JP3976617B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶性熱可塑性樹脂および層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩からなり、かつ該層状珪酸塩が特定の分散構造を有する熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる樹脂成形品に関する。殊に本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂および有機化層状珪酸塩からなり、かつ該層状珪酸塩が特定の分散構造を有する熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、無機充填剤として粘土鉱物、特に層状珪酸塩を用い、その層間イオンを各種の有機オニウムイオンにイオン交換させ樹脂中への分散を容易にすることにより、成形品の表面外観や比重を良好に保ったまま、機械特性を改良する試みが、特にポリアミド系樹脂やポリオレフィン系樹脂において多くなされており、それらにおいては実用例も見ることができる。
【0003】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物においても、特開平03−215558号、特開平07−207134号、特開平07−228762号、特開平07−331092号、特開平09−143359号、および特開平10−60160号公報などが開示され、使用する有機オニウムイオンや混合方法を工夫することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中における分散性を改良しようとする方法が提案されている。
【0004】
特に、特開平07−207134号公報では、炭素数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンをゲストとした層状珪酸塩が、また特開平07−228762号公報では、PEG鎖を有する有機オニウムイオンをゲストとした層状珪酸塩が用いられ、該層状珪酸塩を用いて得られた樹脂組成物は、表面外観性が優れることも示されている。
【0005】
また特開平09−143359号公報には、層状珪酸塩の底面間隔が樹脂組成物中において広がりを見せていることを記載している。更に特開2000−239397号公報には、特定の製造法から形成された芳香族ポリカーボネート樹脂および層状珪酸塩からなり押出成形により製造されたシートが開示され、かかるシート中の層状珪酸塩は1〜5層の層からなる極めて良好な分散形態を有することが記載されている。
【0006】
しかしながら、これら層状珪酸塩などを微分散させた芳香族ポリカーボネート樹脂の樹脂組成物は、いずれも十分な熱安定性を有するものではなく実用性に乏しいのが現状であった。すなわち、無機充填材などを含まない樹脂単体と同等の良好な表面外観を有し、強化充填材で強化した樹脂と同等の剛性を有し、かつ実用上十分な熱安定性を示す非晶性熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は得られていないのが現状であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を鑑みた上で、層状珪酸塩を従来にない微分散状態を達成した非晶性熱可塑性樹脂の樹脂組成物であって、良好な剛性を有し、良好な表面外観(表面平滑性)を有し、更に良好な熱安定性を有する熱可塑性樹脂組成物、殊に芳香族ポリカーボネート樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に層状珪酸塩を分散させたものであって、層状珪酸塩の層間距離を分散前よりも減少したものとすること、即ち従来の層状珪酸塩を配合した樹脂組成物では達成できない分散状態を創出することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明者らはかかる発見より更に鋭意検討を行い、本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)(A)非晶性熱可塑性樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部からなる樹脂組成物であって、かつ(i)B成分はその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有し、かつ(ii)樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さいことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0010】
本発明は、(2)(A)非晶性熱可塑性樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部からなる樹脂組成物であって、かつ(i)B成分はその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有し、かつ(ii)樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さいことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
【0011】
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記熱可塑性樹脂組成物は、更にA成分100重量部あたり、(C)A成分の非晶性熱可塑性樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)0.1〜50重量部を含んでなる上記(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記A成分は芳香族ポリカーボネート樹脂である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記C成分は、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体である上記(3)または(4)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記B成分とC成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物とA成分とを多軸押出機を用いて溶融混練してなる上記(3)〜(5)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂組成物より形成された樹脂成形品であって、その表面のJISB0601に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が、0.1μm以下、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が、2,500MPa以上であることを特徴とする樹脂成形品である。
【0016】
以下本発明の詳細を説明する。
【0017】
本発明において非晶性熱可塑性樹脂(A成分)としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体から主としてなる樹脂)、SMA樹脂(スチレン−無水マレイン酸共重合体から主としてなる樹脂)、MS樹脂(メチルメタクリレート−スチレン共重合体から主としてなる樹脂)およびABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体から主としてなる樹脂)、および芳香族ポリカーボネート樹脂などの非晶性エンジニアリングプラスチックなどが例示される。
【0018】
更に本発明において好ましい非晶性熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が120℃以上の非晶性熱可塑性樹脂である。かかるTgはより好ましくは130℃以上、更に好ましくは140℃以上である。一方かかるTgは280℃以下が適切であり、250℃以下が好ましい。かかる高いTgの非晶性熱可塑性樹脂は高温の成形加工温度を必要とし、その熱安定性の改良はより求められるところである。尚、本発明におけるガラス転移温度はJIS K7121に規定される方法にて測定されたものである。
【0019】
上記の非晶性熱可塑性樹脂の好ましい態様としては、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリアミノビスマレイミド樹脂、などが例示される。更に好ましくは、これらの中でも成形加工性に優れ、より広範な分野に適用が可能な芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂が例示される。本発明の非晶性熱可塑性樹脂としては、上記の中でも機械的強度に特に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ABS樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの他の熱可塑性樹脂を1種以上組み合わせても用いることができる。
【0020】
本発明のA成分の非晶性熱可塑性樹脂として特に好適な芳香族ポリカーボネート樹脂について説明する。
【0021】
本発明に用いられるA成分の代表例としての芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0022】
二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどを挙げることができる。特に、ビスフェノールAの単独重合体を挙げることができる。かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性が優れる点で好ましい。
【0023】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0024】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させて芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0025】
分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0026】
更に芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。脂肪族の二官能性カルボン酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族の二官能性カルボン酸が挙げられる。かかる脂肪族の二官能性のカルボン酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。
【0027】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0028】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体など各種の芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。更に下記に示す製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0029】
芳香族ポリカーボネートの重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0030】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0032】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0033】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。更にアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0034】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0035】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩なとが好ましく挙げられる。
【0036】
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は特定されない。しかしながら粘度平均分子量は、10,000未満であると強度などが低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、15,000〜28,000の範囲が更に好ましい。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートとを混合することも当然に可能である。すなわち、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量の芳香族ポリカーボネート成分を含有することができる。
【0037】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0038】
尚、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は次の要領で行う。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、かかる可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上式により算出される20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求めることにより測定する。
【0039】
本発明のB成分は50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有しする層状珪酸塩である。更に本発明において好適には、本発明のB成分は50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩である。尚、以下“陽イオン交換容量を有し、かつ有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩”を、単に“有機化層状珪酸塩”と称する場合がある。
【0040】
B成分の層状珪酸塩は、SiO2連鎖からなるSiO4四面体シート構造とAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造との組み合わせからなる層からなり、その層間に交換性陽イオンの配位した珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)である。これらは例えば、スメクタイト系鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、および膨潤性雲母などに代表される。具体的には、スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等が、膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられる。これら層状珪酸塩は、天然のものおよび合成されたもののいずれも使用可能である。合成品は、例えば水熱合成、溶融合成、固体反応によって得ることができる。
【0041】
層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、50〜200ミリ当量/100gである必要があるが、好ましくは80〜150ミリ当量/100g、さらに好ましくは100〜150ミリ当量/100gである。陽イオン交換容量は、土壌標準分析法として国内の公定法となっているショーレンベルガー改良法によってCEC値として測定される。層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、非晶性熱可塑性樹脂、殊に芳香族ポリカーボネート樹脂への良好な分散性を得るためには、50ミリ当量/100g以上の陽イオン交換容量が必要であるが、200ミリ当量/100gより大きくなると、非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化が大きくなり、殊に本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化への影響が大きくなってくる。
【0042】
層状珪酸塩は、そのpHの値が7〜10であることが好ましい。pHの値が10より大きくなると、本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性を低下させる傾向が現れてくる。
【0043】
これらの層状珪酸塩の中でも、陽イオン交換容量などの点から、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性を持ったフッ素雲母が好適に用いられ、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトや合成フッ素雲母が、純度などの点からより好適である。更に、良好な機械特性が得られる合成フッ素雲母が特に好ましい。
【0044】
B成分の層状珪酸塩は、有機オニウムイオンが層状珪酸塩の層間にイオン交換されたものが好適である。該有機オニウムイオンは、通常ハロゲンイオン等との塩として取り扱われる。ここで有機オニウムイオンとしては、例えばアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられ、オニウムイオンとしては1級、2級、3級、4級のいずれも使用できるが、4級オニウムイオンが好ましい。またオニウムイオンとしてホスホニウムイオンを用いると、本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化が小さいという利点を得ることができる。したがって本発明の有機オニウムイオンとしては有機ホスホニウムイオンがより好適である。
【0045】
該イオン化合物には各種の有機基が結合したものが使用できる。有機基としてはアルキル基が代表的であるが、芳香族基をもったものでもよく、またエーテル基、エステル基、二重結合部分、三重結合部分、グリシジル基、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン環など各種官能基を含有したものでもよい。
【0046】
有機オニウムイオンの具体例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の同一のアルキル基を有する4級アンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、およびトリメチルイコサニルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリメチルオクタデセニルアンモニウム等のトリメチルアルケニルアンモニウム、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム等のトリメチルアルカジエニルアンモニウム、トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、およびトリエチルオクタデシルアンモニウム等のトリエチルアルキルアンモニウム、トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、およびトリブチルオクタデシルアンモニウム等のトリブチルアルキルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、およびジメチルジオクタデシルアンモニウム等のジメチルジアルキルアンモニウム、ジメチルジオクタデセニルアンモニウム等のジメチルジアルケニルアンモニウム、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム等のジメチルジアルカジエニルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、およびジエチルジオクタデシルアンモニウム等のジエチルジアルキルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、およびジブチルジオクタデシルアンモニウム等のジブチルジアルキルアンモニウム、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム、ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム等のジベンジルジアルキルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、およびトリテトラデシルメチルアンモニウム等のトリアルキルメチルアンモニウム、トリオクチルエチルアンモニウム、およびトリドデシルエチルアンモニウム等のトリアルキルエチルアンモニウム、トリオクチルブチルアンモニウム、およびトリデシルブチルアンモニウム等のトリアルキルブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等の芳香族アミン由来の4級アンモニウム、メチルジエチル[PEG]アンモニウム、およびメチルジエチル[PPG]等のトリアルキル[PAG]アンモニウム、メチルジメチルビス[PEG]アンモニウム等のジアルキルビス[PAG]アンモニウム、エチルトリス[PEG]アンモニウム等のアルキルトリス[PAG]アンモニウム、並びに上記アンモニウムイオンの窒素原子がリン原子に置き換わったホスホニウムイオンが挙げられる。なお、これらの有機オニウムイオンは、単独の使用および2種以上の組合せの使用のいずれも選択できる。尚、上記“PEG”の表記はポリエチレングリコールを、“PPG”の表記はポリプロピレングリコールを“PAG”の表記はポリアルキレングリコールを示す。ポリアルキレングリコールの分子量としては100〜1,500のものが使用できる。
【0047】
これら有機オニウムイオン化合物の分子量は、100〜600であることがより好ましい。より好ましくは150〜500である。分子量が600より多いときには、場合により芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化を促進したり、樹脂組成物の耐熱性を損なってしまう傾向が現れる。尚、かかる有機オニウムイオンの分子量は、ハロゲンイオン等のカウンターイオン分を含まない有機オニウムイオン単体の分子量を指す。また有機オニウムイオン化合物構造中のアルキル基として、高級アルキル基を用いず、炭素数10以下のアルキル基を用いることも、芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制する上で好ましい方法であるが、層状珪酸塩の良好な分散のためには、炭素数6〜8のアルキル基を有することが好ましい。
【0048】
有機オニウムイオンの好ましい態様としては、トリメチル−n−オクチルアンモニウム、トリメチル−n−デシルアンモニウム、トリメチル−n−ドデシルアンモニウム、トリメチル−n−ヘキサデシルアンモニウム、トリメチル−n−オクタデシルアンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、エチルトリ−n−オクチルアンモニウム、ブチルトリ−n−オクチルアンモニウム、トリフェニルメチルアンモニウム、トリメチル−n−オクチルホスホニウム、トリメチル−n−デシルホスホニウム、トリメチル−n−ドデシルホスホニウム、トリメチル−n−ヘキサデシルホスホニウム、トリメチル−n−オクタデシルホスホニウム、メチルトリ−n−オクチルホスホニウム、エチルトリ−n−オクチルホスホニウム、ブチルトリ−n−オクチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等が挙げられる。
【0049】
層状珪酸塩への有機オニウムイオンのイオン交換は、極性溶媒中に分散させた層状珪酸塩に、有機オニウムイオンを添加し、析出してくるイオン交換化合物を収集することによって作製することができる。通常、このイオン交換反応は、有機オニウムイオン化合物を層状珪酸塩のイオン交換容量に対して、1.0〜1.5当量を加えて、ほぼ全量の層間の金属イオンを有機オニウムイオンで交換させるのが一般的であるが、この交換割合をより低い水準に抑えることも、芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制するうえで有効である。ここで有機オニウムイオンでイオン交換される割合は、層状珪酸塩のイオン交換容量に対して40%以上であることが好ましい。かかるイオン交換容量の割合は好ましくは40〜80%である。この交換割合が40%より小さいと、イオン交換化合物の合成が困難になる。
【0050】
有機オニウムイオンの交換割合は、交換後の化合物について、熱重量測定装置等を用いて、有機オニウムイオンの熱分解による重量減少を求めることにより算出することができる。
【0051】
本発明で用いられるB成分の層状珪酸塩の、A成分との組成割合は、A成分100重量部あたり0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部である。この組成割合が0.1重量部より小さいときには芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の機械特性の改良効果が見られず、また50重量部より大きくなると、組成物の熱安定性が低下し実用的な樹脂組成物は得られにくい。
【0052】
更に本発明の樹脂組成物は上記A成分およびB成分の所定量からなり、かつ(i)B成分はその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有し、かつ(ii)樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さいことを特徴とする。該特徴(ii)は詳しくはB成分のより好ましい態様である有機化層状珪酸塩においては、有機化層状珪酸塩を含有する樹脂組成物における層状珪酸塩の底面間隔が、有機化層状珪酸塩単独における層状珪酸塩の底面間隔に対して小さいことを特徴とする。
【0053】
上記(i)の特徴は、熱可塑性樹脂組成物の透過型電子顕微鏡撮影より求めることができる。すなわち、ミクロトームを用いて熱可塑性樹脂組成物を50〜100nmの厚みを有する観察試料とし、該観察試料を約10,000倍の倍率におい観察する。かかる観察写真から画像解析を行い層状珪酸塩の厚みを計測することにより上記(i)の特徴に関する知見を得ることができる。
【0054】
上記(i)の特徴において、B成分はその70%以上の数割合が100nm以下の厚みを有することが好ましく、80%以上の数割合が100nm以下の厚みを有することがより好ましい。100nm以下の厚みのものの数割合が60%に満たない場合は、本発明の特徴である良好な表面平滑性と剛性が得られなくなるため好ましくない。
【0055】
上記(ii)の特徴は、X線回折測定における回折線の回折角度からBraggの条件により求められる。層状珪酸塩の底面間隔およびX線回折測定については、たとえば「粘土ハンドブック」(日本粘土学会編:技報堂出版)などに記載されている。有機化層状珪酸塩のX線回折測定を行うには、粉末状の試料を試料台に充填して測定することができ、また組成物中の層状珪酸塩のX線回折測定を行うには、組成物を例えば射出成形や押出成形などで平板に成形した後、平面部分を試料台開口部に、測定基準面と同一になるよう試料を設置し測定することができる。
【0056】
上記(ii)の特徴、すなわち樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さいとは、その底面間隔がX線回折測定において、その底面間隔に由来する回折ピークの回折角度(2θ)が大きくなることを指す。より好ましくはその回折角度(2θ)の差が0.1°以上あることを指し、更に好ましくはその回折角度(2θ)の差が0.2°〜4°の範囲にあることを指す。またその底面間隔の縮小幅の絶対値としては0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、0.7nm以上が更に好ましい。一方上限は1.5nm以下が好ましく、1.2nm以下がより好ましい。
【0057】
層状珪酸塩は樹脂組成物中においてある程度その層間で剥離し微分散する。その結果上記樹脂中の回折ピークはその層間が増加した(回折角度がB成分単独に比較して減少した)成分を含む場合がある。本発明の熱可塑性樹脂組成物は上記(ii)の特徴を有した上で、かかる層間の増加した回折ピークを有するものであってもよい。しかしながら層間がB成分単独に比較して大きくなった層状珪酸塩に由来する回折強度のピーク(Ib)に対し、層間がB成分単独に比較して小さくなった層状珪酸塩に由来する回折強度のピーク(In)が大きいことが好ましい。より好ましくは両者の比にIb/Inが0.5以下であり、更に好ましくはIb/Inが0.1以下である。他の回折ピークが見られない場合もあることからIb/Inは0を取り得る。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、有機化層状珪酸塩を微分散させる(上記(i)の特徴)一方、該有機化層状珪酸塩の層間を縮める(上記(ii)の特徴)ことにより、良好な剛性を有し、良好な表面外観(表面平滑性)を有し、更に良好な熱安定性を有する熱可塑性樹脂組成物を得るに至ったものである。特に上記(ii)の特徴は、熱可塑性樹脂組成物の熱安定性に大きく寄与していると考えられる。すなわち本発明の熱可塑性樹脂組成物がその熱安定性において良好である原因は、層状珪酸塩の層同士が互いに引き合うことにより層間に存在するイオン成分が外部に露出することなく層状珪酸塩の内部にとどまることにあると推定される。イオン成分は芳香族ポリカーボネート樹脂などの基体樹脂の劣化を促進する因子であると考えられる。
【0059】
芳香族ポリカーボネート樹脂などの樹脂に層状珪酸塩を微分散させた樹脂組成物は、従来単に有機化層状珪酸塩などを層間部分で剥離させ、基体樹脂中において出来る限り微分散させることを課題としていた。したがって実用上の熱安定性については考慮されていないか、実際には不十分な場合が多かった。本発明においては、上記の推定部分に記載した技術的概念に基づき層間を敢えて縮める方法を用いることで、良好な分散性に基づく性能と熱安定性などの実用性とを両立することを可能とした。
【0060】
本発明における上記(ii)の特徴を達成する方法としては例えば次の方法が例示される。▲1▼層間が引き合う成分を層間に導入して層間距離を縮める(第3成分を配合する)。▲2▼層間に挿入された有機化剤同士を反応させ層間を引き合わせ層間距離を縮める。かかる反応方法としては電子線や放射線の照射などが挙げられる。特に低温下において照射することが好ましい。ここで特に▲1▼の方法が簡便であり好適である。またかかる▲1▼および▲2▼の方法は、予めA成分と混合する前に行うことができ、A成分と混合するときに行うこともできる。予めA成分と混合する前に行う方法がより好ましい。
【0061】
上記▲1▼の方法における第3成分としては、A成分の非晶性熱可塑性樹脂と親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物が好適である。したがって本発明はより好適には、更にA成分100重量部あたり、(C)A成分の非晶性熱可塑性樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)0.1〜50重量部を含んでなる熱可塑性樹脂組成物(上述した(2)の発明)を挙げることができる。
【0062】
本発明のC成分は、非晶性熱可塑性樹脂(A成分)との親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物である。C成分のかかる構成は、非晶性熱可塑性樹脂および層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩の双方に対する良好な親和性を生み出す。非晶性熱可塑性樹脂および層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩双方に対する親和性は2種の成分の相溶性を向上させ、層状珪酸塩は非晶性熱可塑性樹脂中での微細かつ安定して分散するようになる。更に親水性成分はその極性作用により層状珪酸塩の層間の電気的な反発力を中和することにより、または該層間の電荷を吸引することにより層間を縮小させると考えられる。
【0063】
有機化層状珪酸塩の分散に関するかかるC成分の働きは、異種ポリマー同士を相溶化させるために使用されるポリマーアロイ用相溶化剤(コンパティビライザー)と同様である。したがってC成分は低分子化合物よりも単量体が重合してなる重合体であることが好ましい。また重合体は混練加工時の熱安定性にも優れる。重合体の平均繰り返し単位数は2以上であることが必要であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。一方、重合体の平均分子量の上限においては数平均分子量で2,000,000以下であることが好ましい。かかる上限を超えない場合には良好な成形加工性が得られる。
【0064】
本発明のC成分の基本的構造としては、例えば次の構造(i)および(ii)を挙げることができる。
【0065】
構造(i):非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αとβとからなるグラフト共重合体(主鎖:α、グラフト鎖:β、並びに主鎖:β、グラフト鎖:αのいずれも選択できる。)、αとβとからなるブロック共重合体(ジ−、トリ−、などブロックセグメント数は2以上を選択でき、ラジアルブロックタイプなどを含む。)、並びにαとβとからなるランダム共重合体。α、βはそれぞれ単一の重合体だけでなく共重合体であってもよい。
【0066】
ここでαおよびβは重合体セグメント単位、および単量体単位のいずれも示す。α成分は非晶性熱可塑性樹脂との親和性の観点から重合体セグメント単位であることが好ましい。
【0067】
構造(ii):非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αの機能は重合体全体によって発現され、βは該α内に含まれる構造を有する重合体。
【0068】
すなわちα単独では非晶性熱可塑性樹脂との親和性が十分ではないものの、αとβが組み合わされ一体化されることにより、非晶性熱可塑性樹脂との良好な親和性が発現する場合である。α単独の場合にも非晶性熱可塑性樹脂との親和性が良好であって、βとの組合せによって更に親和性が向上する場合もある。かかる態様は上記構造(i)に含まれる。したがって構造(i)および(ii)はその一部を重複する。一方、構造(i)はα単独では非晶性熱可塑性樹脂との親和性が十分ではあるが、αとβが組み合わされ一体化されることにより、非晶性熱可塑性樹脂との良好な親和性が逆に低下する態様もあり得る。当然のことながらかかる態様はC成分に含まれる。
【0069】
上記構造(i)および(ii)は本発明においていずれも選択できる。殊に構造(i)の条件および構造(ii)の条件を共に満足する態様、すなわちαのみでも非晶性熱可塑性樹脂に対する親和性が高く、βが付加したC成分全体において更にその親和性が高くなる態様が好適である。
【0070】
本発明における非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分(以下、上記に従いαと称する場合がある)について説明する。上記の如くC成分は、ポリマーアロイにおける相溶化剤との同様の働きをすることから、αには相溶化剤と同様の重合体に対する親和性が求められる。したがってαは大きく非反応型と反応型とに分類できる。
【0071】
非反応型では、以下の要因を有する場合に親和性が良好となる。即ち、非晶性熱可塑性樹脂とαとの間に、▲1▼化学構造の類似性、▲2▼溶解度パラメータの近似性(溶解度パラメータの差が1(cal/cm31/2以内、即ち約2.05(MPa)1/2以内が目安とされる)、▲3▼分子間相互作用(水素結合、イオン間相互作用など)、およびランダム重合体特有の擬引力的相互作用などの要因を有することが必要である。これらの要因は相溶化剤とポリマーアロイのベースになる重合体との親和性を判断する指標として知られている。
【0072】
また反応型では、相溶化剤において非晶性熱可塑性樹脂と反応性を有する官能基として知られた各種を挙げることができる。例えば非晶性熱可塑性樹脂として好適な芳香族ポリカーボネート樹脂に対しては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基、エステル結合、カーボネート基、およびカーボネート結合などを例示することができる。
【0073】
一方で、非晶性熱可塑性樹脂とαが良好な親和性を得た場合、その結果として非晶性熱可塑性樹脂とαとの混合物において単一のガラス転移温度(Tg)を示すか、または非晶性熱可塑性樹脂のTgがαのTgの側に移動する挙動が認められることも広く知られるところである。本発明において親和性を有する成分(α)として、かかる挙動を有する成分をその態様の1つとして挙げることができる。
【0074】
上記の如く、本発明のC成分における非晶性熱可塑性樹脂と親和性を有する成分(α)は、各種の要因によりその親和性を発揮することが可能である。中でもαは非反応型であることが好ましく、殊に溶解度パラメータが近似することにより良好な親和性を発揮することが好ましい。これは反応型に比較して非晶性熱可塑性樹脂との親和性により優れるためである。また反応型は過度に反応性を高めた場合、副反応によって重合体の熱劣化が促進される欠点がある。
【0075】
非晶性熱可塑性樹脂およびαの溶解度パラメータは次の関係を有することが好ましい。即ち、非晶性熱可塑性樹脂(A成分)の溶解度パラメータをδA((MPa)1/2)、およびC成分におけるαの溶解度パラメータまたはC成分全体の溶解度パラメータをδα((MPa)1/2)としたとき、
δα=δA±2 ((MPa)1/2
であることが好ましい。
【0076】
例えば、A成分として好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の溶解度パラメータは通常約10(cal/cm31/2(即ち約20.5((MPa)1/2))とされていることから(「ポリマー・ハンドブック 第3版」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION),VII/550頁、1989年、polycarbonate resinのSolvent Hydrogen Bondingがpoorのカテゴリーに記載の数値幅の中心値)、かかるA成分におけるδαは18.5〜22.5((MPa)1/2)の範囲が好ましく、19〜22((MPa)1/2)の範囲がより好ましい。
【0077】
例えばA成分として好適な芳香族ポリカーボネート樹脂におけるかかる溶解度パラメータδαを満足する重合体成分の具体例は、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートなどに代表される)、および脂肪族ポリエステル(ポリカプロラクトンに代表される)などのポリエステル系重合体が挙げられる。またかかる具体例としては、スチレンポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびアクリロニトリルポリマー(ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、およびスチレン−アクリロニトリル共重合体などに代表される)などのビニル系重合体を挙げることができる。本発明の組成物の耐熱性の保持のためには、Tgの高い重合体成分を用いることが好ましい。
【0078】
ここで溶解度パラメータは、「ポリマーハンドブック 第4版」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION,1999年)中に記載されたSmallの値を用いた置換基寄与法(Group contribution methods)による理論的な推算方法が利用できる。また非晶性熱可塑性樹脂のTgはJIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求めることが可能である。
【0079】
上記のA成分の非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分αは、C成分中5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がより好ましく、30重量%以上が更に好ましく、50重量%以上が特に好ましい。C成分全体をαとする態様も可能であることから上限は100重量%であってよい。
【0080】
次に本発明におけるC成分の親水性成分(以下、上記に従いβと称する場合がある)について説明する。かかる親水性成分は、親水基(水との相互作用の強い有機性の原子団)を有する単量体および親水性重合体成分(重合体セグメント)より選択される。親水基は広く知られている。例えば化学大辞典(共立出版,1989年)によれば、下記の基が例示される。
【0081】
1)強親水性の基:
−SO3H、−SO3M、−OSO3H、−OSO3H、−COOM、
−NR3X (R:アルキル基、X:ハロゲン原子、M:アルカリ金属、−NH4) など
2)あまり親水性の強くない基:
−COOH、−NH2、−CN、−OH、−NHCONH2 など
3)親水性の小さい基:
−CH2OCH3、−OCH3、−COOCH3、−CS など
【0082】
上記1)〜3)の群の中で本発明における親水基は1)および2)に分類されるものが使用される。上記の例示以外にも、1)強親水性の基としてはスルフィン基などが例示され、2)あまり親水性の強くない基としては、カルボン酸無水物基、オキサゾリン基、ホルミル基およびピロリドン基などが例示される。
【0083】
上記2)の群は非晶性熱可塑性樹脂、殊に本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融加工時の熱安定性により優れるため好ましい。親水性が高すぎる場合には芳香族ポリカーボネートなどの熱劣化が生じやすくなる。これはかかる親水基が直接カーボネート結合と反応し、熱分解反応を生じるためである。
【0084】
尚、本発明の親水基は1価および2価以上のいずれも含む。C成分が重合体の場合、2価以上の官能基とは該基が主鎖を構成しないものをいい、主鎖を構成するものは結合として官能基とは区別する。具体的には、主鎖を構成する炭素などの原子に付加した基、側鎖の基、および分子鎖末端の基は、2価以上であっても官能基である。
【0085】
親水基のより具体的な指標は、溶解度パラメータである。溶解度パラメータの値が大きいほど親水性が高くなることは広く知られている。基ごとの溶解度パラメータは、Fedorsによる基ごとの凝集エネルギー(Ecoh)および基ごとのモル体積(V)より算出することができる(「ポリマー・ハンドブック 第4版」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION),VII/685頁、1999年、またはPolym.Eng.Sci.,第14巻,147および472頁,1974年)。かかる算出方法は簡便であり広く知られる。更に親水性の大小関係のみを比較する観点からは、凝集エネルギー(Ecoh)をモル体積(V)で除した数値(Ecoh/V;以下単位は“J/cm3”とする)を親水性の指標として使用できる。
【0086】
本発明のC成分におけるβに含まれる親水基は、Ecoh/Vが600以上であることが必要である。好ましくはEcoh/Vは800以上であり、800以上の場合には本発明のA成分として好適な芳香族ポリカーボネート樹脂におけるカーボネート結合のEcoh/Vを超え、カーボネート結合よりも高い親水性を有する。更にEcoh/Vは900以上がより好ましく、950以上が更に好ましい。
【0087】
上述のとおり、親水性が高すぎる場合には本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化が生じやすくなる。したがってEcoh/Vは2,500以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,500以下が更に好ましい。
【0088】
C成分の親水性成分(β)として、親水性重合体成分(重合体セグメント)も選択される。したがってC成分の重合体中に含まれる親水性重合体のセグメントはβとなる。親水性重合体は広く知られ、例えばポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩(キレート型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリヒドロキシエチルメタクリレートなどが例示される。これらの中でもポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、およびポリヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく例示される。これらは良好な親水性と本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂に対する熱安定性(溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの分解の抑制)とを両立できるためである。尚、ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0089】
親水基を有する単量体および親水性重合体成分のいずれにおいても、βは酸性の官能基(以下単に“酸性基”と称する場合がある)を有することが好ましい。酸性基は本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融加工時の熱劣化を抑制する。これはかかる酸性基は層間を電気的作用によって縮小する効果に優れるためと考えられる。
【0090】
中でも窒素原子を含まない酸性基がより好適である。アミド基やイミド基などの窒素原子を含む官能基は溶融加工時の芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化を十分には抑制しない場合がある。これは窒素原子が局所的に塩基性を有しカーボネート結合の熱分解を生じさせるためと考えられる。
【0091】
酸性基としてはカルボキシル酸、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、およびスルフィン酸基以外に、ホスホン酸基およびホスフィン酸基などが例示される。
【0092】
本発明のC成分におけるβの割合は、βが親水基を有する単量体の場合、官能基1つ当たりの分子量である官能基当量として60〜10,000であり、70〜8,000が好ましく、80〜6,000がより好ましく、100〜3,000が更に好ましい。またC成分におけるβの割合は、βが親水性重合体セグメントの場合、C成分100重量%中βが5〜95重量%であり、10〜90重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましく、30〜50重量%が更に好ましい。
【0093】
非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分(α)と親水性成分(β)とを有する化合物の製造方法としては、βの単量体とαを構成する単量体とを共重合する方法、βの重合体成分をαとブロックまたはグラフト共重合する方法、およびβをαに直接反応させて付加する方法などが例示される。
【0094】
本発明のC成分の好ましい態様として、“芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体”、“芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体”、“芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつオキサゾリン基を有する重合体”、または“芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ水酸基を有する重合体”が例示される。これらのC成分として好ましい態様の重合体においては、その分子量は重量平均分子量において1万〜100万の範囲が好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。かかる重量平均分子量は標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されるものである。
【0095】
上記の中でも芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体が好ましく、更に好ましくは芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基とを有する重合体である。また、芳香族ポリカーボネートの耐熱性保持効果の観点から、重合体は芳香環成分を主鎖に有するもの、およびスチレン成分を主鎖に有するものが好ましい。上記の点からカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分)が本発明のC成分として特に好適である。
【0096】
本発明のC成分の組成割合は、A成分100重量部あたり0.5〜50重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。0.5重量部より少ない場合には層状珪酸塩の分散効果が十分でなく、また芳香族ポリカーボネートの熱劣化を抑制する効果も不十分となる場合がある。また50重量部を超えると耐衝撃性および耐熱性などが低下する場合がある。
【0097】
本発明のC成分として特に好適なカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分)について詳述する。かかるカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基の割合としては、0.1〜12ミリ当量/gが好ましく、0.5〜5ミリ当量/gがより好ましい。ここでC1成分における1当量とは、カルボキシル基が1モル存在することをいい、かかる値は水酸化カリウムなどの逆滴定により算出することが可能である。
【0098】
カルボキシル基の誘導体からなる官能基としては、カルボキシル基の水酸基を(i)金属イオンで置換した金属塩(キレート塩を含む)、(ii)塩素原子で置換した酸塩化物、(iii)−ORで置換したエステル(Rは一価の炭化水素基)、(iv)−O(CO)Rで置換した酸無水物(Rは一価の炭化水素基)、(v)−NR2で置換したアミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)、並びに(vi)2つのカルボキシル基の水酸基を=NRで置換したイミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)などを挙げることができる。
【0099】
カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基(以下、単に“カルボキシル基類”と称する)を有するスチレン系重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を取ることができる。例えば、▲1▼カルボキシル基を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合する方法、及び▲2▼スチレン系重合体に対してカルボキシル基類を有する化合物又は単量体を結合または共重合する方法などを挙げることができる。
【0100】
上記▲1▼の共重合においては、ランダム共重合体の他に交互共重合体、ブロック共重合体、テーパード共重合体などの各種形態の共重合体が使用できる。また共重合の方法においても溶液重合、懸濁重合、塊状重合などのラジカル重合法の他、アニオンリビング重合法やグループトランスファー重合法などの各種重合方法を取ることができる。更に一旦マクロモノマーを形成した後重合する方法も可能である。
【0101】
上記▲2▼の方法は、一般的にはスチレン系重合体又は共重合体に必要に応じて、パーオキサイドや2,3−ジメチル−2,3ジフェニルブタン(ジクミル)などのラジカル発生剤を加えて、高温化で反応又は共重合する方法を挙げることができる。かかる方法はスチレン系重合体または共重合体に熱的に反応活性点を生成し、かかる活性点に反応する化合物または単量体を反応させるものである。反応に要する活性点を生成するその他の方法として、放射線や電子線の照射やメカノケミカル手法による外力の付与などの方法も挙げられる。更にスチレン系共重合体中に予め反応に要する活性点を生成する単量体を共重合しておく方法も挙げられる。反応のための活性点としては不飽和結合、パーオキサイド結合、および立体障害が高く熱的に安定なニトロオキシドラジカルなどを挙げることができる。
【0102】
上記カルボキシル基類を有する化合物又は単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等の無水マレイン酸の誘導体、並びにグルタルイミド構造やアクリル酸と多価の金属イオンで形成されたキレート構造等が挙げられる。これらの中でも金属イオンや窒素原子を含まない官能基を有する単量体が好適であり、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基を有する単量体がより好適である。これらの中でも特に好ましくは無水マレイン酸である。
【0103】
また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができるが、特にスチレンが好ましい。
【0104】
さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として使用しても差し支えない。
【0105】
上記カルボキシル基類を有するスチレン系重合体のうち、本発明において好適であるのは、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する単量体を共重合してなるスチレン系共重合体である。かかる共重合体においては比較的多くのカルボキシル基類を安定してスチレン系重合体中に含むことが可能となるためである。より好適な態様としてカルボキシル基類を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合してなるスチレン系共重合体を挙げることができる。そして殊に好適な態様はスチレン−無水マレイン酸共重合体である。スチレン−無水マレイン酸共重合体は、層状珪酸塩中のイオン成分及び芳香族ポリカーボネート樹脂のいずれに対しても高い相溶性を有することから、有機化層状珪酸塩を良好に微分散させる。更にカルボン酸無水物基の作用により層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩の層間を有効に縮小させ、その結果良好な熱安定性を樹脂組成物に与える。またかかる共重合体それ自体の熱安定性が良好であるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融加工に必要な高温条件に対しても高い安定性を有する。
【0106】
上記カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン系共重合体の組成については上述のβの割合における条件を満足する範囲内において何ら制限はないが、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%、スチレン系化合物99〜70重量%及び共重合可能な他の化合物0〜29重量%の範囲のものを用いるのが好ましく、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%、スチレン系化合物99〜70重量%のものが特に好ましい。
【0107】
また、本発明のC成分の好ましい態様であるC1成分の分子量は特に制限されない。C1成分の重量平均分子量は1万〜100万の範囲にあることが好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。尚、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0108】
本発明のC成分として好適なポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体、殊に好ましいポリエーテルエステル共重合体(C2成分)について説明する。
【0109】
ポリエーテルエステル共重合体は、ジカルボン酸、アルキレングリコール、およびポリ(アルキレンオキシド)グリコール、並びにこれらの誘導体から重縮合を行うことで製造される重合体である。殊に好適な例としては、下記式(I)で示されるポリアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールあるいはその誘導体(C2▲1▼成分)、テトラメチレングリコールを65モル%以上含有するアルキレングリコールあるいはその誘導体(C2▲2▼成分)、およびテレフタル酸を60モル%以上含有するジカルボン酸あるいはその誘導体(C2▲3▼成分)から製造される共重合体である。
【0110】
【化1】
Figure 0003976617
【0111】
(ここで、Xは一価の有機基を表し、nおよびmはいずれも0を含む整数であり、かつ10≦(n+m)≦120である。mが2以上の場合Xは互いに同一および異なる態様のいずれも選択できる。)
上記式(I)においてXは−CH3、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2I、および−CH2OCH3から選択される少なくとも1種の置換基が好ましい。Xがこれら以外の場合には置換基による立体障害が大きくなり共重合体の重合度を上げることが困難となる。またn+mが10未満の場合には層状珪酸塩が十分に分散しない場合があり、n+mが120を超える場合には、重合度の高いポリエーテルエステル共重合体が得られ難くなり、C2成分の相溶化機能が低下する場合がある。
【0112】
上記式(I)におけるポリアルキレンオキシド成分は、ポリエチレンオキシド成分と置換基Xを有する成分とのランダム共重合体、テーパード共重合体およびブロック共重合体のいずれも選択できる。上記式(I)におけるポリアルキレンオキシドは、特にm=0、すなわちポリエチレンオキシド成分のみからなる重合体成分が好ましい。
【0113】
C2▲1▼成分の共重合割合は、全グリコール成分の30〜80重量%であり、より好適には40〜70重量%である。C2▲1▼成分が30重量%より少ない場合には層状珪酸塩は十分に分散されず、機械特性の低下や外観の悪化を生ずる場合がある。C2▲1▼成分が80重量%より多い場合にも層状珪酸塩は十分に分散されず、またポリエーテルエステル共重合体自身の強度低下も加わることで、機械特性の低下や外観の悪化を生ずる場合がある。
【0114】
C2成分のポリエーテルエステル共重合体のC2▲2▼成分においては、テトラメチレングリコール以外のジオールを共重合することができる。かかるジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが例示される。C2▲2▼成分中テトラメチレングリコールは65モル%以上であり、75モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。テトラメチレングリコールが65モル%未満のポリエーテルエステル共重合体は、樹脂組成物の成形性の低下を招く。
【0115】
ポリエーテルエステル共重合体のジカルボン酸あるいはその誘導体(C2▲3▼成分)においては、テレフタル酸以外のジカルボン酸(カルボキシル基が2を超えるものを含む)を共重合することができるるかかるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が例示される。イソフタル酸を共重合したポリエーテルエステル共重合体はC成分として特に好適である。C2▲3▼成分中テレフタル酸は60モル%以上であり、70モル%以上が好ましく、75〜95モル%がより好ましい。テレフタル酸が60モル%未満のポリエーテルエステル共重合体は、共重合体の重合度が低下しやすく、十分な重合度のポリエーテルエステル共重合体の製造が困難となるため好ましくない。
【0116】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲で、B成分以外の強化充填材を更に配合することができる。強化充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、ワラストナイト、カオリンクレー、マイカ、タルクおよび各種ウイスカー類(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカーなど)といった一般に知られている各種フィラーを併用することができる。形状は繊維状、フレーク状、球状、中空状を自由に選択できる。ガラス繊維、炭素繊維およびガラスフレークなどは樹脂組成物の強度や耐衝撃性の向上のためには好適である。一方本発明の樹脂組成物が有する極めて良好な表面外観(表面平滑性)をより有効に活用する場合には、強化充填材の大きさは微小であることが好ましい。具体的には繊維状充填材の場合にはその繊維径が、また板状充填材や粒状充填材の場合にはその大きさが、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。下限は0.05μm程度が適切である。かかる微小な強化充填材としてはタルク、ワラストナイト、カオリンクレー、および各種ウイスカー類が例示される。強化充填材の配合量は、全樹脂組成物100重量%あたり50重量%以下が適切であり、0.5〜50重量%の範囲が好ましく、1〜35重量%の範囲がより好ましい。かかる配合量が50重量%を超えると、成形加工性が悪化し、本発明の効果が得られないため好ましくない。
【0117】
さらに本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂)、難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、シリコーン系難燃剤等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸ナトリウム等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物、イオウ系酸化防止剤等)、衝撃改良剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、着色剤(染料、無機顔料等)、および蛍光増白剤等を配合してもよい。これら各種の添加剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の周知の配合量で利用することができる。
【0118】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、リン系熱安定剤を含むことが好ましい。かかるリン系熱安定剤としてはトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル、並びにテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステルなど、芳香族ポリカーボネート樹脂のリン系熱安定剤として広く知られた化合物が好適に例示される。かかるリン系熱安定剤は全組成物100重量%中0.001〜1重量%を含むことが好ましく、0.01〜0.5重量%を含むことがより好ましく、0.01〜0.2重量%を含むことが更に好ましい。かかるリン系熱安定剤の配合によりさらに熱安定性が向上し良好な成形加工特性を得ることができる。
【0119】
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより強力なせん断力で有機化層状珪酸塩は基体樹脂中に微分散させられる。一方その分散は層間を縮小させる作用が存在する下で行われることにより、層間のイオンの外部への露出は抑制される。結果して良好な分散と熱安定性とのより高度な両立が達成される。
【0120】
更に、本発明の樹脂組成物の溶融混練機による溶融混練において次の態様がより好適である。すなわち、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換能を有する層状珪酸塩(B成分)と、A成分の非晶性熱可塑性樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)、殊に好適にはカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分)とを予め溶融混練しておく。その後該溶融混練物とA成分の非晶性熱可塑性樹脂、殊に好適には芳香族ポリカーボネートとを多軸押出機により溶融混練する。かかる溶融混練方法は非晶性熱可塑性樹脂の熱安定性を向上させるため好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂においてはその分子量低下が特に抑制されるため好ましい溶融混練方法である。これはB成分とC成分とが予め溶融混練されることによりB成分に対してC成分が十分に相互作用し、所定の効果が効率的に得られているためと考えられる。したがって本発明によれば上述した(5)の発明が提供される。
【0121】
より具体的には、例えば、(i)B成分とC成分をベント式二軸押出機にて溶融混練しペレット化したものを、再度A成分と溶融混練する方法や、(ii)B成分とC成分をベント式二軸押出機の主供給口より投入し、A成分の一部または全部を二軸押出機の途中段階に設けられた供給口から、B成分とC成分が既に溶融混練された状態の中へ投入する方法などが挙げられる。これらB成分とC成分を予め溶融混練する方法においては、その溶融混練時に、A成分の一部を含んでいても構わない。
【0122】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0123】
また本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
【0124】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、良好な剛性を有し、良好な表面外観(表面平滑性)を有し、更に良好な熱安定性を有する。したがって上記の如く得られた樹脂成形品は、実用上問題のない幅広い成形加工条件の下で製造され、かつ良好な剛性および良好な表面外観を有する。より具体的には本発明によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物より形成された樹脂成形品であって、その表面のJIS B0601に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が、0.1μm以下、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が、2,500MPa以上であることを特徴とする樹脂成形品が提供され、かかる樹脂成形品はその工業的価値が更に高い。従来、樹脂成形品の曲げ弾性率を向上させるためには、繊維上強化材や無機充填材を配合するのが一般的であったが、その場合にはその表面粗さは顕著に低下し、上記のバランスをとることができるものが得られていなかったためである。
【0125】
樹脂成形品の算術表面粗さRaの値は、より好ましくは0.08μm以下であり、更に好ましくは0.05μm以下である。かかる下限は成形を行う金型によるところが大きいが約0.001μm程度が適切である。また、曲げ弾性率の値は、より好ましくは2,800MPa以上であり、更に好ましくは3,000MPa以上である。一方、その上限は8,000MPaが適切であり、7,000MPaが好ましく、6,000MPaがより好ましい。
【0126】
本発明の樹脂成形品には、表面改質を施すことにより、平滑性に優れた表面改質成形品を得ることができる。ここでいう表面改質とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。これら表面改質では、改質される樹脂成形品の表面平滑性が、改質後の表面性に大きな影響を与えるが、本発明の樹脂成形品を使用すると、表面平滑性に優れた成形品を得ることができる。一般にこれらの表面改質は、表面修飾や機能付与だけでなく、樹脂成形品の表面平滑性を高める目的で施されることもあり、表面平滑性が悪いと改質の厚さを大きくとる必要があるが、本発明の樹脂成形品では、薄い厚みにて効率よく改質することができる。すなわち、50μm以下であることが本発明の効果が発揮され好ましい。更にかかる厚みは20μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、2μm以下が更に好ましい。下限値としては0.001μm以上が適切である。更に、金属層または金属酸化物層を有しない樹脂成形品単体におけるJIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaの値に対して、かかるRaの500倍以内の厚みで表面改質を行うと、本発明の樹脂成形品の特長が生かされ、かかるRaの200倍以内の値の厚みであればより好ましく、100倍以内は更に好ましく、50倍以内は特に好ましい。本発明において好ましい表面改質方法は、蒸着、メッキなどの改質厚みの小さい手法である。
【0127】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の特性を生かし樹脂材料として従来使用できなかった部品に用途展開が可能である。殊に従来ガラス成形品または金属の精密切削品でなければ達成できなかった極めて高い表面平滑性と剛性が要求される用途に使用可能である。かかる用途としては例えば光学精密機器内に配されたミラー、レーザー式複写・印刷装置などに配されたポリゴンミラー、およびハードディスクなどが例示される。
【0128】
更に本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、および雑貨などの各種用途にも有用である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形加工性にも優れていることから、各種薄肉成形品にも好適であり、薄肉射出成形品の具体例としては、電池ハウジングなどの各種ハウジング成形品、鏡筒、メモリーカード、スピーカーコーン、ディスクカートリッジ、面発光体、マイクロマシン用機構部品、銘板、およびICカードなどが例示される。
【0129】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性の測定は、以下の方法によった。原料は以下の原料を用いた。
【0130】
(1)層状珪酸塩の含有量
試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で成形し、成形した試験片を切削してるつぼに入れて秤量し、600℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後で放冷し、るつぼに残った灰化残渣を秤量することで層状珪酸塩量を測定した。
【0131】
(2)分子量
試験片を上記(1)と同条件で成形し、試験片の粘度平均分子量を本文中記載の方法にて測定した。
【0132】
(3)機械特性
試験片を上記(1)と同条件で成形し、成形された試験片に対してASTM D790に準拠して曲げ試験を行った(試験片形状:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)。
【0133】
(4)層状珪酸塩の分散厚み
ミクロトームにて、50〜100nmの切片を作成し、透過型電子顕微鏡(LEM−100:トプコン(株)製)を用いて、加速電圧100kVにて観察し、倍率10,000倍で写真撮影した。撮影した写真を画像解析し層状珪酸塩の厚みを計測することにより、その分散厚みを求めた。
【0134】
(5)層状珪酸塩の底面間隔測定
粉末X銭回折装置(RIGAKU ROTAFLEX RU300:(株)リガク製)を用いて測定を行った。有機化層状珪酸塩の底面間隔は、粉末サンプルをガラス試料台の窪みに充填して測定に供した。また、樹脂組成物中の層状珪酸塩の底面間隔は、厚み6.4mmの棒状試験片を(1)と同条件にて成形し、長さ20mmに切断した測定成形品を、試料台の開口部に測定基準面と同一面になるように固定して測定に供した。測定によって得られた回折ピークは層状珪酸塩の底面ピークであるが、そのうち、最も小角側の回折ピークが(001)面の底面間隔に対応するピークであるとして、下記Braggの式により底面間隔を算出した。
d=λ/(2sinθ)
(但し、式中 d:底面間隔(層間距離)(nm)、2θ:回折ピークの回折角度(°)、λ:X線測定波長(nm))
測定の条件について以下に記す。
X−ray source:Cu−Kα(X線測定波長1.5418×10-10m)、50kV−200mA
Slit:DS/SS 1/2°
Rs 0.15mm−graphite monochrometer−0.45mm
Method:2θ−θ
Scan:0.05step/1〜4sec
Scan範囲:1〜20°
【0135】
(6)算術平均粗さ(Ra)
JIS B0601−1994に準拠して、表面粗さ形状測定機(サーフコム1400A:(株)東京精密製)を用い、樹脂成形品の算術平均粗さRaを測定した。
【0136】
[原料]
原料としては、以下のものを用いた。
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
ホスゲン法で作成されたビスフェノールA及び末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールからなる、粘度平均分子量23,700の直鎖状ポリカーボネート樹脂。
【0137】
(B成分:層状珪酸塩)
合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:ソマシフ ME−100、陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
また層状珪酸塩の層間陽イオンをイオン交換するのに用いた有機オニウムイオンは次のとおりであった。
▲1▼ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製:1級試薬)
▲2▼トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製:1級試薬)
(C−1)スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)製:DYLARK 332−80、無水マレイン酸量約15重量%)
(C−2)後述の方法により作製したポリエーテルエステル共重合体
その他成分として、タルク(HST−0.8:林化成(株)製)、ガラス繊維(GF:T−511、13μm径、3mmのチョップドストランド:日本電気硝子(株)製)、リン酸トリメチル(TMP:大八化学(株)製)を用いた。
【0138】
[層間化合物の作製方法]
合成フッ素雲母への、上記有機オニウムのイオン交換を次の方法により行った。
【0139】
合成フッ素雲母約100gを精秤しこれを室温の水10リットルに撹拌分散し、ここにオニウムイオンのクロライドまたはブロマイドを合成フッ素雲母の陽イオン交換当量に対して種々当量を添加して6時間撹拌した。生成した沈降性の固体を濾別し、次いで30リットルの脱塩水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を3回行った。得られた固体は3〜7日の風乾後乳鉢で粉砕し、更に50℃の温風乾燥を3〜10時間行い(ゲストのオニウムイオンの種類により異なる)、再度乳鉢で最大粒径が100μm程度となるまで粉砕した。かかる温風乾燥により窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が2〜3重量%とした。オニウムイオンのイオン交換割合については、イオン交換された層状珪酸塩の、窒素気流下500℃で3時間保持した場合の残渣の重量分率を測定することにより求めた。作製した有機オニウムイオン交換合成フッ素雲母を表1に示す。
【0140】
【表1】
Figure 0003976617
【0141】
[ポリエーテルエステル共重合体の作製方法]
ジメチルテレフタレート(DMT)、ジメチルイソフタレート(DMI)、テトラメチレングリコール(TMG)、エチレングリコール(EG)、及びポリエチレングリコール(PEG)、触媒としてテトラブチルチタネート(酸成分に対して0.090mol%)を反応器に仕込み、内温190℃でエステル化反応を行った。理論量の約80%のメタノールが留出した後、昇温を開始し、徐々に減圧しながら重縮合反応を行った。1mmHg以下の真空度に到達後、240℃で200分間反応を継続した。次いで酸化防止剤イルガノックス1010をポリエチレングリコールに対して5wt%添加し、反応を終了した。精製したポリマーの組成を表2に示す。
【0142】
【表2】
Figure 0003976617
【0143】
[実施例1〜3、比較例1〜5]
各成分を表3記載の配合割合でドライブレンドした後、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た。
【0144】
得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で成形した。
【0145】
[実施例4]
B成分とC成分を、表3の量割合にて、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度200℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た。得られたペレットを用い、最終割合が表3に示す割合になるよう、上記B成分とC成分の混合物と、A成分などをドライブレンドした後、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た。
【0146】
得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で成形した。
これらについての測定結果を表4に示す。
【0147】
【表3】
Figure 0003976617
【0148】
【表4】
Figure 0003976617
【0149】
上記表から明らかなように、本発明の樹脂組成物は特定の分散形態を満足することにより、良好な剛性および極めて良好な表面平滑性を有し、更に良好な熱安定性を有する非晶性熱可塑性樹脂組成物を提供することがわかる。殊に層状珪酸塩の底面間隔を減少させることにより、良好な熱安定性を達成していることがわかる。また熱安定性はB成分の層状珪酸塩とC成分とを予め混練した場合において特に良好である。これにより実用的であり幅広い分野において適用可能な層状珪酸塩を含んでなる非晶性熱可塑性樹脂組成物、殊に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。上記の特有の効果は具体的にはC成分の配合により得られていることがわかる。C成分を用いることにより、底面間隔の減少が見られ、それに伴って分散性、剛性、表面平滑性の向上が顕著になる。
【0150】
実施例の樹脂組成物は分散性に優れ、その結果として剛性及び表面平滑性を兼ね備えた樹脂成形品を提供する。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂単独(比較例1)、タルクを配合した樹脂組成物(比較例2)、並びにガラス繊維を配合した樹脂組成物(比較例3)などの通常の樹脂組成物は、上記のいずれをも満足する樹脂組成物は得られていない。
【0151】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、良好な剛性を有し、良好な表面外観(表面平滑性)を有し、更に良好な熱安定性を有する熱可塑性樹脂組成物、殊に芳香族ポリカーボネート樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物である。更に本発明の熱可塑性樹脂組成物は射出成形および押出成形の双方に適した溶融粘度特性を有しており成形加工性に優れる。したがって本発明の樹脂組成物、電気電子部品分野、A機器部品分野、自動車部品分野、農業資材分野、漁業資材分野、搬送容器分野、包装容器分野、および雑貨分野などといった幅広い分野において有用であり、その奏する工業的効果は格別である。

Claims (5)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部および(C)カルボキシル基及び/又はその誘導体を有する単量体1〜30重量%、スチレン系化合物99〜70重量%及び共重合可能な他の化合物0〜29重量%から合成されるカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体並びにポリエーテルエステル共重合体よりなる群より選ばれる化合物(C成分)0.1〜50重量部を含んでなる樹脂組成物であって、かつ(i)B成分はその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有し、かつ(ii)樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さく、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が2800MPa以上であることを特徴とする良好な熱安定性を有する熱可塑性樹脂組成物。
  2. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部あたり、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部および(C)カルボキシル基及び/又はその誘導体を有する単量体1〜30重量%、スチレン系化合物99〜70重量%及び共重合可能な他の化合物0〜29重量%から合成されるカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体並びにポリエーテルエステル共重合体よりなる群より選ばれる化合物(C成分)0.1〜50重量部を含んでなる樹脂組成物であって、かつ(i)B成分はその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有し、かつ(ii)樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さく、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が2800MPa以上であることを特徴とする良好な熱安定性を有する熱可塑性樹脂組成物。
  3. 上記C成分が、無水マレイン酸量が約15重量%であるスチレン−無水マレイン酸共重合体である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記B成分とC成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物とA成分とを多軸押出機を用いて溶融混練してなる請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 上記請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物より形成された樹脂成形品であって、その表面のJIS B0601に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が、0.1μm以下、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が、2,800MPa以上であることを特徴とする樹脂成形品。
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