JP4431168B2 - 内燃機関の燃焼状態検出装置及び燃焼状態検出方法 - Google Patents
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Description
これは点火プラグにくすぶりが発生した場合、点火プラグ電極間の絶縁抵抗の値が低下し、点火信号立下り前(一次電流通電期間中)に点火プラグの電極間にイオン電流と同方向にリーク電流が流れるためである。リーク電流はくすぶりの程度が酷くなるほどリーク電流の発生期間が長くなり、プレイグニッションは強度が強くなるほどイオン電流の発生時期が早くなる傾向がある。このような両者の特性から、リーク電流とプレイグニッションによるイオン電流が重なる場合がある。そのため、単純にイオン電流の有無によりプレイグニッションの発生を判定することができなくなるという問題点があるからである。
図1は、本発明の実施の形態1における内燃機関の燃焼状態検出装置を示す概略構成図である。
図1において、点火コイル装置1において、点火コイル2は一次コイル3と二次コイル4を有している。一次コイル3の一端はバッテリー等の直流電源VBに接続され、一次コイル3の他端はECU100からの点火信号によってオンオフ制御されるトランジスタ5に接続されている。二次コイル4の一端は、点火プラグ6に接続され、二次コイル4の他端は、イオン電流検出装置7に接続されている。
バイアス回路8は点火コイル2の二次電圧を利用してイオン電流を検出するために、イオン電流の検出プローブとしての点火プラグ6に正のバイアス電圧をチャージする。
このとき、放電後の点火プラグ6は、バイアス回路8により正のバイアス電圧がかかっているため、イオン電流が流れ、イオン電流検出回路9で検出される。イオン電流検出回路9より出力されたイオン電流信号は、プレイグニッション検出装置10を含むECU100に入力され、プレイグニッションおよびその前兆現象が検出される。
まず、データ抽出手段20において、イオン電流検出装置7より出力されたイオン電流信号は、A/D変換装置21に送られ、アナログデータからデジタルデータへ変換され、そしてバイアス電圧印加時に発生するノイズをマスク装置22にてマスクされ、それ以降のデータがイオン電流データとしてデータ抽出装置23によって抽出される。
上記ステップS1〜S6は、データ抽出手段20に対応するものである。
上記ステップS7〜S14は、凸検出手段30に対応するものである。
なお、イオン電流の発生位置IPはイオン電流の変化形状が上に凸である領域の開始点とすることもできる。
ステップS16でイオン電流の発生位置IPが一次電流の通電期間中であるか判定を行い、ステップS17で一次電流の通電期間中にイオン電流の発生位置IPが検出された場合、プレイグニッションと判定し、点火立下り後にイオン電流の発生位置IPが検出された場合は、ステップS18へ進む。点火立下り後の場合には、プレイグニッションの前兆現象と通常燃焼の判定を行う。
なお、ステップS13、S18にてNOと判断された場合は、ステップ20にてプレイグニッションまたはその前兆現象なしと判定される。
上記ステップS15〜S20は、プレイグニッション判定手段40に対応するものである。
実施の形態1では、リーク電流発生の際、BH判定しきい値とイオン電流データとを比較することで燃焼に伴うイオン電流の発生位置を捉えたが、本実施の形態2においては、イオン電流データの変化量からこれを捉える方法を説明する。
図5に実施の形態2に係る内燃機関のプレイグニッション検出装置10の構成図を示す。リーク判定装置31でリーク電流の有無を判定するまでの過程は、実施の形態1と同様である。
リーク判定装置31にてリーク電流が発生していると判断されたとき、導関数装置35にて個々のデータの変化量が計算され1次導関数が求められる。次にデータ平滑化装置36により前記導関数装置35で計算された連続した数個のデータの変化量b(n)の平均値c(n)が計算される。このデータc(n)がイオン電流の傾きの傾向を示すものである。このデータの変化の傾向c(n)に対し、しきい値設定装置32でピークホールド(PH)しきい値を設定し、データの変化の傾向c(n)がPHしきい値を所定回数以上連続、もしくは所定期間の間に累積で所定回数以上下回ったかを判定カウンタ装置33とイオン電流発生検出装置34で判断し、プレイグニッション判定装置41にてイオン電流発生検出装置34の判定結果に基づき、イオン電流発生位置IPを取得し、イオン電流発生位置IPが所定値より前のとき、プレイグニッションと判定する。
図7のステップS21にてECU100内のプレイグニッション検出装置10に取込まれたイオン電流データ(図6:P1)はステップS22で検出しきい値と比較され、イオン電流データが検出しきい値を上回ったとき、ステップS23でタイマーをスタートさせる。ステップS24でマスク設定時間が経過すると、ステップS25でタイマーをストップし、プレイグニッション検出装置10に取込まれたイオン電流データはステップS26でa(1), a(2), ・・・, a(n)のように順次メモリへ格納される(図6:P2)。タイマーのスタートからマスク時間が経過するまでにプレイグニッション検出装置10へ取込まれたデータは、ステップS24でNO判定となりステップS25へ進むことができないためメモリに格納されず、無視される。
上記ステップS21〜S26は、データ抽出手段20に対応するものである。
b(n) = a(n) - a(n-1) ・・・ (1)
このとき得られた配列データb(n)は1次導関数に相当するものであり、イオン電流の傾きを示すものである。さらにステップS28へ進み、配列データb(n)はデータ平滑化装置36によって、式(2)の計算が行われ、平滑化された結果が配列データc(n)として格納される。
c(n) = {(b(n) + b(n-1) + ・・・ + b(n-k))}/(k+1) ・・・ (2)
このとき得られた配列データc(n)は1次導関数が平滑化されたものであり、イオン電流の傾きの傾向を示すものである(図6:P3)。
上記ステップS27〜S36は、凸検出手段30に対応するものである。
なお、ステップS35、S40にてNOと判断された場合は、ステップ42にてプレイグニッションまたはその前兆現象なしと判定される。
上記ステップS37〜S42は、プレイグニッション判定手段40に対応するものである。
この2次導関数を平滑化した値c(n)が、イオン電流の凹凸の変化傾向を示すものであり、2次導関数値c(n)が負になる領域を導くことで、微細なノイズやデータ離散化に伴う変動に影響されることなく、プレイグニッションやその前兆現象に伴うイオン電流の変動のみを抽出することが可能となる。
実施の形態1及び2では、1つの燃焼室に1本の点火プラグ6でプレイグニッションまたはその前兆現象の検出を行ったが、1つの燃焼室に複数本の点火プラグを備えてプレイグニッションまたはその前兆現象の検出を行っても良い。
イオン電流検出装置7は、点火放電中にイオン電流を検出するための電荷を蓄え、その後燃焼に伴うイオン電流を検出するため、点火放電中はイオン電流を検出することが不可能である。プレイグニッションやその前兆現象は混合気の燃焼速度が速いため、図6のように点火放電中に大半のイオン電流が発生してしまう場合があるため、1点点火方式では正確な燃焼状態を検出することが困難となってしまう。そのため、1つの燃焼室に複数本の点火プラグを備えて検出を行っても良い。
ここでは、1つの燃焼室に2本の点火プラグを備えた場合について説明する。但し、点火プラグ2本の場合のみに限定されるものではなく、1つの燃焼室に2本以上の点火プラグを備えた内燃機関に適用してもよい。
実施の形態1〜3においては、各燃焼室のイオン電流検出信号をそれぞれECU100へ入力したが、各燃焼室のイオン電流検出信号の和を取って1つにまとめ、ECU100へ入力しても良い。
2 点火コイル
3 一次コイル
4 二次コイル
5 トランジスタ
6 点火プラグ
7 イオン電流検出装置
8 バイアス回路
9 イオン電流検出回路
10 プレイグニッション検出装置
20 データ抽出手段
21 A/D変換装置
22 マスク装置
23 データ抽出装置
30 凸検出手段
31 リーク判定装置
32 しきい値設定手段
33 判定カウンタ装置
34 イオン電流発生検出装置
35 導関数装置
36 データ平滑化装置
40 プレイグニッション判定手段
41 プレイグニッション判定装置
100 ECU
Claims (13)
- 内燃機関の燃焼室内に設置される電極と、
前記燃焼室内で混合気が燃焼する際に生じるイオン電流を検出するために前記電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧の印加時に前記電極間に発生するイオン電流を検出するイオン電流検出手段と、前記検出されたイオン電流からプレイグニッションまたはその前兆現象を検出するための検出区間を設定する検出区間設定手段を含み、前記検出区間における前記イオン電流の変化に対応したイオン電流データを抽出するデータ抽出手段と、
前記抽出されたイオン電流データに基づき、前記検出区間内におけるイオン電流の変化形状が上に凸である領域を検出する凸検出手段と、
前記凸検出手段により検出された上に凸である領域におけるイオン電流を所定のしきい値と比較して前記イオン電流の発生位置及びピーク位置を求めると共に、得られたイオン電流の発生位置及びピーク位置に基づき、プレイグニッションまたはその前兆現象の発生を判定するプレイグニッション判定手段とを備え、
前記凸検出手段は、前記電極間に発生するリーク電流の発生有無を判断するリーク電流判断手段を含み、前記リーク電流が発生していると判断された場合に、前記上に凸である領域の検出を有効とする
ことを特徴とする内燃機関の燃焼状態検出装置。 - 前記凸検出手段は、凸検出のためのしきい値の始点を指示する始点設定手段と、前記始点から前記イオン電流の変化形状のボトムに沿ってボトムしきい値を設定するボトムしきい値手段とを備え、前記ボトムしきい値を前記イオン電流データが超過する領域を上に凸である領域とすることを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記凸検出手段は、前記検出区間内のイオン電流の1次導関数または2次導関数を含む2次変動量を算出する2次変動量算出手段を備え、前記2次変動量値が所定のレベル以下となる領域を凸である領域とすることを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記プレイグニッション判定手段は、イオン電流の変化形状が上に凸である領域の積算値が所定のレベルを超える位置を前記イオン電流の発生位置とすることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記プレイグニッション判定手段は、イオン電流の変化形状が上に凸である領域の開始点を前記イオン電流の発生位置とすることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記検出区間設定手段は、上死点手前90度クランク角度位置から、燃焼行程が終了するまでの任意の区間を検出区間として設定することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記電極は、内燃機関に燃焼を引起こすために燃焼室内に火花放電を発生する点火プラグであって、前記電圧印加手段は、前記点火プラグに火花放電を発生するための高電圧を生成する点火コイルを介して前記イオン電流を検出するための電圧を前記点火プラグの電極へ印加することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記検出区間設定手段は、前記点火コイルに印加される点火信号の立上りから立下りまでの区間を検出区間として設定することを特徴とする、請求項7記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記検出区間設定手段は、前記点火コイルの一次巻線への通電の開始のタイミングから所定のマスク区間を設定するマスク設定手段を備え、前記マスク設定手段により設定されるマスク区間内に検出されるイオン電流を前記プレイグニッションまたはその前兆現象を検出するための信号として扱わないことを特徴とする、請求項7記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記始点設定手段は、前記マスク設定手段により設定されるマスク区間終了位置に始点を設定することを特徴とする、請求項9記載の内燃機関の燃焼状態検出装置
- 前記所定のしきい値は、運転条件に基づくマップにより取得されることを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 前記イオン電流検出手段は、複数の燃焼室もしくは同一の燃焼室から得られる複数のイオン電流の和を検出することを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の燃焼状態検出装置。
- 内燃機関の燃焼室内の混合気が燃焼する際に、前記燃焼室内に設置された電極間に生じるイオン電流からプレイグニッションまたはその前兆現象を検出するための検出区間を設定し、当該検出区間におけるイオン電流の変化に対応したイオン電流データを抽出する第1のステップと、
前記抽出されたイオン電流データに基づき、前記検出区間内におけるイオン電流の変化形状が上に凸である領域を検出する第2のステップと、
前記上に凸である領域におけるイオン電流を所定のしきい値と比較して前記イオン電流の発生位置及びピーク位置を求めると共に、得られたイオン電流の発生位置及びピーク位置に基づき、プレイグニッションまたはその前兆現象の発生を判定する第3のステップとを含み、
前記第2のステップは、前記電極間に発生するリーク電流の発生有無を判断するステップを含み、前記リーク電流が発生していると判断された場合に、前記上に凸である領域の検出を有効とする
ことを特徴とする内燃機関の燃焼状態検出方法。
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