JP4164890B2

JP4164890B2 - 注射剤パック

Info

Publication number: JP4164890B2
Application number: JP34385297A
Authority: JP
Inventors: 充長谷川; 秀一前田; 得司三富
Original assignee: Seikagaku Corp
Current assignee: Seikagaku Corp
Priority date: 1997-11-28
Filing date: 1997-11-28
Publication date: 2008-10-15
Anticipated expiration: 2017-11-28
Also published as: JPH11155948A; ZA9810836B

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、注射剤パックに関するものであり、詳しくは、包装容器に薬剤入り注射器を封入して成る注射剤パックであって、主に滅菌ガスだけを透過する滅菌紙によって封止され、かつ、収容された薬剤入り注射器の滅菌が容易な形態の包装容器を使用した注射剤パックに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
薬剤入り注射器は、ディスポーザブル医療機器などと同様に、特定の包装容器によって医療用滅菌包装を施されたいわゆる注射剤パックとして流通される。上記の包装容器は、透明性の樹脂によって一体成形され且つ底面が開放された容器本体と、滅菌ガスを透過可能なシート材から成り且つ容器本体の底面を封止する滅菌紙とから構成される。そして、薬剤入り注射器が封入された包装容器は、例えば、エチレンオキサイドガスに晒されることにより、滅菌紙を透過したガスによって内部が滅菌処理される。なお、斯かる滅菌処理は、処理効率の観点から、通常、多数配列され且つ上下に多数段積み重ねた状態で行われる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、注射剤パックを上下に多数段積み重ねた状態で滅菌処理した場合、滅菌紙の表面が上段または下段の包装容器の容器本体で被われるため、滅菌紙における滅菌ガスの透過効率が低下すると言う問題が生じる。また、滅菌処理の後は、残留がない様に滅菌ガスを十分に除去する必要があるが、包装容器の内部に浸透したガスの脱気効率が低いと言う問題もある。
【０００４】
本発明は、上記の滅菌処理の効率を一層向上すべくなされたものであり、その目的は、包装容器に薬剤入り注射器を封入して成る注射剤パックであって、滅菌紙によって封止され、かつ、収容された薬剤入り注射器の滅菌が容易な形態の包装容器を使用した注射剤パックを提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明の注射剤パックは、包装容器に薬剤入り注射器を封入して成る注射剤パックであって、前記包装容器は、透明性のポリエステル系樹脂によって細長の略器状に一体成形され且つ底面が開放された容器本体と、滅菌用ガスを透過可能なシート材から成り且つ前記容器本体の底面を封止する滅菌紙とから構成され、前記容器本体は、薬剤入り注射器の注射筒の注射針取付部を収容する第１の膨出部と、薬剤入り注射器の略中央部を収容する第２の膨出部と、注射筒のフランジおよびピストンロッドの押し子を収容する第３の膨出部と、これらの膨出部を結合する２つのくびれ部とを備え、かつ、前記第１の膨出部および前記第３の膨出部は、滅菌処理の際の滅菌ガスの貯留用空間を形成しており、前記第２の膨出部は、前記第１の膨出部および前記第３の膨出部よりも低い高さで形成され、前記第３の膨出部は、容器本体の長手側から側面視した場合、中央部が凹没した鞍部状に形成されていることを特徴とする。
【０００６】
上記の注射剤パックは、上下に多数段積み重ねた状態で滅菌処理される。その際、容器本体の各くびれ部は、上段または下段の包装容器との間に隙間を形成し、注射剤パックの積層体全体に滅菌ガスを流通させる。そして、薬剤入り注射器の注射筒のフランジおよびピストンロッドの押し子を収容する最も大きな第３の膨出部は、中央部が凹没した鞍部状に形成されているため、上段または下段の包装容器との接触面積が少なく、前記包装容器の滅菌紙における滅菌ガスの接触効率を高める。
【０００７】
また、上記の構成の注射剤パックにおいては、積み重ねられた状態で容器本体と他の包装容器の滅菌紙との接触面積を一層低減するため、第２の膨出部の高さは、第１の膨出部および第３の膨出部よりも低く形成されているのが好ましい。
【０００８】
【発明の実施の形態】
本発明に係る注射剤パックの一実施形態を図面に基づいて説明する。図１は、注射剤パックにおける包装容器の外形を示す斜視図である。図２は、注射剤パックの包装構造を底面側から示した展開斜視図である。図３は、包装容器の膨出部の形状を示す図であり、容器本体の長手方向に直交する断面図である。図４は、注射剤パックの滅菌処理の態様を示す斜視図である。
【０００９】
本発明の注射剤パックは、図１及び図２に符号（Ｐ）にて示す様に、包装容器（１）に薬剤入り注射器（４）を収容して構成される。周知の通り、薬剤入り注射器（４）は、注射針を取り付けて直ちに使用できる形態の注射具であり、注射針取付部にキャップ（４２）が装着された注射筒（４１）と、先端にピストンを有し且つ注射筒（４１）に挿入されたピストンロッド（４４）と、注射筒（４１）に充填された薬剤とから成る。薬剤入り注射器に関する技術は、特開平４−１５０８６８号公報などに記載されている。
【００１０】
注射剤パック（Ｐ）は、滅菌ガスを使用し、加熱することなく容器内部を滅菌処理した医療用滅菌包装の一形態であり、薬剤入り注射器（４）に充填される薬剤としては、加熱に適さない薬剤、典型的には、ヒアルロン酸ナトリウム溶液などが好適である。また、滅菌ガスとしては、処理工程における取扱上の観点から、毒性の低いガスが望ましく、過酸化水素ガスは、エチレンオキサイドガスに比べて殺菌作用が大きく且つ毒性が比較的低いので好適なガスである。
【００１１】
図１に示す様に、包装容器（１）は、透明性の樹脂によって細長の略器状に一体成形され且つ底面が開放された容器本体（２）と、滅菌用ガスを透過可能なシート材から成り且つ容器本体（１）の底面を封止する滅菌紙（３）とから構成される。容器本体（２）を構成する樹脂材料としては、細菌を透過させることがなく且つ内容物を目視できる材料であれば適宜の熱可塑性樹脂を使用できるが、ガスバリヤー性および透明性の観点から、容器本体（２）は、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂によって構成されているのが好ましい。
【００１２】
具体的には、容器本体（２）は、２００〜６００μｍの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、ブリスター成形、深絞り成形などの成形法によって作製される。特に、ＰＥＴフィルムにて構成された容器本体（２）は、廃棄処分の際に塩化ビニルの様に塩素などの毒性ガスの発生がなく、公害防止の観点からも好ましい包装材である。
【００１３】
滅菌紙（３）を構成するシート材としては、細菌などの微生物を透過することなく且つ滅菌用ガスや空気などのガスを透過可能な材料、例えば、デュポン社製の商品名「タイベック１０７３Ｂ」として知られる高密度ポリエチレンのシート材が好適に使用される。斯かる滅菌紙（３）は、容器本体（２）に対し、超音波溶着法または加熱溶着法によって溶着される。
【００１４】
本発明の注射剤パック（Ｐ）において、容器本体（２）は、薬剤入り注射器（４）の注射筒（４１）先端、すなわち、キャップ（４２）を装着した注射針取付部を収容する第１の膨出部（２１）と、途中まで挿入されたピストンロッド（４４）を含む薬剤入り注射器（４）の全長の略中央部を収容する第２の膨出部（２２）と、注射筒（４１）のフランジ（４３）及びピストンロッド（４４）の押し子（終端の拡径部）（４５）を収容する第３の膨出部（２３）と、これらの膨出部を結合する２つのくびれ部（２４）、（２４）とを備えている。
【００１５】
すなわち、容器本体（２）の第１の膨出部（２１）及び第３の膨出部（２３）は、薬剤入り注射器（４）の両端側に比較的大きな空間を形成し、注射筒（４１）とピストンロッド（４４）の隙間などの薬剤入り注射器（４）の細部に拡散する滅菌ガスを一時的に貯留する機能を発揮する。そして、中央の第２の膨出部（２２）は、包装容器（１）から薬剤入り注射器（４）を容易に且つ衛生的に取り出すための容器本体（２）の折り曲げ支点として機能する。
【００１６】
また、容器本体（２）の各くびれ部（２４）は、後述する滅菌処理において多数の注射剤パック（Ｐ）を積み重ねた際、上段または下段の注射剤パック（Ｐ）との間に隙間を形成し、滅菌ガスや空気の流れを良好にする。更に、斯かる観点からは、容器本体（２）の第１の膨出部（２１）及び第３の膨出部（２３）は、積み重ねる場合の支持点として構成され、第２の膨出部（２２）は、第１の膨出部（２１）及び第３の膨出部（２３）よりも低い高さで形成されているのが好ましい。
【００１７】
更に、図３に示す様に、第１の膨出部（２１）、第２の膨出部（２２）及び第３の膨出部（２３）は、注射剤パック（Ｐ）を積み重ねた際の滅菌ガスや空気の流れを良好にし且つ上段または下段の注射剤パック（Ｐ）の滅菌紙（３）との接触面積を低減するため、角部の曲率半径（Ｒ）を５〜２０ｍｍの範囲で設定される。
【００１８】
本発明の最大の特徴は、上記の容器本体（２）において、第３の膨出部（２３）を特定の形状に形成した点にある。すなわち、注射剤パック（Ｐ）の滅菌処理における滅菌紙の有効なガス透過面積を十分確保するため、容器本体（２）の第３の膨出部（２３）は、容器本体（２）の長手側から側面視した場合、中央部が凹没した鞍部状に形成される。具体的には、図１に示す様に、第３の膨出部（２３）は、容器本体（２）の長手方向に沿った前後に突起部分を有し、各突起部分の間に鞍部（２５）を有する。
【００１９】
注射剤パック（Ｐ）は、図２に示す様に、成形された容器本体（２）に薬剤入り注射器（４）を装填した後、容器本体（２）の底面に滅菌紙（３）を溶着することにより、包装容器（１）に薬剤入り注射器（４）を封入して製造される。図２に示す薬剤入り注射器（４）の注射筒（４１）のフランジ（４３）には、使用時に指を引掛けて薬剤の注入を容易にするアダプター（補助具）（４７）が装着されている。アダプター（４７）は、隙間を介して２枚の環状の薄板が対向配置された形状を備えている。アダプター（４７）は、容器本体（２）に薬剤入り注射器（４）を収容した場合、薬剤入り注射器（４）の揺動を防止する機能も有する。なお、容器本体（２）は、製造効率上、横方向に複数個連続した状態で成形され、複数個の注射剤パック（Ｐ）が同時に製造される。
【００２０】
滅菌処理は、台車に多数の注射剤パック（Ｐ）を積載し且つ台車ごと閉鎖系のチャンバーに装填し、当該チャンバーに過酸化水素ガス等の滅菌ガスを供給して行われる。滅菌処理において、注射剤パック（Ｐ）は、図４に示す様に、多数配列され（例示的に１列のみ図示）且つ上下に多数段積み重ねた状態で過酸化水素ガスに晒される。
【００２１】
その際、本発明の注射剤パック（Ｐ）において、容器本体（２）のくびれ部（２４）は、上段または下段の包装容器（１）との間に隙間を形成するため、注射剤パック（Ｐ）の積層体全体に過酸化水素ガスを流通させる。そして、薬剤入り注射器（４）の注射筒（４１）のフランジ（４３）及びピストンロッド（４４）の押し子（４５）を収容する容器本体（２）の最も大きな第３の膨出部（２３）は、中央部が凹没した鞍部状に形成されているため、上段または下段の包装容器（１）との接触面積が少なく、包装容器（１）の滅菌紙（３）における過酸化水素ガスの接触効率を高める。
【００２２】
また、滅菌処理した後は、チャンバー内の過酸化水素ガスを排気し、導入した空気に注射剤パック（Ｐ）を晒すことにより、包装容器（１）の内部の過酸化水素ガスを脱気する。その際、滅菌処理と同様に、容器本体（２）のくびれ部（２４）は、注射剤パック（Ｐ）の積層体全体に空気を流通させ、そして、第３の膨出部（２３）は、滅菌紙（３）における空気の接触効率を高める。
【００２３】
すなわち、本発明の注射剤パック（Ｐ）においては、包装容器（１）の容器本体（２）が上述の様な特定の形状を備えており、積み重ねた際に滅菌紙（３）のガス透過面積を十分に確保できるため、滅菌処理において包装容器（１）の内部に短時間で過酸化水素ガスを透過でき、また、包装容器（１）の内部から短時間で過酸化水素ガスを脱気できる。従って、本発明の注射剤パック（Ｐ）においては、滅菌処理の効率を一層向上できる。
【００２４】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明の注射剤パックによれば、包装容器の容器本体が３つの膨出部とこれらを結合する２つのくびれ部とを備え、かつ、第３の膨出部が中央部を凹没させた鞍部状の形状を備えており、積み重ねた際に滅菌紙のガス透過面積を十分に確保できるため、滅菌処理において包装容器の内部に短時間で滅菌ガスを透過でき、また、包装容器の内部から短時間で滅菌ガスを脱気でき、その結果、滅菌処理の効率を一層向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】注射剤パックにおける包装容器の外形を示す斜視図
【図２】注射剤パックの包装構造を底面側から示した展開斜視図
【図３】包装容器の膨出部の形状を示す断面図
【図４】注射剤パックの滅菌処理の態様を示す斜視図
【符号の説明】
１：包装容器
２：容器本体
２１：第１の膨出部
２２：第２の膨出部
２３：第３の膨出部
２４：くびれ部
２５：鞍部
３：滅菌紙
４：薬剤入り注射器
４１：注射筒
４３：フランジ
４４：ピストンロッド
４５：押し子
Ｐ：注射剤パック

Claims

包装容器に薬剤入り注射器を封入して成る注射剤パックであって、前記包装容器は、透明性のポリエステル系樹脂によって細長の略器状に一体成形され且つ底面が開放された容器本体と、滅菌用ガスを透過可能なシート材から成り且つ前記容器本体の底面を封止する滅菌紙とから構成され、前記容器本体は、薬剤入り注射器の注射筒の注射針取付部を収容する第１の膨出部と、薬剤入り注射器の略中央部を収容する第２の膨出部と、注射筒のフランジおよびピストンロッドの押し子を収容する第３の膨出部と、これらの膨出部を結合する２つのくびれ部とを備え、かつ、前記第１の膨出部および前記第３の膨出部は、滅菌処理の際の滅菌ガスの貯留用空間を形成しており、前記第２の膨出部は、前記第１の膨出部および前記第３の膨出部よりも低い高さで形成され、前記第３の膨出部は、容器本体の長手側から側面視した場合、中央部が凹没した鞍部状に形成されていることを特徴とする注射剤パック。
ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートである請求項１に記載の注射剤パック。
薬剤入り注射器を収容し且つ滅菌紙で容器本体の底面を封止した状態で過酸化水素ガスによって包装容器の内部が滅菌処理された請求項１又は２に記載の注射剤パック。
薬剤としてヒアルロン酸ナトリウム溶液が薬剤入り注射器に充填されている請求項１〜３の何れかに記載の注射剤パック。