従来、マイクロ波帯やミリ波帯等の高周波信号で作動する半導体素子等の電子部品に接続させて高周波信号を伝送させるための高周波伝送用回路基板を外部の電気回路基板等のの高周波線路配線に接続させるために、高周波伝送用回路基板を電気回路基板上に表面実装した際に、高周波伝送用回路基板と電気回路基板間に存在するキャパシタンス成分が増大しないようにし、高周波信号を良好に伝送させるために、高周波伝送線路付近の高周波伝送用回路基板の誘電体を除去し溝を形成した高周波伝送用回路基板が用いられていた。このような、溝を有した高周波伝送用回路基板を図6に示す。
図6において、高周波伝送用回路基板は、誘電体基板21と、誘電体基板21の上側主面にその一端が電子部品26と接続される第一の線路導体22aと、第一の線路導体22aの周囲に所定間隔を設けて形成された第一の接地導体23aとが形成され、誘電体基板21の下側主面の第一の線路導体22aの他端に対向する位置から誘電体基板21の下側主面の端まで形成され、電気回路基板31との接続部を形成して成る第二の線路導体22bと、第二の線路導体22bの周囲に所定間隔を設けて形成された第二の接地導体23bとが形成され、第一の線路導体22aの他端から第一の線路導体22aに対向する第二の線路導体22bの一端にかけて線路接続導体22cが形成されるとともに誘電体基板21の端面に第一の接地導体23aから第二の接地導体23bにかけて接地接続導体23cとが形成されて成り、第二の線路導体22bと第二の接地導体23bとの間に位置する誘電体基板21の下面に、溝24が設けられている。
誘電体基板21は、上面に高周波信号で作動する半導体素子等の電子部品26が載置される載置部21aを有するアルミナセラミックスやガラスセラミックス等の無機系誘電体材料、あるいはポリイミドやガラスエポキシ等の有機系誘電体材料、あるいはセラミックス粉末等の無機誘電体粉末をエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂で結合して成る複合誘電体材料等から成る誘電体基板であり、主にこの誘電体基板によって高周波伝送用回路基板が形成される。
また、誘電体基板21の上側主面に形成されその一端が電子部品26と接続される第一の線路導体22aと、下側主面にその一端から誘電体基板21の下面の端まで形成され電気回路基板31との接続部を形成して成る第二の線路導体22bと、第一の線路導体22aの他端から第二の線路導体22bの一端にかけて形成された線路接続導体22cとから線路導体22が成る。
誘電体基板21の上側主面の第一の線路導体22aの周囲に所定間隔を設けて形成された第一の接地導体23aと、誘電体基板21の下側主面の第二の線路導体22bの周囲に所定間隔を設けて形成された第二の接地導体23bと、誘電体基板21の端面の第一の接地導体23aから第二の接地導体23bにかけて形成された接地接続導体23cとから接地導体23が成る。
線路導体22および接地導体23は、メタライズ導体や金属薄膜,金属箔,金属板等を用いて、厚膜印刷法あるいは各種の薄膜形成方法やメッキ処理法等により形成される。その厚みや形状,線路幅,線路導体22と接地導体23との間隔等は、線路導体22を伝送する高周波入出力信号の周波数や特性インピーダンス等に応じて適宜設定される。
そして、図6の高周波伝送用回路基板においては、第二の線路導体22bと第二の接地導体23bとの間に位置する誘電体基板21の下面に、溝24が設けられている。このように、誘電体基板21の上側主面に半導体素子等の電子部品26を載置するための載置部21aが形成され、載置部21aの周辺から誘電体基板21の下側主面の端にかけて電子部品26と電気回路基板31の高周波線路配線32とを電気的に導通接続するための線路導体22が形成され、また線路導体22に並行するようにして載置部21aの周辺から誘電体基板21の下側主面の端にかけて接地導体23が形成されることによって、高周波伝送用回路基板と成る(例えば、特許文献1参照)。
そして、載置部21aに電子部品26が載置固定されるとともに、第一の線路導体22aの一端および第一の接地導体23aにボンディングワイヤ等の電気的接続手段27を介して電子部品26が電気的に接続され、第二の線路導体22bの一端が導電性接着剤25を介して電気回路基板31の高周波線路配線32に接続され、第二の接地導体23bが導電性接着剤25を介して電気回路基板31の接地配線33に接続されることによって、電子部品26が電気回路基板31に接続され、電子部品26に高周波信号が入出力されることと成る。
そして、溝24を設けたことにより、高周波伝送用回路基板を構成する誘電体基板21とこの高周波伝送用回路基板が実装される電気回路基板31との間に発生するキャパシタンス成分を軽減することができ、誘電体基板21と電気回路基板31との間における電界集中が緩和されるため、高周波伝送用回路基板を電気回路基板31に表面実装した際の入出力部における高周波信号に対する高周波的なインピーダンス不整合を抑止し、高周波信号の損失を低く抑え、その結果、高周波信号を良好に伝送させることができる。
特開2003−152124号公報
本発明の高周波伝送用回路基板および高周波回路基板について以下に詳細に説明する。図1(a)は高周波伝送用回路基板を電気回路基板に接続した高周波回路基板の参考例を示す斜視図、図1(b)は図1(a)で用いられる高周波伝送用回路基板の下面図、図1(c)は図1(a)の第一および第二の線路導体および高周波線路配線の中央部における断面図、図2は本発明の高周波回路基板の実施の形態を示す斜視図、図3は高周波回路基板の参考例を示す斜視図、図4は本発明の高周波回路基板の実施の形態の他の例を示す斜視図、図5(a)〜(c)は高周波伝送用回路基板の実施の形態の他の例を示し、溝周辺の腰部拡大平面図である。
これらの図において、1は誘電体基板、2は線路導体(2aは第一の線路導体、2bは第二の線路導体、2cは線路接続導体)、3は接地導体(3aは第一の接地導体、3bは第二の接地導体、3cは接地接続導体、3dは内層接地導体層)、4は溝、5は導電性接着剤、6は電子部品、7は電気的接続手段、11は電気回路基板、12は高周波線路配線、13は接地配線である。なお、線路導体2は第一の線路導体2aと第二の線路導体2bと線路接続導体2cとから成り、接地導体3は、第一の接地導体3aと第二の接地導体3bと接地接続導体3cとから成るか、または内層接地導体層3dから成る。なお、図1(a),図1(b),図2,図3,図4,図5(b),図5(c)において、導体が形成されている基板表面部には便宜的にクロスハッチングを付している。従って、これらクロスハッチング部は、断面を示すものではない。
高周波伝送用回路基板は、図1に示されるように、誘電体基板1と、誘電体基板1の上側主面に形成され、一端が電子部品6に接続される第一の線路導体2aと、第一の線路導体2aの周囲に所定間隔を設けて形成された第一の接地導体3aと、誘電体基板1の下側主面に、第一の線路導体2aの他端に対向する位置から下側主面の端まで形成された第二の線路導体2bと、第二の線路導体2bの周囲に所定間隔を設けて形成された第二の接地導体3bと、誘電体基板1の内部に、第一の線路導体2aの他端から誘電体基板1を介して対向する第二の線路導体2bの一端にかけて貫通導体によって形成された線路接続導体2cと、線路接続導体2cに隣接して第一の接地導体3aから第二の接地導体3bにかけて誘電体基板1の側面に形成された接地接続導体3cとを具備し、第二の線路導体2bの他端側の誘電体基板1の一側面に、第二の線路導体2bの他端と接する一対の溝4が第二の線路導体2bの両側に設けられているものである。
また高周波伝送用回路基板は、図3に示されるように、誘電体基板1と、誘電体基板1の上側主面に形成され、一端が電子部品6に接続される第一の線路導体2aと、誘電体基板1の下側主面に第一の線路導体2aの他端に対向する位置から下側主面の端まで形成された第二の線路導体2bと、誘電体基板1の内部に第一の線路導体2aの他端から誘電体基板1を介して対向する第二の線路導体2bの一端にかけて貫通導体によって形成された線路接続導体2cと、誘電体基板1の内層に線路接続導体2cと所定の間隔を設けるとともに第一の線路導体2aおよび第二の線路導体2bと並行するように形成された内層接地導体層3dとを具備し、第二の線路導体2bの他端側の誘電体基板1の一側面に、第二の線路導体2bの他端と接する一対の溝4が第二の線路導体2bの両側に設けられているものである。
本発明の高周波伝送用回路基板は、図2,図4に示されるように、一対の溝4の間に位置する上側主面側の誘電体基板11が除去されることによって段差部8が形成されているものである
高周波回路基板は、上面に高周波線路配線12が形成された電気回路基板11の上面に、上記構成の高周波伝送用回路基板の下側主面が載置されるとともに、第二の線路導体2bの他端が高周波線路配線12に電気的に接続されているものである。なお、高周波伝送用回路基板に第二の接地導体3bが設けられている場合は、第二の接地導体3bが電気回路基板11の接地配線13に電気的に接続される。
図1〜図5においては、高周波伝送用回路基板と電気回路基板11との高周波伝送線路の接続は導電性接着剤5を用いた形態を示す。また、第一の線路導体2aの一端には、載置部1aの上面に載置固定された高周波用半導体素子等の電子部品6の電極と第一の線路導体および第一の接地導体とが電気的接続手段7としてのボンディングワイヤを用いて電気的に接続されている形態を示す。
また、載置部1aには、電子部品6が接着固定されるための導体層(図示せず)が形成されている。電子部品6は、この導体層に銀(Ag)ロウ、金(Au)−錫(Sn)半田やAgエポキシ(Agの金属粉末を含有するエポキシ樹脂)等の導電性接合材を介して接着される。
誘電体基板1は、アルミナ質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミックス、または、エポキシ樹脂等の樹脂から成る。
誘電体基板1は、図1,図2に示されるように、上側主面に電子部品6を載置する載置部1aを有し、誘電体基板1の上側主面にその一端が電子部品6と接続される第一の線路導体2aと、第一の線路導体2aの周囲に所定間隔を設けて形成された第一の接地導体3aとが形成され、誘電体基板1の下側主面に、その一端が第一の線路導体2aの他端と対向し、他端が誘電体基板1の下側主面の端まで形成されるとともに、この他端が電気回路基板11の高周波線路配線12に接続される第二の線路導体2bと、第二の線路導体2bの周囲に所定間隔を設けて形成された第二の接地導体3bとが形成され、第一の線路導体2aの他端から第二の線路導体2bの一端にかけて線路接続導体2cが形成されるとともに第一の接地導体3aから第二の接地導体3bにかけて接地接続導体3cが形成される。そして、線路接続導体2cおよび接地接続導体3cによって、誘電体基板1の上下主面間で高周波信号の伝送が行われる。即ち、線路導体2は第一の線路導体2aと第二の線路導体2bと線路接続導体2cとから成り、接地導体3は、第一の接地導体3aと第二の接地導体3bと接地接続導体3cとから成ることによって高周波信号の伝送が行なわれる。
また、誘電体基板1の端の第二の線路導体2bと高周波線路配線12との接続部の幅方向の両側に上下主面間を貫通する一対の溝4が、その第二の線路導体2b側の側面が第二の線路導体2bと接するように形成される。
または、誘電体基板1の接地導体3は、図3,図4に示されるように、第一の接地導体3aと第二の接地導体3bと接地接続導体3cとが設けられる代わりに、内層接地導体層3dが誘電体基板1の内層に線路接続導体2cと接続しないように所定の間隔を設けるとともに第一の線路導体2aおよび第二の線路導体2bと並行するように形成されていてもよい。
また、電気回路基板11は、エポキシ樹脂等の樹脂、または、アルミナ質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミックスから成り、上面に高周波線路配線12と高周波線路配線12の両側に所定間隔をあけて形成された接地配線13とを有している。
誘電体基板1がセラミックスから成る場合、線路導体2および接地導体3はメタライズ法により形成されているのがよい。
まず、図1,図2に示されるように、接地導体3が第一の接地導体3aと第二の接地導体3bと接地接続導体3cとから成る場合、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートの上側主面に第1の線路導体2aおよび第1の接地導体3aと成るタングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)等から成る金属ペーストがスクリーン印刷法によって印刷塗布され、その下側主面に第2の線路導体2bおよび第2の接地導体3bと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストがスクリーン印刷法によって印刷塗布される。さらに、誘電体基板1の第1の線路導体2aの他端と第2の線路導体2bの一端とを接続するようにして誘電体基板1の上下主面間を貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に線路接続導体2cと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストが吸引法等によって形成される。貫通孔内の線路接続導体2cは、金属導体が貫通孔内を充填するように形成されてもよいし、貫通孔の内壁を覆うように形成されて内側が空洞状に形成されてもよい。
また、第1の接地導体3aと第2の接地導体3bとを接続するようにして誘電体基板1の側面に接地接続導体3cと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストがスクリーン印刷法等の印刷法によって印刷塗布される。または、誘電体基板1の側面にキャスタレーション(切り欠き)を設けるとともに、このキャスタレーションの内面に接地接続導体3cと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストが塗布される。または、第1の接地導体3aと第2の接地導体3bとを接続するようにして誘電体基板1の上下主面間を貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に接地接続導体3cと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストが吸引法等によって充填されるか内壁を覆うように形成される。誘電体基板1が複数枚のセラミックグリーンシートが積層されて成る場合は、しかる後、複数枚のセラミックグリーンシートを積層することによって、誘電体基板1と成るセラミック生積層体が形成される。
以上のようにして、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートの上側主面に第1の線路導体2aおよび第1の接地導体3aと成る金属ペーストが、下側主面に第2の線路導体2bおよび第2の接地導体3bと成る金属ペーストが、上下主面間にかけて線路接続導体2cおよび接地接続導体3cと成る金属ペーストが施された後、誘電体基板1が高温炉に投入されることによって、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートが焼成され、セラミック基板と成るとともに、これらの金属ペーストが焼成されメタライズ導体と成る。
次に、図3,図4に示されるように、接地導体3が内層接地導体層3dから成る場合、誘電体基板1の上側主面と成るセラミックグリーンシートの上側主面に第1の線路導体2aと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストがスクリーン印刷法によって印刷塗布され、その下側主面となるセラミックグリーンシートの下側主面に第2の線路導体2bと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストがスクリーン印刷法によって印刷塗布される。さらに、誘電体基板1の内層と成るセラミックグリーンシートの一主面に内層接地導体層3dと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストが線路接続導体3cが形成される周囲を除いてスクリーン印刷法によって印刷塗布される。さらに、誘電体基板1の第1の線路導体2aの他端と第2の線路導体2bの他端とを接続するようにして誘電体基板1の上下主面間を貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に線路接続導体2cと成るW,Mo,Mn等から成る金属ペーストが吸引法等によって充填される。しかる後、複数枚のセラミックグリーンシートを積層することによって、誘電体基板1と成るセラミック生積層体が形成される。
以上のようにして、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートの上側主面に第1の線路導体2aと成る金属ペーストが、下側主面に第2の線路導体2bと成る金属ペーストが、誘電体基板1の内層と成るセラミックグリーンシートの一主面に内層接地導体層3dと成る金属ペーストが、上下主面間にかけて線路接続導体2cと成る金属ペーストが施された後、誘電体基板1と成るセラミック生積層体が高温炉に投入されることによって、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートが焼成されセラミック基板と成るとともに、これらの金属ペーストが焼成されメタライズ導体と成る。
なお、図示しないが、接地導体3は、図1,図2に示される形態と図3,図4に示される形態とが組み合わされ、第一の接地導体3aと第二の接地導体3bと接地接続導体3cと内層接地導体層3dとから成っていてもよく、この構成により、線路導体2に対する接地電位を強化することができ、効率良く高周波信号の伝送を行なうことができるものとなる。
また、図3,図4に示される形態において、電気回路基板11は図1,図2のような高周波線路配線12の周囲に所定間隔を設けて接地配線13が形成されたコプレーナ型としてもよく、この場合は、内層接地導体3dは接地接続導体3c等により接地配線13に接続される。電気回路基板11が図4のようなマイクロストリップ型である場合は、内層接地導体3dは電気回路基板11の下側主面に設けられた接地配線(図示せず)に接続される。
なお、第1の線路導体2aおよび第1の接地導体3a、第2の線路導体2bおよび第2の接地導体3bは薄膜形成法によって形成されていてもよく、その場合、第1の線路導体2aは窒化タンタル(Ta2N),ニクロム(Ni−Cr合金),チタン(Ti),パラジウム(Pd),白金(Pt)等から形成され、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートを焼成した後にスパッタリング等の薄膜形成法により形成される。
さらに、誘電体基板1の第二の線路導体2bおよび高周波線路配線12の接続部となる一側面において、第二の線路導体2bの幅方向の両側には、図1(a),(b)に示すように、上下主面間を貫通する一対の溝4が第二の線路導体2bの幅方向両端に接するように形成されている。この溝4は誘電体基板1がセラミックスから成る場合、誘電体基板1と成るセラミックグリーンシートの所定の位置に上下主面間を貫通する貫通孔を打ち抜き、次いでセラミックグリーンシートを貫通孔の中央で分断するように分割した後に焼成することによって形成される。
以上により、誘電体基板1の上下主面間で高周波信号の伝送を行なうことが可能な高周波伝送用回路基板と成る。
電気回路基板11は、高周波伝送用回路基板と同様、セラミックスから成る場合、その上面に高周波線路配線12および接地配線13がW,Mo,Mn等から成る金属ペーストを高温で焼成して形成される。または、高周波線路配線12および接地配線13は、Ta2N,Ni−Cr合金,Ti,Pd,Pt等から形成され、セラミックグリーンシートを焼成した後にスパッタリング等の薄膜形成法により形成される。
この電気回路基板11の上面に上記の高周波伝送用回路基板の下側主面が載置され、その後、高周波伝送用回路基板の下側主面に形成された第二の線路導体2bの他端と第二の接地導体3bとがそれぞれ高周波線路配線12と接地配線13とに電気的に接続され、高周波信号の伝送を行なうことが可能な高周波回路基板と成る。
高周波伝送用回路基板は、誘電体基板1の一側面の第二の線路導体2bの幅方向の両端に接するように上下主面間を貫通する一対の溝4が形成されている構成により、従来のように高周波伝送用回路基板の下側主面の第二の線路導体22bと第二の接地導体23bとの間に溝を形成することがないので、誘電体基板1に部分的に極端に厚みが薄くなる部分が生じるということがない。また、第二の線路導体2bの左右両側の誘電体が上下主面間で完全に除去され、誘電体基板1の一側面から奥側において高周波線路配線12および接地配線13の上面が誘電体基板1に挟まれることにより生じるキャパシタンス成分が、高周波線路配線12と接地配線13とがこの溝4を挟んで配置されることによって急激に変化することがなく、また、高周波伝送用回路基板の第一の接地導体3aとこの高周波伝送用回路基板が実装される電気回路基板の高周波線路配線12との間に発生するキャパシタンス成分が急激に変化するのを緩和させることができ、高周波信号を良好に伝送させることができる。
また、上下主面間を貫通する一対の溝4は、誘電体基板1の上下主面間を打ち抜いて形成できる構造であるため、誘電体基板1が薄型化しても溝4を設けるための加工が容易であるとともに、従来のように部分的に厚みが極端に薄い誘電体基板21とする必要がないことから、誘電体基板1の取扱いが容易であり、量産に適した高周波伝送用回路基板とすることができる。
また、一対の溝4が第二の線路導体2bの他端と接するように第二の線路導体2bの左右両側に設けられており、誘電体が上下主面間に亘って完全に除去されていることから、高周波伝送用回路基板を電気回路基板11に実装する際に、高周波伝送用回路基板の上側主面側から一対の溝4を目視することによって、第二の線路導体2bの位置および線路幅の大きさが判り、高周波線路配線12との位置合わせを正確かつ効率良く行なうことができる。特に、高周波伝送用回路基板の第二の線路導体2bの幅と電気回路基板11の高周波線路配線12とがほぼ同じ線路幅である場合、両側の溝4の内側に高周波線路配線12が見えなくなる位置に高周波伝送用回路基板を載置することにより、高周波伝送用回路基板と電気回路基板11とを極めて正確に位置合わせすることができる。
これにより、第二の線路導体2bを高周波線路配線12の所定の位置に正確に位置合わせして接続することができる。従って、第二の線路導体2bと高周波線路配線12との接続部におけるインピーダンス値を所定値内に整合させ、接続部を伝送する高周波信号に生じる反射損失や透過損失を低減することができ、高周波信号の伝送効率を良好なものとすることができる。また、位置合わせ作業が容易なものとなるので、生産性のよい高周波回路基板とすることができる。
さらには、高周波伝送用回路基板の上側から高周波伝送用回路基板の第二の線路導体2bと電気回路基板11の高周波線路配線12とを接続する導電性接着剤5の流れ具合を確認することができる。そして、第二の線路導体2bと高周波線路配線12との接着不良の有無の確認とともに、第二の線路導体2bまたは高周波線路配線12と、第二の接地導体3bまたは接地配線13との間での電気的短絡の有無も確認することができる。その結果、2つの基板の間において高周波信号を確実に伝送させることができる高周波回路基板を実現することができる。
高周波伝送用回路基板は、図2,図4に示すように一対の溝4の間に位置する上側主面側の誘電体基板1が除去されることによって段差部8が形成されているのがよい。この構成により、誘電体基板1の一側面における高周波線路配線12と接地配線13との間のキャパシタンス成分の急激な変化や、高周波伝送用回路基板の第一の接地導体3aとこの高周波伝送用回路基板が実装される電気回路基板11の高周波線路配線12との接続部付近に発生するキャパシタンス成分の急激な変化をさらに緩和することができ、高周波伝送用回路基板を電気回路基板11に表面実装した際の高周波信号に対する高周波的なインピーダンス不整合を緩やかにし、高周波信号を良好に伝送させることができる高周波回路基板となる。
また、段差部8となっている箇所では誘電体基板1が薄いものとなってしまうが、段差部8となっている箇所は一対の溝4の間に位置する上側主面側だけであり、段差部8における誘電体基板1の機械的強度が大幅に低減するということはない。段差部8の上面や側面は、図2,図3に示されるように、傾斜面とするとキャパシタンス成分の急激な変化をより緩和できる点でよいし、機械的強度の点でもよい。
なお、溝4の平面視形状は、種々の形状とすることができる。図1(a),図1(b),図2,図3,図4に示すような半円形状である他に、図5(a)に示すような四角形状であってもよい。図1(a),図1(b),図2,図3,図4に示すような半円形状であれば、溝4の平面視形状が曲線状と成ることから、溝4の内側面における応力集中点がなくなり、溝4を起点に誘電体基板1にクラック等の破損が生じ難くなるとともに、キャパシタンス成分の急激な変化を緩和しやすい。また、図5(a)に示すような四角形状であることにより、溝4の側面と高周波線路配線12の側面との位置合わせが容易となり、高周波伝送用回路基板を電気回路基板11に対して正確かつ作業効率良く位置合わせすることが可能と成る。
溝4の平面視形状は、図5(b)に示すような逆L字形状や図5(c)に示すような台形状であってもよい。図5(b)に示すような逆L字形状である場合、溝4の幅の狭い第二の線路導体2bの先端側では、一対の溝4の間に位置する誘電体基板1の幅を高周波線路配線12と同じ幅とし、溝4の幅が広い溝4の底側では、一対の溝4の間に位置する誘電体基板1の幅を高周波線路配線12よりも幅狭にする。この構成により、高周波伝送用回路基板を電気回路基板11に実装する際に、高周波伝送用回路基板の上側から溝4を観察することによって、溝4の幅の狭い第二の線路導体1bの先端側において、一対の溝4の間に位置する誘電体基板1によって高周波線路配線12を完全に覆うように位置合わせをすると、溝4の幅の広い底側において、高周波線路配線12が溝4から左右均等に露出することと成るので、高周波伝送用回路基板の第二の線路導体2bと電気回路基板11の高周波線路配線12とを接続するための導電性接着剤5の流れ具合を容易に確認することができ、高周波伝送用回路基板の第二の線路導体2bと電気回路基板11の高周波線路配線12との機械的な接合が強固に行なわれていることを容易に確認することができる。従って、第二の線路導体2bおよび高周波線路配線12が正常に接続されていることを即座に確認することができる。
また、図5(c)に示すような台形状の溝4である場合、溝4の誘電体基板1の第二の線路導体2bの先端側では、一対の溝4の間に位置する誘電体基板1の幅が高周波線路配線12と同じ幅とし、溝4の幅が広い溝4の底側では、一対の溝4の間に位置する誘電体基板1の幅を高周波線路配線12よりも幅狭にする。この構成により、高周波伝送用回路基板を電気回路基板11に実装する際に、高周波伝送用回路基板の上側から溝4を観察することによって、溝4の幅の狭い第二の線路導体1b先端側において、一対の溝4の間に位置する誘電体基板1によって高周波線路配線12を完全に覆うように位置合わせをすると、溝4の幅の広い底側において、高周波線路配線12が溝4から左右均等に露出することと成るので、高周波伝送用回路基板の第二の線路導体2bと電気回路基板11の高周波線路配線12とを接続するための導電性接着剤5の流れ具合を容易に確認することができ、高周波伝送用回路基板の第二の線路導体2bと電気回路基板11の高周波線路配線12との機械的な接合が強固に行なわれていることを容易に確認することができる。従って、第二の線路導体2bおよび高周波線路配線12が正常に接続されていることを即座に確認することができる。
溝4のその他の形状として、半円よりも大きな円弧形状や、図5(c)に示す台形状の斜辺が円弧状である形状等であってもよく、その他種々の形状とし得る。例えば、一対の溝4の底側の幅が狭くかつ底側で第二の線路導体2bの両側に接する溝4とし、第二の線路導体2bの先端側で溝4の幅が広くなるとともに一対の溝4の間の誘電体基板1の幅が狭くなり、第二の線路導体2bの先端が漸次幅狭となるような台形状としてもよい。また、この台形状の斜辺を階段状とし、各階段状のステップの幅が所定の大きさとなるようにしておけば、第二の線路導体2bの先端から左右何段目のステップが高周波線路配線12の縁と重なるかを見ることによって、左右方向にどれだけ位置がずれているのかを具体的に即座に計算することができ、位置合わせ作業を早くすることができる。
溝4の幅は、図1,図2のように高周波線路配線12と接地配線13との間より狭いものとしても、同じ幅としてもよい。高周波線路配線12を伝送する高周波信号の伝送特性を重視する場合、好ましくは、溝4の幅は高周波線路配線12と接地配線13との間と同じ幅とするのがよく、キャパシタンス成分の変化を有効に緩和することができる。但し、溝4の大きさが大きくなり、溝4を起点に誘電体基板1にクラック等の破損が生じやすくなるので、誘電体基板1が薄い場合、注意が必要である。
また、溝4の深さは、溝4の幅以下の寸法であるのがよい。これにより、溝4の大きさが大きくなりすぎるのを防止し、溝4を起点に誘電体基板1にクラック等の破損が生じ易くなるのを防止することができる。また、溝4の深さは、高周波線路配線12に伝送される高周波信号の波長の1/4の整数倍としてもよい。
なお、第一の線路導体2aと第二の線路導体2b、第一の接地導体3aと第二の接地導体3bと接地接続導体3c、高周波線路配線12と接地配線13の露出する表面には、ニッケル(Ni)や金(Au)等の耐食性に優れる金属を1〜20μm程度の厚さで被着させておくのが良く、線路導体2および接地導体3の酸化腐食を有効に防止し得るとともに、線路導体2と高周波線路配線12との接続、接地導体3と接地配線13との接続、および電子部品6と第一の線路導体2とのボンディングワイヤ等の電気的接続手段7を介しての接続を強固にし得る。従って、第一の線路導体2の露出表面には、例えば、厚さ1〜10μm程度のNiメッキ層と厚さ0.1〜3μm程度のAuメッキ層とが電解メッキ法や無電解メッキ法により順次被着されているのがより好ましい。
そして、載置部1aの上面に半導体素子等の電子部品6が載置固定され、第一の線路導体2aの一端(載置部1a側の端)および第一の接地導体3aにボンディングワイヤ等の電気的接続手段7により接続され、さらに第二の線路導体2bの他端(誘電体基板1の一側面側)がAgロウ、Au−Sn半田やAgエポキシ等の導電性接着剤5を介して高周波線路配線12に機械的かつ電気的に接合され、第二の接地導体3bがAgロウ、Au−Sn半田やAgエポキシ等の導電性接着剤5を介して接地配線13に機械的かつ電気的に接合されることによって、電子部品6が電気回路基板11の高周波線路配線に接続され、第一の線路導体2aと第二の線路導体2bと線路接続導体2cとから成る線路導体2は、電子部品6と電気回路基板11との間で高周波信号を入出力させるための高周波伝送線路として機能する。
また、図4に示される高周波回路基板の実施の形態において、第二の線路導体2bの高周波線路配線12との接続部において、第二の線路導体2bは所定の特性インピーダンス値と成る線路幅よりも幅狭となっている(図示せず)。この構成により、特性インピーダンス値を有する高周波線路配線12の上に第二の線路導体2bが載置されて接続される際に、高周波線路配線12に付加される容量成分によって、インピーダンス値が低下するのを最小限に抑えることができる。その結果、第二の線路導体2bの高周波線路配線12との接続部におけるインピーダンス値が、所定の特性インピーダンス値から大幅に低下して、高周波信号が効率良く伝送できなくなるのを防止できる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を行なうことは何等支障ない。例えば、誘電体基板1は、電子部品収納用パッケージ内に配置される基板に用いられるものであってもよい。