JP4183574B2 - 建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械のエンジン冷却装置 - Google Patents
建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械のエンジン冷却装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業装置の揚重時において機体のバランスを取る為の建設機械のカウンタウェイト、並びにそれを使用した建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械のエンジン冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、油圧ショベル,ホイールローダ等の走行式の建設機械やクレーン等の定置式の建設機械等、種々の建設機械が建設現場,港湾,工場内等の様々な分野において用いられている。これら建設機械の構造は、例えば走行式の建設機械である油圧ショベルでは、図7に示すように下部走行体101と、下部走行体101の上側に旋回可能に配設された上部旋回体102と、上部旋回体102に設けられ種々の作業を行なう作業装置103との3つの部分で構成されている。このうち上部旋回体102には、その機体後方にカウンタウェイト102−1が配置され、カウンタウェイト102−1の機体前方にはエンジンルーム102−2が配置されている。
【0003】
ここでエンジンルーム102−2について図8及び図9を参照して説明する。図8及び図9は一般的なエンジンルームの構成を示す図であって、図8は一般的なエンジンルームの内部構成を示す図であって機体前方から見たエンジンルームの模式的な断面図、図9はエンジンルームを形成する外壁面を一部破断して内部を示す模式的な斜視図である。
【0004】
エンジンルーム102−2はその機体後方をカウンタウェイト102−1に面して形成され、エンジンルーム102−2には、エンジン106や油圧ポンプ108(図9では省略)等の機器が配設され、エンジン106による油圧ポンプ108の駆動により発生した油圧によって作業装置103(図7参照)を作動させている。
【0005】
建設機械は、ダム,トンネル,河川,道路等における岩石の掘削やビル,建築物の取り壊し等、一般に厳しい環境下で使用されるが、このような環境下ではエンジン106や油圧ポンプ108等の機器類に加わる負荷が高く、エンジン温度の上昇や作動油の油温の上昇を招きやすい。このため、これら建設機械では、図8及び図9に示すように、エンジン106により駆動されるファン105によって生成される冷却風の流路に、比較的大容量のラジエータやオイルクーラなどからなるクーリングパッケージ104をそなえ、これらクーリングパッケージ104によってエンジン冷却水や作動油が冷却される(例えば特許文献1参照)。
【0006】
つまり、ファン105の回転により、クーリングパッケージ104が設置されたラジエータルーム102Aの上部開口部110から外部の空気(冷却風)が吸引され、この空気が、フィン構造のクーリングパッケージ104のコアを通過する際に、エンジン冷却水や作動油を冷却するのである。
そして、メインエンジンルーム102Bには、ファン105からファン軸流方向(図8中において左右方向)に対し所定の距離をあけて、上面に開口部111が、下面に開口部112がそれぞれ設けられている。上面の開口部111は、メッシュ状やルーバ状などに形成された複数の開口からなり、上記ファン軸流方向に対し比較的大きな幅をもって形成されている。一方、下面の開口部112は、比較的面積の大きな単一の開口として形成されている。
【0007】
また、油圧ポンプ108が設置されたポンプルーム102Cには、上面に開口部113が、下面に開口部114がそれぞれ設けられており、これらの開口部113,114は、メインエンジンルーム102Bの開口部111と同様に、メッシュ状やルーバ状などに形成された複数の開口からなる。
エンジン冷却水や作動油を冷却して高温となった空気は、メインエンジンルーム102Bの上記排気開口部111,112から外部に排出され、又は、メインエンジンルーム102Bを通り抜けて、ポンプルーム102Cの上記排気開口部113,114から外部に排出される。
【0008】
ところで、特に油圧ショベルでは、ファン105から吐出された空気の流れには、ファン軸流方向の成分が殆どなく、遠心方向の成分や旋回方向の成分(以下、まとめて遠心/旋回方向成分という)が主成分となることが確認されている。
以下、この理由を図10〜図13を参照して説明する。
油圧ショベルの場合、上部旋回体102内部においてラジエータやエンジンなどを搭載できるスペースは図10(a)に示すようになり、図10(b)に示すような他の建設機械のスペースに較べて狭く特にその横断面積(ファン軸流方向に対して直交する断面)が小さくなる。これは、エンジンルームの高さについては高くするとエンジンルーム前方の運転席からの後方への視界が遮られてしまい、エンジンルームの幅〔建設機械の前後長さ〕についてはこれを長くすると機長が長くなって建設機械後端の旋回半径が大きくなり、狭い現場で使うのに不便になるためである。
【0009】
このように横断面積が比較的小さくなる分、油圧ショベルでは、クーリングパッケージ104の厚さ(ファン軸流方向に対する寸法)を大きく取って、クーリングパッケージ104と冷却風との接触面積ひいてはクーリングパッケージ104の冷却性能を確保するようにしている。この結果、冷却風がクーリングパッケージ104を通過する際に受ける圧力抵抗が比較的大きくなってしまう。
【0010】
建設機械では、コストやサイズを抑えるため冷却ファンには軸流ファンが一般的に使用されている。図11は一般的な軸流ファンの性能曲線を示す模式図である。この性能曲線Lから明らかなように、軸流ファンでは、一般的にファン上流側の圧力損失ΔPが増加するほど、単位時間当たりのファン風量Vが減少する傾向にある。ファン風量Vとは即ち冷却風のファン上流からファン下流への移動量であることから、ファン上流側の圧力損失ΔPが増加するほど、ファン上流からファン下流への直線的な流れである軸流方向の流れが特に得られにくくなる。
【0011】
このため、ファン上流側の圧力損失ΔPが所定値ΔP0未満の低圧力損失域RLにおいては冷却風の流れは図12(a),(b)に示すようになり、ファン上流側の圧力損失ΔPが所定値ΔP0以上の高圧力損失域RHにおいては冷却風の流れは図13(a),(b)に示すようになる〔図12及び図13は何れもその左右方向をファン軸流方向と一致させて示す図であり、図12(a)及び図13(a)では、ファン翼の回転中心線CLより下側のみを示している〕。
【0012】
つまり、上記低圧力損失域RLにおいてはファン風量が比較的多くなることから、図12(a)に示すように、ファン上流側ではベクトルFIN,1で代表して示すような比較的大きな風量の軸流が発生し、ファン下流側ではベクトルFOUT,1で代表して示すような流れ、即ち遠心/旋回方向成分ベクトルFC,1よりも軸流方向成分ベクトルFA,1が支配的な流れが発生する。そして、風量は、図12(b)にベクトルで示すように遠心側になるほど大きくなる。
【0013】
これに対し、上記高圧力損失域RHにおいてはファン風量が比較的少なくなることから、図13(a)に示すように、ファン上流側ではベクトルFIN,2で示すような比較的少量の軸流しか発生せず、ファン下流側においては、ベクトルFOUT,2で示すような流れ、即ち軸流方向成分ベクトルFA,2よりも遠心/旋回方向成分ベクトルFC,2が支配的な流れが発生し、風量は、図13(b)にベクトルで示すように遠心側になるほど大きくなる。
【0014】
このようなファン上流側の圧力損失ΔPとファン下流側での冷却風の流れとの関係は、実験やシミュレーションでも確認されている。
そして、上述したように油圧ショベルではクーリングパッケージが厚いためファン上流側の圧力損失ΔPが大きく高圧力損失域で冷却ファンが使用されることとなり、ファン出口側の冷却風の流れ成分は、遠心/旋回方向成分が支配的になるのである。
【0015】
しかしながら、図7及び図8に示す上記従来技術では、上述したように、網目状に複数の開口が形成されてなる排気開口部111などが、ファン軸流方向に対してファン105から距離を開けて配設され、また、ファン軸流方向に対して幅を持って形成されているため、メインエンジンルーム102Bに吸引された冷却風は、排出されるまでに上記軸流方向への流れを余儀なくされる。
【0016】
つまり、この従来技術では、遠心/旋回方向成分を流れの主成分とする空気を強制的に軸流方向へ流す構造となるため、乱流が発生するなどして空気の被る圧力損失が比較的大きく、クーリングパッケージ104を通過後の空気の排出が滑らかに行なわれない(排出効率が低い)という課題がある。
排出効率を向上させるために、メインエンジンルーム102Bの開口面積を増加させることも考えられるが、この場合、騒音(エンジン音や、冷却風がクーリングパッケージ104などを通過する際に発生する風切音の外部への漏洩)の増大を招くこととなり、新たな課題が発生する。
【0017】
そこで、冷却風のエンジンルームからの排出効率を向上させ騒音を低減できるようにした技術として、特許文献2には図14に示すような建設機械が開示されている。この建設機械では、エンジンルーム130の上面に冷却風の導入口131が設けられるとともにエンジンルーム130の上面及び両側面(車体前後面)に冷却の風排出通路(ファン風分流路,ファン風分流ダクト)132〜134が設けられ、この冷却風通路の入り口(図14中で左側端部)は何れも冷却ファンの外周近傍に位置設定されている。このような構成により、冷却ファンから遠心/旋回方向に吹き出された冷却風を少ない開口から効率的に排出し、且つ、エンジンルーム130からの騒音の増大を防止するようにしている。
【0018】
【特許文献1】
実開平3−83324号公報
【特許文献2】
特開2001−193102号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した図14に示す従来技術では、機体上面に設けられたファン風分流ダクト133によりエンジンルームの前方に配置された運転席から機体後方への視界の一部が遮られてしまうため、建設機械を使用した作業の効率を低下させてしまう虞がある。
【0020】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、エンジンルームからの冷却風の排出効率を良好に保持しつつ、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできるようにした、建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械のエンジン冷却装置を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の建設機械のカウンタウェイトは、建設機械の上部旋回体の最後尾をなし、エンジン,クーリングパッケージ及び冷却ファンを収容するエンジンルームが前方に隣接される、建設機械のカウンタウェイトであって、該冷却ファンの回転方向が、該カウンタウェイトに面する回転位相においてファン翼が下方に移動するように設定されているものにおいて、該エンジンルームと向き合う面に対し、上下方向に伸びるとともに下方に貫通する溝が該冷却ファンの側方に設けられたことを特徴としている。
【0022】
請求項2記載の本発明の建設機械のカウンタウェイトは、建設機械の上部旋回体の最後尾をなし、エンジン,クーリングパッケージ及び冷却ファンを収容するエンジンルームが前方に隣接される、建設機械のカウンタウェイトであって、該冷却ファンの回転方向が、該カウンタウェイトに面する回転位相においてファン翼が上方に移動するように設定されているものにおいて、該エンジンルームと向き合う面に対し、上下方向に伸びるとともに上方に貫通する溝が該冷却ファンの側方に設けられたことを特徴としている。
【0023】
請求項3記載の本発明の建設機械のエンジンルーム構造は、エンジンと、クーリングパッケージと、該クーリングパッケージを冷却する冷却風を流通させる冷却ファンとを収容する、建設機械のエンジンルームの構造であって、機体後方側の壁面が、上記の請求項1又は2記載の建設機械のカウンタウェイトにおける該溝の形成された面により構成されたことを特徴としている。
【0024】
請求項4記載の本発明の建設機械のエンジン冷却装置は、内部が冷却風通路として機能するエンジンルームと、該エンジンルーム内に設置され冷却風を流通させる冷却ファンと、該エンジンルーム内に設置されたクーリングパッケージとをそなえて構成された、建設機械のエンジン冷却装置において、該エンジンルームの機体後方側の壁面が、上記の請求項1又は2記載の建設機械のカウンタウェイトにおける該溝の形成された面により構成されたことを特徴としている。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、図1〜図6における図中の矢印Xは建設機械の前後方向(以下、エンジンルーム幅方向又は機体前後方向ともいう)を示し、図中の矢印Yは建設機械の左右方向(以下、ファン軸流方向ともいう)を示す。
【0026】
また、以下の各実施形態では、本発明を建設機械として油圧ショベルに適用した例を説明する。
(1)一実施形態
図1は建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図であり、図1を参照して本発明の一実施形態にかかる建設機械について説明する。
【0027】
建設機械は、下部走行体1と、下部走行体1の上側に旋回可能に配設された上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ種々の作業を行う作業装置3と、運転席4とをそなえて構成されている。このうち上部旋回体2には、その機体後方にカウンタウェイト2Aが配置され、カウンタウェイト2Aの機体前方にはエンジンルーム2Bが配置されている。
【0028】
次いで、図2を参照して本発明の一実施形態としてのエンジンルーム構造について説明する。図2はエンジンルーム2Bの機体前方から見た模式的な断面図である。エンジンルーム2Bには、エンジン26がそのクランク軸を機体左右方向Yに向けて設置されており、図2中でエンジン26の右側に軸流式の冷却ファン25が配設されている。この冷却ファン25は、その軸流方向が機体左右方向Yに一致するような姿勢で設置されており、エンジンルーム2Bの内部空間により形成される冷却風通路に、冷却風を流通させるようになっている(ここでは、図2中で左側に冷却風を送り出すようになっている)。なお、ここでは、冷却ファン25はエンジンクランク軸に機械的に連結されたエンジン駆動式であるが、これに限定されず、油圧駆動式でも良い。
【0029】
冷却ファン25のファン軸流方向上流側(図2中右側)には、ラジエータやオイルクーラなどからなるクーリングパッケージ24が設置され、また、エンジン26のファン軸流方向下流側(図2中左側)には、エンジンクランク軸に機械的に連結された油圧ポンプ27が設置されている。
なお、エンジンルーム2Bの内部は、クーリングパッケージ24,エンジン26及び油圧ポンプ27の各相互間で仕切られており、ラジエータ(クーリングパッケージ24)が設置されたラジエータルーム2Ba、エンジン26や冷却ファン25が設置されたメインルーム(以下メインエンジンルームという)2Bb、油圧ポンプ27が設置されたポンプルーム2Bcに分割された構成となっている。
【0030】
ここで、本発明の一実施形態としてのエンジンルーム構造及びカウンタウェイトについて図3及び図4を参照して説明する。図3及び図4は本実施形態のエンジンルーム構造及びカウンタウェイトについて示す図であり、図3(a)は図2の模式的なB1−B1断面図、図3(b)は図2の模式的なB2−B2断面図、図4はエンジンルームを形成する外壁面の一部を破断して示す図であってエンジンルーム内部及びカウンタウェイトの構成を示す模式的な斜視図である。
【0031】
カウンタウェイト2Aは、作業装置3の揚重時において機体のバランスを取る為の重量物であり、機体最前部の作業装置3に対し機体最後尾、つまり、エンジンルーム2Bの後方に配置されており、エンジンルーム2Bはカウンタウェイト2Aの機体前後方向前面などの壁面により規定される内部空間として形成されている。
【0032】
カウンタウェイト2Aは、上記の作業装置の揚重時におけるバランス確保に主体的に寄与するカウンタウェイト本体2Aaと、カウンタウェイト本体2Aaの主に機外側を包むケーシング2Abとをそなえて構成されている〔図3(a),(b)では便宜的にカウンタウェイト本体2Aa及びケーシング2Abを一体に示している〕。
【0033】
そして、カウンタウェイト本体2Aaのエンジンルーム2Bに面する前面には、冷却ファン25(ファン翼)の外周、即ちファン軸流方向Yに対し冷却ファン25と同位置(完全に同位置だけでなく略同位置にある場合も含み、ここでは冷却ファン25の下流側近傍)に上下に伸びるスリット状の溝2Acが形成されている。このスリット状溝2Acはできるだけ長い方が好ましく、ここでは、スリット状溝2Acは、上側は天井面近傍(カウンタウェイト2Aの上面近傍)まで達し、下側はカウンタウェイト2Aの下面まで達している。つまりカウンタウェイト2Aの下側にのみ貫通した形状となっているのである。
【0034】
冷却ファン25により吐出された冷却風は、従来技術で説明したように一般的にクーリングパッケージ24における圧力損失が大きいため、図3(a)中に矢印C1で示すように旋回/半径方向に流れるようになり、冷却ファン25により吐出された冷却風が速やかに冷却ファン25の外周に配置されたスリット状溝2Acに流入するようになる。また、冷却ファン25のファン翼の回転方向が、図3(b)中に矢印D1で示すように、ファン軸流方向上流側から見て時計回りに設定されているため、カウンタウェイト2Aの前面に面する回転位相においては、ファン翼は下方へ移動するようになり、冷却ファン25による冷却風の吐出方向は、図3(b)中に矢印C2〜C4で示すように下方傾向となるので、下方に向けて機外まで貫通するスリット状溝2Acにより滑らかに機外へと案内され矢印C5で示すように排出される
再び図2を参照して説明すると、このようなエンジンルーム構造において、冷却ファン25を作動させることにより、上記導入口22aからエンジンルーム2B(冷却風通路)へ冷却風として取り込まれた外気は、クーリングパッケージ24を通過した後、主に、カウンタウェイト2Aに形成されたスリット状溝2Acを介して機外下方へと排出され、クーリングパッケージ24を通過する際に冷却水及び油圧ポンプ27の作動油を冷却するようになっている。
【0035】
つまり、本実施形態では、エンジン冷却装置は、導入口22a,エンジンルーム2B(機体21内の空間即ち室2Ba,2Bb,2Bcであり、カウンタウェイト2Aなどの壁面により形成される内部空間),クーリングパッケージ24,冷却ファン25及びカウンタウェイト2Aのスリット状溝2Acをそなえて構成されているのである。
【0036】
なお、エンジンルーム2Bに流入した冷却風の一部は、僅かではあるが、エンジン26と油圧ポンプ27との連結部27aと、メインエンジンルーム2Bbとポンプルーム2Bcとの仕切り壁28との隙間を通ってポンプルーム2Bcに流入する。このため、ポンプルーム2Bcに面して機体本体壁面21の下面23にメッシュ状の排出口23bが補助的に設けられており、これらの開口23bから冷却風が機外へと排出されるようになっている。
【0037】
本発明の一実施形態の建設機械のカウンタウェイト,エンジンルーム及びエンジン冷却装置は、上述したように構成されており、図3(a),(b)に示すように冷却風が機外に排出される。
つまり、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風は、冷却ファン25の外周に位置するスリット状溝2Acに直ぐに流入し、このスリット状溝2Acにより機外下方に案内され排出される。
【0038】
上述した従来技術では、騒音が、エンジンルーム上面に形成された冷却風の排出開口から鉛直上方に発せられるため、広い範囲に騒音が広がってしまう。これに対し、本実施形態では、エンジンルーム床面において機外へと開口するスリット状溝2Acから冷却風を効率良く排出できる。この結果、エンジンルーム2Bの天井面22の冷却風の排出口を不要にできる(或いはエンジンルーム2Bの天井面に設ける冷却風排出口の開口面積を従来よりも低減できる)ので、エンジン音や、冷却風がファン翼やクーリングパッケージ24を通過する際に発生する風切り音(以下、「エンジン音など」という)が機外へ鉛直上方に発せられるのを大幅に抑制できるようになる。鉛直下方へと伝播する騒音は、地面により吸収されるようになるので、鉛直上方に発せられるのに較べ、騒音の伝播範囲(伝播する距離及び伝播する方向)を狭めることができるようになる(騒音の広がりを抑制できるようになる)。
【0039】
また、エンジン音などはスリット状溝2Ac内を伝わる際に、スリット状溝2Acを形成するカウンタウェイト2Aの壁面に吸収され減衰されるので、この点でも騒音を低減できる。
さらに、上述したように、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風は、冷却ファン25の外周に位置するスリット状溝2Acに直ぐに流入し、このスリット状溝2Acにより案内されるので、冷却風の排圧を比較的低くすることができ、冷却風の排出効率を良好に保持できるようになる。
【0040】
この結果、天井面22の排出口に限らずエンジンルーム2Bを内部空間として形成する機体壁面21に設ける排出口の開口面積の合計を比較的少なくすることができ、この点でも、エンジン音などの外部への漏洩の、即ち騒音を抑制でき、また、冷却風の背圧を比較的低くできることから冷却ファン25の仕様を下げてコストダウンを図ることができる。或いは、冷却風の排出効率が向上することから、同じ仕様の冷却ファン25を使用してもその風量を増大することが可能となり、熱交換面積の少ない(コンパクトな)クーリングパッケージ24を採用することが可能となる。
【0041】
そして、従来技術では、エンジンルームの天井面の外側に冷却風を排出するためのダクト設けられていたため、このダクトにより、エンジンルーム前方にある運転席からは、その機体後方への視界の一部が遮られていたが、本実施形態では、上述したように良好な冷却風の排出効率が得られることから、かかるエンジンルームの天井面外側のダクトを不要にでき、エンジンルームの前方に配置された運転席4からの視界を良好なものにできる。
【0042】
また、クーリングパッケージ24を通過後の比較的温度の高い冷却風は、エンジンルーム2Bの天井面に設けられた冷却風の導入口22aから比較的離隔した位置にある冷却風排出口(スリット状溝2Acの下端)2Adから、上記導入口22aに対し反対方向に(上記導入口22aからさらに離隔する方向に)排出されるので、上部旋回体の旋回中においても上記のクーリングパッケージ24通過後の比較的温度の高い冷却風が再び上記導入口22aから吸入されてしまうことを防止できる。この結果、クーリングパッケージ24の冷却効果を向上させることができる。
【0043】
なお、上記では、冷却ファン25の回転方向が、図3(b)中に矢印D1で示すように、冷却風流れ方向上流側から見て時計回りに設定されており、カウンタウェイト2Aに面する回転位相においては、冷却ファン25による冷却風の吐出方向は下方傾向となるので、冷却風を滑らかに排出できるようにスリット状溝2Acを下方に貫通させた。これに対し、例えば図3(b)において冷却ファン25の回転方向が反時計回りに設定されている場合には、カウンタウェイト2Aに面する回転位相においては、冷却ファン25による冷却風の吐出方向が上方傾向となるので、冷却風を滑らかに排出できるようにスリット状溝2Acを上方に貫通させればよい。
【0044】
(2)関連実施形態
本発明の関連実施形態としてのカウンタウェイト,エンジンルーム構造及びエンジン冷却装置の機体前方から見た模式的な断面図は上記一実施形態と同様に図2で示される。また、図5及び図6は関連実施形態のエンジンルーム構造及びカウンタウェイトについて示す図であり、図5(a)は図2の模式的なB1−B1断面図、図5(b)は図2の模式的なB2−B2断面図、図6はエンジンルームを形成する外壁面の一部を破断して示す図であってエンジンルーム内部及びカウンタウェイトの構成を示す模式的な斜視図である。
【0045】
本発明の関連実施形態としてのカウンタウェイト2Aは、エンジンルーム2Bを形成するその前面に、上下方向に伸びるスリット状溝2Acと、上下方向に所定の間隔をあけて複数配置された複数の貫通孔2Ae〜2Agとをそなえて構成されている。これらの貫通孔2Ae〜2Agは、スリット状溝2Acから水平方向に伸びるように形成され、カウンタウェイト2Aの機体前後方向後面へ貫通している。スリット状溝2Acは、上方及び下方の何れに対しても貫通しておらず、スリット状溝2Acに流入した冷却風は、上記貫通孔2Ae〜2Agより排出されるようになっている。その他の構成は上記一実施形態と同様である。
【0046】
本発明の関連実施形態はこのように構成されているので、冷却ファン25から吐出された冷却風はスリット状溝2Ac及び貫通孔2Ae〜2Agを介して機外へと滑らかに案内されるので、上記一実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記一実施形態では冷却ファンの回転方向に応じてスリット状溝2Acの貫通する側(つまり冷却風を機外へと排出する排出口の位置)を変更する必要が生じるが、本関連実施形態の構造では、排出口として機能する複数の貫通孔2Ae〜2Agが上下方向に所定の間隔をあけて複数配置されていることから、冷却ファン25の回転方向に関わらず冷却風を滑らかに排出することが可能となり、冷却ファン25の回転方向に関わらず排出口(貫通孔)の配置ひいてはカウンタウェイト2Aの構造を一定とすることが可能となる。したがって、上記一実施形態の構成に較べ、製造工程を簡略化して製造費を低減できるようになる。
【0047】
(3)その他
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本発明は、カウンタウェイト2Aにスリット状溝2Acを設けることで冷却風をエンジンルームから効率よく排出できるようにしたものであり、この結果、従来設けられていたエンジンルーム天井面の排出口を削除して、或いは、エンジンルーム天井面の排出口面積を従来よりも低減して、鉛直上方への騒音を抑制できるようにしたものであるから、上記実施形態ではエンジンルーム2Bの上部(天井面や側面上部)に排出開口を設けない構成としたが、例えばエンジンルーム2Bの上部(天井面や側面上部)に従来設けられていた排出開口よりも小さな排出開口を補助的に設けるようにしても良い。
【0048】
【発明の効果】
カウンタウェイトのエンジンルームと向き合う面に対し、上下方向に伸びるスリット状溝が冷却ファンの側方に設けられていることから、冷却ファンから旋回/半径方向に吐出された冷却風が、上記スリット状溝に速やかに流入し、上記スリット状溝により滑らかに機外へと案内されるようになり、この結果、エンジンルームからの冷却風の排出効率を良好に保持しつつ、従来技術(例えば、上記特許文献2に記載の建設機械)に設けられたような機体上面のダクトを不要として、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態にかかる建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】 本発明の一実施形態としての建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置の全体構成を示す機体前方から見た模式的な断面図である。
【図3】 本発明の一実施形態としての建設機械のカウンタウェイト及び建設機械のエンジンルーム構造について示す図であり、(a)は図2の模式的なB1−B1断面図、(b)は図2の模式的なB2−B2断面図である。
【図4】 本発明の一実施形態としての建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置の構造を示す図であって、エンジンルームを形成する外壁面の一部を破断して示す模式的な斜視図である。
【図5】 本発明の関連実施形態としての建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造について示す図であり、(a)は図2の模式的なB1−B1断面図、(b)は図2の模式的なB2−B2断面図である。
【図6】 本発明の関連実施形態としての建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置の構造を示す図であって、エンジンルームを形成する外壁面の一部を破断して示す模式的な斜視図である。
【図7】 従来の建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図8】 従来の建設機械のエンジンルームの内部構成を示す図であって機体前方から見たエンジンルームの模式的な断面図である。
【図9】 従来の建設機械のカウンタウェイト,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置について示す一部破断して示す模式的な斜視図である。
【図10】 建設機械の冷却装置におけるエンジンルーム内の広ささとクーリングパッケージの厚さとの関係を説明するため図であって、(a)はエンジンルーム内が比較的狭い場合の模式図、(a)はエンジンルーム内が比較的広い場合の模式図である。
【図11】 一般的な軸流形式の冷却ファンの性能曲線を示す模式図である。
【図12】(a),(b)は上流側の圧力損失が比較的小さかった場合の冷却ファン前後の冷却風の流れをベクトルにより示す模式図である。
【図13】(a),(b)は上流側の圧力損失が比較的大きかった場合の冷却ファン前後の冷却風の流れをベクトルにより示す模式図である。
【図14】 従来の建設機械のエンジンルーム構造を示す模式的な斜視図である。
Claims (4)
- 建設機械の上部旋回体の最後尾をなし、エンジン,クーリングパッケージ及び冷却ファンを収容するエンジンルームが前方に隣接される、建設機械のカウンタウェイトであって、
該冷却ファンの回転方向が、該カウンタウェイトに面する回転位相においてファン翼が下方に移動するように設定されているものにおいて、
該エンジンルームと向き合う面に対し、上下方向に伸びるとともに下方に貫通する溝が該冷却ファンの側方に設けられた
ことを特徴とする、建設機械のカウンタウェイト。 - 建設機械の上部旋回体の最後尾をなし、エンジン,クーリングパッケージ及び冷却ファンを収容するエンジンルームが前方に隣接される、建設機械のカウンタウェイトであって、
該冷却ファンの回転方向が、該カウンタウェイトに面する回転位相においてファン翼が上方に移動するように設定されているものにおいて、
該エンジンルームと向き合う面に対し、上下方向に伸びるとともに上方に貫通する溝が該冷却ファンの側方に設けられた
ことを特徴とする、建設機械のカウンタウェイト。 - エンジンと、クーリングパッケージと、該クーリングパッケージを冷却する冷却風を流通させる冷却ファンとを収容する、建設機械のエンジンルームの構造であって、
機体後方側の壁面が、上記の請求項1又は2記載の建設機械のカウンタウェイトにおける該溝の形成された面により構成された
ことを特徴とする、建設機械のエンジンルーム構造。 - 内部が冷却風通路として機能するエンジンルームと、該エンジンルーム内に設置され冷却風を流通させる冷却ファンと、該エンジンルーム内に設置されたクーリングパッケージとをそなえて構成された、建設機械のエンジン冷却装置において、
該エンジンルームの機体後方側の壁面が、上記の請求項1又は2記載の建設機械のカウンタウェイトにおける該溝の形成された面により構成された
ことを特徴とする、建設機械のエンジン冷却装置。
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