JP3998119B2 - エンジン始動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンをスタータモータによりクランキングして始動するエンジン始動制御装置に係り、特に、エンジンのクランク軸とスタータモータの回転軸とが直結されたシステムに好適なエンジン始動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スタータモータを備えた従来のエンジン始動装置では、スタータモータはユーザがスタータスイッチをオン操作している間だけ通電されてエンジンをクランキングする。ユーザは、エンジン回転計の指針値や始動音などからエンジンが始動されたことを直感的に判断してオン操作を自ら解除する。また、オン操作を解除したときにエンジンが始動できていなければ、スタータスイッチを再びオン操作する事によりエンジンの再始動を試みる。
【0003】
一方、環境や省エネルギの観点から、特にアイドリング時の排気ガスや燃料消費量を抑えるために、車両を停止させるとエンジンが自動停止し、自動停止状態からスロットルグリップが操作されるなどの発進操作が検知されると、スタータモータを自動的に始動させてエンジンを再始動するエンジン自動停止始動システムが、例えば特開平5−149221号公報等において開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したエンジン自動停止始動システムを採用した車両のように、エンジンが自動的に再始動されるシステムでは、エンジンの始動が完了したことをシステムが感知してスタータモータへの通電を自動的に停止させる必要がある。
【0005】
ここで、スタータモータの回転力を減速ギアを介してエンジンのクランク軸に入力する一般的な始動機構では、スタータモータによるエンジンのクランキング回転数とエンジンのアイドリング回転数との間には比較的大きな回転差があり、エンジン始動後はエンジン回転数が上昇するため、エンジン回転数に基づいて、エンジン始動の完了を比較的容易に感知する事ができる。
【0006】
しかしながら、エンジンのクランク軸とスタータモータの回転軸とが直結された始動機構では、スタータモータによるクランキング回転数が高くなってアイドリング回転数との差分が小さくなる。このため、エンジン回転数に基づいてエンジン始動の完了を判別し、スタータモータを自動停止させてしまうと、エンジンが完全に始動されていないのにクランキングが終了されてしまったり、その逆に、エンジン始動が完了しているにもかかわらずクランキングが続行されてしまう場合が起こり得る。
【0007】
なお、このような現象は、ユーザがスタータスイッチをオン操作してエンジンをクランキング゛させる場合にも同様に起こり得るものであり、エンジンが完全に始動されていないのにスタータスイッチをオフ操作してしまったり、その逆に、エンジン始動が完了しているにもかかわらずオン操作を続けてしまうことがある。
【0008】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、スタータモータの停止タイミングを正確に認識し、自動停止させるようにしたエンジン始動制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明は、エンジンをスタータモータによりクランキングして始動し、エンジン始動が完了すると前記スタータモータへの通電を自動的に停止するエンジン始動制御装置において、エンジン回転数が第1基準回転数に達するまでスタータモータへの通電を継続し、エンジン回転数が前記第1基準回転数に達するとスタータモータへの通電を停止し、エンジン回転数が前記第1基準回転数よりも低い第2基準回転数まで低下するとスタータモータへの通電を再開するようにした。
【0010】
上記した特徴によれば、エンジンが完爆状態に達した可能性の高いエンジン回転数が検知されるとスタータモータが自動的に停止されるので、エンジン完爆後の不要なクランキングが防止される。また、その後にエンジン回転数が低下するとスタータモータが直ちに再駆動されるので、完爆状態に達していなかった場合でも、エンジン停止前からの自動的な再始動により、完爆状態への速やかな移行が可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明のエンジン始動制御装置を適用したスクータ型自動二輪車の全体側面図であり、当該車両はさらに、車両を停止させるとエンジンを自動停止させ、その後、スロットルグリップが開かれるか、あるいはスタータスイッチがオン操作されるなどの発進操作がなされると、スタータモータを自動的に駆動させてエンジンを再始動させるエンジン自動停止始動機能を有する。
【0012】
車体前部と車体後部とは低いフロア部4を介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームは、概ねダウンチューブ6とメインパイプ7とから構成される。燃料タンクおよび収納ボックス(共に図示せず)はメインパイプ7により支持され、その上方にシート8が配置されている。
【0013】
車体前部では、ステアリングヘッド5に軸支されて上方にハンドル11が設けられ、下方にフロントフォーク12が延び、その下端に前輪FWが軸支されている。ハンドル11の上部は計器板を兼ねたハンドルカバー13で覆われている。メインパイプ7の立ち上がり部下端にはブラケット15が突設され、このブラケット15には、スイングユニット2のハンガーブラケット18がリンク部材16を介して揺動自在に連結支持されている。
【0014】
スイングユニット2には、その前部に単気筒の4サイクルエンジンEが搭載されている。このエンジンEから後方にかけてベルト式無段変速機10が構成され、その後部に遠心クラッチを介して設けられた減速機構9に後輪RWが軸支されている。この減速機構9の上端とメインパイプ7の上部屈曲部との間にはリヤクッション3が介装されている。スイングユニット2の前部にはエンジンEから延出した吸気管19に接続された気化器17および同気化器17に連結されるエアクリーナ14が配設されている。
【0015】
図2は、前記スイングユニット2をクランク軸201に沿って切断した断面図、図3は、その部分拡大図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0016】
スイングユニット2は、左右のクランクケース202L、202Rを合体して構成されるクランクケース202に覆われ、クランク軸201は、クランクケース202Rに固定された軸受け208、209により回転自在に支持されている。クランク軸201には、クランクピン213を介してコンロッド(図示せず)が連結されている。
【0017】
左クランクケース202Lは、ベルト式無段変速室ケースを兼ねており、左クランクケース202Lまで延びたクランク軸201にはベルト駆動プーリ210が回転可能に設けられている。ベルト駆動プーリ210は、固定側プーリ半体210Lと可動側プーリ半体210Rとからなり、固定側プーリ半体210Lはクランク軸201の左端部にボス211を介して固着され、その右側に可動側プーリ半体210Rがクランク軸201にスプライン嵌合され、固定側プーリ半体210Lに接近・離反することができる。両プーリ半体210L、210R間にはVベルト212が巻き掛けられている。
【0018】
可動側プーリ半体210Rの右側ではカムプレート215がクランク軸201に固着されており、その外周端に設けたスライドピース215aが、可動側プーリ半体210Rの外周端で軸方向に形成したカムプレート摺動ボス部210Raに摺動自在に係合している。可動側プーリ半体210Rのカムプレート215は、外周寄りがカムプレート215側に傾斜したテーパ面を有しており、該テーパ面と可動プーリ半体210Rとの間の空所にドライウェイトポール216が収容されている。
【0019】
クランク軸201の回転速度が増加すると、可動側プーリ半体210Rとカムプレート215との間にあって共に回転する前記ドライウェイトボール216が、遠心力により遠心方向に移動し、可動側プーリ半体210Rはドライウェイトボール216に押圧されて左方に移動して固定側プーリ半体210Lに接近する。その結果、両プーリ半体210L、210R間に挟まれたVベルト212は遠心方向に移動し、その巻き掛け径が大きくなる。
【0020】
車両の後部には前記ベルト駆動プーリ210に対応する被動プーリ(図示せず)が設けられ、Vベルト212はこの被動プーリに巻き掛けられている。このベルト伝達機構により、エンジンEの動力は自動調整されて遠心クラッチに伝えられ、前記減速機構9等を介して後輪RWを駆動する。
【0021】
右クランクケース202R内には、スタータモータとACジェネレータとを組み合わせたスタータ兼ジェネレータ(ACGスタータ)1が配設されている。ACGスタータ1では、クランク軸201の先端テーパ部にアウターロータ60がネジ253により固定されている。
【0022】
アウタロータ60の内周側に配設されるステータ50はボルト279によってクランクケース202に固定される。アウタロータ60にはボルト246によって固定されたファン280が設けられる。ファン280に隣接してラジエータ282が設けられ、ラジエータ282はファンカバー281によって覆われる。
【0023】
図3に拡大して示したように、ステータ50の内周にはセンサケース28が嵌め込められている。このセンサケース28内には、アウタロータ60のボス60aの外周に沿って等間隔でロータ角度センサ(磁極センサ)29およびパルサセンサ(点火パルサ)30が設けられている。ロータ角度センサ29は、ACGスタータ1のステータコイルに対する通電制御を行うためのものであり、ACGスタータ1のU相、V相、W相のそれぞれに対応して1つずつ設けられる。点火パルサ30はエンジンの点火制御のためのものであり、1つだけ設けられる。ロータ角度センサ29および点火パルサ30は、いずれもホールICまたは磁気抵抗(MR)素子で構成することができる。
【0024】
ロータ角度センサ29および点火パルサ30のリード線は基板31に接続され、さらに基板31にはワイヤハーネス32が結合される。アウタロータ60のボス60aの外周には、ロータ角度センサ29および点火パルサ30のそれぞれに磁気作用を及ぼすよう2段着磁されたマグネットリング33が嵌め込まれる。
【0025】
ロータ角度センサ29に対応するマグネットリング33の一方の着磁帯には、ステータ50の磁極に対応して、円周方向に30°幅間隔で交互に配列されたN極とS極が形成され、点火パルサ30に対応するマグネットリング33の他方の着磁帯には、円周方向の1か所に15°ないし40°の範囲で着磁部が形成される。
【0026】
前記ACGスタータ1は、エンジン始動時にはスタータモータ(同期モータ)として機能し、バッテリから供給される電流で駆動されてクランク軸201を回動させてエンジンを始動させる。エンジン始動後は同期発電機として機能し、発電した電流でバッテリを充電し、かつ各電装部に電流を供給する。
【0027】
図2に戻り、クランク軸201上には、前記ACGスタータ1と軸受け209との間にスプロケット231が固定されており、このスプロケット231にはクランク軸201からカムシャフト(図示せず)を駆動するためのチェーンが巻き掛けられている。なお、前記スプロケット231は、潤滑オイルを循環させるポンプに動力を伝達するためのギヤ232と一体的に形成されている。
【0028】
図4は、ACGスタータ1を含む電装系統のブロック図である。ECU3は、ACGスタータ1の発電機能が発生する三相交流を全波整流する3相全波整流ブリッジ回路300と、全波整流ブリッジ回路300の出力を予定のレギュレート電圧(レギュレータ作動電圧:例えば、14.5V)に制限するレギュレータ100とを含む。
【0029】
さらに、本実施形態のECU3は、エンジン始動時に過剰なクランキングを防止しながら確実なエンジン始動を可能にする始動制御部500と、エンジン回転数が予定の低回転域であるとき発電量を増加させる発電制御部400と、エンジン停止直後にクランク軸を所定の位置まで逆転させて次のエンジン始動性を向上させるスイングバック制御部700とを有する。
【0030】
ECU3には、点火コイル21が接続され、点火コイル21の二次側には点火プラグ22が接続される。また、ECU3にはスロットルセンサ23、フューエルセンサ24、シートスイッチ25、アイドルスイッチ26、冷却水温センサ27、前記ロータ角度センサ29および点火パルサ30が接続され、各部から検出信号がECU3に入力される。
【0031】
さらに、ECU3には、スタータリレー34、スタータスイッチ35、ストップスイッチ36,37、スタンバイインジケータ38、フューエルインジケータ39、スピードセンサ40、オートバイスタ41、およびヘッドライト42が接続される。ヘッドライト42には、ディマースイッチ43が設けられる。
【0032】
上記の各部にはメインヒュ−ズ44およびメインスイッチ45を介してバッテリ2から電流が供給される。なお、バッテリ2は、スタータリレー34によってECU3に直接接続される一方、メインスイッチ45を介さず、メインヒューズ44だけを介してECU3に接続される回路を有する。
【0033】
次いで、上記したECU3の始動制御部500、発電制御部400およびスイングバック制御部700の動作を、図5の機能ブロック図を参照して説明する。
【0034】
3相全波整流ブリッジ回路300は、直列接続された2つのFETの3組を並列接続して構成され、ドライバ80の出力に基づいて制御される。
【0035】
始動制御部500において、エンジン回転数判別部52は、点火パルサ30の検出信号や発電電圧の周波数信号などに基づいてエンジン回転数を判別する。エンジン始動判定部51は、前記スタータスイッチ35の状態、スロットル開度およびエンジン回転数等に基づいて、ACGスタータ1のスタータモータとしての機能を制御する。
【0036】
以下、図6のフローチャートおよび図7のタイミングチャートを参照して、前記始動制御部500の動作を説明する。なお、フローチャート中で用いられる各基準値、タイマおよびフラグの定義は以下の通りである。
(1)始動不良回転数Nref1
ACGスタータ1に通電した際に、ACGスタータ1やエンジンに異常がなければエンジン回転数が当然に到達すべき回転数である。
(2)再始動回転数Nref2
一時停止させたACGスタータ1を再始動させるエンジン回転数である。
(3)始動停止回転数Nref3
ACGスタータ1への通電を一時停止させるエンジン回転数である。
(4)完爆回転数Nref4
エンジンが完爆したときに達するエンジン回転数である。
(5)始動完了フラグFrun
エンジンの完爆状態が所定時間継続し、もはやACGスタータ1によるクランキングが不要となった時、すなわちエンジン始動が完了したときにセットされる。
(6)始動中止フラグFstop
エンジン回転数が始動不良回転数Nref1に達しない状態が所定時間継続したときにセットされる。
(7)一時停止中フラグFoff
エンジン回転数が始動停止回転数Nref3に達してスターターモータへの通電が一時的に停止されている期間だけセットされる。
(8)第1タイマTm1
エンジン回転数が始動不良回転数Nref1に達しない継続時間を計時する。
(9)第2タイマTm2
エンジン回転数が完爆回転数Nref4を超えている継続時間を計時する。
(10)始動中止基準値Tstop
タイマTm1のカウント値に基づいてエンジン始動不良を判定するための基準値であり、タイマTm1のカウント値が始動中止基準値Tstopに達すると、始動中止フラグFstopがセットされる。
(11)始動完了基準値Trun
タイマTm2のカウント値に基づいてエンジンが完全に始動されたことを判定するための基準値であり、タイマTm2のカウント値が始動完了基準値Trunに達すると始動完了フラグFrunがセットされる。
【0037】
本実施形態のエンジン始動制御処理は、前記エンジン始動判定部51において、所定の周期で割り込み的に繰り返し実行される。
【0038】
図6のステップS10において、スタータスイッチ35のオン操作あるいは所定の発進操作が検知されると、ステップS11では、前回のステップS10においてもスタータスイッチ35のオン状態等が検知されていたか否かが判別される。前回は検知されていなければ、ステップS12においてイニシャル処理が実行される。
【0039】
ステップS12では、ACGスタータ1への通電を一時的に停止させるときにセットされる一時停止中フラグFoffと、ACGスタータ1がエンジンを十分にクランキングできないためにエンジン始動を強制的に中止させるときにセットされる始動中止フラグFstopと、ACGスタータ1がエンジンを十分にクランキングできない継続時間をカウントする第1タイマTm1と、エンジン回転数Neが完爆回転数Nref4を上回っている継続時間をカウントする第2タイマTm2とがリセットされる。
【0040】
ステップS13では、前記一時停止中フラグFoff が参照され、最初はリセット状態なのでステップS14へ進む。ステップS14では、エンジン始動が完了したときにセットされる始動完了フラグFrunが参照され、最初はリセット状態なのでステップS15へ進む。ステップS15では、ACGスタータ1に駆動電流が供給されてエンジンがACGスタータ1によりクランキングされる(図7の時刻t0)。
【0041】
ステップS16では、エンジン回転数Neが始動不良回転数Nref1と比較される。図7の時刻t1のように、エンジン回転数Neが始動不良回転数Nref1 を下回っていると、ステップS17において、前記第1タイマTm1がインクリメントされる。ステップS18では、前記第1タイマTm1のカウント値が始動中止基準値Tstop と比較され、最初はカウント値が基準値Tstop を下回るので、今回のサイクルがそのまま終了する。
【0042】
次のサイクル以降では、前記ステップS11からステップS12をスキップしてステップS13、S14、S15、S16と進み、ステップS16において、エンジン回転数Neが始動不良回転数Nref1 を上回っていると判定されるまでは、前記と同様にステップS17へ進み、前記第1タイマTm1がインクリメントされ続ける。
【0043】
その後、図7のケース1のように、時刻t6までエンジン回転数Neが始動不良回転数Nref1を下回り続け、前記ステップS18において、第1タイマTm1のカウント値が始動中止基準値Tstop を超えたと判定されると、ステップS19において、前記始動中止フラグFstop がセットされる。従って、次のサイクル以降では、当該処理はステップS13からステップS20へ進み、ACGスタータ1がオフにされるので、改めてスタータスイッチ35がオン操作されるか、あるいは所定の発進操作がなされるまでクランキング動作は中止される。
【0044】
一方、前記ステップS18において第1タイマTm1のカウント値が始動中止基準値Tstop を超えたと判定される前に、時刻t2においてエンジン回転数Neが始動不良回転数Nref1 を上回り、これがステップS16で検知されると、当該処理はステップS21へ進む。ステップS21では、前記タイマTm1がリセットされ、かつ前記始動中止フラグFstopがリセットされる。
【0045】
ステップS22では、エンジン回転数Neが再始動回転数Nref2 と比較され、たとえば時刻t3のように、エンジン回転数Neが再始動回転数Nref2 を下回っていると、ステップS23において一時停止中フラグFoff が参照される。ここでは、一時停止中フラグFoff がリセット状態なので、後述するステップS25、S27を経てステップS16へ戻る。
【0046】
その後、時刻t4においてエンジン回転数Neが再始動回転数Nref2 に達し、これがステップS22で検知されると、ステップS25では、エンジン回転数Neが始動停止回転数Nref3 と比較される。エンジン回転数Neが始動停止回転数Nref3を下回っている限りは、ステップS27を経てステップS16へ戻る。
【0047】
その後、時刻t7において、エンジン回転数Neが始動停止回転数Nref3に達し、これがステップS25において検知されると、ステップS26では、ACGスタータ1がオフにされ、かつ一時停止中フラグFoff がセットされる。ステップS27では、エンジン回転数Neと完爆回転数Nref4 とが比較されるが、最初はエンジン回転数Neが完爆回転数Nref4 を下回るのでステップS16へ戻る。
【0048】
その後は、上記したステップS16以降の処理が繰り返されるが、エンジンが完全に始動されていないと、時刻t7においてACGスタータ1を停止させた直後からエンジン回転数Neが徐々に低下する(ケース2)。そして、時刻t8においてエンジン回転数Neが再始動回転数Nref2まで低下し、これがステップS22において検知されると、ステップS23において、一時停止中フラグFoff が参照される。
今回は前記ステップS26において一時停止中フラグFoff が既にセットされているので、ステップS24へ進む。ステップS24では、ACGスタータ1が再始動され、一時停止中フラグFoff がリセットされる。従って、エンジン回転数Neは、時刻t8から再び上昇に転じる。
【0049】
一方、エンジンが完爆状態となり(ケース3)、エンジン回転数Neが時刻t9ないしは時刻t10において完爆回転数Nref4 に達し、これがステップS27において検知されると、ステップS28では、第2タイマTm2がインクリメントされる。ステップS29では、第2タイマTm2 の カウント値が始動完了基準値Trunと比較され、カウント値が始動完了基準値Trun に達すると、ステップS30において始動完了フラグFrun がセットされ、当該エンジン始動制御が終了する。
本実施形態によれば、スタータモータとしてのACGスタータによるクランキング時にエンジン回転数が所定の回転数(Nref3)まで上昇すると、クランキングを中断してエンジン回転数を監視し、その後、エンジン回転数が所定の回転数(Nref2)まで低下すると、ACGスタータを再始動させて再びクランキングさせるので、過剰なクランキングを防止しながら、エンジンを確実に始動できるようになる。
【0050】
図5に戻り、発電制御部400は、通常に発電量(電圧)を制御する機能に加え、前記ACGスタータ1の各相のステータコイルに対してバッテリ2から遅角通電して発電量を増加させる(以下、「ACG 通電制御」という)機能を有する。
【0051】
ここで、遅角通電とは、前記ロータ角度センサ29で検出される前記着磁帯33の磁極の変化時の検出信号から予定の電気角相当分を遅延させてステータコイルに通電することをいう。但し、低回転域で前記レギュレータ100が作動することによって生じるエンジン負荷の急変に起因するエンジン回転の不安定化を防止するため、全波整流器ブリッジ回路300の出力電圧(バッテリ電圧)が、レギュレート電圧以下の予定電圧範囲内に収まるよう制御される。
【0052】
発電制御部400において、エンジン回転数判別部48は、例えば、点火パルサ30の検出信号に基づいてエンジン回転数を検出し、このエンジン回転数が予定の発電制御領域にあれば遅角指令をドライバ80に供給する。遅角指令を受信したドライバ80は、遅角量設定部49から予め設定されている通電遅角量を読み出して遅角通電させる。通電デューティ比はデューティ比設定部47からドライバ80へ供給される。
【0053】
ドライバ80は、ロータ角度センサ29による磁極検出信号、すなわちアウタロータ60の磁極に対応して形成されているマグネットリング33の着磁帯をセンサ29が検出するたびにオンに立ち上がる信号を検出する。そして、その信号の立上がりから通電遅角量相当分を遅角させて、全波整流ブリッジ回路300の各FETへPWM制御信号を出力する。
【0054】
バッテリ電圧判別部46は、バッテリ電圧Vb を、電圧制御範囲を規定する制御電圧最大値VMax および制御電圧最小値VMin と比較し、その比較結果に基づいて、デューティ比設定部47に設定される通電デューティを増減し、バッテリ電圧Vb を前記制御範囲に収める。すなわち、バッテリ電圧Vb が制御電圧最大値VMax に達したら通電デューティを予定の微小値(例えば1%)だけ低減させ、バッテリ電圧Vb が制御電圧最小値VMin に下がったら通電デューティを同微小値だけ増大させる。
【0055】
図8は、上記した発電制御部400の動作を示したフローチャートであり、前記始動制御部500によるエンジン始動制御の終了後に起動される。
【0056】
ステップS41では、エンジン回転数が発電制御領域に存在しているか否かが判断される。発電制御領域は、例えば1000rpm以上3500rpm以下に設定される。エンジン回転数が発電制御領域に存在していれば、ステップS42に進み、エンジン回転数が発電制御領域に存在していることを示すフラグFACG がセットされている(=1)か否かが判別される。フラグFACG がセットされていなければ、ステップS43に進んでフラグFACG がセットされる。ステップS44では、通電遅角量acgaglに予定値ACGAGLがセットされる。予定値ACGAGLは、予め適当に設定しておくことができるが、本実施形態では、例えば、電気角60°である。
【0057】
続くステップS45では、通電デューティacdutyに初期値ACDUTYがセットされる。前記初期値ACDUTYも予め適当に設定しておくことができるが、本実施形態では、例えば40%である。ステップS43〜S45が終わったならばステップS47に進む。前記ステップS42が肯定ならばステップS43〜S45はスキップしてステップS47に進む。また、エンジン回転数が前記発電制御領域に存在しないときは、ステップS46でフラグFACG をリセット(=0)した後、ステップS47に進む。
【0058】
ステップS47では、フラグFACG がセットされているか否かが判別される。フラグFACG がセットされていれば、ステップS48でバッテリ電圧Vbが制御電圧最大値VMax 以上か否かが判断される。制御電圧最大値VMax は、レギュレート電圧より低い値、例えば13.5ボルトに設定される。バッテリ電圧Vb が制御電圧最大値VMax 以上でないときは、ステップS49に進んでバッテリ電圧Vb が制御電圧最小値VMin 以下か否かが判断される。制御電圧最小値VMin は、例えば13.0ボルトに設定される。
【0059】
ステップS49でバッテリ電圧Vb が制御電圧最小値VMin 以下でないときは、レギュレータのレギュレート電圧よりも低い値に設定されたACG 通電電圧範囲に入っていると判断され、ステップS50に進んで、上記通電遅角量acgaglと通電デューティacdutyとに従ってACG 通電制御を行う。
【0060】
ステップS48でバッテリ電圧Vb が制御電圧最大値VMax 以上であると判断されたときは、ステップS51に進んで通電デューティacdutyを微小値DDUTY だけ減じる。微小値DDUTY は、例えば1%である。また、ステップS49でバッテリ電圧Vb が制御電圧最小値VMin 以下であると判断されると、ステップS52に進んで通電デューティacdutyを微小値DDUTYだけ増す。ステップS51,S52の処理後はステップS50に進む。
【0061】
なお、通電デューティacdutyを増大させる時と低減させるときの前記微小値DDUTY は必ずしも同一でなくてもよいし、制御電圧最大値VMax または制御電圧最小値VMin と現在値との差に比例して微小値DDUTYを変化させてもよい。
【0062】
一方、ステップS47でフラグFACG がセットされていなければ、発電制御領域でないのでステップS53に進んでACG 通電制御を停止する。
【0063】
図9は、ACG 通電制御時にステータコイルの各相に流れる電流(相電流)とロータ角度センサ29の出力とのタイミングを示す図である。遅角通電制御が行われない、通常の場合にはロータ角度センサ29の検出出力の正負(NS)の変化に応答してステータコイルのU,V,W各相に電流が供給される。一方、遅角通電制御を行った場合には、ロータ角度センサ29の検出出力の正負(NS)の変化時から予定の遅角量d(=60°)だけ遅れてステータコイルのU,V,W各相に電流が供給される。
【0064】
図9において、デューティチョッピングによる通電角Tは180°であるが、デューティ比設定部47からドライバ80へ供給される通電デューティによって180°以内で決定することができる。
【0065】
図10はエンジン回転数NeつまりACGスタータ1の回転数をパラメータとして設定した通電デューティのテーブルである。エンジン回転数を検出し、図8を参照してエンジン回転数に応じた通電デューティを決定する。
【0066】
このように、本実施形態の発電制御によれば、低回転域で通常の電圧レギュレータを作動させずに安定的に発電量の増大を図ることができる。したがって、アイドル運転時などにエンジン負荷の変動を少なくしてエンジン回転の変動を極力小さくし、アイドル運転を安定にすることができる。
【0067】
図5に戻り、スイングバック制御部700は、エンジンを始動する際のクランキングトルクを低減させてエンジンの始動性を向上させるために、エンジン停止直後にクランク軸を逆回転させて所定の位置まで戻す。
【0068】
ステージ判定部73は、ロータ角度センサ29の出力信号に基づいてクランク軸201の1回転をステージ#0〜#35の36ステージに分割し、点火パルサ30が発生するパルス信号の検知タイミングを基準ステージ(ステージ#0)として現在のステージを判定する。
【0069】
ステージ通過時間検知部74は、前記ステージ判定部73が新たなステージを判定してから次のステージを判定するまでの時間に基づいて当該ステージの通過時間Δtn を検知する。逆転制御部75は、前記ステージ判定部73による判定結果および前記ステージ通過時間検知部74により検知された通過時間Δtn とに基づいて逆転駆動指令を発生する。
【0070】
デューティー比設定部72は、前記ステージ判定部73による判定結果に基づいて、全波整流ブリッジ回路300の各パワーFETに供給するゲート電圧のデューティー比を動的に制御する。ドライバ80は、前記設定されたデューティー比の駆動パルスを全波整流ブリッジ回路300の各パワーFETへ供給する。
【0071】
次いで、上記したスイングバック制御部700の動作を、図11のフローチャートおよび図12の動作説明図を参照して説明する。図12(a) は、クランク軸201を逆転するのに要するクランキングトルク(逆転負荷)とクランク角度との関係を示しており、クランキングトルクは圧縮上死点に至る直前(逆転時)で急激に上昇する。同図(b) は、クランク角度とステージとの関係を示し、同図(c) は、逆転時におけるクランク軸の角速度の変化を示している。
【0072】
ステップS61でエンジン停止が検知されると、ステップS62、S63では、ステージ判定部73において既に判定されている現在のステージが参照される。ここで、現在ステージがステージ#0〜#11のいずれかであればステップS64へ進み、ステージ#12〜#32のいずれかであればステップS65へ進み、それ以外(すなわち、ステージ#33〜#35のいずれか)であればステップS66へ進む。ステップS64,S66では、デューティー比設定部72において、駆動パルスのデューティー比が70%に設定され、ステップS65では80%に設定される。
【0073】
このようなデューティー比の動的制御は、後に詳述するように、逆転時にクランク軸201の角速度を、クランキングトルクが増大する圧縮上死点相当角の手前(逆転時)で十分に低下させると共に、それ以外の角度では素早い逆転駆動を可能にするために行われる。
【0074】
ステップS67では、ドライバ80が前記設定されたデューティー比で全波整流ブリッジ回路300の各パワーFETを制御して逆転通電を開始する。ステップS68では、通過したステージ#nの通電時間Δtn が前記ステージ通過時間検知部74により計測される。
【0075】
ステップS69では、逆転制御部75において、クランク軸201がステージ#0すなわち上死点近傍を通過したか否かが判定される。ステージ#0を通過していなければ、ステップS71において、直前に通過した前記ステージ#nの通過時間Δtnと、その前に通過したステージ#(n−1)の通過時間Δtn-1との比[Δtn/Δtn-1]が基準値Rref (本実施形態では、4/3)と比較される。前記通過時間比[Δtn/Δtn-1]が基準値Rref を上回っていなければ、前記ステップS62へ戻って逆転駆動が係属され、これと平行して上記した各処理が繰り返される。
【0076】
ここで、エンジン停止位置すなわち逆転開始位置が、図12(c) に曲線Aで示したように、前回および次回の圧縮上死点の中間位置よりも次回の圧縮上死点に近い側、換言すれば、排気上死点を通過(正転時)してから圧縮上死点に至る過程であると、ACGスタータ1が70%のデューティー比で逆転駆動されているにもかかわらず、クランク軸はステージ#0(排気上死点)を通過できる。したがって、これがステップS69において検知されてステップS70へ進み、クランク軸201がステージ#32に到達したか否かが判定される。クランク軸201がステージ#32に到達したと判定されると、ステップS72において、前記逆転通電が停止されるので、その後、クランク軸は慣性力でさらに逆回転した後に停止する。
【0077】
一方、逆転開始位置が、図12(c) に曲線Bで示したように、前回および次回の圧縮上死点の中間位置よりも前回の圧縮上死点に近い側、換言すれば、圧縮上死点を通過(正転時)してから排気上死点に至る過程であると、ACGスタータ1が70%のデューティー比で逆転駆動されているので、逆転負荷が、図12(a) に示したように、ステージ#0に至る手前(逆転時)で上昇すると、クランク軸201の角速度が急激に低下する。そして、ステップS71において、前記通過時間比[Δtn/Δtn-1]が基準値の4/3以上と判定されると、ステップS72において前記逆転通電が停止され、クランク軸の逆転は、通電の停止とほぼ同時に停止する。
【0078】
このように、本実施形態のスイングバック制御では、エンジン停止後の逆転駆動時に、クランク軸が上死点相当角を通過したか否か、およびクランク軸の角速度が低下したか否かを監視し、クランク軸が逆転時に上死点を通過すると、その直後に逆転通電を終了し、クランク軸の角速度が逆転負荷の増大により低下した場合も逆転通電を終了する。従って、逆転開始位置にかかわらず、クランク軸を前回の圧縮上死点の手前(逆転時)であって圧縮反力の低い位置まで戻すことができる。
【0079】
さらに、本実施形態のスイングバック制御では、クランク軸201の角速度を、ACGスタータのロータ角度(すなわち、ステージ)を検知するロータ角度センサ29の出力に基づいて検知するようにしたので、クランク軸201の角度を検知するためのセンサを別途に設ける必要がない。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、エンジンが完爆状態に達した可能性の高いエンジン回転数が検知されるとスタータモータが自動的に停止されるので、エンジン完爆後の不要なクランキングが防止される。また、エンジン回転数に基づく完爆判定が誤りであったためにエンジン回転数がその後に低下すると、スタータモータが直ちに再始動される。従って、スタータモータによるエンジンのクランキング回転数とエンジンのアイドリング回転数とが同程度であるためにエンジン回転数に基づく完爆判定が難しい場合でも、確実なエンジン始動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図2】 図1のスイングユニットのクランク軸に沿った断面図である。
【図3】 図2の部分拡大図である。
【図4】 スタータ兼ジェネレータの制御系のブロック図である。
【図5】 図4のECUの主要部の構成を示したブロック図である。
【図6】 エンジン始動制御のフローチャートである。
【図7】 エンジン始動制御のタイミングチャートである。
【図8】 出力制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図9】 ACG通電制御時のステータコイルの相電流とロータ角度センサの出力とのタイミングを示す図である。
【図10】 エンジン回転数をパラメータとする通電デューティのテーブルである。
【図11】 スイングバック制御のフローチャートである。
【図12】 スイングバック制御の動作説明図である。
【符号の説明】
1…スタータ兼発電機(ACGスタータ)、2…バッテリ、3…ECU、4…全波整流器、5…レギュレータ、29…ロータ角度センサ、30…点火パルサ、50…ステータ、60…アウタロータ、62…マグネット、201…クランク軸
Claims (4)
- エンジンをスタータモータによりクランキングして始動し、エンジン始動が完了すると前記スタータモータへの通電を自動的に停止するエンジン始動制御装置において、
エンジン回転数が第1基準回転数に達するまでスタータモータへの通電を継続する手段と、
エンジン回転数が前記第1基準回転数に達するとスタータモータへの通電を停止する手段と、
エンジン回転数が前記第1基準回転数よりも低い第2基準回転数まで低下するとスタータモータへの通電を再開する手段とを含み、
エンジン回転数が、前記第1基準回転数よりも高い第3基準回転数を所定時間以上継続して上回ると、エンジン始動を完了することを特徴とするエンジン始動制御装置。 - 前記エンジンのアイドリング回転数が前記スタータモータによるエンジンのクランキング回転数と略同等であることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
- 前記エンジン回転数が、前記第2基準回転数よりも低い第4基準回転数を所定時間以上下回ると、前記スタータモータへの通電を停止することを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動制御装置。
- 前記エンジン始動の完了後に、エンジンの低回転域において通電タイミングを基準タイミングよりも遅角させる通電制御を実行することを特徴とする請求項3に記載のエンジン始動制御装置。
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