JP4274643B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特に車両に搭載された内燃機関の加速時における目標トルクを制御するための制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の制御装置として、例えば特開平5−133257号公報に開示されたものが知られている。この制御装置では、検出されたエンジン回転数とアクセル操作量に応じて要求トルクTを演算し、演算した要求トルクTの今回値Tiと前回値Ti−1との差分から、エンジンの加減速状態を判別する。エンジンが加速状態にないと判別したときには、目標トルクT’を今回の要求トルク値Tiとする(T’=Ti)一方、加速状態と判別したときには、要求トルクTをなまし値DTSETで「なます」ことによって目標トルクT’を算出する。このなまし値DTSETは、燃料カット状態からの加速時には、加速状態への移行後、所定時間が経過するまでは、より小さな一定の基準値DTSET0に設定され、所定時間が経過した後は、より大きな一定の基準値DTSET1に切り替えて設定される。そして、このように設定されたなまし値DTSETを、前回の要求トルク値Ti−1に加算することによって、目標トルクT’を算出する(T’=Ti−1+DTSET)。
【0003】
上記のように算出した目標トルクT’は目標スロットル弁開度に変換され、スロットル弁の開度が、この目標スロットル弁開度になるように駆動制御される。以上の制御により、この制御装置では、燃料カット状態からの加速時の初期には、要求トルクのなまし度合を大きくすることで、運転性を確保するとともに、その後はなまし度合を小さくすることで、加速応答性を確保するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の制御装置では、エンジンが加速状態にあると判別されたときに、加速の全期間を通じて常に、一定値であるなまし値DTSETを加算することにより要求トルクTのなましを行うため、ドライバーの要求に応じた十分な加速応答性を得ることができず、特になまし度合の大きい加速初期に、加速のもたつき感となって現れてしまうという欠点がある。また、この制御装置では、目標トルクT’が、加速時には、前回の要求トルク値Ti−1となまし値DTSETとの和として設定され(T’=Ti−1+DTSET)、加速時以外では、今回の要求トルク値Tiとして設定される(T’=Ti)というように、基本的には、エンジン回転数とアクセル操作量から直接、決定される要求トルクTが、目標トルクT’の基本値になっている。このため、アクセル操作の若干の変化に対しても、この基本値が過敏に変化し、これに伴い目標トルクT’も変化しやすいことで、車両の挙動が不安定になりやすく、特にアクセルの全開および全閉が繰り返されるような場合には、運転性が悪化するという欠点もある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、加速時において、目標トルクを適切に設定することにより良好な応答性および運転性を確保することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明は、運転状態に応じて目標トルクPMCMDREGを設定するとともに、設定された目標トルクPMCMDREGに基づいてトルク制御を行う内燃機関の制御装置であって、機関回転数NEを検出する回転数検出手段(実施形態における(以下、本項において同じ)クランク角センサ10)と、アクセル開度APを検出するアクセル開度検出手段(アクセルペダルセンサ11)と、回転数検出手段およびアクセル開度検出手段の検出結果に応じ、要求トルクPMEMAPを算出する要求トルク算出手段(ECU2、図2のステップ4)と、算出された要求トルクPMEMAPを平滑化する要求トルク平滑化手段(ECU2、図2のステップ5)と、要求トルク算出手段により今回算出された今回要求トルクPMEMAPnと、要求トルク平滑化手段により平滑化された平滑化後要求トルクPMCDTMPXとを比較することにより、加速状態にあるか否かを判別する加速判別手段(ECU2、図3のステップ32)と、この加速判別手段により加速状態と判別されたときに、今回要求トルクPMEMAPnと平滑化後要求トルクPMCDTMPXとの差分値DPMSPUPに応じて、加速アシスト量PMCDSPUPを算出する加速アシスト量算出手段(ECU2、図3のステップ35および図4のステップ40)と、平滑化後要求トルクPMCDTMPXに加速アシスト量PMCDSPUPを加算することにより、目標トルクPMCMDREGを設定する目標トルク設定手段(ECU2、図2のステップ8)と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明の制御装置によれば、要求トルク算出手段が、検出された機関回転数およびアクセル開度に応じて、要求トルクを算出するとともに、要求トルク平滑化手段が、算出された要求トルクを平滑化することで、平滑化後要求トルクを求める。また、加速判別手段は、今回算出された今回要求トルクと平滑化後要求トルクとを比較することにより、加速状態にあるか否かを判別する。そして、加速状態と判別されたとき、加速アシスト量算出手段が、今回要求トルクと平滑化後要求トルクとの差分値に応じて、加速アシスト量を算出するとともに、目標トルク設定手段が、この加速アシスト量を平滑化後要求トルクに加算することにより、目標トルクを設定する。
【0008】
以上のように、本発明の制御装置では、今回要求トルクと平滑化後要求トルクとを比較することで加速状態を判別するとともに、両者の差分値に応じて加速アシスト量を算出し、これを加算して目標トルクを設定する。したがって、ドライバーの加速要求をリアルタイムに反映させながら、加速度合に応じた適切な加速アシスト量を要求トルクとして付加できるので、良好な加速応答性を確保でき、加速時のもたつき感を解消することができる。また、この加速アシスト量が加算される、目標トルクの基本値として、機関回転数およびアクセル開度に応じて直接、算出した要求トルクではなく、これらを平滑化した平滑化後要求トルクを採用しているので、目標トルクの基本値がアクセル操作の変化に対して過敏に変化することがなくなることにより、車両の挙動を安定化させることができ、したがって、良好な運転性を確保することができる。
【0009】
この場合、加速アシスト量算出手段は、加速アシスト量PMCDSPUPを、加速状態の開始時に漸増し且つ終了時に漸減するように算出する(図4のステップ39、40および46、図8および図9)ことが好ましい。
【0010】
この構成では、加速アシスト量が、加速状態の開始時に漸増するとともに、終了時には漸減する。したがって、目標トルクを急激に変化させることなく、加速運転を円滑に開始および終了させることができるので、アクセルの全開および全閉が繰り返されるような場合でも、車両の挙動を安定化させ、良好な運転性を確保することができる。
【0011】
これらの場合、トランスミッションの変速比を検出する変速比検出手段(ギア段センサ13)をさらに備え、加速アシスト量算出手段は、加速アシスト量PMCDSPUPを、変速比検出手段で検出された変速比NGRが小さいほど、より大きくなるように算出する(図3のステップ36および図4のステップ40、図7)ことが好ましい。
【0012】
一般に、加速時に要求されるトルクは、変速比が小さいほどより大きくなる。したがって、上記の構成により、加速アシスト量を、検出された変速比が小さいほど、より大きくなるように算出することによって、そのときの変速比に応じた良好な加速応答性を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図1は、本発明を適用した制御装置の概略構成を示している。同図に示すように、この制御装置1は、ECU(要求トルク算出手段、要求トルク平滑化手段、加速判別手段、加速アシスト量算出手段、目標トルク設定手段)2を備えており、ECU2は、後述するように、内燃機関4(以下「エンジン4」という)のトルク制御を実行する。
【0014】
エンジン4は、図示しない車両(マニュアル・トランスミッション車(MT車))に搭載された、例えば直列4気筒タイプのガソリンエンジンであり(1気筒のみ図示)、ピストン4bとシリンダ4aのシリンダヘッド4dとの間に、燃焼室4cが形成されている。シリンダヘッド4dには、燃料噴射弁5(以下「インジェクタ5」という)および点火プラグ6が、燃焼室4cに臨むように取り付けられている。すなわち、このエンジン4は、燃料を燃焼室4c内に直接、噴射する直噴式のものである。
【0015】
インジェクタ5は、ECU2に接続されており、ECU2からの駆動信号によって、燃料噴射時間すなわち燃料供給量と燃料噴射タイミングが制御される。また、点火プラグ6は、点火コイル6aを介してECU2に接続されており、ECU2からの駆動信号によって、点火コイル6aから点火時期に応じたタイミングで高電圧が加えられることにより、放電することで、燃焼室4cに供給された混合気が燃焼する。
【0016】
そして、エンジン4は、その運転状態に応じて、インジェクタ5の燃料噴射の時間およびタイミングと点火プラグ6の点火時期が、ECU2で制御されることによって、成層燃焼モードと均一燃焼モードに切り換えて運転される。成層燃焼モードは、主にアイドル運転などの低負荷運転時に実行され、インジェクタ5による燃料噴射タイミングを圧縮行程後半とするとともに、混合気を燃焼室4c内の点火プラグ6の付近に偏在させながら、極リーンな状態で成層燃焼を行う。一方、均一燃焼モードは、主に高負荷運転時に実行され、燃料噴射タイミングを吸気行程前半とするとともに、混合気を燃焼室4c内に均一に分散させながら、成層燃焼よりもリッチな状態で均一燃焼させる。
【0017】
また、エンジン4の吸気管7の途中には、スロットル弁8が取り付けられており、このスロットル弁8には、その開度(スロットル弁開度)を制御するためのステッピングモータ9が連結されている。ステッピングモータ9は、ECU2に接続されており、ECU2からの駆動パルス信号によって、スロットル弁開度、すなわち吸気管7を介して燃焼室4cに供給される吸入空気量を調節する。
【0018】
また、エンジン4には、クランク角センサ10(回転数検出手段)が設けられている。クランク角センサ10は、クランクシャフト4eに取り付けられたマグネットロータ10aとMREピックアップで構成されており、クランクシャフト4eの回転に伴い、所定のクランク角(例えば1度)ごとに、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3のエンジン回転数NE(機関回転数)を求める。また、クランク角センサ10は、TDC信号を出力する。このTDC信号は、エンジン4のピストン4bが各気筒において吸入行程開始時の上死点付近にあることを表すパルス信号であり、4気筒タイプである本例では、クランク角180度ごとに1回、出力される。
【0019】
さらに、ECU2には、アクセルペダルセンサ11、車速センサ12、ギア段センサ13およびクラッチスイッチ14が接続されている。アクセルペダルセンサ11(アクセル開度検出手段)は、図示しないアクセルペダルの操作量(以下「アクセル開度AP」という)を検出し、その検出信号APをECU2に出力する。車速センサ12は、車両の走行速度(車速VP)を検出するものであり、その車軸に取り付けられたマグネットロータとMREピックアップで構成されている(いずれも図示せず)。ギア段センサ13(変速比検出手段)は、例えばシフトレバーの位置に設けられ、トランスミッションのギア段NGRを検出するものであり、例えば5段変速の場合には、現在選択されているギア段が1速〜5速のいずれであるかを表す検出信号NGRをECU2に出力する。また、クラッチスイッチ14は、図示しないクラッチの接続状態を検出するものであり、検出信号SW_CLUCHとして、クラッチペダル(図示せず)が所定量以上、踏み込まれているときに「0」信号を、踏み込まれていないときに「1」信号を、ECU2に出力する。
【0020】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよび入出力インターフェースなどから成るマイクロコンピュータ(いずれも図示せず)で構成されている。前述したセンサ10〜13およびクラッチスイッチ14の検出信号はそれぞれ、入力インターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。CPUは、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムやテーブルなどに従って、エンジン4の運転状態を判別するとともに、判別された運転状態に応じて、エンジン4の制御内容を決定し、その結果に基づく駆動信号を、出力インターフェースを介して出力することによって、エンジン4の運転を制御する。
【0021】
より具体的には、CPUは、判別したエンジン4の運転状態に応じて、目標トルクPMCMDREGを設定し、設定した目標トルクPMCMDREGに基づく駆動信号をステッピングモータ9に出力することによって、スロットル弁開度を制御する。また、CPUは、エンジン4の運転状態に応じ、成層燃焼モードおよび均一燃焼モードのいずれで運転するかを決定するとともに、その結果に従って、インジェクタ5の燃料噴射時間および燃料噴射タイミングならびに点火プラグ6の点火時期を演算し、それらの演算結果に基づく駆動信号を、インジェクタ5および点火コイル6aにそれぞれ出力することにより、これらを制御する。
【0022】
図2は、目標トルクPMCMDREGを設定するための制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。本プログラムは、ECU2のCPUにより、所定の時間間隔ごとに実行される。
【0023】
本プログラムではまず、ステップ1(「S1」と図示する。以下同じ)において、エンジン4がアイドル発進モードにあるか否かを判別する。ここで、アイドル発進モードとは、アイドル運転状態からのクラッチの接続操作のみによる発進状態をいう。この判別は、次の条件、すなわちエンジン4がアイドル運転状態にあること、車速VPが所定車速X_VPIS(例えば5km/h)以下であること、クラッチスイッチ14の検出信号SW_CLUCH=0すなわちクラッチペダルが踏み込まれていること、およびエンジン回転数NEが通常のアイドル回転数よりも低い所定回転数NEIDST(例えば500rpm)以下であることという条件が、すべて成立しているか否かによって行われる。
【0024】
ステップ1の答がYES、すなわちエンジン4がアイドル発進モードにあるときには、ステップ2に進み、アイドル発進モード処理を実行する。詳細は省略するが、このアイドル発進モード処理では、要求トルクとして、アイドル発進時要求トルクPMECEIDLをエンジン回転数NEに応じて設定するとともに、エンジン4の運転モードを理論空燃比による均一燃焼モードにセットする。次いで、ステップ2で設定したアイドル発進時要求トルクPMECEIDLを、目標トルクPMCMDREGとして設定し(ステップ3)、本プログラムを終了する。この処理により、アイドル発進モード時のエンジンストールが抑制されるとともに、アイドル発進モード終了以降の発進タフネスが確保される。
【0025】
一方、前記ステップ1の答がNO、すなわちエンジン4がアイドル発進モードにないときには、ステップ4以降に進み、アイドル発進モード処理以外の処理を実行する。
【0026】
まず、ステップ4では、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じ、ROMに記憶された要求トルクマップ(図示せず)を検索することによって、要求トルクPMEMAPを求める。次いで、ステップ5に進み、要求トルクPMEMAPの平滑化処理を行う。詳細は省略するが、この平滑化処理では、要求トルクの今回値PMEMAPnを含み、今回以前に検索され、RAMに記憶されている所定数の要求トルクPMEMAPを加算平均することによって、平滑化後要求トルクPMCDTMPXを算出する。平滑化後要求トルクPMCDTMPXを、このように過去の所定数の要求トルクPMEMAPの平均値として求めるとともに、後述するように、目標トルクPMCMDREGを設定する際の基本値とすることによって、要求トルクの変化に対する運転性が適切に確保される。
【0027】
次いで、ステップ6に進み、本発明に係る加速モード処理を実行する。図3および図4は、この加速モード処理のサブルーチンを示している。まず、加速モードフラグの今回値F_PMSPUPnを前回値F_PMSPUPn−1とする(ステップ31)。この加速モードフラグF_PMSPUPは、次のステップ32で実行される加速モード判別処理において、エンジン4が加速モードにあると判別されたときに、「1」にセットされるものである。
【0028】
図5は、この加速モード判別処理のサブルーチンを示している。まず、図2のステップ4で求めた要求トルクの今回値PMEMAPnと、ステップ5で算出した平滑化後要求トルクPMCDTMPXとの差分値DPMSPUP(以下「要求トルク差分値」という)を求める(ステップ51)。次いで、この要求トルク差分値DPMSPUP≧0であるか否かを判別する(ステップ52)。DPMSPUP≧0のときには、この差分値をそのまま要求トルク差分値DPMSPUPとして設定する(ステップ53)一方、DPMSPUP<0のときには、要求トルク差分値DPMSPUPを値「0」に設定した(ステップ54)後、ステップ55に進む。
【0029】
このステップ55では、要求トルク差分値DPMSPUPがその所定値DPMSPUPXよりも大きいか否かを判別する。この答がYES(DPMSPUP>DPMSPUPX)のときには、エンジン4が加速モードにあるとして、加速モードフラグF_PMSPUPを「1」にセットする(ステップ56)一方、NO(DPMSPUP≦DPMSPUPX)のときには、エンジン4が加速モードにないとして、加速モードフラグF_PMSPUPを「0」にセットし(ステップ57)、加速モード判別処理を終了する。なお、上記所定値DPMSPUPXはヒステリシス付きのものであり、それにより、加速モード判別およびその結果に基づく後述する加速モード処理制御のハンチングが防止される。
【0030】
図3に戻り、上述した加速モード判別処理に続くステップ33では、加速モード判別処理でセットされた加速モードフラグF_PMSPUPが値「1」であるか否を判別する。この答がYESのときには、今回のループが加速モードにあるとして、加速モードフラグの今回値F_PMSPUPnを「1」にセットした(ステップ34)後、ステップ35以降で加速モード処理を実行する。
【0031】
ステップ35では、加速モード判別処理で求めた要求トルク差分値DPMSPUPに応じ、ROMに記憶されたテーブルを検索することによって、加速アシスト量の基本値PMEADDを求める。図6は、このDPMSPUP−PMEADDテーブルの一例を示しており、基本値PMEADDは、要求トルク差分値DPMSPUPが大きいほど、より大きくなるように設定されている。前述したように、要求トルク差分値DPMSPUPは、要求トルクの今回値PMEMAPnと平滑化後要求トルクPMCDTMPXとの差分であるので、加速アシスト量の基本値PMEADDを上記のように設定することによって、加速アシスト量を加速の度合に応じた適切な値にリアルタイムに設定することができる。
【0032】
次いで、ギア段センサ13で検出されたギア段NGRに応じ、ROMに記憶されたテーブルを検索することによって、加速アシスト量のギア段補正係数KACCGRを求める。図7は、このテーブルの一例を示しており、その横軸NGRi(i=1〜5)は、ギア段がそれぞれ1速〜5速であることを表している。同図に示すように、このテーブルでは、ギア段補正係数KACCGRは、ギア段ごとに設定されており、ギア段が3速のときに値1.0であり、ギア段が高いほどより大きくなるように設定されている。
【0033】
次に、加速モードフラグの前回値F_PMSPUPn−1が値「0」であるか否を判別する(ステップ37)。この答がYESのときには、今回のループが加速モードに移行した最初のループであるとして、アップタイマであるタイマTMSPUPをスタートさせる(ステップ38)一方、答がNOのときには、今回のループが加速モードへ移行後の2回目以降のループであるとして、ステップ38をスキップし、ステップ39に進む。すなわち、タイマTMSPUPのタイマ値は、加速モードへ移行した後の経過時間を表す。
【0034】
次いで、ステップ39では、タイマTMSPUPのタイマ値に応じ、ROMに記憶されたアシスト開始テーブルを検索することによって、加速アシスト量の時間補正係数KDPMSPUPを求める。図8は、このアシスト開始テーブルの一例を示しており、時間補正係数KDPMSPUPは、その初期値KDPMSPUPSoが値0よりも大きな所定値に設定され、タイマ値TMSPUPが増大するにつれて、すなわち加速モードへの移行後、時間が経過するにつれて、漸増するとともに、タイマ値TMSPUPが所定値TMSPUPREF以上では、すなわち加速モードへの移行後、所定時間が経過した後は、1.0に設定されている。
【0035】
次に、ステップ35で求めた基本値PMEADDに、ステップ36、39でそれぞれ求めたギア段補正係数KACCGRおよび時間補正係数KDPMSPUPを乗算することによって、加速アシスト量PMCDSPUPを算出する(ステップ40)。最後に、この加速アシスト量PMCDSPUPに対してリミット処理を行い(ステップ41)、その値が所定の上限値以下になるように規制して、本プログラムを終了する。
【0036】
一方、前記ステップ33の答がNO、すなわち加速モード判別処理で加速モードフラグF_PMSPUPが「0」にセットされているときには、今回のループが加速モードにないとして、加速モードフラグの今回値F_PMSPUPnを「0」にセットした(ステップ42)後、ステップ43以降で加速モードの終了処理を実行する。
【0037】
まず、ステップ43では、加速モードフラグの前回値F_PMSPUPn−1が値「0」であるか否を判別する。この答がNOのときには、今回のループが加速モードを離脱した最初のループであるとして、タイマTMSPUPをスタートさせ(ステップ44)、答がYESのときには、加速モードから離脱後の2回目以降のループであるとして、ステップ44をスキップし、ステップ45に進む。
【0038】
このステップ45では、タイマTMSPUPのタイマ値がその所定値TDSPUPof以下であるか否かを判別する。この答がYES、すなわち加速モードを離脱した後、所定時間が経過していないときには、このタイマ値TMSPUPに応じ、ROMに記憶されたアシスト終了テーブルを検索することにより、加速モード終了時の時間補正係数KDPMSPUPを求める。図9は、このアシスト終了テーブルの一例を示しており、この場合の時間補正係数KDPMSPUPは、その初期値KDPMSPUPEoが1.0よりも小さな所定値に設定されるとともに、タイマ値TMSPUPが増大するにつれて、すなわち加速モードからの離脱後、時間が経過するにつれて、漸減するように設定されている。次いで、前記ステップ40、41に進み、上記ステップ46で求めた時間補正係数KDPMSPUPを用いて、加速アシスト量PMCDSPUPを算出するとともに、そのリミット処理を行い、本プログラムを終了する。
【0039】
一方、前記ステップ45の答がNO、すなわちタイマ値TMSPUPが所定値TDSPUPofを上回り、加速モードからの離脱後、所定時間が経過した後は、加速アシスト量PMCDSPUPを値0に設定し(ステップ47)、本プログラムを終了する。図2のステップ6の加速モード処理は、以上のように実行される。
【0040】
図2に戻り、上述した加速モード処理に続くステップ7では、発進モード処理を行う。詳細は省略するが、この発進モード処理では、クラッチがすで接続されており(SW_CLUCH=1)かつ車速VPが所定値以下であるときに、エンジン4が発進モードにあると判別するとともに、そのときのエンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、発進アシスト量PMCDSTRTを算出する。このようにして求めた発進アシスト量PMCDSTRTは、後述するように、目標トルクPMCMDREGを設定する際に、平滑化後要求トルクPMCDTMPXに加算される。これにより、ドライバーの意志を反映した十分なトルクが付加され、発進のもたつきが解消される。
【0041】
次いで、ステップ5の平滑化処理で求めた平滑化後要求トルクPMCDTMPXに、ステップ6の加速モード処理で求めた加速アシスト量PMCDSPUP、およびステップ7の発進モード処理で求めた発進アシスト量PMCDSTRTを加算することによって、目標トルクPMCMDREGを算出し(ステップ8)、本プログラムを終了する。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて求めた今回要求トルクPMEMAPnと今回以前の平滑化後要求トルクPMCDTMPXとを比較することで、加速状態を判別する。また、両者の差分値である要求トルク差分値DPMSPUPに応じて、加速アシスト量PMCDSPUPの基本値PMEADDを算出し(図6)、この加速アシスト量PMCDSPUPを加算することによって、目標トルクPMCMDREGを設定する。したがって、ドライバーの加速要求をリアルタイムに反映させながら、加速度合に応じた適切な加速アシスト量PMCDSPUPを要求トルクとして付加できるので、良好な加速応答性を確保でき、加速時のもたつき感を解消することができる。
【0043】
また、この加速アシスト量PMCDSPUPが加算される、目標トルクPMCMDREGの基本値として、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて直接、算出した要求トルクPMEMAPではなく、これらを平滑化した平滑化後要求トルクPMCDTMPXを採用している。その結果、目標トルクPMCMDREGの基本値がアクセル操作の変化に対して過敏に変化することがなくなることにより、車両の挙動を安定化させることができ、したがって、良好な運転性を確保することができる。
【0044】
さらに、加速アシスト量PMCDSPUPは、時間補正係数KDPMSPUP(図8および図9)の補正により、加速モードの開始時に漸増するとともに終了時に漸減するように、設定される。したがって、目標トルクPMCMDREGを急激に変化させることなく、加速運転を円滑に開始および終了させることができるので、アクセルの全開および全閉が繰り返されるような場合でも、車両の挙動を安定化させ、良好な運転性を確保することができる。
【0045】
また、加速アシスト量PMCDSPUPを、ギア段補正係数KACCGR(図7)の補正により、選択されているギア段が高いほど、すなわち変速比が小さいほど、より大きくなるように設定するので、そのときのギア段に応じた良好な加速応答性を得ることができる。
【0046】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、成層燃焼モードと均一燃焼モードに切り替えて運転される直噴式エンジンに本発明を適用した例であるが、本発明は、他のタイプのエンジンにも、もちろん適用可能である。また、図6〜図9に示したテーブルは、あくまで例示であり、適宜、変更することが可能である。例えば、本発明は、トランスミッションが無段変速式の場合にも適用することが可能であり、その場合、図7に相当する補正係数を、変速比に対して無段階に変化するように設定してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明の内燃機関の制御装置は、加速時において、目標トルクを適切に設定することにより良好な応答性および運転性を確保することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による内燃機関の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の制御装置により実行される、目標トルクPMCMDREGを設定するための制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2の加速モード処理のサブルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図4】図3のサブルーチンの残りの部分を示すフローチャートである。
【図5】図3の加速モード判別処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】要求トルク差分値DPMSPUP−加速アシスト量の基本値PMEADDテーブルの一例を示す図である。
【図7】ギア段NGR−ギア段補正係数KACCGRテーブルの一例を示す図である。
【図8】アシスト開始テーブルの一例を示す図である。
【図9】アシスト終了テーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 制御装置
2 ECU(要求トルク算出手段、要求トルク平滑化手段、加速判別手段、加速アシスト量算出手段、目標トルク設定手段)4 エンジン(内燃機関)
8 スロットル弁
10 クランク角センサ(回転数検出手段)
11 アクセルペダルセンサ(アクセル開度検出手段)
NE エンジン回転数(機関回転数)
AP アクセルペダル開度
PMEMAP 要求トルク
PMCDTMPX 平滑化後要求トルク
DPMSPUP 要求トルク差分値(差分値)
PMCDSPUP 加速アシスト量
PMCMDREG 目標トルク
Claims (3)
- 運転状態に応じて目標トルクを設定するとともに、当該設定された目標トルクに基づいてトルク制御を行う内燃機関の制御装置であって、
機関回転数を検出する回転数検出手段と、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記回転数検出手段および前記アクセル開度検出手段の検出結果に応じ、要求トルクを算出する要求トルク算出手段と、
当該算出された要求トルクを平滑化する要求トルク平滑化手段と、
前記要求トルク算出手段により今回算出された今回要求トルクと、前記要求トルク平滑化手段により平滑化された平滑化後要求トルクとを比較することにより、加速状態にあるか否かを判別する加速判別手段と、
この加速判別手段により加速状態と判別されたときに、前記今回要求トルクと前記平滑化後要求トルクとの差分値に応じて、加速アシスト量を算出する加速アシスト量算出手段と、
前記平滑化後要求トルクに前記加速アシスト量を加算することにより、前記目標トルクを設定する目標トルク設定手段と、
を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記加速アシスト量算出手段は、前記加速アシスト量を、加速状態の開始時に漸増し且つ終了時に漸減するように算出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- トランスミッションの変速比を検出する変速比検出手段をさらに備え、前記加速アシスト量算出手段は、前記加速アシスト量を、前記変速比検出手段で検出された変速比が小さいほど、より大きくなるように算出することを特徴とする、請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
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