JP2000033430A - シームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板およびそれを用いたシームレス缶の製造方法 - Google Patents

シームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板およびそれを用いたシームレス缶の製造方法

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JP2000033430A
JP2000033430A JP10221094A JP22109498A JP2000033430A JP 2000033430 A JP2000033430 A JP 2000033430A JP 10221094 A JP10221094 A JP 10221094A JP 22109498 A JP22109498 A JP 22109498A JP 2000033430 A JP2000033430 A JP 2000033430A
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Katsumasa Matsunami
克優 松波
Shuichi Furuta
修一 古田
Masatoshi Yamamoto
正俊 山本
Eiichiro Kasado
英一郎 笠戸
Tomohiko Hayashi
知彦 林
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 皮膜欠陥のない高耐食性、高品質な熱可塑性
樹脂被覆アルミニウムシームレス缶を歩留まりよく提供
すること。 【解決手段】 板厚が0.20mm〜0.32mmのア
ルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(T
m)200℃〜260℃、密度1.36未満である熱可
塑性ポリエステル樹脂フィルムで被覆されたラミネート
アルミニウム板の樹脂フィルム被覆面に、片面の付着量
として、作業環境温度下で液状である潤滑油(A)を2
0〜120mg/m2、その上層に、作業環境温度下で
液状でない潤滑油(B)を10〜80mg/m2、総塗
油量として、片面の付着量30〜200mg/m2の塗
油を施したことを特徴とするシームレス缶用ポリエステ
ル樹脂被覆アルミニウム板およびそれを用いたシームレ
ス缶の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シームレス缶用ポ
リエステル樹脂被覆アルミニウム板およびそれを用いた
シームレス缶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウムやスチールを素材とした金
属缶・容器は、その形状からスリーピース缶とツーピー
ス缶とに大別される。スリーピース缶は、地蓋、缶胴、
天蓋から成るためスリーピース缶と呼ばれている。一
方、ツーピース缶は、地蓋と缶胴とが一体となったもの
で、それに天蓋とから成るためツーピース缶、又は、缶
胴部に接合部がないことから、シームレス缶とも呼ばれ
ている。
【0003】金属缶の場合、缶内面には耐食性の確保か
ら塗装が施され使用されているが、近年、熱可塑性樹脂
フィルムを積層したラミネート缶が開発され、ビールや
例えばコーラのような炭酸飲料を充填した飲料缶分野で
市場に出回っている。ラミネート缶は、金属素材に熱可
塑性樹脂フィルムを積層させたものから、缶体成形加工
を行うものが主であり、特にツーピース缶を得るには高
度な成形加工技術を必要とする。かかる意味において
も、ツーピースのラミネート缶に関わる技術は、例えば
特開平7−2241号公報、特開平7−195619号
公報、特開平8−244750号公報等、数多く提案さ
れ、開示されている。
【0004】ラミネート缶のメリットは、消費者側から
見た場合、適用する熱可塑性樹脂フィルムにもよるが、
耐内容物性、特に内容物の味、風味と言ったフレーバー
性に優れている点が第一に挙げられている。一方、デメ
リットとしては、今度は製缶メーカー側からであるが、
前述したようにツーピース缶の場合、熱可塑性樹脂フィ
ルム被覆金属板の加工度(又は変形度合)が大きいの
で、成形時に内面樹脂フィルムに傷が入ったりした場
合、缶内面の品質確保ができなくなるため、缶体の品質
検査を厳重に行う必要があることと、製品歩留まりが現
行の塗装缶に比べて劣るといった点が挙げられる。
【0005】特に、スチール素材を用いたツーピースラ
ミネート缶の場合、上記の傾向が大きいが、アルミニウ
ム合金を素材としたツーピースラミネート缶でも同様な
ことが起こる。こうしたラミネート缶の内面樹脂フィル
ムの被膜欠陥は、前述したように缶成形加工時に入るも
のであり、この欠陥を最小限に抑えることは、品質、製
品歩留まりの点から重要な技術課題であることは言うま
でもない。しかし、しごき加工を伴うツーピース缶成形
の、特に高加工率の場合の内面の樹脂フィルムに傷その
他の欠陥を入れることなく成形する適切手段がないのが
現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうした実
状に鑑みなされたもので、被膜欠陥のない高耐食性、高
品質な熱可塑性樹脂被覆アルミニウムシームレス缶を歩
留まりよく提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、板厚が
0.20mm〜0.32mmのアルミニウム板の両面
に、厚み10〜50μm、融点(Tm)200℃〜26
0℃、密度1.36未満である熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルムで被覆されたラミネートアルミニウム板の樹
脂フィルム被覆面に、片面の付着量として、作業環境下
で液状でない潤滑油(A)を20〜120mg/m2
その上層に、作業環境下で液状である潤滑油(B)を1
0〜80mg/m2、総塗油量として、片面の付着量3
0〜200mg/m2の塗油を施したことを特徴とする
シームレス缶用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板に
関する。
【0008】本発明の第二は、板厚が0.20mm〜
0.32mmのアルミニウム板の両面に、厚み10〜5
0μm、融点(Tm)200℃〜260℃、密度1.3
6未満である熱可塑性ポリエステル樹脂で被覆されたラ
ミネートアルミニウム板を用いてシームレス缶を製造す
るに際し、該ラミネートアルミニウム板の樹脂フィルム
被覆面に、片面の付着量として、融点が40℃以上であ
る潤滑油(A)を20〜120mg/m2、その上層
に、流動点が5℃以下である潤滑油(B)を10〜80
mg/m2、総塗油量として、片面の付着量30〜20
0mg/m2の塗油を施した後、該ポリエステル樹脂フ
ィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(T
c)の範囲でストレッチ加工および/またはしごき加工
を付加した絞り加工(第1工程)を行い、次いで、第1
工程の絞り加工で得たカップを該ポリエステル樹脂フィ
ルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度(T
c)の範囲でストレッチ加工および/またはしごき加工
を付加した再絞り加工(第2工程)を行い、次いで、第
2工程で得た再絞りカップの温度を潤滑油(A)の融点
以下にし、加工金型の温度を120℃以下に保持してし
ごき加工(第3工程)を行うことを特徴とするポリエス
テル樹脂被覆アルミニウムシームレス缶の製造方法に関
する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の方法の実施形態に
ついて詳細に説明する。まず、本発明におけるアルミニ
ウム板について述べる。本発明に適用されるアルミニウ
ム板は、特に制限するものではなく、アルミニウム板や
その合金板が用いられるが、とくに通常缶容器の製造に
用いられる3004系アルミ合金、5052系アルミ合
金、5182系アルミ合金等種々のアルミニウム合金が
好ましい。アルミニウムの板厚としては、0.20mm
〜0.32mmのものが適用される。板厚が0.20m
m以下では、炭酸飲料やビール等を充填・密封する内圧
缶の場合、耐圧強度が十分でなく缶底部が張り出した状
態(バックリング)になる場合があり、好ましくない。
一方、0.32mm以上では、缶の耐圧強度は十分に確
保されるが、実質的には品質過剰であり、経済的でな
い。板厚の限定理由は、上述のように缶の耐圧強度から
限定したものである。従って、適用するアルミニウム板
の機械的特性、特に耐力強度と関わりがあり、耐力強度
が高い場合は板厚の薄手化が可能となる。実際に本発明
を実施する際は、板厚は缶全体の強度バランスを考慮
し、適宜選択することが望ましい。
【0010】本発明では、熱可塑性ポリエステル樹脂フ
ィルムとの密着性を確保する目的で、アルミニウム板表
面に表面処理を施したものを使用することが好ましい。
表面処理としては、通常アルミニウム板の絞りしごき缶
の成形加工後の表面処理として使用されている、リン酸
クロム酸処理や、リン酸ジルコニウム処理が適用される
が、特に、缶壁部の板厚減少度が大きい高加工度の場合
は、リン酸またはリン酸ジルコニウムと有機樹脂との有
機無機複合型化成処理が有効である。有機無機複合型化
成処理の場合、付着量は被膜中C量として5〜50mg
/m2が良く、5mg/m2以下では被覆性が劣り、防食
作用および密着性が共に不十分となり、缶体成形加工後
に樹脂フィルムが局部的に剥離する、いわゆるデラミが
起こったり局部的な腐食が起こったり、また、デント性
も劣り好ましくない。一方、50mg/m2を超える
と、被覆性は良好であるが、加工度が大きい缶体成形加
工の場合、被膜が凝集破壊を起こし密着性が低下し、樹
脂フィルムが剥離するといった場合があるので好ましく
ない。表面処理被膜量としては、被膜C量として10〜
40mg/m2が好適である。
【0011】アルミニウム板の表面処理方法としては、
例えば上記の有機無機複合型化成処理の場合、リン酸ま
たはリン酸とフッ化ジルコニウムと水溶性有機樹脂、例
えば水溶性フェノール樹脂、水溶性アクリル樹脂等を含
む水溶液に、反応性を促進させるためにフッ酸、ポリリ
ン酸を添加した処理液を、アルミニウム板にロール塗布
した後、水洗、乾燥し硬化させる方法や、処理液をアル
ミニウム板にスプレー塗布した後、水洗、乾燥し硬化さ
せる方法等が適宜適用できる。乾燥硬化方法としては熱
風での乾燥、電気炉での乾燥等の方法が適用でき、温度
は150℃〜250℃で乾燥時間は10秒〜2分程度で
ある。
【0012】本発明において、アルミニウム板を被覆す
る樹脂フィルムとしては熱可塑性ポリエステル樹脂フィ
ルムを用いるが、その理由は、耐熱性が良い、内容
物のフレーバーが確保される、といった、例えばポリエ
チレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂フ
ィルムにはない、缶用途に適した特性を有しているから
である。
【0013】ポリエステル樹脂としては、例えばポリエ
チレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフ
タレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(P
EI)のようなホモポリマーや、例えばポリエチレンテ
レフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合
樹脂であるコポリマーや、こうしたホモポリマーやコポ
リマーなどのブレンド樹脂等が適用される。
【0014】アルミニウム板の表面を被覆する熱可塑性
ポリエステル樹脂フィルムの厚みは、10〜50μm、
好ましくは12〜40μmのものを用いる。缶の内面に
当たる面に積層されるフィルム厚みは、缶内面の耐食性
の観点から限定されるものであり、10μm以下では缶
の成形加工後で充填する内容物にもよるが、十分な耐食
性を確保するのは難しい場合がある。一方、50μmを
超えると、ほとんどの内容物に対し耐食性は十分確保さ
れるが、実質的に過剰品質となり、経済的でない。
【0015】また、本発明を実施する際のフィルム厚み
の選定は、後述する缶壁部の薄肉化の加工度との関係が
あることも選定の際の重要な要素である。即ち、加工度
が高い場合は、当然その加工度に応じてフィルムの厚み
も薄くなるため、その結果として、缶内面の防食性能は
低下する。従って、加工度が高い場合は予め厚手のフィ
ルムを使用することが望ましい。一方、加工度が低い場
合はそれに応じて予め薄手のフィルムを使用することが
可能となる。
【0016】本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルムは、融点(Tm)が200℃〜260℃の樹
脂フィルムである。成形加工時には、金属の加工熱が発
生し、缶体はかなりの温度となる。特にしごき加工の際
に発生する金属の加工熱は、樹脂フィルムの特性を大き
く変化させる。この熱による樹脂フィルムの特性変化の
一つに樹脂フィルムの軟化がある。樹脂フィルムが軟化
すると、しごき加工時に内外面の樹脂フィルムを傷つけ
る原因となる。即ち、内面側の樹脂フィルムは、パンチ
に付着してしまいパンチが抜け難くなる、いわゆる離型
性不良が起こり、内面の樹脂フィルムを傷つける原因と
なる。また、離型性不良が甚だしい場合は、缶体の開口
部近傍が座屈し、正規の缶体高さが得られない事態が起
こったりする。
【0017】一方、外面側の樹脂フィルムは、しごきダ
イスによる「かじり」と言われる缶高さ方向への直線的
な傷が入り易くなる。外面の「かじり」による傷が入っ
た場合は、その後施される印刷の仕上がり外観を損ねる
結果となる。
【0018】この樹脂フィルムの熱による軟化の程度
は、樹脂の融点(Tm)とかかわっており、融点が下限
値の200℃以下では、たとえ本発明で適用される潤滑
油が塗布されていても離型性や耐かじり性が劣り、好ま
しくない。一方、上限値の260℃以上では、高融点化
に伴う離型性や耐かじり性の更なる改善は期待できず、
効果は飽和する。樹脂フィルムの融点(Tm)は、上記
の離型性や耐かじり性の観点から限定したものである
が、しごき加工時の発熱量は後述する加工度との関係も
あり、樹脂フィルムの融点だけで離型性や耐かじり性の
良否を決められるものではないが、基本的には融点は高
い方が有利であり、本発明で使用する樹脂フィルムの融
点は、210〜255℃が好ましく、特に220〜25
5℃が好適である。
【0019】本発明のラミネート板およびシームレス缶
を被覆しているポリエステル樹脂フィルムの密度は、
1.36未満である。密度は樹脂の結晶状態を示す指標
となり、例えば、延伸された樹脂フィルム等の結晶化度
が高い場合は、密度は大きくなる。密度が1.36未満
であるということは、熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ムの結晶状態としては、実質的に非晶質であることを示
す。
【0020】ラミネート板に被覆した樹脂フィルムを非
晶質にする理由は、その後行うカップの絞り加工、カッ
プの再絞り加工、更にしごき加工において、樹脂フィル
ムの加工性を十分に確保することを目的にしたもので、
密度が1.36以上になると、結晶性の低いポリエステ
ル樹脂フィルムでも、成形加工にフィルムが耐えられず
亀裂欠陥が激しく起こる場合があり好ましくない。特
に、加工度が大きい時は、しごき加工時の発熱と併せて
引き延ばし加工により、樹脂フィルムの配向結晶化が一
層進み、その結果、樹脂フィルムがアルミニウム板の加
工に追随し難くなり、上記の挙動が顕著に現れ、缶体の
耐食性が十分に確保できない場合がしばしば起こる。従
って、密度が大きい、結晶化した状態からの成形加工
は、特に、加工度が高くなると極めて難しく不適であ
る。密度を1.36未満と限定した理由は、上記の理由
からで、特に、第1工程の絞り加工の前の密度として
は、1.35未満が好ましい。
【0021】熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム被覆ラ
ミネートアルミニウム板を得る製造方法としては、加熱
されたアルミニウム板の表面に樹脂フィルムを供給して
ロール間で圧着し積層させた後、直ちに急冷してポリエ
ステル樹脂フィルムを非晶質にする方法や、溶融した樹
脂を押し出し、アルミニウム板に供給し積層させ、直ち
に急冷してポリエステル樹脂フィルムを非晶質にする方
法や、例えば二軸延伸フィルムの場合は、一度積層した
ポリエステル樹脂フィルムを、必要に応じ更に樹脂の融
点以上に加熱した後直ちに急冷して、ポリエステル樹脂
フィルムを非晶質にする方法等が適用できる。
【0022】アルミニウム板の加熱方法としては、電気
炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロール
に接触させて加熱する方法、等の常用の加熱方法が採用
できる。
【0023】次に、本発明に適用される潤滑油について
説明する。本発明において使用される潤滑油は、作業環
境温度下で液状でない潤滑油(A)、好ましくは融点が
40℃以上である潤滑油(A)を、熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルム被覆面に、片面の塗油量20〜120m
g/m2、その上層に、作業環境温度下で液状である潤
滑油(B)、好ましくは流動点が5℃以下である潤滑油
(B)を10〜80mg/m2、総塗油量として、片面
の塗油量30〜200mg/m2の量を塗油する。
【0024】潤滑油(A)は、作業環境温度下、すなわ
ち室温下では液体でなく、好ましくは、融点40℃以上
のものである。一方、潤滑油(B)は、作業環境温度
下、すなわち室温下では液体であるものであり、好まし
くは流動点が5℃以下のものである。この2種類の潤滑
油を、潤滑油(A)を下層に、潤滑油(B)を上層とし
て塗油することで、後述する缶の加工手段との組み合わ
せにおいて、良好な特性を発揮することが、発明者等の
研究結果から明らかになり、本発明に至ったものであ
る。何故、上記のように潤滑油(A)を下層にし、潤滑
油(B)を上層にして層状に塗油することで、後述する
缶の加工手段との組み合わせにおいて、良好な特性を発
揮するかは、次のように考えられる。
【0025】本発明におけるシームレス缶の成形加工
は、ポリエステル樹脂被覆アルミニウム板に対して、絞
り加工としごき加工と言った、異なる加工を組み合わせ
て行なう。絞り加工では、ストレッチ加工または/およ
びしごき加工を付加するが、基本的には絞り加工であ
る。絞り加工は、第1工程のカップ絞り加工、更には第
2工程での第1工程で得られたカップの再絞り加工より
なるが、この絞り加工では、加工と同時に材料は成形さ
れるカップへの流れ込みが起こる。この時、しわ押え部
の摩擦力が大きく材料の流れ込みが不充分な場合、カッ
プは底部のコーナー部から破断する、いわゆる抜けが起
こったり、また缶胴の途中から破断したりする。一方、
摩擦力が小さく、流れ込みが過剰な場合は、しわが発生
する。いずれの場合も正常なカップは得られない。
【0026】材料の流れ込みの程度は、しわ押さえ力と
しわ押さえ部全体の表面潤滑のバランスによって決まる
が、使用する表面潤滑の影響が大きいことは周知であ
り、かかる意味においてプレス成形加工では、一般的に
は表面潤滑的特性や、もしくは境界潤滑的特性を有する
潤滑剤が用いられている。また、本発明のように、樹脂
フィルムを被覆したラミネートアルミニウム板を、絞り
加工でカップ状に成形する場合、潤滑油の不適合によっ
ては、カップ底部のコーナーにマイクロクラックが発生
する時もあり、潤滑剤の選定は重要な要素となってい
る。
【0027】一方、しごき加工は、胴壁部のみを、その
胴壁部の厚さより狭い間隔を有する、パンチとしごきダ
イスのクリアランス部を通し、胴壁部の板厚を減少させ
る加工であるため、むしろ適度な摩擦力によって胴壁部
の板厚を薄くする加工となっている。従って、余り流動
性を有する潤滑剤ではパンチとしごきダイスのクリアラ
ンス部を通る時、缶の成形方向と逆の方向に潤滑剤が寄
っていってしまい、潤滑剤を必要とする部位での欠如が
起こり、缶胴が破断すると言った現象が起こり易い。そ
のためしごき加工では、極圧潤滑的な作用が必要である
と考えられる。
【0028】しごき加工における潤滑剤不適合の場合の
問題点としては、上記の缶胴の破断と言った問題だけで
なく、前述した離型性不良による内面樹脂フィルムの欠
陥や、かじりによる外面フィルムの欠陥につながる問題
も、併せ持っている。こうしたしごき加工時の問題は、
前述した樹脂フィルムの融点や後述する成形加工とも関
係があり、潤滑油だけの問題ではないが、潤滑油の影響
も小さくなく、かかる意味においても、潤滑油の選定は
品質確保の点から重要な要素となっている。
【0029】本発明における潤滑油(B)は、ストレッ
チ加工または/およびしごき加工を付加した絞り加工に
対し有効に作用し、また潤滑油(A)はしごき加工に有
効に作用しているものと考えられる。従って、外気温度
下(製缶工場内の温度下)において液体か液体でないか
は重要で、上層となる潤滑油(B)は年間を通して液体
の状態であることが、また潤滑油(A)は年間を通して
液体でない状態であることが、融点および流動点から限
定した理由である。特にしごき加工において、極圧潤滑
的な作用を持たせるためには、少なくとも加工に供する
前の状態が液体でないことが重要である。
【0030】本発明では、潤滑油(A)の必要な塗油量
は、片面の塗油量として20〜120mg/m2であ
る。潤滑油(A)の付着量が20mg/m2未満場合
は、しごき加工で缶胴破断が起こり易くなり好ましくな
い。一方、付着量が120mg/m2超の場合は、しご
き加工は問題ないが、潤滑油(B)が少ない場合は絞り
加工でカップの底が抜けたり、また缶胴が途中から破断
すると言った危険性が高くなり、それを避けるためには
潤滑油(B)の塗油量も多くする必要があり、経済的で
はない。また、潤滑油(B)の必要な塗油量は片面の塗
油量として10〜80mg/m2である。潤滑油(B)
の付着量が10mg/m2未満の場合は、絞り加工でカ
ップの底が抜けたり、また缶胴が途中から破断すると言
った危険性が高くなり、好ましくない。一方、付着量が
80g/m2超の場合は、絞り加工は問題ないが、潤滑
油(A)が少ない場合はしごき加工の際、缶胴破断が起
こり易くなり好ましくない。
【0031】更に、潤滑油(A)と(B)の総塗油量
は、片面の塗油量として30〜200mg/m2の量を
塗油する。下限値の30mg/m2未満では、第1工程
の絞り加工および第2工程の再絞り加工で、潤滑油の寄
りが起こり、しごき加工で必要な潤滑油量が確保されな
いこともあるため、缶胴破断につながることもあり好ま
しくない。一方、上限値の200mg/m2を超えて
も、効果は飽和しており、経済的でない。また、塗油量
が多いと脱脂性が悪くなるという問題が生じる可能性も
あり好ましくない。
【0032】即ち、本発明で得られたしごき加工後缶体
は、缶上端部を切断して正規の缶高さにするトリミング
を行った後、脱脂工程、外面印刷工程、缶開口部を縮径
にするネック加工と天蓋を巻き締めるために必要な開口
部上端部分を外方へ曲げるフランジ加工等の工程を経
て、内容物が充填される缶体となる。上記の脱脂が不十
分な場合は、外面の印刷でインキがはじいたり、内面で
は内容物のフレーバー性に影響したりして、問題とな
る。従って、脱脂不良は避けねばならない事柄である。
【0033】脱脂はアルカリ水溶液のスプレーによる脱
脂や、加熱による揮発脱脂等、周知慣用の手段が適用で
きるが、本発明における潤滑油の塗油量の上限値である
200mg/m2を超えると、脱脂時間が長く要するた
め、生産性の点で不利である。最適な塗油量としては、
成形加工性および脱脂性の観点から、好ましくは40〜
150mg/m2、更に好ましくは40〜100mg/
2であるが、特にしごき加工の加工度が高い場合は若
干多目にすることが望ましい。
【0034】融点が40℃以上である潤滑油(A)とし
ては、白色ワセリン(別名、ペトロラタム)、パラフィ
ンワックス、マクロクリスタリンワックス等があり、ま
た、流動点が5℃以下である潤滑油(B)としては、例
えば流動パラフィン等があり、これらのものが本発明で
は使用される。なお、潤滑油(A)の融点は、JIS−
K2235の試験法に準じて測定し、一方の潤滑油
(B)の流動点は、JIS−K2269の試験法に準じ
て測定したものである。
【0035】潤滑油のラミネート板への塗布方法として
は、潤滑油(A)は常温で液体でないため加温して液体
にして、平滑ロールによる塗布、グラビアロールによる
塗布、スプレーによる塗布等の常用の手段が適用され
る。また、潤滑油(B)は常温で液体であるため、その
ままロールによる塗布、グラビアロールによる塗布、ス
プレーによる塗布等の常用の手段が適用される。
【0036】次に、本発明の方法である、缶の成形加工
方法について述べる。本発明の方法では、ポリエステル
樹脂フィルム被覆したラミネートアルミニウム板を、絞
り加工にてカップ状に成形する第1工程と、次いで第1
工程で得たカップを更に再絞り加工し、第1工程で得た
カップより缶径が小さく、缶高さの高いカップを成形す
る第2工程と、次いでこのカップの缶壁部をパンチとし
ごきダイスの間に通し、缶壁を薄く伸ばすしごき加工を
行う第3工程からなっている。上記の成形加工方法のう
ち、第1工程の絞り加工、第2工程の再絞り加工、第3
工程のしごき加工は、いずれも缶壁部の板厚減少を伴っ
た加工であるが、第4工程のネック加工・フランジ加工
は、事実上板厚減少は伴わない加工である。従って、シ
ームレス缶として成形加工されたものは、第3工程後の
缶体が最終缶体となる。
【0037】第1工程の絞り加工は、ラミネート板の温
度を被覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷
結晶化温度(Tc)の範囲で、ストレッチ加工および/
またはしごき加工を付加し、加工度として、前記式
(1)から求められる値として10%以内になるように
行う。
【0038】また、第2工程の再絞り加工も、第1工程
で得たカップの温度を被覆樹脂フィルムのガラス転移温
度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲で、ストレ
ッチ加工および/またはしごき加工を付加し、加工度と
して式(1)で求められる値として第1工程の加工度と
合わせて25%以内で行う。
【0039】第3工程のしごき加工は、絞り加工で得た
カップの缶体温度を潤滑油(A)の融点以下にした後、
加工金型の温度を120℃以下に保持し、しごき加工後
の最終缶体の加工度として50〜70%の範囲になるよ
う成形加工を行う。
【0040】まず、本発明の缶体成形方法における加工
温度の限定について述べる。本発明の方法における、第
1工程の絞り加工および第2工程の再絞り加工を、被覆
樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温
度(Tc)の範囲に限定した理由は、絞り加工によるカ
ップ底部コーナーの被膜健全性を確保するためである。
【0041】カップ底部コーナーの樹脂フィルムは、パ
ンチが最初に当たる個所であり、高い衝撃が掛かる。そ
して、この部位では樹脂フィルムにマイクロクラックが
生じ易い。特に、第1工程の絞り加工によるカップ底部
コーナーは、第2工程の再絞り加工後はカップ胴壁部
(側壁部)となり、更に第3工程のしごき加工で延伸さ
れるため、第1工程の絞り加工でカップ底部コーナーの
樹脂フィルムにマイクロクラックが生じた場合、その後
の加工で、激しい被膜欠陥となってしまう危険性が高く
なり好ましくない。従って、特に絞り加工によるカップ
底部コーナーの被膜健全性確保は、缶体の内面品質の点
で重要な要素となる。かかる意味において、樹脂フィル
ムのガラス転移温度(Tg)以下での絞り加工は、カッ
プの缶底部コーナーの樹脂フィルムにマイクロクラック
が生じ易く、好ましくない。
【0042】一方、冷結晶化温度(Tc)以上で絞り加
工を行った場合は、樹脂の熱結晶化が起こり易くなり、
樹脂フィルムの衝撃強度が低下し、カップ底部コーナー
の樹脂フィルムにマイクロクラックが生じ易いこと、更
には、前述したように熱結晶化が起こり易くなることは
しごき加工で被膜欠陥の発生につながる危険性が高くな
ること等から、好ましくない。第1工程の絞り加工およ
び第2工程の再絞り加工を、被覆樹脂フィルムのガラス
転移温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲に限
定したのは、上記の理由からで、好ましくはガラス転移
温度(Tg)+5℃から冷結晶化温度(Tc)−10℃
の範囲が良い。
【0043】絞り加工および再絞り加工に供するラミネ
ート板やカップの温度とは、接触式温度計等で測定され
る表面温度を指し、ラミネート板やカップの温度を、被
覆樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)から冷結晶化
温度(Tc)の範囲に制御する手段としては、ラミネー
ト板やカップを電気炉中で加熱する方法や熱風で加熱す
る方法等、常用の手段が適用される。
【0044】また、絞り加工や再絞り加工を行う金型の
表面温度を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度
(Tc)の範囲に加熱して成形加工する加温加工方法
も、ラミネート板やカップを加熱した場合と同様な効果
が得られるが、この場合は、絞り加工や再絞り加工を行
う前のラミネート板やカップの表面温度により、加工金
型の設定温度を決める必要があるが、ラミネート板やカ
ップの表面温度が、例えば常温の場合は、設定温度はガ
ラス転移温度(Tg)より10〜15℃高めに設定する
と良い。
【0045】上記の常用の手段でラミネート板やカップ
の加熱を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温度
(Tc)の範囲にして成形加工する方法と、加工を行う
金型の表面温度を、ガラス転移温度(Tg)から冷結晶
化温度(Tc)の範囲に加熱して成形加工する加温加工
方法の併用も可能であり、設備にあった手段が採用でき
る。
【0046】第1工程の絞り加工、第2工程の再絞り加
工に次いで行う第3工程のしごき加工は、再絞り加工で
得たカップの温度を潤滑油(A)の融点以下にした後、
加工金型の温度を120℃以下に保持して行う。なお、
ここでいう再絞り加工で得たカップの温度とは、カップ
の表面温度を指し、加工金型の温度とは、金型の表面温
度を指す。
【0047】前述したように、樹脂フィルムの欠陥は、
内外面共、しごき加工で最も起こり易い。しごき加工
は、缶壁部のみを、その胴壁部の厚さより狭い間隔を有
するパンチとしごきダイスの間のクリアランス部を瞬時
に通し、薄肉化する加工であるため、加工の際には金属
の激しい加工熱が発生し、樹脂フィルムの特性を大きく
変化させる。熱による樹脂フィルムの特性変化は、
(1)樹脂フィルムの軟化、(2)樹脂フィルムの結晶
化、等があるがいずれの特性変化も成形加工による被膜
欠陥の発生原因となることは前述した通りである。従っ
て、このしごき加工の温度制御は樹脂フィルムの欠陥発
生防止の点から重要である。そこで、本発明の方法で
は、第2工程の再絞り加工で得たカップの温度を潤滑油
(A)の融点以下にしてしごき加工に供すると共に、併
せて加工金型の温度を120℃以下に保持して成形加工
を行う。なお、ここでいう再絞り加工で得たカップの温
度とは、カップの表面温度を指し、加工金型の温度と
は、金型の表面温度を指す。
【0048】カップの温度が潤滑油(A)の融点温度を
超えると、付着している潤滑油は液体となっており、そ
の結果、樹脂フィルムと成形加工金型との離型性が悪く
なり、樹脂フィルムが傷つき易く、また、缶外面側は
「かじり」が入り易くなるので好ましくない。
【0049】また、加工金型の温度は、120℃以下で
しごき加工を行うが、120℃を超える温度では、缶内
面側では樹脂フィルムと成形加工金型との離型性が悪
く、樹脂フィルムの傷つきが激しくなって、缶内面側は
耐食性確保が難しいと共に、場合によっては樹脂フィル
ムと成形加工金型との離型の際に缶胴部が座屈し、正常
な缶体が得られないと言った事態が発生することがあ
る。更に、しごき加工における加工金型が120℃を超
える温度では、ポリエステル樹脂フィルムの配向結晶化
が急激に進み、その結果、樹脂フィルムの亀裂欠陥が発
生し易くなる危険性が高くなる。また、外面側の樹脂フ
ィルムは、前述した「かじり」が激しく入り、その後行
われる印刷での外観性が劣るだけでなく、場合によって
は「かじり」部を起点とする缶胴の破断が起こる。
【0050】従って、しごき加工における加工温度は、
缶体の内外面の品質確保の点から極めて重要で、本発明
のようにポリエステル樹脂フィルムを被覆したラミネー
トアルミニウム板から、絞りしごき加工によって良好な
品質を有する缶体を得るには、加工金型の温度を120
℃以下に保持することが重要である。本発明の方法にお
いて、しごき加工の際の加工金型の温度を120℃以下
に保持して行うと、限定した理由は上記の理由からであ
る。
【0051】しごき加工は、加工金型全体の温度を12
0℃以下に保持して行うのが好ましいが、特に加工度が
低い場合は加工パンチの温度を120℃以下に保持する
だけでも樹脂フィルムの欠陥防止効果は得られる。しご
き加工の際の加工金型または加工パンチの温度は、基本
的には低い方が良く、好適な温度としては100℃以下
にするのが好ましい。なお、しごき加工は、しごきダイ
スを一枚で行う1段しごき加工法や、二枚乃至は三枚で
行う多段しごき加工法などが適用出来る。
【0052】再絞り加工で得たカップの温度を潤滑油
(A)の融点以下にする手段としては、絞り加工で得た
カップの温度が潤滑油(A)の融点を超えている場合は
冷風を当てる等の手法が採用でき、また、加工金型の温
度を120℃以下にする手段としては、金型に冷却水を
通す方法、水、又は潤滑成分を水に溶解または分散させ
たものを吹きかけて冷却する方法、更にはこれらの併用
と言った方法が採用できる。どの手法を採用するかは、
設備との関係で適宜選択することが好ましい。
【0053】次に、本発明の缶体成形方法における加工
度の限定について述べる。第1工程の絞り加工の加工度
は、下記の式(1)から求められる値として10%以内
になるように行い、第2工程の再絞り加工の加工度は、
式(1)から求められる値として第1工程での加工度と
合わせて25%以内になるように成形加工を行い、第3
工程のしごき加工の加工度は、式(1)から求められる
加工度として第1工程および第2工程での加工度と合わ
せて50〜70%の範囲で成形加工を行うものである。
【数2】 加工度(%)=〔(Bt−Wt)/Bt〕×100 ……(1) Bt:缶底部のアルミニウム板の板厚 Wt:缶胴側壁部のアルミニウム板の最も薄い部位の板
【0054】式(1)から求められる値として、第1工
程の絞り加工の加工度が10%以内になるように、第2
工程の再絞り加工後の加工度が第1工程での加工度と合
わせて25%以内になるように行う理由は、前述したよ
うに、通常の絞り加工ではカップの側壁部は元板厚(本
発明では、缶底部の板厚を指す)より厚くなるため、こ
の状態からしごき加工、特に高加工度のしごき加工を行
うと、加工時の熱と伸ばし加工により、樹脂フィルムが
配向結晶化し、成形に耐えられずフィルムに亀裂が発生
する場合があるからである。従って、それを避けるため
には、上記のように順次加工度を上げた加工を行い、最
終のしごき加工の加工度はなるべく低く抑える方が良
い。
【0055】かかる意味から本発明の方法であれば、缶
内外面の樹脂フィルムの健全性が確保される成形加工が
可能となる。特に、第2工程終了時の再絞りカップの段
階で、側壁部の樹脂フィルムが完全に結晶化していない
状態にしておくことが、第3工程のしごき加工後の缶体
内面の樹脂フィルムの健全性確保には重要であり、再絞
り加工後の加工度として25%以内であれば、しごき加
工後の内外面の樹脂フィルムの健全性は確保される。
【0056】なお本発明の方法では、上記の第1工程お
よび第2工程で行う、ストレッチ加工および/またはし
ごき加工を付加した絞り加工および再絞り加工は、スト
レッチ加工のみを付加した方法、しごき加工を付加した
方法、ストレッチ加工としごき加工の両者を付加した方
法、のいずれの方法でも良く、適宜適用される。
【0057】
【実施例】以下、実施例にて、本発明の方法の効果を具
体的に説明するが、その前に本発明の方法で行った評価
方法について述べる。 (1)潤滑油の流動点の測定は、JIS−K2269の
試験法に準じて測定を行った。 (2)潤滑油の融点の測定は、JIS−K2235の試
験法に準じて測定を行った。 (3)樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法にて測定し
た。 (4)樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)、冷結晶
化温度(Tc)、融点(Tm)は示差走査熱量計(DS
C)で、10℃/分の昇温速度で測定し、ガラス転移温
度は転移の始まる点をその温度とし、冷結晶化温度(T
c)、融点(Tm)は、それぞれのピーク温度を冷結晶
化温度および融点とした。 (5)カップの絞り加工後の缶底部コーナーのマイクロ
クラックについては、光学顕微鏡で観察しその程度を評
価した。評価は次のように評価基準を設定し行った。 ○:クラックなく良好 □:軽微なクラック発生 △:明確なクラック発生 ×:激しいクラック発生 (6)フィルムと加工パンチの離型性は、成形缶上部に
起こる缶体の座屈程度を観察し評価した。離型性の評価
は、次のように評価基準を設定し行った。 ○:缶開口部の座屈なく良好 □:缶開口部に軽微な座屈あり △:開口部円周の1/3未満の座屈 ×:開口部円周の1/3以上の座屈 (7)缶外面の耐かじり性は、成形した缶体胴壁部外面
のかじり発生程度を観察して評価した。 ○:かじりなく良好 □:軽微なかじり発生 △:外面の1/3未満にかじり発生 ×:外面の1/3以上に激しいかじり発生 (8)缶内面の樹脂フィルムの傷付き程度については、
1.0重量%食塩水に界面活性剤を0.1重量%添加し
た電解液で、缶体を陽極、陰極を銅線とし、印加電圧6
Vで3秒後の電流値を測定し、樹脂フィルムの被膜の健
全性を評価した(以降、この評価法をQTV試験と称す
る)。
【0058】実験例1 表面に被膜C量として16mg/m2のリン酸−フェノ
ール樹脂の有機無機複合型化成処理被膜を有する、板厚
0.26mmのアルミニウム板(3004系合金)の両
面に、ガラス転移温度(Tg)が64℃、冷結晶化温度
(Tc)が122℃、融点が241℃、厚み20μmの
二軸延伸ポリエステル樹脂フイルムを熱圧着法で接着し
た後、加熱・冷却し、非晶質化ポリエステル樹脂フイル
ム被覆ラミネート板を作成した。得られたラミネート板
のポリエステル樹脂フイルムの密度は、表1〜2に示し
た。
【0059】次いで、上記のポリエステル樹脂フイルム
を被覆したラミネート板のフイルム面の両面に成形用潤
滑剤として、融点が57℃の潤滑油(A)は加温し液状
にしてスプレーにより塗油し、更にその上層に、流動点
が−12.5℃の潤滑油(B)をスプレーにより塗油し
た。(A)と(B)のそれぞれの塗油量は、63mg/
2と0mg/m2で総塗油量は63mg/m2(テスト
1)、49mg/m2と12mg/m2で総塗油量61m
g/m2(テスト2)、39mg/m2と18mg/m2
で総塗油量57mg/m2(テスト3)、33mg/m2
と32mg/m2で総塗油量65mg/m2(テスト
4)、22mg/m2と39mg/m2で総塗油量61m
g/m2(テスト5)、13mg/m2と52mg/m2
で総塗油量65mg/m2(テスト6)、0mg/m2
58mg/m2で総塗油量58mg/m2(テスト7)と
した。
【0060】こうして得た塗油ラミネート板の温度を7
0℃にして、加工度が7%のストレッチ加工およびしご
き加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカ
ップの、缶底部コーナーの樹脂フイルムのマイクロクラ
ック発生状況について調べその結果を表3〜4に示し
た。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加
工度が22%のストレッチ加工およびしごき加工を付加
した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカッ
プの温度を40℃した後、金型温度を80℃に保持し最
終加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビー
ル缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得られ
た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面
の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表3〜4
に示した。表1〜4から、本発明の実施例1〜4である
テスト2〜5は、絞り加工で得られるカップの底部コー
ナー部の樹脂フイルムのクラック発生もなく、またしご
き加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好
で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られて
いることが分かる。一方、比較例1のテスト1はカップ
の絞り加工で、底部の抜けが散発し、絞り加工性が実施
例1〜4に比べ劣っていた。また、比較例2のテスト6
は、しごき加工で缶胴部の破断が散発し、比較例3のテ
スト7はしごき加工で缶胴部の破断が多発し、共にしご
き加工性が実施例1〜4に比べ劣っていた。
【0061】下記表中、*1〜*8は下記の説明のとお
りである。 *1 潤Aは潤滑油Aを示す。 *2 塗油量の単位はmg/m2である。 *3 潤Bは潤滑油Bを示す。 *4 総塗油量は、片面に塗布された潤滑油の量を示
し、単位はmg/m2である。 *5 第1工程のストレッチ加工および/またはしごき
加工を付加した絞り加工工程を示す。 *6 第2工程のストレッチ加工および/またはしごき
加工を付加した再絞り加工工程を示す。 *7 第3工程のしごき加工工程を示す。 *8 実施例および比較例の表示の項については、実施
例1、2、…を実1、実2、…と、比較例1、2、…を
比1、比2…と表示した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】 (1):カップ絞り加工で底抜けが散発した
【0065】
【表4】 (2):しごき加工で缶胴の破断が散発 (3):しごき加工で缶胴の破断が多発
【0066】実験例2 実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フイルム
ラミネート板を用いて、実験例1の手順に準じて、両面
に成形用潤滑剤として融点が57℃の潤滑油(A)は加
温し液状にしてスプレーで塗油し、更にその上層に流動
点が−12.5℃の潤滑油(B)をスプレーで塗油し
た。(A)、(B)それぞれの塗油量は、17mg/m
2と9mg/m2で総塗油量は26mg/m2(テスト
8)、26mg/m2と12mg/m2で総塗油量38m
g/m2(テスト9)、46mg/m2と20mg/m2
で総塗油量66mg/m2(テスト10)、66mg/
2と25mg/m2で総塗油量91mg/m2(テスト
11)、83mg/m2と42mg/m2で総塗油量12
5mg/m2(テスト12)、107mg/m2と61m
g/m2で総塗油量168mg/m2(テスト13)、1
18mg/m2と75mg/m2で総塗油量193mg/
2(テスト14)とした。
【0067】こうして得た塗油ラミネート板の温度を7
0℃にして、加工度が7%のストレッチ加工およびしご
き加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカ
ップの、底部コーナーの樹脂フイルムのマイクロクラッ
ク発生状況について調べその結果を表7〜8に示した。
次いで、得られたカップの温度を70℃にして、加工度
が15%のストレッチ加工およびしごき加工を付加した
再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカップの
温度を40℃にした後、金型温度を80℃に保持し最終
加工度が60%のしごき加工を行い、350mlビール
缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして得られた
缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内面の
品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表7〜8に
示した。
【0068】表5〜8から、本発明の実施例5〜10で
あるテスト9〜14は絞り加工で得られるカップの底部
コーナー部の樹脂フイルムのクラック発生もなく、また
しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良
好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られ
ていることが分かる。一方、比較例4のテスト8は、絞
り加工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フイル
ムに僅かにクラックが発生した。またしごき加工時の金
型離型性、缶外面の耐かじり性共に実施例5〜10に比
べ劣り、QTV値も高い値を示した。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】実験例3 実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フイルム
ラミネート板を用いて、実験例1の手順に準じて、両面
に成形用潤滑剤として、融点が57℃の潤滑油(A)は
加温し液状にしてスプレーにより塗油し、更にその上層
に、スプレーにより下記の流動点が−20.0℃〜2.
5℃の潤滑油(B)を塗油した。流動点が2.5℃の潤
滑油(B)(テスト15)、流動点が−7.5℃の潤滑
油(B)(テスト16)、流動点が−12.5℃の潤滑
油(B)(テスト17)、流動点が−17.5℃の潤滑
油(B)(テスト18)、流動点が−20.0℃の潤滑
油(B)(テスト19)を用い、それぞれの塗油量は表
9〜10に示した。
【0074】こうして得た塗油ラミネート板の温度を7
0℃にして、加工度が5%のしごき加工を付加した絞り
加工を行った。この時得られたカップの、底部コーナー
の樹脂フイルムのマイクロクラック発生状況について調
べ、その結果は表11〜12に示した。次いで、得られ
たカップの温度を70℃にして、加工度が15%のスト
レッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行
った後、再絞り加工で得られたカップの温度を50℃に
した後、金型温度を80℃に保持し最終加工度が60%
のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシー
ムレス缶を作成した。こうして得られた缶体について、
金型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試
験で調べた。その評価結果を表11〜12に示した。
【0075】表9〜12から、本発明の実施例11〜1
5であるテスト15〜19は絞り加工で得られるカップ
の缶底コーナー部の樹脂フイルムのクラック発生もな
く、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり
性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体
が得られていることが分かる。
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
【表11】
【0079】
【表12】
【0080】実験例4 実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フイルム
ラミネート板を用いて、実験例1の手順に準じて、両面
に成形用潤滑剤として、潤滑油(A)は加温し液状にし
てスプレーにより塗油し、その上層に潤滑油(B)をス
プレーにより塗油した。評価した潤滑油は、融点50℃
の潤滑油(A)と流動点−12.5℃の潤滑油(B)
(テスト20)、融点54℃の潤滑油(A)と流動点−
12.5℃の潤滑油(B)(テスト21)、融点63℃
の潤滑油(A)と流動点−12.5℃の潤滑油(B)
(テスト22)、融点75℃の潤滑油(A)と流動点−
12.5℃の潤滑油(B)(テスト23)、融点84℃
の潤滑油(A)と流動点−12.5℃の潤滑油(B)
(テスト24)で、それぞれの塗油量は表13〜14に
示した。
【0081】こうして得た塗油ラミネート板の温度を7
0℃にして、加工度が7%のストレッチ加工およびしご
き加工を付加した絞り加工を行った。この時得られたカ
ップの、底部コーナーの樹脂フイルムのマイクロクラッ
ク発生状況について調べ、その結果を表15〜16に示
した。次いで、得られたカップの温度を70℃にして、
加工度が15%のストレッチ加工およびしごき加工を付
加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得られたカ
ップの温度を50℃にした後、金型温度を100℃に保
持し最終加工度が60%のしごき加工を行い、350m
lビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こうして
得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および缶内
面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表15
〜16に示した。
【0082】表13〜16から、本発明の実施例16〜
20であるテスト20〜24は、絞り加工で得られるカ
ップの底部コーナー部の樹脂フイルムのクラック発生も
なく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじ
り性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶
体が得られていることが分かる。
【0083】
【表13】
【0084】
【表14】
【0085】
【表15】
【0086】
【表16】
【0087】実験例5 実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フイルム
ラミネート板を用いて、実験例1の手順に準じて、両面
に成形用潤滑剤として融点が57℃の潤滑油(A)は加
温し液状にしてスプレーにより38mg/m2塗油し、
更にその上層に流動点が−12.5℃の潤滑油(B)を
スプレーにより18mg/m2、総塗油量として56m
g/m2、塗油した。
【0088】こうして得た塗油ラミネート板の温度を5
0℃(テスト25)、70℃(テスト26)、90℃
(テスト27)、110℃(テスト28)、120℃
(テスト29)、130℃(テスト30)にしたものに
対し、しごき加工を付加した加工度が5%の絞り加工を
行った。この時得られたカップの、底部コーナーの樹脂
フイルムのマイクロクラック発生状況について観察し、
その結果を表22〜26に示した。次いで、得られたカ
ップの温度を70℃にして、ストレッチ加工およびしご
き加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を行った
後、再絞り加工で得られたカップの温度を40℃にした
後、金型温度を80℃に保持し最終加工度が60%のし
ごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレ
ス缶を作成した。
【0089】また、上記のテスト26で得られた再絞り
加工のカップについて、温度をそれぞれ30℃(テスト
31)、40℃(テスト32)、50℃(テスト3
3)、60℃(テスト34)、70℃(テスト35)に
した後、金型温度を80℃に保持し最終加工度が60%
のしごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシー
ムレス缶を作成した。比較のため上記のテスト30で得
た絞りカップの温度を70℃にし、ストレッチ加工およ
びしごき加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を
行った後、再絞りカップの温度をそれぞれ40℃(テス
ト36)、60℃(テスト37)にしたものに対し、金
型温度を100℃に保持し最終加工度が60%のしごき
加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレス缶
を作成した。
【0090】また、比較のため上記テスト26で得た絞
りカップの温度を70℃にして、ストレッチ加工および
しごき加工を付加した加工度が15%の再絞り加工を行
った後、再絞りカップの温度を40℃にして、金型温度
をそれぞれ70℃(テスト38)、100℃(テスト3
9)、120℃(テスト40)、140℃(テスト4
1)に保持したものを使用し、最終加工度が60%のし
ごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシームレ
ス缶を作成した。
【0091】こうして得た缶体について、金型離型性、
耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。
その評価結果を表22〜26に示した。
【0092】表17〜26から、本発明の実施例21〜
24であるテスト26〜29は、絞り加工で得られるカ
ップの底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発生もな
く、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり
性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体
が得られていることが分かる。一方、比較例5、6であ
るテスト25、30は、しごき加工時の金型離型性、缶
外面の耐かじり性は共に良好であるが、絞り加工で得ら
れるカップの底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発
生は、実施例21〜24に比べ劣り、その結果QTV値
は高い値を示し、内面品質は実施例21〜24に比べ劣
る。
【0093】また、本発明の実施例25〜27であるテ
スト31〜33は、絞り加工で得られるカップの底部コ
ーナーの樹脂フイルムのクラック発生もなく、またしご
き加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好
で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得られて
いることが分かる。一方、比較例7、8であるテスト3
4、35は、絞り加工で得られるカップの底部コーナー
の樹脂フイルムのクラック発生は見られないが、しごき
加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に劣り高
いQTV値を示しており、缶内品質が実施例25〜27
に比べ劣ることが分かる。
【0094】比較例10のテスト37の場合は、絞り加
工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フイルムに
クラックが発生し、また、しごき加工時の金型離型性、
缶外面の耐かじり性は共に劣り、高いQTV値を示して
おり、缶内面品質がどの実施例に比べても劣ることが分
かる。しかも、比較例6と比べても金型離型性、耐かじ
り性、缶内面品質が劣ることが分かる。比較例9のテス
ト36は前述した比較例6のテスト30の再現評価であ
る。
【0095】更に、本発明の実施例28〜30のテスト
38〜40は、絞り加工で得られるカップの底部コーナ
ーの樹脂フイルムのクラック発生もなく、またしごき加
工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共に良好で、低
いQTV値を示しており、良好な缶体が得られているこ
とが分かる。一方、比較例11のテスト41は、絞り加
工で得られるカップの底部コーナー部の樹脂フイルムの
クラック発生は見られないが、しごき加工時の金型離型
性、缶外面の耐かじり性は共に劣り高いQTV値を示し
ており、缶内面品質が実施例28〜31に比べ劣ること
が分かる。
【0096】
【表17】
【0097】
【表18】
【0098】
【表19】
【0099】
【表20】
【0100】
【表21】
【0101】
【表22】
【0102】
【表23】
【0103】
【表24】
【0104】
【表25】
【0105】
【表26】
【0106】実験例6 表面に被膜C量として26mg/m2のリン酸−フェノ
ール樹脂の有機無機複合型化成処理被膜を有する、板厚
0.28mmのアルミニウム板(3004系合金)の両
面に、ガラス転移温度(Tg)が67℃、冷結晶化温度
(Tc)が123℃、融点が238℃のポリエステル樹
脂フイルムの厚みがそれぞれ、8μm(テスト42)、
15μm(テスト43)、20μm(テスト44)、3
0μm(テスト45)、40μm(テスト46)、50
μm(テスト47)の二軸延伸フイルムを熱圧着法で接
着した後、加熱・冷却し5種類の非晶質化ポリエステル
樹脂フイルム被覆ラミネート板を作成した。これら5種
類の非晶質化ポリエステル樹脂フイルムの密度は、表2
7〜28に示した。
【0107】次いで、実験例1の手順に準じて、両面に
成形用潤滑剤として融点が57℃の潤滑油(A)は加温
し液状にしてグラビアロールにより塗油をし、更にその
上層に流動点が−7.5℃の潤滑油(B)をグラビアロ
ールにより塗油した。塗油量は表27〜28に示した。
こうして得た塗油ラミネート板の温度を70℃にして、
加工度が7%のストレッチ加工およびしごき加工を付加
した絞り加工を行った。この時得られたカップの、缶底
部コーナーの樹脂フイルムのマイクロクラック発生状況
について調べ、その結果を表29〜30に示した。
【0108】次いで、得られたカップの温度を70℃に
して、加工度が22%のストレッチ加工およびしごき加
工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得ら
れたカップの温度を40℃にした後、金型温度を80℃
に保持し最終加工度が63%のしごき加工を行い、35
0mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こう
して得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および
缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表
29〜30に示した。表27〜30から、本発明の実施
例31〜35のテスト42〜47は、絞り加工で得られ
るカップの底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発生
もなく、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐か
じり性共に良好で、低いQTV値を示しており、良好な
缶体が得られていることが分かる。一方、比較例12の
テスト42は、絞り加工で得られるカップの底部コーナ
ーの樹脂フイルムのクラック発生はなく良好で、しごき
加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性も共に良好だ
が、QTV値は高い値を示した。
【0109】
【表27】
【0110】
【表28】
【0111】
【表29】
【0112】
【表30】
【0113】実験例7 実験例6で用いた有機無機複合型化成処理被膜を有する
アルミニウム板の両面に、樹脂フイルムの融点が193
℃のフイルム(テスト48)、融点が205℃のフイル
ム(テスト49)、218℃のフイルム(テスト5
0)、融点が230℃のフイルム(テスト51)、融点
が242℃のフイルム(テスト52)、融点が252℃
のフイルム(テスト53)、融点が261℃のフイルム
(テスト54)の、それぞれ厚みが20μmの二軸延伸
ポリエステル樹脂フイルムを熱圧着法で接着した後、加
熱・冷却し7種類の非晶質化ポリエステル樹脂フイルム
被覆ラミネート板を作成した。各テスト板の樹脂フイル
ムのガラス転移温度(Tg)、冷結晶化温度(Tc)お
よびラミネート板の樹脂フイルムの密度は、表31〜3
2に示した。
【0114】次いで、実験例1の手順に準じて、両面に
成形用潤滑剤として融点が57℃の潤滑油(A)は加温
し液状にして、グラビアロールにより塗油をし、更にそ
の上層に流動点が−12.5℃の潤滑油(B)をグラビ
アロールにより塗油した。塗油量は表31〜32に示し
た。こうして得た塗油ラミネート板の温度を75℃にし
て、加工度が5%のストレッチ加工を付加した絞り加工
を行った。この時得られたカップの、底部コーナーの樹
脂フイルムのマイクロクラック発生状況について調べ、
その結果を表33〜34に示した。
【0115】次いで、得られたカップの温度を75℃に
して、加工度が22%のストレッチ加工およびしごき加
工を付加した再絞り加工を行った後、再絞り加工で得ら
れたカップの温度を40℃にした後、金型温度を80℃
に保持し最終加工度が63%のしごき加工を行い、35
0mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。こう
して得た缶体について、金型離型性、耐かじり性および
缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価結果を表
33〜34に示した。
【0116】表31〜34から、本発明の実施例36〜
40のテスト49〜53は、絞り加工で得られるカップ
の底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発生もなく、
またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共
に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得
られていることが分かる。一方、比較例13のテスト4
8は、絞り加工で得られるカップの缶底コーナー部の樹
脂フイルムのクラックは発生もなく良好だが、しごき加
工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に実施例3
6〜40に比べ劣り、QTV値も高い値を示した。また
比較例14のテスト54の場合は、絞り加工で得られる
カップの底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発生
は、実施例36〜40に比べ若干劣る程度であったが、
しごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性は共に
良好にもかかわらず、高いQTV値を示した。
【0117】
【表31】
【0118】
【表32】
【0119】
【表33】
【0120】
【表34】
【0121】実験例8 表面に被膜C量として23mg/m2のリン酸−フェノ
ール樹脂の複合化成処理被膜を有する、板厚0.24m
mのアルミニウム板(3052系合金)の両面に、実験
例6のテスト44で用いたポリエステル樹脂フイルムを
圧着条件を変えて被覆した後、必要に応じ加熱冷却し、
密度の異なるポリエステル樹脂フイルム被覆ラミネート
板を作成した。得られたラミネート板の樹脂フイルムの
密度は、1.343(テスト55)、1.352(テス
ト56)、1.368(テスト57)、1.385(テ
スト58)であった。次いで、実験例1の手順に準じ
て、両面に成形用潤滑剤として融点が57℃の潤滑油
(A)は加温し液状にしてグラビアロールにより塗油
し、更にその上層に流動点が−12.5℃の潤滑油
(B)をグラビアロールにより塗油した。塗油量は表3
5に示した。
【0122】こうして得た塗油ラミネート板の温度を7
0℃にして、加工度が5%のストレッチ加工を付加した
絞り加工を行った。この時得られたカップの、底部コー
ナーの樹脂フイルムのマイクロクラック発生状況につい
て調べ、その結果を表36に示した。次いで、得られた
カップの温度を70℃にして、加工度が22%のストレ
ッチ加工およびしごき加工を付加した再絞り加工を行っ
た後、再絞り加工で得られたカップの温度を40℃にし
た後、金型温度を80℃に保持し最終加工度が56%の
しごき加工を行い、350mlビール缶サイズのシーム
レス缶を作成した。こうして得られた缶体について、金
型離型性、耐かじり性および缶内面の品質をQTV試験
で調べた。その評価結果を表36に示した。
【0123】表35〜36から、本発明の実施例41、
42のテスト55、56は、絞り加工で得られるカップ
の底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発生もなく、
またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共
に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得
られていることが分かる。一方、比較例15、16のテ
スト57、58は、絞り加工で得られるカップの缶底コ
ーナー部の樹脂フイルムのクラックは発生もなく良好で
あり、またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじ
り性は共に良好にもかかわらず、高いQTV値を示し内
面品質は実施例41、42に比べ劣る。
【0124】
【表35】
【0125】
【表36】
【0126】実験例9 実験例1で作成した非晶質化ポリエステル樹脂フイルム
被覆ラミネート板を用いて、実験例1の手順に準じて、
両面に成形用潤滑剤として融点が57℃の潤滑油(A)
は加温し液状にしてスプレーにより38mg/m2塗油
し、更にその上層に流動点が−12.5℃の潤滑油
(B)をスプレーにより18mg/m2、総塗油量とし
て56mg/m2、塗油した。こうして得た塗油ラミネ
ート板を、金型温度をそれぞれ50℃(テスト59)、
70℃(テスト60)、90℃(テスト61)、110
℃(テスト62)、120℃(テスト63)、130℃
(テスト64)にしたものに対し、しごき加工を付加し
た加工度が5%の絞り加工を行った。この時得られたカ
ップの、底部コーナーの樹脂フイルムのマイクロクラッ
ク発生状況について観察し、表39〜40に示した。
【0127】次いで、得られたカップを金型温度を75
℃にして、ストレッチ加工およびしごき加工を付加した
加工度が15%の再絞り加工を行った後、再絞り加工で
得られたカップの温度を40℃にした後、金型温度を8
0℃に保持し最終加工度が60%のしごき加工を行い、
350mlビール缶サイズのシームレス缶を作成した。
こうして得られた缶体について、金型離型性、耐かじり
性および缶内面の品質をQTV試験で調べた。その評価
結果を表39〜40に示した。
【0128】表37〜40から、本発明の実施例43〜
46のテスト60〜63は、絞り加工で得られるカップ
の底部コーナーの樹脂フイルムのクラック発生もなく、
またしごき加工時の金型離型性、缶外面の耐かじり性共
に良好で、低いQTV値を示しており、良好な缶体が得
られていることが分かる。しかし、ラミネート板および
カップの温度をガラス転移温度(Tg)から冷結晶化温
度(Tc)にして成形加工を行った実施例21〜24の
テスト26〜29に比べると、内面品質の点で若干劣る
が、十分実用性を有しているレベルである。一方、比較
例17、18のテスト59、64は、しごき加工時の金
型離型性、缶外面の耐かじり性は共に良好であるが、絞
り加工で得られるカップの底部コーナーの樹脂フイルム
のクラック発生は、実施例21〜24に比べ劣り、その
結果QTV値は高い値を示し、内面品質は実施例43〜
46に比べ劣る。
【0129】
【表37】
【0130】
【表38】
【0131】
【表39】
【0132】
【表40】
【0133】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明を実施す
ることで、得られる缶体内面のポリエステル樹脂フイル
ムは優れた被膜健全性を有しており、その結果高耐食性
のアルミニウムシームレス缶が得られる。従って、種々
の内容物を充填することが可能であり、缶品種の統合が
安心してできるので、そのコスト削減効果は大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B65D 1/16 B65D 1/16 1/28 1/28 (72)発明者 山本 正俊 神奈川県相模原市西橋本5丁目5番1号 大和製罐株式会社内 (72)発明者 笠戸 英一郎 神奈川県相模原市西橋本5丁目5番1号 大和製罐株式会社内 (72)発明者 林 知彦 神奈川県相模原市西橋本5丁目5番1号 大和製罐株式会社内 Fターム(参考) 3E033 AA06 BA09 BA17 BA18 BB08 EA10 EA12 FA10 GA02 4F100 AB10A AJ10H AK41B AK41C BA03 BA06 BA08 BA10B BA10C CA19 DA11 EA021 EC011 EC031 EH462 EJ262 GB16 JA04B JA04C JA13B JA13C JB02 JB16B JB16C JL02 YY00B YY00C

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板厚が0.20mm〜0.32mmのア
    ルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(T
    m)200℃〜260℃、密度1.36未満である熱可
    塑性ポリエステル樹脂フィルムで被覆されたラミネート
    アルミニウム板の樹脂フィルム被覆面に、片面の付着量
    として、作業環境温度下で液状でない潤滑油(A)を2
    0〜120mg/m2、その上層に、作業環境温度下で
    液状である潤滑油(B)を10〜80mg/m2、総塗
    油量として、片面の付着量30〜200mg/m2の塗
    油を施したことを特徴とするシームレス缶用ポリエステ
    ル樹脂被覆アルミニウム板。
  2. 【請求項2】 板厚が0.20mm〜0.32mmのア
    ルミニウム板の両面に、厚み10〜50μm、融点(T
    m)200℃〜260℃、密度1.36未満である熱可
    塑性ポリエステル樹脂で被覆されたラミネートアルミニ
    ウム板を用いてシームレス缶を製造するに際し、該ラミ
    ネートアルミニウム板の樹脂フィルム被覆面に、片面の
    付着量として、融点が40℃以上である潤滑油(A)を
    20〜120mg/m2、その上層に、流動点が5℃以
    下である潤滑油(B)を10〜80mg/m2、総塗油
    量として、片面の付着量30〜200mg/m2の塗油
    を施した後、該ポリエステル樹脂フィルムのガラス転移
    温度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲でストレ
    ッチ加工および/またはしごき加工を付加した絞り加工
    (第1工程)を行い、次いで、第1工程の絞り加工で得
    たカップを該ポリエステル樹脂フィルムのガラス転移温
    度(Tg)から冷結晶化温度(Tc)の範囲でストレッ
    チ加工および/またはしごき加工を付加した再絞り加工
    (第2工程)を行い、次いで、第2工程で得た再絞りカ
    ップの温度を潤滑油(A)の融点以下にし、加工金型の
    温度を120℃以下に保持してしごき加工(第3工程)
    を行うことを特徴とするポリエステル樹脂被覆アルミニ
    ウムシームレス缶の製造方法。
  3. 【請求項3】 第1工程のストレッチ加工および/また
    はしごき加工を付加した絞り加工を、胴壁部の最も薄い
    部位のアルミニウム板の厚み(Wt)と底部のアルミニ
    ウム板の厚み(Bt)との関係において、下記式(1) 【数1】 加工度(%)=〔(Bt−Wt)/Bt〕×100 ……(1) から求められる加工度の値が10%以内になるように行
    い、次いでストレッチ加工および/またはしごき加工を
    付加した第2工程の再絞り加工を、第1工程の絞り加工
    の加工度と合わせて、式(1)から求められる全体の加
    工度の値25%以内になるように行い、次いで第3工程
    のしごき加工を、第1工程の絞り加工の加工度および第
    2工程の再絞り加工の加工度と合わせて、式(1)から
    求められる全体の加工度が50〜70%になるように行
    う請求項2記載のポリエステル樹脂被覆アルミニウムシ
    ームレス缶の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014008739A (ja) * 2012-07-02 2014-01-20 Jfe Steel Corp 樹脂被膜金属板

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