JP3949283B2 - シームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板およびシームレス缶の製造方法 - Google Patents
シームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板およびシームレス缶の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板およびシームレス缶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムやスチールを素材とした金属缶・容器は、その形状からスリーピース缶とツーピース缶とに大別される。スリーピース缶は、地蓋、缶胴、天蓋から成るためスリーピース缶と呼ばれている。
一方、ツーピース缶は、地蓋と缶胴とが一体となったもので、それに天蓋とから成るためツーピース缶、又は、缶胴部に接合部がないことから、シームレス缶とも呼ばれている。
【0003】
金属缶の場合、缶内面には耐食性の確保から塗装が施され使用されているが、近年、熱可塑性樹脂フィルムを積層したラミネート缶が開発され、ビールや例えばコーラのような炭酸飲料を充填した飲料缶分野で市場に出回っている。
ラミネート缶は、金属素材に熱可塑性樹脂フィルムを積層させたものから、缶体成形加工を行うものが主であり、特にツーピース缶を得るには高度な成形加工技術を必要とする。
かかる意味においても、ツーピースのラミネート缶に関わる技術は、例えば特開平7−2241号公報、特開平7−195619号公報、特開平8−244750号公報等、数多く提案され、開示されている。
【0004】
ラミネート缶のメリットは、消費者側から見た場合、適用する熱可塑性樹脂フィルムにもよるが、耐内容物性、特に内容物の味、風味と言ったフレーバー性に優れている点が第一に挙げられている。
一方、デメリットとしては、今度は製缶メーカー側からであるが、前述したようにツーピース缶の場合、熱可塑性樹脂フィルム被覆金属板の加工度(又は変形度合)が大きいので、成形時に内面樹脂フィルムに傷が入ったりした場合、缶内面の品質確保ができなくなるため、缶体の品質検査を厳重に行う必要があることと、製品歩留まりが現行の塗装缶に比べて劣るといった点が挙げられる。
【0005】
特に、スチール素材を用いたツーピースラミネート缶の場合、上記の傾向が大きいが、アルミニウム合金を素材としたツーピースラミネート缶でも同様なことが起こる。
こうしたラミネート缶の内面樹脂フィルムの皮膜欠陥は、前述したように缶成形加工時に入るものであり、この欠陥を最小限に抑えることは、品質、製品歩留まりの点から重要な技術課題であることは言うまでもない。
しかし、しごき加工を伴うツーピース缶成形の、特に高加工率の場合の内面の樹脂フィルムに傷その他の欠陥を入れることなく成形する適切手段がないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、こうした実状に鑑みなされたもので、皮膜欠陥のない高耐食性、高品質な熱可塑性樹脂被覆アルミニウムシームレス缶を歩留まりよく提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一は、板厚が0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(Tm)200℃〜260℃、密度1.36未満である熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムで被覆されたラミネート板の樹脂フィルム被覆面に、流動点が5℃以下である潤滑油(A)を重量部で5〜50部と、融点が40℃以上である潤滑油(B)を重量部で95〜50部の混合比で混合されている混合潤滑油を、片面の付着量として30〜200mg/m2塗油したことを特徴とするシームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板に関する。
【0008】
本発明の第二は、板厚が0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(Tm)200℃〜260℃、密度1.36未満であるポリエステル樹脂で被覆されたラミネート板を用いてシームレス缶を製造するに際し、該ラミネート板の樹脂フィルム被覆面に、流動点が5℃以下である潤滑油(A)を重量部で5〜50部と、融点が40℃以上である潤滑油(B)を重量部で95〜50部の混合比で混合されている混合潤滑油を、片面の付着量として30〜200mg/m2塗油した後、該ポリエステル樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲でストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した絞り加工(第1工程)を行い、次いで、第1工程の絞り加工で得たカップを該ポリエステル樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲でストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した再絞り加工(第2工程)を行い、次いで、第2工程で得た再絞りカップの温度を潤滑油(B)の融点以下にし、加工金型の温度を120℃以下に保持してしごき加工(第3工程)を行うことを特徴とするポリエステル樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明におけるアルミニウム板について述べる。
本発明に適用されるアルミニウム板は、特に制限するものではなく、アルミニウム板やその合金板が用いられるが、とくに通常缶容器の製造に用いられる3004系アルミ合金、5052系アルミ合金、5182系アルミ合金等種々のアルミニウム合金が好ましい。アルミニウムの板厚としては、0.20mm〜0.32mmのものが適用される。板厚が0.20mm以下では、炭酸飲料やビール等を充填・密封する内圧缶の場合、耐圧強度が十分でなく缶底部が張り出した状態(バックリング)になる場合があり、好ましくない。一方、0.32mm以上では、缶の耐圧強度は十分に確保されるが、実質的には品質過剰であり、経済的でない。板厚の限定理由は、上述のように缶の耐圧強度から限定したものである。
従って、適用するアルミニウム板の機械的特性、特に耐力強度と関わりがあり、耐力強度が高い場合は板厚の薄手化が可能となる。実際に本発明を実施する際は、板厚は缶全体の強度バランスを考慮し、適宜選択することが望ましい。
【0010】
本発明では、熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムとの密着性を確保する目的で、アルミニウム板表面に表面処理を施したものを使用することが好ましい。
表面処理としては、通常アルミニウム板の絞りしごき缶の成形加工後の表面処理として使用されている、リン酸クロム酸処理や、リン酸ジルコニウム処理が適用されるが、特に、缶壁部の板厚減少度が大きい高加工度の場合は、リン酸またはリン酸ジルコニウムと有機樹脂との有機無機複合型化成処理が有効である。
有機無機複合型化成処理の場合、付着量は皮膜中C量として5〜50mg/m2が良く、5mg/m2以下では被覆性が劣り、防食作用および密着性が共に不十分となり、缶体成形加工後に樹脂フィルムが局部的に剥離する、いわゆるデラミが起こったり局部的な腐食が起こったり、また、デント性も劣り好ましくない。
一方、50mg/m2を超えると、被覆性は良好であるが、加工度が大きい缶体成形加工の場合、皮膜が凝集破壊を起こし密着性が低下し、樹脂フィルムが剥離するといった場合があるので好ましくない。
表面処理皮膜量としては、皮膜C量として10〜40mg/m2が好適である。
【0011】
アルミニウム板の表面処理方法としては、例えば上記の有機無機複合型化成処理の場合、リン酸またはリン酸とフッ化ジルコニウムと水溶性有機樹脂、例えば水溶性フェノール樹脂、水溶性アクリル樹脂等を含む水溶液に、反応性を促進させるためにフッ酸、ポリリン酸を添加した処理液を、アルミニウム板にロール塗布した後、水洗、乾燥し硬化させる方法や、処理液をアルミニウム板にスプレー塗布した後、水洗、乾燥し硬化させる方法等が適宜適用できる。
乾燥硬化方法としては熱風での乾燥、電気炉での乾燥等の方法が適用でき、温度は150℃〜250℃で乾燥時間は10秒〜2分程度である。
【0012】
本発明において、アルミニウム板を被覆する樹脂フィルムとしては熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを用いるが、その理由は、▲1▼耐熱性が良い、▲2▼内容物のフレーバーが確保される、といった、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フィルムにはない、缶用途に適した特性を有しているからである。
【0013】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)のようなホモポリマーや、例えばポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合樹脂であるコポリマーや、またこうしたホモポリマーやコポリマーのブレンド樹脂等が適用される。
【0014】
アルミニウム板の表面を被覆する熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの厚みは、10〜50μm、好ましくは12〜40μmのものを用いる。
缶の内面に当たる面に積層されるフィルム厚みは、缶内面の耐食性の観点から限定されるものであり、10μm以下では缶の成形加工後で充填する内容物にもよるが、十分な耐食性を確保するのは難しい場合がある。
一方、50μmを超えると、ほとんどの内容物に対し耐食性は十分確保されるが、実質的に過剰品質となり、経済的でない。
【0015】
また、本発明を実施する際のフィルム厚みの選定は、後述する缶壁部の薄肉化の加工度との関係があることも選定の際の重要な要素である。即ち、加工度が高い場合は、当然その加工度に応じてフィルムの厚みも薄くなるため、その結果として、缶内面の防食性能は低下する。従って、加工度が高い場合は予め厚手のフィルムを使用することが望ましい。一方、加工度が低い場合はそれに応じて予め薄手のフィルムを使用することが可能となる。
【0016】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムは、融点(Tm)が200℃〜260℃の樹脂フィルムである。
成形加工時には、金属の加工熱が発生し、缶体はかなりの温度となる。特にしごき加工の際に発生する金属の加工熱は、樹脂フィルムの特性を大きく変化させる。この熱による樹脂フィルムの特性変化の一つに樹脂フィルムの軟化がある。樹脂フィルムが軟化すると、しごき加工時に内外面の樹脂フィルムを傷つける原因となる。
即ち、内面側の樹脂フィルムは、パンチに付着してしまいパンチが抜け難くなる、いわゆる離型性不良が起こり、内面の樹脂フィルムを傷つける原因となる。また、離型性不良が甚だしい場合は、缶体の開口部近傍が座屈し、正規の缶体高さが得られない事態が起こったりする。
【0017】
一方、外面側の樹脂フィルムは、しごきダイスによる「かじり」と言われる缶高さ方向への直線的な傷が入り易くなる。外面の「かじり」による傷が入った場合は、その後施される印刷の仕上がり外観を損ねる結果となる。
【0018】
この樹脂フィルムの熱による軟化の程度は、樹脂の融点(Tm)とかかわっており、融点が下限値の200℃以下では、たとえ本発明で適用される潤滑油が塗布されていても離型性やかじり性が劣り、好ましくない。
一方、上限値の260℃以上では、高融点化に伴う離型性やかじり性の更なる改善は期待できず、効果は飽和する。
樹脂フィルムの融点(Tm)は、上記の離型性やかじり性の観点から限定したものであるが、しごき加工時の発熱量は後述する加工度との関係もあり、樹脂フィルムの融点だけで離型性やかじり性の良否を決められるものではないが、基本的には融点は高い方が有利であり、本発明で使用する樹脂フィルムの融点は、210〜255℃が好ましく、特に220〜255℃が好適である。
【0019】
本発明のラミネート板およびシームレス缶を被覆しているポリエステル樹脂フィルムの密度は、1.36未満である。
密度は樹脂の結晶状態を示す指標となり、例えば、延伸された樹脂フィルム等の結晶化度が高い場合は、密度は大きくなる。密度が1.36未満であるということは、熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの結晶状態としては、実質的に非晶質であることを示す。
【0020】
ラミネート板に被覆した樹脂フィルムを非晶質にする理由は、その後行うカップの絞り加工、カップの再絞り加工、更にしごき加工において、樹脂フィルムの加工性を十分に確保することを目的にしたもので、密度が1.36以上になると、結晶性の低いポリエステル樹脂フィルムでも、成形加工にフィルムが耐えられず亀裂欠陥が激しく起こる場合があり好ましくない。特に、加工度が大きい時は、しごき加工時の発熱と併せて引き延ばし加工により、樹脂フィルムの配向結晶化が一層進み、その結果、樹脂フィルムがアルミニウム板の加工に追随し難くなり、上記の挙動が顕著に現れ、缶体の耐食性が十分に確保できない場合がしばしば起こる。従って、密度が大きい、結晶化した状態からの成形加工は、特に、加工度が高くなると極めて難しく不適である。
密度を1.36未満と限定した理由は、上記の理由からで、特に、第1工程の絞り加工の前の密度としては、1.35未満が好ましい。
【0021】
熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネートアルミニウム板を得る製造方法としては、加熱されたアルミニウム板の表面に樹脂フィルムを供給してロール間で圧着し積層させた後、直ちに急冷してポリエステル樹脂フィルムを非晶質にする方法や、溶融した樹脂を押し出し、アルミニウム板に供給し積層させ、直ちに急冷してポリエステル樹脂フィルムを非晶質にする方法や、例えば二軸延伸フィルムの場合は、一度積層したポリエステル樹脂フィルムを、必要に応じ更に樹脂の融点以上に加熱した後直ちに急冷して、ポリエステル樹脂フィルムを非晶質にする方法等が適用できる。
【0022】
アルミニウム板の加熱方法としては、電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、等の常用の加熱方法が採用できる。
【0023】
次に、本発明に適用される潤滑油について説明する。
本発明において適用される潤滑油は、流動点が5℃以下である潤滑油(A)を重量部で5〜50部と、融点が40℃以上である潤滑油(B)を重量部で95〜50部の範囲で混合されている混合潤滑油を、ラミネート板の樹脂フィルム被覆された面に、片面の付着量として30〜200mg/m2塗油するものである。
潤滑油(A)は、流動点が5℃以下であり、これは常温下では液体である。一方、潤滑油(B)は、融点が40℃以上であり、これは常温下では液体ではない。この2種類の潤滑油を重量部で潤滑油(A)を5〜50部、潤滑油(B)を95〜50部の範囲に混合した混合潤滑油にすることで、後述する缶の加工手段との組み合わせにおいて、良好な特性を発揮することが、発明者等の研究結果から明らかになり、本発明に至ったものである。
【0024】
何故、潤滑油(A)と潤滑油(B)を上記のような混合比で混合した混合潤滑油にすることで、後述する缶の加工手段との組み合わせにおいて、良好な特性を発揮するかは、次のように考えられる。即ち、本発明におけるシームレス缶の成形加工は、ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板に対して、絞り加工としごき加工と言った、異なる加工を組み合わせて行う。
【0025】
絞り加工では、ストレッチ加工または/およびしごき加工を付加するが、基本的には絞り加工である。絞り加工は、第1工程のカップ絞り加工、更には第2工程では第1工程で得られたカップの再絞り加工を行うが、この絞り加工では、加工と同時に材料は成形されるカップへの流れ込みが起こり、その結果、例えばカップの場合絞り加工後の胴壁部の板厚は、カップ開口部になる程加工前の板厚より厚くなる。この時、しわ押さえ部の摩擦力が大きく材料の流れ込みが不十分な場合、カップは底部のコーナー部から破断する、いわゆる抜けが起こったり、また缶胴の途中から破断したりする。一方、摩擦力が小さく、流れ込みが過剰な場合は、しわが発生する。いずれの場合も正常なカップは得られない。
【0026】
材料の流れ込みの程度は、しわ押さえ力としわ押さえ部全体の表面潤滑のバランスによって決まるが、使用する表面潤滑の影響が大きいことは周知であり、かかる意味においてプレス成形加工では、一般的には表面潤滑的特性や、もしくは境界潤滑的特性を有する潤滑剤が用いられている。
【0027】
また、本発明のように、樹脂フィルムを被覆したラミネート板を、絞り加工でカップ状に成形する場合、潤滑油の不適合によっては、カップ底部のコーナーにマイクロクラックが発生する時もあり、潤滑剤の選定は重要な要素となっている。
【0028】
一方、しごき加工は、胴壁部のみを、その胴壁部の厚さより狭い間隔を有する、パンチとしごきダイスのクリアランス部を通し、胴壁部の板厚を減少させる加工であるため、むしろ適度な摩擦力によって胴壁部の板厚を薄くする加工となっている。
【0029】
従って、余り流動性を有する潤滑剤ではパンチとしごきダイスのクリアランス部を通る時、缶の成形方向と逆の方向に潤滑剤が寄っていってしまい、潤滑剤を必要とする部位での欠如が起こり、缶胴が破断すると言った現象が起こり易い。そのためしごき加工では、極圧潤滑的な作用が必要であると考えられている。
【0030】
しごき加工における潤滑剤不適合の場合の問題点としては、上記の缶胴の破断と言った問題だけでなく、前述した離型性不良による内面樹脂フィルムの欠陥や、かじりによる外面フィルムの欠陥につながる問題も、併せ持っている。こうしたしごき加工時の問題は、前述した樹脂フィルムの融点や後述する成形加工とも関係があり、潤滑油だけの問題ではないが、潤滑油の影響も小さくなく、かかる意味においても、潤滑油の選定は品質確保の点から重要な要素となっている。
【0031】
本発明における潤滑油(A)は、ストレッチ加工または/およびしごき加工を付加した絞り加工に対し有効に作用し、また潤滑油(B)はしごき加工に有効に作用しているものと考えられる。本発明では、潤滑油(A)を重量部で5〜50部と潤滑油(B)を重量部で95〜50部の混合比で混合するが、潤滑油(A)が5重量部未満では絞り加工および再絞り加工の際に表面潤滑性が不十分で、カップの底が抜けたり、また途中から破断する危険性が高く好ましくない。一方、潤滑油(A)が50重量部を超えると、今度はしごき加工で缶胴破断が起こり易くなり好ましくない。
潤滑油(B)の場合は、潤滑油(A)と逆で、50重量部未満ではしごき加工で缶胴破断が起こり易く、一方、95重量部を超えると、絞り加工および再絞り加工の際に、カップの底が抜けたり、また途中から破断し易くなり、好ましくない。潤滑油(A)と潤滑油(B)との混合は、重量部で潤滑油(A)10〜40部、潤滑油(B)90〜60の混合比の範囲が好ましく、特に、しごき加工の加工度が高い場合は、重量部でそれぞれ10〜30部、70〜90部の混合比の範囲が好ましい。
【0032】
また、塗油量としては、片面の塗油量で30〜200mg/m2を塗油するが、下限値の30mg/m2未満では、第1工程の絞り加工および第2工程の再絞り加工で、潤滑油の寄りが起こり、しごき加工で必要な潤滑油量が確保されないこともあるため、缶胴の破断につながる場合もあり好ましくない。一方、上限値の200mg/m2を超えても、効果は飽和しており、経済的でない。また、塗油量が多いと脱脂性が悪くなるという問題が生じる可能性もあり好ましくはない。
【0033】
即ち、本発明で得られたしごき加工後缶体は、缶上端部を切断して正規の缶高さにするトリミングを行った後、脱脂工程、外面印刷工程、缶開口部を縮径にするネック加工と天蓋を巻き締めるために必要な開口部上端部分を外方へ曲げるフランジ加工等の工程を経て、内容物が充填される缶体となる。上記の脱脂が不十分な場合は、外面の印刷でインキがはじいたり、内面では内容物のフレーバー性に影響したりして、問題となる。従って、脱脂不良は避けねばならない事柄である。
【0034】
脱脂はアルカリ水溶液のスプレーによる脱脂や、加熱による揮発脱脂等、周知慣用の手段が適用できるが、本発明における潤滑油の塗油量の上限値である200mg/m2を超えると、脱脂時間が長く要するため、生産性の点で不利である。最適な塗油量としては、成形加工性および脱脂性の観点から、好ましくは40〜150mg/m2、更に好ましくは40〜100mg/m2であるが、特にしごき加工の加工度が高い場合は若干多目にすることが望ましい。
【0035】
流動点が5℃以下である潤滑油(A)としては、例えば流動パラフィンがあり、また、融点が40℃以上である潤滑油(B)としては、白色ワセリン(別名、ペトロラタム)、パラフィンワックス、マクロクリスタリンワックス等があり、これらのものが本発明では使用される。
なお、潤滑油(A)の流動点は、JIS−K2269の試験法に準じて測定したもので、一方の潤滑油(B)の融点は、JIS−K2235の試験法に準じて測定したものである。
【0036】
潤滑油のラミネート板への塗布方法としては、潤滑油(B)は常温では液体でないため、加温して液体にした後、潤滑油(A)と最適混合比で混合するとか、予め最適混合比の量を一緒にし、加温し混合することが望ましく、混合した後は必要に応じ加温しながら、平滑ロールによる塗布、グラビアロールによる塗布、スプレーによる塗布等、常用の手段が適用される。
【0037】
次に、本発明の方法である、缶の成形加工方法について述べる。
本発明の方法では、ポリエステル樹脂フィルム被覆したラミネートアルミニウム板を、絞り加工にてカップ状に成形する第1工程と、次いで第1工程で得たカップを更に再絞り加工し、第1工程で得たカップより缶径が小さく、缶高さの高いカップを成形する第2工程と、次いでこのカップの缶壁部をパンチとしごきダイスの間に通し、缶壁を薄く伸ばすしごき加工を行う第3工程からなっている。
【0038】
上記の成形加工方法の内、第1工程の絞り加工、第2工程の再絞り加工、第3工程のしごき加工は、いずれも缶壁部の板厚減少を伴った加工であるが、第4工程のネック加工・フランジ加工は、事実上板厚減少は伴わない加工である。従って、シームレス缶として成形加工されたものは、第3工程後の缶体が最終缶体となる。
【0039】
第1工程の絞り加工は、ラミネート板の温度を被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲で、ストレッチ加工および/またはしごき加工を付加し、加工度として、前記式(1)から求められる値として10%以内になるように行う。
【0040】
また、第2工程の再絞り加工も、第1工程で得たカップの温度を被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲で、ストレッチ加工および/またはしごき加工を付加し、加工度として式(1)で求められる値として第1工程の加工度と合わせて25%以内で行う。
【0041】
第3工程のしごき加工は、絞り加工で得たカップの缶体温度を潤滑油(B)の融点以下、好ましくは50℃以下〔潤滑油(B)の融点が50℃以下の場合はさらにその融点以下の温度とする〕にした後、加工金型の温度を120℃以下に保持し、しごき加工後の最終缶体の加工度として50〜70%の範囲になるよう成形加工を行う。
【0042】
まず、本発明の缶体成形方法における加工温度の限定について述べる。
本発明の方法における、第1工程の絞り加工および第2工程の再絞り加工を、被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に限定した理由は、絞り加工によるカップ底部コーナーの被膜健全性を確保するためである。
【0043】
カップ底部コーナーの樹脂フィルムは、パンチが最初に当たる個所であり、高い衝撃が掛かる。そして、この部位では樹脂フィルムにマイクロクラックが生じ易い。特に、第1工程の絞り加工によるカップ底部コーナーは、第2工程の再絞り加工後はカップ胴壁部(側壁部)となり、更に第3工程のしごき加工で延伸されるため、第1工程の絞り加工でカップ底部コーナーの樹脂フィルムにマイクロクラックが生じた場合、その後の加工で、激しい被膜欠陥となってしまう危険性が高くなり好ましくない。従って、特に絞り加工によるカップ底部コーナーの被膜健全性確保は、缶体の内面品質の点で重要な要素となる。
かかる意味において、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以下での絞り加工は、カップの缶底部コーナーの樹脂フィルムにマイクロクラックが生じ易く、好ましくない。
【0044】
一方、冷結晶化温度(Tc)以上で絞り加工を行った場合は、樹脂の熱結晶化が起こり易くなり、樹脂フィルムの衝撃強度が低下し、カップ底部コーナーの樹脂フィルムにマイクロクラックが生じ易いこと、更には、前述したように熱結晶化が起こり易くなることはしごき加工で被膜欠陥の発生につながる危険性が高くなること等から、好ましくない。第1工程の絞り加工および第2工程の再絞り加工を、被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に限定したのは、上記の理由からで、好ましくはガラス転移温度(Tg)+5℃から冷結晶化温度(Tc)−10℃の範囲が良い。
【0045】
絞り加工および再絞り加工に供するラミネート板やカップの温度とは、接触式温度計等で測定される表面温度を指し、ラミネート板やカップの温度を、被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に制御する手段としては、ラミネート板やカップを電気炉中で加熱する方法や熱風で加熱する方法等、常用の手段が適用される。
【0046】
また、絞り加工や再絞り加工を行う金型の表面温度を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に加熱して成形加工する加温加工方法も、ラミネート板やカップを加熱した場合と同様な効果が得られるが、この場合は、絞り加工や再絞り加工を行う前のラミネート板やカップの表面温度により、加工金型の設定温度を決める必要があるが、ラミネート板やカップの表面温度が、例えば常温の場合は、設定温度はガラス転移温度(Tg)より10〜15℃高めに設定すると良い。
【0047】
上記の常用の手段でラミネート板やカップの加熱を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲にして成形加工する方法と、加工を行う金型の表面温度を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に加熱して成形加工する加温加工方法の併用も可能であり、設備にあった手段が採用できる。
【0048】
第1工程の絞り加工、第2工程の再絞り加工に次いで行う第3工程のしごき加工は、再絞り加工で得たカップの温度を潤滑油(B)の融点以下にした後、加工金型の温度を120℃以下に保持して行う。なお、ここでいう再絞り加工で得たカップの温度とは、カップの表面温度を指し、加工金型の温度とは、金型の表面温度を指す。
【0049】
前述したように、樹脂フィルムの欠陥は、内外面共、しごき加工で最も起こり易い。
しごき加工は、缶壁部のみをパンチとしごきダイスの間のクリアランスを瞬時の通し薄肉化する加工であるため、加工の際には金属の激しい加工熱が発生し、樹脂フィルムの特性を大きく変化させる。熱による樹脂フィルムの特性変化は、(1)樹脂フィルムの軟化、(2)樹脂フィルムの結晶化等があるが、いずれの特性変化も成形加工による皮膜欠陥の発生原因となることは前述した通りである。従って、このしごき加工の温度制御は樹脂フィルムの欠陥発生防止の点から重要である。そこで、本発明の方法では、第2工程の再絞り加工で得たカップの温度を潤滑油(B)の融点以下にしてしごき加工に供すると共に、併せて加工金型の温度を120℃以下に保持して成形加工を行う。なお、ここでいう再絞り加工で得たカップの温度とは、カップの表面温度を指し、加工金型の温度とは、金型の表面温度を指す。
【0050】
カップの温度が潤滑油(B)の融点温度を超えると、付着している潤滑油は液体となっており、その結果、樹脂フィルムと成形加工金型との離型性が悪くなり、樹脂フィルムが傷つき易く、また、缶外面側は「かじり」が入り易くなるので好ましくない。
【0051】
また、加工金型の温度は、120℃以下でしごき加工を行うが、120℃を超える温度では、缶内面側では樹脂フィルムと成形加工金型との離型性が悪く、樹脂フィルムの傷つきが激しくなって、缶内面側は耐食性確保が難しいと共に、場合によっては樹脂フィルムと成形加工金型との離型の際に缶胴部が座屈し、正常な缶体が得られないと言った事態が発生することがある。更に、しごき加工における加工金型が120℃を超える温度では、ポリエステル樹脂フィルムの、配向結晶化が急激に進み、その結果、樹脂フィルムの亀裂欠陥が発生し易くなる危険性が高くなる。また、外面側の樹脂フィルムは、前述した「かじり」が激しく入り、その後行われる印刷での外観性が劣るだけでなく、場合によっては「かじり」部を起点とする缶胴の破断が起こる。
【0052】
従って、しごき加工における加工温度は、缶体の内外面の品質確保の点から極めて重要で、本発明のようにポリエステル樹脂フィルムを被覆したラミネートアルミニウム板から、絞りしごき加工によって良好な品質を有する缶体を得るには、加工金型の温度を120℃以下に保持することが重要である。本発明の方法において、しごき加工の際の加工金型の温度を120℃以下に保持して行うと、限定した理由は上記の理由からである。
【0053】
しごき加工は、加工金型全体の温度を120℃以下に保持して行うのが好ましいが、特に加工度が低い場合は加工パンチの温度を120℃以下に保持するだけでも樹脂フィルムの欠陥防止効果は得られる。しごき加工の際の加工金型または加工パンチの温度は、基本的には低い方が良く、好適な温度としては100℃以下にするのが好ましい。なお、しごき加工は、しごきダイスを一枚で行う1段しごき加工法や、二枚乃至は三枚で行う多段しごき加工法などが適用出来る。
【0054】
再絞り加工で得たカップの温度を潤滑油(B)の融点以下にする手段としては、絞り加工で得たカップの温度が潤滑油(B)の融点を超えている場合は冷風を当てる等の手法が採用でき、また、加工金型の温度を120℃以下にする手段としては、金型に冷却水を通す方法、水、又は潤滑成分を水に溶解または分散させたものを吹きかけて冷却する方法、更にはこれらの併用と言った方法が採用できる。どの手法を採用するかは、設備との関係で適宜選択することが好ましい。
【0055】
次に、本発明の缶体成形方法における加工度の限定について述べる。
第1工程の絞り加工の加工度は、下記の式(1)から求められる値として10%以内になるように行い、第2工程の再絞り加工の加工度は、式(1)から求められる値として第1工程での加工度と合わせて25%以内になるように成形加工を行い、第3工程のしごき加工の加工度は、式(1)から求められる加工度として第1工程および第2工程での加工度と合わせて50〜70%の範囲で成形加工を行うものである。
【数2】
加工度(%)=〔(Bt−Wt)/Bt〕×100 ……(1)
Bt:缶底部のアルミニウム板の板厚
Wt:缶胴側壁部のアルミニウム板の最も薄い部位の板厚
【0056】
式(1)から求められる値として、第1工程の絞り加工の加工度が10%以内になるように、第2工程の再絞り加工後の加工度が第1工程での加工度と合わせて25%以内になるように行う理由は、前述したように、通常の絞り加工ではカップの側壁部は元板厚(本発明では、缶底部の板厚を指す)より厚くなるため、この状態からしごき加工、特に高加工度のしごき加工を行うと、加工時の熱と伸ばし加工により、樹脂フィルムが配向結晶化し、成形に耐えられずフィルムに亀裂が発生する場合があるからである。従って、それを避けるためには、上記のように順次加工度を上げた加工を行い、最終のしごき加工の加工度はなるべく低く抑える方が良い。
【0057】
かかる意味から本発明の方法であれば、缶内外面の樹脂フィルムの健全性が確保される成形加工が可能となる。
特に、第2工程終了時の再絞りカップの段階で、側壁部の樹脂フィルムが完全に結晶化していない状態にしておくことが、第3工程のしごき加工後の缶体内面の樹脂フィルムの健全性確保には重要であり、再絞り加工後の加工度として25%以内であれば、しごき加工後の内外面の樹脂フィルムの健全性は確保される。
【0058】
なお本発明の方法では、上記の第1工程および第2工程で行う、ストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した絞り加工および再絞り加工は、ストレッチ加工のみを付加した方法、しごき加工を付加した方法、ストレッチ加工としごき加工の両者を付加した方法、のいずれの方法でも良く、適宜適用される。
【0059】
【実施例】
以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具体的に説明するが、その前に本発明の方法で行った評価方法について述べる。
(1)潤滑油の流動点の測定は、JIS−K2269の試験法に準じて測定を行った。
(2)潤滑油の融点の測定は、JIS−K2235の試験法に準じて測定を行った。
(3)樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法にて測定した。
(4)樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)、冷結晶化温度(Tc)、融点(Tm)は示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の昇温速度で測定し、ガラス転移温度は転移の始まる点をその温度とし、冷結晶化温度(Tc)、融点(Tm)は、それぞれのピーク温度を冷結晶化温度および融点とした。
(5)カップの絞り加工後の缶底部コーナーのマイクロクラックについては、光学顕微鏡で観察しその程度を評価した。
評価は次のように評価基準を設定し行った。
○:クラックなく良好 □:軽微なクラック発生
△:明確なクラック発生 ×:激しいクラック発生
(6)フィルムと加工パンチの離型性は、成形缶上部に起こる缶体の座屈程度を観察し評価した。
離型性の評価は、次のように評価基準を設定し行った。
○:缶開口部の座屈なく良好
□:缶開口部に軽微な座屈あり
△:開口部円周の1/3未満の座屈
×:開口部円周の1/3以上の座屈
(7)缶外面の耐かじり性は、成形した缶体胴壁部外面のかじり発生程度を観察して評価した。
○:かじりなく良好
□:軽微なかじり発生
△:外面の1/3未満にかじり発生
×:外面の1/3以上に激しいかじり発生
(8)缶内面の樹脂フィルムの傷付き程度については、1.0重量%食塩水に界面活性剤を、0.1重量%添加した電解液で、缶体を陽極、陰極を銅線とし印加電圧6Vで3秒後の電流値を測定し、樹脂フィルムの皮膜の健全性を評価した(以降、この評価法をQTV試験と称する)。
【0060】
実験例1
表面に皮膜C量として16mg/m2のリン酸−フェノール樹脂の有機無機複合型化成処理皮膜を有する、板厚0.26mmのアルミニウム板(3004系合金)の両面に、ガラス転移温度(Tg)が67℃、冷結晶化温度(Tc)が123℃、融点が238℃、厚み20μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを熱圧着法で接着した後、加熱・冷却し、非晶質化ポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネート板を作成した。
得られたラミネート板のポリエステル樹脂フィルムの密度は、表1〜2に示した。
【0061】
こうして得られたラミネート板の両面に成形用潤滑剤として流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を加熱混合して、潤滑油(A)と潤滑油(B)の混合比が重量部比で0:100(テスト1)、10:90(テスト2)、20:80(テスト3)、40:60(テスト4)、60:40(テスト5)、80:20(テスト6)、100:0(テスト7)に混合し、加温して液状にしグラビアロールで塗油した。塗油量は、表1〜2に示した。
【0062】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、加工度が7%のしごき加工を付加した絞り加工を行った。
この時得られたカップの、底部コーナーの樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について調べ、その結果を表3〜4に示した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度が22%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を50℃にして、金型温度を100℃に保持して最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べ、その評価結果を表3〜4に示した。
【0063】
表1〜4から、本発明の実施例1〜3に相当するテスト2〜4は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面のかじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。
一方、潤滑油(B)のみをラミネート板に塗油して成形した比較例1であるテスト1は、絞り加工で缶底抜けが散発し、絞り成形性が本発明の実施例1から3に比べ劣ることが分かる。また、混合潤滑油中の潤滑油(A)の混合重量部比が50を超える比較例2、3であるテスト5、6では、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性が共に本発明の実施例に比べ劣り、QTV値も高い。特に、潤滑油(A)のみを塗油して成形した比較例4のテスト7の場合は、しごき加工で缶胴の切断が多発した。
【0064】
下記表中、*1〜*8は下記の説明のとおりである。
*1 潤Aは潤滑油Aを示す。
*2 混合割合の項は潤滑油Aと潤滑油Bの重量比での混合割合を示す。
*3 潤Bは潤滑油Bを示す。
*4 塗布量は、片面に塗布された潤滑油の量を示し、単位はmg/m2である。
*5 第1工程のストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した絞り加工工程を示す。
*6 第2工程のストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した再絞り加工工程を示す。
*7 第3工程のしごき加工工程を示す。
*8 実施例および比較例の表示の項については、実施例1、2、…を実1、実2、…と、比較例1、2、…を比1、比2…と表示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
実験例2
実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フィルムラミネート板を用いて、両面に成形用潤滑剤として、流動点が2.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト8)、流動点が−7.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト9)、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト10)、流動点が−17.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト11)、流動点が−20.0℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト12)、を加温して液状にしグラビアロールで塗油した。塗油量は表5〜6に示した。
【0070】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、加工度が5%のしごき加工を付加した絞り加工を行った。
この時得られたカップの、底部コーナーの樹脂フィルムのマイクロクラツク発生状況について調べ、その結果を表7〜8に示した。
次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度が15%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得たカップの温度を50℃にして、金型温度を80℃に保持し最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表7〜8に示した。
【0071】
表5〜8から、本発明の実施例4〜8に相当するテスト8〜12は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面のかじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
実験例3
実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フィルムラミネート板を用いて、両面に成形用潤滑剤として、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が50℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト13)、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が54℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト14)、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が63℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト15)、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が75℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト16)、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が84℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油(テスト17)、を液状に加温しグラビアロールで塗油した。塗油量は表9〜10に示した。
【0077】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、加工度が7%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカップの底部コーナーの樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について調べ、その結果を表11〜12に示した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度が15%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得たカップの温度を40℃にし、金型温度を100℃に保持し最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表11〜12に示した。
【0078】
表9〜12から、本発明の実施例9〜13に相当するテスト13〜17は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
実験例4
実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フィルムラミネート板を用いて、両面に成形用潤滑剤として、流動点が−7.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油を加温して液状にしスプレーで、それぞれ片面の塗油量が23mg/m2(テスト18)、44mg/m2(テスト19)、67mg/m2(テスト20)、93mg/m2(テスト21)、122mg/m2(テスト22)、158mg/m2(テスト23)、187mg/m2(テスト24)の塗油をした。塗油量は表13〜14に示した。
【0084】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、加工度が7%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナーの樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について調べ、その結果を表15〜16に示した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度が22%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を50℃にし、金型温度を80℃に保持し最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表15〜16に示した。
【0085】
表13〜16から、本発明の実施例14〜19であるテスト19〜24は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、また耐しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。
一方、比較例5のテスト18は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムに僅かにクラックが発生した。またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に本発明の実施例14から19に比べ劣り、QTV値も高い値を示した。
【0086】
【表13】
【0087】
【表14】
【0088】
【表15】
【0089】
【表16】
【0090】
実験例5
表面に皮膜C量として26mg/m2のリン酸−フェノール樹脂の有機無機複合型化成処理皮膜を有する、板厚0.28mmのアルミニウム板(3004系合金)の両面に、ガラス転移温度(Tg)が67℃、冷結晶化温度(Tc)が123℃、融点が238℃のポリエステル樹脂フィルムの厚みが8μm(テスト25)、15μm(テスト26)、20μm(テスト27)、30μm(テスト28)、40μm(テスト29)、50μm(テスト30)の二軸延伸フィルムを熱圧着法で接着した後、加熱・冷却し、6種類の非晶質化ポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネート板を作成した。次いで、ラミネート板の両面に、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70に加温混合して、グラビアロールで塗油をした。得られたラミネート板のポリエステル樹脂フィルムの密度および塗油量は表17〜18に示した。
【0091】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、加工度が7%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナーの樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について調べ、その結果を表19〜20に示した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度が15%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を50℃にし、金型温度を80℃に保持し最終加工度が63%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表19〜20に示した。
【0092】
表17〜20から、本発明の実施例20〜24であるテスト26〜30は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。一方、比較例6のテスト25は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムにはクラックの発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好であったが、高いQTV値を示し、本発明の樹脂フィルム厚みの限定値の下限未満では内面品質は確保できないことが分かる。
【0093】
【表17】
【0094】
【表18】
【0095】
【表19】
【0096】
【表20】
【0097】
実験例6
実験例5で用いた有機無機複合型化成処理皮膜を有するアルミニウム板の両面に、樹脂フィルムの融点が193℃のフィルム(テスト31)、融点が205℃のフィルム(テスト32)、融点が218℃のフィルム(テスト33)、融点が230℃のフィルム(テスト34)、融点が242℃のフィルム(テスト35)、融点が252℃のフィルム(テスト36)、融点が261℃のフィルム(テスト37)の、それぞれ厚みが20μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを熱圧着で接着した後、加熱・冷却し、7種類の非晶質化ポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネート板を作成した。
【0098】
次いで、ラミネート板の両面に、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を加温混合して、潤滑油(A)と潤滑油(B)の混合比が重量部比で30:70の成形用潤滑剤を、加温し液状にしてグラビアロールで塗油した。各テスト板の樹脂フィルムの密度および塗油量は表21〜22に示した。
【0099】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を75℃にして、加工度が5%のストレッチ加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナー部の樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について調べた。
次いで、得られたカップの温度を75℃にして、加工度が22%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を40℃にし、金型温度を80℃に保持し最終加工度が63%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表23〜24に示した。
【0100】
表21〜24から、本発明の実施例25〜29に相当するテスト32〜36は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。一方、比較例7のテスト31は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラックは発生もなく良好だが、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に本発明の実施例25から29に比べ劣り、QTV値も高い値を示した。また比較例8のテスト37の場合は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生は、本発明の実施例25から29に比べ若干劣る程度であり、一方、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好にもかかわらず、高いQTV値を示した。
【0101】
【表21】
【0102】
【表22】
【0103】
【表23】
【0104】
【表24】
【0105】
実験施例7
表面に皮膜C量として23mg/m2のリン酸−フェノール樹脂の複合化成処理皮膜を有する、板厚0.28mmのアルミニウム板(3004系合金)の両面に、実験例6のテスト35で用いたフィルムを熱圧着条件を変えて接着した後、必要に応じ加熱冷却し、密度の異なるポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネート板を作成した。
得られたラミネート板の樹脂フィルムの密度は、1.342(テスト38)、1.357(テスト39)、1.365(テスト40)、1.381(テスト41)であった。次いで、これらのラミネート板の両面に、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70に加温混合して液状にし、スプレーで塗油した。各テストに用いたラミネート板の塗油量は表25に示した。
【0106】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、加工度が5%のストレッチ加工を付加した再絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナー部の樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について調べ、その結果を表26に示した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度が22%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を40℃にし、金型温度を80℃に保持し最終加工度が63%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得た缶体について、金型離型性、かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表26に示した。
【0107】
表25〜26から、本発明の実施例30〜31であるテスト38、39は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。一方、比較例9から10のテスト40、41は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラックは発生もなく良好であり、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共にしごき加工時の金型離型性、缶外面のかじり性共に良好にもかかわらず、高いQTV値を示し内面品質は本発明の実施例30、31に比べ劣る。
【0108】
【表25】
【0109】
【表26】
【0110】
実験例8
実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネート板を用いて、両面に成形用潤滑剤として、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油を加温して液状にし、スプレーで塗油した。塗油量は表27〜31に示した。
【0111】
こうして得た塗油ラミネート板の温度を50℃(テスト42)、70℃(テスト43)、90℃(テスト44)、110℃(テスト45)、120℃(テスト46)、130℃(テスト47)の条件にして、それぞれしごき加工を付加した加工度が5%の絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナー部の樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について観察し、その結果を表32〜36に示した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、ストレッチ加工およびしごき加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を40℃にして、金型温度を80℃で最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。更に、上記のテスト43で得られた再絞り加工のカップの温度を、それぞれ30℃(テスト48)、40℃(テスト49)、50℃(テスト50)、60℃(テスト51)、70℃(テスト52)にしてから、金型温度を100℃に保持し最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。
【0112】
なお、比較のため上記テスト47で得た絞りカップの温度を70℃にし、ストレッチ加工およびしごき加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を行った後、それぞれカップの温度を40℃(テスト53)、60℃(テスト54)にしてから、金型温度を100℃に保持したものを使用して最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。さらに、比較のため上記テスト43で得た絞りカップの温度を70℃にし、ストレッチ加工およびしごき加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を行った後、カップの温度を40℃にし、それぞれ金型温度を70℃(テスト55)、100℃(テスト56)、120℃(テスト57)、140℃(テスト58)にした条件下で最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。
【0113】
こうして得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表32〜36に示した。
【0114】
表27〜36から、本発明の実施例32〜35であるテスト43〜46は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。一方、比較例11、12であるテスト42、47は、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に良好であるが、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生は実施例32から35に比べ劣り、その結果高いQTV値を示し内面品質も実施例32から35に比べ劣る。
また、本発明の実施例36から38であるテスト48〜50は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。一方、比較例13、14であるテスト51、52は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生は見られないが、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に劣り、しかも高いQTV値を示しており、缶内面品質が実施例36から38に比べ劣ることが分かる。
比較例16のテスト54の場合は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムにクラックが発生し、また、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に劣り、高いQTV値を示しており、缶内面品質が実施例36から37に比べ劣ることが分かる。なお、比較例15のテスト53は、前述した比較例12のテスト47の再現評価である。
更に、本発明の実施例39から41のテスト55〜57は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。一方、比較例17のテスト58は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生は見られないが、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に劣り高いQTV値を示しており、缶内面品質が本発明の実施例39から41に比べ劣ることが分かる。
【0115】
【表27】
【0116】
【表28】
【0117】
【表29】
【0118】
【表30】
【0119】
【表31】
【0120】
【表32】
【0121】
【表33】
【0122】
【表34】
【0123】
【表35】
【0124】
【表36】
【0125】
実験例9
実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フィルム被覆ラミネート板を用いて、両面に成形用潤滑剤として、流動点が−12.5℃の潤滑油(A)と融点が57℃の潤滑油(B)を混合比が重量部比で30:70の潤滑油を加温して液状にし、スプレーで塗油した。塗油量は表37〜38に示した。
【0126】
こうして得た塗油ラミネート板を金型温度を50℃(テスト59)、70℃(テスト60)、90℃(テスト61)、110℃(テスト62)、120℃(テスト63)、130℃(テスト64)の条件にして、それぞれしごき加工を付加した加工度が5%の絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナー部の樹脂フィルムのマイクロクラック発生状況について観察した。
次いで、得られたカップを、金型温度の温度を80℃にして、ストレッチ加工およびしごき加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの温度を40℃にして、金型温度を80℃で最終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得られた缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表39〜40に示した。
【0127】
表37〜40から、本発明の実施例42〜45であるテスト60〜63は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られていることが分かる。しかし、実験例8に示した通りのラミネート板およびカップの温度をガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)にして成形加工を行った、実施例32〜35であるテスト43〜46に比べると、内面品質の点で若干劣るが、十分実用性を有しているレベルである。
一方、比較例18、19であるテスト59、64は、しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に良好であるが、絞り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フィルムのクラック発生は実施例42〜45に比べ劣り、その結果高いQTV値を示し内面品質も実施例42〜45に比べ劣る。
【0128】
【表37】
【0129】
【表38】
【0130】
【表39】
【0131】
【表40】
【0132】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明を実施することで、得られる缶体内面のポリエステル樹脂フィルムは優れた皮膜健全性を有していることから、高耐食性のアルミニウムシームレス缶が得られる。
従って、種々の内容物を充填することが可能であることから、品種の統一化が安心して対応出来ることから、経済的に有利となり、その社会的意義は大きいものがある。
Claims (3)
- 板厚が0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(Tm)200℃〜260℃、密度1.36未満である熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムで被覆されたラミネート板の樹脂フィルム被覆面に、流動点が5℃以下である潤滑油(A)を重量部で5〜50部と、融点が40℃以上である潤滑油(B)を重量部で95〜50部の混合比で混合されている混合潤滑油を、片面の付着量として30〜200mg/m2塗油したことを特徴とするシームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板。
- 板厚が0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(Tm)200℃〜260℃、密度1.36未満であるポリエステル樹脂で被覆されたラミネート板を用いてシームレス缶を製造するに際し、該ラミネート板の樹脂フィルム被覆面に、流動点が5℃以下である潤滑油(A)を重量部で5〜50部と、融点が40℃以上である潤滑油(B)を重量部で95〜50部の混合比で混合されている混合潤滑油を、片面の付着量として30〜200mg/m2塗油した後、該ポリエステル樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲でストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した絞り加工(第1工程)を行い、次いで、第1工程の絞り加工で得たカップを該ポリエステル樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲でストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した再絞り加工(第2工程)を行い、次いで、第2工程で得た再絞りカップの温度を潤滑油(B)の融点以下にし、加工金型の温度を120℃以下に保持してしごき加工(第3工程)を行うことを特徴とするポリエステル樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法。
- 第1工程のストレッチ加工および/またはしごき加工を付加した絞り加工を、胴壁部の最も薄い部位のアルミニウム板の厚み(Wt)と缶底部のアルミニウム板の厚み(Bt)との関係において、下記式(1)
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