JP4608738B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドによる記録媒体への画像記録時に該記録媒体の浮き上りを防止するために保持する記録媒体保持手段を有するインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロール状やシート状の記録媒体上にインクを噴射させて画像を記録するインクジェット記録装置は、一般に、記録媒体上にインクの噴射を行う記録ヘッドを該記録媒体の幅方向に亘って走査させ、その走査の過程でインクを噴射して画像の記録を行う動作と、その走査方向と略直交する方向に沿って記録媒体を所定量搬送する動作とを順次繰り返すことにより、記録媒体上に所望の画像が記録形成されるようになっている。
【0003】
良質な画像を記録形成するため、画像記録時に、インクを噴射する記録媒体表面の平滑性を保つことが重要である。このため、インクジェット記録装置には、記録媒体の裏面に当接してこれを保持するための記録媒体保持手段が設けられている。
【0004】
この記録媒体保持手段は、図19(a)に示すように、記録媒体の裏面に当接する表面が平滑な平板状の保持部100に、吸引ファンや吸引ポンプ等の吸引手段によって空気を吸引するための多数の吸引孔101が開穿されており、この吸引孔101から空気を吸引することにより記録媒体をその表面に吸引、吸着させ、記録媒体表面の平滑性を維持するようにしている。
【0005】
また、記録媒体の大きさよりも大きな画像(縁なし画像)を記録形成する場合には、記録ヘッドにより記録媒体の大きさよりも大きな範囲に記録を行った際に、該記録ヘッドから噴射されて記録媒体の両側縁部からはみ出した余剰インクを受け入れるため、図19(b)に示すように、記録媒体の両側縁部に対応する位置に、インク受け用の開口部102、103がそれぞれ設けられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録装置においては、インクを安定的に記録媒体上に噴射させるため、記録ヘッドと記録媒体との間隔は極めて近接している。
【0007】
このため、保持手段によって保持される記録媒体に浮き上がり等が存在していると、該記録媒体と記録ヘッドとが接触することにより、記録媒体や記録ヘッドのノズルが損傷する問題があり、また、良質の画像を記録形成することも困難となるため、その浮き上がりの発生を極力抑えることが必要である。
【0008】
特に、記録ヘッドは記録媒体の幅方向に沿って主走査を行う関係上、記録媒体の両側縁部において浮き上がりを抑えることは、重要である。
【0009】
図19(b)に示すように、保持部100にインク受け用の開口部102、103が形成されているものにあっては、該開口部102、103は記録媒体の両側縁部に位置するため、該部において記録媒体の吸引、吸着が行われず、記録媒体の浮き上がりによって記録ヘッドとの接触の問題が懸念される。
【0010】
また、保持部100に形成されるインク受け用の開口部102、103は、記録媒体の幅に対応させて設けられるため、幅が異なる記録媒体を使用する場合には、縁なし画像を記録することができない。
【0011】
そこで、本発明の課題は、記録媒体の両側縁部における浮き上がりの発生を防止して、良質な画像記録を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の課題は、幅の異なる各種の記録媒体へ画像を記録する場合にも容易に対応することのできるインクジェット記録装置を提供することを課題とする。
【0022】
請求項1記載の発明は、記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体の幅方向に亘って走査すると共にインクを噴射して画像を記録する記録手段と、画像の記録時に記録媒体を保持して浮き上がりを防止する記録媒体保持手段とを有するインクジェット記録装置において、上記記録媒体保持手段は、記録媒体裏面に接する保持部に、記録媒体よりも大きな範囲に記録を行った際に噴射された余剰インクを受けるためのインク受け用の開口部を設けると共に、該開口部の位置を、記録媒体の幅に応じて変更可能に構成したことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0023】
請求項2記載の発明は、前記保持部を交換可能に構成し、該保持部を、記録媒体の幅に対応させて予めインク受け用の開口部をそれぞれ形成してなる複数種の保持部のいずれかと交換することにより、インク受け用の開口部の位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置である。
【0024】
請求項3記載の発明は、各種記録媒体の各々の幅に対応する位置にインク受け用の開口部を形成してなる保持部の下面に、上記開口部と適合する大きさの開口を、上記開口部よりも少ない数だけ形成したスライド板をスライド可能に当接させ、上記保持部とスライド板との相対位置を変更して保持部のいずれかの開口部とスライド板の開口とを選択的に適合させることにより、インク受け用の開口部の位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置である。
【0035】
請求項4記載の発明は、記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体の幅方向に亘って走査すると共にインクを噴射して画像を記録する記録手段と、画像の記録時に記録媒体を保持して浮き上がりを防止する記録媒体保持手段とを有するインクジェット記録装置において、上記記録媒体保持手段は、記録媒体裏面に接する多数の吸引孔を有する保持部と、該保持部下面側に設けられた負圧室と、該負圧室と接続して上記吸引孔から空気を吸引することにより記録媒体を保持部に吸着させる吸引手段と、上記負圧室内に設けられ、記録媒体よりも大きな範囲に記録を行った際に噴射された余剰インクを受けるためのインク受け部とを有し、上記インク受け部は、内部に貯溜された余剰インクを排出する排出口を開閉弁を介して上記負圧室内に臨ませ、上記記録手段による非記録時に上記開閉弁を開放することにより、吸引手段の吸引力によりインク受け部内の余剰インクを排出するようにしたことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1はインクジェット記録装置の概略を示す構成図である。
【0038】
同図に示すように、装置上方には記録媒体供給手段1が配置されている。記録媒体供給手段1は、長尺状の記録媒体が巻回された複数(図示例では2つ)のペーパーロール1A、1Bから、それぞれ記録媒体10A、10Bが搬送手段2にによって図示下方向に繰り出されるようになっている。
【0039】
搬送手段2は、各々の記録媒体10A、10Bを搬送する搬送ローラ対21A、21Bと、該搬送ローラ対21A、21Bを駆動させる搬送モータ22A、22Bとを有しており、ペーパーロール1A、1Bから繰り出された各記録媒体10A、10Bを上記搬送ローラ対21A、21Bにそれぞれ挟持し、搬送モータ22A、22Bの駆動制御によってそれぞれ次段の記録手段3へ搬送させる。
【0040】
記録手段3は、各々の記録媒体10A、10Bの表面側(記録面側)に、該記録媒体10A、10Bに対して複数のノズルから液滴状のインクを噴射して画像を記録形成するための記録ヘッド31が、記録媒体10A、10Bの搬送方向(副走査方向)と略直交するように横架された走査ガイド32に沿って移動可能に取付けられたキャリッジ33に装備されている。
【0041】
記録ヘッド31は、例えばY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)等の各インクが貯溜された複数のインクタンクと、各々のインクタンク内のインクを液滴状に射出するための多数のノズルヘッドを有して構成されており、キャリッジモータ34と連動するプーリ35によってキャリッジ33が移動することにより、記録媒体10A、10Bの搬送方向と略直交する方向(主走査方向)に沿い、且つ各々の記録媒体10A、10Bに亘って移動する。
【0042】
記録手段3によって画像記録がなされた記録媒体10A、10Bは、それぞれローラ対4A、4Bによって挟持移送された後、カッタ5によって各々一画像毎等の所定サイズに裁断される。
【0043】
上記記録ヘッド31によって画像記録が行われる記録媒体10A、10Bの裏面側には、記録ヘッド31に対向するように、主走査方向に沿い且つ各記録媒体10A、10Bに亘って記録媒体保持手段6が配設されている。
【0044】
記録媒体保持手段6は、記録ヘッド31による記録媒体10A、10Bへの画像記録時に、該記録媒体10A、10Bを保持して、表面の平滑性を維持すると同時に、それらの浮き上がりを防止し、主走査方向に沿って移動する記録ヘッド31との接触を回避するように機能する。
【0045】
図2に記録媒体保持手段6の実施の形態の一例を示す。(a)は記録媒体保持手段6の部分平面図、(b)は(a)の(I)−(I)線に沿う側面断面図である。
【0046】
なお、本実施形態に示すインクジェット記録装置は、2列の記録媒体10A、10Bを同時に搬送可能に構成しており、記録媒体保持手段6は各記録媒体10A、10Bに対応した左右対称構造を呈しているため、以下、本明細書においては、特に記載がない限り、記録媒体10A側に対応する部分についてのみ説明する。
【0047】
記録媒体保持手段6は、記録媒体10Aの裏面に接する平板状の保持部61の表面に、多数の吸引孔611が開穿され、保持部61の下面側に配置された箱体状の負圧室62と接続した図示しない吸引ファンや吸引ポンプ等の適宜の吸引手段の駆動によって、負圧室62内を負圧にして上記多数の吸引孔611から空気を吸引することにより、上記保持板61表面に記録媒体10Aを吸着させ、その浮き上がりを防止する。
【0048】
保持板61には、記録媒体10Aの両側縁部にそれぞれ対応する位置に、インク受け用の開口部612、613が設けられている。これら開口部612、613の長さは、記録ヘッド31の副走査方向に沿う長さと同じ若しくは若干長く形成されており、所謂縁なし画像を記録形成するために、記録ヘッド31により記録媒体10Aの大きさよりも大きな範囲に記録を行った際に、該記録ヘッド31から噴射されて記録媒体10Aの両側縁部からはみ出した余剰インクを受け入れる。開口部612、613から受け入れた余剰インクは、該開口部612、613に連通して負圧室62内に配置されたインク受け部63内に一時貯溜され、その後図示しない廃インクタンクへ排出される。
【0049】
この開口部612、613においては、記録媒体10Aの吸引、吸着は行われないため、開口部612、613の近傍に、記録媒体10Aの両側縁部を吸着するための吸着部64が設けられている。
【0050】
図2に示す吸着部64は空気吸引孔641からなり、開口部612、613における記録媒体10Aの搬送方向に沿い且つ記録媒体10Aの搬送経路上に位置して、該開口部612、613の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。形状は図示する丸孔状に限らず、角孔状、スリット状等任意である。また、多孔質材により形成してもよい。
【0051】
吸引手段の駆動により、保持部61の各吸引孔611から空気が吸引されるのと同時に、この吸着部64の空気吸引孔641からも空気が吸引される。これによりインク受け用の開口部612、613が存在する記録媒体10Aの両側縁部も、保持部61表面に吸引、吸着され、その浮き上がりが防止される。従って、記録媒体側縁部の浮き上がりに起因する記録ヘッドとの接触による印字不良発生の問題が解消される。
【0052】
この吸着部64は、開口部612、613の搬送方向に沿う上下流側に設けられているが、上下流側のいずれか一方のみでもよい。
【0053】
図3に吸着部64の他の例を示す。
【0054】
図3(a)は、吸着部64を開口部612、613の側部に設けた例を示している。この吸着部64は多数の空気吸引孔642を開口部612、613の長手方向に沿って列状に設けている。この吸着部64は、開口部612、613の長手方向に沿う側部で且つ記録媒体10Aの搬送経路上にあり、即ち、開口部612及び613の内側にそれぞれ配置されている。
【0055】
図3(b)は、吸着部64を、空気吸引用のスリット643により形成した例を示している。スリット643も、開口部612、613の長手方向に沿う側部で且つ記録媒体10Aの搬送経路上に形成されており、同様に吸引手段の駆動により記録媒体10Aの両側縁部を保持部61の表面に吸引、吸着し、その浮き上がりを防止する。このスリット643は開口部612、613における記録媒体10Aの搬送方向に沿う上流側及び/又は下流側に配置されていてもよい。
【0056】
図3(c)は、吸着部64を、開口部612、613における記録媒体10Aの搬送方向に沿い且つ記録媒体10Aの搬送経路上の上下流側と、該開口部612、613の長手方向に沿う側部で且つ記録媒体10Aの搬送経路上にそれぞれ形成した例であり、それぞれ空気吸引孔641と空気吸引用のスリット643とを組合わせた例を示している。
【0057】
図4は、吸着部64の更に他の例を示している。
【0058】
この吸着部64は、保持部61の表面と面一状に形成された静電吸着部644により構成されている。静電吸着部644は、空気吸引する前記空気吸引孔641、642、スリット643のような吸着部と異なり、吸着部それ自身が静電現象を利用して記録媒体を吸着する機能を有している。
【0059】
同図に示す静電吸着部644は、各インク受け用の開口部612、613の四辺を囲むようにそれぞれ周囲に配置されている。記録媒体10Aは、吸引手段による多数の吸引孔611からの空気の吸引によって保持部61表面に吸引、吸着されると共に、インク受け用の開口部612、613上に位置するその両側縁部が、静電吸着部644によって保持部61表面に静電吸着され、その浮き上がりが防止される。
【0060】
この静電吸着部644は、開口部612、613の四辺を囲む態様に限らず、図5に示すように様々な態様を採ることができる。
【0061】
図5(a)は、開口部612における外側(他の開口部613と反対側)の一辺を除く該開口部612の三辺を囲むように設けている。
【0062】
図5(b)は、開口部612における内側(他の開口部613側)の一辺のみに沿うように一定幅で設けている。
【0063】
図5(c)は、開口部612における記録媒体10Aの搬送方向に沿い且つ記録媒体10Aの搬送経路上の上下流側に設けている。
【0064】
このような静電吸着部644は、空気吸引孔641、642から空気吸引することにより記録媒体10Aを吸着するものに比べ、記録媒体10Aを一定幅で面状に吸着することができる。
【0065】
また、静電吸着部644は、記録媒体の両側縁部に対応する位置等のように、浮き上がりを防止するのに必要な部位に部分的に設けることが好ましい。このようにすれば保持部61表面全面に静電吸着部644を設ける場合に比べて安価に構成できる。
【0066】
図6は、インク受け用の開口部612、613の近傍以外に、静電吸着部644を保持部61の表面に亘って部分的に設けた例を示している。この図に示す静電吸着部644は、両開口部612、613の間に、記録媒体10Aの搬送方向に沿って一定幅で4本設けられているが、数は限定されない。
【0067】
また、静電吸着部644による記録媒体10Aの部分的な吸着と、吸引孔611からの空気の吸引による記録媒体10Aの吸着とを併用すれば、記録媒体10A全体を空気吸引によって保持部61表面に吸着させると同時に、特に記録媒体10Aの浮き上がりの発生が懸念される部位、例えば上記のようにインク受け用の開口部612、613の近傍等に静電吸着部644によって記録媒体10Aを部分的に保持部61表面に確実に吸着させるようにすることができ、記録媒体10Aの浮き上がりに起因する問題をより効果的に解消することができる。
【0068】
図7は、記録媒体の両側縁部の浮き上がりを防止する別の例であり、記録媒体保持手段6の負圧室62の吸引手段65との接続口621、622を、記録媒体10Aの両側縁部近傍の位置に対応させてそれぞれ設けた例を示している。
【0069】
各々の接続口621、622は、図8に示すように、負圧室62の側面において、保持部61の表面側から見て、記録媒体10Aの両側縁部の位置と搬送方向に沿って略重なるような位置に設けられ、吸引手段65とそれぞれ吸引ダクト651、652によって接続されている。
【0070】
吸引手段65の駆動により、吸引ダクト651、652を介して負圧室62内の空気を吸引した際、該接続口621、622近傍の吸引力を向上させ、これにより記録媒体10Aの両側縁部近傍の吸引力を向上させる。従って、簡単な構成で記録媒体10Aの両側縁部の浮き上がりを効果的に防止することができる。
【0071】
各接続口621、622は、記録媒体10Aの両側縁部近傍の位置に対応させて設けられれば、負圧室62の底面に設けられてもよい。また、負圧室62において記録媒体10Aの搬送方向の上流側の側面に設けられていてもよい。
【0072】
次に、記録媒体保持手段の保持部に形成されたインク受け用の開口部の位置を変更可能とした態様について説明する。
【0073】
図9は、保持部を交換可能とした場合を示しており、ここでは記録媒体10A、10Bの各列を保持する記録媒体保持手段6全体を示している。
【0074】
保持部は各記録媒体10A、10Bにそれぞれ対応して61A、61Bに2分割され、それぞれ個別に適宜の固定手段によって着脱可能に負圧室62上面を覆うように取り付けられている。固定手段は何ら限定されない。
【0075】
各保持部61A、61Bには、それぞれ記録媒体10A、10Bの両側縁部に対応する位置に、インク受け用の開口部612A、613A、612B、613Bが設けられている。
【0076】
これら開口部612A、613A、612B、613Bは、一種類の記録媒体の幅に対応するようにしか設けられていない。それら開口部が対応している幅の記録媒体と異なる幅の記録媒体に対しても縁なし画像の記録を可能とするために、図10に示すように、記録媒体の幅に対応させて予めインク受け用の開口部612A、613Aをそれぞれ形成した複数種の保持部61A1、61A2、61A3、61A4を用意しておく。なお、図10は保持部61Aの交換用の保持部を示している。
【0077】
例えば、保持部61A1は記録媒体幅が127mm用、保持部61A2は100mm用、保持部61A3は89mm用、保持部61A4は82mm用等のように、予めインク受け用の開口部612A、613Aを各幅に合わせてそれぞれ設ける。但し、ここでは、記録媒体は開口部613Aに対応する側縁部を常に定位置にしているため、開口部612Aのみの位置が変更される。
【0078】
記録を行う記録媒体の幅に応じて、これら保持部61A1、61A2、61A3、61A4のいずれかと交換すれば、開口部612A、613Aの位置を各種の記録媒体の幅に合致するように変更することができ、一台の記録装置で幅の異なる複数種の記録媒体に対応して縁なし画像の記録を行うことができる。
【0079】
また、各保持部61A1、61A2、61A3、61A4には、吸引孔611を開口部612Aと613Aの間のみに形成しておけば、記録媒体の幅が変わっても、それに応じて必要な部分、即ち記録媒体が存在する領域のみ吸引することができ、記録媒体の存在しない吸引に不必要な箇所から吸引することによる空気漏れの無駄を解消し、吸引力の低下を防止することができる。
【0080】
なお、負圧室62内には、保持部が61A1、61A2、61A3、61A4のいずれと交換されても、その位置が変更される開口部612Aによって余剰インクを受け入れることができるように、各保持部の開口部612Aの位置にそれぞれ対応させて複数のインク受け部を予め配置しておくことが好ましい。
【0081】
図11は、記録媒体保持手段の保持部に形成されたインク受け用の開口部の位置を変更可能とした別の態様を示している。
【0082】
この態様では、保持部61には、各種記録媒体の各々の幅に対応するインク受け用の複数の開口部612a、612b、612c、612dが同時に形成されている。
【0083】
この保持部61の下面側には、少なくとも上記開口部612a、612b、612c、612dを全て覆うことができる大きさのスライド板66を、図12に示すように、主走査方向に沿う方向にスライド可能に当接させている。
【0084】
スライド板66には、上記開口部612a、612b、612c、612dと同一大きさの開口661が一つだけ形成されており、該スライド板66をスライドさせることにより、保持部61との相対位置を変更し、その開口661が保持部61の上記開口部612a、612b、612c、612dのうちのいずれかと選択的に適合し得るようになっている。
【0085】
これにより、一台の記録装置で複数種の幅の記録媒体に対応して、縁なし画像の記録を行うことができる。
【0086】
また、最も幅の狭い記録媒体を保持部61表面に吸着させて記録を行う場合、スライド板66の開口661が保持部61の開口部612dのみと適合し得るようにスライドさせれば、記録媒体の存在しない領域の吸引孔611や開口部612a、612b、612cをスライド板66で遮蔽することができるので、スライド板66は遮蔽板としても機能し、空気漏れの無駄を解消して吸引力の低下を防止することができるようになる。
【0087】
スライド板66のスライド操作はオペレータが手動で行ってもよいし、図12に示すように、駆動モータ663の駆動によって自動で行ってもよい。自動化する場合には、スライド板66にセンサ孔662を適宜形成しておき、該センサ孔662をセンサ664によって読取ることでスライド板66の位置検出を行うようにすることが好ましい。
【0088】
なお、この図11及び図12に示す態様では、スライド板66に開口661のみ一つだけ形成されているものについて説明したが、このスライド板66に形成される開口は一つに限定されず、保持部61に形成されている開口部612a、612b、612cの数よりも少ない数だけ形成されていればよい。従って、スライド板66に複数の開口(例えば、図11及び図12に示す態様では、最大3つまで)を形成しておき、保持部61との相対位置を変えることにより、開口部を選択的に適合させるようにすることもできる。このようにすると、スライド板66の複数の開口と保持部61の開口部との位置の組合わせによって、最小のスライド量で所望の保持部61の開口部とスライド板66の開口とを適合させることができるようになり、迅速な処理が可能である。
【0089】
図13に、記録媒体保持手段の保持部に形成された吸引孔のうち、吸引を行う領域を変更可能とした態様を示す。
【0090】
この態様では、記録媒体保持手段6の保持部61の表面に帯状遮蔽板67をスライド可能に当接させている。
【0091】
帯状遮蔽板67は、例えばスチールベルトのような可撓性を有する薄くて丈夫な帯状体からなり、両端がそれぞれローラ671、672に巻き付けられ、該ローラ671、672の回動により記録媒体の搬送方向に沿って、保持部61表面に各記録媒体10A、10Bの列に対応させてそれぞれスライド可能に設けられる。
【0092】
帯状遮蔽板67には、図13(b)に示すように、複数の領域、図示例ではX1、X2、X3、X4の4種が設定されており、各領域X1、X2、X3、X4内のみに、該帯状遮蔽板67の搬送方向に沿う保持部61の各吸引孔611と適合する位置及び大きさの開孔673が形成されている。従って、保持部61の吸引孔611と適合し得る孔の数は、各領域X1、X2、X3、X4内でそれぞれ異なっている。
【0093】
この帯状遮蔽板67をスライドさせて、そのいずれかの領域を保持部61表面と選択的に適合させることにより、帯状遮蔽板67の領域に形成された開孔673と、それに相当する保持部61の吸引孔611のみから空気が吸引され、その他の領域外の吸引孔は帯状遮蔽板67で遮蔽され、そこからの空気の吸引は行われない。帯状遮蔽板67を適宜スライドさせることにより、領域X1、X2、X3、X4の複数種の領域に容易に変更することが可能である。
【0094】
この帯状遮蔽板67のスライド操作は、オペレータが手動で行ってもよいし、適宜の駆動手段によってローラ671、672を駆動させることにより自動で行ってもよい。
【0095】
上記領域X1、X2、X3、X4は、各種の記録媒体のそれぞれの幅に対応した大きさを有する領域とすれば、記録媒体の幅が変更した際に、記録媒体が存在する部分のみを吸引することができ、記録媒体の存在しない領域の吸引孔611を帯状遮蔽板67で塞ぐことができるので、空気漏れの無駄を解消して吸引力の低下を防止することができるようになる。
【0096】
また、保持部61には、図11のように各種の記録媒体のそれぞれの幅に対応させて、余剰インクを受け入れるためのインク受け用の開口部を複数同時に形成しておき、図13に示すように、帯状遮蔽板67の各領域X1、X2、X3、X4に、それら開口部のいずれかと適合し得る開口674a〜674d、675a〜675dを形成しておくことにより、記録媒体の幅に対応させてインク受け用の開口部の位置も同時に変更することができる。このとき、保持部61の不要な開口部は帯状遮蔽板67で遮蔽されるため、吸引、吸着時の支障となるようなこともない。
【0097】
更に、この帯状遮蔽板67を、その搬送方向に若干ずらすことにより、保持部61の吸引孔611と、帯状遮蔽板67の各領域X1、X2、X3、X4内の開孔673との相対位置を変化させ、両者の適合状態を解除させることができる。従って、保持部61の吸引孔611は帯状遮蔽板67によって遮蔽されるため、該帯状遮蔽板67が記録媒体の保持部61表面への吸着を遮断するシャッタの役目をなす。記録媒体の搬送時に、このようにして帯状遮蔽板67により記録媒体の保持部61表面への吸着を一時的に遮断すれば、始動及び停止動作のレスポンスの遅い吸引手段自体を停止させることにより吸着を解除しなくて済むため、記録媒体の搬送を迅速且つスムーズに行うことができるようになる効果もある。
【0098】
記録媒体の保持部61表面への吸着状態を一時的に解除する他の態様として、図14に示すように、保持部61の下面側に、保持部61の吸引孔611と適合し得る位置及び大きさの開孔681を形成した遮蔽板68を、主走査方向に沿う方向にスライド可能に当接させるようにすることも好ましい。
【0099】
この遮蔽板68は、駆動モータの駆動又は手動操作によりスライドさせて、保持部61と遮蔽板68との相対位置を変化させ、保持部61の吸引孔611と遮蔽板68の開孔681との適合状態を解除させることにより、該遮蔽板68をシャッタとして機能させ、保持部61の吸引孔611を遮蔽する。これにより保持部61表面への吸着状態を迅速且つスムーズに一時解除することができる。
【0100】
また、図15に示すように、負圧室62と接続した吸引手段との吸引経路途上に、開閉弁69を介在させ、この開閉弁69を制御して一時的に閉じることにより、吸引手段からの負圧室62内の空気の吸引を一時的に遮断するようにしてもよい。
【0101】
図16及び図17に、保持部61の吸引孔611からの吸引を、記録媒体10A、10Bの各列で個別に制御するようにした態様を示す。
【0102】
図16は、記録媒体保持手段6の負圧室62内部を、記録媒体10A、10Bの各列に対応させて、仕切り壁623によって2つに区画した例を示している。
【0103】
該仕切り壁623によって区画された負圧室624A、624Bには、それぞれ個別に吸引手段65A、65Bが接続されており、それら吸引手段65A、65Bの駆動を制御することによって各負圧室624A、624Bを個別に吸引制御することができるようになっている。
【0104】
これにより記録媒体を搬送する必要のない列の負圧室624A又は624Bの吸引を停止させておくことができると共に、吸引手段は負圧室624A又は624Bのいずれかのみを吸引し得るだけの能力で済むため、それだけ省エネを図ることができる。
【0105】
図17は、図14に示す遮蔽板68を、記録媒体10A、10Bの各列毎に対応させて、それぞれ設けた例を示している。
【0106】
それぞれの遮蔽板68A、68Bによって各記録媒体10A、10Bの列に対応する吸引孔611を個別に遮蔽することができるので、吸引孔611からの空気の吸引を各列個別に制御することができる。
【0107】
これによれば、吸引手段65一つで各列の吸引制御を個別に行うことができるので、吸引機構が1系統で済むようになる。また、吸引手段65自体の駆動を制御することなく吸引制御が行えるため、迅速且つスムーズな制御が可能である。
【0108】
また、上記遮蔽板68A、68Bに代えて、図13に示す帯状遮蔽板67を各列に対応させて個別に配置させることにより、各列の吸引を個別に制御するようにしても上記同様の制御が可能である。
【0109】
図18は、インク受け部内に貯溜された余剰インクを排出するための態様を示している。
【0110】
同図において、負圧室62内に配置されたインク受け部63は、内部に貯溜された余剰インクWを排出する排出口631が、開閉弁632を介して負圧室62内に臨んで位置している。
【0111】
従って、この開閉弁632を開放することにより、インク受け部63内と負圧室62内が連通し、吸引手段の吸引力によってインク受け部63内に貯溜された余剰インクWが排出される。この開閉弁632の開放制御は、画像記録時の吸引力低下を防ぐため、記録手段3による非記録時に行うようにする。
【0112】
これにより吸引手段の吸引力を利用して、余剰インクの排出をスムーズに行うことができるようになる。
【0113】
なお、以上の説明では、記録媒体10A、10Bがペーパーロール1A、1Bから供給される長尺状のものについて説明したが、予め適宜サイズに裁断されているシート状の記録媒体であってもよいことはもちろんである。
【0114】
【発明の効果】
本発明によれば、記録媒体の両側縁部における浮き上がりの発生を防止して、良質な画像記録を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0115】
また、本発明によれば、幅の異なる各種の記録媒体へ画像を記録する場合にも容易に対応することのできるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置の概要を示す構成図
【図2】(a)は記録媒体保持手段を示す部分平面図、(b)はそのb−b線に沿う側面断面図
【図3】(a)〜(c)は吸着部の他の例を示す部分平面図
【図4】吸着部を静電吸着部として例を示す部分平面図
【図5】(a)〜(c)は静電吸着部の他の例を示す説明図
【図6】静電吸着部の更に他の例を示す部分平面図
【図7】記録媒体保持部材の他の例を示す部分斜視図
【図8】図7の部分平面図
【図9】記録媒体保持手段の更に他の例を示す斜視図
【図10】交換用の保持部を示す平面図
【図11】保持部の他の例を示す説明図
【図12】保持部の他の例を示す部分平面図
【図13】(a)は記録媒体保持手段の更に他の例を示す部分斜視図、(b)は帯状遮蔽板を示す平面図
【図14】保持部の更に他の例を示す部分平面図
【図15】記録媒体保持手段の更に他の例を示す側面断面図
【図16】記録媒体保持手段の更に他の例を示す斜視図
【図17】記録媒体保持手段の更に他の例を示す斜視図
【図18】記録媒体保持手段の更に他の例を示す斜視図
【図19】(a)(b)は従来の記録媒体保持手段の保持部を示す平面図
【符号の説明】
1:記録媒体保持手段
2:搬送手段
3:記録手段
6:記録媒体保持手段
Claims (4)
- 記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体の幅方向に亘って走査すると共にインクを噴射して画像を記録する記録手段と、画像の記録時に記録媒体を保持して浮き上がりを防止する記録媒体保持手段とを有するインクジェット記録装置において、
上記記録媒体保持手段は、記録媒体裏面に接する保持部に、記録媒体よりも大きな範囲に記録を行った際に噴射された余剰インクを受けるためのインク受け用の開口部を設けると共に、
該開口部の位置を、記録媒体の幅に応じて変更可能に構成したことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記保持部を交換可能に構成し、該保持部を、記録媒体の幅に対応させて予めインク受け用の開口部をそれぞれ形成してなる複数種の保持部のいずれかと交換することにより、インク受け用の開口部の位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 各種記録媒体の各々の幅に対応する位置にインク受け用の開口部を形成してなる保持部の下面に、上記開口部と適合する大きさの開口を、上記開口部よりも少ない数だけ形成したスライド板をスライド可能に当接させ、上記保持部とスライド板との相対位置を変更して保持部のいずれかの開口部とスライド板の開口とを選択的に適合させることにより、インク受け用の開口部の位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、記録媒体の幅方向に亘って走査すると共にインクを噴射して画像を記録する記録手段と、画像の記録時に記録媒体を保持して浮き上がりを防止する記録媒体保持手段とを有するインクジェット記録装置において、
上記記録媒体保持手段は、記録媒体裏面に接する多数の吸引孔を有する保持部と、該保持部下面側に設けられた負圧室と、該負圧室と接続して上記吸引孔から空気を吸引することにより記録媒体を保持部に吸着させる吸引手段と、上記負圧室内に設けられ、記録媒体よりも大きな範囲に記録を行った際に噴射された余剰インクを受けるためのインク受け部とを有し、
上記インク受け部は、内部に貯溜された余剰インクを排出する排出口を開閉弁を介して上記負圧室内に臨ませ、
上記記録手段による非記録時に上記開閉弁を開放することにより、吸引手段の吸引力によりインク受け部内の余剰インクを排出するようにしたことを特徴とするインクジェット記録装置。
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