JP4008123B2 - 炭素系超微細冷陰極及びその作製方法 - Google Patents

炭素系超微細冷陰極及びその作製方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷陰極及びその作製方法に関するものである。特に、真空デバイス用途、ディスプレイ用途などに利用される炭素系超微細冷陰極(以下、冷陰極チップとも称す)及びその作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷陰極とは、加熱することなしに電子が放出される陰極である。陰極材料としては今までSiチップやMoチップ、ダイヤモンドチップ、多結晶ダイヤモンド薄膜、あるいはカーボンナノチューブ塗布膜などが検討されてきた。
【0003】
SiチップやMoチップ、ダイヤモンドチップなどは、ICチップなどを作製する薄膜技術を応用して、Si、Mo、ダイヤモンドなどを円錐状やビラミッド状に加工して得られる。たとえば、J. Appl. Phys. Vol.47, No.12, p.5248(1996)に記載されているように、円錐状のMoをSi基板上に形成する場合、まずSi基板上に厚さ1μm程度の絶縁体の膜と厚さ0.5μm程度の金属ゲート膜を形成し、その上にレジスト膜を形成して直径2μm程度のホールパターンをリソグラフィ技術などにより作製し、直下の金属ゲート膜および絶縁体膜をエッチングし、Si基板を露出させる。この基板を基板面の垂線を軸として回転させながら斜め方向から剥離膜の蒸着を行う。斜め方向からの蒸着により、金属ゲート膜の開口部の側面にも剥離膜が堆積する。エミッタ材料であるMoの堆積においては、Mo原子が自ら開口部を徐々にふさぎながらホール内に堆積するように蒸着方向を調整する。この後、剥離膜とともにホール外に堆積した余分なMo膜を除去してエミッタを作製する。この方法で作製したエミッタでディスプレイ用途のものは現在100V/μmの電界で駆動する。
【0004】
また、基板上一面に、プラズマCVD法、熱フィラメント法などにより多結晶ダイヤモンド薄膜を形成させてこれを冷陰極とするものは、複雑な工程はないが、プラズマCVD法では成膜中の投入パワーが非常に大きく(数kW以上)、また良質のダイヤモンド膜を必要な膜厚(数十〜百μm)に成長させるためには数時間から数十時間を要するため、エネルギー消費量も大きい。熱フィラメント法においては、膜質と膜厚分布がフィラメントの形状に敏感であるため、大面積化が困難である。また、いずれの方法も、突起部の密度制御、形状制御が非常に難しいため、電子放出点の高密度化も難しい。
【0005】
また、カーボンナノチューブを電子放出源として利用する冷陰極の場合には、あらかじめカ−ボンナノチューブをアーク放電法やグラファイトへのレーザ照射法により別個に作製し、精製した後、このカーボンナノチューブを導電性の接着剤で金属基板上に固定して使用している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、既存の技術で冷陰極チップを作製するには、非常に多くの複雑なプロセスと多くの時間を必要とし、駆動電界は100V/μmと高く、また使用する基板自身が非常に高価であるという問題がある。
【0007】
また、上述のような既存技術で冷陰極チップを作製した場合、最も小さいものでもチップ径は1μm程度である。このようなチップを用いてディスプレイを作製した場合、1ドットの映像を数個から数十個のチップで構成することになり、冷陰極チップ一つ一つの信頼性と寿命がきわめて重要になる。言い換えれば、冷陰極チッブが放電や残留ガスによりスパッタされ破損した場合、たとえそれが一つのチッブであっても画像に大きな影響を与える。
【0008】
さらに、いずれの既存の方法も、使用可能な基板は各方法それぞれに制限があり、かつ単結晶Si、Moなど高価なものに限られるため、実用的でないという問題があり、安価な基板を使用できる方法の開発が望まれている。
【0009】
また、カーボンナノチューブを電子放出源として利用する場合、別に形成されたカーボンナノチューブを接着剤を用いて基板上に接着・固定する余分のプロセスを必要とするという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記のような既存技術の持つ問題点を解決するもので、高密度で微細な、また低電界で駆動できる炭素系超微細冷陰極及びその冷陰極を非常に簡単なプロセスで作製する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、既存の技術とは異なる非常に簡単な手法で、超微細かつ高密度の電子放出源を基板表面上に作製するものである。
【0012】
本発明の炭素系超微細冷陰極は、基板上の所定の電極形成位置に、該基板上に直接形成せしめたカーボンナノチューブを電子放出源として有するものである。このカーボンナノチューブは、電界印加型プラズマCVD法により形成されたものである。
【0013】
本発明の炭素系超微細冷陰極の作製方法は、プラズマ源を用いて発生させたプラズマを挟むように配置した電極間に電界を形成してCVDを行う電界印加型プラズマCVD法により、基板表面に反応ガスからカーボンナノチューブを形成する触媒作用を持つ金属を助剤として使用して、負電圧を印加した陰極上に載置した基板表面に、カーボンナノチューブを直接に基板表面に対して垂直に形成し、このカーボンナノチューブを電子放出源とする炭素系超微細冷陰極を得るものである。このカーボンナノチューブを形成するために、前記助剤として、高温の水素雰囲気中で触媒作用を持つ金属、例えばNi、Fe、Co又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金を利用する。これらの助剤は、例えばあらかじめ前記基板の表面上に付着された形態で利用されるか、前記カーボンナノチューブの堆積中に同時に前記基板の表面上に付着されるようにして利用されるか、又はあらかじめ前記基板中に含有された形態で利用されるのが望ましい。助剤として、超微粒子の形態を有するものを用いる場合には、この助剤を基板の表面上に一様に散布することによって利用してもよい。
【0014】
高温の水素雰囲気中で触媒作用を持つ金属を助剤として含有する基板の場合は、その基板表面が凹凸を有するものであることが望ましく、また、基板形状は板状のみならずメッシュ状であってもワイヤ状であってもよい。
【0015】
また、上記冷陰極作製方法に従ってカーボンナノチューブを基板上に堆積した後、この基板を真空中で高電界印加処理をして、低電界で効率よく電子を放出せしめる陰極とすることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本発明によれば、具体的には、カーボンナノチューブを、電界印加型プラズマCVD法により、基板の表面上の所定の位置に直接形成せしめて、電子放出源とするものである。電界印加型プラズマCVD法により、カーボンナノチューブを高い成長速度で基板表面上に堆積させることができる。使用しうる基板としては特に限定されないが、寿命の観点からは、炭素の拡散係数が小さい基板が好ましい。また、導電性の基板及び絶縁性の基板の両方とも用いることができるが、絶縁性の基板を用いる場合は、あらかじめカーボンナノチューブの層へ電子を注入するための電極及び電流回路を別に形成しておくか、又はカーボンナノチューブの層そのものをパターン加工して電極や電流回路に使用することも可能である。この場合は、使用可能なシート抵抗値となるまで堆積層を成長させなくてはならないが、あらかじめ電極形成した基板を用いる場合は、カーボンナノチューブは島状に点在している状態のものでもよい。基板としては、例えば、石英基板、アルミナ基板、シリコン基板、Mo基板、SUS基板、Ni−Fe合金基板等を使用することができる。
【0018】
本発明の方法においては、カーボンナノチューブの堆積層を形成する際に、助剤として、高温の水素雰囲気中で触媒作用を持つ金属、例えばNi、Fe、Co、又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金を、例えば以下述べるような態様で使用すると、基板表面上に、炭化水素系の原料ガスから該カーボンナノチューブを容易に成長させることができる。
【0019】
例えば、助剤が、あらかじめ基板中に含有された形態で利用される場合には、基板全体にカーボンナノチューブ又はアモルファスカーボンのウイスカーを成長させることができる。この場合、助剤の含有量により、ウイスカーの成長(堆積)密度をコントロールし、高くすることも可能であるが、基板表面に対する垂直成長の割合は低い。
【0020】
また、助剤が、あらかじめ基板の表面上に付着された形態で利用されるか、又はカーボンナノチューブの堆積中に同時に基板の表面上に付着されるようにして利用される場合には、このように基板表面に助剤を付着させることで、カーボンナノチューブの基板に対する垂直成分を増加させることが可能となる。助剤を基板の所定の位置に付着せしめて利用する場合には、反応ガス、印加電圧などの実験条件を適切に選択することにより、マスク材などを一切用いずに、カーボンナノチューブを直接に基板表面に対して垂直に堆積させることができる。これらの条件は、例えば、マイクロ波電力:約600W、基板温度:800〜900℃、反応圧力(堆積圧力):1.33〜2.66×103 Pa、反応時間(堆積時間):約15分、堆積中の基板側の印加電圧:−250Vである。
【0021】
助剤の基板表面への付着方法としては、例えば、スパッタ、メッキ、有機金属化合物の塗布後焼成等の方法がある。例えば、スパッタの初期過程で成膜を止めると、基板上で助剤が島状の分布となり、ウイスカーの成長密度は小さくなるが、基板に対する垂直成長の割合が高くなる。
【0022】
助剤が超微粒子の形態を有するものである場合、該超微粒子を基板上に一様に散布して利用するが、この際に、超微粒子の粒径や粒径分布及び散布密度を制御することで所望の特性を得ることができる。
【0023】
また、堆積時間や触媒金属超微粒子のサイズ、分散密度を適切に設定することで、冷陰極の分散密度やサイズが制御できる。一般的には、堆積時間10〜20分、金属超微粒子の粒径5〜20nmである。さらに、リソグラフィ技術などを用いて、金属超微粒子の堆積位置を制御することで、冷陰極の形成位置を制御することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、超微細かつ高密度の低電界駆動炭素系冷陰極を基板面上に作製することができる。具体的には、上記したように、反応ガス、印加電圧などの堆積条件を適切に選択し、カーボンナノチューブを、Ni、Fe、Co、又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金などの触媒効果を利用して、電界印加型プラズマCVD法等のプラズマCVD法により作製するものであり、基板上に、該カーボンナノチューブを堆積せしめた後、この基板を真空中で高電界印加処理することにより、電子放出特性の経時的変動を低減すると共に、電子放出特性も向上させること、つまり効率よく低電界で電子を放出することが可能となる冷陰極が得られる。ここで、高電界印加処理は、いわゆるエージングであり、通常駆動する電界より高い電界を数分から数時間印加して処理するものであり、一般に4V/μm〜20V/μm、好ましくは5V/μmの電界で、好ましくは1時間処理する。低電界とは、従来の冷陰極の駆動電界(100V/μm)より低い電界であり、本発明の場合、例えば1V/μm〜4V/μmをいう。この方法の場合、高温水素雰囲気中で触媒作用をもつNi、Fe、Co、又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金等を含む基板を使用することが好ましい。かかる基板としては、例えば、SUS304、SUS302、SUS316などのステンレス鋼、NiとFeを含む合金であるアンバー、パーマロイなどを使用することができ、これらは非常に安価である。
【0025】
前記基板としては、表面に凹凸を有していてもよい板状、メッシュ状、ワイヤー状等の各種形状の基板が使用できる。基板表面に凹凸が付いている場合、冷陰極駆動の際の電界印加時に、該基板凸部の先端には電界が集中する。このため、この部分に冷電子放出源があれば、この冷電子放出源から優先的に電子放出が起こるので、同一平面上に冷電子放出源がある場合よりも、さらに駆動電圧を低減することができる。また、メッシュ状、ワイヤー状の場合は、そのサイズ、表面状態を適切に選ぶことで、上記の凹凸処理された表面を有する基板の場合と同じ効果が得られる。本発明の場合、厳密には点放出になるが、例えばディスプレイの画素のパターンと同じピッチの凸部集合体を、板状又はメッシュ状等の冷陰極基板表面に形成して、蛍光体の位置と合わせることで、微小電子銃が任意の個数で各画素に配置されることになる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明を実施例により図面を参照してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0027】
以下の実施例でカーボンナノチューブの形成に用いた電界印加型プラズマCVD装置の概略を図1に示す。真空室1内に陰極2及びこれと対抗してカソード電極3を配置せしめ、陰極2上には基板4が載置される。真空室1に反応ガス源(H2、CH4)5、排気用真空ポンプ6、マイクロ波プラズマ発生装置7を接続し、また電極にDC電源8を接続するように構成されている。かかる構成をとることにより電界印加型プラズマCVD法により基板の表面にカーボンナノチューブを堆積せしめることができる。このCVD装置としては、例えば S.Yugo et al. Appl. Phys. Lett.,58(1991)1038に記載されている。
(実施例1)
あらかじめ10〜20nm程度の粒径のNi超微粒子を真空蒸着法により堆積させた、低電気抵抗nタイプSi基板(縦5mm×横5mm×厚さ0.4mm)上に、図1の装置を用いて、電界印加型プラズマCVD法によりカーボンナノチューブを作製した。反応条件としては、マイクロ波電力を600W、基板温度を850℃、反応ガスとしてCH410%/H2、反応圧力を2.6×103Pa、反応時間を15分とした。堆積中は基板側に−250Vの電圧を印加した。形成されたカーボンナノチューブは、直径が10nmから30nm、高さが200nmから500nmの針状で、すべて基板表面に対して垂直であった(図2(A))。また、超微粒子が堆積されていない部分にはカーボンナノチューブが形成されていなかった。この図2(A)は、本実施例で得られた炭素系超微細冷陰極について、カーボンナノチューブの形成状態を示す走査型電子顕微鏡像(40゜傾斜)の写真であり、図2(B)に示すように、該Si基板表面にNi微粒子を堆積する際に基板の一部(X部分)をマスキングして、Ni微粒子の堆積を排除し、基板の他の部分(Y部分)にNi微粒子が堆積するようにしたものである。しかし、実際にはマスキングが不十分であったため、X部分にもNi微粒子が付着して、カーボンナノチューブ形成されてしまった。
【0028】
上記Ni超微粒子の代わりにFe超微粒子、Co超微粒子又はNi−Fe合金超微粒子を真空蒸着法により堆積させた該Si基板を用い、上記と同様に処理したところ、同様のカーボンナノチューブが形成された。
【0029】
このようにしてカーボンナノチューブを形成した基板のうち、Ni超微粒子を用いて得た基板について、この基板と、基板の上方500μmの位置に基板に平行になるように固定したアノードとを、2.6×10-5Paの真空中に置き、アノードに0から2000Vの正電圧をかけて電子放出特性を調べたところ、500V(1.0V/μm)を過ぎると電子の放出が始まり、2000V(4.0V/μm)印加時に100μAの放出電流が得られた(図3)。また、印加電圧2000Vのまま、アノードと基板との距離を300μmまで近づけると(6.7V/μm)、1mAまで放出電流が増加し、I−V特性が基板とアノードとの間の距離に依存することがわかった。
(実施例2)
低電気抵抗nタイプSi基板(縦5mm×横5mm×厚さ0.4mm)側面の周辺にこの基板を囲むように所定の大きさのSUS304板(厚さ0.5mm)を設置し、図1の装置を用いて、基板上に電界印加型プラズマCVD法によりカーボンナノチューブを作製した。カーボンナノチューブ形成のための助剤としてのNi、Feの金属超微粒子の供給は、SUS304板からカーボンナノチューブの堆積中に同時に行われる。即ち、電界により基板方向に引き込まれるイオンにより、SUS304板の表面がスパッタされ、Si基板上に再付着した粒子が助剤として働く。反応条件としては、マイクロ波電力を600W、基板温度を850℃、反応ガスとしてCH410%/H2、反応圧力を2.6×103Pa、反応時間を15分とした。堆積中は基板側に−250Vの電圧を印加した。形成されたカーボンナノチューブは、直径が10nmから30nm、高さが200nmから500nmで、すべて基板表面に対して垂直であった。また、カーボンナノチューブの形成される場所は、基板周囲に置いたSUS304板の配置形状を反映していた。
【0030】
このカーボンナノチューブを形成した基板と、基板の上方400μmの位置に基板に平行になるように固定したアノードとを、2.6×10-5Paの真空中に置き、アノードに0から2000Vの正電圧をかけて電子放出特性を調べたところ、800V(2.0V/μm)から電子放出が始まり、2000V(5.0V/μm)印加時に121μAの放出電流を得た。印加電圧を2000Vにして、基板とアノードとの間の距離を250〜500μmの範囲内で変動させた場合、図4に示すように、放出電流は基板とアノードとの距離に依存することがわかった。
(実施例3)
図1の装置を用い、SUS304基板(縦5mm×横5mm×厚さ0.5mm)上に電界印加型プラズマCVD法によりカーボンナノチューブ、アモルファスカーボンを作製した。反応条件としては、マイクロ波電力を600W、基板温度を850℃、反応ガスとしてCH430%/H2、反応圧力を2.6×103Pa、反応時間を15分とした。堆積中は基板側に−250Vの電圧を印加した。形成された冷陰極は、直径が50nmから200nm、長さが200nmから500nmの針状であった(図5)。SUS基板の代わりにNi−Fe合金であるアンバーを基板として用いて、上記と同様に処理して、同様の針状の超微細冷陰極が得られた。
【0031】
上記のようにして炭素系超微細冷陰極を形成したSUS304基板と、該基板の上方500μmの位置に基板に平行になるように固定したアノードとを、2.6×10-5Paの真空中に置き、アノードに0から2000V以上の正電圧をかけて高電界処理による電子放出特性を調べた。図6に示すように、1100V(2.2V/μm)から電子放出が始まり、1300V(2.6V/μm)印加時で10nA、2500V(5.0V/μm)印加時に46μAの放出電流を得た。この後、この5.0V/μmの状態に1時間保持したところ、放出電流値は46μAから413μAに上昇した。次に、電圧を1600V(3.2V/μm)まで下げると、放出電流は300μAになった。このことから、高電界処理前の超微細冷陰極と比べて、高電界処理した後の冷陰極はその電子放出特性が改善されており、低電界での電流値が上昇し、極めて効率よく電子が放出され得ることが分かった。このことは、基板としてNi−Fe合金基板を使用した場合も同様の傾向を示した。
(実施例4)
SUS304基板(縦5mm×横5mm×厚さ1mm)の表面の半分に、図7に示すように、WC製ペン型ガラス切りにより格子状に傷を付け、次いで、実施例3記載の条件・手順に従って、この基板上に電界印加型プラズマCVD法により針状の冷電子源を堆積した。
【0032】
上記のようにして冷電子源を形成したSUS304基板及び対照として傷つけ処理を施さないで同様に冷陰極を形成したSUS304基板について、実施例1と同様の配置で、アノードとして蛍光体を塗布したTiO2膜付きガラス基板を用いて、基板−アノード間距離500μmの条件で、電子放出による蛍光を観測した。その結果、傷つけ処理を施した基板の場合、傷つけ処理を施した部分からの電子放出による蛍光は2.2V/μmから観測でき、傷つけ処理を施していない部分からの蛍光は5.0V/μm付近から観測された。また、対照としての全面傷付け処理なしの基板の場合、基板中央部からの電子放出による蛍光は4.0V/μmから観測された。図7に示した溝AはWC製ガラスペンの切り傷跡であり、基板内部の切り傷のエッジ部Bで電界集中が起こり、電子が放出し易くなったものであり、傷つけ処理を施していない時は、基板の周辺部で電界集中が起こっており、電子放出は周辺部の寄与が殆どであった。
(実施例5)
SUS304基板(縦5mm×横5mm×厚さ1mm)上にストライプ状の凸部を形成し、上記実施例3と同じ条件で冷電子源を堆積した。この冷陰極基板を、TiO2膜付きガラス基板上にストライプ状に形成した蛍光体付きアノードと交差するように配置すると、2極管型電界放出ディスプレイの表示部構成となり、本発明の冷陰極はディスプレイ用途に利用可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、炭素系冷陰極チップを作製するプロセスにおいて、従来のような円錐状あるいはピラミッド状チップを作製するための複数のプロセスを不要にし、従来の冷陰極チップの寸法の100分の1程度(直径:数10nm程度)の炭素系超微細冷陰極チップをも高密度で作製することができると共に、低電圧駆動冷陰極チップを非常に高密度で作製することができる。
【0034】
本発明において助剤を基板上に付着せしめた場合は特に、カーボンナノチューブが基板に対して垂直に形成され易いので、電界集中が非常に効率よく起こり、数V/μmという、従来の技術と比較して2桁低い電界で駆動できる低電界駆動冷陰極が作製できる。
【0035】
また、本発明によれば、基板として、高温水素雰囲気中で触媒作用を持つNi、Fe、Co又はこれらの金属の少なくとも2種の合金などを含むもの、例えぱステンレス鋼、Ni−Fe合金からなる基板を用いることができ、これらの基板は非常に安価で取り扱いも容易である。また、かかる基板を用いる場合、表面に凹凸を有する板状基板や、メッシュ状、ワイヤ状の基板を用いて基板上に冷電子源を形成せしめれば、駆動時の電界集中がより効果的に起こり、駆動電圧が低減される冷陰極が作製できる。
【0036】
本発明の上述の特徴の複合的な効果により、従来の冷陰極と比較して、長寿命の低電界駆動炭素系超微細冷陰極が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜3で使用する電界印加型プラズマCVD装置の概略を示す側面図。
【図2】(A)実施例1で得られた炭素系超微細冷陰極について、カーボンナノチューブの形成状態を示す走査型電子顕微鏡像(40゜傾斜)の写真。
(B)図2(A)の写真のカーボンナノチューブの形成位置を説明するための基板の模式的平面図。
【図3】実施例1で得られた炭素系冷陰極形成基板について、I−V特性の基板−アノード間距離依存性を示すグラフ。
【図4】実施例2で得られた炭素系冷陰極形成基板について、基板−アノード間距離と放出電流との関係を示すグラフ。
【図5】実施例3で得られた炭素系超微細冷陰極について、カーボンナノチューブの形成状態を示す走査型電子顕微鏡像(40゜傾斜)の写真。
【図6】実施例3で得られた高電界処理された炭素系冷陰極形成基板について、印加電界と放出電流との関係を示すグラフ。
【図7】実施例4で用いた切り傷付き基板の表面状態を示す走査型電子顕微鏡像の写真。

Claims (8)

  1. プラズマ源を用いて発生させたプラズマを挟むように配置した電極間に電界を形成してCVDを行う電界印加型プラズマCVD法により、基板表面に反応ガスからカーボンナノチューブを形成する触媒作用を持つ金属を助剤として使用して、負電圧を印加した陰極上に載置した基板表面に、カーボンナノチューブを直接に基板表面に対して垂直に形成し、このカーボンナノチューブを電子放出源とすることを特徴とする炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  2. 前記助剤が、Ni、Fe、Co又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金であることを特徴とする請求項1記載の炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  3. 前記助剤が、あらかじめ前記基板の表面上に付着された形態で利用されるか、又は前記カーボンナノチューブの形成中に同時に前記基板の表面上に付着されるようにして利用されることを特徴とする請求項1又は2記載の炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  4. 前記助剤が超微粒子の形態を有するものであり、該超微粒子が前記基板の表面上に一様に散布することによって利用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  5. 前記基板が、前記助剤を含有したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  6. 前記基板が、あらかじめ表面に格子状の傷を付けたものであることを特徴とする請求項5記載の炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  7. 前記カーボンナノチューブの形成後、真空中で高電界印加処理を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の炭素系超微細冷陰極の作製方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかの方法で作製したことを特徴とする炭素系超微細冷陰極。
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