JP4251409B2 - 弾性表面波フィルタ - Google Patents
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Description
本発明は、移動体通信などに用いられる弾性表面波(SAW)フィルタに関する。
[背景技術]
現在、弾性表面波(SAW)フィルタは、小型、軽量であって、調整の必要がない等の利点により移動体通信機器等に多く利用されている。移動体通信機器等において要求される低損失かつ高減衰量の特性を得るためにはSAW共振子フィルタが適している。
SAW共振子フィルタは、入力用櫛形電極(入力用IDT)と出力用櫛型電極(出力用IDT)と反射器とを有している。SAW共振子フィルタは、入力用IDT、出力用IDT及び反射器からなる電極構造列に閉じ込められた弾性表面波の共振現象を利用し、共振条件を満足する周波数範囲の通過帯域を得ることができる。SAW共振子フィルタの帯域幅は圧電基板の電気機械結合係数(k2)に比例する。
SAW共振子フィルタとして1個の共振を利用したものの場合には、狭い帯域幅のものしか得ることができない。このため、SAW共振子フィルタの帯域幅を広げるためには、複数個の共振を結合して1個の共振で得られる帯域幅より広い帯域幅を得るのが有効である。
例えば、IDTと反射器によって閉じ込められる弾性表面波の定在波のうち、2個の共振(所謂0次モードの共振と1次モードの共振)を結合して利用すれば、1個の共振を利用した場合に比べて広帯域化することができる。また、3個のIDTを用い、0次モードと2次モードの共振を結合して利用したSAW共振子フィルタも有効である。
一方、高い減衰量のSAW共振子フィルタを実現するためには、2つの電極構造列を縦続接続する方法が有効である。
図1に、2つの電極構造列を縦続接続した構造のSAW共振子フィルタの一例を示す。
第1の電極構造列として、圧電基板上にN1対の入出力用IDT1を設け、この入出力用IDT1の外側に、入出力用IDTとほぼ同一周期のN2対の受信用IDT2、2′を設け、さらに受信用IDT2、2′の外側に、反射器3、3′を設けている。入力用IDT1と受信用IDT2、2′とは、隣接する電極指の中心間隔がLだけ離れて配置されている。
第2の電極構造列として、圧電基板上にN1対の入出力用IDT11を設け、この入出力用IDT11の外側に、入出力用IDTとほぼ同一周期のN2対の受信用IDT12、12′を設け、さらに受信用IDT12、12′の外側に、反射器13、13′を設けている。入出力用IDT11と受信用IDT12、12′とは、隣接する電極指の中心間隔がLだけ離れて配置されている。
第1の電極構造列の受信用IDT2、2′と、第2の電極構造列の受信用IDT12、12′とは、配線4、4′を介して接続され、第1の電極構造列と第2の電極構造列とが縦続接続されている。これら配線4、4′は配線5により同電位となっている。なお、配線5は必要に応じて用いられる。
入力信号は1段目の第1の電極構造列の入出力用IDT1に入力される。入出力用IDT1により励振された弾性表面波は、多重反射した後、受信用IDT2、2′で受信される。受信された弾性表面波エネルギは受信用IDT2、2′により電気信号に変換され、配線4、4′により2段目の第2電極構造列に伝えられる。
2段目の第2電極構造列では、受信用IDT12、12′により弾性表面波を励振し、入出力用IDT11で受信する。受信された弾性表面波エネルギは入出力用IDT11により電気信号に変換され、出力される。
このように2つの電極構造列が縦続接続されたSAW共振子フィルタは、縦続接続面を鏡映面として構造が対称なフィルタ回路となる。このようなフィルタ回路は、図2に示すような、直列腕インピーダンスをZa、並列腕インピーダンスをZbとする対称格子形回路で表されることが知られている。
図2の対称格子形回路においては、Za、Zbの絶対値|Za|、|Zb|がそれぞれ極小になるときが、SAW共振子フィルタ全体を1つの系と見なした場合の共振となり、Za、Zbの絶対値|Za|、|Zb|がそれぞれ極大になるときが、SAW共振子フィルタ全体を1つの系と見なした場合の***振となる。SAW共振子フィルタ内においては、共振に対応した定在波が存在している。
ここで、Zaの共振周波数をZbの***振周波数に合わせ、Zbの共振周波数をZaの***振周波数に合わせるような周波数あわせの調整を行うことにより良好なフィルタ特性を得ることが可能となる。
このような方法により広帯域化を図ったSAW共振子フィルタの従来例として次のようなものが知られている。
特開平6−85605号公報には、広域化に適した弾性表面波フィルタが開示されている。この弾性表面波フィルタは、2IDT構造の弾性表面波フィルタを3重モードにすることにより広帯域化を実現しようとしている。しかしながら、この弾性表面波フィルタは2IDT構造なので、帯域外スプリアスが大きい場合、IDT対数を調整して効果的にスプリアスを低減することができない。
特開昭64−82706号公報には、損失が少なく、帯域外減衰量が大きい狭帯域の弾性表面波フィルタが開示されている。この弾性表面波フィルタでは、内部反射のピークとすだれ状電極間での反射波ピークとを一致させて2重モードとすることにより低損失化と広帯域化を図っている。しかしながら、2重モード弾性表面波フィルタであるので、十分な低損失化と広帯域化が実現できていない。
特開平5−315886号公報には、リップルが小さく、帯域外減衰量が大きく広帯域の弾性表面波フィルタが開示されている。電気機械結合係数が10%以上の圧電基板を用い、入力電極と出力電極の電極指対数を異にすることにより、リップルが小さく広い通過帯域幅を確保し、帯域外減衰量を大きくした弾性表面波フィルタを実現しようとしている。特開平5−315886号公報では、圧電基板として電気機械結合係数が10%以上の41°YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板を用いているが、例えば、圧電基板として電気機械結合係数が1%のXカットが40°以上45°以下であって、Z伝搬の四ほう酸リチウム基板に適用すると、特開平5−315866号公報の図9より、比通過帯域幅が0.003程度しか得られず、十分な広帯域化が実現できない。
特開平5−267990号公報には、高周波領域において広帯域低損失の弾性表面波フィルタが開示されている。IDT間の間隔を規定することにより、高周波領域で広い比帯域を有する縦結合2重モード弾性表面波フィルタを実現しようとしている。しかしながら、2重モード弾性表面波フィルタであるので、低損失化と広帯域化に限界がある。
特開平7ー38369号公報には、通過帯域幅が広く、減衰量の大きい多電極形弾性表面波フィルタが開示されている。3個以上のIDTを用い、IDT間の間隔を規定することにより、広帯域で帯域外減衰量の大きい弾性表面波フィルタを実現しようとしている。しかしながら、本願発明者らの検討では、特開平7−38369号公報で規定された範囲では、2重モードと2重モードより大きいモードの範囲を含み、また減衰特性が好ましいとされる4≦n≦6の範囲でも、2重モードと2重モードより大きいモードの範囲にまたがっている。したがって、動作モードに着目した広帯域化の技術は開示されていない。
特開平1−231417号公報や特開平2−202710号公報にも、2重モード共振を利用した広い通過帯域特性を有する弾性表面波フィルタが開示されている。しかしながら、2重モード弾性表面波フィルタであるので、低損失化と広帯域化に限界がある。
このように従来は、低損失化と広帯域化を目指しているものの、十分に通過帯域幅が広く、十分に帯域外減衰量が大きい弾性表面波フィルタは実現されていない。
一方、SAW共振子フィルタの帯域幅は、圧電基板の電気機械結合係数(k2)に依存している。近年の急激な移動体通信機器の発展により、その使用帯域に適した帯域幅を持つ低損失のフィルタが要求されている。その使用帯域に応じて、水晶、LiNbO3、LiTaO3等の圧電基板が使い分けられている。
大別すると、電気機械結合係数k2が大きく温度に対する周波数変動が大きい圧電基板と、電気機械結合係数k2が小さく温度に対する周波数変動が小さい圧電基板に分けられる。
後者の、電気機械結合係数k2が小さく温度に対する周波数変動が小さい圧電基板の場合には、IFフィルタ等の狭帯域の用途に適しているが、広い帯域が得られれば実用上大きなメリットがある。
前者の、電気機械結合係数k2が大きく温度に対する周波数変動が大きい圧電基板の場合には、フロントエンド等の広帯域特性が要求される用途に適しているが、更に広い帯域が得られれば通過チャンネル数の増加等の大きな実用上のメリットがある。
このように、現状の弾性表面波フィルタに対し、更に広帯域化を図ることができれば、各圧電基板のメリットを生かしつつ、その用途を広げることが可能である。
しかしながら、従来の弾性表面波フィルタ、特にSAW共振子フィルタでは、各圧電基板材料の大きなメリットを享受しうるほど広い帯域幅を得ることはできていない。
本発明の目的は、従来より更に帯域幅が広く、しかも、帯域外スプリアスを更に低減した弾性表面波フィルタを提供することにある。
[発明の開示]
本願発明者らは、複数のIDTとその外側に反射器を用い、2段に縦続接続した構造のSAW共振子フィルタにおいて、入出力用IDTと受信用IDTとの間隔に着目し、このIDT間隔を最適化することにより、対称格子形回路で表わされるZa、Zbのそれぞれ3個の共振を励振し、これらを結合させることで従来より広帯域で低スプリアスのSAW共振子フィルタを得ることができることを見出した。
したがって、本発明の一態様による弾性表面波フィルタは、圧電基板と、前記圧電基板上に形成され、入出力用IDTと、前記入出力用IDTの外側に形成された2つの受信用IDTと、前記2つの受信用IDTの外側に形成された2つの反射器とを有する第1の電極構造列と、前記圧電基板上に形成され、入出力用IDTと、前記入出力用IDTの外側に形成された2つの受信用IDTと、前記2つの受信用IDTの外側に形成された2つの反射器とを有し、前記第1の電極構造列と縦続接続された第2の電極構造列とを有する弾性表面波フィルタであって、前記第1の電極構造列と前記第2の電極構造列における、前記入出力用IDTと前記2つの受信用IDTの互いに最も近い電極指の中心間であって、弾性表面波の伝搬方向の距離Lが、次式
(n/2−0.10)λ≦L≦(n/2−0.025)λ
ただし、λ:弾性表面波の波長
n:5以下の自然数
を満足することを特徴とする。
上述した弾性表面波フィルタにおいて、前記圧電基板は、四ほう酸リチウム基板であることが望ましい。特に、Xカットが40°以上45°以下であって、Z伝搬の四ほう酸リチウム基板は、反射率が大きく温度特性に優れているため、共振器型弾性表面波フィルタ用基板として好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、2つの電極構造列を2段縦続接続したSAW共振子フィルタの構造の一例を示す図である。
図2は、2つの電極構造列を2段縦続接続したSAW共振子フィルタの等価回路である対称格子形回路を示す図である。
図3は、入出力用IDTと受信用IDT間の間隔Lに対する絶対値|Za|、|Zb|の極小値を示すグラフである。
図4は、入出力用IDTと受信用IDT間の間隔Lの式における自然数nに対する高周波側のスプリアスレベルを示すグラフである。
図5は、実施例1のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を示すグラフである。
図6は、比較例1のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を示すグラフである。
図7は、実施例2のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を示すグラフである。
図8は、実施例3のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を示すグラフである。
図9は、比較例2のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を示すグラフである。
図10は、実施例4のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を示すグラフである。
[発明を実施するための最良の形態]
本発明の一実施形態によるSAW共振子フィルタを図1乃至図4を用いて説明する。
本実施形態では、図1に示すように、2つの電極構造列を2段に縦続接続した構造のSAW共振子フィルタをモデルとし、電気的等価である図2の対称格子形回路の直列腕インピーダンスZaと並列腕インピーダンスZbをシミュレーションした。
対称格子形回路の直列腕インピーダンスZaと並列腕インピーダンスZbの絶対値|Za|、|Zb|の極小がSAW共振子フィルタの共振であり、絶対値|Za|、|Zb|の極大がSAW共振子フィルタの***振であるので、極小、極大の数によりSAW共振子フィルタ内に発生するSAW共振の数を知ることができる。
入出力用IDT1、11が56対、受信用IDT2、2′、12、12′が42対、反射器3、3′、13、13′が80本のSAW共振子フィルタにおいて、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′間の電極間隔Lに対する絶対値|Za|、|Zb|の極小値の変化を図3に示す。ここで、櫛形電極の周期は、約3.6μm(=λ)であり、櫛形電極の各電極指の幅は、約0.9μm(=λ/4)である。
なお、IDTの櫛型電極の周期は、ひとつの電極指とそれと同じ組の最も近い電極指との距離で定義され、通常この電極指間の中心間距離である。また、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′との間隔Lは、互いに最も近い電極指の中心間であって、弾性表面波の伝搬方向の距離である。
図3の横軸は入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lで、縦軸は中心周波数(fc)で規格化した周波数(f/fc)である。図3中の点はそれぞれZa、Zbの極小点の周波数を示すものである。
Za、Zbの極小点の内、周波数の高いものから順に、それぞれ、a0、a1、a2、a3、…、b0、b1、b2、b3、…、としてある。これら各極小点は共振を表わし、それぞれ第0、第1、第2、第3、…、の共振に対応する。
従来のSAW共振子フィルタでは、これらから2つの共振を用いて帯域を形成する2重モード共振を利用している。入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lがλ近傍の場合、第1の共振と第2の共振とを用いている。
入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを、従来の値L=1/2nλ(n=1、2、3、…:自然数)に比べて狭くすることにより、低周波側にあった第3の共振が高周波側にシフトし、第1の共振も周波数が上昇している。
ここで、入出力用IDT1、1と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを、次式
(1−0.1)λ≦L≦(1−0.025)λ
すなわち、
0.9λ≦L≦0.975λ
の範囲にすることにより、第1の共振、第2の共振、第3の共振(図3中、a1、a2、a3、b1、b2、b3)が近づいてひとつの広い帯域を形成することができる。
入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lを0.9λより狭くすると、第1の共振が高周波側に移動しすぎて帯域を形成することが困難となり望ましくない。また、入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lを0.975λより広くすると、第3の共振が低周波側に移動してスプリアスとなり望ましくない。
Za、Zbは入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lに対して半波長で周期的に変化する。このため、入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lの値は、0.9〜0.975λに対し半波長の整数倍離れていてもよい。
間隔Lの値が半波長異なると、通過帯域を形成する共振がずれる。例えば、L=1.4〜1.475λの範囲においては、図3中のa0、a1、a2、b0、b1、b2の共振によって帯域を形成することができる。
したがって、入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lの値は、次式
(n/2−0.10)λ≦L≦(n/2−0.025)λ (n:自然数)
とすることで、図3に示すように、少なくともZaの3個の共振とZbの2個の共振、又はZaの2個の共振とZbの3個の共振を用いて、従来より広い帯域特性を得ることが可能である。
図4は、入出力用IDT1、11が58対、受信用IDT2、2′12、12′が42対、反射器3、3′、13、13′が80本のSAW共振子フィルタにおいて、上述した間隔Lの式におけるnを変化した場合の、高周波側のスプリアスレベルの変化を示すグラフである。ここで、櫛形電極の周期は、約3.6μm(=λ)であり、櫛形電極の各電極指の幅は、約0.9μm(=λ/4)である。nが大きくなると、高周波側のスプリアスのレベルが大きくなる。nが1又は2の場合にはスプリアスレベルは50dB程度しかないが、nが3、4と大きくなるにしたがって急激に劣化する。nが5まではスプリアスレベルが30dB以上であるが、nが6以上になるとスプリアスレベルが30dBより小さくなり望ましくない。
したがって、基本的には、n=1(間隔Lがλ/2近傍)とすることが望ましい。しかし、n=1(間隔Lがλ/2近傍)であると、入出力用IDTと受信用IDTの間隔を入出力用IDTや受信用IDTの間隔より狭くすることになる。入出力用IDTと受信用IDTの線幅を1μmより小さくしなければならなくなる高周波帯(例えば、900MHz帯)で動作する弾性表面波フィルタの場合には、回路形成が困難となるので,n=2(間隔Lがλ近傍)であることが望ましい。
また、第1の共振、第2の共振、第3の共振を全て使うことにより通過帯域を広くすることが可能であるが、通過帯域における平坦性が劣化する場合がある。広帯域化よりも通過帯域における平坦性を重視する場合には、開口長等を調節することにより、Za、Zbの高周波側又は低周波側の互いに隣接する2個の共振に終端インピーダンスを近づけることにより平坦性を改善することができる。
なお、Za、Zbの3個の共振に対応して励振される弾性表面波の定在波は、電極構造列が中央の入出力用IDTに対して対称であるので全ての偶数次の定在波であると思われる。
(実施例1)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7(四ほう酸リチウム)基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を56対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を42対、反射器3、3′、13、13′の本数を80本とし、電極指の周期を約3.6μm(=λ)、電極指の幅を約0.9μm(=λ/4)とし、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを0.93λ(n=2)とし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を0.93λとし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.01λとして、図1に示すような900MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスが50Ωとなるように約350μmに設定した。
実施例1のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を図5に示す。図5において、Za、Zbが極小になる点をa1、a2…、b1、b2…として示した。
実施例1の比帯域幅は約0.7%であり、後述する比較例1の約1.5倍であった。ここで、比帯域幅とは、挿入損失が−3dBにおける通過帯域幅を中心周波数で規格化したものである。図5から明らかなように実施例1のSAW共振子フィルタは、Zaの3個の共振a1、a2、a3と、Zbの3個の共振b1、b2、b3を利用して通過帯域を形成している。図5に示されていないが通過帯域の高周波側のスプリアスが存在し、そのスプリアスレベルは約50dBであった。
(比較例1)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を38対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を34対、反射器3、3′、13、13′の本数を80本とし、電極指の周期を約3.6μm(=λ)、電極指の幅を約0.9μm(=λ/4)とし、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを1.00λとし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を1.00λとし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.01λとして、図1に示すような900MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスが50Ωとなるように約400μmに設定した。
なお、比較例1において、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′の対数が実施例1と異なるのは、入出力用IDTと受信用IDTの間隔Lを変化させると、Za、Zbの周波数位置がずれるため、その最適対数が異なるためである。
比較例1のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を図6に示す。図6において、Za、Zbが極小になる点をa1、a2…、b1、b2…として示した。
比較例1の比帯域幅は約0.5%であり、実施例1の比帯域幅より狭帯域であった。図6から明らかなように実施例1のSAW共振子フィルタは、Zaの2個の共振a1、a2と、Zbの2個の共振b1、b2を利用して通過帯域を形成している。図6に示されていないが通過帯域の高周波側にスプリアスが存在し、そのスプリアスレベルは約35dBであり、実施例1よりも劣化した。
(実施例2)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を58対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を42対、反射器3、3′、13、13′の本数を80本とし、電極指の周期を約3.6μm(=λ)、電極指の幅を約0.9μm(=λ/4)とし、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを0.93λ(n=2)とし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を0.93λとし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.01λとして、図1に示すような900MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスに50Ωになるように約350μmに設定した。
実施例2のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を図7に示す。図7において、Za、Zbが極小になる点をa1、a2…、b1、b2…として示した。
実施例2の比帯域幅は約0.7%であり、後述する比較例2の約1.4倍であった。図7から明らかなように実施例2のSAW共振子フィルタは、Zaの3個の共振a1、a2、a3と、Zbの3個の共振b1、b2、b3を利用して通過帯域を形成している。通過帯域の高周波側にスプリアスが存在し、そのスプリアスレベルは約50dBであった。
(実施例3)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を58対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を42対、反射器3、3′、13、13′の本数を80本とし、電極指の周期を約3.6μm(=λ)、電極指の幅を約0.9μm(=λ/4)とし、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを3.93λ(n=8)とし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を3.93λとし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.01λとして、図1に示すような900MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスに50Ωになるように約350μmに設定した。
実施例3のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を図8に示す。図8において、Za、Zbが極小になる点をa1、a2…、b1、b2…として示した。
実施例3の比帯域幅は約0.7%であり、後述する比較例2の約1.4倍であった。図8から明らかなように実施例3のSAW共振子フィルタは、Zaの3個の共振a1、a2、a3と、Zbの3個の共振b1、b2、b3を利用して通過帯域を形成している。通過帯域の高周波側にスプリアスが存在し、そのスプリアスレベルは約20dBであった。
入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを1.43λ(n=3)、1.93λ(n=4)、2.43λ(n=5)、2.93λ(n=6)、3.43λ(n=7)とし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lに合わせて同様に1.43λ、1.93λ、2.43λ、2.93λ、3.43λとしたSAW共振フィルタを作製した。その他の条件は、実施例2、実施例3と同様にした。
比帯域幅は、n=2〜8の間では、約0.7%とほぼ一定であり、後述する比較例2の約1.4倍であった。
通過帯域の高周波側のスプリアスのスプリアスレベルのnの依存性を図4に示す。n=2で約50dBのスプリアスレベルが、n=5で約30dB、n=8で約20dBと、nが大きくなるに従ってスプリアスレベルは劣化する。
(比較例2)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を34対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を80対、反射器3、3′、13、13′の本数を80本とし、電極指の周期を約3.6μm(=λ)、電極指の幅を約0.9μm(=λ/4)とし、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを1.00λとし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を1.00λとし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.01λとして、図1に示すような900MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスが50Ωになるように約400μmに設定した。
比較例2のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を図9に示す。図9において、Za、Zbが極小になる点をa1、a2…、b1、b2…として示した。
比較例2の比帯域幅は約0.5%であり、実施例2、実施例3の比帯域幅より狭帯域であった。図9から明らかなように実施例1のSAW共振子フィルタは、Zaの2個の共振a1、a2と、Zbの2個の共振b1、b2を利用して通過帯域を形成している。通過帯域の高周波側にスプリアスが存在し、そのスプリアスレベルは約35dBであり、実施例2、実施例3よりも劣化した。
(実施例4)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を66対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を50対、反射器3、3′、13、13′の本数を40本とし、電極指の周期を約8.4μm(=λ)、電極指の幅を約2.1μm(=λ/4)とし、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを0.413λ(n=1)とし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を0.413λとし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.006λとして、図1に示すような400MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスが50Ωになるように約900μmに設定した。
実施例4のSAW共振子フィルタの挿入損失の周波数特性とシミュレーションにおける|Za|、|Zb|の周波数特性を図10に示す。図10において、Za、Zbが極小になる点をa1、a2…、b1、b2…として示した。
実施例4の比帯域幅は約0.65%であった。図10から明らかなように実施例2のSAW共振子フィルタは、Zaの3個の共振a1、a2、a3と、Zbの3個の共振b1、b2、b3を利用して通過帯域を形成している。通過帯域の高周波側にスプリアスが存在し、そのスプリアスレベルは約50dBであった。
(実施例5)
圧電基板として45°XカットZ伝搬のLi2B4O7基板を用い、入出力用IDT1、11の対数を66対、受信用IDT2、2′、12、12′の対数を50対、反射器3、3′、13、13′の本数を45本とし、電極指の周期を約8.4μm(=λ)、電極指の幅を約2.1μm(=λ/4)とし、反射器3、3′、13、13′の周期を約1.013λとして、図1に示すような900MHz帯のSAW共振子フィルタを作製した。電極指の規格化膜厚(電極膜厚/波長)は約2%とした。
入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lを0.913λ(n=2)、1.413λ(n=3)、1.913λ(n=4)、2.413λ(n=5)、2.913λ(n=6)、3.413λ(n=7)、3.913λ(n=8)とし、受信用IDT2、2′、12、12′と反射器3、3′、13、13′の間隔を、入出力用IDT1、11と受信用IDT2、2′、12、12′の間隔Lに合わせて同様に0.913λ、1.413λ、1.913λ、2.413λ、2.913λ、3.413λ、3.913λと変化させた。
横モードの発生は、入出力用IDT1、11、受信用IDT2、2′、12、12′にアポダイズを施すことで抑制し、実効開口長は終端インピーダンスに50Ωになるように約900μmに設定した。
比帯域幅は、n=2〜8の間でわずかに減少し、n=2で約0.65%であった比帯域幅は、n=8で約0.62%と約95%となった。通過帯域の高周波側のスプリアスのスプリアスレベルは、n=2で約50dB、n=5で約30dB、n=8で約20dBと、nが大きくなるに従ってスプリアスレベルは劣化する。
[産業上の利用可能性]
本発明による弾性表面波フィルタは、入出力用IDTと受信用IDT間の距離を所定の範囲に設定することにより、従来より広帯域で、低スプリアスなフィルタを得ることができ、低損失かつ高減衰量の特性が要求される移動体通信等に用いるフィルタとして適している。
Claims (2)
- 四ほう酸リチウム基板である圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、入出力用IDTと、前記入出力用IDTの外側に形成された2つの受信用IDTと、前記2つの受信用IDTの外側に形成された2つの反射器とを有する第1の電極構造列と、
前記圧電基板上に形成され、入出力用IDTと、前記入出力用IDTの外側に形成された2つの受信用IDTと、前記2つの受信用IDTの外側に形成された2つの反射器とを有し、前記第1の電極構造列と縦続接続された第2の電極構造列とを有する弾性表面波フィルタであって、
前記第1の電極構造列と前記第2の電極構造列における、前記入出力用IDTと前記2つの受信用IDTの互いに最も近い電極指の中心間であって、弾性表面波の伝搬方向の距離Lが、次式
(n/2−0.10)λ≦L≦(n/2−0.025)λ
ただし、λ:弾性表面波の波長
n:5以下の自然数
を満足することを特徴とする弾性表面波フィルタ。 - 請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記圧電基板は、Xカットが40°以上45°以下であって、Z伝搬の四ほう酸リチウム基板であることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
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