JP4357014B2 - 水切り洗浄方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、精密機械、光学機械や電子機器等の金属製、プラスチック製、ガラス製の部品等に付着した水を除去するのに適した洗浄方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
精密金属部品、光学部品、電子機器の多くが加工途中で水を使用しており、この工程の後処理として必要な付着残留水の除去及び乾燥には、被洗浄物を腐食せずに水を洗い落とすことができ、しかもその洗浄液自体の除去が容易にできるような適当な沸点を持つ洗浄剤が用いられる。そのような、洗浄剤として、これまでクロロフルオロカ−ボン系洗浄剤(例えば、CFC-113 、沸点48℃)に界面活性剤を混合した組成物が使用されてきた。しかし、クロロフルオロカーボンについてはオゾン層保護の観点からウィ−ン条約やモントリオ−ル議定書に基づき国際的な規制が実施され、我が国でも生産は既に停止されている。
【0003】
そのため、CFC-113 等のクロロフルオロカーボン系付着水除去用溶剤組成物が有する低毒性、不燃性、低腐食性の特性を失うことなく、水置換性能が優れ、且つオゾン層を破壊する恐れがない付着水除去用溶剤組成物の開発が望まれている。そこで発明者らは、このような溶剤を探索した結果、ハイドロフルオロエーテルに界面活性剤を混合した付着水除去用溶剤組成物(特願平8-122073号)やハイドロフルオロエーテルに1,2-ジクロロエチレン及び界面活性剤を混合した付着水除去用溶剤組成物(特願平10-12967号)を提案した。
【0004】
しかしながら近年は部品の軽量化要求に伴いプラスチック化や微細な加工がされているため、従来の洗浄方法のように沸騰している液に浸漬すると熱でプラスチック基材が傷んだり液対流のため被洗物の衝突により破損してしまうことが多くあり、このような部品には冷浴を用い、かつ洗浄効率を高めるために必要に応じ、超音波を使用しての水切り洗浄が行われている。
【0005】
沸騰浴において洗浄を行う従来法においては、洗浄及びすすぎが終わってすすぎ槽から取り出された被洗浄物品は、洗浄槽及びすすぎ槽の上部に形成された洗浄液の飽和蒸気層において蒸気洗浄が行われるが、冷浴にて水切り洗浄を行い、ヒーターの代わりに超音波を使用した場合、洗浄機上部に飽和蒸気層が形成されない為、洗浄剤の持出ロスが多大になったり洗浄が充分でなくシミが生成する。そこで洗浄機内に洗浄槽とは別に蒸気発生槽を設置してそこから洗浄剤蒸気を洗浄装置上部に導入して蒸気層を形成させることも行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
オゾン層破壊の恐れがない付着水除去用水切り洗浄剤としてハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルあるいはそれらの混合物が用いられる(以下「ハイドロフルオロカーボン」を「HFC」、「ハイドロフルオロエーテル」を「HFE」と呼び、また両者及びその混合物を総称して「HFC/E」と呼ぶ)。この場合水切り洗浄剤が単一物質又は共沸混合物であるときには組成変化が生じないので蒸気発生槽と洗浄槽が独立していても連続した水切り洗浄が可能である。HFC/E単体では水との親和性が足りず、水切り洗浄能力が充分でないのでアルコールや界面活性剤が混合されている。この場合HFC/Eとアルコールとの共沸混合物ではアルコール含有量が約5%と少ないため水切り性能が不足するのでアルコールを共沸範囲より増加させて使用されるのが普通である。従ってアルコールや界面活性剤の沸点がHFC/Eより高い場合には、蒸気発生槽中でHFC/Eが多く蒸発するためアルコール濃度或は界面活性剤濃度が次第に上昇するのに対して、水切り洗浄槽中では被洗浄物に同伴されたり凝縮器から凝縮して戻されるHFC/Eによりアルコール濃度或は界面活性剤濃度が逆に減少する。その為運転開始後短時間で水切り洗浄能力が劣化するという問題があった。
【0007】
発明者らは、水切り洗浄において、特に温浴や沸騰浴を用いない洗浄方法における上記問題点を解決し、常に高い水切り洗浄能力を持続させる方法について検討した結果、水切り洗浄槽とは別に設けられた蒸気発生槽と水切り洗浄槽との間で水切り洗浄剤の一部を循環させることにより、両槽とも濃度の変動が少なくなり安定な運転が可能となることを見いだした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、被洗浄物品を、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5,- デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタンからなる群から選ばれたハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高いアルコールとから成る非共沸水切り洗浄剤もしくは上記ハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高い界面活性剤とから成る水切り洗浄剤又はそれらの混合物からなる水切り洗浄剤を満たした水切り洗浄槽中で洗浄して付着水を除去し、次いで水切り洗浄槽とは別に設けられた蒸気発生槽で発生した水切り洗浄剤蒸気を導入して洗浄装置の上部に形成した蒸気層で蒸気洗浄を行うとともに、水切り洗浄剤の一部を、水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させる送液管を設けて、水切り洗浄剤の一部を、水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させることを特徴とする物品の水切り洗浄方法である。
【0009】
また本発明は上記洗浄方法を実施するための装置であって、非共沸の水切り洗浄剤混合物により付着水を除去する水切り洗浄槽と、水切り洗浄槽とは別に設けられ、そこで発生した水切り洗浄剤の蒸気を、蒸気洗浄のための蒸気層として前記水切り洗浄装置上部に導入形成させるための蒸気発生槽とを有し、かつ水切り洗浄剤の一部を、水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させる送液管を有することを特徴とする物品の水切り洗浄装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において水切り洗浄剤の1成分として用いられるハイドロフルオロカーボン(HFC)とは、炭化水素の水素原子の一部が弗素原子のみで置換され、塩素原子を含まない弗素化炭化水素であり、ハイドロフルオロエーテル(以下、HFEという。)とはエーテル類の水素原子の一部が弗素原子のみで置換され、塩素原子を含まない弗素化エーテルである。
【0011】
本発明で用いるHFCまたはHFE液体としては、沸点が30〜150℃のものが好ましい。HFC/E液体の沸点が30℃未満では、蒸発ロスが大きく、水の結露の問題もある。また、HFC/E液体の沸点が150℃を越えるとその蒸発エネルギーが大きくなり、被洗浄物品を損傷するおそれが生ずる。
【0012】
また、引火性等、安全面を考慮すると本発明で用いる水切り洗浄剤は実質的に不燃性であることが望ましい。不燃性の水切り洗浄剤は、HFC/Eとして高度に弗素置換したものを使用すること及び、後述するようにHFC/Eとアルコールまたは界面活性剤との混合比率を調整することにより得られる。HFC/Eとして具体的には、炭素と結合した原子の過半数が弗素であるもの、すなわち分子中のF/(H+F)原子比が0.5を超えるものが好ましい。
【0013】
このようなHFC/Eのうち、本発明に好適に使用できる水切り洗浄剤としては不燃性、低毒性、地球環境の観点から、HFCとしては具体的には1,1,1,2,3,4,4,5,5,5,- デカフルオロペンタン(以下、HFC43−10meeという。沸点55℃)または1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(以下、338pccという。沸点44℃)が使用される。またHFEとしては1,2,2,2-テトラフルオロエチル−ヘプタフルオロプロピルエーテル(沸点40℃)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ−2−ヘプタフルオロプロピロキシ−3−(1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ)−プロパン(沸点104℃)、ノナフルオロブチル−メチルエーテル(沸点60℃)、ノナフルオロブチル−エチルエーテル(沸点78℃)などを挙げることができる。
【0014】
HFC/Eと混合して用いるアルコールは、不燃性とすすぎ効果を保持するHFC/Eの飽和蒸気層を形成するために、その沸点がHFC/Eの沸点よりも高いものであり、好ましくは10℃以上高いアルコールである。また水との親和性の高いものが好ましい。このようなアルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等が例示される。またこれらの混合物を使用することもできる。
【0015】
水切り洗浄槽におけるHFC/Eとアルコールとの混合比率は、両成分の種類、両者の沸点差や、被洗浄物品の汚れの程度等にもよるが、(HFC/E)/(アルコール)(重量比)=94/6〜88/12の範囲で混合するのが好ましい。アルコールの量が少ないと水との親和性が足りず水切り洗浄能力が不充分である。またアルコールの量が多すぎると、可燃性となったり被洗浄物品の表面に残り、すすぎ効果が低下したり、あるいは被洗浄物品を損傷する恐れがあるので好ましくない。
【0016】
また水切り洗浄液として、HFC/Eと界面活性剤との混合物を用いる場合、界面活性剤は、その沸点がHFC/Eの沸点より高く、かつHFC/Eに溶解するものを用いる。このような界面活性剤としては、クロロフルオロカーボン系付着水除去用溶剤に通常用いられている各種の界面活性剤を用いることができるが、本発明の場合、特に弗素含有界面活性剤又はポリオキシエチレンアルキルエーテル基を含有する界面活性剤が好ましい。
【0017】
弗素含有界面活性剤としては、例えば
【化1】
(但し、Rは炭素数2−10のアルキル基、Rfは炭素数5−18のパーフルオロアルキル基、mは1−20の整数)
のような、パーフルオロアルキル基及びオキシエチレン基を有するアミン等を挙げることができる。具体的にはN−アルキル−N−ポリオキシエチレンパーフルオロオクタンスルホンアミドやN−アルキル−N−(p−アフロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミドが例示される。
【0018】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基を含有する界面活性剤としては、
R−C6 H4 −O(C2 H4 O)n H
(但し、Rは炭素数5−10のアルキル基、nは1−20の整数)
のようなポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が例示される。
【0019】
その他、これまでクロロフルオロカーボン系付着水除去用溶剤に用いられてきた陰イオン系界面活性剤であるカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩など、陽イオン系界面活性剤であるアルキル第4アンモニウム塩、ノニオン系界面活性剤等も使用することができ、またこれらを混合して使用することもできる。
【0020】
HFC/Eと界面活性剤との混合比率は、(HFC/E)/(界面活性剤)(重量比)=99.99/0.01〜95/5の範囲で混合するのが好ましい。界面活性剤の量が少ないと水との親和性が足りず付着水除去効果が低下し、また界面活性剤の量が多いと、被洗浄物品の表面に残りすすぎ効果が低下するので好ましくない。
【0021】
また、本発明においては、HFC/Eに、アルコール及び界面活性剤の両者を混合した水切り洗浄剤を使用することもできる。三者を混合した場合、HFC/Eに対する界面活性剤の溶解力が向上するので有利である。
【0022】
本発明においては、被洗浄物品を、HFC/Eと、沸点がそれらよりも高いアルコールまたは界面活性剤とからなる水切り洗浄剤を満たした水切り洗浄槽中で洗浄して付着水を除去し、通常は更にすすぎを行う。一方、洗浄槽とは別に水切り洗浄槽と同じ成分の洗浄剤を満たした蒸気発生槽を設置し、そこで発生した洗浄剤蒸気を洗浄装置上部に導入して蒸気層を形成させ、そこですすぎの終わった被洗浄物を蒸気洗浄する。しかし、この操作を長時間続けると、水切り洗浄槽中ではアルコール或は界面活性剤濃度が減少し、一方、蒸気発生槽中ではアルコール或は界面活性剤濃度が上昇し、その結果水切り洗浄能力が落ちてくる。そこで本発明においては、蒸気発生槽と水切り洗浄槽との間で水切り洗浄剤の一部を循環させ、それによって蒸気発生槽及び水切り洗浄槽濃度の変動を抑え、高い洗浄力が長時間維持できるようにしたものである。
【0023】
以下本発明に用いる水切り洗浄装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の水切り洗浄方法に用いる洗浄装置の一例である。図1において2は水切り洗浄槽であり、必要に応じすすぎ槽3を設ける。本発明ではこの他に蒸気発生槽6を設け、水切り洗浄槽、すすぎ槽、蒸気発生槽は一つの共有空間を有する洗浄装置1内に収容されている。また水切り洗浄槽に隣接して水分離槽4が設置され、更に水分離槽には貯槽5が隣接設置されている。水切り洗浄槽にはHFC/Eと、沸点がそれらよりも高いアルコールまたは界面活性剤とから成る水切り洗浄剤を、またすすぎ槽にも水切り洗浄剤と同様の成分のすすぎ液を満たす。洗浄槽及びすすぎ槽は、それぞれ複数個の槽から構成されていても良い。
【0024】
水切り洗浄槽及びすすぎ槽はいずれも上部が開口し、その開口部を通じて被洗浄物品の出し入れを行うことができる。被洗浄物品はまず水切り洗浄槽の上部開口部より装置内に導入され、一定時間洗浄槽に浸漬されて水切り洗浄液により洗浄され、表面に付着した油やフラックス等を除去する。
【0025】
ついで被洗浄物品を水切り洗浄槽から取り出してすすぎ槽に移し、ここでその表面に付着した洗浄剤をすすぎ液ですすいで除去する。
【0026】
水切り洗浄槽の温度は高い方が洗浄効果を高める意味で好ましいが、一方、温度が高すぎると、被洗浄物が熱による損傷を受けるので、水切り洗浄槽の温度は水切り洗浄剤の沸点以下で、且つ被洗浄物品が熱による損傷を受けない温度で運転する。そのため、水切り洗浄槽或はすすぎ槽には沸騰させない範囲で温度を上昇させる目的で、加温装置7を設置してもよい。本発明は、比較的低温浴で洗浄を行う場合に特に有効である。また水切り洗浄槽及びすすぎ槽には洗浄効率やすすぎ効率を高めるために、必要に応じて超音波発生器8を取りつけてもよい。
【0027】
一方、これと別に設けられた蒸気発生槽6は、その上部が水切り洗浄槽及びすすぎ槽の開口部と連通し、蒸気発生槽で発生した飽和蒸気が水切り洗浄槽及びすすぎ槽の上部に形成される。
【0028】
本発明においては水切り洗浄槽と別に蒸気発生槽を設け、蒸気発生槽で発生した水切り洗浄液の飽和蒸気が水切り洗浄槽及びすすぎ槽の上部に形成され、洗浄槽、すすぎ槽から取り出された被洗浄物品はこの飽和蒸気層10に静置して蒸気洗浄を行った後、被洗浄物品を水切り洗浄装置の上部開口部より取り出す。最後に被洗浄物品の表面に付着した洗浄剤を気化蒸散させ、洗浄された染みの無い物品が得られる。
【0029】
水切り洗浄槽中の洗浄液は、蒸気発生槽との間で液の循環と同時に水の分離が行われる。まず、水切り洗浄槽の上部からオーバーフローした洗浄液は、水分離槽に送られ、被洗浄物品から洗い落とされた水分は、比重差により洗浄液と分離され排水口9より除去される。水を分離した洗浄液は貯槽に貯められた後、ポンプ11により、送液管12を通って一部は蒸気発生槽に、また一部は水切り洗浄槽に送液管13を通って水切り洗浄槽に戻される。また逆に蒸気発生槽の上部からは戻り送液管14を通って貯槽に戻され、水切り洗浄槽からのオーバーフロー洗浄液と合流する。
【0030】
なお蒸気発生槽で発生させ、水切り洗浄槽の上部に形成された飽和蒸気は、コンデンサー15で冷却され、水分離器16で洗浄液と水とに分離され、水を排水口17から除去した後、第2すすぎ槽に還流し、オーバーフローにより第1すすぎ槽を経て洗浄槽に戻される。
【0031】
液循環を行わない場合、蒸気発生槽中の水切り洗浄剤は、運転継続により徐々にHFC/Eより高沸点のアルコール或は活性剤が濃縮される。また逆に水切り洗浄槽ではアルコール或は活性剤が被洗浄物に同伴されて除去されるとともに凝縮器からHFC/Eが凝縮して戻されることによりアルコール或は界面活性剤濃度が減少していく。しかし本発明により蒸気発生槽中の水切り洗浄剤の一部を水切り洗浄槽に戻すことにより、一時的に減少した水切り洗浄槽中のアルコール分或は活性剤はすばやく当初の濃度に戻る。すなわち当初の水切り能力が運転中に劣化することなく維持できる。
【0032】
蒸発による蒸気発生槽からの液の減量を補うために、水切り洗浄槽から洗浄液を蒸気発生槽に送る送液管だけを取りつけた装置を用いたのでは、水切り洗浄槽中のアルコール或は活性剤濃度減少を抑えることはできない。本発明においては蒸気発生槽から水切り洗浄槽への戻り送液管14を設け、水切り洗浄槽中のアルコール或は活性剤濃度の減少を抑えながら液を循環することが重要である。
【0033】
また本発明の第2の発明は、水切り洗浄剤として、非共沸の水切り洗浄剤混合物を用いて上記洗浄方法を実施するための、水切り洗浄槽、蒸気発生槽とを有し、かつ水切り洗浄剤の一部を水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させる送液管とを有する物品の水切り洗浄装置である。
【0034】
本発明の水切り洗浄装置は、水切り洗浄剤として、非共沸の水切り洗浄剤混合物を用いて物品の汚れ成分を溶解除去し、洗浄槽から取り出した被洗浄物体を蒸気洗浄する方法に広く応用できるが、特に第1の発明のように、ハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高いアルコールまたは界面活性剤とから成る非共沸水切り洗浄剤を用いて洗浄する方法で、特に洗浄を冷浴を用いて行う洗浄法に適した装置である。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
図1の水切り洗浄装置における蒸気発生槽、水切り洗浄槽、第1すすぎ槽及び第2すすぎ槽に、2−プロピルアルコールをそれぞれ表1記載の濃度で含有する1,1,1,2,3,4,4,5,5,5,−デカフルオロペンタンを入れた。次に蒸気発生槽の水切り洗浄剤を沸騰させ、蒸気発生槽−水切り洗浄槽間の液循環をさせながら10時間運転した。10時間後の各槽の2−プロピルアルコールの濃度を表1に示す。表1から分かるように水切り洗浄槽の2−プロピルアルコール濃度は、運転前とほとんど変わらず一定であった。
【0036】
【表1】
各槽の2−プロピルアルコール濃度(%)
【0037】
[比較例1]
図1において、蒸気発生槽から水切り洗浄槽への戻り送液管14をはずした以外は図1と同じ装置を用いて実施例1と同様の操作をおこなった。結果を表2に示す。表2から明らかなように、この装置では蒸気発生槽への水切り洗浄剤の補給はされるが、循環が行われないため、10時間後の水切り洗浄槽の2−プロピルアルコール濃度は、運転前に比べ1%以上も減少していた。
【0038】
【表2】
各槽の2−プロピルアルコール濃度(%)
【0039】
[実施例2]
厚さ10mmの塩化ビニル製ブロックに直径1mmの穴を40個空け、その穴に水を注入したものを図1に示す装置の水切り洗浄槽に超音波を使用しながら30秒間浸漬させた。その結果33個の穴の水が置換されていた。次に実施例1の試験で10時間運転した直後に同様の操作を行ったところ、35個の穴の水が置換されていた。即ち10時間後でも水切り洗浄能力は維持されていた。
【0040】
[比較例2]
比較例1で用いたと同じ 装置を用いて実施例2と同様の操作をおこなった。その結果、当初31個の穴の水が置換されていたものが、10時間運転後では26個しか置換されていなかった。即ち運転継続とともに大幅に水の置換能力が減少することがわかった。
【0041】
[実施例3]
長さ60mm、幅8mm、厚さ1mmの良く磨いたアルミの板を水に浸漬した後、図1に示す装置に30秒間浸漬した。引き上げたアルミ板を目視にて観察したところ、水は完全に置換され、表面はきれいな状態であった。
【0042】
[比較例3]
実施例3と同じアルミ板を用い、図1の装置を用いたが、蒸気発生槽のヒーターによる加熱を行わずに、実施例3と同じアルミ板を用い、実施例3と同様な操作を行った。水切り洗浄槽の上部に飽和蒸気層が形成されなかったため、アルミ板と冶具の接触面に水染みが残った。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、蒸気発生槽を水切り洗浄槽とは別に設け、かつ蒸気発生槽と水切り洗浄槽の間で水切り洗浄剤の一部を循環することにより、非共沸水切り洗浄剤を用い、しかも冷浴で洗浄を行っても、蒸気洗浄により付着水をきれいにかつ染みなく除去することができ、かつ蒸気発生槽及び水切り洗浄槽中の水切り洗浄剤の濃度変動が少なく、安定して長時間運転ができるので、金属製やプラスチック製の精密部品、光学部品、電子部品等を傷めることなく、付着水の除去を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水切り洗浄方法を実施するための装置の1例である。
【符号の説明】
1 洗浄装置
2 水切り洗浄槽
3 すすぎ槽
4 水分離槽
5 貯槽
6 蒸気発生槽
7 ヒーター
8 超音波発生器
9 排水口
10 飽和蒸気層
11 ポンプ
12 洗浄液送液管
13 洗浄液送液管
14 洗浄液戻り送液管
15 コンデンサー
16 水分離器
17 排水口
Claims (6)
- 被洗浄物品を、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5,- デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタンからなる群から選ばれたハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高いアルコールとから成る非共沸水切り洗浄剤もしくは上記ハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高い界面活性剤とから成る水切り洗浄剤又はそれらの混合物からなる水切り洗浄剤を満たした水切り洗浄槽中で洗浄して付着水を除去し、次いで水切り洗浄槽とは別に設けられた蒸気発生槽で発生した水切り洗浄剤蒸気を導入して洗浄装置の上部に形成した蒸気層で蒸気洗浄を行うとともに、水切り洗浄剤の一部を、水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させる送液管を設けて、水切り洗浄剤の一部を、水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させることを特徴とする物品の水切り洗浄方法。
- ハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルが30-150℃の沸点を有するものであることを特徴とする請求項1記載の水切り洗浄方法。
- ハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルの分子中のF/(H+F)原子比が0.5 を超えるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の水切り洗浄方法。
- アルコールがメチルアルコール、エチルアルコール、2−プロピルアルコールもしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水切り洗浄方法。
- 非共沸の水切り洗浄剤混合物により付着水を除去する水切り洗浄槽と、水切り洗浄槽とは別に設けられ、そこで発生した水切り洗浄剤の蒸気を、蒸気洗浄のための蒸気層として前記水切り洗浄装置上部に導入形成させるための蒸気発生槽とを有し、かつ水切り洗浄剤の一部を、水切り洗浄槽と蒸気発生槽の間で循環させる送液管を有することを特徴とする物品の水切り洗浄装置。
- 非共沸の水切り洗浄剤混合物が、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5,- デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタンからなる群から選ばれたハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高いアルコールとから成る非共沸水切り洗浄剤もしくは上記ハイドロフルオロカーボン或いはハイドロフルオロエーテルもしくはその両者の混合物と、沸点がそれらよりも高い界面活性剤とから成る水切り洗浄剤であることを特徴とする請求項5記載の物品の水切り洗浄装置。
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