JP4009162B2 - リンゴ酢の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リンゴ酢の製造方法に関し、詳しくは従来のリンゴ酢より芳醇であって果実エステル含量の高いリンゴ酢の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リンゴ果実の搾汁粕、すなわちリンゴ搾汁粕を使ったリンゴ酢製造に関する事例としては、例えば、リンゴジュースの搾り粕に3倍量の8%エタノールを加え、酢酸醗酵をするリンゴ風味酢の製造方法(例えば、非特許文献1参照)や、リンゴ搾り粕を多糖類分解酵素で可溶化した後、エタノール醗酵させ、酢酸醗酵をする酢の製造方法(例えば、非特許文献2参照)が報告されている。
【0003】
いずれの報告も、リンゴ搾汁粕を原料としたリンゴ酢の製造に関する報告であるが、その製造方法は、山田らの報告では、リンゴ搾汁粕にエタノールを添加した後、酢酸醗酵する製造方法であり、山口らの報告では、リンゴ搾汁粕に、ドリセラーゼとセルラーゼとペクチナーゼの酵素を作用させ、酵素失活の後、アルコール醗酵をさせ、酢酸醗酵する製造方法を採用している。
従って、いずれの報告に係る発明もリンゴ搾汁粕の成分を醸造食酢で積極的に抽出し、その抽出ろ過液を利用するものではなく、本発明のリンゴ酢の製造方法とは、果実エステル含量が高く、リンゴ酢の香り(エステル香)にも優れた芳醇なリンゴ酢を得るという課題や方法が異なっている。
【0004】
一方、ドレッシングや浅漬け用甘酢、酢豚調味料等の酸性液体調味料には、従来からフルーテイなリンゴ酢が好まれて使用されてきた。
しかしながら、これらの従来の酸性液体調味料は、リンゴ風味のフルーテイな香りが十分に発揮されないこと、酸味が強すぎて食品本来の風味が損なわれること、等の問題点があり、改善が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】
山田千代,阿久津良和,高畑浩之:りんごジュースの搾りカスを利用したりんご風味酢の製造(農林水産省農業研究センターS),研究成果情報 経営・作業技術・水田−畑作物・流通−加工・情報 関東東海農業,Vol.1997,170−171(1998)
【非特許文献2】
山口信哉,櫛引正剛,花松憲光,松江一:リンゴ搾り粕を培養基材とした発酵について(経済産業省東北経済産業局S),未来を拓くグローカルテクノロジー,平成13年,164−167(2001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リンゴ搾汁粕を利用したリンゴ酢の芳醇な好気成分の改善を目的とするものである。
すなわち、本発明は、従来のリンゴ酢より芳醇であって果実エステル含量の高いリンゴ酢を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、種々検討した。
その結果、本発明者らは、リンゴ搾汁粕を醸造食酢で抽出処理して得られる抽出ろ過液は、リンゴ果実に代表される香気成分である酢酸エチル等のエステル類を多く含む酢酸酸度を有する液体であり、この抽出ろ過液を用いることによって、既存のリンゴ搾汁粕よりリンゴ果実に代表される香気成分である酢酸エチル等のエステル類(果実エステル)の含量が高く、リンゴ酢の香り(エステル香)にも優れた芳醇なリンゴ酢を製造することができることを見出した。また、本発明者らは、リンゴ搾汁粕を醸造食酢で抽出処理する際にペクチナーゼ及びアラバナーゼの両酵素を作用させることによって得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液によれば、より芳醇なリンゴ酢を製造することができることを見出した。
一方、本発明者らは、このようなリンゴ搾汁粕抽出ろ過液を香味付与液として含有する酸性液体調味料は、リンゴ風味のフルーテイ感を発揮でき、酸味の抑制されたマイルドなものであることをも見出した。
本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
即ち、請求項1に係る本発明は、リンゴ搾汁粕に、全体の酢酸酸度が5〜10%( W/W )となるように醸造食酢を添加し浸漬させた後、ろ過することにより得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液を、リンゴ酢原料醪として酢酸醗酵を行うことを特徴とするリンゴ酢の製造方法を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、前記リンゴ搾汁粕に醸造食酢を添加し浸漬させた後に、ペクチナーゼ及びアラバナーゼの両酵素を作用させることを特徴とする請求項1に記載のリンゴ酢の製造方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、請求項1又は2記載の製造方法により得られるリンゴ酢を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
請求項1に係る本発明は、リンゴ酢の製造方法に関し、リンゴ搾汁粕に、全体の酢酸酸度が5〜10%( W/W )となるように醸造食酢を添加し浸漬させた後、ろ過することにより得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液を、リンゴ酢原料醪として酢酸醗酵を行うことを特徴とするものである。
【0010】
請求項1に係る本発明で用いるリンゴ搾汁粕とは、リンゴ果実の搾汁粕を意味する。リンゴ搾汁粕の原料としては、いわゆる食用果実のいわゆるリンゴ類を使用できる。また、必要に応じて、リンゴ以外の果実である、ぶどう類、パイナップル類、柑橘類、梨類、ベリー類、デーツ類などの果実から得られる搾汁粕を適宜、リンゴ風味を壊さない程度に混合して用いることができる。
【0011】
請求項1に係る本発明で用いるリンゴ搾汁粕は、リンゴ類から一般的な製法で製造されるものであればよい。例えば、リンゴ果実の果皮を除去若しくはそのまま、スクリュープレスなどの搾汁機にかけて搾汁液を採取すると共に、パルプ分の多いリンゴ搾汁粕を得ることができる。通常、リンゴ搾汁粕の水分含量は、30%から86%(W/W)、不溶性固形分は、14%から70%(W/W)である。
搾汁後のリンゴ搾汁粕は、腐敗、特にアルコール醗酵し易いので、醸造食酢を腐敗若しくはアルコール醗酵が防止できる程度に散布や噴霧して含有させるとよい。
【0012】
請求項1に係る本発明のリンゴ酢の製造方法では、まず、上記のようなリンゴ搾汁粕に、全体の酢酸酸度が5〜10%(W/W)となるように醸造食酢を添加し浸漬させ、醸造食酢による抽出を行う。
ここで使用する醸造食酢とは、市販されている酢酸を主成分とする醸造食酢が使用されるが、水っぽさ感や着色、他の着香を無くするためには、酢酸酸度が10%(W/V)以上の市販高酸度酢(ホワイトビネガー、アルコール酢とも呼ばれる)が良好に用いられる。
【0013】
抽出する醸造食酢の酢酸濃度としては、リンゴ搾汁粕に酢酸酸度が5〜10%(W/W)の濃度になるようにすればよい。5%(W/W)未満では、抽出される香気成分が少なく、風味の弱いものしか得られず好ましくない。また、10%(W/W)を超えるとエステル風味以上に酢酸由来の刺激性の高い風味となり、好ましくない。酢酸濃度が5〜10%(W/W)に調整されたもののpHは、概ねpH2.5から3.5になる。
【0014】
醸造食酢をリンゴ搾汁粕に添加した後の浸漬時間としては、0℃から40℃で、12時間から7日間程度の処理がよい。できるだけ低温下で行う方が、好気成分全体が蒸散しなくてよい。
【0015】
ここでリンゴ搾汁粕に醸造食酢を添加し浸漬させた後に、請求項2に記載されているように、ペクチナーゼ及びアラバナーゼの両酵素を作用させ、酵素処理を行うことにより、さらに果実エステル含量が高く、リンゴ酢の香り(エステル香)にも優れた芳醇な抽出ろ過液を得ることができるので好ましい。
ペクチナーゼ及びアラバナーゼの両酵素は、リンゴ搾汁粕に醸造食酢を添加し浸漬させた後であって、かつ、ろ過前に作用させればよく、この間であれば、抽出中でもよいし、抽出後に作用させてもよい。
【0016】
ペクチナーゼは、ペクチンを分解する酵素で、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から製造される。一般的には、ペクチナーゼは、果汁の清澄化やろ過性の改善、搾汁歩留の向上等の用途に使用されることが多い。ペクチナーゼ活性として1500ユニット程度を100gのリンゴ搾汁粕に混合作用させればよい。市販の酵素としては、ペクチナーゼPL(天野製薬製)やスミチームAP2−L(新日本化学工業株式会社製)がよい。
【0017】
また、アラバナーゼは、アラバンを分解する酵素で、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から製造される。一般的には、アラバナーゼは、果汁処理、特に果汁の濁り改善等の用途に使用されることが多い。アラバナーゼには、エンド型とエキソ型があるが、エンド型アラバナーゼの活性として24ユニット程度を使用酵素活性指標として100gのリンゴ搾汁粕に混合作用させればよい。市販の酵素としてはスミチームARS(新日本化学工業株式会社製)などがよい。
【0018】
これらの両酵素をリンゴ搾汁粕に作用させることによって、ろ過性の改善、抽出回収率の向上が改善できると共に、得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液の香味エステル含量を高めることができる。
一般的にペクチナーゼを用いるのは、ろ過改善等のためであり、また、アラバナーゼを用いるのは、果汁の濁り改善のためであるが、併用すると、理由は不明であるが、リンゴ搾汁粕抽出ろ過液の香味エステル含量を著しく増加させることができる。
【0019】
ペクチナーゼとアラバナーゼの添加量は、リンゴ搾汁粕に対し、ペクチナーゼ及びアラバナーゼを含む混合酵素として0.001〜2.0%(W/W)とすることが好ましい。酵素添加後は、常法により数時間以上攪拌作用させ、加熱失活させて酵素反応を終了させる。ペクチナーゼとアラバナーゼの混合割合は、前者1質量部に対し、後者0.01〜0.5質量部である。
【0020】
請求項1又は2に係る本発明の製造方法においては、醸造食酢に添加し浸漬した後、或いは、ペクチナーゼ及びアラバナーゼを添加した後に、ろ過を行って抽出ろ過液を得る。
ろ過は、リンゴ搾汁粕と醸造食酢を取り除くための操作であり、一般的に用いられているろ過方法やろ過機を用いて行えばよい。例えば、ろ布の袋に詰めた後、圧搾ろ過する方法やフィニシャーろ過装置、遠心分離装置を用いることができる。
【0021】
請求項1又は2に係る本発明の製造方法において、醸造食酢で抽出した後、或いは、該抽出時に酵素処理した後、ろ過して得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液は、リンゴ果実に代表される香気成分である酢酸エチル等のエステル類(果実エステル)を多く含む酢酸酸度を有する液体であるので、芳醇なリンゴ酢の製造原料として使用できる。
【0022】
請求項1又は2に係る本発明の製造方法においては、前記のようにして得られる抽出ろ過液を、リンゴ酢原料醪として酢酸醗酵を行うが、この原料醪とは、リンゴ酢製造用の原料醪であり、リンゴの搾汁、アルコール、水からなる酢もとに種酢を摂取させたものである。このような原料醪と前記抽出ろ過液との混合割合としては、原料醪対抽出ろ過液容量比として、1:0.01から1程度であれば、通常と変らぬ10日前後の醗酵日数で酢酸醗酵が完了し、香り成分の低下がほとんど見られることなくリンゴ酢を製造することができ、香味的にも良い。
【0023】
前記のようにして得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液は、リンゴ果実に代表される香気成分である酢酸エチル等のエステル類を多く含んでいることから、このようなリンゴ搾汁粕抽出ろ過液から、請求項1又は2に係る本発明の製造方法により得られるリンゴ酢は、果実エステル含量が高く芳醇で、従来のリンゴ酢よりも優れた品質のものである。
このようにして請求項1又は2に係る本発明の製造方法により得られるリンゴ酢を提供するのが、請求項に係る本発明である。
【0024】
さらに、請求項1又は2に係る本発明の製造方法において、醸造食酢で抽出した後、もしくは該抽出時に酵素処理した後、ろ過して得られる抽出ろ過液は、従来フルーテイなリンゴ酢が好まれて使用されるドレッシング、浅漬け用甘酢、焼肉のたれ、酢豚調味液等の酸性液体調味料において、リンゴ風味を付与する香味付与液として使用することができ、リンゴ風味のエステル含量を増加し、独特な風味を改善することができる。
【0025】
前記抽出ろ過液の含有割合は、従来のリンゴ酢添加量の1/10倍〜2倍程度とすると、リンゴ風味のフルーテイ感が十分で酸味の抑制されたマイルドなものとなるので好ましい。酸性液体調味料の対象としては、従来フルーテイなリンゴ酢が好まれて使用されるドレッシング、浅漬け用甘酢、焼肉のたれ、酢豚調味液等の食品が挙げられる。
【0026】
【実施例】
実施例1〔醸造食酢による抽出を行った場合〕
市販リンゴ500gを4つ切りに細断後、フードミキサーで破砕した。次に、これをろ布の袋に詰め、圧搾ろ過することより、リンゴの搾汁400gとリンゴ搾汁粕100gが得られた。得られたリンゴ搾汁粕100gに対し、酸度15%(W/V)の醸造食酢(株式会社ナカノス販売、商品名「清泉−15」)100gを添加した。酢酸酸度は7.8%(W/W)、pHは2.8であった。この状態にて、30℃で1日間浸漬した。これを再度ろ過分別することにより、132g(回収率66%)の抽出ろ過液を得た。
【0027】
次に、このようにして得られた抽出ろ過液を、ガスクロマト質量分析計(HEWLETT PACKEARD社、検出器:質量分析計、カラム:TC-WAX Length60m×0.25mm,I.D.0.25μm)に供したところ、後記比較例1で得られた水抽出によるろ過液のエステル類を示すピーク面積のΣを100としたとき、この抽出ろ過液のエステル類を示すピーク面積のΣは108であった。
また、ガスクロマトグラフィー(HEWLETT PACKEARD社、検出器:FID、カラム:TC-WAX Length30m×0.53mm,I.D.1.0μm)で定量したところ、代表的な香気成分である酢酸エチルの濃度は、88ppm/100gであり、総酢酸エチル量は116ppm/132gとなった。
【0028】
さらに、この抽出ろ過液132gを用いて、酸度2%(W/V)、アルコール3.3%(V/V)、果汁含量400gのリンゴ酢醪1Lを調製した。具体的には、得られた抽出ろ過液132gをリンゴの搾汁400gと共に95%アルコール35ml、水を加え、酢もとを調製し、そこに種酢400mlを接種しリンゴ酢醗酵原料醪とし、静置醗酵を開始した。酢酸醗酵開始から10日目で、酸度5.0%(W/V)、残留アルコール0.3%(V/V)に到達したので、醗酵を完了した。
【0029】
得られたリンゴ酢について官能評価を行った。官能評価は、この実施例1のものの他、第1表に示す如き組成の従来品、比較例1のもの、さらに実施例2のものの合計4品のリンゴ酢について、パネラー14人により順位評価を実施したときの順位結果とその順位和で表わした。
リンゴ酢醪の組成、リンゴ搾汁粕の処理条件、抽出ろ過液の分析結果及びリンゴ酢の官能評価結果を第1表に示す。
【0030】
第1表から明らかなとおり、この醸造食酢で抽出して得られる抽出ろ過液を添加して醗酵させたリンゴ酢は、果実エステル含量が高く、リンゴ酢の香り(エステル香)にも優れた芳醇な品質であった。
【0031】
比較例1〔水による抽出を行った場合〕
実施例1において、リンゴ搾汁粕に、酸度15%(W/V)の醸造食酢の代わりに水を加えて抽出し、102g(回収率51%)のろ過液を得た。
この水抽出によるろ過液について、実施例1と同様に分析を行った。なお、前記したように、この水抽出によるろ過液のエステル類を示すピーク面積のΣを100とした。その結果、代表的な香気成分である酢酸エチルの濃度は10ppm/100gであり、総酢酸エチル量は11ppm/102gに過ぎなかった。
【0032】
この水抽出によるろ過液102gを用いて、酸度2%(W/V)、アルコール3.3%(V/V)、果汁含量400gのリンゴ酢醪1Lを調製した。具体的手法は、実施例1に準じて行った。10日間の酢酸醗酵後、リンゴ酢を得た。
【0033】
得られたリンゴ酢(水抽出によるろ過液使用)について、実施例1と同様にして官能評価を行った。
リンゴ酢醪の組成、リンゴ搾汁粕の処理条件、抽出ろ過液の分析結果及びリンゴ酢の官能評価結果を第1表に示す。
【0034】
第1表から明らかなとおり、この水抽出によるろ過液を使用して得られたリンゴ酢は、実施例1の醸造食酢抽出ろ過液を添加して醗酵させて得られたものより、明らかに果実エステル含量が少なく、リンゴ酢の香り(エステル香)も十分でなく、品質の劣るものであった。
【0035】
実施例2〔醸造食酢による抽出及び酵素処理を行った場合〕
実施例1と同様の処理手順及び条件にて、市販リンゴ500gよりリンゴ搾汁粕100gを得た。
得られたリンゴ搾汁粕100gに対し、酸度15%(W/V)の醸造食酢(株式会社ナカノス販売、商品名「清泉−15」)100gを添加した。酢酸酸度は7.8%(W/W)、pHは2.8であった。
さらに、ペクチナーゼ及びアラバナーゼを含む酵素(新日本化学工業株式会社販売、商品名「スミチームPX」;ペクチナーゼ活性5000u/g、エンド型アラバナーゼ活性80u/g)0.3gを添加し、30℃で1晩酵素反応させた。これをろ過分別することで、156g(回収率78%)の抽出ろ過液を得た。
【0036】
この抽出ろ過液をガスクロマト質量分析計(HEWLETT PACKEARD社、検出器:質量分析計、カラム:TC-WAX Length60m×0.25mm,I.D.0.25μm)に供したところ、エステル類を示すピーク面積のΣは112(比較例1の水抽出によるろ過液のエステル類を示すピーク面積のΣを100としたとき)であった。
さらに、ガスクロマトグラフィー(HEWLETT PACKEARD社、検出器:FID、カラム:TC-WAX Length30m×0.53mm,I.D.1.0μm)で代表的な香気成分である酢酸エチル濃度を定量したところ、120ppm/100gであり、総酢酸エチル量は187ppm/156gであった。
【0037】
得られたろ過液156gを加熱し酵素失活させた後、リンゴの搾汁400gと共に95%アルコール35ml、水を加え、酢もとを調製し、そこに種酢400mlを接種し、実施例1と同様な醗酵方法で静置醗酵を実施した。酢酸醗酵開始から10日目で、酸度5.0%(W/V)、残留アルコールが0.3%(V/V)に到達したので、醗酵を完了した。
得られたリンゴ酢について、実施例1と同様にして官能評価を行った。
リンゴ酢醪の組成、リンゴ搾汁粕の処理条件、抽出ろ過液の分析結果及びリンゴ酢の官能評価結果を第1表に示す。
【0038】
第1表から明らかなとおり、醸造食酢抽出を行い、さらに酵素処理して得られる抽出ろ過液を添加して醗酵させたリンゴ酢は、果実エステル含量が高く、リンゴ酢の香り(エステル香)にも優れた芳醇な品質であった。
【0039】
【表1】
第1表〔リンゴ酢醪の組成、リンゴ搾汁粕の処理条件、抽出ろ過液の分析結果及びリンゴ酢の官能評価結果〕
Figure 0004009162
【0040】
以上の実施例1〜2と比較例1の結果から、リンゴ搾汁粕を醸造食酢で抽出処理して得られる、実施例1の抽出ろ過液は、リンゴ果実に代表される香気成分である酢酸エチル等のエステル類を多く含む酢酸酸度を有する液体であり、この抽出ろ過液を用いると、既存のリンゴ搾汁粕よりリンゴ果実に代表される香気成分である酢酸エチル等のエステル類(果実エステル)の含量が高く、リンゴ酢の香り(エステル香)の優れた芳醇なリンゴ酢を製造することができることが明らかとなった。
また、醸造食酢で抽出処理した後に、ペクチナーゼ及びアラバナーゼの両酵素を作用させて得られる、実施例2の抽出ろ過液を用いることにより、より芳醇なリンゴ酢を製造することができることが明らかとなった。
【0041】
試験例1〔各種酵素による酵素処理〕
実施例1と同様の処理手順及び条件にて、市販リンゴ500gよりリンゴ搾汁粕100gを得た。
得られたリンゴ搾汁粕100gに対し、酸度15%(W/V)の醸造食酢(株式会社ナカノス販売、商品名「清泉−15」)100gを添加した。酢酸酸度は7.8%(W/W)、pHは2.8であった。
このような醸造食酢を添加したリンゴ搾汁粕を4つ用意し、これらに対し、それぞれ4種の市販酵素〔(1)α-アミラーゼ(新日本化学工業株式会社販売、商品名「スミチームL−L」;アミラーゼ活性1200u/g)、(2)ペクチナーゼ (新日本化学工業株式会社販売、商品名「スミチームAP2−L」;ペクチナーゼ活性12000u/g)、(3)アラバナーゼ(新日本化学工業株式会社販売、商品名「スミチームARS」;エンド型アラバナーゼ活性400u/ml)、(4)ペクチナーゼとアラバナーゼの混合酵素(新日本化学工業株式会社販売、商品名「スミチームPX」;ペクチナーゼ活性5000u/g、エンド型アラバナーゼ活性80u/g)〕を0.3gずつ添加し、30℃で1晩酵素反応させた。
【0042】
これらをろ過分別したろ液について、官能的に香味の評価をした。官能的な香味の評価は、4種の市販酵素でそれぞれ処理して得られる抽出ろ過液を添加したリンゴ酢をパネラー14人により評価し、1)順位評価を実施したときの順位結果及びその順位和と、2)5段階比較評価とで評価した。2)5段階比較評価は、添加のリンゴ酢をコントロールとし、コントロールに比べ、リンゴ由来のフルーテイなエステル風味が良好であるかを評価し、明らかに良くなっているときを5点、良くなっているときを4点、大差ないときを3点、悪くなっているときを2点、明らかに悪くなっているときを1点とし、評価合計の平均点を示した。
結果を第2表に示す。
【0043】
【表2】
第2表〔各種酵素処理して得られるろ過液を醗酵終了後のリンゴ酢に添加したときの官能評価結果〕
Figure 0004009162
【0044】
第2表から明らかなように、α-アミラーゼを単独にて、ペクチナーゼを単独にて、或いはアラバナーゼを単独にて、それぞれ処理した場合より、ペクチナーゼとアラバナーゼの混合酵素にて処理したものが、最もリンゴ酢の香り(エステル香)に優れた芳醇な風味を有した良好な品質であった。
また、これら酵素処理して得られたろ過液のそれぞれを、既に酢酸醗酵が完了したのリンゴ酢1Lに対し全量(156g)添加して、官能的に香味の評価をしたところ、ペクチナーゼとアラバナーゼの混合酵素にて処理したものを添加したものが最も果実エステル由来の風味を有する芳醇で良好な品質であった。
【0045】
試験例1の結果から、醸造食酢で抽出処理した後に、酵素としてペクチナーゼ及びアラバナーゼの両者を作用させて得られる抽出ろ過液を用いることにより、より芳醇なリンゴ酢を製造することができることが明らかとなった。
【0046】
実施例3〔醗酵終了後の香味付与液としての利用〕
実施例1と同様の処理手順及び条件にて、市販リンゴ500gよりリンゴ搾汁粕100gを得た。
得られたリンゴ搾汁粕100gに対し、酸度15%(W/V)の醸造食酢(株式会社ナカノス販売、商品名「清泉−15」)100gを添加した。酢酸酸度は7.8%(W/W)、pHは2.8であった。
さらに、ペクチナーゼ及びアラバナーゼを含む酵素(新日本化学工業株式会社販売、商品名「スミチームPX」;ペクチナーゼ活性5000u/g、エンド型アラバナーゼ活性80u/g)0.3gを添加し、30℃で1晩酵素反応させた。これをろ過分別することで、156gの抽出・酵素処理ろ過液を得た。
【0047】
得られた抽出・酵素処理ろ過液156gは加熱し酵素失活させた後、醗酵終了後の香味付与液として酢酸醗酵終了液に添加した。
つまり、酸度2%(W/V)、アルコール3.3%(V/V)、果汁含量400gのリンゴ酢醪1L(具体的には、リンゴの搾汁400gと共に95%アルコール35ml、水を加え、酢もとを調整し、そこに種酢400mlを摂取したもの)について、実施例1と同様な醗酵方法で静置醗酵を実施し、酢酸醗酵開始から10日目で、酸度5.0%(W/V)、残留アルコールが0.3%(V/V)に到達したので、醗酵を完了した。この時点の酢酸醗酵終了液に、前記の抽出・酵素処理ろ過液を香味付与液として添加した。
その結果、酢酸醗酵終了液に抽出・酵素処理ろ過液を添加すると、芳醇なエステル香を有するリンゴ酢が得られることが明らかとなった。
【0048】
参考例1〔分離液体ドレッシングの香味付与原料としての利用〕
実施例3と同様の処理により得られた抽出・酵素処理ろ過液を、分離液体ドレッシングの香味付与原料として使用した。
つまり、実施例1と同様の処理手順及び条件にて得られたリンゴ搾汁粕100gに対し、酸度15%(W/V)の醸造食酢(株式会社ナカノス販売、商品名「清泉−15」)100gを添加した後、ペクチナーゼとアラバナーゼの混合酵素で処理し、酸度7.8%(W/W)の抽出・酵素処理ろ過液156gを得、この抽出・酵素処理ろ過液を酵素失活させた後の抽出・酵素処理ろ過液を、分離液体ドレッシングの香味付与原料として使用した。
従来のレシピでは、重量比で、食用植物油脂40%、砂糖6%、食塩3%、酸度5%(W/W)のリンゴ酢22%からなる分離液体ドレッシングを作成していたが、リンゴ酢22%の代わりに、上記酸度7.8%(W/W)の抽出・酵素処理ろ過液14%を原料として使用した。
その結果、得られた分離液体ドレッシングは、リンゴ風味を有するフルーテイな品質で、従来のリンゴ酢使用のものより酸味もマイルドであった。
【0049】
参考例2〔リンゴ風味浅漬け甘酢調味液の香味付与原料としての利用〕
実施例3と同様の処理により得られた酸度7.8%(W/W)の抽出・酵素処理ろ過液(酵素失活させたもの)は、以下に示すように、リンゴ風味浅漬け甘酢調味液の香味付与原料としても有効であった。また、得られたリンゴ風味浅漬け甘酢調味液は、リンゴ果実のエステル香の高いもので、とてもフルーテイであった。
【0050】
すなわち、かぶを使って、リンゴ風味浅漬けを以下のように作成した。
400gのかぶを薄く輪切りにし、5%の食塩水で2時間塩漬けした後、液切りし、リンゴ風味浅漬け甘酢調味液88gを入れ、1晩冷蔵にて漬け込んだ。従来のリンゴ風味浅漬け甘酢調味液のレシピでは、重量比で、砂糖17%、水飴17%、グルタミン酸ナトリウム1%、酸度5%(W/W)のリンゴ酢が50%使われていた。このリンゴ酢50%の代わりに、上記酸度7.8%(W/W)の抽出・酵素処理ろ過液32%を使用した。
その結果、得られたかぶの浅漬けは、リンゴ風味が付与され、しかも、従来の浅漬けよりリンゴ酢の香り(エステル香)に優れ、芳醇でフルーテイ感のあるもので、美味であった。
【0051】
実施例3および参考例1,2の結果から、リンゴ搾汁粕抽出ろ過液を香味付与液として含有する酸性液体調味料は、リンゴ風味のフルーテイ感を発揮でき、酸味の抑制されたマイルドなものであることが証明された。
【0052】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明の方法によれば、リンゴ搾汁粕に、醸造食酢を添加し浸漬した後、ろ過することにより得られる抽出ろ過液をリンゴ酢の原材料の一部として使用することによって、果実エステル含量の豊富なリンゴ酢の香り(エステル香)の高い芳醇なリンゴ酢を製造することができる
特に、請求項2に係る本発明のように、リンゴ搾汁粕にペクチナーゼとアラバナーゼの両酵素を添加作用させることにより、更に高濃度のエステル類を多く含んだリンゴ酢を得ることができる。
次に、請求項3に係る本発明によれば、果実エステル含量の豊富なリンゴ酢の香り(エステル香)の高い芳醇なリンゴ酢が提供される

Claims (3)

  1. リンゴ搾汁粕に、全体の酢酸酸度が5〜10%( W/W )となるように醸造食酢を添加し浸漬させた後、ろ過することにより得られるリンゴ搾汁粕抽出ろ過液を、リンゴ酢原料醪として酢酸醗酵を行うことを特徴とするリンゴ酢の製造方法。
  2. 前記リンゴ搾汁粕に醸造食酢を添加し浸漬させた後に、ペクチナーゼ及びアラバナーゼの両酵素を作用させることを特徴とする請求項1に記載のリンゴ酢の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の製造方法により得られるリンゴ酢。
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