JP4229678B2 - 光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物および光拡散板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光拡散性を有するポリカーボネート樹脂組成物に関する。より詳しくは、芳香族ポリカーボネートに、特定の層状珪酸塩、無機微粒子および/または高分子微粒子からなる光拡散剤を含み、より好適にはさらに芳香族ポリカーボネートと親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物を含む樹脂組成物であって、良好な剛性、寸法安定性および表面平滑性を併有する光拡散成形品を提供可能な光拡散性樹脂組成物、並びに、かかる樹脂組成物からなる比較的大きな面積を有する光拡散板に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂に、無機微粒子や高分子微粒子からなる光拡散剤を配合した光拡散機能を有する成形品は、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置、表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置等バックライトモジュールに使用される光拡散板、プロジェクターテレビ等投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板等に代表される)等の幅広い分野で用いられている。かかる成形品は、従来のアクリル樹脂に比較して耐熱性や寸法安定性に優れる点で有利である。
【0003】
近年、特に表示装置に用いられる光拡散板は、表示装置の大型化に伴って、大きな表面積を有するものが要求されている。このため光拡散板には、さらに高い剛性や良好な寸法安定性が求められる場合が増大している。通常、樹脂成形品の剛性改善および寸法安定性向上に対しては、ガラス繊維等の無機充填材の配合が有効な手段の1つであるとされている。しかしながら、光拡散機能が必要な場合、かかる無機充填材の配合は光拡散機能に影響を及ぼすことが多い。例えば、ガラス繊維等の配合によって成形品の表面平滑性が損なわれることにより、発光の均一性が低下し、これが問題となる場合がある。また、剛性を向上させた光拡散性を有する樹脂組成物として、基体となる樹脂として剛性の高い特殊な樹脂を使用したものが提案されている(特許文献1参照)。しかし、かかる提案は、特殊な樹脂を必要とすることから、汎用性に乏しい。
【0004】
一方で、比較的少量の充填材で熱可塑性樹脂の高い曲げ弾性率(剛性)を達成する技術の1つとして、無機充填材として層状珪酸塩(より好ましくはかかる層状珪酸塩の層間イオンを各種の有機オニウムイオンにイオン交換させた層状珪酸塩)を微分散させた樹脂組成物が既に知られており、芳香族ポリカーボネート樹脂と層状珪酸塩、特に層状珪酸塩の層間イオンを各種の有機オニウムイオンにイオン交換させた層状珪酸塩、とを組合せた樹脂組成物も既に提案されている(特許文献2〜特許文献7参照)。しかしながら、このような樹脂組成物を応用した光拡散性成形品は全く知られておらず、現に、かかる樹脂組成物では所望の光拡散性を実現することはできない。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−140373号公報
【特許文献2】
特開平3−215558号公報
【特許文献3】
特開平7−207134号公報
【特許文献4】
特開平7−228762号公報
【特許文献5】
特開平7−331092号公報
【特許文献6】
特開平9−143359号公報
【特許文献7】
特開平10−060160号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、良好な剛性、寸法安定性、表面平滑性を兼ね備えた光拡散性成形品を提供可能な光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明者らはかかる目的を達成すべく鋭意研究した結果、芳香族ポリカーボネート、特定の層状珪酸塩(より好適にはその陽イオン交換基が有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩)並びに特定の無機微粒子および/または高分子微粒子(より好適には高分子微粒子)を含む樹脂組成物、好適にはさらに芳香族ポリカーボネートと親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(より好適にはカルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基を有する重合体)を含む樹脂組成物が、極めて低い珪酸塩の含有量でも成形品の剛性を大幅に向上させ得ること、そして該樹脂組成物は芳香族ポリカーボネート樹脂のもつ良好な色相を維持すること、さらには良好な寸法安定性を有し、しかも表面平滑性が良好で発光の均一性に優れる光拡散性ポリカーボネート樹脂板を提供し得ることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づいてさらに検討を進め、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)(A)芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部当り、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜20重量部並びに(D)無機微粒子および高分子微粒子から選択される少なくとも1種からなる光拡散剤(D成分)0.1〜30重量部を含む光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に係るものである。かかる構成(1)によれば、良好な剛性、寸法安定性および表面平滑性という諸特性を兼ね備え、かつ十分な光拡散性を有する(以下、これらの特性を“本発明の効果”と総称する場合がある)芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明の好適な態様の1つは、(2)さらに(C)芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)を、A成分100重量部当り0.1〜50重量部含む前記の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(2)によれば、本発明の効果を有しかつより熱安定性が改良され大型の成形品に好適な光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0010】
本発明のより好適な態様の1つは、(3)前記B成分が、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつその陽イオン交換基の少なくとも40%が有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩である前記(1)〜(2)に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(3)によれば、より良好な本発明の効果を有する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明のより好適な態様の1つは、(4)前記B成分における有機オニウムイオンが、下記一般式(I)で示されることを特徴とする前記(3)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。
【0012】
【化2】
【0013】
〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R1〜R4は互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
かかる構成(4)によれば、本発明の効果を有し、かつ熱安定性の良好な光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0014】
本発明のより好適な態様の1つは、(5)前記B成分における有機オニウムイオンが、上記一般式(I)において、R1およびR2がそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、R3が炭素原子数1〜16のアルキル基、R4が炭素原子数1〜4のアルキル基である前記(4)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(5)によれば、より良好な熱安定性を有し、しかも耐加水分解性にも優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0015】
本発明のより好適な態様の1つは、(6)前記C成分が、カルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C-1成分)である前記(2)〜(5)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(6)によれば、本発明の効果を有しさらに熱安定性においてより優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0016】
本発明のより好適な態様の1つは、(7)前記C成分が、カルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C-1成分)である前記(6)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(7)によれば、本発明の効果を有し、かつ熱安定性においてさらに優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0017】
本発明のより好適な態様の1つは、(8)前記C-1成分が、スチレン−無水マレイン酸共重合体である前記(7)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(8)によれば、本発明の効果を有し、特に熱安定性の点で優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供され、大型の光拡散板を製造するに特に好適である。かかるスチレン−無水マレイン酸共重合体は本発明におけるC成分として最も好ましい態様である。
【0018】
本発明のより好適な態様の1つは、(9)前記B成分と前記C成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物と前記A成分とを溶融混練して調製されたものである前記(2)〜(8)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(9)は樹脂組成物中において層状珪酸塩(B成分)がさらに微細な分散を達成し、それにより樹脂組成物はさらに高い剛性、良好な寸法安定性、並びに低い異方性が効果的に発揮される。加えてかかる構成(9)は層状珪酸塩の熱安定化を促進する。したがって、かかる構成(9)によれば、本発明の効果のいずれにおいてもさらに優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
【0019】
本発明のより好適な態様の1つは、(10)前記D成分が、平均粒子径50μm以下の微粒子である前記(1)〜(9)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(10)によれば特に表面平滑性に優れた成形品を与える樹脂組成物が提供される。
【0020】
本発明のより好適な態様の1つは、(11)前記D成分が、高分子微粒子である前記(1)〜(10)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物である。かかる構成(11)によれば、本発明の効果およびより良好な光拡散効果を有する光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。かかる高分子微粒子の使用により、光拡散機能においてその拡散効果と全光線透過率との両立がより高いレベルにおいて実現が可能となる。
【0021】
本発明の他の態様の1つは、(12)前記(1)〜(11)の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物より形成されてなる面積500〜50,000cm2の光拡散板である。かかる構成(12)によれば、本発明の効果によって、より改善された寸法安定性と良好な形状保持性とを有する比較的大型の光拡散板が提供される。
【0022】
本発明のより好適な態様の1つは、(13)前記(12)の光拡散板が表示装置用の光拡散板である。したがって、かかる構成(13)によれば良好な特性を有する比較的大型の表示装置用光拡散板が提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分、樹脂組成物における各成分の組成割合、樹脂組成物の調整法および特性等について詳細に説明する。
【0024】
<A成分について>
本発明のA成分である芳香族ポリカーボネートは、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法および環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
【0025】
前記2価フェノールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
【0026】
本発明では、汎用ポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、例えば、吸水による寸法変化をより低減する目的やさらに剛性を向上させる目的および光源に対する耐熱性をより向上させる目的等から、他の2価フェノール類を使用した特殊な芳香族ポリカーボネ−トをA成分として使用することも可能である。
【0027】
例えば、2価フェノール成分の一部または全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することもある)を用いた芳香族ポリカーボネ−ト(単独重合体または共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が厳しい用途に適当である。これらの2価フェノールは芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0028】
殊に、高剛性かつ吸水率の低い(よって吸水による寸法変化の少ない)光拡散板が要求される場合には、光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を構成するA成分が次の(a)〜(c)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(a)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、BCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(b)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、BCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(c)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、Bis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0029】
これらの特殊な芳香族ポリカーボネートは単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA系の芳香族ポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0030】
これらの特殊な芳香族ポリカーボネートの製法および特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報および特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
【0031】
なお、前記各種ポリカーボネートのなかでも、共重合組成等を調整して、吸水率およびTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、耐加水分解性が良好で、かつ低反り性においても格段に優れているため、特に好適である。
(a)Tgが120〜180℃であり、かつ吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%である芳香族ポリカーボネート、あるいは、
(b)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%である芳香族ポリカーボネート。
【0032】
ここで、芳香族ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0033】
また、前記カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的には、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは2価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0034】
前記2価フェノールとカーボネート前駆体とから界面重合法によってポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて、触媒、末端停止剤、2価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。
【0035】
また、本発明樹脂組成物を構成するA成分となる芳香族ポリカーボネートは、3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。かかる3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。分岐構造を生ずる多官能性化合物を含む場合、その割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造の割合についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、芳香族ポリカーボネート中の分岐構造量の割合は、1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0036】
さらに、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネートに前記官能性カルボン酸および2官能性アルコールをともに共重合したポリエステルカーボネートでもよい。脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の2官能性のカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。2官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。本発明では、この他に、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0037】
本発明の樹脂組成物におけるA成分(芳香族ポリカーボネート)は、2価フェノール成分の異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等、各種の芳香族ポリカーボネートを2種以上を混合したものであってもよい。また、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合して使用することもできる。
【0038】
芳香族ポリカーボネート製造における界面重縮合法による反応は、通常、2価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の3級アミン、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は、通常、0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0039】
また、かかる重合反応において、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、トリアコンチルフェノール等を挙げることができる。かかる末端停止剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0040】
溶融エステル交換法による反応は、通常2価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に2価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常、120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0041】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0042】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;等の各種触媒を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等の通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。これらの触媒は単独で使用してもよく2種以上を組合せて使用してもよい。触媒の使用量は、原料の2価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0043】
溶融エステル交換法による反応では、生成ポリマーのフェノール性末端基を減少させる目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば、2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0044】
さらに、溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また、重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩およびテトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩等が好ましく挙げられる。
【0045】
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量が10,000未満であると成形品の強度等が低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、14,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。この場合、成形性等が維持される範囲内で、粘度平均分子量が前記範囲外であるポリカーボネートとを混合することも可能であり、例えば、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量の芳香族ポリカーボネート成分を配合することもできる。
【0046】
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0047】
なお、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は、次の要領で行う。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。この固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、20℃における比粘度(ηSP)を、オストワルド粘度計を用いて求め、上記の式により粘度平均分子量Mを算出する。
【0048】
<B成分について>
本発明の樹脂組成物を構成するB成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量をする層状珪酸塩である。好適には、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上、特に50〜100%、が有機オニウムイオンにてイオン交換された層状珪酸塩である(以下、この層状珪酸塩を“有機化層状珪酸塩”と略称することがある)。
【0049】
B成分の層状珪酸塩は、SiO2連鎖からなるSiO4四面体シート構造とAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造との組合せからなる層からなり、その層間に交換性陽イオンの配位した珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)である。これらの珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)は、スメクタイト系鉱物、バーミキュライト、ハロイサイトおよび膨潤性雲母等に代表される。具体的には、スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等が挙げられ、膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母およびLi型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられる。これらの層状珪酸塩は、天然品、合成品のいずれも使用可能である。合成品は、例えば、水熱合成、溶融合成、固体反応によって製造される。
【0050】
層状珪酸塩のなかでも、陽イオン交換容量等の点から、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性を持ったフッ素雲母が好適に用いられ、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトや合成フッ素雲母が、純度等の点からより好適である。さらに、良好な機械特性が得られる合成フッ素雲母が特に好ましい。
【0051】
前記B成分である層状珪酸塩の陽イオン交換容量(陽イオン交換能ともいう)は、50〜200ミリ当量/100gであることが必要とされ、好ましくは80〜150ミリ当量/100g、さらに好ましくは100〜150ミリ当量/100gである。陽イオン交換容量は、土壌標準分析法として国内の公定法となっているショーレンベルガー改良法によってCEC値として測定される。層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、A成分である芳香族ポリカーボネートへの良好な分散性を得るために、50ミリ当量/100g以上必要であるが、200ミリ当量/100gより大きくなると芳香族ポリカーボネートの熱劣化が大きくなり、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱劣化への影響が大きくなってくる。この層状珪酸塩は、そのpHの値が7〜10であることが好ましい。pHの値が10より大きくなると、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性が低下する傾向が現われる。
【0052】
B成分の層状珪酸塩としては、有機オニウムイオンが層状珪酸塩の層間にイオン交換されたもの(有機化層状珪酸塩)が好適である。該有機オニウムイオンは、通常、ハロゲンイオン等との塩として取り扱われる。ここで有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられる。オニウムイオンは1級、2級、3級、4級のいずれも使用できるが、4級オニウムイオンが好ましく、オニウムイオンとして4級アンモニウムイオンおよび4級ホスホニウムイオンが好適である。
【0053】
該イオン化合物には各種の有機基が結合したものが使用できる。かかる有機基としては、アルキル基が代表的であるが、芳香族基を有するものでもよく、また、エーテル基、エステル基、二重結合部分、三重結合部分、グリシジル基、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン基等の各種官能基を含有するものでもよい。
【0054】
有機オニウムイオンの具体例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムの如き同一のアルキル基を有する4級アンモニウム;トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム,トリメチルイコサニルアンモニウムの如きトリメチルアルキルアンモニウム;トリメチルオクタデセニルアンモニウムの如きトリメチルアルケニルアンモニウム;トリメチルオクタデカジエニルアンモニウムの如きトリメチルアルカジエニルアンモニウム;トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウムの如きトリエチルアルキルアンモニウム;トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウムの如きトリブチルアルキルアンモニウム;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムの如きジメチルジアルキルアンモニウム;ジメチルジオクタデセニルアンモニウムの如きジメチルジアルケニルアンモニウム;ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウムの如きジメチルジアルカジエニルアンモニウム;ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウムの如きジエチルジアルキルアンモニウム;ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウムの如きジブチルジアルキルアンモニウム;トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウムの如きトリアルキルメチルアンモニウム;トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウムの如きトリアルキルエチルアンモニウム;トリオクチルブチルアンモニウム、トリデシルブチルアンモニウムの如きトリアルキルブチルアンモニウムが挙げられる。
【0055】
また、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きメチルベンジルジアルキルアンモニウム;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きジベンジルジアルキルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム等を例示することができる。さらに、トリメチルフェニルアンモニウムの如き芳香族アミン由来の4級アンモニウム;メチルジエチル[PEG]アンモニウムおよびメチルジエチル[PPG]の如きトリアルキル[PAG]アンモニウム;メチルジメチルビス[PEG]アンモニウムの如きジアルキルビス[PAG]アンモニウム;エチルトリス[PEG]アンモニウムの如きアルキルトリス[PAG]アンモニウムが挙げられる。また、前記アンモニウムイオンの窒素原子がリン原子に置換したホスホニウムイオンを用いることもできる。
【0056】
これらの有機オニウムイオンは、単独使用および2種以上の組合せ使用のいずれも選択できる。なお、前記“PEG”の表記はポリエチレングリコールを、“PPG”の表記はポリプロピレングリコールを“PAG”の表記はポリアルキレングリコールを示す。ポリアルキレングリコールの分子量としては100〜1,500のものが使用できる。
【0057】
これら有機オニウムイオン化合物の分子量は、100〜600であることが好ましい。より好ましくは150〜500である。分子量が600より多いときには、場合により芳香族ポリカーボネートの熱劣化を促進したり樹脂組成物の耐熱性を損なう傾向が現れる。なお、かかる有機オニウムイオンの分子量は、ハロゲンイオン等のカウンターイオン分を含まない有機オニウムイオン単体の分子量を指す。
【0058】
本発明において、B成分の好適な態様は、下記一般式(I)で示される有機オニウムイオンでイオン交換されたものである。
【0059】
【化3】
【0060】
上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R1〜R4は互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。これらのR1〜R4は、前記の条件を満たす限り、その一部が互いに同一の基であってもよく、全部または一部が相異なる基であってもよい。
【0061】
本発明のB成分において使用される有機オニウムイオンのさらに好適な態様は、上記一般式(I)において次の条件を満足するものである。すなわち、Mは窒素原子またはリン原子であり、R1およびR2はそれぞれ炭素原子数6〜16のアルキル基である。R3は炭素原子数1〜16のアルキル基であり、かつR4は炭素原子数1〜4のアルキル基である。なお、R1とR2とは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよく、また、R3とR4とは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよい。
【0062】
上記一般式(I)で示される有機オニウムイオンのより好適な態様は、(i)前記R3が炭素原子数1〜4のアルキル基の場合である。より好しくは(ii)R3およびR4がそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基であって、かつR1およびR2がそれぞれ炭素原子数7〜14のアルキル基の場合である。さらに好ましくは、(iii)R3およびR4がそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基で、かつR1およびR2は炭素原子数7〜12、特に好ましくは炭素原子数8〜11、のアルキル基の場合である。なお、これらのうちでも、R3およびR4が炭素原子数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基、さらに好ましくはメチル基の4級アンモニウムイオンが特に好適である。
【0063】
これら(i)〜(iii)のより好適な態様(さらに好ましい態様を含む)によれば、樹脂組成物の耐加水分解性が特に優れたものとなり、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に良好な長期実用特性を与える。
【0064】
なお、上記式(I)においてR1〜R4はいずれも直鎖状および分岐状のいずれも選択できる。
【0065】
かかる好適な4級アンモニウムイオンの例としては、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクチルアンモニウム、ジブチルジデシルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム等が例示される。
【0066】
層状珪酸塩への有機オニウムイオンのイオン交換は、極性溶媒中に分散させた層状珪酸塩に、有機オニウムイオン化合物を添加し、析出してくるイオン交換化合物を収集することによって作成することができる。通常、このイオン交換反応は、有機オニウムイオン化合物を、層状珪酸塩のイオン交換容量の1当量に対し1.0〜1.5当量の割合で加えて、ほぼ全量の層間の金属イオンを有機オニウムイオンで交換させるのが一般的である。しかし、このイオン交換容量に対する交換割合を一定の範囲に制御することも、芳香族ポリカーボネートの熱劣化を抑制する上で有効である。ここで有機オニウムイオンでイオン交換される割合は、層状珪酸塩のイオン交換容量に対して40%以上であることが好ましい。かかるイオン交換容量に対する割合は好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは40〜80%である。ここで、有機オニウムイオンの交換割合は、交換後の化合物について、熱重量測定装置等を用いて、有機オニウムイオンの熱分解による重量減少を求めることにより算出することができる。
【0067】
<C成分について>
本発明のC成分は芳香族ポリカーボネートと親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物であり、本発明において使用されることがより好適である。このC成分は、芳香族ポリカーボネートおよび層状珪酸塩の双方に対する良好な親和性を生み出す。これら双方に対する親和性は2種の成分の相溶性を向上させ、層状珪酸塩がマトリックスの芳香族ポリカーボネート(A成分)中で微細かつ安定して分散するようになる。
【0068】
層状珪酸塩の分散に関するC成分の機能は、異種ポリマー同士を相溶化させるために使用されるポリマーアロイ用相溶化剤(コンパティビライザー)と同様と推測される。したがって、C成分は、低分子化合物よりも重合体であることが好ましい。また、重合体の方が混練加工時の熱安定性にも優れる。該重合体の平均繰り返し単位数は5以上が好ましく、10以上がより好ましい。一方、該重合体の平均分子量の上限においては数平均分子量で2,000,000以下であることが好ましい。かかる上限を超えない場合には良好な成形加工性が得られる。
【0069】
本発明の樹脂組成物に配合されるC成分が重合体である場合、その基本的構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
ア)前記芳香族ポリカーボネートに親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αとβとからなるグラフト共重合体(主鎖がα、グラフト鎖がβ、並びに主鎖がβ、グラフト鎖がαのいずれも選択できる。)、αとβとからなるブロック共重合体(ジ−、トリ−、等ブロックセグメント数は2以上を選択でき、ラジアルブロックタイプ等を含む。)およびαとβとからなるランダム共重合体。ここで、αおよびβは重合体セグメント単位および単量体単位のいずれをも意味するが、α成分は芳香族ポリカーボネートとの親和性の観点から重合体セグメント単位であることが好ましい。
イ)前記芳香族ポリカーボネートに親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αの機能は重合体全体によって発現され、βが該α内に含まれる構造を有する重合体。すなわち、α単独では芳香族ポリカーボネートとの親和性が十分ではないものの、αとβとが組み合わされ一体化されることにより、良好な親和性が発現する場合である。α単独の場合にも芳香族ポリカーボネートとの親和性が良好であって、かつβとの組合せによってさらに親和性が向上する場合もある。したがってこれらの構造ア)およびイ)はその一部において重複することがある。
【0070】
本発明におけるC成分としては、α分のみでも芳香族ポリカーボネートに対する親和性が高く、さらにβが付加したC成分全体においてその親和性が一段と高くなるものが好適である。
【0071】
ここで、C成分における芳香族ポリカーボネートに親和性を有する成分(以下αと称する場合がある)について説明する。前記の如くC成分は、ポリマーアロイにおける相溶化剤との同様の働きをすると考えられることから、αには相溶化剤と同様の重合体に対する親和性が求められる。したがって、αは非反応型と反応型とに大略分類できる。
【0072】
非反応型では、以下の要因を有する場合に親和性が良好となる。すなわち、芳香族ポリカーボネートとαとの間に、▲1▼化学構造の類似性、▲2▼溶解度パラメータの近似性(溶解度パラメータの差が1(cal/cm3)1/2以内、すなわち約2.05(MPa)1/2以内が目安とされる)、▲3▼分子間相互作用(水素結合、イオン間相互作用等)およびランダム重合体特有の擬引力的相互作用等の要因を有することが望まれる。これらの要因は相溶化剤とポリマーアロイのベースになる重合体との親和性を判断する指標としても知られている。
【0073】
反応型では、相溶化剤において芳香族ポリカーボネートと反応性を有する官能基を有するものを挙げることができる。例えば、芳香族ポリカーボネートに対して反応性を有する、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基、エステル結合、カーボネート基およびカーボネート結合等を例示することができる。
【0074】
一方で、芳香族ポリカーボネートとαとが良好な親和性をもつ場合、その結果として芳香族ポリカーボネートとαとの混合物において単一のガラス転移温度(Tg)を示すか或いは芳香族ポリカーボネートのTgがαのTgの側に移動する挙動が認められるので、芳香族ポリカーボネートと親和性を有する成分(α)は、かかる挙動により判別することができる。
【0075】
前記の如く、本発明の組成物の構成成分として有用なC成分における芳香族ポリカーボネートと親和性を有する成分(α)は、非反応型であることが好ましく、殊に溶解度パラメータが近似することにより良好な親和性を発揮することが好ましい。これは反応型に比較して芳香族ポリカーボネートとの親和性により優れるためである。また反応型は過度に反応性を高めた場合、副反応によって重合体の熱劣化が促進される欠点がある。
【0076】
芳香族ポリカーボネート(A成分)およびC成分のαの溶解度パラメータは次の関係を有することが好ましい。すなわち、芳香族ポリカーボネート(A成分)の溶解度パラメータをδA((MPa)1/2)とし、C成分におけるαの溶解度パラメータまたはC成分全体の溶解度パラメータをδα((MPa)1/2)としたとき、次式:
δα=δA±2 ((MPa)1/2)
の関係を有することが好ましい。
【0077】
例えば、A成分の溶解度パラメータは通常約10(cal/cm3)1/2(すなわち約20.5((MPa)1/2))とされていることから、δαは18.5〜22.5((MPa)1/2)の範囲が好ましく、19〜22((MPa)1/2)の範囲がより好ましい。
【0078】
かかる溶解度パラメータδαを満足する重合体成分の具体例としては、スチレンポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、アクリロニトリルポリマー等のビニル系重合体(例えば、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等に代表される)を挙げることができる。本発明の樹脂組成物の耐熱性の保持のためには、これらのうちでもTgの高い重合体成分を用いることが好ましい。
【0079】
ここで溶解度パラメータは、「ポリマー・ハンドブック 第4版」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION,1999年)中に記載されたSmallの値を用いた置換基寄与法(Group contribution methods)による理論的な推算方法が利用できる。芳香族ポリカーボネートのTgは既に述べたようにJIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求めることが可能である。
【0080】
前記のA成分の芳香族ポリカーボネートと親和性を有する成分αは、C成分中5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。C成分全体をαとする態様も可能であることから上限は100重量%であってよい。
【0081】
一方、C成分における親水性成分(以下、βと称する場合がある)は、親水基(水との相互作用の強い有機性の原子団)を有する単量体および親水性重合体成分(重合体セグメント)より選択される。親水基はそれ自体広く知られ、下記の基が例示される。
1)強親水性の基:−SO3H、−SO3M、−OSO3H、−OSO3H、−COOM、−NR3X(R:アルキル基、X:ハロゲン原子、M:アルカリ金属、−NH4) 等、
2)やや小さい親水性を有する基:−COOH、−NH2、−CN、−OH、−NHCONH2 等、
3)親水性が無いかまたは小さい基:−CH2OCH3、−OCH3、−COOCH3、−CS 等
本発明の組成物に配合するC成分としては、親水基が前記1)または2)に分類されるものが使用され、なかでも、前記2)の親水基は芳香族ポリカーボネートの溶融加工時の熱安定性により優れるため好ましい。親水性が高すぎる場合には芳香族ポリカーボネートの熱劣化が生じやすくなる。これはかかる親水基が直接カーボネート結合と反応し、熱分解反応を生じるためである。
【0082】
なお、かかる親水基は1価および2価以上の基のいずれであってもよい。C成分が重合体の場合、2価以上の官能基とは該基が主鎖を構成しないものをいい、主鎖を構成するものは結合として官能基とは区別する。具体的には、主鎖を構成する炭素等の原子に付加した基、側鎖の基および分子鎖末端の基は、2価以上であっても官能基である。
【0083】
親水基のより具体的な指標は、溶解度パラメータである。溶解度パラメータの値が大きいほど親水性が高くなることは広く知られている。基ごとの溶解度パラメータは、Fedorsによる基ごとの凝集エネルギー(Ecoh)および基ごとのモル体積(V)より算出することができる(「ポリマー・ハンドブック 第4版」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION),VII/685頁、1999年、Polym.Eng.Sci.,第14巻,147および472頁,1974年、等参照)。さらに親水性の大小関係のみを比較する観点からは、凝集エネルギー(Ecoh)をモル体積(V)で除した数値(Ecoh/V;以下単位は“J/cm3”とする)を親水性の指標として使用できる。
【0084】
C成分におけるβに含まれる親水基は、Ecoh/Vが600以上であることが必要であり、好ましくはEcoh/Vは800以上である。800以上の場合にはA成分の芳香族ポリカーボネートにおけるカーボネート結合のEcoh/Vを超え、カーボネート結合よりも高い親水性を有する。Ecoh/Vは900以上がより好ましく、950以上がさらに好ましい。
【0085】
上述のとおり、親水性が高すぎる場合には、芳香族ポリカーボネートの熱劣化が生じやすくなる。したがってEcoh/Vは2,500以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,500以下がさらに好ましい。
【0086】
C成分の親水性成分(β)として、親水性重合体成分(重合体セグメント)も選択され得る。C成分の重合体中に含まれる親水性重合体のセグメントはβとなる親水性重合体としては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩(キレート型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびポリヒドロキシエチルメタクリレート等が例示される。これらのなかでも、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく例示される。これらは良好な親水性と本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂に対する熱安定性(溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの分解の抑制)とを両立できるためである。なお、ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0087】
親水基を有する単量体および親水性重合体成分のいずれにおいても、βは酸性の官能基(以下単に“酸性基”と称することがある)を有するのが好ましい。かかる酸性基は、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の溶融加工時の熱劣化を抑制する。とりわけ、窒素原子を含まない酸性基がより好適である。好適な酸性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基等が例示される。
【0088】
これに比して、アミド基やイミド基等の窒素原子を含む官能基は溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの熱劣化を十分には抑制しない場合がある。これは窒素原子が局所的に塩基性を有しカーボネート結合の熱分解を生じさせるためと考えられる。
【0089】
C成分におけるβの割合は、βが親水基を有する単量体の場合、官能基1つ当たりの分子量である官能基当量として、60〜10,000であり、70〜8,000が好ましく、80〜6,000がより好ましく、100〜3,000がさらに好ましい。また、βが親水性重合体セグメントの場合、C成分100重量%中βが5〜95重量%であることが適当であり、10〜90重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。
【0090】
前記芳香族ポリカーボネートに対して親和性を有する成分(α)と親水性成分(β)とを有する有機化合物(C成分)の製造方法としては、βの単量体とαを構成する単量体とを共重合する方法、βの重合体成分をαとブロックまたはグラフト共重合する方法、並びに、βをαに直接反応させて付加する方法等が例示される。
【0091】
C成分の具体例として、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつオキサゾリン基を有する重合体、あるいは、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ水酸基を有する重合体、が例示される。これらのC成分として好ましい重合体においては、その分子量は重量平均分子量において1万〜100万の範囲が好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。かかる重量平均分子量は標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出される。
【0092】
<C-1成分について>
前記C成分のなかでも、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体が好ましく、さらに好ましくは親和性を有しかつカルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基とを有する重合体である。また、芳香族ポリカーボネートの耐熱性保持効果の観点から、重合体は芳香環成分を主鎖に有するものおよびスチレン成分を主鎖に有するものが好ましい。前記の点からカルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C-1成分)が本発明のC成分として特に好適である。ここでスチレン含有重合体とはスチレン等の芳香族ビニル化合物を重合した繰返し単位を重合体成分として含有する重合体を指す。
【0093】
かかるカルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基の割合としては0.1〜12ミリ当量/gが好ましく、0.5〜5ミリ当量/gがより好ましい。ここでC-1成分における1当量とは、カルボキシル基が1モル存在することを言い、その値は水酸化カリウム等の逆滴定により算出することが可能である。
【0094】
カルボキシル基の誘導体からなる官能基としては、カルボキシル基の水酸基を(i)金属イオンで置換した金属塩(キレート塩を含む)、(ii)塩素原子で置換した酸塩化物、(iii)−ORで置換したエステル(Rは一価の炭化水素基)、(iv)−O(CO)Rで置換した酸無水物(Rは一価の炭化水素基)、(v)−NR2で置換したアミド(Rは水素または一価の炭化水素基)、(vi)2つのカルボキシル基の水酸基を=NRで置換したイミド(Rは水素または一価の炭化水素基)等、を挙げることができる。
【0095】
カルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基(以下、単に“カルボキシル基類”と称する)を有するスチレン含有重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を取ることができる。例えば、(a)カルボキシル基を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合する方法、および(b)スチレン含有重合体に対してカルボキシル基類を有する化合物または単量体を結合または共重合する方法等を挙げることができる。
【0096】
前記(a)の方法においては、ランダム共重合体の他に交互共重合体、ブロック共重合体、テーパード共重合体等の各種形態の共重合体が使用できる。また共重合の方法においても溶液重合、懸濁重合、塊状重合等のラジカル重合法の他、アニオンリビング重合法やグループトランスファー重合法等の各種重合方法をとることができる。さらに一旦マクロモノマーを形成した後重合する方法も可能である。
【0097】
前記(b)の方法としては、例えば、スチレン含有重合体または共重合体に必要に応じて、パーオキサイドや2,3−ジメチル−2,3ジフェニルブタン(通称“ジクミル”)等のラジカル発生剤を加えて、高温化で反応または共重合する方法を挙げることができる。かかる方法は、スチレン含有重合体または共重合体に熱的に反応活性点を生成し、この活性点に反応する化合物または単量体を反応させるものである。反応に要する活性点を生成するその他の方法として、放射線や電子線の照射やメカノケミカル手法による外力の付与等の方法も挙げられる。さらに、スチレン含有共重合体中に予め反応に要する活性点を生成する単量体を共重合しておく方法も挙げられる。反応のための活性点としては不飽和結合、パーオキサイド結合、立体障害が高く熱的に安定なニトロオキシドラジカル等を挙げることができる。
【0098】
前記カルボキシル基類を有する化合物または単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸およびその誘導体、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等の無水マレイン酸の誘導体、グルタルイミド構造やアクリル酸と多価の金属イオンで形成されたキレート構造等が挙げられる。これらのなかでも、金属イオンや窒素原子を含まない官能基を有する単量体が好適であり、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基を有する単量体、特に無水マレイン酸がより好適である。
【0099】
また、スチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができるが、特にスチレンが好ましい。
【0100】
さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として使用しても差し支えない。
【0101】
本発明において好適なものは、カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体である。かかる共重合体においては比較的多くのカルボキシル基類を安定してスチレン含有重合体中に含むことが可能となるためである。より好適な態様としてカルボキシル基類を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合してなるスチレン含有共重合体を挙げることができ、殊に好適なものはスチレン−無水マレイン酸共重合体である。スチレン−無水マレイン酸共重合体は、層状珪酸塩中のイオン成分および芳香族ポリカーボネートのいずれに対しても高い相溶性を有することから、層状珪酸塩(B成分)を樹脂組成物中へ良好に微分散させることができる。さらに、カルボン酸無水物基の作用により層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩を含有する樹脂組成物において良好な熱安定性が得られる。またかかる共重合体それ自体の熱安定性が良好であるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融加工に必要な高温条件に対しても高い安定性を有する。
【0102】
カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体の組成については、上述のβの割合における条件を満足する範囲内であれば何ら制限されないが、カルボキシル基類を有する単量体からの成分を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物成分99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)を含み、共重合可能な他の化合物成分を0〜29重量%を含むものを用いるのが好ましく、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)の共重合体が特に好ましい。
【0103】
前記C-1成分の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は1万〜100万の範囲にあることが好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。なお、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0104】
<他のC成分について>
他の好適なC成分としては、親水基としてオキサゾリン基を含有するスチレン含有共重合体(C-2成分)が挙げられる。かかる共重合体を形成するスチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができる。さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、を共重合成分として使用しても差し支えない。特に好適なC−2成分の具体例としては、スチレン(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)−スチレン−アクリロニトリル共重合体が例示される。
【0105】
また、他の好適なC成分としては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリエーテルエステル共重合体(C-3成分)がある。このポリエーテルエステル共重合体は、ジカルボン酸、アルキレングリコールおよびポリ(アルキレンオキシド)グリコール或いはこれらの誘導体から重縮合を行うことで製造される重合体である。かかるC-3成分として特に好適なものは、重合度10〜120のポリ(アルキレンオキシド)グリコールあるいはその誘導体、テトラメチレングリコールを65モル%以上含有するアルキレングリコールあるいはその誘導体およびテレフタル酸を60モル%以上含有するジカルボン酸あるいはその誘導体から製造される共重合体である。
【0106】
<D成分について>
本発明のD成分は、無機微粒子および高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤、すなわち光拡散能を有する微粒子である。またかかるD成分の平均粒子径としては、好ましくは0.01〜50μmの範囲であり、より好ましくは0.1〜10μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜8μmの範囲である。かかる平均粒子径は、レーザー光散乱法で求められる粒度の積算分布の50%(D50)で表されるものである。また、粒径の分布については狭いものが好ましく、平均粒径±2μmである粒子が全体の70重量%以上の範囲である分布を有するものがより好ましい。
【0107】
またD成分の屈折率は、A成分の芳香族ポリカーネートの屈折率との差の絶対値が0.02〜0.2であることが好ましく、かかる範囲では光拡散性と光線透過率とを高いレベルで両立させることが可能となる。より好ましくは、B成分の屈折率がA成分の屈折率よりも低い場合である。
【0108】
本発明のD成分(光拡散剤)として使用する無機微粒子の屈折率は、約1.4〜1.8の範囲であることが好ましい。かかる範囲は良好な光線透過性能と光拡散性能が両立される。なお、無機微粒子の屈折率は、各種の文献において既に広く知られており、簡便には液浸法等により測定が可能である。
【0109】
かかる無機微粒子からなる光拡散剤としては、ガラス充填材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、ワラストナイト等が好適に例示され、特に好適なものとして炭酸カルシウムが例示される。無機微粒子の形状は特に限定されるものではないが、繊維状よりは粒状(不定形を含む)または板状が好適である。例えば、ガラス充填材としては、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、極薄ガラスフレーク(ゾル−ゲル法により製造される)、不定形ガラス等が例示される。他の無機微粒子においても同様に各種の形状を取ることができる。さらに、前記無機微粒子は、シランカップリング剤やポリオルガノ水素シロキサン化合物等の各種シリコーン化合物、脂肪酸エステル化合物、オレフィン化合物等で表面処理されたものを使用することができる。かかる表面処理された無機微粒子は熱安定性や耐加水分解性の向上において効果的である。ただし、酸化チタンは、光拡散能が乏しいので本発明では使用に適さない。
【0110】
次に、高分子微粒子からなる光拡散剤について説明する。本発明においては高分子微粒子の使用がより好適である。かかる高分子微粒子の使用は、光拡散機能においてその拡散効果と全光線透過率との両立がより高いレベルにおいて実現可能である。かかる高分子微粒子は、一般に、無機充填材に比べて樹脂組成物の剛性や寸法安定性を向上させる効果は小さいが、本発明の樹脂組成物では他の成分との組合せによって、これらの目的が達成されるので、高分子微粒子が問題なく使用できる。
【0111】
D成分の高分子微粒子は、光拡散性の観点から球状であるものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。さらに高分子微粒子としては非架橋性モノマーと架橋性モノマーを重合して得られる有機架橋粒子を挙げることができる。非架橋性モノマーとしては、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー等の非架橋性ビニル系モノマーおよびオレフィン系モノマー等を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。さらにかかるモノマー以外の他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。他の有機架橋粒子としては、シリコーン系架橋粒子を挙げることができる。一方、ポリエーテルサルホン粒子等の非晶性耐熱ポリマーの粒子も本発明の高分子微粒子として挙げることができる。かかるポリマーの粒子の場合には、A成分と加熱溶融混練した場合であっても微粒子の形態が損なわれることがないため、必ずしも架橋性モノマーを必要としない。さらに、本発明の高分子微粒子としては、各種のエポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子等も使用可能である。
【0112】
D成分として使用される高分子微粒子からなる光拡散剤のなかでも、有機架橋粒子が好適に使用できる。かかる有機架橋粒子において前記非架橋性ビニル系モノマーとして使用されるアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート等を単独でまたは混合して使用することが可能である。このなかでも特にメチルメタクリレートが特に好ましい。また、スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン(ビニルトルエン)、エチルスチレン等のアルキルスチレン、ブロモ化スチレン等のハロゲン化スチレンを使用することができ、特にスチレンが好ましい。アクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを使用することができる。また、オレフィン系モノマーとしてはエチレン、各種ノルボルネン型化合物等を使用することができる。さらに、他の共重合可能な他のモノマーとして、グリシジルメタクリレート、N−メチルマレイミド、無水マレイン酸等を例示することができ、結果としてN−メチルグルタルイミド等の単位を有することもできる。
【0113】
一方、かかる非架橋性ビニル系モノマーに対する架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0114】
アクリル系モノマー等からなる有機架橋粒子の製造方法としては、一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また、懸濁重合法においても、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法や、同様に連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μmの細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法等も採用可能である。
【0115】
一方、シリコーン系架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものであり、ポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものと、メチルシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いものがあるが、本発明ではポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。かかるシリコーン系架橋粒子のケイ素原子に置換する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルカン基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の他、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、エーテル基等を使用することができる。
【0116】
かかるシリコーン系架橋粒子の製造法としては、3官能性のアルコキシシラン等を水中で加水分解と縮合反応によってシロキサン結合を成長させながら3次元架橋した粒子を形成させる方法が一般的であり、かかる粒子径は、触媒のアルカリ量や攪拌工程等により制御可能である。
【0117】
また、有機架橋粒子以外の高分子微粒子の製造方法としては、スプレードライ法、液中硬化法(凝固法)、相分離法(コアセルベーション法)、溶媒蒸発法、再沈殿法等の他、これらを行う際にノズル振動法等を組合せたものを挙げることができる。
【0118】
D成分の高分子微粒子の形態としては、単相重合体のほか、コア−シェル重合体の形態や、2種以上の成分が相互に絡み合った構造を有するIPN構造をとることも可能である。また、無機微粒子のコアとし有機架橋粒子の成分をシェルとする複合型粒子や有機架橋粒子をコアとしエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をシェルとする複合型粒子等も使用することもできる。
【0119】
これらの高分子微粒子の屈折率は、一般に、1.33〜1.7程度であり、これらは樹脂組成物に配合した状態において十分な光拡散機能を発揮する。
【0120】
<各成分の組成割合について>
次に、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物における各成分の組成割合(含有量)について説明する。B成分の層状珪酸塩は、A成分(芳香族ポリカーボネート)100重量部当り、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.5〜15重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部であり、特に好ましくは1〜9重量部である。B成分のかかる組成割合が前記下限より少ないときには、層状珪酸塩の効果が不十分となりやすく、したがって、高剛性を得る上で不十分となる。一方、B成分の組成割合が前記上限より多いときには、組成物の光拡散機能が低下する場合があり、また耐熱性や熱安定性の低下により色相が悪化して好ましくない場合がある。
【0121】
C成分のA成分の芳香族ポリカーボネートと親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物の組成割合は、好ましくは0.1〜50重量部であり、より好ましくは0.5〜20重量部であり、さらに好ましくは1〜12重量部である。前記範囲においては層状珪酸塩の良好な微分散および熱安定性の向上が達成される。よって、C成分を前記の割合で含むことにより高剛性および熱安定性においてより優れた光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。そして、かかる熱安定性の向上は光拡散板の色相も良好とする。
【0122】
D成分である無機微粒子および高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤の組成割合は、A成分100重量部当り、0.1〜30重量部であり、好ましくは0.3〜20重量部であり、さらに好ましくは0.4〜15重量部であり、特に好ましくは0.5〜10重量部である。かかるD成分の組成割合が前記範囲にある場合に好ましい光拡散機能が実現する。
【0123】
したがって、本発明の樹脂組成物における各成分の最適な組成割合は、A成分100重量部当り、B成分1〜9重量部、C成分1〜12重量部、D成分0.5〜10重量部である。
【0124】
<必要により配合し得る付加的成分について>
本発明の樹脂組成物は、A成分である前記の芳香族ポリカーボネート、B成分である前記層状珪酸塩、並びに、D成分である前記光拡散粒子にて構成され、好ましくは、これらに加えて前記C成分により構成されるが、さらに、所望により付加的成分として、A成分およびC成分以外の重合体や、その他の添加剤を加えても差し支えない。かかる重合体としては、前記C成分以外のスチレン系樹脂および芳香族ポリエステル樹脂等を例示することができる。
【0125】
かかるスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(PS)(シンジオタクチックポリスチレンを含む)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましく使用され、なかでもABS樹脂が最も好ましい。これらスチレン系樹脂2種以上混合して使用することも可能である。
【0126】
芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等の他、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエチレンテレフタレート(いわゆるPET−G)、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレートのような共重合ポリエステルも使用できる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートが好ましい。また、成形性および機械的性質のバランスが求められる場合、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートが好ましく、さらに重量比でポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートが2〜10の範囲のブレンドや共重合体が好ましい。芳香族ポリエステル樹脂の分子量については特に制限されないが、o−クロロフェノールを溶媒として35℃で測定した固有粘度が0.4〜1.2、好ましくは0.6〜1.15である。
【0127】
さらに、本発明の目的または効果を損なわない範囲で、前記スチレン系樹脂や芳香族ポリエステル樹脂以外にも、その他の非晶性熱可塑性樹脂や結晶性熱可塑性樹脂を含むことができる。また、必要に応じて、難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、シリコーン系難燃剤等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物、イオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、染料、帯電防止剤、流動改質剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等)、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤、蛍光増白剤等を配合してもよい。
【0128】
前記染料類については、好ましい染料として、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料およびフタロシアニン系染料等が例示される。さらに、アンスラキノン系染料、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、チオキサントン系染料等に代表される各種の蛍光染料が例示される。また、蛍光増白剤としては、ビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体およびクマリン誘導体等の蛍光増白剤が例示される。
【0129】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、リン含有熱安定剤を含むことが好ましい。かかるリン含有熱安定剤としてはトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル、並びに、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル等が例示される。かかるリン含有熱安定剤は全組成物100重量%中0.001〜1重量%を含むことが好ましく、0.01〜0.5重量%を含むことがより好ましく、0.01〜0.2重量%を含むことがさらに好ましい。かかるリン含有熱安定剤の配合により樹脂組成物の熱安定性がさらに向上し、良好な成形加工特性を得ることができる。
【0130】
<樹脂組成物の調製について>
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を調製するには、任意の方法が採用される。例えば、樹脂組成物の製造法として、前記各成分並びに任意に配合する他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等を挙げることができる。予備混合では、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練しペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器等を用いることができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより、強力なせん断力で層状珪酸塩が基体樹脂中に微分散される。
【0131】
さらに、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練においては次の態様がより好適である。すなわち、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)と、A成分の芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)、殊に好適にはカルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C-1成分)とを予め溶融混練しておき、該溶融混練物とA成分の芳香族ポリカーボネート並びにD成分の無機微粒子および/または高分子微粒子とを溶融混合する。D成分は必要に応じてサイドフィーダー等を用いて多軸押出機の途中から溶融した樹脂中に供給することもできる。かかる溶融混練方法は、層状珪酸塩の微分散を達成し、さらに芳香族ポリカーボネートの熱安定性を向上させるため好ましい。
【0132】
もちろん他の混合方法によっても本発明の効果は発揮される。例えば、A成分とD成分との樹脂組成物のペレットとB成分とC成分とを予め溶融混練したペレットとを成形加工機(例えば射出成形機)に同時に供給して成形加工機中において混合する製造方法が挙げられる。
【0133】
このようにD成分はどの段階で配合しても差し支えないが、D成分が少量であるため、その計量精度を確保する目的で、例えば、A成分の一部にD成分を一定量添加したマスターペレットを予め作成しておき、これを最終樹脂組成物中のD成分含有量が所定値となる割合にて、他の成分ともに押出機に供給して溶融混練し樹脂組成物のペレットとする方法が適当である。
【0134】
本発明の樹脂組成物の有利な製造法の例としては、(i)B成分とC成分とをベント式二軸押出機にて溶融混練しペレット化したものを、再度A成分と溶融混練する方法、(ii)B成分とC成分とをベント式二軸押出機の主供給口より投入し、A成分の一部または全部を二軸押出機の途中段階に設けられた供給口から、B成分とC成分が既に溶融混練された状態の中へ投入する方法等、を挙げることができる。これらB成分とC成分を予め溶融混練する方法においては、その溶融混練時に、A成分の一部を含んでいても構わない。さらに前記(i)および(ii)のいずれの方法においても、D成分すなわち無機微粒子および/または高分子微粒子からなる光拡散剤は、押出機のスクリュー根元部分から樹脂原料等と供給されることもでき、また押出機の途中の位置から供給されることもできる。
【0135】
また、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は通常高度な光学的特性を要求される分野に使用されることが多いことから、かかる光学特性を阻害する異物の存在を少なくすることが好ましい。かかる好ましい樹脂組成物を得るためには、原料として異物量の少ないものを使用するとともに、押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すると共に、冷却バス用の冷却水についても異物量の少ないものを使用し、さらに原料の供給ホッパー、供給流路や、得られたペレットの貯蔵タンク等についてもより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば、特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることが適当である。
【0136】
<樹脂組成物の特性>
本発明による光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、極めて特異な溶融粘度特性を有し、そのため該樹脂組成物は押出成形、ブロー成形および薄肉成形品のための射出成形に極めて好適である。光拡散機能を有する成形品は、シート形状で使用される場合が多いことから、かかる本発明の樹脂組成物の有する特性は極めて好ましく、この樹脂組成物を用いることで良好な表面平滑性を有する光拡散性シート状成形品が提供される。かかる成形性の点においても本発明の樹脂組成物は、通常の無機充填材を使用した従来の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に対して有利である。
【0137】
すなわち、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、その複素粘性率比(log[ηa/ηb])が下記数式(1)を満足する。
log[ηa/ηb]≧0.5
(ここで、ηaおよびηbは、240℃の温度で平行円板形回転型レオメーターで測定された複素粘性率(Pa・s)を示し、ηaおよびηbは、それぞれ角周波数1rad/sおよび102rad/sで測定された複素粘性率を示す。)
【0138】
そして、上記数式(1)の複素粘性比率を満足する樹脂組成物は、これを溶融射出成形して薄肉成形品を製造することが可能である。
【0139】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物から形成された成形品は、良好な光拡散性を有するだけでなく、向上した剛性および優れた表面外観(表面平滑性)を有し、さらに良好な熱安定性を有する。したがって、この樹脂組成物からの光拡散性成形品は、実用上問題のない幅広い成形加工条件の下で製造され、かつ良好な剛性および良好な表面外観を有する。
【0140】
より具体的には、本発明によれば、その表面のJIS B0601に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が0.1μm以下、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が本発明の樹脂組成物を構成するA成分(芳香族ポリカーボネート)のみより形成された成形品の値の1.2倍以上に向上した表面平滑性の良好な成形品を提供することができる。曲げ弾性率の値は、好ましい態様では樹脂組成物を構成するA成分のみより形成された成形品の曲げ弾性率の値に比べて1.3以上、さらに好ましい態様では1.4〜2.8倍に向上する。かくして本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からの成形品の曲げ弾性率の値は2,500MPa以上、好ましい態様では2,800MPa以上となり、より好ましい態様では3,000MPa以上となる。一方、その上限は、8,000MPaが適切であり、7,000MPaが好ましく、6,000MPaがより好ましい。
【0141】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、通常、前記の如く製造されたペレットを射出成形することにより、光拡散機能が求められる各種の製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形等の射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0142】
また、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形により光拡散機能を有する各種異形押出成形品、シート、フィルム等の形で使用することもできる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により中空成形品とすることも可能である。
【0143】
<光拡散板について>
本発明の樹脂組成物は面積の大きな光拡散板用に適しており、好適な用途として表面積500〜50,000cm2である光拡散板が挙げられる。光拡散版の好ましい表面積は1,000〜25,000cm2であり、好ましい厚みは0.3〜3mmである。
【0144】
したがって、本発明によれば、前記の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなり、かかる面積を有し、寸法安定性が高く、また薄肉であっても十分な形状保持性を有し、その結果として軽量な光拡散板が提供される。
【0145】
本発明によれば、さらに好適な態様として、前記光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなり、面積500〜50,000cm2(より好適には1,000〜25,000cm2)の表示装置用光拡散板が提供される。表示装置用光拡散板としては、液晶表示装置等バックライトモジュールに使用される光拡散板およびプロジェクターテレビ等投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板が例示される。バックライトモジュールは各種の光源が使用でき冷陰極管やLEDが使用される。
【0146】
上述の本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物からなる光拡散板は、その表面がフレネルレンズ形状やシリンドリカルレンズ形状等の表面形状を有するものであってもよく、またかかる形状を別途他の材料によって積層した積層板とすることも可能である。本発明の樹脂組成物に直接フレネルレンズ形状やシリンドリカルレンズ形状を付与する場合、かかる樹脂組成物を用いて射出成形、圧縮成形、押出成形等の成形方法により所望の形状に成形することができる。さらに、射出成形、圧縮成形、押出成形により表面にフレネルレンズのための凹凸を形成する方法としては、(1)金型キャビティ表面や転写ロール表面にかかるフレネルレンズ形状等に対応する凹凸が設けられ、かかる凹凸が樹脂成形品表面に転写される方法、(2)フレネルレンズ形状等に対応する凹凸が設けられた別材料が金型キャビティ内にインサートされるか、または押出時に積層され、樹脂成形品と一体化された後、かかる別材料が除去されて樹脂成形品表面に凹凸が設けられる方法、等が例示される。
【0147】
また、場合によっては、かかるスクリーンは光輝性顔料を含む層を積層することにより、その表面凹凸によるレンズを省略することも可能である。さらに、本発明に係る表示装置用光拡散板は、その光源側(観察者とは反対の面)に光源からの光の反射を防止するため各種の光反射防止膜を形成することができる。
【0148】
<他の用途について>
さらに、本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、上述した光拡散板のほかにも、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器および雑貨等の各種用途に有用である。表示装置用の光拡散板以外の用途としては、例えば、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置、車輌用屋根材、船舶用屋根材、住宅用屋根材および太陽電池カバー等が例示される。
【0149】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、表面改質を施すことによりさらに他の機能を付与することが可能である。ここでいう「表面改質」とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、印刷等の手段で樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させることを言い、通常の樹脂成形品に用いられる表面改質方法が適用できる。成形品の表面に金属層または金属酸化物層を積層する方法としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法、溶射法およびメッキ法が挙げられる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリングおよびイオンプレーティングが例示され、化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法および光CVD法等が例示される。また、溶射法としては大気圧プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法等が例示される。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキおよび電気メッキ法等が挙げられ、電気メッキ法においてはレーザーメッキ法を用いることができる。
【0150】
前記方法のなかでも蒸着法およびメッキ法が本発明の樹脂組成物からなる成形品の金属層を形成する上で好ましく、蒸着法が金属酸化物層を形成する上で好ましい。蒸着法およびメッキ法はこれらを組合せて使用することも可能であり、例えば、蒸着法で形成された金属層を利用し電気メッキを行う方法等も採用することができる。
【0151】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、樹脂組成物および成形品の評価は下記(1)〜(6)の方法により行った。また、例中において単に“部”とあるは、特に断らない限り、重量部を意味する。
【0152】
(1)曲げ弾性率
長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mmの試験片を成形し、温度23℃および相対湿度50%RHの雰囲気下においてASTM−D790に準拠の方法により曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0153】
(2)線膨張係数および線膨張異方性
板状成形品(成形品寸法:長さ150mm×幅150mm×厚み3mm)を110℃で3時間アニール処理した後、かかる成形品のほぼ中央部から線膨張係数測定用試験片(試験片寸法:長さ5mm×幅5mm×厚み3mm)を切り出した。かかる試験片を用いた以外はJIS K 7197に準拠して線膨張係数を測定した。測定は30℃〜110℃まで行い、そのうち40℃と80℃との間の寸法変化率を線膨張係数とした。なお、測定は「TAインスツルメント2940型」熱機械分析装置(TAインスツルメント製)を使用し、ゲートに対して流れ方向と直角方向の2方向の測定を実施した。この値が小さいほど寸法安定性が良好であると言える。
【0154】
上述のように測定した線膨張係数より次式に基づき線膨張係数の異方性(線膨張異方性)を算出し評価した。かかる値が0に近いほど異方性の低い材料であると言える。
(線膨張異方性)=(直角方向の線膨張係数)−(流れ方向の線膨張係数)
【0155】
(3)分散度
光拡散評価用板状試験片(成形品寸法:長さ150mm×幅150mm×厚み1.5mm)を用い、日本電色工業(株)製の分散度測定計を使用して、その分散度を測定した。ここで「分散度」とは光線を試験片の上方から垂直に(試験片の法線と平行に)試験片面に当てた際、かかる入射光線方向(法線方向:角度γ=0°)の透過光量を100としたとき、透過光量が50になるときの該透過光の方向と法線とのなす角度をいう。かかる角度が大きいほど光が幅広い角度に散乱し光拡散機能が優れることを示す。
【0156】
(4)全光線透過率
上記(3)と同じ板状試験片を用いて、村上色彩技術研究所(株)製のヘーズメーターHR−100を使用して、その厚み方向の透過率をASTM−D1003に従い測定した。
【0157】
(5)拡散光の均一性
上記光拡散評価用板状試験片の下側に冷陰極管から構成されたバックライトユニットを置き、上側から観察される光の均一性について観察した。均一性が良好であるものを○、均一性の低いものを×として評価した。
【0158】
(6)成形品の算術平均粗さ(Ra)
上記光拡散評価用板状試験片の算術平均粗さ(Ra)を、JIS B0601-1994に準拠して、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製:サーフコム1400A)を用いて測定した。この値が小さいほど成形品の表面平滑性が優れていることを示す。
【0159】
〔実施例1〜4、6、8、比較例1〜6〕
一部の実験例(比較例1〜6)においては、後掲の表1に記載した各成分を同表に記載した配合割合でポリエチレン袋中に量り入れ、かかる袋を上下方向および左右方向に十分に回転させることにより、各成分を均一にドライブレンドした。このドライブレンドされた混合物から押出機を用いて溶融混練しペレットを製造した。この際、押出機としてスクリュー直径30mmのベント付2軸押出機((株)日本製鋼所製「TEX30XSST」;完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を用い、排出量は20,000g/hrに設定した。押出温度は全ての区間を250℃とし、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaとした。前記の方法を表1中“方法1”と称する。
【0160】
一方、他の実験例(実施例1〜4、6、8)においては、B成分とC成分を前記と同様の装置を用いて溶融混練し一旦ペレット化(シリンダー温度200℃)した後に、かかるペレットとA成分等の他の成分とを混合する方法によって、前記と同様の装置および条件にてペレットを作成した。かかる方法を表1中“方法2”と称する。
【0161】
なお、全ての実験例において、A成分100重量部に対して、トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製:「TMP」)0.1重量部、ホスホナイト系熱安定剤(Sandoz社製:「サンドスタブP−EPQ」)0.05重量部およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ケミプロ化成(株)製:「ケミソーブ79」0.2重量部を配合した。
【0162】
得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した後、所定の試験片を射出成形機(住友重機械工業(株)「SG−150U」)を用いて作成した。成形条件はシリンダー温度260℃、金型温度100℃、射速30mm/秒、および保圧50MPa前後とした。これらについての評価結果をまとめて後掲の表1に示す。
なお、表1記載の各成分を示す記号は、それぞれ下記のものを意味する。
【0163】
(A成分)
〔PC−1〕:粘度平均分子量19,700のビスフェノールA型芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂パウダー(帝人化成(株)製「パンライトL−1225WX」)〔PC−2〕:下記方法により製造された4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“BTC”と略称)からなる共重合芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂パウダー
〔PC−2の製造法〕:温度計および撹拌機付き反応器にイオン交換水22600部および48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液2700部を仕込み、これにBPM2518部およびBTC2001部およびハイドロサルファイト10部を溶解した後、塩化メチレン14121部を加えて激しく撹拌しながら25℃でホスゲン1631部を約40分かけて吹込み反応させた。ホスゲン吹き込み終了後、反応系の温度を28℃に上げてp−tert−ブチルフェノール90.0部を加えて乳化させた後、トリエチルアミン3部を加えて1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところでニーダーにて塩化メチレンを蒸発させることにより、BPMとBTCのモル比が53:47である無色の共重合芳香族ポリカーボネートパウダー4600部を得た。このパウダーの粘度平均分子量は14,500であった。
【0164】
(B成分)
〔B−1〕:トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライドでほぼ完全にイオン交換された有機化合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:「ソマシフ MTE」、合成フッ素雲母の陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
〔B−2〕:下記製法で製造されたトリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライドで陽イオン交換容量の55%分がイオン交換された有機化合成フッ素雲母(合成フッ素雲母の陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
〔B−2の製造法〕:合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製「ソマシフ ME−100」)約100部を精秤してこれを室温の水(イオン交換水)10 ,000部に撹拌分散し、ここに前記オニウムイオンのクロライド(トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド)を合成フッ素雲母の陽イオン交換当量に対して0.8倍当量を添加して6時間撹拌した。生成した沈降性の固体を濾別し、次いで30,000部のイオン交換水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を各3回行った。得られた固体は5日の風乾後乳鉢で粉砕し、さらに50℃の温風乾燥を10時間行い、再度乳鉢で最大粒径が100μm程度となるまで粉砕した。かかる温風乾燥により窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が3重量%とし、B−2を得た。
〔B−3〕:下記製法で製造されたジメチルジ−n−デシルアンモニウムクロライドイオンでほぼ完全にイオン交換された有機化合成フッ素雲母(合成フッ素雲母の陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
〔B−3の製造法〕:前記B−2の製造法において、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライドに代えて、ジメチルジ−n−デシルアンモニウムクロライドを合成フッ素雲母の陽イオン交換当量に対して1.2倍当量を添加した以外は、前記B−2の場合と同様にして製造した。
【0165】
なお、表1中に示す樹脂組成物全量中におけるB成分の無機分の割合(重量%)は、B成分中に占める無機分の割合と樹脂組成物中のB成分の配合量とから計算で求めた値である。
【0166】
(C成分)
〔C−1〕:スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)製:「DYLARK 332−80」、無水マレイン酸量約15重量%)
〔C−2〕:(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)−スチレン−アクリロニトリル共重合体((株)日本触媒製:「EPOCROS RAS−1005」、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン量約5重量%)
【0167】
(D成分)
〔D−1〕:ビーズ状架橋アクリル粒子(積水化成品工業(株)製:「MBX−5」、平均粒径:5μm)
〔D−2〕:ビーズ状架橋シリコーン粒子(東芝シリコーン(株)製:「トスパール120、平均粒径:2μm」)
〔D−3〕:ビーズ状ガラス中空粒子(東芝バロティーニ(株)製:「HSC−110」)
〔D−4〕:炭酸カルシウム粒子(シプロ化成(株)製:「シプロンA」、重量平均粒子径10μm)
(その他の成分)
〔GF〕:ガラス繊維(日本電気硝子(株)製:「ECS−03T−511」、繊維径13μm、カット長3mm)
【0168】
【表1】
【0169】
表1に示す結果から、本発明に係る樹脂組成物(実施例1〜8)からなる成形板は、曲げ弾性率で評価される剛性が高く、かつ、線膨張係数および線膨張異方性で評価される寸法安定性、分散度および光透過率で評価される光拡散性、並びに、Ra(表面粗さ)で評価される表面平滑性、のすべてにおいて優れており、光拡散板として極めて有用であることがわかる。これに対し、従来の芳香族ポリカーネート樹脂(比較例1)や本発明の要件を満たさない樹脂組成物(比較例2〜4)からの成形板は、前記特性の1つまたはそれ以上に問題があるため、光拡散板として不適当であることが明らかである。
【0170】
[実施例9]
次に、前記実施例1の芳香族ポリカーボネ―ト樹脂組成物を用いて、光拡散板としての板状成形品(寸法:長さ450mm×幅450mm×厚み1.5mm)を作成した。この際、成形機として、型締め力12700kNの(株)日本製鋼所製「J1300E−C5−I5A」射出成形機(型圧縮可能なように油圧回路および制御システムを変更した仕様)を使用した。ゲートは長さ(幅)450mmかつ最終厚み1.5mmで、流動方向の長さが50mmのファンゲートであり、そのゲート中央部の端にホットランナー口を有するものであった。かくして射出プレス成形法により前記の板状成形品を成形した。成形時のホットランナー部分の温度はシリンダー温度に対して20℃高い温度とした。
【0171】
成形は型圧縮法で行い、樹脂の射出容量はキャビティ容量拡大がない場合とほぼ同じとした。すなわち、拡大されたキャビティに溶融樹脂が完全に充填されない状態で型圧縮法による射出プレス成形を行った。成形条件は、シリンダー温度260℃、金型温度100℃、射出速度50mm/sec、プレスストローク(キャビティ容量拡大のための金型後退幅)4mm、プレス速度(キャビティ容量減少のための金型前進速度)5mm/sec、オーバーラップ時間(キャビティ容量減少(圧縮)開始から射出工程が終了するまでの時間)0.6sec、冷却時間30secとした。また、ランナーはモールドマスターズ社製のホットランナー(直径3mmφ)を用い、充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて型圧縮により溶融樹脂がゲートからシリンダーへ逆流しない条件とした。成形サイクルは約60秒であった。なお、成形品の両側面に対応する金型キャビティには、電気ヒーターを配して、金型表面の温度を一時的に150℃以上とする制御を行って成形した。該光拡散板を所定の大きさに切り出し、21インチ型のバックライト型表示装置の光拡散板としての特性を確認し、その有効性が確認された。
【0172】
[実施例10]
さらに、実施例1の樹脂組成物と、比較例4の樹脂組成物を用いて押出成形によるシートの作成を行った。いずれも、樹脂組成物のペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥後、先端にシート用Tダイを取付けた径40mmφの単軸押出機を用い、スクリュー回転数40rpmにて押出し、幅250mm、厚み500μmのシートの押出成形を試みた。実施例1の樹脂組成物においては良好な表面平滑性を有するシートが得られたが、比較例4の樹脂組成物では均一なシートが得られなかった。
【0173】
【発明の効果】
本発明の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物は、従来にない高剛性かつ良好な光拡散性を有する樹脂組成物であり、特に大型で高い寸法安定性の要求される表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置等バックライトモジュールに使用される光拡散板、プロジェクターテレビ等投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板等)として特に好適である。また、かかる特性は、表示装置用の光拡散板以外にも、例えば、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置、車輌用屋根材、船舶用屋根材、住宅用屋根材、太陽電池カバー、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器および雑貨を含む幅広い分野において有用であり、その奏する産業的価値は極めて高いと言うことができる。
Claims (9)
- (A)芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部当り、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜20重量部、(C−1)カルボキシル基および/またはその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C−1成分)0.1〜50重量部、並びに(D)無機微粒子および高分子微粒子から選択される少なくとも1種からなる光拡散剤(D成分)0.1〜30重量部を含み、かつB成分とC−1成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物とA成分および残りの成分とを溶融混練して調製されたものであることを特徴とする光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記B成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつその陽イオン交換基の少なくとも40%が有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記B成分における有機オニウムイオンは、上記一般式(I)において、R1およびR2がそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、R3が炭素原子数1〜16のアルキル基、R4が炭素原子数1〜4のアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記C-1成分は、スチレン−無水マレイン酸共重合体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記D成分は、平均粒子径50μm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記D成分は、高分子微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物より形成された面積500〜50,000cm2であることを特徴とする光拡散板。
- 前記光拡散板は、表示装置用であることを特徴とする請求項8に記載の光拡散板。
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