JP4271019B2 - 炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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本発明は高強度、高配向度、且つ高弾性率の炭素繊維の製造方法に関する。
従来、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を原料として高性能の炭素繊維が製造されることは知られており、航空機を始めスポーツ用品まで広い範囲で使用されている。
とりわけ、高強度・高弾性率の炭素繊維は宇宙航空用途に使用されており、これらは更なる高性能化が求められている。
PAN系前駆体繊維を用いて炭素繊維を製造する方法としては、前駆体繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気下で延伸又は収縮を行いながら酸化処理(耐炎化処理)を行った後、300〜1000℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化を行う方法が知られている。
とりわけ300〜900℃付近での炭素化工程の繊維処理方法は、炭素繊維の強度発現に大きく影響を及ぼし、これまでに多くの検討が行われてきた。
特許文献1では、耐炎化繊維を300〜800℃において、不活性雰囲気中25%までの範囲で伸長を加えながら炭素化し、耐炎化繊維の原長に対し負とならないように処理することによって、高強度の炭素繊維を得ることが開示されている。
また、特許文献2、特許文献3では、500℃付近での繊維長さの急激な変化をコントロールするため、300〜500℃、500〜800℃と、工程を2つに分けることで緻密な高強度炭素繊維が得られることが開示されている。
さらに、特許文献4では、耐炎化繊維を不活性雰囲気中、比重が1.45に達するまでの昇温速度を50〜300℃/分、さらに比重が1.60〜1.75に達するまでの昇温速度を100〜800℃/分とする2段炭素化を行うことにより、ボイドの少ない炭素繊維が得られることが開示されている。
特許文献5でも特許文献4と同様に、300〜800℃において昇温勾配をコントロールする事により緻密な炭素繊維が得られることが開示されている。
しかしながら、緻密、高配向度、高強度且つ高弾性率を有する炭素繊維を得るためには、最適な繊維物性での緊縮を行う事が必要であり、これらの方法に記載されている温度範囲や、昇温勾配だけでは繊維の緻密さをコントロールする事は難しく、またパラメーターとして比重だけでは、緻密、高配向度、高強度且つ高弾性率を有する炭素繊維を得ることは困難で、従来より緻密、高配向度、高強度且つ高弾性率の炭素繊維を得るための方法が求められている。
さらに、従来の炭素化工程においては、毛羽が多くなったり、ストランド形態についてストランドの引揃え性が乱れ、その結果として品位が悪くなったりするなどの問題がある。
特開昭54−147222号公報 (第1〜3頁) 特開昭59−150116号公報 (第1〜2頁) 特公平3−23651号公報 (第1〜3頁) 特公平3−17925号公報 (第1〜3頁) 特開昭62−231028号公報 (第1〜3頁)
本発明者等は、長年にわたり鋭意検討を重ねた結果、PAN系耐炎化繊維を炭素化する炭素化工程を、第一炭素化工程と第二炭素化工程とで構成させた。
第一炭素化工程においては、耐炎化繊維の各物性と、温度と、延伸倍率との間に重要な関連があり、これらを制御することにより高強度炭素繊維を製造できることを知得し、先に出願した(特願2002−253806)。
また、第二炭素化工程を、一次処理と二次処理とに分ける場合、それぞれの処理における繊維の各物性と、温度と、繊維の延伸張力との間に重要な関連があり、これらを制御することにより高強度炭素繊維を製造できることを知得し、続いて出願した(特願2002−368810)。
本発明者等は、更に検討を重ねた結果、第二炭素化工程の後工程として更に高温処理するための第三炭素化工程を設けた。この第三炭素化工程において、上記先願発明の製造方法で炭素化した高強度炭素繊維を、更に高温処理することによって、高強度・高弾性の炭素繊維を得ることができることを知得した。即ち、上記先願発明で得られる炭素繊維は、高比重で高強度の炭素繊維であるので、その優位性をもって、更に高温処理しても、元の炭素繊維の優位性が保て、より高強度・高弾性の炭素繊維を得ることができることを知得し、本発明を完成するに到った。
よって、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した、緻密、高配向度、高強度且つ高弾性率の炭素繊維の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
〔1〕 不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、比重1.3〜1.4のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維を300〜900℃の温度範囲内で、1.03〜1.06の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理した後、第二炭素化工程において800〜1800℃の温度範囲内で熱処理して得られた第二炭素化処理繊維を、更に第三炭素化工程において不活性雰囲気中で1800〜2500℃の温度範囲内で熱処理する炭素繊維の製造方法において、第一炭素化工程における一次延伸処理を下記条件(1)乃至(3)のいずれをも満たす範囲で行い、二次延伸処理を下記条件(4)、(5)の両方を満たす範囲で行い、引き続き、第二炭素化工程における一次処理として下記条件(6)乃至(10)のいずれをも満たす範囲で(11)の延伸処理を行い、次いで二次処理として下記条件(12)乃至(14)のいずれをも満たす範囲で(15)の延伸処理を行い、更に、第三炭素化工程において前記条件で熱処理する炭素繊維の製造方法。
第一炭素化工程条件
一次延伸条件
(1) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲
(2) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の比重が1.5に達するまでの範囲
(3) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲
二次延伸条件
(4) 一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲
(5) 一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲
第二炭素化工程条件
一次処理条件
(6) 第一炭素化処理繊維の比抵抗値が400Ω・g/m2以上の範囲
(7) 第一炭素化処理繊維の比重が一次処理中上昇し続ける範囲
(8) 第一炭素化処理繊維の窒素含有量が10質量%以上の範囲
(9) 第一炭素化処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が80.8%以下で、一次処理中上昇し続ける範囲
(10) 第一炭素化処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.47nmより大きくならない範囲
(11) 第二炭素化工程一次処理での繊維張力(F MPa)と第一炭素化処理繊維の断面積(S mm2)とで算出される繊維応力(D mN)が下式
1.24 > D > 0.46
〔但し、D = F × S
S = πA2 / 4
Aは第一炭素化処理繊維の直径(mm)〕
を満たす範囲で繊維張力を与える延伸処理
二次処理条件
(12) 一次処理繊維の比抵抗値が400Ω・g/m2未満の範囲
(13) 一次処理繊維の比重が変化しない又は低下する範囲
(14) 一次処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.47nmより大きく、且つ二次処理中上昇し続ける又は変化しない範囲
(15) 第二炭素化工程二次処理での繊維張力(G MPa)と第一炭素化処理繊維の断面積(S mm2)とで算出される繊維応力(E mN)が下式
0.60 > E > 0.23
〔但し、E = G × S
S = πA2 / 4
Aは第一炭素化処理繊維の直径(mm)〕
を満たす範囲で繊維張力を与える延伸処理
本発明の製造方法によれば、第一炭素化工程及び第二炭素化工程において繊維の各種物性を参照して炭素化処理を行って得られた高強度炭素繊維を、第三炭素化工程において更に高温処理しているので、緻密、高配向度、高強度且つ高弾性率の炭素繊維を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維の製造方法に用いるPAN系前駆体繊維は、アクリロニトリルを90質量%以上、好ましくは95質量%以上含有する単量体を重合した紡糸溶液を湿式又は乾湿式紡糸法において紡糸した後、水洗・乾燥・延伸して得られる繊維を用いることが好ましい。これらの前駆体繊維は、従来公知のものが何ら制限なく使用できる。
得られた前駆体繊維は、引き続き加熱空気中200〜280℃で耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.30の範囲で処理され、繊維比重1.3〜1.5のPAN系耐炎化繊維とするものであり、耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無い。
本発明の炭素繊維の製造方法においては、上記耐炎化繊維を、不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、300〜900℃の温度範囲内で、1.03〜1.06の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理して繊維比重1.50〜1.70の第一炭素化処理繊維を得る。
この第一炭素化処理繊維を、不活性雰囲気中で、第二炭素化工程において800〜1800℃の温度範囲内で、同工程を一次処理と二次処理とに分けて延伸処理して第二炭素化処理繊維を得る。
この第二炭素化処理繊維を、不活性雰囲気中で、第三炭素化工程において1800〜2500℃の温度範囲内で熱処理する。
上記第一炭素化工程において、一次延伸処理では、PAN系耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPa(1.0tf/mm2)に増加するまでの範囲、同繊維の比重が1.5に達するまでの範囲、且つ同繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲で、1.03〜1.06の延伸倍率で、延伸処理を行う。
上記のPAN系耐炎化繊維弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲は、図1に示すBの範囲である。
耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲で延伸(1.03〜1.06倍)を行うことにより、糸切れを抑制し、低弾性率部が効率的に延伸され高配向化が可能となり、緻密な一次延伸処理繊維を得ることができる。
これに対し、弾性率が極小値に低下する前(Aの範囲)での1.03倍以上の延伸は、糸切れを増加させ、著しい強度低下を招くので好ましくない。
また、弾性率が極小値まで低下し、次いで9.8GPaに増加した後(Cの範囲)での1.03倍以上の延伸は、繊維の弾性率が高く、無理な延伸を強いるので、繊維欠陥・ボイドを増加させ、延伸の効果を損なうので好ましくない。よって、上記弾性率の範囲内で一次延伸処理を行う。
耐炎化繊維の比重が1.5に達するまでの範囲で延伸(1.03〜1.06倍)を行うことにより、ボイドの生成を抑制しながら、配向度の向上が出来、高品位の一次延伸処理繊維を得ることができる。
これに対し、比重が1.5より高い範囲での1.03倍以上の一次延伸は、無理な延伸によりボイドの生成を増長し、最終的な炭素繊維の構造欠陥、比重低下を招くため好ましくない。よって、上記比重の範囲内で一次延伸処理を行う。
PAN系耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズは、一次延伸処理時の温度上昇につれて増加し続ける。その増加状態は、図2に示されるように結晶子サイズ0.9nm付近と1.45nm付近に変曲点を持つ曲線である。よって前述の、結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲は、後の変曲点に達するまでの範囲である。
耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲で延伸(1.03〜1.06倍)を行うことにより、より緻密でボイドの少ない、一次延伸処理繊維を得ることができる。
これに対し、結晶子サイズが1.45nmに達した後での1.03倍以上の一次延伸は、無理な延伸により糸切れを発生させるだけではなく、ボイドの発生を招くため、好ましくない。
また、一次延伸における延伸倍率が1.03倍未満では、延伸の効果が少なく、高強度の炭素繊維を得ることができないので好ましくない。延伸倍率が1.06倍より高いと、糸切れを招き、高品位及び高強度の炭素繊維を得ることはできないので好ましくない。
上記方法により得られた一次延伸処理繊維は、引き続いて以下の二次延伸処理を施さなければならない。
一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲、及び一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行わなければならない。
二次延伸処理中における一次延伸処理後の繊維の比重は、図3に示されるように温度上昇につれて、変化しない(上昇しない)条件と、上昇し続ける条件と、上昇後下降する条件(二次延伸処理中に繊維比重が低下する条件)とがある。
これらの条件のうち、一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける条件で0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行うことにより、好ましくは変化しない区間を含むことなく又は低下することなく上昇し続ける条件で延伸処理を行うことにより、ボイド生成を抑制し、最終的に緻密な炭素繊維を得ることができる。
これに対し、二次延伸処理中に繊維比重が低下すると、ボイドの生成を増長し、緻密な炭素繊維を得ることができず、好ましくない。また、二次延伸処理中に繊維比重が変化しない区間を含むと、二次延伸処理の効果が見られないので、好ましくない。よって、二次延伸処理は繊維比重が上昇し続ける範囲である。
また、一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で0.9〜1.01倍の延伸倍率で延伸処理を行うことにより、結晶が成長することなく、緻密化され、ボイドの生成も抑制でき、最終的に高い緻密性を有した炭素繊維を得ることができる。
これに対し、結晶子サイズが1.45nmより大きくなる範囲での二次延伸処理は、ボイドの生成を増長すると共に、糸切れによる品位低下を招き、高強度の炭素繊維を得ることができず、好ましくない。よって、二次延伸処理は上記結晶子サイズの範囲内で行う。
なお、二次延伸処理における延伸倍率が0.9倍未満では、配向度の低下が著しく、高強度の炭素繊維を得ることができないので好ましくない。延伸倍率が1.01倍より高いと、糸切れを招き、高品位及び高強度の炭素繊維を得ることはできないので好ましくない。よって、二次延伸処理における延伸倍率は0.9〜1.01の範囲内が好ましい。
また、高強度の炭素繊維を得るためには、第一炭素化処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が76.0%以上あることが好ましい。
76.0%未満では最終的に高強度の炭素繊維を得ることができないので好ましくない。
上記のごとくして、第一炭素化工程における耐炎化繊維の一次延伸処理、二次延伸処理は行われ、第一炭素化処理繊維となる。また、上記第一炭素化工程は、一つの炉若しくは二つ以上の炉で、連続的若しくは別々に処理しても差し支えなく、前述の処理条件範囲内での処理によるところであれば何ら問題はない。
上記第一炭素化処理繊維は引き続き、第二炭素化工程において800〜1800℃の温度範囲内で、同工程を一次処理と二次処理とに分けて炭素化処理される。
上記第二炭素化工程の一次処理では、第一炭素化処理繊維の比抵抗値が400Ω・g/m2以上の範囲、同繊維の比重が一次処理中上昇し続ける範囲、同繊維の窒素含有量が10質量%以上の範囲、同繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が80.8%以下で、一次処理中上昇し続ける範囲、且つ同繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.47nmより大きくならない範囲で同繊維を延伸処理する。
上記第一炭素化処理繊維の第二炭素化工程一次処理における、比抵抗値、比重、窒素含有量、並びに、広角X線測定(回折角26°)での配向度及び結晶子サイズの、変化及び条件範囲の一例を、それぞれ図4、5、6、7及び8に示す。
なお、第二炭素化工程一次処理での繊維張力(F MPa)は、第一炭素化工程後の繊維直径、即ち繊維断面積(S mm2)により変わるため、本発明においては張力ファクターとして繊維応力(D mN)を用い、この繊維応力の範囲は下式
1.24 > D > 0.46
〔但し、D = F × S
S = πA2 / 4
Aは第一炭素化処理繊維の直径(mm)〕
を満たす範囲としている。
ここで繊維断面積は、JIS−R−7601に規定する測微顕微鏡による方法において繊維直径をn=20で測定し、その平均値を用い、真円として算出した値を使用している。
上記方法により得られた一次処理繊維は、引き続いて以下の二次処理を施す。
この二次処理においては、一次処理繊維の比抵抗値が400Ω・g/m2未満の範囲、同繊維の比重が変化しない又は低下する範囲、更に、同繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.47nmより大きく且つ二次処理中上昇し続ける又は変化しない範囲で同繊維を延伸処理する。
上記一次処理繊維の二次処理における、比抵抗値、比重、及び広角X線測定(回折角26°)での結晶子サイズの、変化及び条件範囲の一例を、それぞれ図9、10及び11に示す。
なお、第二炭素化工程二次処理での繊維張力(G MPa)も、一次処理時と同様に第一炭素化工程後の繊維直径、即ち繊維断面積(S mm2)により変わるため、本発明においては張力ファクターとして繊維応力(E mN)を用い、この繊維応力の範囲は下式
0.60 > E > 0.23
〔但し、E = G × S
S = πA2 / 4
Aは第一炭素化処理繊維の直径(mm)〕
を満たす範囲としている。
また、第二炭素化処理繊維の伸度は2.20%以上であることが好ましい。更に、第二炭素化処理繊維の直径は3〜8μmであることが好ましい。
この第二炭素化処理繊維は引き続き、不活性雰囲気中で、第三炭素化工程において1800〜2500℃の温度範囲内で熱処理される。
得られた第三炭素化処理繊維、即ち第三炭素化工程終了後に得られる炭素繊維は、引き続き公知の方法により、表面処理を施した炭素繊維となり得る。さらに、炭素繊維の後加工をしやすくし、取扱性を向上させる目的で、サイジング処理することが好ましい。サイジング方法は、従来の公知の方法で行うことができ、サイジング剤は、用途に即して適宜組成を変更して使用し、均一付着させた後に、乾燥することが好ましい。なお、第三炭素化処理繊維の直径は4〜8μmであることが好ましい。
このようにして得られた炭素繊維は、緻密、高配向度、高強度且つ高弾性率を有し、ストランドの引揃え性が乱れることの無い、良好なストランド形態の炭素繊維であり、本発明の製造方法によりなし得るものである。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における処理条件、及び炭素繊維物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
<比抵抗値>
比抵抗値の測定に関しては、JIS−R−7601に規定する体積抵抗率の炭素繊維の試験A法を参考に行うことができる。ただし、JIS−R−7601では、電気抵抗値に、炭素繊維の比重を掛け合わせた体積抵抗率を求めており、比抵抗値〔X (Ω・g/m2)〕を求めるには、下式
X = Rb×t/L
Rb:試験片長Lのときの電気抵抗(Ω)、t:試験片の繊度(tex)、L:抵抗測定時の試験片長(m)
を用いて行った。なお、抵抗測定時の試験片長については、1m程度で測定することが好ましい。
<比重>
アルキメデス法により測定した。試料繊維はアセトン中にて脱気処理し測定した。
<窒素含有量>
元素分析装置(FISONS INSTRUMENTS社製)により測定した元素分析値から求めた。
<結晶子サイズ、配向度>
X線回折装置:リガク製RINT1200L、コンピュータ:日立2050/32を使用し、回折角26°における結晶子サイズを回折パターンより、配向度を半価幅より求めた。
<単繊維弾性率>
JIS R 7606(2000)に規定された方法により第一炭素化工程一次延伸処理繊維の単繊維弾性率を測定した。
<ストランド強度、弾性率>
JIS R 7601に規定された方法により第二炭素化処理繊維、第三炭素化処理繊維(炭素繊維)のストランド強度、弾性率を測定した。
実施例1
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を湿式又は乾湿式紡糸し、水洗・乾燥・延伸・オイリングして繊維直径9.1μmの前駆体繊維を得た。この繊維を加熱空気中、入口温度(最低温度)200℃、出口温度(最高温度)260℃の熱風循環式耐炎化炉で耐炎化処理し、繊維比重1.34のPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を不活性雰囲気中、入口温度(最低温度)300℃、出口温度(最高温度)800℃の第一炭素化炉において、一次延伸・二次延伸処理を表1に示す条件で実施した。
一次延伸は図1のBの範囲内で、延伸倍率1.05倍で処理した。この一次延伸処理後の繊維、即ち一次延伸処理繊維は、単繊維弾性率8.8GPa、比重1.40、結晶子サイズ1.20nmの、糸切れのない繊維であった。
その後この一次延伸処理繊維を、引き続き第一炭素化工程において、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で二次延伸処理したところ、比重1.70、配向度79.2%、繊維直径5.9μm、繊維断面積2.73×10-5mm2の、糸切れのない第一炭素化処理繊維を得た。
次いで、この第一炭素化処理繊維を不活性雰囲気中、入口温度(最低温度)800℃、出口温度(最高温度)1700℃の第二炭素化炉において、一次処理・二次処理を以下に示す条件で実施した。
先ず、上記第一炭素化処理繊維を、比抵抗値、比重、窒素含有量、配向度、及び結晶子サイズについて、図4、5、6、7及び8に示す範囲内に調節すると共に、繊維張力29.9MPa、繊維応力0.817mNで延伸処理し、一次処理繊維を得た。
その後この一次処理繊維を、引き続き第二炭素化工程において二次処理が終了するまで、比抵抗値、比重、及び結晶子サイズについて、図9、10及び11に示す範囲内に調節すると共に、繊維張力14.9MPa、繊維応力0.408mNで延伸処理し、比重1.810、繊維直径5.0μm、ストランド強度6500MPa、ストランド弾性率280GPa、配向度82.0%、結晶子サイズ1.90nmの第二炭素化処理繊維を得た。
次いで、この第二炭素化処理繊維を不活性雰囲気中、入口温度(最低温度)1800℃、出口温度(最高温度)2300℃の第三炭素化炉において熱処理し、第三炭素化処理繊維を得た。
更に、この第三炭素化処理繊維を引き続き公知の方法にて表面処理、サイジングを施し、乾燥して比重1.790、繊維直径4.9μm、ストランド強度5800MPa、ストランド弾性率360GPa、配向度85.8%、結晶子サイズ2.70nmの炭素繊維を得た。
実施例2
表1に示すように、実施例1で得られた耐炎化繊維について、第一炭素化工程における一次延伸処理を、延伸倍率1.06倍で行い、単繊維弾性率8.4GPa、比重1.39、結晶子サイズ1.10nmの糸切れのない一次延伸処理繊維を得た。この処理繊維についての二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が実施例1よりも急勾配で上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.01倍で行い、比重1.75、配向度80.0%、繊維直径5.5μmの、糸切れの無い二次延伸処理繊維を得た。
次いで、この第一炭素化処理繊維を第二炭素化工程一次処理において、繊維張力44.7MPa、繊維応力1.062mNで処理し、第二炭素化工程二次処理において、繊維張力15.5MPa、繊維応力0.368mNで処理し、比重1.820、繊維直径5.0μm、ストランド強度6600MPa、ストランド弾性率279GPa、配向度81.8%、結晶子サイズ1.88nmの第二炭素化処理繊維を得た。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して比重1.795、繊維直径4.9μm、ストランド強度5820MPa、ストランド弾性率358GPa、配向度85.7%、結晶子サイズ2.70nmの炭素繊維を得た。
実施例3
表1に示すように、実施例1で得られた第一炭素化工程一次延伸処理繊維を、第一炭素化工程二次延伸処理において、二次延伸が終了するまで比重が実施例1よりも緩勾配で上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.52、配向度77.1%、繊維直径6.8μmの、糸切れの無い二次延伸処理繊維を得た。
次いで、この第一炭素化処理繊維を、第二炭素化工程一次処理において繊維張力18.0MPa、繊維応力0.653mNで処理し、第二炭素化工程二次処理において、繊維張力11.2MPa、繊維応力0.408mNで処理し、比重1.800、繊維直径5.0μm、ストランド強度6400MPa、ストランド弾性率280GPa、配向度81.7%、結晶子サイズ1.86nmの第二炭素化処理繊維を得た。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して比重1.785、繊維直径4.9μm、ストランド強度5500MPa、ストランド弾性率365GPa、配向度85.9%、結晶子サイズ2.75nmの炭素繊維を得た。
比較例1
表1に示すように、実施例1で得られた第一炭素化処理繊維を、第二炭素化工程一次処理において、繊維張力50.8MPa、繊維応力1.388mNで処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.794、繊維直径4.9μm、ストランド強度6150MPa、ストランド弾性率285GPa、配向度82.1%、結晶子サイズ1.90nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.773、繊維直径4.8μm、ストランド強度5100MPa、ストランド弾性率367GPa、配向度86.1%、結晶子サイズ2.72nmと、低強度のものであった。
比較例2
表2に示すように、実施例1で得られた第一炭素化処理繊維を、第二炭素化工程一次処理において、繊維張力14.9MPa、繊維応力0.408mNで処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.803、繊維直径5.2μm、ストランド強度6200MPa、ストランド弾性率281GPa、配向度81.4%、結晶子サイズ1.89nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.782、繊維直径5.0μm、ストランド強度5300MPa、ストランド弾性率360GPa、配向度85.6%、結晶子サイズ2.74nmと、低強度のものであった。
比較例3
表2に示すように、実施例1で得られた第一炭素化処理繊維を、第二炭素化工程二次処理において、繊維張力23.9MPa、繊維応力0.653mNで処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.804、繊維直径4.9μm、ストランド強度6320MPa、ストランド弾性率287GPa、配向度82.2%、結晶子サイズ1.91nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.780、繊維直径4.8μm、ストランド強度5350MPa、ストランド弾性率367GPa、配向度86.1%、結晶子サイズ2.76nmと、低強度のものであった。
比較例4
表2に示すように、実施例1で得られた第一炭素化処理繊維を、第二炭素化工程二次処理において、繊維張力6.0MPa、繊維応力0.163mNで処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。得られた第二炭素化処理繊維の物性は、比重1.808、繊維直径5.1μm、ストランド強度6400MPa、ストランド弾性率279GPa、配向度81.8%、結晶子サイズ1.89nmであった。
しかし、この第二炭素化処理繊維のストランド形態は、ストランドの引揃え性が乱れており纏りの無い悪い形態であり、第三炭素化炉における熱処理に移れるものではなかった。
比較例5
表2に示すように、第一炭素化工程における一次延伸処理を、図1のAの範囲内で、延伸倍率1.05倍で処理し、単繊維弾性率9.2GPa、比重1.37、結晶子サイズ0.90nmの一次延伸処理繊維を得た以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、この一次延伸処理から二次延伸処理に移ったところ、糸切れが多く発生し、二次延伸不可能であった。
比較例6
表3に示すように、第一炭素化工程における一次延伸処理を、図1のCの範囲内で、延伸倍率1.05倍で処理し、単繊維弾性率10.3GPa、比重1.52、結晶子サイズ1.45nmの一次延伸処理繊維を得た以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、この一次延伸処理から二次延伸処理に移ったところ、糸切れが多く発生し、二次延伸不可能であった。
比較例7
表3に示すように、第一炭素化工程における二次延伸処理を、二次延伸が終了するまでにおいて比重が上昇した後下降する範囲、且つ結晶子サイズが1.47nmとなる範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.80、配向度80.1%、繊維直径5.4μmの、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.800、繊維直径5.0μm、ストランド強度6050MPa、ストランド弾性率285GPa、配向度82.1%、結晶子サイズ1.90nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.778、繊維直径4.9μm、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率363GPa、配向度85.8%、結晶子サイズ2.75nmと、低強度のものであった。
比較例8
表3に示すように、第一炭素化工程における二次延伸処理を、二次延伸が終了するまでにおいて比重が変化しない(上昇しない)範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmとなる範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.50、配向度77.0%、繊維直径6.9μmの、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.805、繊維直径5.0μm、ストランド強度6200MPa、ストランド弾性率280GPa、配向度81.9%、結晶子サイズ1.90nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.784、繊維直径4.9μm、ストランド強度5380MPa、ストランド弾性率358GPa、配向度85.5%、結晶子サイズ2.69nmと、低強度のものであった。
比較例9
表3に示すように、第一炭素化工程における一次延伸倍率を1.02倍とし、二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.63、配向度78.0%、繊維直径6.1μmの、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.804、繊維直径5.1μm、ストランド強度6250MPa、ストランド弾性率275GPa、配向度81.5%、結晶子サイズ1.89nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.781、繊維直径4.9μm、ストランド強度5280MPa、ストランド弾性率355GPa、配向度85.4%、結晶子サイズ2.68nmと、低強度のものであった。
比較例10
表4に示すように、第一炭素化工程における一次延伸処理を延伸倍率1.07倍で行い、糸切れの多い一次延伸処理繊維を得、この処理繊維の二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.00倍で行い、比重1.68、配向度79.3%、繊維直径5.7μmの、糸切れの多い二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。得られた第二炭素化処理繊維の物性は、比重1.797、繊維直径4.8μm、ストランド強度6400MPa、ストランド弾性率285GPa、配向度82.0%、結晶子サイズ1.90nmであった。
しかし、この第二炭素化処理繊維のストランド形態は、ストランドの引揃え性が乱れており纏りの無い悪い形態であり、第三炭素化炉における熱処理に移れるものではなかった。
比較例11
表4に示すように、第一炭素化工程における二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率0.85倍で行い、比重1.71、配向度79.0%、繊維直径6.0μmの、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.805、繊維直径5.2μm、ストランド強度6250MPa、ストランド弾性率276GPa、配向度81.8%、結晶子サイズ1.90nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.782、繊維直径5.0μm、ストランド強度5300MPa、ストランド弾性率357GPa、配向度85.4%、結晶子サイズ2.70nmと、低強度のものであった。
比較例12
表4に示すように、第一炭素化工程における二次延伸処理を、二次延伸が終了するまで比重が上昇し続ける範囲、且つ結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲で、延伸倍率1.03倍で行い、比重1.70、配向度79.2%、繊維直径5.8μmの、糸切れのない二次延伸処理繊維を得、次いで、この処理繊維を第二炭素化処理した以外は実施例1と同様の処理を行った。しかし、得られた第二炭素化処理繊維は、比重1.799、繊維直径4.9μm、ストランド強度6100MPa、ストランド弾性率282GPa、配向度82.1%、結晶子サイズ1.91nmと、低強度のものであった。
次いで、この第二炭素化処理繊維を、実施例1と同様に第三炭素化炉において熱処理した後、表面処理、サイジングを施し、乾燥して炭素繊維を得た。しかし、得られた炭素繊維は、比重1.772、繊維直径4.7μm、ストランド強度5000MPa、ストランド弾性率362GPa、配向度85.8%、結晶子サイズ2.71nmと、低強度のものであった。
Figure 0004271019
Figure 0004271019
Figure 0004271019
Figure 0004271019
第一炭素化工程における一次延伸時の温度上昇に対するPAN系耐炎化繊維の弾性率の推移を示すグラフである。 第一炭素化工程における一次延伸時の温度上昇に対するPAN系耐炎化繊維の結晶子サイズの推移を示すグラフである。 第一炭素化工程における二次延伸時の温度上昇に対する一次延伸処理繊維の比重の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における一次処理時の温度上昇に対する第一炭素化処理繊維の比抵抗値の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における一次処理時の温度上昇に対する第一炭素化処理繊維の比重の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における一次処理時の温度上昇に対する第一炭素化処理繊維の窒素含有量の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における一次処理時の温度上昇に対する第一炭素化処理繊維の配向度の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における一次処理時の温度上昇に対する第一炭素化処理繊維の結晶子サイズの推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における二次処理時の温度上昇に対する一次処理繊維の比抵抗値の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における二次処理時の温度上昇に対する一次処理繊維の比重の推移を示すグラフである。 第二炭素化工程における二次処理時の温度上昇に対する一次処理繊維の結晶子サイズの推移を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 不活性雰囲気中で、第一炭素化工程において、比重1.3〜1.4のポリアクリロニトリル系耐炎化繊維を300〜900℃の温度範囲内で、1.03〜1.06の延伸倍率で一次延伸処理し、次いで0.9〜1.01の延伸倍率で二次延伸処理した後、第二炭素化工程において800〜1800℃の温度範囲内で熱処理して得られた第二炭素化処理繊維を、更に第三炭素化工程において不活性雰囲気中で1800〜2500℃の温度範囲内で熱処理する炭素繊維の製造方法において、第一炭素化工程における一次延伸処理を下記条件(1)乃至(3)のいずれをも満たす範囲で行い、二次延伸処理を下記条件(4)、(5)の両方を満たす範囲で行い、引き続き、第二炭素化工程における一次処理として下記条件(6)乃至(10)のいずれをも満たす範囲で(11)の延伸処理を行い、次いで二次処理として下記条件(12)乃至(14)のいずれをも満たす範囲で(15)の延伸処理を行い、更に、第三炭素化工程において前記条件で熱処理する炭素繊維の製造方法。
    第一炭素化工程条件
    一次延伸条件
    (1) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から9.8GPaに増加するまでの範囲
    (2) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の比重が1.5に達するまでの範囲
    (3) ポリアクリロニトリル系耐炎化繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmに達するまでの範囲
    二次延伸条件
    (4) 一次延伸処理後の繊維の比重が二次延伸処理中に上昇し続ける範囲
    (5) 一次延伸処理後の繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.45nmより大きくならない範囲
    第二炭素化工程条件
    一次処理条件
    (6) 第一炭素化処理繊維の比抵抗値が400Ω・g/m2以上の範囲
    (7) 第一炭素化処理繊維の比重が一次処理中上昇し続ける範囲
    (8) 第一炭素化処理繊維の窒素含有量が10質量%以上の範囲
    (9) 第一炭素化処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における配向度が80.8%以下で、一次処理中上昇し続ける範囲
    (10) 第一炭素化処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.47nmより大きくならない範囲
    (11) 第二炭素化工程一次処理での繊維張力(F MPa)と第一炭素化処理繊維の断面積(S mm2)とで算出される繊維応力(D mN)が下式
    1.24 > D > 0.46
    〔但し、D = F × S
    S = πA2 / 4
    Aは第一炭素化処理繊維の直径(mm)〕
    を満たす範囲で繊維張力を与える延伸処理
    二次処理条件
    (12) 一次処理繊維の比抵抗値が400Ω・g/m2未満の範囲
    (13) 一次処理繊維の比重が変化しない又は低下する範囲
    (14) 一次処理繊維の広角X線測定(回折角26°)における結晶子サイズが1.47nmより大きく、且つ二次処理中上昇し続ける又は変化しない範囲
    (15) 第二炭素化工程二次処理での繊維張力(G MPa)と第一炭素化処理繊維の断面積(S mm2)とで算出される繊維応力(E mN)が下式
    0.60 > E > 0.23
    〔但し、E = G × S
    S = πA2 / 4
    Aは第一炭素化処理繊維の直径(mm)〕
    を満たす範囲で繊維張力を与える延伸処理
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