JP4166630B2 - 光学的情報記録装置および光学的情報再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性を有するシート状の光ディスクに対して情報の記録を行う光学的情報記録装置、ならびに前記光ディスクに対して情報の再生を行う光学的情報再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレビ放送のデジタル化が始まるなど、大容量のデジタルデータを記録することが光ディスクに求められている。光ディスクを高密度化するための手法のうち、基本的な方法は記録/再生のために用いられる光のスポット径を小さくすることである。
【0003】
このため、記録/再生のために用いられる光の波長を短く、かつ対物レンズの開口数NAを大きくすることが有効である。光の波長についてはCD(compact disk)では近赤外光の780nm、DVD(digital versatile disk)では赤色光の650nm近傍の波長が用いられている。最近、青紫光の半導体レーザが開発され、今後は400nm近傍のレーザ光が使用されると予想される。
【0004】
また、対物レンズについては、CD用はNA0.5未満であったが、DVD用はNA0.6程度である。今後、さらに開口数(NA)を大きくしてNA0.7以上とすることが求められる。しかし、対物レンズのNAを大きくすること、および光の波長を短くすることは、光を絞るときに収差の影響が大きくなることでもある。したがって、光ディスクのチルトに対するマージンが減ることになる。また、NAを大きくすることによって焦点深度が小さくなるため、フォーカスサーボ精度を上げなくてはならない。
【0005】
さらに、高NAの対物レンズを使用することによって、対物レンズと光ディスクの記録面との距離が小さくなってしまうため、光ディスクの面ぶれを小さくしておかないと、始動時のフォーカスサーボを引き込む直前、対物レンズと光ディスクとが衝突することがあり、ピックアップの故障の原因となる。
【0006】
短波長,高NAの大容量光ディスクとして、例えば非特許文献1に記載されているように、CDと同程度に厚く、かつ剛性の大きい基板に記録膜を成膜し、記録/再生用の光を基板を通さずに、薄いカバー層内を通して記録膜に対して記録/再生する構成のシステムが提案されている。
【0007】
また、特許文献1〜5には、ベルヌーイの法則による空気力学的作用力を利用して光ディスクにおける面ぶれを安定化させるため、安定化部材に対向させて可撓性を有する光ディスクを回転させる構成の記録/再生装置、あるいは可撓性を有する光ディスクの構成などについての記載がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−105657号公報
【特許文献2】
特開平10−308059号公報
【特許文献3】
米国特許出願公開第2002/0186636号明細書
【特許文献4】
特開2002−269855号公報
【特許文献5】
特開2002−358759号公報
【特許文献6】
特開2003−22651号公報
【非特許文献1】
オー・プラス・イー(O PLUS E)第20巻,第2号,P.183ページ
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の技術において、光ディスクの基板を剛体で形成すると、回転する光ディスクにおける面ぶれ,チルトを小さくするためには、きわめて正確な成形をし、かつ熱変形が生じないように低温で記録膜を成膜しなければならない。このことは、光ディスク製造に係るタクトタイムを長くすることになり、コストを上げる原因となる。
【0010】
また、可撓性のある光ディスクを安定板上で回転させる方法では、特許文献2に記載されているように、単純な平板上で回転させると、光ディスクと安定化板が接して摺動し、このため光ディスクが振動して高周波の面ぶれが発生する。この面ぶれは、機械的なフォーカスサーボでは応答できない周波数領域にかかってくることが多く、残留サーボエラーを十分抑圧することができない。
【0011】
さらに、面ぶれにより光ディスクと対物レンズとが摺動すると、発塵を引き起こして、その塵埃などがエラーを発生させる原因となる。特に特許文献1に記載されているように、安定化板側に記録膜が存在する構成であると、摺動により光ディスクの記録膜を損傷して、直接エラーを引き起こすことになる。
【0012】
また、特許文献1に記載には、平板面に***部を設けて、より精密な安定化を図るようにした記載がある。しかし、前記***部の詳細、あるいは発生する圧力の正負の別などの詳細についての記載はなく、動作のメカニズムが不明である。仮に***部が単なる凸形状であれば、ディスクを安定化させる面のディスク侵入側(前縁部)が正圧、また後縁部が負圧になり、ディスクを押して光ピックアップ側に安定して押す力は必ずしも発生しないことになる。
【0013】
本発明者は、離散的に配置した安定化手段が、ベルヌーイ効果によって可撓性を有する光ディスクの軸方向の面ぶれを抑圧して、安定した記録および/または再生を行うことを可能にした光ディスク駆動装置について出願した(特許文献6参照)。この発明では、光ピックアップに正圧発生部があり、これが安定化手段となるものであった。しかし、光ピックアップ周辺の安定化手段は最も高精度な面ぶれ抑圧効果が要求され、安定化手段におけるディスク側への突き出し量などには高い精度が必要になる。
【0014】
本発明の目的は、前記従来の課題を解決し、光ピックアップの正圧発生側の安定化手段に必要な高精度の制限を緩和し、可撓性を有するシート状の光ディスクを用いて情報の書き込み/読み出しを行う際に、光ディスクの両側において空気力により光ディスクの面ぶれを確実に抑制し、高密度の記録および/または再生を可能にした光学的情報記録装置および光学的情報再生装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、可撓性を有するシート状の光ディスクを回転させる回転駆動手段と、前記光ディスクの記録面に対して集光させて情報の書き込みを行う光学的記録手段と、前記光ディスクの回転時にベルヌーイの法則に基づく空気流の圧力差を発生させ、前記光ディスクにおける回転軸方向の面ぶれを安定化させる安定化手段とを備えた光学的情報記録装置であって、前記光ディスクにおける前記光学的記録手段の設置側において正圧を発生させる第1の安定化手段と、前記光ディスクにおける前記光学的記録手段の設置側とは反対側において負圧を発生させる第2の安定化手段とを備え、前記第1の安定化手段に隣接した前記光ディスクの回転方向下流側に空気導入部を設置し、かつ前記第1の安定化手段と前記空気導入部とを、前記光ディスクの半径方向に放射状に設けたことを特徴とし、この構成によって、空気導入部により正圧発生の効率を上げることができ、光学的記録手段への光ディスクの接近を防ぐ空気力を大きくすることができるため、第2の安定化手段の動作が安定し、ディスク面ぶれをより小さくすることができ、さらに光ディスクにおいて安定したディスク面ぶれ抑制作用が働く。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光学的情報記録装置において、第1の安定化手段を、光ディスクの全面を覆う安定化板上に設置したことを特徴とし、この構成によって、光ディスク全体の面ぶれを抑圧することができるため、光ディスクの安定化部材への衝突などの過渡的な衝撃を減らすことができ、光ディスクの安定化部材との摺動を防ぐことができる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の光学的情報記録装置において、第2の安定化手段を、光ディスクの全面に対して離散配置したことを特徴とし、この構成によって、光ディスクの適所において面ぶれを抑圧することができるため、光ディスクの安定化部材への衝突などの過渡的な衝撃を減らすことができ、光ディスクの安定化部材との摺動を防ぐことができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の光学的情報記録装置において、光学的記録手段と光ディスクを介して対向する第2の安定化手段を、光学的記録手段との対向状態を維持するように移動させる手段を備えたことを特徴とし、この構成によって、第1,第2の安定化手段による面ぶれ抑制作用が、光ディスクにおける記録対象部位において確実に働くようにすることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の光学的情報記録装置において、光ディスクの表面と前記第1の安定化手段との距離を前記光ディスクの表面と前記第2の安定化手段との距離より長くし、かつ前記光ディスクの表面と前記第1の安定化手段との距離を10μm以上に設定したことを特徴とし、この構成によって、光ディスクの記録光入射表面と第1の安定化手段との距離が10μm以上と大気中の塵の大きさより大きくしたことにより、傷付き発生によるエラーを低減できる。また、第2の安定化手段は第1の安定化手段より狭いギャップで動作するのでギャップで発生する負圧力が大きく(絶対値)、安定化力を大きくすることができため、ディスク面ぶれを小さくすることができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか1項記載の光学的情報記録装置において、第1の安定化手段と第2の安定化手段とにおける作用の中心をずらせて配設したことを特徴とし、この構成によって、正圧と負圧を光学的記録手段における中心点に対して安定したバランスで発生させられるようになり、面ぶれを良好に抑制することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、可撓性を有するシート状の光ディスクを回転させる回転駆動手段と、前記光ディスクの記録面に対して集光させて情報の読み取りを行う光学的再生手段と、前記光ディスクの回転時にベルヌーイの法則に基づく空気流の圧力差を発生させ、前記光ディスクにおける回転軸方向の面ぶれを安定化させる安定化手段とを備えた光学的情報再生装置であって、前記光ディスクにおける前記光学的再生手段の設置側において正圧を発生させる第1の安定化手段と、前記光ディスクにおける前記光学的再生手段の設置側とは反対側において負圧を発生させる第2の安定化手段とを備え、前記第1の安定化手段に隣接した前記光ディスクの回転方向下流側に空気導入部を設置し、かつ前記第1の安定化手段と前記空気導入部とを、前記光ディスクの半径方向に放射状に設けたことを特徴とし、この構成によって、空気導入部により正圧発生の効率を上げることができ、光学的再生手段への光ディスクの接近を防ぐ空気力を大きくすることができるため、第2の安定化手段の動作が安定し、ディスク面ぶれをより小さくすることができ、さらに、光ディスクにおいて安定したディスク面ぶれ抑制作用が働く。
【0030】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の光学的情報再生装置において、第1の安定化手段を、光ディスクの全面を覆う安定化板上に設置したことを特徴とし、この構成によって、光ディスク全体の面ぶれを抑圧することができるため、光ディスクの安定化部材への衝突などの過渡的な衝撃を減らすことができ、光ディスクの安定化部材との摺動を防ぐことができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項7記載の光学的情報再生装置において、第2の安定化手段を、光ディスクの全面に対して離散配置したことを特徴とし、この構成によって、光ディスクの適所において面ぶれを抑圧することができるため、光ディスクの安定化部材への衝突などの過渡的な衝撃を減らすことができ、光ディスクの安定化部材との摺動を防ぐことができる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、請求項7記載の光学的情報再生装置において、光学的再生手段と光ディスクを介して対向する第2の安定化手段を、光学的再生手段との対向状態を維持するように移動させる手段を備えたことを特徴とし、この構成によって、第1,第2の安定化手段による面ぶれ抑制作用が、光ディスクにおける記録対象部位において確実に働くようにすることができる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項7〜10いずれか1項記載の光学的情報再生装置において、光ディスクの表面と第1の安定化手段との距離を光ディスクの表面と第2の安定化手段との距離より長くし、かつ光ディスクの表面と第1の安定化手段との距離を10μm以上に設定したことを特徴とし、この構成によって、光ディスクの記録光入射表面と第1の安定化手段との距離が10μm以上と大気中の塵の大きさより大きくしたことにより、傷付き発生によるエラーを低減できる。また、第2の安定化手段は第1の安定化手段より狭いギャップで動作するのでギャップで発生する負圧力が大きく(絶対値)、安定化力を大きくすることができため、ディスク面ぶれを小さくすることができる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項7〜11いずれか1項記載の光学的情報再生装置において、第1の安定化手段と第2の安定化手段とにおける作用の中心をずらせて配設したことを特徴とし、この構成によって、正圧と負圧を光学的再生手段における中心点に対して安定したバランスで発生させられるようになり、面ぶれを良好に抑制することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0036】
図1は本発明の実施形態を説明するための光学的情報記録/再生装置の断面図であり、1は可撓性を有するシート状の光ディスク、2は光ディスク1を回転駆動するスピンドルモータ、3はスピンドルモータ2の回転軸であるスピンドル4に設けられたディスクチャッキングハブ、5は光ディスク1の記録面側の上方に配設された第1の台座部材、6はスピンドルモータ2の下部に配設された第2の台座部材、7は、光ディスク1の半径方向に移動して光ディスク1に対し光ビームを集光させ、情報の記録および/または再生処理を行うため光ディスク1に対して光走査を行う光学的記録手段および光学的再生手段としての光ピックアップである。
【0037】
8は、光ピックアップ7が光ディスク1の半径方向に延在する溝9内に移動可能に設けられ、ベルヌーイの法則による空気力学的作用力を利用して、光ディスク1における少なくとも光ピックアップ7による記録/再生対象位置付近のディスク面ぶれを抑制する主正圧ガイド部材、10は副正圧ガイド部材であって、第1の安定化手段である主正圧ガイド部材8と副正圧ガイド部材10とは、後述するように第1の台座部材5に設けられている。
【0038】
11は、光ピックアップ7に対して光ディスク1を挟んで対向し、かつ移動駆動手段12および移動駆動シャフト19などにより光ピックアップ7との対向状態を維持するように光ディスク1の半径方向へ移動され、主正圧ガイド部材8など共にディスク面ぶれを抑制する主負圧ガイド部材、13は副正圧ガイド部材10に対向するように離散配置された副負圧ガイド部材であって、第2の安定化手段である主負圧ガイド部材11と副負圧ガイド部材13とは、後述するように第2の台座部材6に設けられている。
【0039】
図2は前記第1の台座部材の底面図、図3は図2におけるA部からB部にかけての第1の台座部材の断面図であり、第1の台座部材5は光ディスク1の全面を覆っており、かつ光ディスク1側に突出する主正圧ガイド部材8部分,副正圧ガイド部材10部分、および主正圧ガイド部材8と副正圧ガイド部材10とに隣接した光ディスク1の回転方向下流側に空気導入部である通孔14が、中心部から放射状に複数設けられている。
【0040】
図4は前記第2の台座部材の平面図であり、第2の台座部材6は光ディスク1の全面を覆っており、かつ主負圧ガイド部材11と、該主負圧ガイド部材11に対して両側の対称位置に一対の副負圧ガイド部材13が、それぞれ突出するように配設されている。
【0041】
図5は前記光ピックアップ部分を示す断面図であり、主正圧ガイド部材8の溝9に配設された光ピックアップ7は、図1に示すシーク駆動手段16により駆動される駆動シャフト15によって、光ディスク1に対する半径方向の光走査の際、溝9内を移動駆動され、かつ電磁コイル,マグネットからなるトラッキング,チルト補正用などのアクチュエータ17によって駆動される対物レンズ18が設置されている。
【0042】
前記構成の光学的情報記録/再生装置において、図3に示すように、光ディスク1が回転し、それに伴って空気の流れが生ずると、副正圧ガイド部材10は空気の流れを絞るような形状になっているため、図中、点線の丸印で囲った部分にて正圧が大きくなる。その下流側は、急激に光ディスク1と副正圧ガイド部材10の間隔が広がる。通常は、そのために負圧になるが、本実施形態では、第1の台座部材5に通孔14が形成され、外部から空気が入るので負圧は抑制される。
【0043】
さらに副正圧ガイド部材10に対し、光ディスク1の反対面には第2の台座部材6に副負圧ガイド部材13が離散配置されており、副負圧ガイド部材13は、発生する負圧のピーク付近が副正圧ガイド部材10の反対正面に来るように配置される。このため、光ディスク1は常に副正圧ガイド部材10側から副負圧ガイド部材13側へ押されることになる。このため、光ディスク1の垂直方向の力が大きいため、ディスク回転時の面ぶれは極めて小さくなる。
【0044】
また、主負圧ガイド部材11は、主正圧ガイド部材8に配設された光ピックアップ7の記録/再生時におけるシーク動作に同期して光ディスク1の半径方向に移動し、常に光ピックアップ7と対向する部位に存在するように移動駆動手段12によって駆動される。
【0045】
図5に示すように、対物レンズ18を含むアクチュエータ17などからなる光ピックアップ7が、主正圧ガイド部材8の溝9内に埋め込まれた形態になっている。このため、光ディスク1は常に対物レンズ18から離れる向きの力を受けることになるので、対物レンズ18と光ディスク1との衝突の危険性が小さくなり、小径で作動距離の小さな対物レンズ18を用いることが可能になる。
【0046】
また、対物レンズ18に対してディスク回転方向下流側の正圧部が対物レンズ18よりもディスク側に突き出すように形成している。このようにすることにより、光ディスク1が対物レンズ18に衝突し難くなる。
【0047】
また、副正圧ガイド部材10が設けられる第1の台座部材5には、通孔14が成され、通孔14から正圧を発生させる空気を導入できるようになっているため、正圧ガイド部材を単に平板上に凸状として形成するのみの構造に比べて、正圧の発生する力を大きくすることができる。
【0048】
副正圧ガイド部材における作用について説明する。
【0049】
図6(a)には、通孔がない場合であって、第1の台座部材5´の副正圧ガイド部材10´における凸部の幅が5mm、その突出部を1mm、かつ光ディスクと凸部とのギャップが10μmの構成例を示しており、図6(b)には、空気導入部である1mm幅の通孔14を設けた以外は、図6(a)と同じ条件の本実施形態の構成例を示している。
【0050】
図6(a),(b)の構成例において、それぞれ空気の圧力場を計算した結果が図7に示す図であり、図6(b)の通孔14を設けた構成例では、光ディスク1が移動して副正圧ガイド部材10の凸部を通過した直後の圧力場が、より正圧側になっていることが解る。この結果からも図2,3に示すように通孔14を設けた構造の効果は明らかである。
【0051】
以上説明したように、正圧ガイド部材8,10が光ディスク1を押し、負圧ガイド部材11,13が光ディスク1を吸引するように作用するため、光ディスク1は負圧ガイド部材11,13側に極めて近接して回転し、面ぶれは5μm以内に抑えることができた。
【0052】
負圧ガイド部材11,13の形状は図3に示すものであり、実際には負圧ガイド部材11,13のディスク回転方向の上流側には正圧発生部分、また下流側には負圧発生部分が生じる。したがって、条件を選ぶことにより、負圧のみが強力に発生して、光ディスク1と負圧ガイド部材11,13とが摺動し続けることをなくすことができる。
【0053】
また、光ディスク1を押すように作用する正圧ガイド部材8,10においては、必ず、(ディスク表面と正圧ガイド部材との距離)>(ディスク表面と負圧ガイド部材との距離)であるようにすることにより、正圧ガイド部材8,10と光ディスク1との摺動を回避することができる。
【0054】
図8は本実施形態に用いられる可撓性を有する光ディスクを含む要部の拡大図であり、光ディスク1はディスク基板20となるフィルム上に案内溝21を形成し、その上に記録膜22を形成し、さらに、その上に透明保護膜23を形成したものである。光ピックアップ7から透明保護膜23を介して光を入射し集光することによって、記録/再生が行われる。
【0055】
前記のように主正圧ガイド部材8は、ディスク回転時、常に光ディスク1を遠ざける向きに押し付け続けるため、光ディスク1と主正圧ガイド部材8との衝突頻度は小さく、ディスク読取面(図では上面)に傷がついてエラーを発生させるような不具合の発生は少ない。
【0056】
可撓性を有する光ディスク1の面ぶれを抑圧する中心的な働きをするのは、ディスク表面とガイド端面との距離が小さい主負圧ガイド部材11であって、ガイド端面と光ディスク1間に塵埃などを巻きこむと傷が生じやすい。しかし、図8に示すように、負圧側は、光ディスク1では記録/再生に直接関与しないディスク基板20であるので傷がついても信号のエラーの発生は生じない。
【0057】
図8に本実施形態において主正圧ガイド部材8の作用の中心位置A−Bと、主負圧ガイド部材11における作用の中心位置C−Dとが異なる状態を示した。すなわち、主負圧ガイド部材11の凸形状の風下側が、主正圧ガイド部材8の正圧発生部分にくるように中心位置をずらしてある。このようにしたことにより、光ディスク1は、図において上から下への向きの安定した力を、光ピックアップ7からの出射光の集光点において安定して受けることができるようになるため、安定した記録/再生につながる。
【0058】
以下、前記実施形態をさらに具体的に実施例として説明する。
【0059】
光ディスク1として次の構成のものを作成した。すなわち、ディスク基板として可撓性を持たせるために直径120mm,0.1mm程度の薄いシートを用い、ポリエチレンテレフタレート製の厚さ80μmのシートに、熱転写によりスタンパのピッチが0.6μm、幅0.3μmのグルーブを転写し、その後、スパッタリングによりシート/Ag反射層を120nm/(ZrO2−Y2O3)−SiO2 10nm/Ge5.0In3.0Sb70.0Te22.0mol% 12nm/ZnS−SiO2 35nm/Si3N4 10nmの順番に成膜した。このシートにUV樹脂をスピンコートし、紫外線照射で硬化させて厚さ5μmの透明保護膜を形成し、さらに、このように作成したディスクを、大口径のレーザ光で記録層を溶融結晶化することによって反射率を上げたものである。
【0060】
光ピックアップ7には、波長405nm,NA0.85の対物レンズ18を搭載したものを用いた。ディスク表面と対物レンズ18間の距離は0.3mmとした。
【0061】
図3,4に示したものと同様に、負圧ガイド部材11,13を3個用いた。光ピックアップ7と対向する主負圧ガイド部材11として直径20mmの丸棒形状で、かつガイド端面が半径20mmのものを用い、それ以外の2個の副負圧ガイド部材13として直径30mmの丸棒形状で、かつガイド端面が半径30mmのものを用いた。さらに、ディスク中央を高さの基準として、主負圧ガイド部材11は、図3において上向きを+として+0.5mm、副負圧ガイド部材13は±0mmの突き出し量とした。
【0062】
正圧ガイド部材8,10の全ては、第1の台座部材5上に形成し、その平板面上に1.5mm突き出させた。また、突き出した先端の高さは、ディスク中央を高さの基準として、+1.7mmとした。
【0063】
そして、図1に示すように、前記構成の光ディスク1をスピンドル4のディスクチャックハブ5にチャッキングし、その後、スピンドルモータ2を回転させる。回転数を5000rpmとし、半径45mmの位置において主負圧ガイド部材11に埋め込んだ静電容量センサーで調べたところ、光ディスク1と主負圧ガイド部材11の平均距離は2.5μm、光ディスク1の面ぶれのP−P値は3.0μmであった。
【0064】
この状態で、光ディスク1に対して、記録パワー6mW,消去パワー2.2mW,再生パワー0.2mWにて周波数30MHz、デューティー30%の矩形波を記録した。C/Nを測定したところRBW30kHzで56dBが得られた。また、信号のエンベロープは均一であった。これはフォーカスサーボが安定しており、デフォーカスのエラーが発生せず、安定したサーボがかかっていることを示している。
【0065】
対物レンズ18がNA0.85であると、従来のコンパクトディスク駆動装置などに比べてレンズのデフォーカスマージンが小さく、フォーカスの精度が±0.1μm以下程度でないと、前記のようなC/Nおよび安定した信号エンベロープを得ることはできない。したがって、本実施例のものでは安定したサーボがかかっていることを示している。
【0066】
記録/再生中の安定状態では、光ピックアップ7の主正圧ガイド部材8はディスク表面から60μmの距離とした。
【0067】
図9に一般オフィス環境での塵の大きさの分布を示す。塵は、10μm前後以下の大きさのものは極めて多いが、20μmほどになると少ない。塵やごみがガイドとディスク間に巻き込まれると、ディスクが高速回転しているため、引きずられて長い傷がつきやすい。ピックアップ側の傷は直接信号のエラーにつながるので絶対避けなくてはならない。
【0068】
そこで、図8に示すように、光ディスク1の記録膜22側を正圧ガイド部材8,10の設置側として、光ディスク1を押す側の力を発生し、正圧ガイド部材8,10とディスク間の距離を10μm以上となるように設定することが望ましい。
【0069】
このように正圧側のガイド部材とディスク間の距離が大きくなると、ベルヌーイ効果による作用力は小さくなり、面ぶれ抑圧力は小さくなるが、反対側に設置される負圧側のガイド部材を数μmと近接させ、負圧側において大きなベルヌーイ力を発生させることにより、面ぶれの抑圧を行うことができる。負圧側のガイド部材はディスク基板20側に配置されるため、多少の摺動傷は問題にならない。
【0070】
本実施例の装置をオフィス環境で同一記録トラックにポーズし、12時間連続駆動を行った。その結果、信号に異常はなく、ディスク再生面には特に摺動傷は見られなかった。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第1の安定化手段に隣接した前記光ディスクの回転方向下流側に空気導入部を設置し、かつ前記第1の安定化手段と前記空気導入部とを、前記光ディスクの半径方向に放射状に設けたことによって、空気導入部により正圧発生の効率を上げることができ、光学的記録手段への光ディスクの接近を防ぐ空気力を大きくすることができるため、第2の安定化手段の動作が安定し、ディスク面ぶれをより小さくすることができる。
【0073】
このため、光学的情報記録装置および光学的情報再生装置において、光ピックアップの正圧発生側の安定化手段に必要な高精度の制限を緩和し、可撓性を有するシート状の光ディスクを用いて情報の書き込み/読み出しを行う際に、光ディスクの両側において空気力により光ディスクの面ぶれを確実に抑制し、高密度の記録および/または再生が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するための光学的情報記録/再生装置の断面図
【図2】本実施形態における第1の台座部材の底面図
【図3】図2におけるA部からB部にかけての本実施形態における第1の台座部材の断面図
【図4】本実施形態における第2の台座部材の平面図
【図5】本実施形態における光ピックアップ部分を示す断面図
【図6】本実施形態における副正圧ガイド部材の作用を比較するための図であり、(a)は通孔がない場合、(b)は通孔がある場合の構成図
【図7】図6の(a),(b)の構成例において空気の圧力場を計算した結果を示す図
【図8】本実施形態に用いられる可撓性を有する光ディスクを含む要部の拡大図
【図9】一般オフィス環境における塵の大きさの分布を示す説明図
【符号の説明】
1 光ディスク
2 スピンドルモータ
5 第1の台座部材
6 第2の台座部材
7 光ピックアップ
8 主正圧ガイド部材
9 溝
10 副正圧ガイド部材
11 主負圧ガイド部材
12 移動駆動手段
13 副負圧ガイド部材
14 通孔
15 駆動シャフト
16 シーク駆動手段
18 対物レンズ
19 移動駆動シャフト
20 ディスク基板
22 記録膜
Claims (12)
- 可撓性を有するシート状の光ディスクを回転させる回転駆動手段と、前記光ディスクの記録面に対して集光させて情報の書き込みを行う光学的記録手段と、前記光ディスクの回転時にベルヌーイの法則に基づく空気流の圧力差を発生させ、前記光ディスクにおける回転軸方向の面ぶれを安定化させる安定化手段とを備えた光学的情報記録装置であって、
前記光ディスクにおける前記光学的記録手段の設置側において正圧を発生させる第1の安定化手段と、前記光ディスクにおける前記光学的記録手段の設置側とは反対側において負圧を発生させる第2の安定化手段とを備え、前記第1の安定化手段に隣接した前記光ディスクの回転方向下流側に空気導入部を設置し、かつ前記第1の安定化手段と前記空気導入部とを、前記光ディスクの半径方向に放射状に設けたことを特徴とする光学的情報記録装置。 - 前記第1の安定化手段を、前記光ディスクの全面を覆う安定化板上に設置したことを特徴とする請求項1記載の光学的情報記録装置。
- 前記第2の安定化手段を、前記光ディスクの全面に対して離散配置したことを特徴とする請求項1記載の光学的情報記録装置。
- 前記光学的記録手段と前記光ディスクを介して対向する前記第2の安定化手段を、前記光学的記録手段との対向状態を維持するように移動させる手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の光学的情報記録装置。
- 前記光ディスクの表面と前記第1の安定化手段との距離を前記光ディスクの表面と前記第2の安定化手段との距離より長くし、かつ前記光ディスクの表面と前記第1の安定化手段との距離を10μm以上に設定したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の光学的情報記録装置。
- 前記第1の安定化手段と前記第2の安定化手段とにおける作用の中心をずらせて配設したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の光学的情報記録装置。
- 可撓性を有するシート状の光ディスクを回転させる回転駆動手段と、前記光ディスクの記録面に対して集光させて情報の読み取りを行う光学的再生手段と、前記光ディスクの回転時にベルヌーイの法則に基づく空気流の圧力差を発生させ、前記光ディスクにおける回転軸方向の面ぶれを安定化させる安定化手段とを備えた光学的情報再生装置であって、
前記光ディスクにおける前記光学的再生手段の設置側において正圧を発生させる第1の安定化手段と、前記光ディスクにおける前記光学的再生手段の設置側とは反対側において負圧を発生させる第2の安定化手段とを備え、前記第1の安定化手段に隣接した前記光ディスクの回転方向下流側に空気導入部を設置し、かつ前記第1の安定化手段と前記空気導入部とを、前記光ディスクの半径方向に放射状に設けたことを特徴とする光学的情報再生装置。 - 前記第1の安定化手段を、前記光ディスクの全面を覆う安定化板上に設置したことを特徴とする請求項7記載の光学的情報再生装置。
- 前記第2の安定化手段を、前記光ディスクの全面に対して離散配置したことを特徴とする請求項7記載の光学的情報再生装置。
- 前記光学的再生手段と前記光ディスクを介して対向する前記第2の安定化手段を、前記光学的再生手段との対向状態を維持するように移動させる手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の光学的情報再生装置。
- 前記光ディスクの表面と前記第1の安定化手段との距離を前記光ディスクの表面と前記第2の安定化手段との距離より長くし、かつ前記光ディスクの表面と前記第1の安定化手段との距離を10μm以上に設定したことを特徴とする請求項7〜10いずれか1項記載の光学的情報再生装置。
- 前記第1の安定化手段と前記第2の安定化手段とにおける作用の中心をずらせて配設したことを特徴とする請求項7〜11いずれか1項記載の光学的情報再生装置。
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