JP3973297B2 - 共重合ポリエステルおよびそれを用いたフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は共重合ポリエステルおよびそれを用いたフィルムに関し、さらに詳しくは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、融点が205〜253℃である共重合ポリエステルであって、該ポリエステル中の二官能性カルボン酸成分に対し0.1〜45mmol%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を共重合成分として含有する、製膜性が向上し、フィルム生産性に優れた共重合ポリエステルおよびそれを用いたフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表される芳香族ポリエステルフィルムは、優れた物理的、化学的性質を有することから磁気テープ、電気絶縁、コンデンサー、写真、包装等の多岐にわたる用途に用いられている。
【0003】
ポリエステルフィルムは通常、押出口金より溶融押出されるフィルム状ポリエステル溶融物を回転冷却ドラムの表面で急冷した後、縦、横方向に延伸して製造される。この場合、フィルムの表面欠点をなくし厚みの均一性を高めるに、押出口金と回転冷却ドラムの表面の近傍にワイヤー状の金属電極(以下、静電ワイヤーという)を設けて、溶融押出されたフィルム状ポリエステルフィルム状溶融物の表面(非ドラム面)に静電荷を析出させる方法(以下、静電キャスト法という)が知られ、広く用いられている。
【0004】
フィルムの製膜において生産性を高め製造コストを低減することは、フィルム品質の向上と共に重要な課題であるが、そのためには前記回転冷却ドラムの周速を高め、製膜速度を向上させることが最も効果的な方法である。そこで、前記静電キャスト法において回転冷却ドラムの周速を速めて行くと、フィルム状物表面への単位面積当りの静電荷量が少なくなり、回転冷却ドラムとの密着性が低下しフィルム表面欠点を生じさせたり、フィルム厚みが不均一になったりするなどの問題が生じる。
【0005】
この密着性を高めるべく前記電極に印加する電圧を高めて溶融ポリエステル上に析出させる静電荷量を多くすることもできるが、印加電圧を高めすぎると電極と回転冷却ドラムとの間にアーク放電が生じ、冷却ドラム面上のフィルム状物が破壊され、冷却ドラム表面上にも損傷を与えることがある。従って、電極に印可する電圧はある程度以上に高めることは実質的に不可能である。
【0006】
このような静電キャスト法の限界を克服し、製膜速度を向上させて高効率でポリエステルフィルムを製造する方法として、溶融ポリエステルの比抵抗を下げる方法が種々提案されている。
【0007】
例えば、特公平7−5765公報では、二官能性カルボン酸成分に対し0.1〜45mmol%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を重合体鎖中に含有し、且つ溶融フィルムの交流体積抵抗率の値が6.5×108Ωcm以下の芳香族ポリエステルを使用することが提案されている。
【0008】
しかしなら、かかる製膜方法を実施した場合には、押出口金から押出されたフィルム状溶融ポリエステルから発生したと考えられる昇華物が静電ワイヤーに汚れとして付着し、電流低下や放電スパークを生じて密着性が減少するため、短時間で静電ワイヤーの交換を余儀なくされるばかりか、押出口金面にも昇華物が付着しフィルム表面に筋状のムラが形成されるため押出口金の清掃も頻繁に行わなければならないなど、生産性に極めて劣るという問題が発生することが判明した。また、包装用途等のフィルムに上記ポリエステルを使用する場合には、衛生性の観点から、ポリエステル中に含有されるスルホン酸4級ホスホニウム塩が、ポリエステルフィルムから多量に溶出しないことが必要であるが、これについては一切言及されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、ポリエステルフィルムを製造する際、回転冷却ドラム上への密着性に優れ、静電ワイヤー汚れ、押出口金への昇華物付着を抑制し生産性に優れ、且つ衛生性に優れたポリエステルを得るべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、融点が205〜253℃の共重合ポリエステルであって、該ポリエステル中の二官能性カルボン酸成分に対し0.1〜45mmol%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を共重合成分として含有することを特徴とする共重合ポリエステルである。
【0011】
本発明において共重合ポリエステルは、ポリマーを構成する二官能性カルボン酸成分の0.1〜45mmol%がエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩によって占められている必要がある。該スルホン酸4級ホスホニウム塩の量が0.1mmol%未満の場合には製膜速度を向上させることができず、他方45mmol%を超えるとフィルムの表面欠点が多くなり、好ましくない。
【0012】
このエステル形成性官能基を有する4級ホスホニウム塩としては、例えば下記式で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0013】
【化1】
【0014】
ここで、Aは炭素数6〜18の芳香環を含む基であり、Y1およびY2は同一もしくは異なり、水素原子またはエステル形成性官能基であり(但し、Y1およびY2が同時に水素原子であることはない)、そしてnは1または2であり、R1、R2、R3およびR4は同一もしくは異なり、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基または炭素数6〜12のアリール基である。
【0015】
上記式において、Aは炭素数6〜18の芳香環を含む基であり、例えばベンゼン骨格、ナフタレン骨格あるいはビフェニル骨格を含む基を好ましい例として挙げることができる。かかる芳香環はY1、Y2およびスルホン酸4級ホスホニウム塩基のほかに例えば炭素数1〜12のアルキル基等で置換されていても良い。
【0016】
また、Y1およびY2は水素原子またはエステル形成性官能基であり、例えば−COOH、ーCOOR’、−OCOR’、−(CH2)nOH、−(OCH2)nOH等を好ましく挙げることができる。これらの基中、R’は炭素数1〜4の低級アルキル基またはフェニル基であり、nは1〜10の整数である。R’としてはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル等を好ましい例として挙げることができる。また、スルホン酸4級ホスホニウム塩基の部分を構成する基R1、R2、R3およびR4は、同一もしくは互いに異なり、炭素数1〜18のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、ステアリル等を挙げることができる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル等を挙げることができる。
【0017】
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩の好ましい具体例としては、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5-ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸フェニルトリブチルホスホニウム塩、3,5-ジ(βーヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5-ジ(βーヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3-ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、4-ジ(β-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ビスフェノールA-3,3ジ(スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩)、2,6-ジカルボキシナフタレン-4-スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等を挙げる事ができる。上記スルホン酸4級ホスホニウム塩は一種のみを単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0018】
本発明における共重合ポリエステルはエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、共重合成分としては酸成分でもアルコール成分でも良い。共重合酸成分としては例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸などを好ましく挙げることができる。一方、共重合アルコール成分としては例えば、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のポリアルキレングリコールなどを好ましく挙げることができる。これらは、単独または2種以上を使用することができる。
【0019】
共重合成分の割合は、結果としてポリマー融点が205〜253℃の範囲にあればよい。ポリマー融点が205℃未満の場合には、共重合によるポリマー結晶性の低下により、フィルム製膜前の乾燥工程でポリマーチップ間で融着を起こしフィルムの生産性が大きく低下してしまう。一方、ポリマー融点が253℃を超えると、静電ワイヤーの汚れおよび押出し口金面への昇華物付着を抑制することができない。かかる共重合ポリエステルは実質的に線状ポリマーであって、フィルム形成性、特に溶融状態によるフィルム形成性を有する。
【0020】
また、前記共重合ポリエステルには実質的に線状である範囲の量であり、且つ本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトール等を共重合させることができる。
【0021】
さらに、本発明における共重合ポリエステルには表面平坦性、乾熱劣化性を損なわない程度であれば、例えば顔料、染料、酸化防止剤、光安定剤、遮光剤の如き添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0022】
本発明において、前記スルホン酸4級ホスホニウム塩は全二官能性カルボン酸成分の0.1〜45mmol%を占め、共重合ポリエステルの溶融時の交流体積抵抗率は2.0×108Ωcm以下を示し、比較的速く回転する冷却ドラム上にも密着するに十分な電荷量を付与でき、本発明の目的のひとつである製膜速度の向上を達成することができる。
【0023】
本発明における共重合ポリエステルは公知の方法によって製造できる。例えば、便宜のためにイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートを例に挙げて説明すれば、通常、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルおよびイソフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸およびイソフタル酸とエチレンオキサイドとを付加反応させるなどしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合させる第二段階の反応によって製造される。この際、触媒等の添加剤は任意に使用することができる。上記スルホン酸4級ホスホニウム塩をかかる共重合ポリエステルに含有させるには、前述した共重合ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階で、反応系中に添加してもよいし、前述の共重合ポリエステルの合成が完了し、これとスルホン酸4級ホスホニウム塩を例えばベント付き二軸混練押出し機にフィードして含有させてもよい。後者の場合、本発明者の知見ではスルホン酸4級ホスホニウム塩の反応は十分に進ませることが出来、簡便で十分な効果が発現するので好ましい。
【0024】
本発明の共重合ポリエステルは50%エタノール溶液中に250°F、2時間浸漬した後に検出されるスルホン酸4級ホスホニウム塩が1ppm以下であることが好ましい。検出されるスルホン酸4級ホスホニウム塩が1ppmを超えると、フィルムを食品包装用途等に用いる際に好ましくない。スルホン酸4級ホスホニウム塩の検出量を1ppm以下にするには、該共重合ポリエステル製造の際に、スルホン酸4級ホスホニウム塩を、共重合ポリエステル樹脂の合成段階あるいは共重合ポリエステル樹脂に添加後、少なくとも3分以上、系内が240℃以上となるような添加時期を選んでスルホン酸4級ホスホニウム塩を添加すればよい。
【0025】
本発明において共重合ポリエステルをフィルムへと成形加工する方法は、例えば該共重合ポリエステルを融点(Tm)ないし(Tm+70)℃の温度で回転冷却ドラム上に押出し急冷して例えば20〜500μの未延伸フィルムとし、ついで該未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(但しTg;ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜5.0倍の倍率で延伸し、続いて上記延伸方向と直角方向に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜5.0倍の倍率で延伸することで二軸延伸フィルムを得ることができる。延伸方法は逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれでもよい。更に得られたフィルムは(Tg+70)〜(Tm)℃の温度で熱固定することができる。熱固定時間は例えば1〜30秒である。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例での各特性値の測定は次の方法による。また、部は重量部を意味する。
【0027】
(1)溶融ポリマーの交流体積抵抗率
測定しようとするポリマー中に一対の電極を挿入した容器を加熱媒体中に浸し、ポリマーを285℃の温度に加熱溶融しこの温度に保つ。ポリマー中に挿入した電極に外部より接続した交流電源から100V−50Hzの電圧を印加する。この時の電流計と電圧計の指示値および電極面積、電極間距離より計算により交流体積抵抗率を求める。
【0028】
(2)静電キャスト性
ポリマーをフィルム状に溶融押出しする口金の近くで、且つ押出したフィルムの上部に設置した電極により、冷却ドラムとの間に6kVの電圧を印加してキャスティングする際、表面欠点を生じず、厚みの均一性を低下する事なく安定に製膜できる最大の冷却ドラムの速度を求める。冷却ドラムの最大速度により以下の如くランク付けして評価する。
ランクA:冷却ドラムの速度が70m/分以上で安定に製膜できる。
ランクB:冷却ドラムの速度が60m/分以上、70m/分未満で安定に製膜できる。
ランクC:冷却ドラムの速度が55m/分以上、60m/分未満で安定に製膜できる。
ランクD:冷却ドラムの速度が55m/分未満でしか安定に製膜できない。
【0029】
(3)静電ワイヤーの汚れ性
上記(2)の静電キャスト性テストにおいてテスト時間を延長し、静電ワイヤーへの汚れに基づく静電ワイヤーの電流値の低下率を調べる。テスト開始時の電流値とテスト終了時の電流値を読み取り、その差をテスト時間で除して単位時間当たりの電流低下率を求める。その値により次の如くランク付けして評価する。
ランクA:電流低下率1%/hr未満
ランクB:電流低下率1%/hr以上5%/hr未満
ランクC:電流低下率5%/hr以上10%/hr未満
ランクD:電流低下率10%/hr以上
ランクAならば実用上特に問題はない。ランクB、Cでは静電ワイヤーの交換頻度が多くなり、生産効率の点からやや不利となる。ランクDでは実用に供することはできない。
【0030】
(4)押出し口金への昇華物付着
押出し口金への昇華物付着が起こると、口金より押出される溶融ポリマーが付着物に接触し、フィルム表面に筋が発生する。この筋の発生の有無を目視観察により判定する方法であって、溶融ポリマーを押出し口金より押出し、8時間経過後に、回転冷却ドラムに密着させて冷却して、実質的に非晶状態のフィルムを得、このフィルムを目視観察する。8時間経過後に筋が認められる場合には、押出し口金に付着した昇華物を除去する必要があり生産性に劣る。尚、溶融ポリマー温度は昇華物付着抑制のため、溶融ポリマーの押出しに支障をきたさない範囲で最も低温となりうる温度に設定する。
【0031】
(5)フィルム表面欠点
共重合ポリエステルの重合から押出し工程で副生する粒子状異物の評価であって、溶融ポリマー押出し、回転冷却ドラムに密着させて冷却して、実質的に非晶状態のフィルムを得、その後、これを縦方向に3.6倍、横方向に3.9倍の延伸を行って、厚さ15μmのフィルムを製造する。このフィルムを位相差顕微鏡を用いて観察し、画像解析装置ルーゼックス500(日本レギュレーター製)で顕微画像内の最大長が10μm以上の粒子数をカウントする。この粒子数が10個/cm2以下の物ものを実用に供する事ができる。尚、溶融ポリマー温度は昇華物付着抑制のため、溶融ポリマーの押出しに支障をきたさない範囲で最も低温となりうる温度に設定する。
【0032】
(6)乾燥工程でのポリマーチップ間での融着
ポリマーを160℃で4時間乾燥後に発生するポリマーチップ間での融着物の最大径を測定し以下の如くランク付けして評価する。
ランクA:融着物の最大径が5mm未満
ランクB:融着物の最大径が5mm以上、10mm未満
ランクC:融着物の最大径が10mm以上20mm未満
ランクD:融着物の最大径が20mm以上
ランクA、Bならば実用上特に問題はない。ランクCではチップが押出し機に供給された際、希に吐出変動を起こすため生産性にやや劣る。ランクDでは実用に供する事はできない。
【0033】
(7)エタノール溶液処理によるスルホン酸4級ホスホニウム塩の溶出量
フィルムの片面の表面積が25inch2になるように採取し、これを50%エタノール溶液中に浸漬し、オートクレーブ内で250°Fで2時間処理し、得られた抽出液をホットプレート上で蒸発乾固し、残留物にメタノールを加えこれを高速液体クロマトグラフ(島津LC−10AD)により測定し、スルホン酸4級ホスホニウム塩の溶出量を定量する。
【0034】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル88部とイソフタル酸ジメチル12部とエチレングリコール70部の混合物に酢酸マンガン・4水塩0.038部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.04部を添加し、さらに平均粒径0.6μmの球状シリカ0.2部を添加し、次いで220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.034部とエチレングリコール0.124部との混合物を40℃に加熱した溶液として添加した。引き続きエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチルをエチレングリコール中で135℃、5時間、1.1〜1.6kg/cm2の加圧下で加熱処理した溶液(リン酸トリメチル換算量で0.049部)を添加した。その後反応生成物を重合容器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.60である共重合ポリエステルを得た。この共重合ポリエステル樹脂組成物の285℃における交流体積抵抗率の値は2.5×107Ω・cmであった。
【0035】
この共重合ポリエステルのペレットを170℃で3時間乾燥後、押出し機ホッパーに供給し、溶融温度280℃で1mmのスリット状ダイを通して200μmに溶融押出しし、線上電極を用いて表面温度20℃の回転冷却ドラム上に密着固化した。この時、冷却ドラムの速度を徐々に高めて、密着不良に起因する表面欠点を生じる事なく、安定に冷却フィルムが製造できる最高のキャスティング速度は100m/分であった。次いでこの未延伸フィルムを75℃にて予熱し、低速、高速のロール間で15mm上方より850℃の表面温度のIRヒーター1本にて加熱し縦方向に3.6倍に延伸し、続いてこの一軸延伸フィルムをステンターに供給し105℃にて横方向に3.9倍に延伸し、これを190℃の温度で3秒間熱固定処理し、厚み14μmの二軸延伸フィルムを得た。このフィルムの特性を表1、2に示す。
【0036】
[実施例2、3、比較例1、2]
3,5ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の添加量を表1に示す如く変更する、あるいは3,5ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加しない以外は、実施例1と同様に行った。この結果を表1、2に示す。
【0037】
[実施例4]
3,5ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩のかわりに、3,5ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウムを使用する以外は、実施例1と同様に行った。この結果を表1、2に示す。
【0038】
[実施例5、6および比較例3、4]
共重合成分として使用するイソフタル酸の量を表1に示す如く変更する事以外は、実施例1と同様に行った。ただし、比較例3の押出し温度は285℃とした。この結果を表1、2に示す。
【0039】
[実施例7]
共重合成分としてアジピン酸を6mol%使用する以外は、実施例1と同様に行った。この結果を表1、2に示す。
【0040】
[実施例8]
実施例1において3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加することなく、共重合ポリエステル樹脂の合成反応を完了させこれをチップ化した。ついで、このチップをベント付き二軸混練押出し機に20kg/hrの割合で供給し、これに対して12mmol%の割合となるように3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を供給した。この際、ベント孔の真空度を1mmHgに設定し、シリンダ温度を285℃にして溶融混練し、共重合ポリエステルを得る以外は、実施例1と同様に行った。この結果を表1、2に示す。
【0041】
[実施例9]
テレフタル酸/イソフタル酸=88/12のビス−β−ヒドロキシエチルエステル100部とテレフタル酸57部とイソフタル酸8部にエチレングリコール29部と3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.031部の混合物を210〜230℃の温度でエステル化反応を行った。反応により生成する水の留出量が13部となった時点で反応を終了とし、反応生成物100部あたり0.027部の三酸化アンチモン、リン酸トリメチルを135℃、5時間加熱処理した溶液(リン酸トリメチル換算量で0.002部)を添加した。その後反応生成物を重合容器に移し、290℃まで昇温し0.2mmHg以下の高真空にて重縮合反応を行って共重合ポリエステルを得た。このポリエステルを用いて実施例1と同様に特性の評価を行った。この結果を表1、2に示す。
【0042】
[実施例10]
テレフタル酸ジメチル(DMT)88部/hr、イソフタル酸ジメチル(DMI)12部/hrおよびエチレングリコール70部/hrを酢酸マンガン0.05mol%/(DMT+DMI)、酢酸亜鉛0.01mol%/(DMT+DMI)の触媒と共に連続式エステル交換反応槽に連続的に供給し、メタノールを留出させながら150〜250℃に加熱してエステル交換反応させた。次いで得られたエステル交換反応生成物に、亜リン酸0.1mol%/(DMT+DMI)、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.01mol%/(DMT+DMI)、さらに重合触媒として三酸化アンチモン0.03mol%/(DMT+DMI)を加えた後、初期重合槽に連続的にフィードし50mmHg、260℃で1時間反応させた。更にこれを溶融状態のまま中間重合槽で5mmHg、280℃で二時間反応させ、次にこれを最終重合槽へ溶融状態のまま連続的にフィードし1mmHg、290℃で10分間反応させ、共重合ポリエステルを得た。この共重合ポリエステルを用いて実施例1と同様に特性の評価を行った。この結果を表1、2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステルフィルムを製造する際、回転冷却ドラム上への密着性に優れ、静電ワイヤー汚れ、押出口金への昇華物付着を抑制し生産性に優れ、且つ衛生性に優れた共重合ポリエステルおよび該共重合ポリエステルからなるフィルムを提供することができる。
Claims (4)
- エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする、融点が205〜253℃の共重合ポリエステルであって、該ポリエステル中の二官能性カルボン酸成分に対し0.1〜45mmol%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウム塩を共重合成分として含有することを特徴とする共重合ポリエステル。
- 50%エタノール溶液中に250°F、2時間浸漬した後に検出されるスルホン酸4級ホスホニウム塩が1ppm以下である請求項1記載の共重合ポリエステル。
- 請求項1または請求項2記載の共重合ポリエステルより製造されたフィルム。
- 静電キャスト法により製膜された請求項3記載のフィルム。
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