JP4291442B2 - アラビノフラノシダーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に特異的に作用し、直鎖(1→5)−α−L−アラビナンに対する加水分解活性を有するアラビノフラノシダーゼ、および糖転移活性を有するアラビノフラノシダーゼ、当該アラビノフラノシダーゼをコードする遺伝子、当該アラビノフラノシダーゼ生産菌株、および当該アラビノフラノシダーゼの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
L−アラビノースは天然に存在する五単糖であり、適度な甘みを有する。自然界ではフラノースの形で、アラビノキシランやアラビナン、アラビノガラクタンとして存在している。アラビノースを主な構成糖とするアラビナンは、ある種の種子、果実、野菜、樹皮あるいは木材などから抽出され、構造解析がなされている。基本的にはα−L−アラビノフラノース残基が(1→5)結合した主鎖のところどころに、O−3位あるいはO−2位でα−L−アラビノフラノース残基が結合した構造を持つことが示されている。
【0003】
近年、世利らにより、単糖L−アラビノースが小腸スクラーゼを阻害すること、また経口投与により砂糖負荷後の血糖上昇、インスリン上昇を抑制することが明らかにされた(世利他、メタボリズム、45巻、p.1368(1996);K.Seri et.al.,Metabolism,45,p.1368(1996))。さらに、讃井らにより、L−アラビノースはスクロースとともに摂取した場合、スクロースの消化吸収を抑制し、そのエネルギー利用を低減することが示され(讃井他、日本栄養食料学会誌、50巻、p.133(1997))、その生理活性とともに製造法に関して注目が高まっている。
【0004】
アラビノース含有多糖を分解する酵素がアラビナナーゼであり、現在までその作用様式からエンド型とエキソ型の二系統が知られている。エンド型のアラビナナーゼはエンド−(1→5)−α−L−アラビナナーゼ(EC.3.2.1.99)と呼ばれており、エキソ型はアラビノフラノシダーゼ(EC.3.2.1.55)と呼ばれている。
【0005】
アラビノフラノシダーゼはこれまで様々な起源のものが報告されている。現在のところ、以下の2種類に大きく分類されている(G.Beldmanら、アドバンシス・イン・マクロモレキュラー・カーボハイドレート・リサーチ、1巻、p.1(1997))。
(1)α−L−アラビノフラノシダーゼA
(2)α−L−アラビノフラノジターゼB
【0006】
この分類は、ビートアラビナンなどのアラビノース含有多糖への作用の有無によるものである。しかしながら、アラビノース含有多糖の構造が未だ不明瞭であり、そのためアラビノフラノシダーゼの分類についてもはっきりしていないのが現状である。アラビノース含有多糖に作用するアラビノフラノシダーゼにおいて、今まで発見されている酵素の多くは、ビートアラビナンから(1→2)または(1→3)結合したα−L−アラビノース残基を優先的に加水分解し、その結果直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを生じて溶液中から沈殿する(McCleary,B.V.、エンザイムズ・イン・バイオマス・コンバージョン、P.422(1984);McCleary,B.V.,Enzymes In Biomass Conversion,p.422(1984))。アラビナンの主鎖である直鎖(1→5)−α−L−アラビナンはほとんど分解されないため、これら公知の酵素でビートアラビナンを高収率で単糖まで分解することは困難であった。
【0007】
ワイン・果汁ジュースなどでしばしば発生する濁りは、この直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを主成分とするものである(M.P.Bellevilleら、ファイトケミストリー、33巻、P.227(1993);M.P.Belleville et.al.、Phytochemistry、33、P.227(1993))。上述した理由により、公知のアラビノフラノシダーゼによってこれら濁りの発生を防止することや濁りを除去することは困難であった。
【0008】
様々なグリコシダーゼがその特異性を利用して多糖やオリゴ糖などの構造解析に広く利用されている。アラビノース含有多糖などの構造研究には基質特異性の高い酵素が必須であるが、これまで基質特異性が明確になっているアラビノフラノシダーゼは数少ない。我々は幾つかのアラビノフラノシダーゼの基質特異性について、3種類のメチル−α−L−アラビノフラノビオシド位置異性体(1→2、1→3、1→5)等を用いて詳細に調べた。これまで(1→2)あるいは(1→3)結合したα−L−アラビノフラノース残基を優先して切断する酵素の存在はいくつか確認したが、(1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に特異的な酵素は得られていない。
【0009】
近年、グリコシダーゼの糖転位反応により様々なオリゴ糖や配糖体が合成され、食品分野を中心に幅広く利用されている。しかしながら、アラビノフラノシダーゼによる糖転位反応についてはほとんど報告がなく、アラビノオリゴ糖やアラビノース配糖体の応用例も知られていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に高い特異性を有して直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを効率良く分解することができ、またその高い基質特異性から研究用試薬としても利用価値の高いアラビノフラノシダーゼ、および糖転移活性を有し各種アラビノオリゴ糖やアラビノース含有配糖体の製造に利用できるアラビノフラノシダーゼを提供するものである。また、当該アラビノフラノシダーゼをコードする遺伝子を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規な性質を有するアラビノフラノシダーゼ、特に直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを効率的に分解できる酵素、および糖転移活性を有する酵素の生産が可能な微生物を見い出すべく鋭意研究を行った結果、ストレプトマイセス属に属する放線菌に由来するアラビノフラノシダーゼが(1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に高い特異性を有して直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを効率的に分解できることを見い出し、また本菌に由来する別の酵素が糖転移活性を有することを見い出し、この菌株の培養液から目的とする酵素を取り出してその性質を解明し、発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを効率的に分解できるアラビノフラノシダーゼ、当該アラビノフラノシダーゼを生産する菌および当該アラビノフラノシダーゼをコードする遺伝子を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、糖転移活性を有するアラビノフラノシダーゼ、当該アラビノフラノシダーゼを生産する菌株および当該アラビノフラノシダーゼをコードする遺伝子を提供するものである。
【0014】
更に、本発明は、これらの遺伝子を有する菌株を培地中に接種し、培養してアラビノフラノシダーゼを菌体内または培地中に蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする、アラビノフラノシダーゼの製造法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のアラビノフラノシダーゼを生産する菌としては、発明者らによって新たに分離され、GS−901と名付けられた株があるが、当該菌株は以下に示すような菌学的性質を有する。
【0016】
1A.形態的性質
栄養菌糸は、合成寒天培地および天然培地において良く発達し、不規則に分岐する。
胞子は、イースト・麦芽寒天培地、オートミール寒天培地、スターチ・無機塩寒天培地などで良好に形成される。顕微鏡観察によると、胞子形成菌糸の分岐方法は単純分岐で、胞子はらせん状に形成される。胞子は通常3個以上の連鎖が認められ、培養の後期には長い鎖状を呈する。胞子の表面はとげ状で、形状は円筒形である。
【0017】
1B.培地上での生育状態
各種培地で30℃、14日間培養したときの肉眼的観察結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
1C.生理的性質
(1)生育至適温度
25〜37℃である。40℃でもわずかに生育する。
(2)生化学的性質
(a)ゼラチンの液化
陽性
(b)デンプンの加水分解
陽性
(c)メラニン様色素生成
陽性
(d)硝酸塩の還元
陽性
(e)食塩に対する耐性
7%まで耐性がある
(3)炭素源の利用性
GS−901株の炭素源の利用性を表2に示した。なお、培地はプリドハム・ゴトリーブ寒天培地(ISP9)を使用し、28℃、14日間培養後に判定した。
【0020】
【表2】
【0021】
(注)++:顕著に利用、+:利用する、−:利用しない
【0022】
(4)細胞壁のジアミノピメリン酸(DAP)のタイプ,
LL−DAP
【0023】
以上の性質から、本菌株が放線菌に属することは明らかであって、「放線菌の同定実験法」(日本放線菌研究会編、1985年)等を参照して分類学的位置を検討した結果、Streptomyces sp.と同定した。
【0024】
この放線菌は下記のとおり命名し、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
Streptomyces sp.GS-901(受託番号 FERM P−16916)
【0025】
次に上記微生物を培養して、培養物から新規アラビノフラノシダーゼを採取する方法について説明する。
使用可能な培地としては、通常の微生物の培養に用いられる培地で本発明の菌株が生育可能であれば特に制限はないが、例えば、有機炭素源および窒素源としてはグルコース、澱粉、デキストリン、ビートアラビナン、ペプトン、酵母エキスなどが適しており、無機塩類としてはリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、食塩などの添加が有効である。その他、必要に応じて菌の生育、酵素の生産に必要な各種有機物、無機物を適宣添加することができる。
【0026】
上記培地での培養方法は、振盪培養または発酵槽等を用いての、通気撹拌培養が適している。培養温度は、生育できる範囲内なら特に限定されないが、30℃付近が望ましい。
【0027】
上述のようにして培養した後、培養物中から、目的物質であるアラビノフラノシダーゼを採取および精製するには、一般的な酵素の採取および精製方法に準じて行うことができる。すなわち、ろ過あるいは遠心分離等の方法により、まず培養液から菌体等の固形分を除去し、粗酵素液を得る。このようにして得られる粗酵素液はそのまま使用することもできるが、この粗酵素液を通常の酵素精製法、すなわち硫安塩析、アセトン、アルコール等による有機溶媒沈殿、限外ろ過、イオン交換樹脂、ゲルろ過法などの手法を、単独あるいは組み合わせて用いることで、より純度の高いアラビノフラノシダーゼを得ることができる。
【0028】
アラビノフラノシダーゼの活性は、次に示す方法により測定する。すなわち、2mM p−ニトロフェニル−α−L−アラビノフラノシド0.25ml、マクイルバイン(McIlvaine)緩衝液(pH7.0)0.2mlに、酵素液0.05mlを加え、40℃で10分間反応させる。0.5%炭酸ナトリウム0.5mlを加えることにより反応を停止し、408nmの吸光度を測定する。酵素活性の表示は、上記条件において、1分間あたり1μmolのパラニトロフェノールを遊離させる酵素量を1単位とした。
【0029】
次に本発明で得られるアラビノフラノシダーゼの理化学的性質を示す。なお、便宜上、以下の記述においては、糖転移活性を有するアラビノフラノシダーゼをアラビノフラノシダーゼ1、(1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に特異的に作用して直鎖(1→5)−α−L−アラビナンを加水分解するアラビノフラノシダーゼをアラビノフラノシダーゼ2と称する。
【0030】
(1)分子量
アラビノフラノシダーゼ1:約80キロダルトン(SDS電気泳動による)
アラビノフラノシダーゼ2:約37キロダルトン(SDS電気泳動による)
(2)等電点
アラビノフラノシダーゼ1:pH6.6付近(等電点電気泳動法による)
アラビノフラノシダーゼ2:pH7.5付近(等電点電気泳動法による)
(3)作用pHおよびpH安定性
40℃におけるアラビノフラノシダーゼ1の作用pHはpH5.5近傍に至適がある。30℃、2時間放置した際のアラビノフラノシダーゼ作用の安定性はpH5.5〜8.5の範囲で安定である。
40℃におけるアラビノフラノシダーゼ2の作用pHはpH7近傍に至適がある。30℃、2時間放置した際のアラビノフラノシダーゼ作用の安定性はpH5.0〜9.0の範囲で安定である。
(4)至適温度および安定性
pH5.5、10分反応時のアラビノフラノシダーゼ1の作用温度は55℃近傍に至適がある。pH7、2時間放置後のアラビノフラノシダーゼ作用の安定性は40℃までである。
pH7.0、10分反応時のアラビノフラノシダーゼ2の作用温度は50℃近傍に至適がある。pH7、2時間放置後のアラビノフラノシダーゼ作用の安定性は40℃までである。
【0031】
本発明のアラビノフラノシダーゼ1は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するか、またはそのアミノ酸配列の1若くは数個のアミノ酸が欠失、置換若くは付加されたアミノ酸配列を有するものである。また、本発明のアラビノフラノシダーゼ2は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するか、またはそのアミノ酸配列の1若くは数個のアミノ酸が欠失、置換若くは付加されたアミノ酸配列を有するものである。かかる欠失、置換または付加の程度は、前記アラビノフラノシダーゼ活性を有する限り制限されない。なお、配列番号1においてN末端側のMetから29番目のAlaまで、および配列番号2においてN末端側のMetから43番目のAlaまではリーダー配列を示す。
【0032】
本発明のアラビノフラノシダーゼ1をコードする遺伝子は、たとえば配列番号1に示す塩基配列を有するか、またはその塩基配列の1若くは数個の塩基が欠失、置換若くは付加された塩基配列を有するものであり、アラビノフラノシダーゼ2をコードする遺伝子は、たとえば配列番号2に示す塩基配列を有するかまたはその塩基配列の1若くは数個の塩基が欠失、置換若くは付加された塩基配列を有するものである。該アラビノフラノシダーゼ遺伝子のクローニングは、たとえば以下の方法にしたがって行うことができる。
【0033】
すなわち、例えばストレプトマイセスのゲノムDNAを用いてゲノムDNAライブラリーを作製する。ここで用いるストレプトマイセスとしては、ストレプトマイセスsp.GS−901またはその変異株が望ましい。次に、精製した該アラビノフラノシダーゼのN末端アミノ酸配列から推定される遺伝子を用いてコロニーハイブリダイゼーションを行い、強くハイブリダイズするクローンを得る。得られたクローンより既知のアラビノフラノシダーゼとは異なる性質、すなわち本発明のアラビノフラノシダーゼを発現しているクローンを選択する。
【0034】
得られたクローンの例としてプラスミド(図1)が挙げられる。
【0035】
本発明のアラビノフラノシダーゼは、例えば配列番号1および2に示す塩基配列を有するか、またはその塩基配列の1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは負荷された塩基配列を有する菌株を培地中に接種し、培養してアラビノフラノシダーゼを菌体内または培地中に蓄積せしめ、これを採取することによっても製造できる。
【0036】
本発明のアラビノフラノシダーゼ1について、メチル−α−(1→2)−L−アラビノフラノビオシドに対して作用させたときの反応生成物のHPLCチャートを図2に示した。なお、HPLCの分析条件は以下の通りであった。すなわちカラム:昭和電工(株)製 Suger KS−801、溶離液:水、温度:80℃、流速:1ml/min、検出:示差屈折計である。
【0037】
アラビノフラノシダーゼ1の作用により、加水分解産物であるL−アラビノースとメチル−α−L−アラビノフラノシド以外に、矢印で示した新たなピークが生じた。本物質を分取し構造研究を行ったところ、構成糖としてL−アラビノースのみからなる三糖であることが確認され、本酵素は糖転移活性を有していることが明らかとなった。
【0038】
本発明のアラビノフラノシダーゼ2について、ビートアラビナン及び直鎖(1→5)−α−L−アラビナンに対する分解の経時変化を図3(a)に、化学合成した3種類のメチル−α−L−アラビノフラノビオシド位置異性体(1→2、1→3、1→5)に対する分解の経時変化を図3(b)に示した。
【0039】
アラビノフラノシダーゼ2はビートアラビナンにほとんど作用せずに、直鎖(1→5)−α−L−アラビナンによく作用することが示されている。また、本酵素はメチル−α−(1→2)−L−アラビノフラノビオシドやメチル−α−(1→3)−L−アラビノフラノビオシドにほとんど作用せずに、メチル−α−(1→5)−L−アラビノフラノビオシドに良く作用することが示されている。
これらのことから、アラビノフラノシダーゼ2は(1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に特異的に作用する新規なアラビノフラノシダーゼであることが確認された。
【0040】
【実施例】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
Streptomyces sp.GS−901株について、以下の培地を調製し培養を行った。すなわち、ビートアラビナン1.0%、リン酸水素2アンモニウム0.3%、リン酸水素2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、酵母エキス0.3%である。
上記培地20mlを含む100ml容三角フラスコに1白金耳接種し、30℃、210rpmで3日間振とう培養し、種培養液とした。ついで、同培地100mlを含む500ml容三角フラスコに種培養液2mlを植菌し、30℃、210rpmで4日間振とう培養を行った。
培養終了時のアラビノフラノシダーゼ活性はおよそ0.03unit/mlであった。
【0042】
実施例2
実施例1で得た上清液を硫安塩析により濃縮し、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーにより電気泳動的に単一タンパクにまで精製した。精製したアラビノフラノシダーゼ1の比活性は約10unit/mg、アラビノフラノシダーゼ2の比活性は約3unit/mgであった。これらのアラビノフラノシダーゼは前記の基質特異性及び酵素学的性質を有していた。
【0043】
実施例3
クローニング
精製したアラビノフラノシダーゼ1、2のN末端、並びにV8−プロテアーゼで限定分解した内部ペプチドのN末端アミノ酸配列を基に合成したプライマーを用い、斉藤・三浦法(バイオキミカ・バイオフィス・アクタ、72巻、p.619(1963);Biochim.Biophys.Acta,72,p.619(1963))により抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR法によりDNAを増幅した。その結果、精製酵素のN末端及び内部アミノ酸配列をコードしている領域を含む増幅断片が得られた。 次に、この断片をプローブとしてジェノミックサザンハイブリダイゼーションを行った。その結果、アラビノフラノシダーゼ1はBamH1およびBglIIでゲノムDNAを共切断したときに、またアラビノフラノシダーゼ2ではSal Iで切断したときに単一なバンドが得られた。
【0044】
以上の結果を基にアラビノフラノシダーゼ1、2遺伝子のクローニングを試みた。まず、Trigliaらの方法(ヌクレイック・アシッド・リサーチ、16巻、p.8186(1988);Nucleic Acid Research,16,p.8186(1988))に従いインバースPCRを行ったところアラビノフラノシダーゼ1では約3.5kbpの、アラビノフラノシダーゼ2では約2.3kbpのDNA増幅断片が得られた。これらのシークエンスを確認し、それぞれの全長を含むDNAをPCR法により増幅した。
【0045】
【発明の効果】
本発明のアラビノフラノシダーゼ1は、糖転移活性を有するため、各種アラビノース含有配糖体やアラビノオリゴ糖の調製に有用である。
また、本発明のアラビノフラノシダーゼ2は、直鎖(1→5)−α−L−アラビナンによく作用するため、アラビナンの酵素分解や単糖L−アラビノースの製造などに有効である。さらに、その高い基質特異性から、アラビノース含有多糖の構造研究などのための試薬としても有用である。
【0046】
【配列表】
【0047】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酵素遺伝子を保有するプラスミド、pCR−2.1の構造を示す図である。プラスミドの分子量は約6.3kbである。図中、AFase1と記した矢印部分が本発明の酵素遺伝子であり、矢印は遺伝子の転写方向を示している。また、図中の引出し線は本プラスミド中の代表的な制限酵素サイトを示す。
【図2】本発明のアラビノフラノシダーゼ1について、メチル−α−(1→2)−L−アラビノフラノビオシドに対して作用させたときの反応生成物のHPLCチャートである。
【図3】本発明のアラビノフラノシダーゼ2について、(a)はビートアラビナン及び直鎖(1→5)−α−L−アラビナンに対する分解の経時変化を、(b)は3種類のメチル−α−L−アラビノフラノビオシド位置異性体(1→2、1→3、1→5)に対する分解の経時変化を示した図である。それぞれ、縦軸は分解率、横軸は反応時間を示す。
Claims (8)
- (1→5)結合したα−L−アラビノフラノース残基に特異的に作用し、次の酵素学的性質を有するアラビノフラノシダーゼ。
(1)分子量
37キロダルトン(SDS電気泳動法による)
(2)等電点
pH7.5(等電点電気泳動法による)
(3)作用pHおよびpH安定性
40℃におけるアラビノフラノシダーゼ作用pHはpH7.0に至適がある。30℃、2時間放置した際のアラビノフラノシダーゼ作用の安定性はpH5.0〜9.0の範囲で安定である。
(4)至適温度および安定性
pH7.0、10分反応時のアラビノフラノシダーゼ作用温度は50℃に至適がある。pH7.0、2時間放置後のアラビノフラノシダーゼ作用の安定性は40℃までである。 - 配列番号2に示すアミノ酸配列を有するか、またはそのアミノ酸配列の1若くは数個のアミノ酸が欠失、置換若くは付加されたアミノ酸配列を有するものである請求項1記載のアラビノフラノシダーゼ。
- 請求項1または2記載の性質を有するアラビノフラノシダーゼを生産するストレプトミセス・エスピーGS−901株(Streptomyces sp.GS−901)。
- ストレプトミセス・エスピーGS−901株(Streptomyces sp.GS−901)またはその変異株由来のものである請求項1または2記載のアラビノフラノシダーゼ。
- 請求項2記載のアラビノフラノシダーゼをコードする遺伝子。
- 配列番号2に示す塩基配列を有するか、またはその塩基配列の1若くは数個の塩基が欠失、置換若くは付加された塩基配列を有するものである請求項5記載の遺伝子。
- ストレプトミセス・エスピーGS−901株(Streptomyces sp.GS−901)またはその変異株由来のものである請求項6記載の遺伝子。
- 請求項5〜7のいずれか1項記載の遺伝子を有する菌株を培地中に接種し、培養してアラビノフラノシダーゼを菌体内または培地中に生成蓄積せしめ、培養物から該酵素を採取することを特徴とする、請求項1または2記載のアラビノフラノシダーゼの製造方法。
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