度ΔGを発生させないので、運転者の意図によってアクセルペダル50を踏み込んだ場合にスムーズな運転操作を行うことができる。さらに、アクセルペダル50を戻す方向へ操作する際に減速度ΔGを発生するので自車速Vfが低下し、車間距離Dが増加することとなる。これによってリスク度RPは低下しアクセルペダル反力Fが低下する。つまり、アクセルペダル反力Fが低下することにより運転者はアクセルペダル50から足を離さずに操作を行う機会が増え、アクセルペダル反力Fの変化によってリスク度RPを連続的に認識しながら適切な運転操作を行うことができる。
《第5の実施の形態》
以下に、本発明の第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図17は、本発明の第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成を示すシステム図であり、図18は、車両用運転操作補助装置を搭載する車両の構成図である。なお、図17,図18において、図1〜図3を用いて説明した第1〜第4の実施の形態と同様の機能を有する部分には同一の符号を付している。ここでは、上述した第1〜第3の実施の形態との相違点を主に説明する。
図17に示すように、第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置は、シート移動量計算部100とシートスライド制御コントローラ110とを有している。シート移動量計算部100は、リスク度計算部30から入力されるリスク度RPと、アクセルペダルストローク量検知部70から入力されるストローク量Sとに基づいて、運転者に減速度ΔGを与えるような運転席120の移動量を算出する。つまり、第5の実施の形態においては、制動力を発生して車両に減速度ΔGを発生させる代わりに、運転席120を移動することによって運転者自身に減速度ΔGを与え、リスク度RPを体感させる。
シート移動量計算部100は、上述した第1から第4の実施の形態における減速度制御に相当するシートスライド制御を行うように、リスク度RPに応じて運転席120の移動量を算出する。すなわち、図5(a)に示すリスク度RPに対する減速度ΔGの特性に基づいて、運転者に減速度ΔGを与えるような移動量を算出する。例えば、リスク度RPが大きく運転者に大きな減速度ΔGを与える場合は、スライド可能範囲内で運転席120の移動量を大きくする。また、例えば、上述した第4の実施の形態によるペダル踏み込み速度Vsに対する減速制御をシートスライド制御に適用することができる。すなわち、アクセルペダル50が戻し方向へ操作されてペダル踏み込み速度Vsが所定値|Vs1|を超えると、リスク度RPに応じた移動量だけ運転席120をスライドさせる。そしてアクセルペダル50が再び踏み込まれてペダル踏み込み速度Vsが所定値Vs2以上となると運転席120のスライド制御を停止する。
これにより、車両周囲のリスク度RPが増加した場合に、運転者はアクセルペダル反力Fの増加に加えて運転席120のスライドによって発生する減速度ΔGから慣性力を体感し、リスク度を容易に認識することができる。また、リスク度RPを運転者に伝達するための表示装置等が必要ないので、コストを削減することができる。運転席120が車両後方にスライドすると運転者の脚部も車両後方へ移動するため、アクセルペダル50の戻し操作を補助することができる。また、運転者の意図によりアクセルペダル50を再び踏み込む場合にはシートスライドを行わないようにすれば、運転者に与える煩わしさを低減することができる。
なお、上述した第1から第3実施の形態によるストローク量Sに対する減速度制御(図5(b)、図8(b)、図11(b)、図14(b)参照)を、シートスライド制御に適用できることはもちろんである。この際、リスク度RPに対する運転席120の移動量と移動速度を予め適切に設定し、上記第1から第4の実施の形態における減速度制御に相当するシートスライド制御を行うことが望ましい。
さらに、車両の減速度制御とシートスライド制御とを組み合わせて行うようにしてもよい。すなわち、エンジン制御コントローラ40によりブレーキアクチュエータ41を制御して車両に制動力を発生させるとともに、運転席120をスライドして運転者に減速度を体感させる。例えば、リスク度RPが低い場合にはシートスライド制御により運転者自身に減速度ΔGを与え、リスク度RPが大きくなると制動力を発生させて車両に減速度ΔGを与えるようにすることができる。減速度制御とシートスライド制御とを組み合わせた制御について以下に説明する。
ここでは、上記第1の実施の形態の図6に示すように自車両が先行車両に追従走行している場合を例として説明する。時刻T=Ta以前で、自車両が先行車両に追従走行している場合に、リスク度RPは最小値RPminで、減速度ΔGは最小値ΔGminとなっている。このとき、車両に制動力を発生させる代わりに減速度ΔGminを運転者に与えるように運転席を移動する。その後、車間距離Dが減少してリスク度RPが増加すると、リスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させるように制動力を制御する。これにより、リスク度RPが低い場合には制動力は発生しないが、運転席120の移動により運転者は減速度ΔGminを体感し、リスク度RPが増加する以前から発生しているリスク度RPminを直感的に認識することができる。この場合、運転席120を車両後方にスライドさせてもよいし、運転者が腰掛けるクッション部分のみをスライドしたり、クッション部分を上下動させてもよい。このように、リスク度RPの低い場合には車両に減速度ΔGを与えるのではなく運転者自身に減速度ΔGを体感させることによって、リスク度RPを直感的に認識しながら運転者の意図に応じたスムーズな運転操作を行うことができる。さらに、リスク度RPが増加すると車両に制動力を発生させるので、運転者は慣性力を体感してリスク度RPを認識するとともに、先行車両との車間距離Dが増加してリスク度RPの増加を抑制することができる。
また、車両に制動力を発生させているときに運転席120のシートスライド制御を行って運転者に減速度ΔGを体感させてもよい。このようにシートスライド制御と車両の減速度制御とを組み合わせることにより、運転者にリスク度RPを容易かつ正確に認識させることができる。
上述したように、本発明の第5の実施の形態においては、以下の様な効果を奏することができる。車両周囲のリスク度に応じた減速度ΔGを運転者に与えるように運転席120をスライドさせた。これにより、運転者は運手席120のスライドによる慣性力を体感し、リスク度RPを容易に認識することができる。さらに、上述した第2〜第3の実施の形態による減速度制御をシートスライド制御に適用し、アクセルペダル50のストローク量Sや操作速度に応じて運転席120を移動させるようにすれば、運転者の足とアクセルペダル50との接触状態が不安定な場合にもリスク度RPを慣性力として運転者に体感させることができる。
また、シートスライド制御と減速度制御とを組み合わせることにより、煩わしさを与えることなく運転者にリスク度RPを体感させることができる。
図4に示すように、リスク度RPが最大値RPmaxを超えると反力増加量ΔFを一気に上限値ΔFmmまで増加させたが、例えばリスク度の最大値RPmin以上の領域では反力増加量ΔFを最大値ΔFmaxに固定することができる。また、最小のリスク度RPminを設定し、リスク度RPが最小値RPmin以下の場合には反力増加量ΔFminおよび減速度ΔGを発生させないようにしたが、例えば、最小の反力増加量ΔFminを発生させるリスク度と、最小の減速度ΔGminを発生させるリスク度とを別の値に設定することもできる。あるいは減速度ΔGに対して最小のリスク度RPminを設定せずに、リスク度RPが発生する場合には減速度ΔGを発生させることもできる。さらに、リスク度RPが大きくなるほど反力増加量ΔFおよび減速度ΔGがそれぞれ増加するようにすることができる。
上述した第4の実施の形態においては、アクセルペダル50を戻す方向へ操作するときの操作速度の所定値Vs1と、踏み込むときの操作速度の所定値Vs2とを設定した。例えば、アクセルペダル50を踏み込む際の操作速度の所定値Vs3と所定値Vs3よりも大きいVs4を設定し、アクセルペダル50の操作速度Vsが所定値Vs3を下回るとリスク度RPに応じた減速度ΔGを発生させ、操作速度Vsが所定値Vs4を上回ると減速度ΔGの発生を停止することもできる。これにより、アクセルペダル操作がゆっくりでアクセルペダル50と運転者の足との接触状態が不安定な場合に減速度ΔGを発生させ、リスク度RPを運転者に体感させることができる。アクセルペダル50を素早く操作している場合、例えば先行車両の追い越しを行う場面等では減速度ΔGを発生させないので、運転者の意図に沿ったスムーズな運転操作を行うことができる。
上記第1から第5の実施の形態においては、自車両が先行車両に追従走行した後、先行車速が低下して車間距離Dが低下する場合を例として説明した。例えば、追従走行を行わず自車両が先行車両に徐々に接近していく場合にも、さらには、車間距離制御等により自車両が先行車に追従するように制御されている場合にも、本発明を適用することができる。すなわち、本発明は、リスク度RPに応じたアクセルペダル反力Fと減速度ΔGを発生し、車両周囲のリスク度RPを運転者に容易に認識させることができる全ての車両用運転操作補助装置に適用される。
《第6の実施の形態》
以下に、本発明の第6の実施の形態における車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図19は、第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成を示すシステム図であり、図20は、図19に示す車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図である。
まず、車両用運転操作補助装置の構成を説明する。レーザレーダ10、車速センサ20およびアクセルペダルストローク量検知部70の構成は、上述した第1の実施の形態と同様である。レーザレーダ10、車速センサ20およびアクセルペダルストローク量検知部70は、それぞれ検出した信号をコントローラ200へ出力する。
コントローラ200は、レーザレーダ10および車速センサ20から入力される信号に基づいて、自車両の周囲環境によるリスク度RPを算出する。そして、算出したリスク度RPに応じて、後述するようにリスク度RPに応じたアクセルペダル反力制御を行う。さらに、コントローラ200は、リスク度RPに基づいて運転者に体感させる減速度を算出し、後述するように減速度制御を行う。
アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ200からの信号に応じて、アクセルペダル50のリンク機構に組み込まれたサーボモータ60で発生させるトルクを制御する。サーボモータ60は、アクセルペダル操作反力制御装置80からの指令値に応じて発生させるトルクおよび回転角を制御し、運転者がアクセルペダル50を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。
エンジン制御コントローラ40およびブレーキアクチュエータ41は、コントローラ200からの信号に応じて、エンジントルクおよびブレーキ圧をそれぞれ制御し、車両に制駆動力を発生させる。
図21に、コントローラ200の内部構成のブロック図を示す。障害物認識部201は、レーザレーダ10からの信号を入力し、前方車との車間距離および相対速度を算出する。そして、車速センサ20から入力される自車速と、車間距離および相対速度から、自車前方の障害物状況を検出する。リスク度算出部202は、障害物認識部201の検出結果に基づいて、前方障害物に対する自車両のリスク度RPを算出する。運転操作反力決定部203は、リスク度算出部202で算出されたリスク度RPからアクセルペダル50の反力制御量を算出する。減速度算出部204は、リスク度算出部202で算出されたリスク度から運転者に体感させる減速度ΔGを算出する。
操作意図検出部205は、アクセルペダルストローク量検知部70から入力されるストローク量Sから、運転者のアクセルペダル操作意図を検出する。減速度補正部206は、操作意図検出部205の検出結果と、アクセルペダルストローク量検知部70から入力されるストローク量Sとから、減速度算出部204で算出された減速度ΔGを補正し、減速度補正値ΔGhoseiを算出する。
つぎに、第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の動作を説明する。
上述した第1から第4の実施の形態においては、減速度計算部35においてアクセルペダルストローク量Sとリスク度RPから減速度ΔGを算出し、エンジン制御コントローラ40に指令を出力して自車両に減速度ΔGを発生させていた。第6の実施の形態においては、上述したような減速度制御に運転者の操作意図を加味することによって、より一層、運転者の意図にあった減速度制御を行うようにする。具体的には、運転者の操作意図に応じて減速度ΔGを補正することにより、減速度の発生/停止の切換時に車両挙動が大きく変動することを低減し、減速度制御により滑らかな減速度が発生するようにする。また、アクセルペダルストローク量Sから運転者の操作意図を検出することにより、運転者の微妙なアクセル操作によって減速度制御の開始/解除が頻繁に繰り返されることを防止する。
以下、上述したような制御においてどのように減速度を補正するかについて、図面を用いて詳細に説明する。図22は、第6の実施の形態によるコントローラ200における運転操作補助制御処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
まず、ステップS100で走行状態を読み込む。ここで、走行状態は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方走行車までの車間距離や存在方向と、車速センサ20によって検出される自車両の走行車速を読み込む。さらに、アクセルペダルストローク量検知部70によって検出されるアクセルペダル50のストローク量Sを読み込む。
ステップS200では、ステップS100で読み込み、認識した走行状態データに基づいて、前方障害物の状況を認識する。ここでは、前回の処理周期以前に検出され、コントローラ200のメモリに記憶されている自車両に対する障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS100で得られた現在の走行状態データとにより、現在の障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物が、自車両の前方にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
ステップS300では、障害物に対するリスク度RPを算出する。障害物に対するリスク度RPは、上述した第1の実施の形態と同様に、障害物に対する余裕時間TTCを用いて(式2)により算出する(RP=1/TTC)。
ステップS400では、ステップS300で算出したリスク度RPから、アクセルペダル反力制御装置60へ出力する反力制御指令値FAを算出する。リスク度RPに応じて、リスク度が大きいほど、アクセルペダル62を戻す方向へ制御反力を発生させる。なお、反力制御指令値FAは、第1の実施の形態でリスク度RPに応じて算出したペダル反力制御量ΔFに相当する。
図23に、リスク度RPに対するアクセルペダル反力制御指令値FAの特性を示す。図23に示すように、リスク度RPが所定値RPminよりも大きく、かつ所定値RPmaxよりも小さい場合、リスク度RPが大きくなるほど、大きなアクセルペダル反力を発生させるようにアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。リスク度RPが所定値RPmaxより大きい場合には、最大のアクセルペダル反力を発生させるように、アクセルペダル反力制御指令値FAを最大値FAmaxに固定する。このように、リスク度RPに応じてアクセルペダル反力制御指令値FAを設定し、自車両周囲のリスク度RPをアクセルペダル反力として運転者に伝達する。
ステップS500では、ステップS300で算出したリスク度RPから運転者に体感させる減速度ΔGを算出する。リスク度RPと運転者に体感させる減速度ΔGとの関係は、図24のマップで表される。図24に示すように、減速度ΔFは、リスク度RPの最小値RPminから最大値RPmaxの範囲でリスク度RPが大きくなるほど指数関数的に増加する。これは以下の(式5)で求められる。
ΔG=k1・RPn1 (式5)
ここで、k1,n1は定数であり、ドライブシミュレータ等による実地試験の結果から最適な値に設定される。なお、リスク度RPが最大値RPmaxを超えると、減速度ΔGは最大値ΔGmaxに固定される。
ステップS600では、ステップS100で読み込んだアクセルペダルストローク量Sによって、運転者がアクセルペダルを操作する意図を検出する。ステップS600で行うアクセルペダル操作意図検出処理を、図25のフローチャートを用いて説明する。
ステップS601では、アクセルペダルストローク量Sが所定値Sa0よりも小さいか否かを判定する。ステップS601が肯定判定されると、ステップS602に進む。ステップS602では、運転者はアクセルペダル50を戻す意図があると判断し、状態フラグflgSTATEを1にセットして終了する。一方、ステップS601が否定判定されると、ステップS603に進み、運転者はアクセルペダル50を踏み込む意図があると判断し、状態フラグflgSTATEを0にセットして終了する。ステップS600で操作意図を検出した後、ステップS700へ進む。
ステップS700では、ステップS500で算出した減速度ΔGを運転者の操作意図に応じて補正するために、減速度補正係数khoseiを算出する。減速度補正係数khoseiは、ステップS100で読み込んだアクセルペダルストローク量Sを用いて算出する。ステップS700で行う減速度補正係数算出処理を、図26のフローチャートを用いて説明する。
ステップS701では、アクセルペダルストローク量Sが所定値Sa0よりも小さいか否かを判定する。ステップS701が肯定判定されると、ステップS702に進む。ステップS702では、アクセルペダルストローク量Sを用いて、以下の(式6)により減速度補正係数khoseiを算出する。
khosei=1−S/Sa0 (式6)
一方、ステップS701が否定判定されると、ステップS703に進み、減速度を発生させないように減速度補正係数khoseiに0をセットして終了する。
図27に、アクセルペダルストローク量Sと減速度補正係数khoseiとの関係を示す。なお、アクセルペダルストローク量Sは、アクセルペダル50が解放された状態で0とし、アクセルペダル50が踏み込まれるほどストローク量Sが大きくなる。図27に示すように、アクセルペダルストローク量Sが所定値Sa0以下で、ストローク量Sが小さくなるほど減速度補正係数khoseiが大きくなり、ストローク量Sが0の時に減速度補正係数khosei=1となる。また、ストローク量Sが所定値Sa0よりも大きい場合は、減速度補正係数khosei=0となる。ステップS700で減速度補正係数khoseiを算出した後、ステップS800へ進む。
ステップS800では、ステップS600で設定した状態フラグflgSTATEと、ステップS700で算出した減速度補正係数khoseiとから、ステップS500で算出した減速度ΔGを補正する。なお、運転者にアクセルペダル50を戻す意図がある場合は減速度制御を行い、反対にアクセルペダル50を踏み込む意図がある場合は減速度制御を行わないようにする。ステップS800で行う減速度補正処理を、図28のフローチャートを用いて説明する。
ステップS801では、状態フラグflgSTATEが1か否かを判定する。ステップS801が肯定判定され、運転者にアクセルペダル50を戻す意図がある場合は、ステップS802へ進む。ステップS802では、減速度補正係数khoseiと減速度ΔGとを用いて、以下の(式7)により減速度補正値ΔGhoseiを算出する。
ΔGhosei=khosei・ΔG (式7)
ステップS801が否定判定されると、ステップS803に進み、減速度補正値ΔGhoseiに0をセットして終了する。
図29に、アクセルペダルストローク量Sと減速度補正係数ΔGhoseiとの関係を示す。図29に示すように、アクセルペダルストローク量Sが所定値Sa0以下でストローク量Sが小さくなるほど、減速度ΔGおよび減速度補正係数khoseiに応じて減速度補正値ΔGhoseiが大きくなる。また、ストローク量Sが所定値Sa0よりも大きい場合は、減速度補正値ΔGhosei=0となる。ステップS800で減速度補正値ΔGhoseiを算出した後、ステップS900へ進む。
ステップS900では、ステップS400で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力制御装置80に出力するとともに、ステップS800で算出した減速度補正値ΔGhoseiをエンジン制御コントローラ40及びブレーキアクチュエータ41に出力し、今回の処理を終了する。アクセルペダル反力制御装置80は、コントローラ200からの指令に応じてアクセルペダル50に発生する操作反力を制御する。また、エンジン制御コントローラ40およびブレーキアクチュエータ41は、コントローラ200からの指令に応じて、自車両の制駆動力を制御し、運転者に減速度を体感させる。
次に、第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を、自車両が先行車両に追従走行している場合を例として、図30(a)〜(f)を用いて説明する。図30(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vf、及び先行車速Vaの変化を示し、(b)は(a)の走行状況に対応するリスク度RPの変化、(c)は(a)に対応するアクセルペダル反力Fの変化、(d)は(a)に対応するアクセルペダルストローク量Sの変化、(e)は(a)に対応する減速度補正係数khoseiの変化、(f)は(a)に対応する減速度補正値ΔGhoseiの変化をそれぞれ示す。なお、図30(f)に、運転者の操作意図に応じた補正を行う前の、リスク度RPに応じた減速度ΔGを破線で示す。
図30(a)に示すように自車両が車間距離D=D1を保って先行車両に追従走行する場合、時刻T=Taで先行車速Vaが低下を始めると、車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少によりリスク度RPが増加し、これに応じて図30(c)に示すようにアクセルペダル反力Fが増加する。アクセルペダル反力Fの増加を受けて運転者がアクセルペダル50を戻し、ストローク量Sが所定値Sa0を下回ると、図30(f)に示すように減速度が発生し、減速度制御が開始される。このとき、図30(e)に示すように、ストローク量Sの減少に伴って減速度補正係数khoseiが増加している。図30(f)に示す減速度は、減速度補正値ΔGhoseiである。リスク度RPに応じた減速度ΔGを、図30(e)に示すような減速度補正係数khoseiによって補正することにより、滑らかに変化する減速度が発生する。
アクセルペダルストローク量Sの減少と減速度補正値ΔGhoseiの発生により自車速Vfが減少し、車間距離Dが増加する。車間距離Dの増加に伴いリスク度RPが減少し、アクセルペダル反力Fも減少する。これを受けて、運転者はアクセルペダル50を操作して再び先行車両に追従走行するよう自車速Vfを調節する。
このように、上述した第6の実施の形態においては、以下の作用効果を奏することができる。
(1)自車両周囲のリスク度RPに応じてアクセルペダル反力Fを制御するので、運転者はリスク度RPの変化をアクセルペダルの反力Fの変化として感覚的に認識することができる。また、リスク度RPに応じて算出した減速度ΔGを、運転者によるアクセルペダル50の操作意図に応じて補正し、補正した減速度補正値ΔGhoseiを車両に発生させ、運転者に体感させるようにした。これにより、減速度を発生させない場合に比べて車間距離Dをより増加させることができるとともに、運転者は車間距離Dの増加を視覚的に認識し、車両周囲の状況を正確に把握することができる。また、減速度補正値ΔGhoseiによって車両に発生する慣性力を体感することにより、リスク度RPを容易に認識することができる。さらに、アクセルペダル50の操作意図に応じて減速度ΔGを補正するので、運転者の意図にあった適切な減速度制御を行うことができる。
(2)運転者によるアクセルペダル50の戻し意図が検出された場合には、減速度ΔGを補正して減速度補正値ΔGhoseiを算出し、戻し意図が検出されない場合、すなわちアクセルペダル50の踏み込み意図が検出された場合には、減速度補正値ΔGhoseiを0に設定した。これにより、例えば運転者が積極的に加速するためにアクセルペダル50を踏み込む意図をもっている場合、自車両に減速度を発生させないので、運転者の意図にあった減速度制御を行うことができる。
(3)アクセルペダルストローク量Sが所定値Sa0(第3の所定値)以下となると、アクセルペダル50を戻す意図があると判断し、所定値Sa0を上回ると踏み込む意図があると判断する。これにより、運転者によるアクセルペダル50の操作意図を正確に検出することができる。
(4)リスク度RPに応じて算出された減速度ΔGを、アクセルペダルストローク量Sを用いて補正し、減速度補正値ΔGhoseiを算出する。具体的には、ストローク量Sが減少するほど減速度補正係数khoseiを大きくし、減速度補正値ΔGhoseiが大きくなるように補正する。これにより、運転者の意図に合った減速度を滑らかに発生させることができる。また、運転者がアクセルペダル50を再度踏み込むと、ストローク量Sの増加に伴って減速度補正係数khoseiが小さくなり、減速度補正値ΔGhoseiが小さくなるように補正する。ストローク量Sが所定値Sa0を超えると減速度制御は行わず、減速度補正値ΔGhoseiは0となるので、運転者のアクセルペダル操作意図に応じて速やかに加速することができる。これにより、運転者に煩わしさを与えることなくリスク度RPの伝達を確実に行うことができる。
《第7の実施の形態》
つぎに、本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図19〜図21を用いて説明した第6の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。ここでは、第6の実施の形態との相違点を主に説明する。
第7の実施の形態では、運転者によるアクセルペダル50の操作意図を、アクセルペダル50の操作速度に基づいて検出する。そして、操作速度から検出した運転者のアクセルペダル操作意図を用いて減速度補正係数khoseiを算出し、リスク度RPに応じて算出された減速度ΔGを補正する。第7の実施の形態においては、図22のフローチャートにおけるステップS600でのアクセルペダル操作意図検出処理、およびステップS700での減速度補正係数算出処理のみが、上述した第6の実施の形態と相違する。
まず、図31のフローチャートを用いて、ステップS600における操作意図検出処理について説明する。
ステップS611では、ステップS100で読み込んだアクセルペダルストローク量Sを用いて、微分処理によりアクセルペダル操作速度Vsを算出する。操作速度Vsは、例えば、コントローラ200のメモリに記憶された前回のストローク量Sと現在のストローク量Sとを用いて算出することができる。なお、アクセルペダル操作速度Vsが正の値である場合(Vs>0)は、アクセルペダル50が踏み込まれていることを示し、アクセルペダル操作速度Vsが負の値である場合(Vs<0)は、アクセルペダル50が戻されていることを示す。
ステップS612では、ステップS611で算出した操作速度Vsが負の所定値Vsa0以下であるか否かを判定する。ステップS612が肯定判定され、アクセルペダル50が所定値Vsa0以上の速い速度で戻されている場合は、ステップS613へ進む。ステップS613では、運転者はアクセルペダル50を戻す意図があると判断し、状態フラグflgSTATEを1にセットして終了する。ステップS612が否定判定されると、ステップS614へ進む。
ステップS614では、操作速度Vsが正の所定値Vsa1以上であるか否かを判定する。ステップS614が肯定判定され、アクセルペダル50が所定値Vsa1以上の速度で踏み込まれている場合は、ステップS615に進む。ステップS615では、運転者はアクセルペダル50を踏み込む意図があると判断し、状態フラグflgSTATEを0にセットして終了する。ステップS614が否定判定されると、前回周期で設定した状態フラグflgSTATEをそのまま使用する。
つぎに、図32のフローチャートを用いて、ステップS700における減速度補正係数算出処理について説明する。
ステップS711では、ステップS600で設定した状態フラグflgSTATEが1か否かを判定する。ステップS711が否定判定され、運転者にアクセルペダル50を踏み込む意図がある場合は、ステップS715へ進む。ステップS715では、減速度を発生させないように、減速度補正係数khoseiに0をセットする。さらに、ステップS100で読み込んだ現在のアクセルペダルストローク量Sを、ストローク量基準値Sbase1として設定する。一方、ステップS711が肯定判定され、運転者にアクセルペダル50を戻す意図がある場合は、ステップS712に進む。
ステップS712では、アクセルペダル操作速度Vsが0以下(Vs≦0)か否か、すなわちアクセルペダル50が戻されているか否かを判定する。ステップS712が肯定判定され、運転者にアクセルペダル50を戻す意図があり、かつアクセルペダル50が戻されている場合は、ステップS713に進む。
ステップS713では、アクセルペダルストローク量Sを用いて、以下の(式8)に従って減速度補正係数khoseiを算出する。
khosei=1−S/Sbase1 (式8)
ここで、ストローク量基準値Sbase1は、ステップS715において設定した値であり、状態フラグflgSTATEが0から1に切り換わる直前、すなわちアクセルペダル50の戻し意図が検出される直前のアクセルペダルストローク量Sである。(式8)において、アクセルペダルストローク量S=Sbase1の時は減速度補正係数khosei=0である。
ステップS712が否定判定され、状態フラグflgSTATEは1であるがアクセルペダル50が踏み込まれている場合は、ステップS714に進む。ステップS714では、アクセルペダルストローク量Sおよびアクセルペダル操作速度Vsを用いて、以下の(式9)に従って減速度補正係数khoseiを算出する。
khosei=1−S/{Vs/Vsa1・(S−Sbase1)+Sbase1} (式9)
ここで、Vsa1は、ステップS614でアクセルペダル50の踏み込み意図があるか否かを判断するために用いた所定値である。
(式9)を用いて減速度補正係数khoseiを算出することにより、ストローク量Sが0のときは減速度補正係数khoseiは1となる。また、ストローク量Sがストローク量基準値Sbase1、または、操作速度Vsが正の所定値Vsa1のとき、減速度補正係数khoseiは0となる。
このように、(式8)(式9)を用いることにより、状態フラグflgSTATEの切り換わり時にも減速度補正値ΔGhoseiが滑らかに変化するように、減速度補正係数khoseiを設定できる。例えば、(式9)を用いて減速度補正係数khoseiを算出すると、アクセルペダル50が踏み込まれて操作速度Vsが所定値Vsa1に近づくにつれて、減速度補正係数khoseiが0に近づいていく。操作速度Vsがさらに速くなり所定値Vsa1以上となると、状態フラグflgSTATEが0に切り換わり、減速度補正係数khoseiは0となる。このように、状態フラグflgStateが切り換わる際に減速度補正係数khoseiが滑らかに変化するので、減速度補正値ΔGhoseiが大きく変動することなく、滑らかに変化する減速度が発生する。
次に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を、自車両が先行車両に追従走行している場合を例として、図33(a)〜(g)を用いて説明する。図33(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vf、及び先行車速Vaの変化を示し、(b)は(a)の走行状況に対応するリスク度RPの変化、(c)は(a)に対応するアクセルペダル反力Fの変化、(d)は(a)に対応するアクセルペダルストローク量Sの変化、(e)は(a)に対応するアクセルペダル操作速度Vsの変化、(f)は(a)に対応する減速度補正係数khoseiの変化、(g)は(a)に対応する減速度補正値ΔGhoseiの変化をそれぞれ示す。
図33(a)に示すように自車両が車間距離D=D1を保って先行車両に追従走行する場合、時刻T=Tbで先行車速Vaが低下を始めると、車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少によりリスク度RPが増加し、図33(c)に示すようにアクセルペダル反力Fが増加する。アクセルペダル反力Fの増加を受けて、運転者がアクセルペダル50を所定値|Vsa0|以上の速度で戻し方向へ操作すると、図33(g)に示すように減速度が発生し、減速度制御が開始される。このとき、図33(f)に示すように、ストローク量Sおよび操作速度Vsの変化に応じて減速度補正係数khoseiが増加している。図33(g)に示す減速度は減速度補正値ΔGhoseiであり、リスク度RPに応じた減速度ΔGを、図33(f)に示すような減速度補正係数khoseiによって補正することにより、滑らかに変化する減速度が発生する。
ストローク量Sの減少と減速度補正値ΔGhoseiの発生により自車速Vfが減少し、車間距離Dが増加する。これに伴いリスク度RPが減少し、運転者はアクセルペダル50を操作して再び先行車両に追従走行するよう自車速Vfを調節する。このとき、アクセルペダル50が所定値Vsa1以上の速度で踏み込まれるまで、アクセルペダル操作速度Vsに応じて減速度補正値ΔGhoseiが発生する。
このように、上述した第7の実施の形態においては、第6の実施の形態の効果に加えて、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)アクセルペダル50の操作速度Vsを検出し、アクセルペダル50が所定値|Vsa0|(第4の所定値)以上の速度で戻す方向に操作されると、運転者はアクセルペダル50を戻す意図があると判断し、所定値|Vsa1|(第5の速度)以上の速度で踏み込む方向に操作されると、運転者はアクセルペダル50をい踏み込む意図があると判断する。これにより、運転者のアクセルペダル操作意図を、上述した第6の実施の形態に比べて、より早いタイミングで検出することができる。運転者の意図を判断することができる。
(2)運転者の操作意図が、アクセルペダル50の踏み込みから戻しへと移行する時のアクセルペダルストローク量Sを、ストローク量基準値Sbase1として記憶し、ストローク量基準値Sbase1に対するストローク量Sの割合に基づいて、減速度補正係数khoseiを算出し、減速度ΔGを補正した。例えば、先行車に追従走行中に運転者が微妙にアクセルペダル50を戻し操作した場合、その戻し量が小さいときは小さな減速度を発生させ、戻し量が大きなときは大きな減速度を発生させる。これにより、運転者の意図にあった減速度を滑らかに発生させることができ、自車両周囲のリスク度RPを認識しながら、先行車に対する追従性を向上させることができる。
(3)アクセルペダル操作速度Vsをさらに用いて減速度補正係数khoseiを算出し、減速度ΔGを補正した。これにより、運転者のアクセルペダル操作に応じて適切な減速度制御を行うことができる。とくに、運転者の操作意図判断に用いた所定値(第5の所定値)Vsa1を用いて減速度ΔGを補正することにより、運転者意図の切り換わり時にも滑らかな減速度が発生し、運転者の意図に応じた滑らかな減速度制御を行うことができる。また、運転者がアクセルペダル50を踏み込む場合、アクセルペダル50の操作速度Vs、若しくはストローク量Sの増加に伴い減速度ΔGが小さくなるように補正される。アクセルペダル50の踏み込み意図が検出されると減速度は発生しないため、運転者のアクセルペダル操作意図に応じて速やかに加速することができる。
《第8の実施の形態》
つぎに、本発明の第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図19〜図21を用いて説明した第6の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。ここでは、第6の実施の形態との相違点を主に説明する。
第8の実施の形態では、運転者によるアクセルペダル50の操作意図を、アクセルペダル50の操作速度、およびアクセルペダル50の操作方向を切り換えてからの操作量に基づいて検出する。そして、操作速度および操作量から検出した運転者のアクセルペダル操作意図を用いて減速度補正係数khoseiを算出し、リスク度RPに応じて算出された減速度ΔGを補正する。第8の実施の形態においては、図22のフローチャートにおけるステップS600でのアクセルペダル操作意図検出処理、およびステップS700での減速度補正係数算出処理のみが、上述した第6の実施の形態と相違する。
まず、図34のフローチャートを用いて、ステップS600における操作意図検出処理について説明する。
ステップS621では、ステップS100で読み込んだアクセルペダルストローク量Sを用いて、微分処理によりアクセルペダル操作速度Vsを算出する。操作速度Vsは、例えば、コントローラ200のメモリに記憶された前回のストローク量Sと現在のストローク量Sとを用いて算出することができる。なお、アクセルペダル操作速度Vsが正の値である場合(Vs>0)は、アクセルペダル50が踏み込まれていることを示し、アクセルペダル操作速度Vsが負の値である場合(Vs<0)は、アクセルペダル50が戻されていることを示す。
ステップS622では、ステップS622で算出した操作速度Vsが0よりも小さい(Vs<0)か否かを判定する。ステップS622が肯定判定され、アクセルペダル50を戻す方向に操作している場合は、ステップS623に進む。ステップS623では、アクセルペダル50を戻す方向に操作してからのアクセルペダル操作量Soffを算出する。アクセルペダル50を戻し始めてからの操作量Soffは、以下の(式10)によって算出する。
Soff=Soff−Vs (式10)
アクセルペダル50を戻し始めてからの操作量Soffは、(式10)に示すように前回周期で設定した操作量Soffから、ステップS621で算出したアクセルペダル操作速度|Vs|、すなわちサンプル周期当たりの操作量を加算することによって算出できる。また、ここでは、アクセルペダル50を踏み込む方向に操作してからのアクセルペダル操作量Sonに0をセットする。
ステップS624では、ステップS623で算出した、アクセルペダル50を戻す方向に操作してからの操作量Soffが所定値Sa1よりも大きいか否かを判定する。ステップS625が肯定され、アクセルペダル50を戻している状態で、戻し始めてからの操作量Soffが所定値Sa1よりも大きい場合は、ステップS625に進む。ステップS625では、運転者はアクセルペダル50を戻す意図があると判断し、状態フラグflgSTATEを1にセットして終了する。ステップS624が否定判定されると、前回周期で設定した状態フラグflgSTATEをそのまま使用する。
ステップS622が否定判定されると、ステップS626へ進む。ステップS626では、操作速度Vsが0よりも大きい(Vs>0)か否かを判定する。ステップS626が肯定判定され、アクセルペダル50が踏み込まれている場合は、ステップS627に進む。ステップS627では、アクセルペダル50を踏み込む方向に操作してからのアクセルペダル操作量Sonを算出する。アクセルペダル50を踏み込み始めてからの操作量Sonは、以下の(式11)によって算出する。
Son=Son+Vs (式11)
アクセルペダル50を踏み込み始めてからの操作量Sonは、(式11)に示すように前回周期で設定した操作量Sonから、ステップS621で算出したアクセルペダル操作速度Vs、すなわちサンプル周期当たりの操作量を加算することによって算出できる。また、ここでは、アクセルペダル50を戻す方向に操作してからのアクセルペダル操作量Soffに0をセットする。
ステップS628では、ステップS627で算出したアクセルペダル50を踏み込む方向に操作してからの操作量Sonが所定値Sa2よりも大きいか否かを判定する。ステップS628が肯定判定され、アクセルペダル50を踏み込んでいる状態で、踏み込み始めてからの操作量Sonが所定値Sa2よりも大きい場合は、ステップS629に進む。ステップS629では、運転者はアクセルペダル50を踏み込む意図があると判断し、状態フラグflgSTATEを0にセットして終了する。ステップS628が否定判定されると、前回周期で設定した状態フラグflgSTATEをそのまま使用する。また、ステップS626が否定判定され、操作速度Vs=0の場合も、前回周期で設定した状態フラグflgSTATEをそのまま使用する。
つぎに、図35のフローチャートを用いて、ステップS700における減速度補正係数算出処理について説明する。
ステップS721では、ステップS600で設定した状態フラグflgSTATEが1か否かを判定する。ステップS721が否定判定され、運転者にアクセルペダル50を踏み込む意図がある場合は、ステップS725へ進む。ステップS725では、減速度を発生させないように減速度補正係数khoseiに0をセットする。さらに、ステップS100で読み込んだ現在のアクセルペダルストローク量Sを、ストローク量基準値Sbase2として設定する。ステップS721が肯定判定され、運転者にアクセルペダル50を踏み込む意図がある場合は、ステップS722へ進む。
ステップS722では、ステップS600で算出したアクセルペダル50を踏み込み始めてからの操作量Sonが0であるか否かを判定する。ステップS722が肯定判定され、運転者にアクセルペダル50を戻す意図があり、アクセルペダル50が戻し方向に操作されている場合は、ステップS723に進む。
ステップS723では、アクセルペダルストローク量Sを用いて、以下の(式12)に従って減速度補正係数khoseiを算出する。
khosei=1−S/Sbase2 (式12)
ここで、ストローク量基準値Sbase2は、ステップS725において設定した値であり、状態フラグflgSTATEが0から1に切り換わる直前、すなわちアクセルペダル50の戻し意図が検出される直前のアクセルペダルストローク量Sである。(式12)において、アクセルペダルストローク量S=Sbase2の時は減速度補正係数khosei=0である。
ステップS722が否定判定され、状態フラグflgSTATEは1であるがアクセルペダル50が踏み込まれている場合は、ステップS724に進む。ステップS724では、アクセルペダル50が踏み込まれてからの操作量Sonを用いて、以下の(式13)に従って減速度補正係数khoseiを算出する。
khosei=1−S/{Son/Sa2・(S−Sbase2)+Sbase2} (式13)
ここで、Sa2は、ステップS628でアクセルペダル50の踏み込み意図があるか否かを判断するために用いた所定値である。
(式13)を用いて減速度補正係数khoseiを算出することにより、ストローク量Sが0のときは減速度補正係数khoseiは1となる。また、ストローク量Sがストローク量基準値Sbase2、またはアクセルペダル50を踏み込む方向に操作してからの操作量Sonが所定値Sa2のとき、減速度補正係数khoseiは0となる。
このように、(式12)(式13)を用いることにより、状態フラグflgSTATEの切り換わり時にも減速度補正値ΔGhoseiが滑らかに変化するように、減速度補正係数khoseiを設定できる。例えば、(式13)を用いて減速度補正係数khoseiを算出すると、アクセルペダル50が踏み込まれ、踏み込み開始からの操作量Sonが所定値Sa2に近づくにつれて、減速度補正係数khoseiが0に近づいていく。アクセルペダル50がさらに踏み込まれ、踏み込み開始からの操作量Sonが所定値Sa2以上となると状態フラグflgSTATEが0に切り換わり、減速度補正係数khoseiは0となる。このように、状態フラグflgStateが切り換わる際に減速度補正係数khoseiが滑らかに変化するので、減速度補正値ΔGhoseiが大きく変動することなく、滑らかに変化する減速度が発生する。
次に、第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置の作用を、自車両が先行車両に追従走行している場合を例として、図36(a)〜(g)を用いて説明する。図36(a)は時間軸に対する車間距離D、自車速Vf、及び先行車速Vaの変化を示し、(b)は(a)の走行状況に対応するリスク度RPの変化、(c)は(a)に対応するアクセルペダル反力Fの変化、(d)は(a)に対応するアクセルペダルストローク量Sの変化、(e)は(a)に対応するアクセルペダル50を戻す方向に操作してからの操作量Soff、及び踏み込む方向に操作してからの操作量Sonの変化、(f)は(a)に対応する減速度補正係数khoseiの変化、(g)は(a)に対応する減速度補正値ΔGhoseiの変化をそれぞれ示す。
図36(a)に示すように自車両が車間距離D=D1を保って先行車両に追従走行する場合、時刻T=Tcで先行車速Vaが低下を始めると、車間距離Dが減少する。車間距離Dの減少によりリスク度RPが増加し、図36(c)に示すようにアクセルペダル反力Fが増加する。アクセルペダル反力Fの増加を受けて運転者がアクセルペダル50を戻し始め、アクセルペダル50を戻す方向に操作してからの操作量Soffが所定値Sa1よりも大きくなると、図36(g)に示すように減速度が発生し、減速度制御が開始される。このとき、図36(f)に示すように、ストローク量Sの減少に応じて減速度補正係数khoseiが増加している。図36(g)に示す減速度は減速度補正値ΔGhoseiであり、リスク度RPに応じた減速度ΔGを、図36(f)に示すような減速度補正係数khoseiによって補正することにより、滑らかに変化する減速度が発生する。
ストローク量Sの減少と減速度補正値ΔGhoseiの発生により自車速Vfが減少し、車間距離Dが増加する。これに伴いリスク度RPが減少し、運転者はアクセルペダル50を操作して再び先行車両に追従走行するよう自車速Vfを調節する。このとき、アクセルペダル50を踏み込み方向に操作してからの操作量Sonが所定値Sa2を上回るまで、ストローク量Sおよび踏み込んでからの操作量Sonに応じて減速度補正値ΔGhoseiが発生する。
このように、上述した第8の実施の形態においては、上述した第6の実施の形態の効果に加えて、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)アクセルペダル50の操作速度Vsとストローク量Sとを組み合わせてアクセルペダル50の操作意図を検出した。具体的には、アクセルペダル50の操作方向、すなわち戻されているか、踏み込まれているかが切り換わってからのアクセルペダルストローク量Son、Soffを算出した。アクセルペダル50を戻す方向に操作してからの操作量Soffが所定値Sa1(第6の所定値)を越えた場合に、運転者にアクセルペダル50を戻す意図があると判断し、アクセルペダル50を踏み込む方向に操作してからの操作量Sonが所定値Sa2(第7の所定値)を越えた場合に、運転者にアクセルペダル50を踏み込む意図があると判断する。これにより、例えばアクセルペダル50をゆっくりと操作した場合でも、その操作量に応じて運転者の操作意図を検出するので、上述した第6および第7の実施の形態に比べて、より早いタイミングで運転者の操作意図を検出することができる。
(2)アクセルペダル操作意図が踏み込みから戻しに移行するときのストローク量S(ストローク量基準値Sbase2)に対するストローク量Sの割合に基づいて、減速度補正係数khoseiを算出する。これにより、上述した第7の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、アクセルペダル50の操作方向が切り換わってからのアクセルペダルストローク量Son、Soffを用いて減速度補正係数khoseiを算出し、減速度ΔGを補正するので、運転者の意図にあった減速度を滑らかに発生させることができる。とくに、運転者がアクセルペダル50を踏み込む場合、アクセルペダル50を踏み込む方向に操作してからの操作量Son、またはアクセルペダルストローク量Sの増加に伴って減速度ΔGが小さくなるように補正される。一方、運転者にアクセルペダル50を踏み込む意図があると判断した場合には減速度は発生しないため、運転者のアクセルペダル操作意図に応じて速やかに加速することができる。
なお、上述した第6から第8の実施の形態においては、リスク度RPに対するアクセルペダル反力制御指令値FAの特性を図23のマップのように設定した。ただし、これには限らず、例えば図4に示す第1の実施の形態で用いたマップを用いることもできる。
上述した第7および第8の実施の形態においては、アクセルペダルストローク量Sを微分処理することによりペダル操作速度Vsを算出したが、アクセルペダル60の操作速度Vsを直接検出する機構を設けることもできる。
上述した第6の実施の形態において、運転者のアクセルペダル操作意図が踏み込み意図から戻し意図に移行する直前のアクセルペダルストローク量Sを基準値として記憶し、第7あるいは第8の実施の形態と同様に、この基準値を用いて減速度補正値ΔGhoseiを算出することもできる。
上記第1〜第8の実施の形態においては、自車両と先行車との余裕時間TTCを算出し、余裕時間TTCの関数として自車両周囲のリスク度RPを算出した。ただし、これには限定されず、自車両と先行車との車間時間THWをさらに用いてリスク度RPを算出することもできる。この場合、例えば、それぞれ適切に重み付けをした余裕時間TTCの逆数と車間時間THWの逆数からリスク度RPを算出することができる。
上記第1〜第8の実施の形態においては、アクセルペダル反力制御に減速度制御あるいはシートスライド制御を組み合わせたが、これには限定されず、例えばリスク度RPに応じて操舵反力制御やブレーキペダル反力制御を行うシステムに、減速度制御あるいはシートスライド制御を組み合わせることもできる。
なお、上記実施の形態においては、状況認識手段としてレーザレーダ10と車速センサ20とを用い、操作部材としてアクセルペダル50を用い、反力制御手段として反力制御装置80を用い、加速度変化発生手段として減速度計算部35およびエンジン制御コントローラ40、あるいはシート移動量計算部100およびシートスライド制御コントローラ110を用いた。また、減速度算出手段として減速度計算部35またはシート移動量計算部100を用い、制動力制御手段としてエンジン制御コントローラ40を用い、操作量検出手段としてアクセルペダルストローク量検知部70を用い、操作速度検出手段としてアクセルペダルストローク量検知部70と反力制御装置80とを用いた。さらに、運転席移動制御手段としてシートスライド制御コントローラ110を用いた。
また、減速度補正手段および操作意図検出手段としてコントローラ200を用い、操作速度検出手段および切換操作量算出手段として、アクセルペダルストローク検知部70とコントローラ200を用いた。なお、第1から第4の実施の形態のリスク度計算部30および減速度計算部35は、第6から第8の実施の形態のリスク度算出部202および減速度算出部204にそれぞれ対応する。また、第1から第4の実施の形態の反力制御装置80は、第6から第8の実施の形態の運転操作反力決定部203およびアクセルペダル反力制御装置80に対応する。
ただし、これらには限定されず、例えば、状況認識手段としてレーザレーダ10の代わりに別方式のミリ波レーダ等を用いることもできる。また、エンジン制御コントローラ40はブレーキアクチュエータ41およびスロットルアクチュエータ42を制御するとしたが、いずれか一方のみを用いることもできる。また、車両に減速度ΔGを発生させるためにエンジン回転数を制御することもできる。