JP2005030067A - 建設機械のスイングフレーム,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】建設機械のスイングフレーム,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械のエンジン冷却装置において、エンジンルーム下部における冷却風の流通が滑らかに行なわれるようにし、さらには、鉛直上方へ発せられる騒音を抑制でき、エンジンの冷却を効果的に冷却でき、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできるようにする。
【解決手段】ファン軸流方向を機体左右方向Yに設定された冷却ファンの作動により冷却風が流通するエンジンルームが上方に配置されるスイングフレームであって、左右方向Yに所定の間隔をあけてフレーム本体31に立設され機体前後方向Xに延びる左右一対のメインレール32A,32Bに対し、該エンジンルーム内に位置する部位に開口32Bbを設ける。
【選択図】 図3
【解決手段】ファン軸流方向を機体左右方向Yに設定された冷却ファンの作動により冷却風が流通するエンジンルームが上方に配置されるスイングフレームであって、左右方向Yに所定の間隔をあけてフレーム本体31に立設され機体前後方向Xに延びる左右一対のメインレール32A,32Bに対し、該エンジンルーム内に位置する部位に開口32Bbを設ける。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上部旋回体の底部をなし下部走行体に旋回可能に取り付けられ、エンジンルームが上方に配置された、建設機械のスイングフレーム、並びにそれを使用した建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、油圧ショベル,ホイールローダ等の走行式の建設機械やクレーン等の定置式の建設機械等、種々の建設機械が建設現場,港湾,工場内等の様々な分野において用いられている。これら建設機械の構造は、例えば走行式の建設機械である油圧ショベルでは、図5に示すように下部走行体101と、下部走行体101の上側に旋回可能に配設された上部旋回体102と、上部旋回体102に設けられ種々の作業を行なう作業装置103との3つの部分で構成されている。
【0003】
ここで上部旋回体102内について図6及び図7を参照して説明する。図6はスイングフレームの構成を示す模式的な斜視図、図7は一般的なエンジンルームの内部構成を示す図であって機体前方から見たエンジンルームの模式的な断面図である。
上部旋回体102の底部は主に図6に示すスイングフレーム120により構成され、このスイングフレーム120は下部走行体101に旋回可能に接続されている。スイングフレーム120は、1対のメインレール121,122をそなえており(例えば非特許文献1)、このメインレール121,122の前端部により作業装置103が上下方向に揺動可能に軸支されている。
【0004】
また、図7に示すように、上部旋回体102では、スイングフレーム120上に、エンジン106や油圧ポンプ108等の機器が配設され、エンジン106による油圧ポンプ108の駆動により発生した油圧によって作業装置103(図5参照)を作動させている。
建設機械は、ダム,トンネル,河川,道路等における岩石の掘削やビル,建築物の取り壊し等、一般に厳しい環境下で使用されるが、このような環境下ではエンジン106や油圧ポンプ108等の機器類に加わる負荷が高く、エンジン温度の上昇や作動油の油温の上昇を招きやすい。このため、これら建設機械では、図7に示すように、エンジン106により駆動されるファン105によって生成される冷却風の流路に、比較的大容量のラジエータやオイルクーラなどからなるクーリングパッケージ104をそなえ、これらクーリングパッケージ104によってエンジン冷却水や作動油が冷却される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
つまり、ファン105の回転により、クーリングパッケージ104が設置されたラジエータルーム102Aの上部開口部109,110から外部の空気(冷却風)が吸引され、この空気が、フィン構造のクーリングパッケージ104のコアを通過する際に、エンジン冷却水や作動油を冷却するのである。
そして、メインエンジンルーム102Bには、ファン105からファン軸流方向(図7中において左右方向)に対し所定の距離をあけて、上面に開口部111が、下面に開口部112がそれぞれ設けられている。上面の開口部111は、メッシュ状やルーバ状などに形成された複数の開口からなり、上記ファン軸流方向に対し比較的大きな幅をもって形成されている。一方、下面の開口部112は、作業装置103のアームを上下に揺動可能に支持する一対のメインレール121,122の相互間に配置されており、比較的面積の大きな単一の開口として形成されている。
【0006】
また、油圧ポンプ108が設置されたポンプルーム102Cには、上面に開口部113が、下面に開口部114がそれぞれ設けられており、これらの開口部113,114は、メインエンジンルーム102Bの開口部111と同様に、メッシュ状やルーバ状などに形成された複数の開口からなる。
エンジン冷却水や作動油を冷却して高温となった空気は、メインエンジンルーム102Bの上記排気開口部111,112から外部に排出され、又は、メインエンジンルーム102Bを通り抜けて、ポンプルーム102Cの上記排気開口部113,114から外部に排出される。
【0007】
ところで、特に油圧ショベルでは、ファン105から吐出された空気の流れには、ファン軸流方向の成分が殆どなく、遠心方向の成分や旋回方向の成分(以下、まとめて遠心/旋回方向成分という)が主成分となることが確認されている。
以下、この理由を図8〜図11を参照して説明する。
油圧ショベルの場合、上部旋回体102内部においてラジエータやエンジンなどを搭載できるスペースは図8(a)に示すようになり、図8(b)に示すような他の建設機械のスペースに較べて狭く特にその横断面積(ファン軸流方向に対して直交する断面)が小さくなる。これは、エンジンルームの高さについては高くするとエンジンルーム前方の運転席からの後方への視界が遮られてしまい、エンジンルームの幅〔建設機械の前後長さ〕についてはこれを長くすると機長が長くなって建設機械後端の旋回半径が大きくなり、狭い現場で使うのに不便になるためである。
【0008】
このように横断面積が比較的小さくなる分、油圧ショベルでは、クーリングパッケージ104の厚さ(冷却風の進行方向に対する寸法)を大きく取って、クーリングパッケージ104と冷却風との接触面積ひいてはクーリングパッケージ104の冷却性能を確保するようにしている。この結果、冷却風がクーリングパッケージ104を通過する際に受ける圧力抵抗が比較的大きくなってしまう。
【0009】
建設機械では、コストやサイズを抑えるため冷却ファンには軸流ファンが一般的に使用されている。図9は一般的な軸流ファンの性能曲線を示す模式図である。この性能曲線Lから明らかなように、軸流ファンでは、一般的にファン上流側の圧力損失ΔPが増加するほど、単位時間当たりのファン風量Vが減少する傾向にある。ファン風量Vとは即ち冷却風のファン上流からファン下流への移動量であることから、ファン上流側の圧力損失ΔPが増加するほど、ファン上流からファン下流への直線的な流れである軸流方向の流れが特に得られにくくなる。
【0010】
このため、ファン上流側の圧力損失ΔPが所定値ΔP0未満の低圧力損失域RLにおいては冷却風の流れは図10(a),(b)に示すようになり、ファン上流側の圧力損失ΔPが所定値ΔP0以上の高圧力損失域RHにおいては冷却風の流れは図11(a),(b)に示すようになる〔図10及び図11は何れもその左右方向をファン軸流方向と一致させて示す図であり、図10(a)及び図11(a)では、ファン翼の回転中心線CLより下側みを示している〕。
【0011】
つまり、上記低圧力損失域RLにおいてはファン風量が比較的多くなることから、図10(a)に示すように、ファン上流側ではベクトルFIN,1で代表して示すような比較的大きな風量の軸流が発生し、ファン下流側ではベクトルFOUT,1で代表して示すような流れ、即ち遠心/旋回方向成分ベクトルFC,1よりも軸流方向成分ベクトルFA,1が支配的な流れが発生する。そして、風量は、図10(b)にベクトルで示すように遠心側になるほど大きくなる。
【0012】
これに対し、上記高圧力損失域RHにおいてはファン風量が比較的少なくなることから、図11(a)に示すように、ファン上流側ではベクトルFIN,2で示すような比較的少量の軸流しか発生せず、ファン下流側においては、ベクトルFOUT,2で示すような流れ、即ち軸流方向成分ベクトルFA,2よりも遠心/旋回方向成分ベクトルFC,2が支配的な流れが発生し、風量は、図11(b)にベクトルで示すように遠心側になるほど大きくなる。
【0013】
このようなファン上流側の圧力損失ΔPとファン下流側での冷却風の流れとの関係は、実験やシミュレーションでも確認されている。
そして、上述したように油圧ショベルではクーリングパッケージが厚いためファン上流側の圧力損失ΔPが大きく高圧力損失域で冷却ファンが使用されることとなり、ファン出口側の冷却風の流れ成分は、遠心/旋回方向成分が支配的になるのである。
【0014】
しかしながら、図7に示す上記従来技術では、上述したように、網目状に複数の開口が形成されてなる排気開口部111などが、ファン軸流方向に対してファン105から距離を開けて配設され、また、ファン軸流方向に対して幅を持って形成されているため、メインエンジンルーム102Bに吸引された冷却風は、排出されるまでに上記軸流方向への流れを余儀なくされる。
【0015】
つまり、この従来技術では、遠心/旋回方向成分を流れの主成分とする空気を強制的に軸流方向へ流す構造となるため、乱流が発生するなどして空気の被る圧力損失が比較的大きく、クーリングパッケージ104を通過後の空気の排出が滑らかに行なわれない(排出効率が低い)という課題がある。
排出効率を向上させるために、メインエンジンルーム102Bの開口面積を増加させることも考えられるが、この場合、騒音(エンジン音や、冷却風がクーリングパッケージ104などを通過する際に発生する風切音の外部への漏洩)の増大を招くこととなり、新たな課題が発生する。
【0016】
また、特に、エンジン106よりも下方においてはメインレール121,122により冷却風の流れが大きく阻害されてしまうことから、エンジンルーム床面よりもエンジンルーム天井面を主体に排出開口を形成することとなる。エンジンルーム天井面に開口を設けることは、この開口より鉛直上方に騒音が発せられることとなる。水平方向に発せられる騒音を抑制することは例えば作業場所を遮蔽物により二次元的に囲うなどすれば可能であるが、鉛直上方に発せられる騒音に対しこのような遮蔽物を設けることは大掛かりになり現実的ではなく、また、水平方向に発せられる騒音は地面などにより吸収されるが、鉛直上方に発せられる騒音に対してはこのような吸収物がないためその伝播範囲(伝播する距離及び伝播する方向)が極めて広いものとなってしまう。
【0017】
また、上記の導入口110と排出口111とが比較的隣接して配置されていることから、排出口111から排出された、クーリングパッケージ104と熱交換後の比較的温度の高い冷却風(熱風)が導入口110からエンジンルーム内へ取り込まれるようになる(これを熱風の巻き込みという)。つまり、導入口110と排出口111との間で図7中に矢印Aで示すような循環流が生じてしまうのである。
【0018】
そして、このような熱風の巻き込みが発生すると、クーリングパッケージ104へ供給される冷却風の温度が比較的高くなりクーリングパッケージ104の冷却効率が低下してしまう。この結果、エンジン106がオーバヒートし易くなるという課題がある。或いは、冷却性能を確保するために冷却風との熱交換面積が大きくなってクーリングパッケージ104のサイズが大きくなる課題がある。
【0019】
さて、このような技術に対し、冷却風のエンジンルームからの排出効率を向上させ騒音を低減できるようにした技術として、特許文献2には図12に示すような建設機械が開示されている。この建設機械では、エンジンルーム130の上面に冷却風の導入口131が設けられるとともにエンジンルーム130の上面及び両側面(車体前後面)に冷却の風排出通路(ファン風分流路,ファン風分流ダクト)132〜134が設けられ、この冷却風通路の入り口(図12中で左側端部)は何れも冷却ファンの外周近傍に位置設定されている。このような構成により、冷却ファンから遠心/旋回方向に吹き出された冷却風を少ない開口から効率的に排出し、且つ、エンジンルーム130からの騒音の増大を防止するようにしている。
【0020】
【非特許文献1】
「部品カタログ 320C 320C L 油圧ショベル」,新キャタピラ三菱,2002年9月,XJBP7843−01,p.198
【特許文献1】
実開平3−83324号公報
【特許文献2】
特開2001−193102号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した図12に示す従来技術には、以下のような課題がある。
つまり、上述した図5に示す従来技術と同様に、上記の冷却風通路132,134の排出口132a,134aはエンジンルーム上面に設けられているため、これらの排出口132a,134aからは鉛直上方に向けて騒音が発せられてしまい、騒音の伝播範囲が極めて広いものとなってしまう。
【0022】
さらに、上述した図5に示す従来技術と同様に熱風の巻き込みを十分に抑制できないという課題がある。つまり、排出開口132a,134aからは熱風が上方に向けて排出されるため、導入開口131から比較的離隔して配置されているものの上方から空気を取り込む導入開口131との間には循環流が発生する虞があるのである。
【0023】
特に、上部旋回体を旋回させた場合には容易に上部へ排出した熱風を再度吸入してしまう虞がある。つまり、導入開口131と排出開口132a,134aとを図示するように建設機械の幅方向の両端に離隔して配置したとしても、上部旋回体の旋回にかかる導入開口131の移動範囲と排出開口132a,134aの移動範囲とが重なりあうようになるので、排出開口132a,134aから機体上方へと排出された冷却風(熱風)が導入開口131により再度吸入されてしまうといったことが生じるのである。
【0024】
また、機体上面に設けられたファン風分流ダクト133によりエンジンルームの前方に配置された運転席から機体後方への視界の一部が遮られてしまう課題もある。
さらに、上述した図5に示す従来技術の課題として説明した、スイングフレームのメインレールによりエンジンルーム下部における冷却風の流通が阻害されてしまう点については、何ら着目されていない。
【0025】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、エンジンルーム下部における冷却風の流通が滑らかに行なわれるようにし、さらには、鉛直上方へ発せられる騒音を抑制でき、エンジン冷却水及び油圧ポンプ作動油を効果的に冷却でき、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできるようにした、建設機械のスイングフレーム,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の建設機械のスイングフレームは、上部旋回体の底部をなし下部走行体に旋回可能に取り付けられ、ファン軸流方向を該上部旋回体の左右方向に設定された冷却ファンによる冷却風の流通するエンジンルームが上方に配置され、該上部旋回体の底部を形成するフレーム本体と、該上部旋回体の左右方向に所定の間隔をあけて該フレーム本体に立設され該上部旋回体の前後方向に延びる左右一対のメインレールと、該フレーム本体に立設され該左右方向に延びる複数の梁とを有する、建設機械のスイングフレームであって、上記一対のメインレールの該エンジンルーム内に位置する部位にそれぞれ開口が形成されたことを特徴としている。
【0027】
請求項2記載の本発明の建設機械のスイングフレームは、上記の請求項1記載の建設機械のスイングフレームにおいて、上記一対のメインレールに設けられた開口の相互間における該冷却風の流通を案内するためのガイド部材をそなえたことを特徴としている。
請求項3記載の本発明の建設機械のスイングフレームは、上記の請求項2記載の建設機械のスイングフレームにおいて、該ガイド部材が、上記一対のメインレール及び上記の複数の梁のうちの該開口の該前後方向両側に配置された二つの梁により囲まれる領域を蓋うように配置された、プレートにより構成されたことを特徴としている。
【0028】
請求項4記載の本発明の建設機械のエンジンルーム構造は、エンジンと、クーリングパッケージと、該クーリングパッケージを冷却する冷却風を流通させる冷却ファンとを収容する建設機械のエンジンルームの構造であって、底部が、請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のスイングフレームの一部であって上記一対のメインフレームにそれぞれ形成された開口を含む部位をそなえて構成されたことを特徴としている。
【0029】
請求項5記載の本発明の建設機械の冷却装置は、内部が冷却風通路として機能するエンジンルームと、該エンジンルーム内に設置され冷却風を流通させる冷却ファンと、該エンジンルーム内に設置されたクーリングパッケージとをそなえて構成された、建設機械の冷却装置において、該エンジンルームの底部が、請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のスイングフレームの一部であって上記一対のメインフレームにそれぞれ形成された開口を含む部位をそなえて構成されたことを特徴としている。
【0030】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、図1〜図4における図中の矢印Xは建設機械の前後方向(以下、エンジンルーム幅方向ともいう)を示し、図中の矢印Yは建設機械の左右方向(以下、ファン軸流方向ともいう)を示す。
【0031】
また、以下の実施形態では、本発明を建設機械として油圧ショベルに適用した例を説明する。
図1は建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図であり、図1を参照して本発明の一実施形態にかかる建設機械について説明する。
建設機械は、下部走行体1と、下部走行体1の上側に旋回可能に配設された上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ種々の作業を行う作業装置3と、運転席4とをそなえて構成されている。このうち上部旋回体2には、その機体後方にカウンタウェイト2Aが配置され、カウンタウェイト2Aの機体前方にはエンジンルーム2Bが配置されている。
【0032】
次いで、図2を参照して本発明の一実施形態としてのエンジンルーム構造について説明する。図2はエンジンルーム2Bの機体前方から見た模式的な断面図である。エンジンルーム2Bには、エンジン26がそのクランク軸を機体左右方向Yに向けて設置されており、図2中でエンジン26の右側に軸流式の冷却ファン25が配設されている。この冷却ファンは、その軸流方向が機体左右方向Yに一致するような姿勢で設置されており、エンジンルーム2Bの内部空間により形成される冷却風通路に、冷却風を流通させるようになっている(ここでは、図2中で左側に冷却風を送り出すようになっている)。なお、ここでは、冷却ファン25はエンジンクランク軸に機械的に連結されたエンジン駆動式であるが、これに限定されず、油圧駆動式でも良い。
【0033】
冷却ファン25のファン軸流方向上流側(図2中右側)には、ラジエータやオイルクーラなどからなるクーリングパッケージ24が設置され、また、エンジン26のファン軸流方向下流側(図2中左側)には、エンジンクランク軸に機械的に連結された油圧ポンプ27が設置されている。
なお、エンジンルーム2Bの内部は、クーリングパッケージ24,エンジン26及び油圧ポンプ27の各相互間で仕切られており、ラジエータ(クーリングパッケージ24)が設置されたラジエータルーム2Ba、エンジン26や冷却ファン25が設置されたメインルーム(以下メインエンジンルームという)2Bb、油圧ポンプ27が設置されたポンプルーム2Bcに分割された構成となっている。
【0034】
さて、エンジンルーム2Bの底部は、下部走行体2に旋回可能に取り付けられたスイングフレーム30の一部により形成されている。
ここで、スイングフレーム30について図3及び図4を参照して説明する。
図3及び図4はスイングフレーム30の構成を示す図であり、図3はその全体構成を示す模式的な斜視図、図4(a),(b)はその部分構成を示す模式的な斜視図であある。
【0035】
スイングフレーム30は、エンジンルーム2B(下部走行体2)の底部(床面)をなすフレーム本体31と、フレーム本体31に立設され機体前後方向Xに延びる一対の(2つの)メインレール32A,32Bと、フレーム本体31と平行の姿勢でメインレール32A,32Bに取り付けられたプレート33とをそなえて構成されている。
【0036】
メインレール32A,32Bは、その機体前方の端部32Aa,32Baで作業装置3を上下方向に揺動可能に軸支するものであり、クーリングパッケージ24や冷却ファン25やエンジン26などを収容するエンジンルーム内に位置する部分に、それぞれ開口32Ab,32Bbがそれぞれ形成されている。
プレート33は、その機体左右方向Yの両端部を、開口32Ab,32Bbよりも上方(エンジンルーム内側)でメインレール32A,32Bに固定されるとともに、その機体前後方向Xの両端部を、フレーム本体31に立設され機体左右方向Yに延びる梁(ディスタンスプレート)34a,34bに固定されている。つまり、プレート33は、メインレール32A,32B及び梁34a,34bにより区画される領域に対し蓋をしているのである。
【0037】
このようにスイングフレーム30を構成する結果、図2に示すように、ファン軸流方向Yで上流側のメインレール32Aの開口32Abを入口とし、ファン軸流方向Yで下流側のメインレール32Bの開口32Bbを出口とする冷却風の風路35が、フレーム本体31,メインレール32A,32B,プレート(ガイド部材)33及び梁34a,34bにより形成されることとなる。
【0038】
一般的に、冷却ファン25は、メインレール32Aのファン軸流方向上流側直近に配置されることが多く、この結果、メインレール32Aに形成される上記風路35の入口となる開口32Abは、冷却ファン25の外周、即ちファン軸流方向Yに対し冷却ファン25と同位置(完全に同位置だけでなく略同位置にある場合も含む)に位置し、ここでは、冷却ファン25の直下(ファン軸流方向Yに対して直ぐ下流側)に位置する。
【0039】
従来技術で説明したように一般的にクーリングパッケージ24における圧力損失が大きいため、冷却ファン25により吐出された冷却風は旋回/半径方向に流れるようになり、このように風路35の入口(開口)32Abが冷却ファン25の外周にあることから、冷却ファン25により吐出された冷却風が速やかに風路35に流入し、風路35により案内されるようになる。
【0040】
メインレール32Aひいては開口32Abが、冷却ファン25からファン軸流方向下流側に比較的離隔している場合には、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風を速やかに開口32Abに案内できるように、プレート33の先端を冷却ファン25側に向けて開口32Abを挿通させるようにしたり、或いは、プレート33とは別に、メインレール32Aの冷却ファン25側にガイドを取り付けても良い(この場合、プレート33と上記ガイドとから本発明のガイド部材が構成されることとなる)。即ち、ガイド部材のファン軸流方向上流側の先端が、冷却ファン25の外周に位置するように、メインレール32Aよりもファン軸流方向上流側にガイド部材を延設しても良い。
なお、プレート33は、上方のオイルパン26aと干渉しないように、或はオイルパン26aとの間に所定の間隔が保持されるよう、ファン軸流方向中央が下方に凹んだ形状となっている。
【0041】
さて、冷却ファン25よりもファン軸流方向Yで上流側には、ラジエータルーム2Baの天井面に冷却風の導入口22aが設けられる一方、冷却ファン25よりもファン軸流方向Yで下流側には、ポンプルーム2Bcの側面下方及び床面にメッシュ状或はルーバ状の冷却風の排出口22b,22cが設けられている。上記のスイングフレーム30と一体に形成される風路35により冷却風はファン軸流方向Yに沿ってポンプルーム2Bcへと案内されるため、特にポンプルーム2Bcの側面下方に設けられた排出口22bから排出されるようになる。なお、排出口22bは、ルーバにより形成されており、建設機械の周辺にいる作業者に対し影響を与えないように、冷却風は下方又は上方(ここでは下方)に向けて排出されるようになっている。
【0042】
また、ここでは、冷却風の排出口22b,22cをポンプルーム2Bcの側面下方及び床面に設けているが、冷却風の排出口をポンプルーム2Bcの側面上方及び天井面に設けることも可能である。
そして、このようなエンジンルーム構造において、冷却ファン25を作動させることにより、上記導入口22aからエンジンルーム2B(冷却風通路)へ冷却風として取り込まれた外気は、クーリングパッケージ24を通過した後、上記のスイングフレーム30と一体に形成される風路35によりポンプルーム2Bcへと案内され、上記排出口22b,22cから外部へと排出され、クーリングパッケージ24を通過する際に冷却水及び油圧ポンプ27の作動油を冷却するようになっている。
【0043】
つまり、本実施形態では、冷却装置は、導入口22a,エンジンルーム2B(機体21内の空間即ち室2Ba,2Bb,2Bc),クーリングパッケージ24,冷却ファン25,排出口22b,22c及びスイングフレーム30のエンジンルーム2Bに面する部位をそなえて構成されているのである。
【0044】
本発明の一実施形態の建設機のスイングフレーム,エンジンルーム及び冷却装置は、上述したように構成されており、図2に示すように冷却風が機外に排出される。
つまり、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風は、冷却ファン25の外周に位置する開口32Abを入口としスイングフレーム30と一体に形成される風路35に直ぐに流入し、この風路35によりファン軸流方向Yに案内されてポンプルーム2Bcへ水平に流れ込み、ポンプルーム2Bcの下方に設けられた排出口22b,22cから排出される。
【0045】
上述した従来技術では、騒音が、エンジンルーム上面に形成された冷却風の排出開口から鉛直上方に発せられるため、広い範囲に騒音が広がってしまう。これに対し、本実施形態では、スイングフレーム30の風路35がエンジンルーム2Bの下部に設けられることから、この風路35を介してエンジンルーム2B(ポンプルーム2Bc)の下部に設けられた排出口22b,22cから冷却風を効率良く排出できるようになる。この結果、エンジンルーム2Bの天井面に冷却風の排出口を不要にできるので、エンジン音や、冷却風がファン翼やクーリングパッケージ24を通過する際に発生する風切り音(以下、「エンジン音など」という)が機外へ鉛直上方に発せられるのを大幅に抑制できるようになる。
【0046】
また、エンジン音などは、排出口22cからは矢印N1で示すように斜め下方に伝播しながら機外へと漏洩し、排出口22dからは矢印N2で示すように鉛直下方に伝播しながら機外へと漏洩するようになる。
斜め下方へと伝播する騒音は、主に地面により吸収されるようになり、或いは、建設機械の作業場所を水平方向に対し遮蔽物により囲えるようになり、また、鉛直下方へと伝播する騒音は、地面により吸収されるようになるので、騒音の伝播範囲(伝播する距離及び伝播する方向)を狭めることができるようになる(騒音の広がりを抑制できるようになる)。
【0047】
また、エンジン音などは風路35を伝わる際に、風路35を形成するスイングフレーム本体31やプレート33に吸収され減衰されるので、この点でも騒音を低減できる。
さらに、エンジン音などの一部は、図2中に矢印N3で示すようにプレート33及びスイングフレーム本体31を透過して、騒音として外部へ漏洩するが、従来のスイングフレームの構造に較べ、プレート33により遮蔽されるようになる分、騒音を低減できる。
【0048】
さらに、上述したように、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風は、冷却ファン25の外周に位置する開口32Abを介して風路35に直ぐに流入し、この風路35により案内されるので、冷却風の排圧を比較的低くすることができ、冷却風の排出効率を良好に保持できるようになる。
この結果、エンジンルーム2Bの開口面積を比較的少なくすることができ、この点でも、エンジン音などの外部への漏洩の、即ち騒音を抑制でき、また、冷却風の背圧を比較的低くできることから冷却ファン25の仕様を下げてコストダウンを図ることができる。或いは、冷却風の排出効率が向上することから、同じ仕様の冷却ファン25を使用してもその風量を増大することが可能となり、熱交換面積の少ない(コンパクトな)クーリングパッケージ24を採用することが可能となる。
【0049】
そして、従来技術では、エンジンルームの天井面の外側に冷却風を排出するためのダクト設けられていたため、このダクトにより、エンジンルーム前方にある運転席からのは、その機体後方への視界の一部が遮られていたが、本実施形態では、上述したように良好な冷却風の排出効率が得られることから、かかるエンジンルームの天井面外側のダクトを不要にでき、エンジンルームの前方に配置された運転席4からの視界を良好なものにできる。
【0050】
また、クーリングパッケージ24を通過後の比較的温度の高い冷却風は、エンジンルーム2Bの天井面に設けられた冷却風の導入口22aから比較的離隔した位置にあるエンジンルーム2Bの下部に設けられた排出口22b,22cから、上記導入口22aに対し反対方向に(上記導入口22aからさらに離隔する方向に)排出されるので、上部旋回体の旋回中においても上記のクーリングパッケージ24通過後の比較的温度の高い冷却風が再び上記導入口22aから吸入されてしまうことを防止できる。この結果、クーリングパッケージ24の冷却効果を向上させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本発明は、スイングフレームと一体に冷却風の風路をエンジンルーム2Bの下部に設けることで、この風路に近接させてエンジンルームの下部に設けた排出口から効率よく冷却風を排出できるようにしたものであり、この結果、従来設けられていたエンジンルーム天井面の排出口を削除して、或いは、エンジンルーム天井面の排出口面積を従来よりも低減して、鉛直上方への騒音を抑制できるようにしたものであるから、上記実施形態ではエンジンルーム2Bの上部(天井面や側面上部)に排出開口を設けない構成としたが、例えばメインエンジンルーム2Bbやポンプルーム2Bcの上部(天井面や側面上部)に従来設けられていた排出開口よりも小さな排出開口を補助的に設けるようにしても良い。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、エンジンルーム(上部旋回体)の床面(底部)をなすスイングフレームに立設されたメインレールにそれぞれ開口が形成されるので、エンジンルームの床面近傍においてこれらの開口を通って冷却風が滑らかに流れるようになり、この結果、エンジンルームを形成する壁面に設ける冷却風排出用の開口をエンジンルームの下部(床面や側面下部)に設けることが可能となり、従来設けられていたエンジンルーム天井面の開口が不要になり、或いはエンジンルーム天井面の開口面積が低減され、鉛直上方へと発せられる騒音を低減できるようになる。また、上記特許文献2に記載の建設機械に設けられたような機体上面のダクトを不要とすることが可能となる結果、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできる。
【0053】
また、冷却風を上記のメインレールに設けられた開口を流通させる結果、エンジンルームに形成される冷却風の排出口を、通常エンジンルーム天井面に形成される冷却風の導入口から離隔させ、また、この排出口から冷却風の導入口とは反対側に冷却風を排出することが可能となるので、エンジンルームの排出口から排出されたクーリングパッケージ通過後の比較的高温の冷却風がエンジンルーム内に再び導入されてしまう、所謂「熱風の巻き込み」を防止でき、クーリングパッケージによるエンジン冷却水及び油圧ポンプ作動油の冷却を効果的に行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態としての建設機械の冷却装置の全体構成を示す機体前方から見た模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるスイングフレームの全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態としてのスイングフレームについて示す図であり、(a)はその要部を示す模式的な斜視図、(b)はそのプレート(ガイド部材)を抜き出して示す模式的な斜視図である。
【図5】従来の建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図6】従来のスイングフレームの全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図7】従来の建設機械のエンジンルームの内部構成を示す図であって機体前方から見たエンジンルームの模式的な断面図である。
【図8】建設機械の冷却装置におけるエンジンルーム内の広ささとクーリングパッケージの厚さとの関係を説明するため図であって、(a)はエンジンルーム内が比較的狭い場合の模式図、(a)はエンジンルーム内が比較的広い場合の模式図である。
【図9】一般的な軸流形式の冷却ファンの性能曲線を示す模式図である。
【図10】(a),(b)は上流側の圧力損失が比較的小さかった場合の冷却ファン前後の冷却風の流れをベクトルにより示す模式図である。
【図11】(a),(b)は上流側の圧力損失が比較的大きかった場合の冷却ファン前後の冷却風の流れをベクトルにより示す模式図である。
【図12】従来の建設機械のエンジンルーム構造を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
1 下部走行体
2 上部旋回体
2A カウンタウェイト
2B エンジンルーム
2Ba ラジエータルーム
2Bb メインエンジンルーム
2Bc ポンプルーム
3 作業装置
4 運転席
22a エンジンルーム導入口
22b,22c エンジンルーム排出口
24 クーリングパッケージ
25 冷却ファン
26 エンジン
27 エンジンポンプ
30 スイングフレーム
31 スイングフレーム本体
32A,32B メインレール
32Ab,32Bb 開口
33 プレート(ガイド部材)
【発明の属する技術分野】
本発明は、上部旋回体の底部をなし下部走行体に旋回可能に取り付けられ、エンジンルームが上方に配置された、建設機械のスイングフレーム、並びにそれを使用した建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、油圧ショベル,ホイールローダ等の走行式の建設機械やクレーン等の定置式の建設機械等、種々の建設機械が建設現場,港湾,工場内等の様々な分野において用いられている。これら建設機械の構造は、例えば走行式の建設機械である油圧ショベルでは、図5に示すように下部走行体101と、下部走行体101の上側に旋回可能に配設された上部旋回体102と、上部旋回体102に設けられ種々の作業を行なう作業装置103との3つの部分で構成されている。
【0003】
ここで上部旋回体102内について図6及び図7を参照して説明する。図6はスイングフレームの構成を示す模式的な斜視図、図7は一般的なエンジンルームの内部構成を示す図であって機体前方から見たエンジンルームの模式的な断面図である。
上部旋回体102の底部は主に図6に示すスイングフレーム120により構成され、このスイングフレーム120は下部走行体101に旋回可能に接続されている。スイングフレーム120は、1対のメインレール121,122をそなえており(例えば非特許文献1)、このメインレール121,122の前端部により作業装置103が上下方向に揺動可能に軸支されている。
【0004】
また、図7に示すように、上部旋回体102では、スイングフレーム120上に、エンジン106や油圧ポンプ108等の機器が配設され、エンジン106による油圧ポンプ108の駆動により発生した油圧によって作業装置103(図5参照)を作動させている。
建設機械は、ダム,トンネル,河川,道路等における岩石の掘削やビル,建築物の取り壊し等、一般に厳しい環境下で使用されるが、このような環境下ではエンジン106や油圧ポンプ108等の機器類に加わる負荷が高く、エンジン温度の上昇や作動油の油温の上昇を招きやすい。このため、これら建設機械では、図7に示すように、エンジン106により駆動されるファン105によって生成される冷却風の流路に、比較的大容量のラジエータやオイルクーラなどからなるクーリングパッケージ104をそなえ、これらクーリングパッケージ104によってエンジン冷却水や作動油が冷却される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
つまり、ファン105の回転により、クーリングパッケージ104が設置されたラジエータルーム102Aの上部開口部109,110から外部の空気(冷却風)が吸引され、この空気が、フィン構造のクーリングパッケージ104のコアを通過する際に、エンジン冷却水や作動油を冷却するのである。
そして、メインエンジンルーム102Bには、ファン105からファン軸流方向(図7中において左右方向)に対し所定の距離をあけて、上面に開口部111が、下面に開口部112がそれぞれ設けられている。上面の開口部111は、メッシュ状やルーバ状などに形成された複数の開口からなり、上記ファン軸流方向に対し比較的大きな幅をもって形成されている。一方、下面の開口部112は、作業装置103のアームを上下に揺動可能に支持する一対のメインレール121,122の相互間に配置されており、比較的面積の大きな単一の開口として形成されている。
【0006】
また、油圧ポンプ108が設置されたポンプルーム102Cには、上面に開口部113が、下面に開口部114がそれぞれ設けられており、これらの開口部113,114は、メインエンジンルーム102Bの開口部111と同様に、メッシュ状やルーバ状などに形成された複数の開口からなる。
エンジン冷却水や作動油を冷却して高温となった空気は、メインエンジンルーム102Bの上記排気開口部111,112から外部に排出され、又は、メインエンジンルーム102Bを通り抜けて、ポンプルーム102Cの上記排気開口部113,114から外部に排出される。
【0007】
ところで、特に油圧ショベルでは、ファン105から吐出された空気の流れには、ファン軸流方向の成分が殆どなく、遠心方向の成分や旋回方向の成分(以下、まとめて遠心/旋回方向成分という)が主成分となることが確認されている。
以下、この理由を図8〜図11を参照して説明する。
油圧ショベルの場合、上部旋回体102内部においてラジエータやエンジンなどを搭載できるスペースは図8(a)に示すようになり、図8(b)に示すような他の建設機械のスペースに較べて狭く特にその横断面積(ファン軸流方向に対して直交する断面)が小さくなる。これは、エンジンルームの高さについては高くするとエンジンルーム前方の運転席からの後方への視界が遮られてしまい、エンジンルームの幅〔建設機械の前後長さ〕についてはこれを長くすると機長が長くなって建設機械後端の旋回半径が大きくなり、狭い現場で使うのに不便になるためである。
【0008】
このように横断面積が比較的小さくなる分、油圧ショベルでは、クーリングパッケージ104の厚さ(冷却風の進行方向に対する寸法)を大きく取って、クーリングパッケージ104と冷却風との接触面積ひいてはクーリングパッケージ104の冷却性能を確保するようにしている。この結果、冷却風がクーリングパッケージ104を通過する際に受ける圧力抵抗が比較的大きくなってしまう。
【0009】
建設機械では、コストやサイズを抑えるため冷却ファンには軸流ファンが一般的に使用されている。図9は一般的な軸流ファンの性能曲線を示す模式図である。この性能曲線Lから明らかなように、軸流ファンでは、一般的にファン上流側の圧力損失ΔPが増加するほど、単位時間当たりのファン風量Vが減少する傾向にある。ファン風量Vとは即ち冷却風のファン上流からファン下流への移動量であることから、ファン上流側の圧力損失ΔPが増加するほど、ファン上流からファン下流への直線的な流れである軸流方向の流れが特に得られにくくなる。
【0010】
このため、ファン上流側の圧力損失ΔPが所定値ΔP0未満の低圧力損失域RLにおいては冷却風の流れは図10(a),(b)に示すようになり、ファン上流側の圧力損失ΔPが所定値ΔP0以上の高圧力損失域RHにおいては冷却風の流れは図11(a),(b)に示すようになる〔図10及び図11は何れもその左右方向をファン軸流方向と一致させて示す図であり、図10(a)及び図11(a)では、ファン翼の回転中心線CLより下側みを示している〕。
【0011】
つまり、上記低圧力損失域RLにおいてはファン風量が比較的多くなることから、図10(a)に示すように、ファン上流側ではベクトルFIN,1で代表して示すような比較的大きな風量の軸流が発生し、ファン下流側ではベクトルFOUT,1で代表して示すような流れ、即ち遠心/旋回方向成分ベクトルFC,1よりも軸流方向成分ベクトルFA,1が支配的な流れが発生する。そして、風量は、図10(b)にベクトルで示すように遠心側になるほど大きくなる。
【0012】
これに対し、上記高圧力損失域RHにおいてはファン風量が比較的少なくなることから、図11(a)に示すように、ファン上流側ではベクトルFIN,2で示すような比較的少量の軸流しか発生せず、ファン下流側においては、ベクトルFOUT,2で示すような流れ、即ち軸流方向成分ベクトルFA,2よりも遠心/旋回方向成分ベクトルFC,2が支配的な流れが発生し、風量は、図11(b)にベクトルで示すように遠心側になるほど大きくなる。
【0013】
このようなファン上流側の圧力損失ΔPとファン下流側での冷却風の流れとの関係は、実験やシミュレーションでも確認されている。
そして、上述したように油圧ショベルではクーリングパッケージが厚いためファン上流側の圧力損失ΔPが大きく高圧力損失域で冷却ファンが使用されることとなり、ファン出口側の冷却風の流れ成分は、遠心/旋回方向成分が支配的になるのである。
【0014】
しかしながら、図7に示す上記従来技術では、上述したように、網目状に複数の開口が形成されてなる排気開口部111などが、ファン軸流方向に対してファン105から距離を開けて配設され、また、ファン軸流方向に対して幅を持って形成されているため、メインエンジンルーム102Bに吸引された冷却風は、排出されるまでに上記軸流方向への流れを余儀なくされる。
【0015】
つまり、この従来技術では、遠心/旋回方向成分を流れの主成分とする空気を強制的に軸流方向へ流す構造となるため、乱流が発生するなどして空気の被る圧力損失が比較的大きく、クーリングパッケージ104を通過後の空気の排出が滑らかに行なわれない(排出効率が低い)という課題がある。
排出効率を向上させるために、メインエンジンルーム102Bの開口面積を増加させることも考えられるが、この場合、騒音(エンジン音や、冷却風がクーリングパッケージ104などを通過する際に発生する風切音の外部への漏洩)の増大を招くこととなり、新たな課題が発生する。
【0016】
また、特に、エンジン106よりも下方においてはメインレール121,122により冷却風の流れが大きく阻害されてしまうことから、エンジンルーム床面よりもエンジンルーム天井面を主体に排出開口を形成することとなる。エンジンルーム天井面に開口を設けることは、この開口より鉛直上方に騒音が発せられることとなる。水平方向に発せられる騒音を抑制することは例えば作業場所を遮蔽物により二次元的に囲うなどすれば可能であるが、鉛直上方に発せられる騒音に対しこのような遮蔽物を設けることは大掛かりになり現実的ではなく、また、水平方向に発せられる騒音は地面などにより吸収されるが、鉛直上方に発せられる騒音に対してはこのような吸収物がないためその伝播範囲(伝播する距離及び伝播する方向)が極めて広いものとなってしまう。
【0017】
また、上記の導入口110と排出口111とが比較的隣接して配置されていることから、排出口111から排出された、クーリングパッケージ104と熱交換後の比較的温度の高い冷却風(熱風)が導入口110からエンジンルーム内へ取り込まれるようになる(これを熱風の巻き込みという)。つまり、導入口110と排出口111との間で図7中に矢印Aで示すような循環流が生じてしまうのである。
【0018】
そして、このような熱風の巻き込みが発生すると、クーリングパッケージ104へ供給される冷却風の温度が比較的高くなりクーリングパッケージ104の冷却効率が低下してしまう。この結果、エンジン106がオーバヒートし易くなるという課題がある。或いは、冷却性能を確保するために冷却風との熱交換面積が大きくなってクーリングパッケージ104のサイズが大きくなる課題がある。
【0019】
さて、このような技術に対し、冷却風のエンジンルームからの排出効率を向上させ騒音を低減できるようにした技術として、特許文献2には図12に示すような建設機械が開示されている。この建設機械では、エンジンルーム130の上面に冷却風の導入口131が設けられるとともにエンジンルーム130の上面及び両側面(車体前後面)に冷却の風排出通路(ファン風分流路,ファン風分流ダクト)132〜134が設けられ、この冷却風通路の入り口(図12中で左側端部)は何れも冷却ファンの外周近傍に位置設定されている。このような構成により、冷却ファンから遠心/旋回方向に吹き出された冷却風を少ない開口から効率的に排出し、且つ、エンジンルーム130からの騒音の増大を防止するようにしている。
【0020】
【非特許文献1】
「部品カタログ 320C 320C L 油圧ショベル」,新キャタピラ三菱,2002年9月,XJBP7843−01,p.198
【特許文献1】
実開平3−83324号公報
【特許文献2】
特開2001−193102号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した図12に示す従来技術には、以下のような課題がある。
つまり、上述した図5に示す従来技術と同様に、上記の冷却風通路132,134の排出口132a,134aはエンジンルーム上面に設けられているため、これらの排出口132a,134aからは鉛直上方に向けて騒音が発せられてしまい、騒音の伝播範囲が極めて広いものとなってしまう。
【0022】
さらに、上述した図5に示す従来技術と同様に熱風の巻き込みを十分に抑制できないという課題がある。つまり、排出開口132a,134aからは熱風が上方に向けて排出されるため、導入開口131から比較的離隔して配置されているものの上方から空気を取り込む導入開口131との間には循環流が発生する虞があるのである。
【0023】
特に、上部旋回体を旋回させた場合には容易に上部へ排出した熱風を再度吸入してしまう虞がある。つまり、導入開口131と排出開口132a,134aとを図示するように建設機械の幅方向の両端に離隔して配置したとしても、上部旋回体の旋回にかかる導入開口131の移動範囲と排出開口132a,134aの移動範囲とが重なりあうようになるので、排出開口132a,134aから機体上方へと排出された冷却風(熱風)が導入開口131により再度吸入されてしまうといったことが生じるのである。
【0024】
また、機体上面に設けられたファン風分流ダクト133によりエンジンルームの前方に配置された運転席から機体後方への視界の一部が遮られてしまう課題もある。
さらに、上述した図5に示す従来技術の課題として説明した、スイングフレームのメインレールによりエンジンルーム下部における冷却風の流通が阻害されてしまう点については、何ら着目されていない。
【0025】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、エンジンルーム下部における冷却風の流通が滑らかに行なわれるようにし、さらには、鉛直上方へ発せられる騒音を抑制でき、エンジン冷却水及び油圧ポンプ作動油を効果的に冷却でき、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできるようにした、建設機械のスイングフレーム,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の建設機械のスイングフレームは、上部旋回体の底部をなし下部走行体に旋回可能に取り付けられ、ファン軸流方向を該上部旋回体の左右方向に設定された冷却ファンによる冷却風の流通するエンジンルームが上方に配置され、該上部旋回体の底部を形成するフレーム本体と、該上部旋回体の左右方向に所定の間隔をあけて該フレーム本体に立設され該上部旋回体の前後方向に延びる左右一対のメインレールと、該フレーム本体に立設され該左右方向に延びる複数の梁とを有する、建設機械のスイングフレームであって、上記一対のメインレールの該エンジンルーム内に位置する部位にそれぞれ開口が形成されたことを特徴としている。
【0027】
請求項2記載の本発明の建設機械のスイングフレームは、上記の請求項1記載の建設機械のスイングフレームにおいて、上記一対のメインレールに設けられた開口の相互間における該冷却風の流通を案内するためのガイド部材をそなえたことを特徴としている。
請求項3記載の本発明の建設機械のスイングフレームは、上記の請求項2記載の建設機械のスイングフレームにおいて、該ガイド部材が、上記一対のメインレール及び上記の複数の梁のうちの該開口の該前後方向両側に配置された二つの梁により囲まれる領域を蓋うように配置された、プレートにより構成されたことを特徴としている。
【0028】
請求項4記載の本発明の建設機械のエンジンルーム構造は、エンジンと、クーリングパッケージと、該クーリングパッケージを冷却する冷却風を流通させる冷却ファンとを収容する建設機械のエンジンルームの構造であって、底部が、請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のスイングフレームの一部であって上記一対のメインフレームにそれぞれ形成された開口を含む部位をそなえて構成されたことを特徴としている。
【0029】
請求項5記載の本発明の建設機械の冷却装置は、内部が冷却風通路として機能するエンジンルームと、該エンジンルーム内に設置され冷却風を流通させる冷却ファンと、該エンジンルーム内に設置されたクーリングパッケージとをそなえて構成された、建設機械の冷却装置において、該エンジンルームの底部が、請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のスイングフレームの一部であって上記一対のメインフレームにそれぞれ形成された開口を含む部位をそなえて構成されたことを特徴としている。
【0030】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、図1〜図4における図中の矢印Xは建設機械の前後方向(以下、エンジンルーム幅方向ともいう)を示し、図中の矢印Yは建設機械の左右方向(以下、ファン軸流方向ともいう)を示す。
【0031】
また、以下の実施形態では、本発明を建設機械として油圧ショベルに適用した例を説明する。
図1は建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図であり、図1を参照して本発明の一実施形態にかかる建設機械について説明する。
建設機械は、下部走行体1と、下部走行体1の上側に旋回可能に配設された上部旋回体2と、上部旋回体2に設けられ種々の作業を行う作業装置3と、運転席4とをそなえて構成されている。このうち上部旋回体2には、その機体後方にカウンタウェイト2Aが配置され、カウンタウェイト2Aの機体前方にはエンジンルーム2Bが配置されている。
【0032】
次いで、図2を参照して本発明の一実施形態としてのエンジンルーム構造について説明する。図2はエンジンルーム2Bの機体前方から見た模式的な断面図である。エンジンルーム2Bには、エンジン26がそのクランク軸を機体左右方向Yに向けて設置されており、図2中でエンジン26の右側に軸流式の冷却ファン25が配設されている。この冷却ファンは、その軸流方向が機体左右方向Yに一致するような姿勢で設置されており、エンジンルーム2Bの内部空間により形成される冷却風通路に、冷却風を流通させるようになっている(ここでは、図2中で左側に冷却風を送り出すようになっている)。なお、ここでは、冷却ファン25はエンジンクランク軸に機械的に連結されたエンジン駆動式であるが、これに限定されず、油圧駆動式でも良い。
【0033】
冷却ファン25のファン軸流方向上流側(図2中右側)には、ラジエータやオイルクーラなどからなるクーリングパッケージ24が設置され、また、エンジン26のファン軸流方向下流側(図2中左側)には、エンジンクランク軸に機械的に連結された油圧ポンプ27が設置されている。
なお、エンジンルーム2Bの内部は、クーリングパッケージ24,エンジン26及び油圧ポンプ27の各相互間で仕切られており、ラジエータ(クーリングパッケージ24)が設置されたラジエータルーム2Ba、エンジン26や冷却ファン25が設置されたメインルーム(以下メインエンジンルームという)2Bb、油圧ポンプ27が設置されたポンプルーム2Bcに分割された構成となっている。
【0034】
さて、エンジンルーム2Bの底部は、下部走行体2に旋回可能に取り付けられたスイングフレーム30の一部により形成されている。
ここで、スイングフレーム30について図3及び図4を参照して説明する。
図3及び図4はスイングフレーム30の構成を示す図であり、図3はその全体構成を示す模式的な斜視図、図4(a),(b)はその部分構成を示す模式的な斜視図であある。
【0035】
スイングフレーム30は、エンジンルーム2B(下部走行体2)の底部(床面)をなすフレーム本体31と、フレーム本体31に立設され機体前後方向Xに延びる一対の(2つの)メインレール32A,32Bと、フレーム本体31と平行の姿勢でメインレール32A,32Bに取り付けられたプレート33とをそなえて構成されている。
【0036】
メインレール32A,32Bは、その機体前方の端部32Aa,32Baで作業装置3を上下方向に揺動可能に軸支するものであり、クーリングパッケージ24や冷却ファン25やエンジン26などを収容するエンジンルーム内に位置する部分に、それぞれ開口32Ab,32Bbがそれぞれ形成されている。
プレート33は、その機体左右方向Yの両端部を、開口32Ab,32Bbよりも上方(エンジンルーム内側)でメインレール32A,32Bに固定されるとともに、その機体前後方向Xの両端部を、フレーム本体31に立設され機体左右方向Yに延びる梁(ディスタンスプレート)34a,34bに固定されている。つまり、プレート33は、メインレール32A,32B及び梁34a,34bにより区画される領域に対し蓋をしているのである。
【0037】
このようにスイングフレーム30を構成する結果、図2に示すように、ファン軸流方向Yで上流側のメインレール32Aの開口32Abを入口とし、ファン軸流方向Yで下流側のメインレール32Bの開口32Bbを出口とする冷却風の風路35が、フレーム本体31,メインレール32A,32B,プレート(ガイド部材)33及び梁34a,34bにより形成されることとなる。
【0038】
一般的に、冷却ファン25は、メインレール32Aのファン軸流方向上流側直近に配置されることが多く、この結果、メインレール32Aに形成される上記風路35の入口となる開口32Abは、冷却ファン25の外周、即ちファン軸流方向Yに対し冷却ファン25と同位置(完全に同位置だけでなく略同位置にある場合も含む)に位置し、ここでは、冷却ファン25の直下(ファン軸流方向Yに対して直ぐ下流側)に位置する。
【0039】
従来技術で説明したように一般的にクーリングパッケージ24における圧力損失が大きいため、冷却ファン25により吐出された冷却風は旋回/半径方向に流れるようになり、このように風路35の入口(開口)32Abが冷却ファン25の外周にあることから、冷却ファン25により吐出された冷却風が速やかに風路35に流入し、風路35により案内されるようになる。
【0040】
メインレール32Aひいては開口32Abが、冷却ファン25からファン軸流方向下流側に比較的離隔している場合には、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風を速やかに開口32Abに案内できるように、プレート33の先端を冷却ファン25側に向けて開口32Abを挿通させるようにしたり、或いは、プレート33とは別に、メインレール32Aの冷却ファン25側にガイドを取り付けても良い(この場合、プレート33と上記ガイドとから本発明のガイド部材が構成されることとなる)。即ち、ガイド部材のファン軸流方向上流側の先端が、冷却ファン25の外周に位置するように、メインレール32Aよりもファン軸流方向上流側にガイド部材を延設しても良い。
なお、プレート33は、上方のオイルパン26aと干渉しないように、或はオイルパン26aとの間に所定の間隔が保持されるよう、ファン軸流方向中央が下方に凹んだ形状となっている。
【0041】
さて、冷却ファン25よりもファン軸流方向Yで上流側には、ラジエータルーム2Baの天井面に冷却風の導入口22aが設けられる一方、冷却ファン25よりもファン軸流方向Yで下流側には、ポンプルーム2Bcの側面下方及び床面にメッシュ状或はルーバ状の冷却風の排出口22b,22cが設けられている。上記のスイングフレーム30と一体に形成される風路35により冷却風はファン軸流方向Yに沿ってポンプルーム2Bcへと案内されるため、特にポンプルーム2Bcの側面下方に設けられた排出口22bから排出されるようになる。なお、排出口22bは、ルーバにより形成されており、建設機械の周辺にいる作業者に対し影響を与えないように、冷却風は下方又は上方(ここでは下方)に向けて排出されるようになっている。
【0042】
また、ここでは、冷却風の排出口22b,22cをポンプルーム2Bcの側面下方及び床面に設けているが、冷却風の排出口をポンプルーム2Bcの側面上方及び天井面に設けることも可能である。
そして、このようなエンジンルーム構造において、冷却ファン25を作動させることにより、上記導入口22aからエンジンルーム2B(冷却風通路)へ冷却風として取り込まれた外気は、クーリングパッケージ24を通過した後、上記のスイングフレーム30と一体に形成される風路35によりポンプルーム2Bcへと案内され、上記排出口22b,22cから外部へと排出され、クーリングパッケージ24を通過する際に冷却水及び油圧ポンプ27の作動油を冷却するようになっている。
【0043】
つまり、本実施形態では、冷却装置は、導入口22a,エンジンルーム2B(機体21内の空間即ち室2Ba,2Bb,2Bc),クーリングパッケージ24,冷却ファン25,排出口22b,22c及びスイングフレーム30のエンジンルーム2Bに面する部位をそなえて構成されているのである。
【0044】
本発明の一実施形態の建設機のスイングフレーム,エンジンルーム及び冷却装置は、上述したように構成されており、図2に示すように冷却風が機外に排出される。
つまり、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風は、冷却ファン25の外周に位置する開口32Abを入口としスイングフレーム30と一体に形成される風路35に直ぐに流入し、この風路35によりファン軸流方向Yに案内されてポンプルーム2Bcへ水平に流れ込み、ポンプルーム2Bcの下方に設けられた排出口22b,22cから排出される。
【0045】
上述した従来技術では、騒音が、エンジンルーム上面に形成された冷却風の排出開口から鉛直上方に発せられるため、広い範囲に騒音が広がってしまう。これに対し、本実施形態では、スイングフレーム30の風路35がエンジンルーム2Bの下部に設けられることから、この風路35を介してエンジンルーム2B(ポンプルーム2Bc)の下部に設けられた排出口22b,22cから冷却風を効率良く排出できるようになる。この結果、エンジンルーム2Bの天井面に冷却風の排出口を不要にできるので、エンジン音や、冷却風がファン翼やクーリングパッケージ24を通過する際に発生する風切り音(以下、「エンジン音など」という)が機外へ鉛直上方に発せられるのを大幅に抑制できるようになる。
【0046】
また、エンジン音などは、排出口22cからは矢印N1で示すように斜め下方に伝播しながら機外へと漏洩し、排出口22dからは矢印N2で示すように鉛直下方に伝播しながら機外へと漏洩するようになる。
斜め下方へと伝播する騒音は、主に地面により吸収されるようになり、或いは、建設機械の作業場所を水平方向に対し遮蔽物により囲えるようになり、また、鉛直下方へと伝播する騒音は、地面により吸収されるようになるので、騒音の伝播範囲(伝播する距離及び伝播する方向)を狭めることができるようになる(騒音の広がりを抑制できるようになる)。
【0047】
また、エンジン音などは風路35を伝わる際に、風路35を形成するスイングフレーム本体31やプレート33に吸収され減衰されるので、この点でも騒音を低減できる。
さらに、エンジン音などの一部は、図2中に矢印N3で示すようにプレート33及びスイングフレーム本体31を透過して、騒音として外部へ漏洩するが、従来のスイングフレームの構造に較べ、プレート33により遮蔽されるようになる分、騒音を低減できる。
【0048】
さらに、上述したように、冷却ファン25から旋回/半径方向に吐出された冷却風は、冷却ファン25の外周に位置する開口32Abを介して風路35に直ぐに流入し、この風路35により案内されるので、冷却風の排圧を比較的低くすることができ、冷却風の排出効率を良好に保持できるようになる。
この結果、エンジンルーム2Bの開口面積を比較的少なくすることができ、この点でも、エンジン音などの外部への漏洩の、即ち騒音を抑制でき、また、冷却風の背圧を比較的低くできることから冷却ファン25の仕様を下げてコストダウンを図ることができる。或いは、冷却風の排出効率が向上することから、同じ仕様の冷却ファン25を使用してもその風量を増大することが可能となり、熱交換面積の少ない(コンパクトな)クーリングパッケージ24を採用することが可能となる。
【0049】
そして、従来技術では、エンジンルームの天井面の外側に冷却風を排出するためのダクト設けられていたため、このダクトにより、エンジンルーム前方にある運転席からのは、その機体後方への視界の一部が遮られていたが、本実施形態では、上述したように良好な冷却風の排出効率が得られることから、かかるエンジンルームの天井面外側のダクトを不要にでき、エンジンルームの前方に配置された運転席4からの視界を良好なものにできる。
【0050】
また、クーリングパッケージ24を通過後の比較的温度の高い冷却風は、エンジンルーム2Bの天井面に設けられた冷却風の導入口22aから比較的離隔した位置にあるエンジンルーム2Bの下部に設けられた排出口22b,22cから、上記導入口22aに対し反対方向に(上記導入口22aからさらに離隔する方向に)排出されるので、上部旋回体の旋回中においても上記のクーリングパッケージ24通過後の比較的温度の高い冷却風が再び上記導入口22aから吸入されてしまうことを防止できる。この結果、クーリングパッケージ24の冷却効果を向上させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、本発明は、スイングフレームと一体に冷却風の風路をエンジンルーム2Bの下部に設けることで、この風路に近接させてエンジンルームの下部に設けた排出口から効率よく冷却風を排出できるようにしたものであり、この結果、従来設けられていたエンジンルーム天井面の排出口を削除して、或いは、エンジンルーム天井面の排出口面積を従来よりも低減して、鉛直上方への騒音を抑制できるようにしたものであるから、上記実施形態ではエンジンルーム2Bの上部(天井面や側面上部)に排出開口を設けない構成としたが、例えばメインエンジンルーム2Bbやポンプルーム2Bcの上部(天井面や側面上部)に従来設けられていた排出開口よりも小さな排出開口を補助的に設けるようにしても良い。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、エンジンルーム(上部旋回体)の床面(底部)をなすスイングフレームに立設されたメインレールにそれぞれ開口が形成されるので、エンジンルームの床面近傍においてこれらの開口を通って冷却風が滑らかに流れるようになり、この結果、エンジンルームを形成する壁面に設ける冷却風排出用の開口をエンジンルームの下部(床面や側面下部)に設けることが可能となり、従来設けられていたエンジンルーム天井面の開口が不要になり、或いはエンジンルーム天井面の開口面積が低減され、鉛直上方へと発せられる騒音を低減できるようになる。また、上記特許文献2に記載の建設機械に設けられたような機体上面のダクトを不要とすることが可能となる結果、運転席からの機体後方に対する視界を良好なものにできる。
【0053】
また、冷却風を上記のメインレールに設けられた開口を流通させる結果、エンジンルームに形成される冷却風の排出口を、通常エンジンルーム天井面に形成される冷却風の導入口から離隔させ、また、この排出口から冷却風の導入口とは反対側に冷却風を排出することが可能となるので、エンジンルームの排出口から排出されたクーリングパッケージ通過後の比較的高温の冷却風がエンジンルーム内に再び導入されてしまう、所謂「熱風の巻き込み」を防止でき、クーリングパッケージによるエンジン冷却水及び油圧ポンプ作動油の冷却を効果的に行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態としての建設機械の冷却装置の全体構成を示す機体前方から見た模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるスイングフレームの全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態としてのスイングフレームについて示す図であり、(a)はその要部を示す模式的な斜視図、(b)はそのプレート(ガイド部材)を抜き出して示す模式的な斜視図である。
【図5】従来の建設機械の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図6】従来のスイングフレームの全体構成を示す模式的な斜視図である。
【図7】従来の建設機械のエンジンルームの内部構成を示す図であって機体前方から見たエンジンルームの模式的な断面図である。
【図8】建設機械の冷却装置におけるエンジンルーム内の広ささとクーリングパッケージの厚さとの関係を説明するため図であって、(a)はエンジンルーム内が比較的狭い場合の模式図、(a)はエンジンルーム内が比較的広い場合の模式図である。
【図9】一般的な軸流形式の冷却ファンの性能曲線を示す模式図である。
【図10】(a),(b)は上流側の圧力損失が比較的小さかった場合の冷却ファン前後の冷却風の流れをベクトルにより示す模式図である。
【図11】(a),(b)は上流側の圧力損失が比較的大きかった場合の冷却ファン前後の冷却風の流れをベクトルにより示す模式図である。
【図12】従来の建設機械のエンジンルーム構造を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
1 下部走行体
2 上部旋回体
2A カウンタウェイト
2B エンジンルーム
2Ba ラジエータルーム
2Bb メインエンジンルーム
2Bc ポンプルーム
3 作業装置
4 運転席
22a エンジンルーム導入口
22b,22c エンジンルーム排出口
24 クーリングパッケージ
25 冷却ファン
26 エンジン
27 エンジンポンプ
30 スイングフレーム
31 スイングフレーム本体
32A,32B メインレール
32Ab,32Bb 開口
33 プレート(ガイド部材)
Claims (5)
- 上部旋回体の底部をなし下部走行体に旋回可能に取り付けられ、ファン軸流方向を該上部旋回体の左右方向に設定された冷却ファンによる冷却風の流通するエンジンルームが上方に配置され、該上部旋回体の底部を形成するフレーム本体と、該上部旋回体の左右方向に所定の間隔をあけて該フレーム本体に立設され該上部旋回体の前後方向に延びる左右一対のメインレールと、該フレーム本体に立設され該左右方向に延びる複数の梁とを有する、建設機械のスイングフレームであって、
上記一対のメインレールの該エンジンルーム内に位置する部位にそれぞれ開口が形成された
ことを特徴とする、建設機械のスイングフレーム。 - 上記一対のメインレールに設けられた開口の相互間における該冷却風の流通を案内するためのガイド部材がそなえられた
ことを特徴とする、請求項1記載の建設機械のスイングフレーム。 - 該ガイド部材が、上記一対のメインレール及び上記の複数の梁のうちの該開口の該前後方向両側に配置された二つの梁により囲まれる領域を蓋うように配置された、プレートにより構成された
ことを特徴とする、請求項2記載の建設機械のスイングフレーム。 - エンジンと、クーリングパッケージと、該クーリングパッケージを冷却する冷却風を流通させる冷却ファンとを収容する建設機械のエンジンルームの構造であって、
底部が、請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のスイングフレームの一部であって上記一対のメインフレームにそれぞれ形成された開口を含む部位をそなえて構成された
ことを特徴とする、建設機械のエンジンルーム構造。 - 内部が冷却風通路として機能するエンジンルームと、該エンジンルーム内に設置され冷却風を流通させる冷却ファンと、該エンジンルーム内に設置されたクーリングパッケージとをそなえて構成された、建設機械の冷却装置において、
該エンジンルームの底部が、請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械のスイングフレームの一部であって上記一対のメインフレームにそれぞれ形成された開口を含む部位をそなえて構成された
ことを特徴とする、建設機械の冷却装置。
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JP2003196752A JP2005030067A (ja) | 2003-07-14 | 2003-07-14 | 建設機械のスイングフレーム,建設機械のエンジンルーム構造及び建設機械の冷却装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014084627A (ja) * | 2012-10-23 | 2014-05-12 | Sumitomo (Shi) Construction Machinery Co Ltd | 建設機械の排気装置 |
EP2937468A3 (en) * | 2014-04-22 | 2015-11-04 | Hitachi Construction Machinery Co., Ltd. | Exhaust gas treatment unit for construction machine |
-
2003
- 2003-07-14 JP JP2003196752A patent/JP2005030067A/ja not_active Withdrawn
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