本発明は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調方式等のマルチキャリア変調方式を用いたディジタル伝送装置に関する。
近年、ヨーロッパやアメリカおよび日本でディジタル放送が検討されており、その変調方式としてOFDM変調方式の採用が有力視されている。このOFDM変調方式とは、マルチキャリア変調方式の一種で、多数のディジタル変調波を加え合わせたものである。 このときの各キャリアの変調方式にはQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4相位相偏移変調)方式等が用いられ、合成波であるOFDM信号を得ることができる。ここで、このOFDM信号を数式で表すと、以下のようになる。まず、各キャリアのQPSK信号をαk(t)とすると、これは式(1)で表せる。
αk(t)=ak(t)・cos(2πkft)+bk(t)・sin(2πkft) ・・・・(1)
ここで、kはキャリアの番号を示し、ak(t)、bk(t)は、k番目のキャリアのデータで、[−1]または[1]の値をとる。次に、キャリアの本数をNとすると、OFDM信号はN本のキャリアの合成であり、これをβk(t)とすると、これは次の式(2)で表すことができる。
βk(t)=Σαk(t) (但し、k=1〜N) ・・・・・・(2)
ところで、OFDM変調方式では、マルチパスの影響を低減するため、信号にガードインターバルを付加するのが一般的である。このOFDM信号は、上記信号単位から構成され、この信号単位シンボルは、例えば有効サンプル1024サンプルにガードインターバルデータ48サンプルを付加した1072サンプルのシンボル894組に、6組の同期シンボルを付加した、全900シンボルからなるフレームと呼ぶストリーム単位の繰返しで構成される。
図13は従来技術によるOFDM伝送装置における変復調部の基本的な構成を示すブロック図であり、伝送路符号化部1T、符号化部2T、IFFT(InverseFast Fourier Transform:逆フーリエ変換)部3A、ガード付加部3B、同期シンボル挿入部5、クロック発振器6、直交変調処理部8とからなる送信側処理部101と図示しない送信アンテナを有する送信側Txと、図示しない受信アンテナとACG部9A、直交復調処理部9B、同期検出&相関部4A、FST補正部4B、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部3C、復号化部2R、伝送路復号化部1R、電圧制御クロック発振器10からなる受信側処理部203を有する受信側Rxとにより構成され、これら送信側Txと受信側Rxは、例えば、電波を用いた無線の伝送路Lにより結ばれている。以下、図13を用いてOFDM信号の変復調処理について説明する。送信側処理部101の伝送路符号化部1Tに連続的に入力されるデータDinは、例えば900シンボルからなるフレーム毎に処理され、このフレーム期間内で同期シンボルの6シンボル期間を除く894個の情報シンボル毎に、1から400番と、625から1024番までの計800サンプル期間に、間欠状態のレート変換済データDiiとして出力される。また、伝送路符号化部1Tは、フレーム周期である900シンボル毎に、送信側のフレーム制御パルスFSTを発生し、同期シンボル期間の開始を表わすフレームパルス信号として、他のブロックに供給する。符号化部2Tは、入力されたデータDiiを符号化し、I軸とQ軸の2軸にマッピングしたデータRfとIfを出力する。IFFT部3Aは、これらデータRfとIfを周波数成分と見なし、1024サンプルからなる時間軸信号R(実数成分)とI(虚数成分)に変換する。
ガード付加部3Bは、1024サンプルからなる時間軸信号RとIの開始期間における波形の中で、例えば最初の48サンプルの波形を1024サンプル後に付加し、合計1072サンプルの時間軸波形からなる情報シンボルRgとIgを出力する。 この48サンプルは反射波混入時の緩衝帯となる。同期シンボル挿入部5は、これら情報シンボルRg,Igに対して、それらの894サンプル毎に、予めメモリ等に記憶された、6シンボルからなる同期波形を挿入し、フレーム構成のデータRsgとIsgを作成する。これらのデータRsg,Isgは直交変調処理部8に供給され、ここでD/A変換器81と直交変調器82、ローカル発振器83により、周波数FcのキャリアによるOFDM変調波信号RFとして生成され、高周波増幅され、ここでは図示しないが、送信アンテナを介して伝送路Lに送出されることになる。 伝送帯域は、UHF帯やマイクロ波帯が用いられる。なお、送信側Txにおける処理に必要なクロックCK(周波数16MHz)は、クロック発振器6から各ブロックに送信側クロックCKdとして供給される。
上記の様にして送信されたOFDM変調波信号RFは、図示しない受信アンテナを介し、受信側Rxの高周波部であるAGC部9Aを経由して直交復調処理部9Bに入力され、直交復調器91により電圧制御発振器93から供給される周波数Fc'の局発信号と乗算されて、ベースバンド信号に直交復調された後、A/D変換器92によってディジタル化され、データR'sgとI'sgに変換される。これらのデータR'sg,I'sgは、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部3Cに供給され、ここでパルスFSTrcに基づきFFTとして利用する1024サンプルのデータ期間を決定するゲート信号を作成して、緩衝帯である48サンプルを除外することにより、時間軸波形信号R'sg,I'sgは、周波数成分信号R'fとI'fに変換される。そして、これら周波数成分信号R'f,I'fは、復号化部2Rにて識別、復号化されて、データD'oになり、伝送路復号化部1Rにて連続した信号Doutとして出力される。一方、上記データR'sgとI'sgは、同期検出&相関部4Aにも入力され、ここで同期シンボル群が検出され、これによりフレームパルスとなるパルスFSTrが取り出される。 このパルスFSTrは、受信側Rxのフレーム制御パルスとなり、受信側Rxの各ブロックに供給される。また、この同期検出&相関部4Aは、電圧制御クロック発振器10から発生されるクロックCKrcとデータR'sgとI'sgの同期成分を比較し、比較結果に応じた相関出力ScをFST補正部4Bに出力する。 そして、FST補正部4Bで制御電圧VCを生成し、これにより電圧制御クロック発振器10を制御し、正しい周期のクロックCKrcが発生され、受信側の各ブロックに供給される。
次に、図13に示した各ブロックの詳細について説明する。伝送路符号化部1Tは、伝送中に混入の恐れがある各種のエラーによるデータ誤りを防止するため、インターリーブ処理、エネルギー拡散処理、エラー訂正用符号処理等を行う。符号化部2Tは、信号Diiを、マッピングROMを用いてI,Q軸の所定点の情報に変換し、また、不要キャリアに相当する期間の信号は0に置換し、データRfとIfを作成する。IFFT変換部3Aは、入力信号RfとIfをクロックCKdとパルスFSTとでタイミングを決められた、シンボル周期の時間軸波形RとIに変換する。具体的には、プレッシー社のPDSP16510等を用いれば実現できる。ガード付加部3Bは、ここに入力された信号RとIを1024サンプル遅延させる遅延器と、1025サンプル目から1072サンプル目のみ遅延出力を選択する切り替え器からなり、これらはクロックCKとパルスFSTによってタイミングを決められる。 ここで得られる全1072サンプルからなるシンボルは、1025サンプル目から1072サンプル目に、1サンプル目から48サンプル間の時間軸波形が付加され、情報シンボルRg,Igとなる。
次に、同期シンボル挿入部5の一例を図14に示す。 まず、ROM5−1,5−2は、クロックCKとパルスFSTでタイミングが決められたコントローラ5−5によって制御され、これにより、パルスFSTに応じたタイミングで同期シンボル信号を発生する。同様にSEL5−3,5−4は、クロックCKとパルスFSTでタイミングが決められたコントローラ5−6によって制御され、ガード付の時間情報シンボル信号Rg,Igの、現段階では無信号期間である1シンボルから6シンボルまでの期間だけを、ROM5−1,5−2から読み出した同期シンボル信号に切り替えて出力する。ここで、この同期シンボル信号としては、例えば、1シンボル期間中無信号で、該同期シンボル群の存在を大まかに見つけるためのヌル(NULL)シンボル、1シンボル期間に1本のキャリアにしか信号成分を持たない特殊なシンボル(以下、CWシンボルと称す)、1シンボル期間に伝送帯域の下限周波数から上限周波数に変化する波形であって、シンボルの切り替わり点を正確に求めるためのスイープ(SWEEP)シンボル、遅延検波復調をするために必要な位相基準を示す基準シンボル(以下、リファレンスシンボルと称す)等である。 なお、同期シンボルを6組とする場合、上記にさらに2つの予備シンボルが付加される。次に、直交変調処理部8について説明を補足すると、D/A変換器81により、実数部の信号Rsgと虚数部の信号Isgに対してD/A変換を行い、直交変調器82では、まず実数部信号に対しては、発振器83からの周波数fcのキャリア信号のままで変調し、虚数部信号に対しては、発振器83の周波数fcのキャリア信号を90°移相した信号で変調することによって直交変調を施し、これらの信号を合成してOFDM変調波信号を得る。
次に、受信側Rxの構成動作について説明する。受信側Rxでは、伝送されたフレーム構成の信号は、AGC部9Aに入力され、ここで、受け取った信号レベルを適正レベルに修正する制御信号Saを発生しレベルを変更する。 AGC部9Aにて適正レベルとなったOFDMフレーム構成信号は、直交復調処理部9Bに入力される。ここでの処理は、送信側Txとは逆に、直交復調器91によって、電圧制御発振器93から出力される周波数Fc'のキャリア信号により復調した出力を実数部信号として取り出し、キャリア信号を90°移相して復調した出力を虚数部信号として取り出すものである。 そして、これら実数部と虚数部の各復調アナログ信号を、A/D変換器92によりディジタル信号に変換する。同期検出&相関部4Aは、受信した信号R'sgとI'sgからフレームの区切りを探索しフレームの基準FSTrcを出力するとともに相関出力Scを出力する。そして、FFT部3Cは、このパルスFSTrcに基づいてシンボルを区切り、前述のようにフーリエ変換を行うことでOFDM復調を行い、データR'fとI'fを出力する。復号化部2Rは、例えばROMテーブル手法にて、データR'fとI'fを識別し、データD'oを算出する。伝送路復号化部1Rは、逆インターリーブ処理、エネルギー逆拡散処理、エラー訂正処理等を行い、連続したディジタルデータDout、エラー訂正処理状況であるBER(ビット・エラー・レート)状態を示す信号Sbおよび受信側クロック信号CKRXを出力する。
次に、図15に同期検出&相関部4Aの具体的構成の一例を示し、説明する。直交復調したディジタル信号である時間軸信号R'sg,I'sgは、NULL終了検出器4−1とSWEEP演算器4−2に入力される。NULL終了検出器4−1は、フレーム構成のシンボル群から同期シンボル中で無信号状態にあるNULLを検出し、同期シンボルの大まかな位置(タイミング)を検出し、NULL終了時点からタイマ回路によりSWEEPシンボル開始時点を推定して、SWEEP開始指示パルスSTを出力する。SWEEP演算器4−2は、SWEEP開始指示パルスSTを参照しNULLシンボルの2シンボル後に存在する波形を、SWEEPシンボル波形と推定して取り込み、各シンボルの正確な切り替わりタイミングを捜索する。具体的には、予めSWEEPシンボルのパターンが格納してあるメモリ4−3を用い、入力されたOFDM信号とこのメモリ4−3から読み出したパターンを例えば相関演算し、相関出力Scを、図13のFST補正部4Bに出力する。FST補正部4BはフレームパルスFSTrを基準に、各シンボルの正確な切り替わりタイミングとの位相ずれを算出し、受信側の基準クロックCKrの補正信号VCを出力し、受信側のフレーム位相を伝送データに一致させる。フレームカウンタ4−4は、SWEEP開始指示パルスSTに基づいて、クロックCKのカウントを開始し、このカウント数がフレーム周期に相当する値(例えば、1072×900)に到達する毎に、パルスFSTrを出力するとともに、カウント値を0に戻してから再びクロックCKのカウントを開始する。従って、以後は、一定カウント毎に、即ちフレーム開始点毎にパルスFSTrが出力されることになり、受信側ではこのパルスFSTrを高速フーリエ変換、復号化、逆レート変換の開始タイミングとする。
次に、図16と図17を用いて、NULL終了検出器4−1の具体的構成と、SWEEP開始位置推定過程の詳細を説明する。NULL終了検出器4−1へ供給される信号R'sg,I'sgは、絶対値回路4-1-1,4-1-2で絶対値化され、加算器4-1-3で加算されて、絶対値加算出力4aとなる。この絶対値加算出力4aを、比較器4-1-4において、しきい値Vthと比較し、しきい値Vthを越えない期間、即ち、T1〜T2間のNULLシンボル期間に相当する比較結果出力4bを得る。そして、エッジ検出器4-1-5において、比較結果出力4bから、信号の立上りエッジを検出する。 そして、遅延回路4-1-6により、この信号立上りエッジ検出信号4cを1シンボル遅延し、SWEEP開始指示パルスSTを発生する。このSWEEP開始指示パルスSTによって、正しいSWEEPシンボル開始位置(T3)を特定することができ、SWEEP演算器4−2に、SWEEPシンボル波形の開始部分から取り込めるため、SWEEP演算における位相ずれを正確に算出でき、各シンボルの正確な切り替わりタイミングを捜索することが可能となる。すなわち、SWEEP演算器4−2から出力される相関出力Sc信号を基に、FST補正部4Bでずれ検出を行い、受信側サンプルレートとなるクロックCKrcの速度を調整し、伝送されてきた同期シンボル位相とのロック処理を行うことによって、FFTゲートの時間的位置の誤差は消える。 なお、反射波があるため、ゲート位置はシンボル期間の後部がベターである。ところで、粗調整にあたる同期シンボルの検出エッジを基に決定するSWEEP開始指示パルスの時間的位置が正確であれば、微調整にあたるクロックCKrcの速度調整により行うFFTゲートの時間的位置補正量が減少し、その所要時間も減少する。 すなわち、より少ない時間で、誤差0(ずれ無し)のゲート位置に設定でき、最良の復号状況を達成できる。
この様な場合の、相関出力信号Scの一例を、図18に示す。 図から明らかな様に、この場合の相関出力信号Scは、反射波がなく、主波による鋭いピークが唯一存在する形となる。次に反射波あり時の動作、NULL検出しきい値との関連を説明する。図19に示す如く、反射波が存在すると、NULL終了点の検出ずれが大きくなり、検出エッジの時間的位置は遅れるため、粗調整の精度は低下し、微調整で行う補正量も増加し、ひいては微調整に要する時間が増加して、最良の復号状況への到達が遅れる。 反射波の影響を低減する場合、しきい値Vthを低め(α=0.3)に設定すれば、主波によるNULL終了点を検出し易くなって、粗調時のずれ量は少なくなり、上述の微調整の所用時間の延長は防止できる。このような場合の、相関出力信号Scの一例を図20に示す。 図から明らかなように、この場合の相関出力信号Scは、主波による山と反射波による山が存在する形となる。以上は、雑音成分の混入の少ない高CNでの状態が前提であった。 しかし、図21に示すように、入力電界の低い使用条件では雑音成分が増加し、比較結果出力4bに、NULL期間の雑音成分で発生した偽信号が混ざる。 このため、粗調整の精度は、大幅な低下となる恐れがある。 また、更に電界が弱まると、NULL期間の雑音成分が、常にしきい値Vthを越えてしまい、NULL期間の終了点を全く検出不能となる場合も生じる。 このような低CNでの動作を確保するには、しきい値Vthは高め(α=0.8)が良い。このような場合の、相関出力信号Scの一例を図22に示す。 図から明らかな様に、この場合の相関出力信号Scは、受信側で再生したFSTrパルスを基準に取り込んだSWEEP信号に雑音が多く含まれ、SWEEPパターンメモリ4−3の位相をずらしながら一致度を演算するが、高CN時ほど一致度が高まらないため、主波により生じる山は緩い形となる。
特開平11−68680号公報
特開平9−8684号公報
特開平11−103272号公報
特開2000−332630号公報
実開平3−105041号公報
ところで、以上説明したようなディジタル伝送装置を、マラソン中継等の移動しながらの電波伝送に用いる場合、受信側のアンテナを移動中の中継車等の送信アンテナに正確に向け、強い電波を受ける方向調整作業が必要となる。 以後、この方向調整作業を、ここでは短縮して、方調と呼ぶ。この方調作業を容易化するため、図13に示す様な従来の装置には、電界の強さをAGC部9Aの制御信号Saと見立て、電界の強さ(Sa値)に応じて周波数が変化する低周波の信号を出力する手段(例えば、図示しない電界強度を音の高・低で表す手段)や電界強度レベルメータが装備されていた。旧来のアナログ伝送の場合、ほとんどのケースで、伝送品質は電界が強い程に良好となる。 しかし、ディジタル伝送の場合は、電界が強くて反射波の混入が多い状態より、多少電界が弱くても反射波が無く、主波のみ存在する状態の方が、良好な伝送状態を得られることが圧倒的に多い。従って、電界の強弱だけを表す低周波出力音を参考に方調を行っても、反射波の混入状況は判からず、品質の高い伝送が必ずしも実現できない欠点が生じる。本発明はこれらの欠点を除去し、電界強度の高低だけでなく、反射波の有無、BER(ビット・エラー・レート)値等の総合的な伝送状態を可聴低周波で表現し、耳から該状況を受け方向調整作業を容易化し、品質の高い伝送を実現することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するため、ディジタル変調方式を用いた伝送システムにおいて、受信側に、受信信号から反射波の混入状態を表わす反射波状態信号、電界強度を表す電界強度状態信号及び復号BER(ビット・エラー・レート)状態を表すBER状態信号の内、少なくとも何れか1つの状態信号を生成し、当該生成された状態信号に応じて、発生する音の所定の特性を可変する低周波発生手段を有し、当該発生する音の状態から伝送状態を総合的に解析・把握するようにしたものである。また、発生する音の所定の特性を、周波数変化、時間的振幅変化、単音と複音の切替の内、少なくとも何れか1つを可変することによって行うものである。また、発生する音の所定の特性を、音の高低の変化、音量の変化、音の繰り返し発生周期の変化の内、少なくとも何れか1つを可変することによって行うものである。さらに、このディジタル伝送システムは、直交周波数分割多重変調方式を用いたものである。つまり、本発明は、人間の耳が、音量の大小、音量の時間的変化、音の周波数の高低、さらに音楽で言うところの単音及び和音(複音)を聞き分けられることを利用し、電界の強弱、BER値の高低、反射波の有無や強弱等を、低周波出力の各種の特性変化に割り当てることにより、伝送状態を耳をたよりに得ることができ、より正確な方調作業を容易に実施できる。
以上説明したように本発明によれば、電界状態、反射波の有無およびレベル、BER状態に応じて、変化する低周波信号を出力するディジタル伝送装置を実現でき、伝送状態を耳をたよりに得ることができ、より正確な方調作業を容易に実施できる。
図1に、OFDM変調方式を用いた本発明の伝送システムの全体ブロック構成を示し、以下、受信側における構成・動作を主として説明する。この伝送システムは、送信側Txに図13に示す送信側処理部101を、受信側Rxに受信側処理部203、低周波発生部7を有する構成である。受信側Rxにおいて、受信側処理部203から得られる電界強度を表すAGC制御信号Sa、反射波状態を表す相関出力Sc及びBER状態を示す信号Sbは、低周波発生部7に接続される。 また、受信側処理部203の動作タイミング基準であるパルスFSTrcも、低周波発生部7に接続される。低周波発生部7は、反射波の存在を相関波形から、伝送エラーの状態を伝送路復号化部から得て、電界レベルの情報と合わせて変化する低周波出力を発生させる。
ここで、人間の耳は、音量の大小、音量の時間的変化、その音の周波数の高低、さらに音楽で言うところの単音及び和音を聞き分けられる。 以後和音の状態を複音と記す。 そこで、電界の強弱、BER値の高低、反射波の有無や強弱等を、低周波出力の変化に割り当てる。例えば、エラーフリーに近い状態、即ちBER値が低ければ、音を0.9秒間出し、0.1秒間無音とする。 また、エラー発生が多くBER値が高ければ、音を0.3秒間出し、0.7秒無音とする。 このように、音量の時間的変化でBER値の高低を表す。そして、受信電界が高ければ、音の周波数を上げ、電界が低ければ、逆に音の周波数を下げる。 このように、電界強度を周波数の高低で表す。また、相関波形の山が一つ、即ち主波のみの状態であれば単音の音を出力し、相関波形に山が二つあるような反射波が存在する状態であれば、複音の音、即ち和音を出力する。 具体的には、反射波の遅延時間に応じて、主波周波数の1倍より大きく2倍未満程度の周波数を反射の強さに応じて加算出力する。 なお、反射波が主波よりも早く届く場合は、主波周波数の1/2倍より大きく1倍未満程度の周波数を反射の強さに応じて加算出力する。参考までに、単音の各音であるド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ドの最初のドの周波数と最後のドの周波数は丁度2倍の関係となっている。
図3に、上記低周波発生部7の一実施例のブロック構成を示し、以下に詳しく説明する。電界強度に関連した信号Saは、電界強度−電圧変換器7−6に入力され、該信号Saは電圧VSaに変換される。 そして、この電圧値VSaは電圧制御発振器(VCO)7−1に入力され、電界強度レベルに応じた周波数f1を出力する。信号f1は、加算処理を行う加算器(ADD)7−4及び周波数変換器7−2に入力される。 周波数変換器7−2の出力f2は電圧制御アンプ(VCA)7−3に入力される。反射波の有無及びレベルに関連した反射波状態信号Scは、反射波状態−電圧変換器7−7に入力され、反射波状態に応じた電圧出力VScを出力する。この電圧出力VScはVCA7−3の制御端子に入力され、VScに応じて周波数変換器7−2の出力f2の振幅レベルを変更する。 VCA7−3の出力はADD7−4のもう一方の端子に入力される。 ADD7−4の出力はVCA7−5に入力される。BERの状態に関連した信号Sbは、BER状態−電圧変換器7−8に入力され、BER状態に応じた電圧VSbに変換される。 この電圧VSbは、電圧−時間(V−T)変換器7−9に入力され、電圧に応じてレベルHの時間比率が長くなる信号VTSbに変換され、VCA7−5の制御入力端子に接続される。 ここで、VCA7−5は、制御端子がレベルHの時に出力を通すものである。
次に、電界強度状態を表す信号Saに関連した動作の様子を図4に示して説明する。ケースF1の様に、−80dBmと受信電界強度が低い場合、電圧VSaは低くなる。 そのため、低い電圧で制御されるVCO7−1からの出力周波数f1は、例えば110Hzと低くなる。 また、ケースF4のように、−40dBmと受信電界強度が高い場合、電圧VSaは高くなり、VCO7−1からの出力周波数f1は、例えば、1760Hzと高くなる。 なお、いずれの場合でも、周波数変換器7−2は、入力される周波数f1を、1.2倍の周波数に変換したf2を出力する。
次に、反射波の状態を表す信号Scに関連した動作の様子を図5に示し、説明する。反射波の状態を表す信号Scは、反射波状態−電圧変換器7−7で、反射波のレベルに応じ上昇する電圧出力VScとなり出力される。 この電圧出力VScにより、VCA7−3の入力であるf2の振幅レベルを変更する。ケースF1のように、反射波の状態を表す信号Scが、主波のみの場合、VCA7−3の出力は極めて小さい。 しかし、ケースF4のように主波以外に反射波が多く含まれる場合、VScが上がりVCA7−3の出力は、大きくなる。そして、周波数出力f1とVCA7−3経由の周波数出力f2は、ADD7−4で加算されるため、VCA7−3を通過するf2の振幅レベルが上がり、ADD7−4からf1とともにf2も生じる。
次に、BER状態を表す信号Sbに関連した動作の様子を図6に示し、説明する。ケースF1のように、BER状態が悪い場合、電圧VSbが低く、V−T変換器7−9からは、H期間の短いパルスVTSbしか出力されない。 このH期間の短いパルスVTSbによりVCA7−5は制御され、ADD7−4からの低周波出力を、短い期間しか通さない。一方、ケースF4のように、BER状態が良く、電圧VSbも高くV−T変換器7−9からH期間の長いパルスVTSbが出力されると、VCA7−5は、長い期間ADD7−4からの低周波出力を通す。
次に、反射波状態−電圧変換器7−7の一実施例のブロック構成を図7に示し、図8に反射波が混入した場合のSWEEP相関演算出力を示し、以下に詳しく説明する。図8において、0±3の範囲に生じた山が、主波を示す成分である。 また、上記以外の+4以降は遅延した反射波によるものである。なお、−4以前の出力は、主波より強い反射波に同期している際の主波の成分となる。 相関出力波形であるScは、ゲート7-7-1Aとゲート7-7-1Bとゲート7-7-1Cとに入力される。 各ゲートの出力は、それぞれ積分器7-7-2Aと積分器7-7-2Bと積分器7-7-2Cに入力される。 各積分器の出力は、演算処理部7-7-3に接続される。 演算処理部7-7-3の出力は、サンプルホールド部7-7-5に接続される。サンプルホールド部7-7-5の出力はVScとして出力される。 制御部7-7-4は、各ゲート7-7-1A〜1Cの制御入力に、それぞれの制御パルスGa,Gb,Gcを出力する。 積分器7-7-2A〜2Cのクロック(CLR)入力には、CLRパルスが接続される。 サンプルホールド部7-7-5のHOLD入力には、HOLDパルスが接続される。ゲート7-7-1A〜1Cは、制御入力がレベルH期間、入力を通過させ、レベルLの場合は入力を遮断する。 積分器7-7-2A〜2Cは、CLR入力がHレベルになると、積分結果を0に戻す初期化を行い、レベルLの場合は、積分処理を行う。演算処理部7-7-3は、(A+C)×Bの演算結果を出力する。
図9に、制御部7-7-4から出力される各制御パルスを示す。 CLRパルスは、SWEEP相関出力Scの入力時期に先立つ時刻t0に、レベルHを出力し、各積分器の内容を初期化する。 Gaパルスは、図8の−4以前の期間に相当する時刻t1〜t2の期間でレベルHとなり、Gbパルスは、図8の−3〜+3の期間に相当する時刻t2〜t3の期間でレベルHとなり、Gcパルスは、図8の+4以降の期間に相当する時刻t3〜t4の期間でレベルHとなることで、対応の期間の積分処理を各積分器7-7-2A〜2Cに行わせる。 HOLDパルスは、積分完了後、演算が完了する時刻t5にレベルHとなり、サンプルホールド部7-7-5に演算結果を保持させる。
次に、低周波発生部7の動作を、図2を用いて説明する。 ここで、縦軸は、周波数の高低、横軸は時間とする。 また、四角の無い区間は無音を意味する。図2において、受信電界が低く、BER状態も悪い時刻aの場合、音の周波数はflと低く、BER値も悪いため、音が生じる時間割合も約40%と少ない。受信電界はやや高く、かつBER状態が良い時刻dの場合、電界が高いため音の周波数はfmないしfhと高くなり、また、BER値も良いため、音が生じる時間割合は80%と多くなっている。受信電界は更に高いが反射波が混入し、BER状態が中くらいの時刻eの場合、音の周波数はfhと高く、また反射波により複音となるためfh以外に周波数が1.2倍の周波数も生じる。 しかし、BER値が中くらいのため、音が生じる時間割合は約60%とやや減少する。
次に、上記低周波発生部7の他の実施例について、図10、図11を用いて、以下に詳しく説明する。図10は、電界強度状態、BER状態及び反射波状態を表す3種の信号を別の方法で割り当てた例を示す模式図である。 受信電界の強弱は低周波音の繰返し周期の長短で、またBER状態の良悪は発生する低周波の周波数の高低で、また反射波状態は低周波の音量の時間的変化として、表すものである。その、具体的構成を図11に示す。 BER状態を示す信号SbはBER状態−電圧変換器7−8に入力され、その出力VSbはVCO7−1Aに入力される。VCO7−1Aの出力f1は、VCA7−3に入力される。 反射波の有無を示す情報となる相関演算出力である信号Scは、時間軸拡張変換器7−10に入力された後、信号SLcとなり、VCA7−3の制御端子に入力される。電界の強弱を示すAGC制御信号である信号Saは、電界強度−電圧変換器7−6に入力された後に信号VSaとなり、超低周波VCO7−1Bに入力されてf1となる。 そしてf1は時間軸拡張器7−10のST端子に入力される。超低周波VCO7−1Bは、入力される電圧に応じて、例えば1Hz〜数Hz程度の繰り返しパルスを発生する。 時間軸拡張変換器7−10は、例えば入力された1波形の期間が数十msであるSc信号の波形を、数100ms程度の長い時間の遅い信号波形に変換する。 また、その発生は、ST端子がLからHに変化した瞬間から始まる。
次に、この低周波発生部7Mの全体的な動作について図10を用い説明する。受信電界が低くVSaも低い時刻aやbの場合、超低周波VCO7−1Bの発生するHとLの繰り返し信号は、1秒程度と遅いため、時間軸拡張変換器7−10からのSLc信号も1秒程度と遅い繰り返しとなる。 さらに、VCA7−3の入力f1はBER状態が悪く低い周波数flとなる。 この場合、VCA7−3の制御信号SLcは、反射が無く主波のみであるため、単独の三角波的な波形となり、音量変化はピーッという感じの増減となる。時刻eの場合、受信電界が高くVSaも高いため、超低周波VCO7−1Bの発生するHとLの繰り返し信号は、100ms程度と早くなり、時間軸拡張変換器7−10からのSLc信号も100ms程度と早い繰り返しで出力される。さらに、VCA7−3の入力であるf1はやや良いBER状態のため、やや高い周波数fmとなる。 この場合、VCA7−3の制御信号であるSLcは、反射波があるため、単独の三角波的でなく、主波による三角波の後に反射によるやや小さな三角波を伴う波形形状となる。 その結果、音量変化は主波分と反射分によりピーピッ、ピーピッとなる音量変化となる。
次に、図12に時間軸拡張変換器7−10の具体的な構成を示し、説明する。入力ScはAD変換器7-10-1でディジタル化された後、FIFOメモリ7-10-2に入る。 FIFOメモリ7-10-2は、クロック(CK)を書込みのサンプルCKとして用い、またそのCKを20分周したものを読み出しのサンプルCKとして用いる。 FIFOメモリ7-10-2は、R.RST端子がHからLに変化すると蓄えてあるメモリ内容を1/20倍の速度で1回読み出す。 読み出されたデータは、DA変換器7-10-3によりアナログ化されてSLc信号となる。 なお、全体がディジタル処理であれば、アナログ−ディジタルの変換は不要である。以上の説明は、SaとScとSbの3種の信号を全て使う例を示したが、これらの何れか2種のみを用いて低周波信号を変化させる利用方法でも良い。
本発明の全体構成の一実施例を示すブロック図
本発明の伝送状態に応じて発生する低周波音の一例を示すタイムチャート
本発明の低周波発生部7の構成の一実施例を示すブロック図
本発明の低周波発生部7の電界強度に関連した各部信号の模式図
本発明の低周波発生部7の反射波の有無に関連した各部信号の模式図
本発明の低周波発生部7のBER状態に関連した各部信号の模式図
本発明の反射波状態−電圧変換器の構成の一実施例を示すブロック図
反射波混入時のSWEEP相関出力を表す模式図
本発明の反射波状態−電圧変換器の動作を示すタイムチャート
本発明の伝送状態に応じて発生する低周波音の他の例を示すタイムチャート
本発明の低周波発生部7Mの構成の一実施例を示すブロック図
本発明の時間軸拡張変換器の構成の一実施例を示すブロック図
従来の伝送装置の全体構成の一例を示すブロック図
同期シンボル挿入部の構成の一例を示すブロック図
同期検出&相関部の構成の一例を示すブロック図
NULL終了検出器の構成の一例を示すブロック図
反射波なしで高CN時のNULL終了検出器の動作を示すタイムチャート
反射波なしで高CN時のSWEEP相関出力の模式図
反射波ありで高CN時のNULL終了検出器の動作を示すタイムチャート
反射波混入時のSWEEP相関出力の模式図
反射波なしで低CN時のNULL終了検出器の動作を示すタイムチャート
反射波なしで低CN時のSWEEP相関出力の模式図
符号の説明
101:送信側処理部 203:受信側処理部
7,7M:低周波発生部 7−1:電圧制御発振器(VCO)
7−1B:超低周波VCO 7−2:周波数変換器
7−3,7−5:電圧制御アンプ(VCA) 7−4:加算器(ADD)
7−6:電界強度−電圧変換器 7−7:反射波状態−電圧変換器
7−8:BER状態−電圧変換器 7−9:電圧−時間(V−T)変換器
7−10:時間軸拡張変換器。