JP4132282B2 - 屈折率分布型光学樹脂材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来の光学樹脂材料では実現が困難であった、高い透明性と耐熱性を併有する屈折率分布型光学樹脂材料に関する。
本発明の光学樹脂材料は、それ自身が光ファイバなどの光伝送体であってもよく、また光ファイバ製造用のプリフォームなどの光伝送体の母材であってもよい。
【0002】
本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、非結晶性樹脂であるため光の散乱がなくしかも紫外光から近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性がきわめて高いため、多種多様な波長の光システムに有効利用できる。特に光通信分野において幹線石英ファイバに利用されている波長である1300nm、1550nmにおいて低損失である光伝送体を与える。
また本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、自動車のエンジンルームなどでの過酷な使用条件に耐える、耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備える。
【0003】
本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、屈折率分布型の光ファイバ、ロッドレンズ、光導波路、光分岐器、光合波器、光分波器、光減衰器、光スイッチ、光アイソレータ、光送信モジュール、光受信モジュール、カプラ、偏向子、光集積回路などの多岐にわたる屈折率分布型光伝送体として有用である。
【0004】
ここで、屈折率分布とは光伝送体の特定の方向に沿って屈折率が連続的に変化する領域を意味し、例えば屈折率分布型光ファイバの屈折率分布は、ファイバの中心から半径方向に向かって屈折率が放物線に近い曲線で低下している。
本発明の光学樹脂材料が光伝送体の母材の場合は、これを熱延伸などで紡糸して、屈折率分布型光ファイバなどの光伝送体を製造できる。
【0005】
【従来の技術】
従来、屈折率分布型プラスチック光伝送体用の樹脂としては、C−H結合を有しない非結晶性の主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が知られている(特開平8−5848参照)。この樹脂に拡散可能で、この樹脂とは屈折率の異なる拡散物質をこの樹脂に分布させることにより得られる屈折率分布型プラスチック光伝送体は、メチルメタクリレート樹脂、カーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂などの光伝送体では達しえなかった波長1300nm、1550nmで低損失である光伝送体を与えることが知られている。
【0006】
しかし、屈折率分布を形成するために屈折率の異なる拡散物質を分布させると光学樹脂のガラス転移温度Tg が低下し耐熱性が低下する問題がある。特に拡散物質がクロロトリフルオロエチレンの5〜8量体であるオリゴマー(屈折率1.41)などのように屈折率があまり高くない拡散物質が分散した光学樹脂材料においては、開口数NA[NA=(n2 −m2 )1/2 、nは屈折率分布型光学樹脂材料中の屈折率の最大値、mは屈折率分布型光学樹脂材料中の屈折率の最小値。]を大きくするために拡散物質の含有量を多くする必要がある。
【0007】
一方、このオリゴマーのTg は約−60℃と低く、室温では液状の化合物であるため、NAを大きくしようとして含有量を多くするにつれてTg が低下する。この結果、光伝送体が高温に曝されたときに屈折率分布が変化したり、光伝送性能が変化するため、NAを大きくしがたいという問題が生じる。
【0008】
また、特開平8−5848記載のジブロモテトラフルオロベンゼンやクロロヘプタフルオロナフタレンなどの拡散物質は、屈折率が高いので充分な開口数NAを得るための添加量が少なくてすむが、この拡散物質が分散した光学樹脂材料においてもTg が低く耐熱性が充分でない。また、これらの拡散物質は樹脂への溶解性があまり高くないので光散乱が生じやすく、光伝送損失が増加する原因となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来の屈折率分布型光学樹脂材料が有する課題を解決し、耐熱性が向上し、かつ光伝送損失が低い光学樹脂材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、耐熱性を付与しかつ低散乱損失の含フッ素光学樹脂材料を得るには、屈折率分布を形成するための拡散物質として溶解性を確保したまま高屈折率でかつTg が高い化合物であることが重要であると考え、このような化合物として特定の含フッ素多環式化合物が有効であることを見いだした。
【0011】
すなわち、本発明は、実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体(A)と、含フッ素重合体(A)との比較において屈折率が0.005以上高い1種以上の含フッ素多環式化合物(B)とからなり、含フッ素重合体(A)中に含フッ素多環式化合物(B)が中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している屈折率分布型光学樹脂材料であって、含フッ素多環式化合物(B)が下記(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素多環式化合物であることを特徴とする屈折率分布型光学樹脂材料である。
(B1)炭素環または複素環であってかつフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を有する含フッ素環の2個以上が、トリアジン環、酸素原子、硫黄原子、リン原子および金属原子の群から選ばれる1種以上を含む結合で結合された含フッ素非縮合多環式化合物であって、かつ実質的にC−H結合を有しない化合物。
(B2)炭素環または複素環であってかつフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を有する含フッ素環の3個以上が、直接または炭素原子を含む結合で結合された含フッ素非縮合多環式化合物であって、かつ実質的にC−H結合を有しない化合物。
(B3)炭素環または複素環の3個以上から構成されている縮合多環式化合物であって、かつ実質的にC−H結合を有しない含フッ素縮合多環式化合物。
【0012】
本発明における含フッ素多環式化合物(以下、化合物(B)という)は、近赤外光で光吸収が起こるC−H結合(すなわち、炭素−水素結合)を実質的に有しない化合物であり、かつ後述の実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体(A)(以下、重合体(A)という)との比較において屈折率が0.005以上高い化合物である。
【0013】
化合物(B)は、前記(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素多環式化合物である。化合物(B)は、前記群から選ばれる1種を単独で使用してもよく、前記群から選ばれる2種以上を併用してもよい。
【0014】
化合物(B)は、化合物中のすべての水素原子がフッ素原子またはペルフルオロアルキル基に置換された構造からなるペルフルオロ化合物であることが好ましい。本発明の目的を阻害しないかぎり、このペルフルオロ化合物中のフッ素原子の一部が1〜2個の塩素原子または臭素原子に置換されていてもよい。化合物(B)の数平均分子量は3×102 〜2×103 が好ましく、3×102 〜1×103 がより好ましい。
重合体(A)との溶解性を高める観点からは化合物(B)中にペルフルオロアルキル基を有することが好ましく、重合体(A)との屈折率差を大きくする観点からは化合物(B)中にペルフルオロアルキル基を有しないことが好ましい。
【0015】
本発明における含フッ素環は、フッ素原子またはペルフルオロアルキル基を有する炭素環または複素環である。炭素環および複素環としては4員環以上のものから選ばれることが好ましく、4〜6員環がより好ましい。複素環を構成する原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびリン原子などから選ばれることが好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基が好ましい。
【0016】
炭素環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの環式飽和炭化水素環;ベンゼン環、ベンゼン環の水素原子の1個または2個がメチル基で置換された環などの芳香族炭化水素環;シクロペンテン環、シクロヘキセン環などの芳香族炭化水素環以外の環式不飽和炭化水素環などが挙げられる。
複素環としては、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、トリアジン環、トリアゾール環などのヘテロ原子が1種の複素環、イソチアゾール環などのヘテロ原子が2種の複素環などが挙げられる。
好ましい含フッ素環は含フッ素芳香族炭化水素環であり、より好ましい含フッ素環はペルフルオロ芳香族炭化水素環である。芳香族炭化水素環としてはベンゼン環が好ましい。
【0017】
本発明における含フッ素非縮合多環式化合物は、2個または3個以上の含フッ素環が2個以上の原子を共有することなく結合している化合物である。2個以上の原子を共有することなく結合するとは、含フッ素環が1個の原子を共有して結合すること、または含フッ素環が直接結合もしくは間接結合することを意味する。含フッ素環が間接結合するとは含フッ素環が1以上の原子を介して結合することを意味する。
【0018】
2個の含フッ素環が結合する場合、その結合はトリアジン環、酸素原子、硫黄原子、リン原子および金属原子の群から選ばれる1種以上を含む結合である。3個以上の含フッ素環が結合する場合、その結合はトリアジン環、酸素原子、硫黄原子、リン原子および金属原子の群から選ばれる1種以上を含む結合、含フッ素環の3個以上の直接結合または炭素原子を含む結合である。
【0019】
金属原子としてはZn、Sn、Pb、Ge、Si、Ti、Hg、Tl、As、Se、TeおよびCdから選ばれる2〜4価の金属原子が好ましい。熱的安定性および化学的安定性のよい含フッ素非縮合多環式化合物を与えることから、より好ましい金属原子はSn原子である。
【0020】
2個以上の含フッ素環がトリアジン環を含む結合で結合した含フッ素非縮合多環式化合物としては、以下の式1〜3のいずれかで表される含フッ素芳香族トリアジン化合物が好ましい。本明細書において、Φg (gは1〜6の整数)はペルフルオロベンゼンからg個のフッ素原子を除いた残基を表す。g個のフッ素原子を除いた後フッ素原子が残っている場合には、そのフッ素原子の一部または全部がペルフルオロアルキル基で置換された構造でもよい。
【0021】
2個以上の含フッ素環がリン原子を含む結合で結合した含フッ素非縮合多環式化合物としては、(Φ1 )3 −Pで表される化合物または以下の式4で表されるホスファザトリエン環を含む結合で結合した化合物が好ましい。
【0022】
2個以上の含フッ素環が硫黄原子を含む結合で結合した含フッ素非縮合多環式化合物としては、以下の式5または式6で表される含フッ素芳香族含硫黄化合物が好ましい。ただし、式5においてhは1〜4の整数であり、式6においてkは1〜6の整数である。
【0023】
2個以上の含フッ素環が金属原子を含む結合で結合した含フッ素非縮合多環式化合物としては、以下の式7または式8で表される含フッ素芳香族含金属化合物が好ましい。ただし、式7、式8においてMはZn、Sn、Pb、Ge、Si、Ti、Hg、Tl、As、Se、TeおよびCdから選ばれる金属原子であり、p、qは金属Mの価数で2〜4の整数である。
【0024】
3個以上の含フッ素環が、直接または炭素を含む結合で結合した含フッ素非縮合多環式化合物としては、以下の式9〜式12のいずれかで表される含フッ素芳香族化合物が好ましい。屈折率分布型光学樹脂材料の透明性を阻害しない観点から、含フッ素芳香族化合物中のΦ1 〜Φ4 の数の合計は3〜5個が好ましい。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
F−(−Φ2 −S−)h −Φ1 式5
Φk (−S−Φ1 )k 式6
(Φ1 )p −M 式7
(Φ1 −S−)q −M 式8
【0027】
【化3】
【0028】
炭素環または複素環の3個以上から構成されている縮合多環式化合物であって、かつ水素原子の一部または全部がフッ素原子またはフッ素含有基に置換されている含フッ素縮合多環式化合物における炭素環および複素環としては、4員環以上のものが好ましく、4〜6員環がより好ましい。複素環を構成する好ましい原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などから選ばれる。
【0029】
含フッ素縮合多環式化合物としては、ペルフルオロフルオレン、ペルフルオロフェナレン、ペルフルオロフェナントレン、ペルフルオロアントラセン、ペルフルオロトリフェニレン、ペルフルオロピレン、ペルフルオロクリセン、ペルフルオロナフタセンなどの3〜4個の炭素環から構成されている含フッ素縮合多環式炭化水素または以下の式13または式14で表される含フッ素縮合多環式化合物が好ましい。
【0030】
【化4】
【0031】
屈折率分布型光学樹脂材料の透明性を阻害しない観点から、ペルフルオロフルオレン、ペルフルオロフェナレン、ペルフルオロフェナントレン、ペルフルオロアントラセンなどの3個の炭素環から構成されている含フッ素縮合多環式炭化水素がより好ましい。
【0032】
化合物(B)としては、熱的安定性、重合体(A)との溶解性の高いものおよび屈折率分布型光学樹脂材料の透明性を阻害しないものから選ぶことが好ましい。
このような化合物(B)としては、2個以上の含フッ素環が少なくともトリアジン環を含む結合で結合した含フッ素非縮合多環式化合物が特に好ましい。トリアジン環としては、1,2,3−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環および1,3,5−トリアジン環が挙げられ、1,3,5−トリアジン環が好ましい。
【0033】
本発明における重合体(A)は、非結晶性であり、かつ近赤外光で光吸収が起こるC−H結合を実質的に有しない重合体である。重合体(A)としては、C−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体であれば特に限定されないが、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体が好ましい。
【0034】
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するとは、脂肪族環を構成する炭素原子の1以上が主鎖を構成する炭素連鎖中の炭素原子であり、かつ脂肪族環を構成する炭素原子の少なくとも一部にフッ素原子またはフッ素含有基が結合している構造を有することを意味する。含フッ素脂肪族環構造としては、含フッ素脂肪族エーテル環構造がさらに好ましい。
【0035】
重合体(A)の溶融状態における粘度は、溶融温度200〜300℃において103 〜105 ポアズが好ましい。溶融粘度が高すぎると溶融紡糸が困難なうえ、屈折率分布の形成に必要な、化合物(B)の拡散が起こりにくくなり屈折率分布の形成が困難になる。また、溶融粘度が低すぎると実用上問題が生じる。すなわち、電子機器や自動車等での光伝送体として用いられる場合に高温にさらされ軟化し、光の伝送性能が低下する。
重合体(A)の数平均分子量は1×104 〜5×106 が好ましく、5×104 〜1×106 がより好ましい。分子量が小さすぎると耐熱性を阻害することがあり、大きすぎると屈折率分布を有する光伝送体の形成が困難になる。
【0036】
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素環構造を有する単量体を重合して得られるものや、2つ以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体を環化重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が好適である。
【0037】
含フッ素脂肪族環構造を有する単量体を重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特公昭63−18964などにより知られている。すなわち、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)などの含フッ素脂肪族環構造を有する単量体を単独重合することにより、またこの単量体とテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)などのラジカル重合性とを共重合させることにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。
【0038】
また、2つ以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体を環化重合して得られる、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特開昭63−238111や特開昭63−238115などにより知られている。すなわち、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)やペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などを環化重合することにより、またはこのような単量体とテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)などのラジカル重合性とを共重合させることにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。
【0039】
また、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)などの含フッ素脂肪族環構造を有する単量体とペルフルオロ(アリルビニルエーテル)やペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などの2つ以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体とを共重合させることによっても主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。
【0040】
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体の全重合単位に対して含フッ素脂肪族環構造を有する重合単位を20モル%以上、特には40モル%以上含有するものが透明性、機械的特性などの面から好ましい。
【0041】
上記の含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、具体的には以下の式15〜18のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが例示される。ただし、式15〜18において、hは0〜5の整数、iは0〜4の整数、jは0または1、h+i+jは1〜6、sは0〜5の整数、tは0〜4の整数、uは0または1、s+t+uは1〜6、p、q、rはそれぞれ独立に0〜5の整数、p+q+rは1〜6、R1 〜R6 はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、重水素原子(D)またはトリフルオロメチル基である。
なお、これらの含フッ素脂肪族環構造を有する重合体中のフッ素原子は、屈折率を高めるために一部塩素原子で置換されていてもよい。
【0042】
【化5】
【0043】
含フッ素脂肪族環構造を有する単量体としては、以下の式19〜21のいずれかで表される化合物から選ばれる単量体が好ましい。ただし、式19〜21において、R7 〜R18はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、重水素原子またはトリフルオロメチル基であるか、または、R9 とR10、R13とR14およびR17とR18はそれぞれ共同して−(CF2 )4 −、−(CF2 )3 −、−(CF2 )2 −、−CF2 −O−CF2 −、−(CF2 )2 −O−CF2 −、−O−(CF2 )2 −および−O−(CF2 )3 −からなる群から選ばれる2価の基を形成してもよい。
【0044】
【化6】
【0045】
式19〜21のいずれかで表される化合物の具体例としては、以下の式22〜29のいずれかで表される化合物などが挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】
2つ以上の重合性二重結合を有する含フッ素単量体としては、以下の式30〜32のいずれかで表される化合物が好ましい。ただし、式30〜32において、Y1 〜Y10、Z1 〜Z8 およびW1 〜W8 は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、重水素原子またはトリフルオロメチル基である。
【0048】
【化8】
CY1 Y2 =CY3 OCY4 Y5 CY6 Y7 CY8 =CY9 Y10 式30
CZ1 Z2 =CZ3 OCZ4 Z5 CZ6 =CZ7 Z8 式31
CW1 W2 =CW3 OCW4 W5 OCW6 =CW7 W8 式32
【0049】
式30〜32のいずれかで表される化合物の具体例としては、以下の化合物などが挙げられる。
CF2 =CFOCF2 CF2 CF=CF2
CF2 =CFOCCl2 CF2 CF=CF2
CF2 =CFOCF2 CF2 CCl=CF2
CF2 =CFOCF2 CFClCF=CF2
CF2 =CFOCF2 CF2 CF=CFCl
CF2 =CFOCF2 CF(CF3 )CF=CF2
CF2 =CFOCF2 CF(CF3 )CCl=CF2
CF2 =CFOCF2 CF=CF2
CF2 =CFOCF(CF3 )CF=CF2
CF2 =CFOC(CF3 )2 CF=CF2
CF2 =CFOCF2 OCF=CF2
CF2 =CClOCF2 OCCl=CF2
CF2 =CFOCCl2 OCF=CF2
CF2 =CFOC(CF3 )2 OCF=CF2
【0050】
本発明の光学樹脂材料を製造するにあたり、樹脂の成形と屈折率分布の形成は同時であっても別々であってもよい。例えば、紡糸や押し出し成形などにより樹脂を成形すると同時に屈折率分布を形成して本発明光学樹脂材料を製造できる。また、紡糸や押し出し成形で樹脂の成形を行った後、屈折率分布を形成できる。さらに、屈折率分布を有するプリフォーム(母材)を製造し、このプリフォームを成形(例えば紡糸)して光ファイバなどの光学樹脂材料を製造できる。なお、前記のように本発明光学樹脂材料は、上記屈折率分布を有するプリフォームをも意味する。
【0051】
本発明の光学樹脂材料は屈折率分布型光ファイバであることが最も好ましい。この光ファイバにおいて、化合物(B)は重合体(A)よりも高屈折率の物質であるため、化合物(B)が光ファイバの中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している。これにより、光ファイバの中心から周辺方向に沿って屈折率が低下する屈折率分布となる。化合物(B)の濃度分布は、通常化合物(B)を溶融状態の重合体(A)の中心に配置し、周辺方向に向かって化合物(B)を拡散させることにより形成できる。
【0052】
化合物(B)は重合体(A)との比較において屈折率が0.005以上高いので、光学樹脂材料中の屈折率の最大値nと最小値mの屈折率差を大きくできる。すなわち「(n2 −m2 )1/2 」で表される開口数NAを0.20以上とすることができる。化合物(B)は重合体(A)との比較において屈折率が0.01以上高いことが好ましい。化合物(B)の屈折率は1.45以上が好ましく、1.47以上がより好ましい。
【0053】
一般に重合体に低分子量化合物を添加すると重合体のTg が低下する。屈折率のあまり大きくない化合物を屈折率差の形成材として用いた場合には、重合体中への含有量を多くしなければならず、その結果Tg が低下し耐熱性が低下する。
【0054】
本発明における化合物(B)は屈折率が高いため少量の添加、例えば光学樹脂材料中心部の化合物(B)の濃度が15重量%以下となる添加量であっても、目的の屈折率差を形成でき、Tg の低下が少ない利点がある。
また、化合物(B)のTg が高いため、光学樹脂材料中心部のTg を70℃以上とすることができる。化合物(B)の種類によっては光学樹脂材料中心部のTg を90℃以上とすることもできる。これにより、本発明の光学樹脂材料の耐熱性が飛躍的に向上する。
【0055】
また、化合物(B)は、重合体(A)に対する溶解性が良好で、その飽和溶解度は5〜20重量%である。溶解性の尺度である溶解性パラメータ(SP値)は、重合体(A)が6〜7(cal/cm3 )1/2 であるのに対して、化合物(B)は8〜10(cal/cm3 )1/2 と近い値を有するため溶解性がよいと考えられる。
重合体(A)に対する化合物(B)の含有量が上記飽和溶解度以下の場合においては、本発明の光学樹脂材料の透明性は良好であり、ミクロな相分離や化合物(B)の微結晶などにより生じる光散乱が少ない。
【0056】
本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、波長700〜1600nmで、100mの伝送損失が15db以下とすることができる。波長700〜1600nmという比較的長波長において、このような低レベルの伝送損失であることはきわめて有利である。
すなわち、石英光ファイバと同じ波長を使えることにより、石英光ファイバとの接続が容易であり、また波長700〜1600nmよりも短波長を使わざるをえない従来のプラスチック光ファイバに比べ、安価な光源ですむ利点がある。
【0057】
光伝送体の伝送特性において、上記伝送損失とともに重要な特性として伝送帯域がある。大量の情報を高速で伝送するために伝送帯域が広いことが望まれる。現在、長距離通信において用いられている石英系シングルモードファイバは伝送帯域が数10GHz・kmの広い伝送帯域を有する。
【0058】
一方、プラスチック光ファイバはファイバ径が太く光源・受光素子との接続またはファイバ同士の接続が容易なことから安価な短距離通信システムの構築への期待が高まっている。
【0059】
通常のプラスチック光ファイバはステップインデックス型であり、伝送帯域は数MHz・km程度と狭い。これを解決するために、本発明のような伝送帯域のより広い屈折率分布型プラスチック光ファイバが提案されている。この屈折率分布型プラスチック光ファイバにおいては、この屈折率分布が熱的に安定でないと、結果として伝送帯域が低下する。
【0060】
本発明の光学樹脂材料は耐熱性が飛躍的に向上しているので、屈折率分布の熱的な安定性が高く、室温以上の高温に長期間さらされた場合においても、伝送帯域の低下を防止できる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下の例において、例1〜3は重合体(A)の合成例、例4〜10および例16〜17は実施例、例11〜15は比較例である。
【0062】
「例1」
750gのペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]、4kgのイオン交換水、260gのメタノールおよび3.7gの((CH3 )2 CHOCOO)2 を、内容積5Lのガラスフラスコに入れた。系内を窒素で置換した後、40℃で22時間懸濁重合を行い、数平均分子量約5×104 の重合体を690g得た。この重合体をフッ素/窒素混合ガス(フッ素ガス濃度20容量%)雰囲気中で250℃、5時間処理することにより光透過性および熱安定性の良好な重合体(以下、重合体A1という)を得た。
【0063】
重合体A1の固有粘度[η]は、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)[PBTHF]中30℃で0.3であった。重合体A1のTg は108℃であり、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であった。また屈折率は1.342、SP値は6.6(cal/cm3 )1/2 であった。
【0064】
「例2」
173gのPBVE、27gのペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)[PDD]、200gのPBTHFおよび重合開始剤として2gの((CH3 )2 CHOCOO)2 を、内容積1Lのステンレス製オートクレーブに入れた。系内を窒素で置換した後、40℃で20時間重合を行い、数平均分子量約1.5×105 の透明な重合体20gを得た。この重合体をフッ素/窒素混合ガス(フッ素ガス濃度20容量%)雰囲気中で250℃、5時間処理することにより光透過性および熱安定性の良好な重合体(以下、重合体A2という)を得た。重合体A2のTg は150℃、屈折率は1.325、SP値は6.5(cal/cm3 )1/2 であった。
【0065】
「例3」
PDDとテトラフルオロエチレンを重量比80:20でPBTHFを溶媒として用いてラジカル重合し、Tg が160℃で数平均分子量が約1.7×105 の重合体を得た。この重合体をフッ素/窒素混合ガス(フッ素ガス濃度20容量%)雰囲気中で250℃、5時間処理することにより光透過性および熱安定性の良好な重合体(以下、重合体A3という)を得た。重合体A3は無色透明であり、屈折率は1.305、SP値は6.3(cal/cm3 )1/2 であった。
【0066】
「例4」
重合体A1とペルフルオロ(テトラフェニルスズ)との混合物[後者を混合物中7重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体aという)を得た。成形体aの屈折率は1.357、Tg は91℃であった。
【0067】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この円筒管中空部に成形体aを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで200dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで120dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0068】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ変化は見られなかった。さらに、以下のようなパルス法により伝送帯域を測定することにより伝送特性を評価した。
【0069】
すなわち、パルスジェネレータを用いてパルスレーザ光を発振させ、これを光ファイバに入射し、出射光をサンプリングオシロスコープで検出した。この検出信号をフーリエ変換して周波数特性を解析することにより伝送帯域を測定した。光ファイバを70℃、1000時間保存した後に伝送帯域を測定したところ、保存前後ともに260MHz・kmで、帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0070】
「例5」
重合体A1とペルフルオロ(トリフェニルホスフィン)との混合物[後者を混合物中7重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体bという)を得た。成形体bの屈折率は1.357、Tg は88℃であった。
【0071】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体bを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで200dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで120dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0072】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも240dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0073】
「例6」
重合体A1と1,4−ビス(ペルフルオロフェニルチオ)テトラフルオロベンゼンとの混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体cという)を得た。成形体cの屈折率は1.357、Tg は85℃であった。
【0074】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体cを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで200dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで120dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0075】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも250dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0076】
「例7」
重合体A1とペルフルオロ(2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン)との混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体dという)を得た。成形体dの屈折率は1.357、Tg は95℃であった。
【0077】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体dを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを240℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで120dB/km、850nmで100dB/km、1300nmで80dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0078】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも300dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0079】
「例8」
重合体A1とペルフルオロテルフェニルとの混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体eという)を得た。成形体eの屈折率は1.357、Tg は95℃であった。
【0080】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体eを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで170dB/km、850nmで140dB/km、1300nmで110dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0081】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも260dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0082】
「例9」
重合体A1とペルフルオロクァテルフェニルとの混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体fという)を得た。成形体fの屈折率は1.357、Tg は93℃であった。
【0083】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体fを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを240℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで190dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで120dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0084】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも280dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0085】
「例10」
重合体A1とペルフルオロアントラセンとの混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体gという)を得た。成形体gの屈折率は1.357、Tg は95℃であった。
【0086】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体gを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを240℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで190dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで120dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0087】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも310dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0088】
「例11」
重合体A1とクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(平均分子量850、屈折率1.41)との混合物[後者を混合物中15重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体hという)を得た。成形体hの屈折率は1.357、Tg は75℃であった。
【0089】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体hを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する屈折率分布型光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで110dB/km、850nmで100dB/km、1300nmで80dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0090】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布を干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところコアの中心付近で屈折率の低下が見られた。また、これに伴い伝送帯域の低下が見られ、保存前に260MHz・kmであったものが保存後には160MHz・kmに低下していた。
【0091】
「例12」
重合体A1とアルドリッチ社製ペルフルオロビフェニル(屈折率1.45)との混合物[後者を混合物中7重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体iという)を得た。成形体iの屈折率は1.357、Tg は73℃であった。
【0092】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体iを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する屈折率分布型光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで150dB/km、850nmで120dB/km、1300nmで100dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0093】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布を干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところコアの中心付近で屈折率の低下が見られた。これに伴い、伝送帯域の低下が見られ、保存前に200MHz・kmであったものが保存後には110MHz・kmに低下していた。
【0094】
「例13」
重合体A1とアルドリッチ社製ペルフルオロ(ジフェニルスルフィド)との混合物[後者を混合物中6重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体jという)を得た。成形体jの屈折率は1.357、Tg は77℃であった。
【0095】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体jを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する屈折率分布型光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで190dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで120dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0096】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布を干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところコアの中心付近で屈折率の低下が見られた。これに伴い、伝送帯域の低下が見られ、保存前に260MHz・kmであったものが保存後には180MHz・kmに低下していた。
【0097】
「例14」
重合体A1とアルドリッチ社製ペルフルオロナフタレン( 屈折率1.48) との混合物[後者を混合物中6重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体kという)を得た。成形体kの屈折率は1.357、Tg は76℃であった。
【0098】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体kを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する屈折率分布型光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで180dB/km、850nmで150dB/km、1300nmで110dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0099】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布を干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところコアの中心付近で屈折率の低下が見られた。これに伴い、伝送帯域の低下が見られ、保存前に220MHz・kmであったものが保存後には110MHz・kmに低下していた。
【0100】
「例15」
重合体A1とPCR社製1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリフルオロベンゼンとの混合物[後者を混合物中6重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体mという)を得た。成形体mの屈折率は1.355、Tg は79℃であった。
【0101】
次に、重合体A1のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体mを挿入し200℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを230℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する屈折率分布型光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで210dB/km、850nmで170dB/km、1300nmで130dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0102】
この光ファイバを70℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布を干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところコアの中心付近で屈折率の低下が見られた。これに伴い、伝送帯域の低下が見られ、保存前に250MHz・kmであったものが保存後には170MHz・kmに低下していた。
【0103】
「例16」
重合体A2とペルフルオロ(2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン)との混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体nという)を得た。成形体nの屈折率は1.340、Tg は130℃であった。
【0104】
次に、重合体A2のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体nを挿入し230℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを270℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで250dB/km、850nmで200dB/km、1300nmで170dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0105】
この光ファイバを85℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも280dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0106】
「例17」
重合体A3とペルフルオロ(2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン)との混合物[後者を混合物中5重量%含む]をガラス封管中に仕込み、250℃で溶融成形し円柱状の成形体(以下、成形体pという)を得た。成形体pの屈折率は1.320、Tg は140℃であった。
【0107】
次に、重合体A3のみからなる円筒管を溶融成形により作成し、この中空部に成形体pを挿入し230℃に加熱して合体させることによりプリフォームを得た。このプリフォームを270℃で溶融紡糸することにより、屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する光ファイバが得られた。得られた光ファイバの光伝送特性は、780nmで300dB/km、850nmで250dB/km、1300nmで200dB/kmであり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達できる光ファイバであることを確かめた。
【0108】
この光ファイバを85℃のオーブン中に1000時間保存した後、取り出してから屈折率分布をインターファコ干渉顕微鏡により測定し、保存前の屈折率分布と比較したところ特に変化は見られなかった。また、例4と同様なパルス法により伝送帯域を測定し、保存前後の特性を比較したところいずれも260dB・kmで帯域の低下が起こらないことから耐熱性が良好であることが確認された。
【0109】
【発明の効果】
本発明における化合物(B)は屈折率が高いので、少量の添加であっても、目的の屈折率差を形成でき、化合物(B)の添加によるTg の低下が少ない利点がある。この利点および化合物(B)のTg が高いことにより、本発明の光学樹脂材料は耐熱性が飛躍的に向上し、屈折率分布の熱的な安定性が高く、室温以上の高温に長期間さらされた場合においても、伝送帯域の低下を防止できる。さらに、屈折率が高い化合物(B)は開口数NAを大きくできる。
【0110】
また、化合物(B)は、重合体(A)に対する溶解性が良好であるため、本発明の光学樹脂材料の透明性は良好であり、ミクロな相分離や化合物(B)の微結晶などにより生じる光散乱が少ない。
Claims (7)
- 実質的にC−H結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体(A)と、含フッ素重合体(A)との比較において屈折率が0.005以上高い1種以上の含フッ素多環式化合物(B)とからなり、含フッ素重合体(A)中に含フッ素多環式化合物(B)が中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している屈折率分布型光学樹脂材料であって、含フッ素多環式化合物(B)が下記(B1)、(B2)および(B3)からなる群から選ばれる1種以上の含フッ素多環式化合物であることを特徴とする屈折率分布型光学樹脂材料。
(B1)炭素環または複素環であってかつフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を有する含フッ素環の2個以上が、トリアジン環、酸素原子、硫黄原子、リン原子および金属原子の群から選ばれる1種以上を含む結合で結合された含フッ素非縮合多環式化合物であって、かつ実質的にC−H結合を有しない化合物。
(B2)炭素環または複素環であってかつフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を有する含フッ素環の3個以上が、直接または炭素原子を含む結合で結合された含フッ素非縮合多環式化合物であって、かつ実質的にC−H結合を有しない化合物。
(B3)炭素環または複素環の3個以上から構成されている縮合多環式化合物であって、かつ実質的にC−H結合を有しない含フッ素縮合多環式化合物。 - 請求項1に記載の屈折率分布型光学樹脂材料における開口数NA[NA=(n2 −m2 )1/2 、nは屈折率分布型光学樹脂材料中の屈折率の最大値、mは屈折率分布型光学樹脂材料中の屈折率の最小値。]が0.20以上である屈折率分布型光学樹脂材料。
- 請求項1または2に記載の屈折率分布型光学樹脂材料の中心部のガラス転移温度が70℃以上である屈折率分布型光学樹脂材料。
- 請求項1、2または3に記載の屈折率分布型光学樹脂材料の中心部の含フッ素多環式化合物(B)の濃度が15重量%以下である屈折率分布型光学樹脂材料。
- 含フッ素多環式化合物(B)の屈折率が1.45以上である請求項1〜4のいずれかに記載の屈折率分布型光学樹脂材料。
- 含フッ素重合体(A)が主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の屈折率分布型光学樹脂材料。
- 光学樹脂材料が屈折率分布型光ファイバ製造用のプリフォームまたは屈折率分布型光ファイバである請求項1〜6のいずれかに記載の屈折率分布型光学樹脂材料。
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