JP3928364B2 - 時計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、増速輪列を備えた時計に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、時計などの小型の精密機器には、動力伝達装置として、多数の歯車を用いた輪列が多用されている。
このような歯車は、一般的に、大歯車と、この大歯車よりも歯数の少ない小歯車とを備えて構成され、各歯車の回転中心には、各歯車を貫通するように回転軸が取り付けられる。これらの各歯車は、この回転軸を中心にして駆動する。なお、小歯車と回転軸とは、一体に形成されている。また、これらの大歯車、小歯車および回転軸とで歯車装置が構成されている。
【0003】
このような大歯車を構成する材料としては、一般的には、切削性が良くて小さい歯形を製造するのに適していることから、真鍮や、リン青銅、ベリリウム銅、洋白等が使用されている。
一方、小歯車を含む回転軸を構成する材料としては、1%程度の炭素を含む炭素鋼を焼き入れしたもの等が使用されている。この際、回転軸の先端部分であるほぞの大きさが0.1mm〜0.2mmと非常に細いことから、歯車装置の組立時に、このほぞが変形しない程度の強度となる材料が使用されている。
このような歯車装置は、前述のような金属材料を切削して、大歯車および小歯車を含む回転軸をそれぞれ製造したあとに、大歯車の回転中心に回転軸を圧入することで製造される。
【0004】
一方、時計においては、複数個の歯車装置を増速輪列とした動力伝達装置が利用されるが、各歯車における噛合い部分の増速比が大きいこと、歯車が一般の機器に比べて小さい割に誤差が同程度に有ること、噛合い部分の数が多いことにより、トルク伝達の安定性を大きく欠いていた。
従って、誤差の影響が特に大きい、各歯車の歯面が正確な面の位置からずれたピッチずれや、回転軸が回転中心からずれた偏心を抑えることが重要となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現状の加工能力では、大歯車を加工する場合には、ピッチ誤差が5μm程度の精度で発生し、偏心が10μm程度の精度で発生していた。一方、小歯車を加工する場合には、ピッチ誤差が5μm程度と大歯車と同じ精度で発生し、偏心は、回転軸と一体成形されていることから、2μm程度の精度で発生していた。このように、歯車装置を前述のような金属で製造した場合には、これ以上に精度を高めて加工することが難しいという問題があった。
【0006】
そこで、特開平5−64464号公報には、半導体製造の技術を応用して、硬度が高く、かつ高精度での加工が可能なシリコンで、歯車装置全体を一体成形する技術が示されている。
【0007】
しかしながら、シリコンは、他の部材とすり合わせると摩耗しやすいので、特に、時計に使用する場合には、時計が24時間使用されて、常に歯車装置が駆動し続けることを考慮すれば、すり合わせが最も頻繁に起こる回転軸での摩耗が発生しやすくなる。このため、回転軸の耐用年数、ひいては歯車装置の耐用年数が短くなるという問題があった。
【0008】
また、歯車装置をシリコンで一体成型すると、回転軸の長さ寸法に応じた厚さのシリコンウエハを用意して加工する必要があり、材料費が嵩んでコストアップに繋がるという問題もあった。
【0009】
このような問題は、一つの歯車と回転軸とからなる歯車装置や、小歯車と回転軸とが別体として成形された歯車装置等のその他の歯車装置においても同様であった。また、これらの歯車装置を時計において使用する場合に限らず、その他の機器において使用する場合にも同様な問題であった。
【0010】
本発明の目的は、加工精度が高く耐久性に優れるとともに、安価に製造できる歯車装置、この歯車装置を備える動力伝達装置、および、この動力伝達装置を備える機器を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、香箱車内のぜんまいが解けるときの機械エネルギが増速輪列を介して調速機に伝達され、前記増速輪列の一方は前記香箱車の香箱歯車と噛み合うとともに、他方は前記調速機と噛み合っている時計において、前記増速輪列を構成する番車の回転軸上に指針が取り付けられるとともに、前記増速輪列を構成するすべての番車は、大歯車と、前記大歯車に比べて歯数の少ない小歯車と、前記小歯車と一体成形された回転軸とを備え、前記回転軸は、前記大歯車の回転中心を貫通して取り付けられており、前記大歯車は、鏡面研磨されたシリコンウエハからドライエッチングにより形成されたシリコン製であり、前記小歯車および前記回転軸は金属製であり、前記回転軸と前記大歯車とは、金とすずとの共融混合物でろう付けされることを特徴とする。
また、本発明は、香箱車内のぜんまいが解けるときの機械エネルギが増速輪列を介して調速機に伝達され、前記増速輪列の一方は前記香箱車の香箱歯車と噛み合うとともに、他方は前記調速機と噛み合っている時計において、前記増速輪列を構成する番車の回転軸上に指針が取り付けられるとともに、前記増速輪列を構成するすべての番車は、大歯車と、前記大歯車に比べて歯数の少ない小歯車と、前記小歯車と一体成形された回転軸とを備え、前記回転軸は、前記大歯車の回転中心を貫通して取り付けられており、前記大歯車は、鏡面研磨されたシリコンウエハからドライエッチングにより形成されたシリコン製であり、 前記小歯車および前記回転軸は金属製であり、前記回転軸は、前記大歯車に接触する接触部が金で被覆され、前記回転軸と前記大歯車とは、前記接触部において、金とシリコンとの共融混合物で接合されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、シリコンを用いて歯車を製造したので、金属を用いて製造する場合に比べて、加工精度の高い歯車を製造できる。また、回転軸は金属製であるため、歯車だけでなく回転軸もシリコン製とした場合に比べて、シリコンの使用量を減少でき、コストを抑えることができる。さらに、回転軸を、シリコンに比べて摩耗しにくい金属製としたので、回転軸、ひいては歯車装置の耐用年数を長くできる。
また、小歯車と回転軸とを一体成形したので、小歯車に対する回転軸の設置位置のずれによる偏心を抑えることができ、精度の高い歯車装置を製造できる。さらに、大歯車と小歯車の両方をシリコンで製造する場合に比べて、小歯車を安価な金属で製造するので、製造コストを抑えることができる。
本発明によれば、増速輪列とした場合には、各歯車での誤差が累乗された動力が伝達されることになるので、誤差の影響を抑えて、正確な動力を伝達できる。このため、伝達ロスの少ない高効率の動力伝達装置を提供することができる。
【0019】
前記歯車は、他の歯車との噛合い部に注油して使用されることが好ましい。
このようにすれば、注がれた油の潤滑性により、噛合い部の耐摩耗性を向上できる。
【0020】
さらに、前記シリコン製の歯車は、その両面が鏡面研磨されていることが好ましい。
ここで、歯車の両面とは、すなわち回転軸に直交する面のことである。
このようにすれば、表面を鏡面研磨したので、各面の油が噛合い部から他へ流れていかないようになり、保油性が向上するため、耐摩耗性を更に向上できる。
【0021】
前記回転軸と前記シリコン製の歯車とは、金とすずとの共融混合物でろう付けされることが好ましい。
シリコン製の歯車に金属製の回転軸を圧入すると、シリコン製の歯車が割れるおそれがあるが、本発明では、共融混合物でろう付けしたので、歯車の割れを防止して、歯車装置の生産性を向上できる。
また、金とすずとの共融混合物を使用したので、この共融混合物の融解温度が一般的な金属に比べて比較的低いことから、金属製である回転軸の焼き鈍しを抑えて、硬度を維持できる。
【0022】
前記回転軸は、前記シリコン製の歯車に接触する接触部が金で被覆され、前記回転軸と前記シリコン製の歯車とは、前記接触部において、金とシリコンとの共融混合物で接合されてもよい。
このような構成によれば、金とシリコンとの共融混合物で、歯車と回転軸とが接合されるので、歯車の割れを防止して、歯車装置の生産性を向上できる。また、金とシリコンの共融混合物で接合したので、この共融混合物の融解温度が一般的な金属に比べて比較的低いことから、金属製である回転軸の焼き鈍しを抑えて、硬度を維持できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る歯車装置を適用した電子制御式機械時計の要部を示す平面図であり、図2及び図3はその断面図である。
【0027】
電子制御式機械時計は、ゼンマイ1a、香箱歯車1b、香箱真1c及び香箱蓋1dからなる香箱車1を備えている。ゼンマイ1aは、外端が香箱歯車1b、内端が香箱真1cに固定されている。香箱真1cは、地板2と輪列受3に支持され、角穴車4と一体で回転するように角穴ネジ5により固定されている。
角穴車4は、時計方向には回転するが反時計方向には回転しないように、こはぜ6と噛み合っている。なお、角穴車4を時計方向に回転しゼンマイを巻く方法は、機械時計の自動巻または手巻機構と同様であるため、説明を省略する。
【0028】
香箱歯車1bの回転は、歯車装置としての二番車107、三番車108、四番車109、五番車110および六番車111からなる増速輪列117を介して増速されて調速機120に伝達される。なお、香箱歯車1bの回転は7倍に増速され二番車107に伝達され、二番車107から三番車108へは8.0倍増速され、三番車108から四番車109へは7.5倍増速され、四番車109から五番車110へは6倍増速され、五番車110から六番車111へは10倍増速され、六番車111からロータ112へは8倍増速されている。
【0029】
増速輪列117の二番車107には筒かなが、筒かなには分針8が、四番車109には秒針9がそれぞれ固定されている。つまり、分針8、秒針9等の指針は、増速輪列117に結合されて輪列117の回転に伴い駆動される。
【0030】
なお、地板2、輪列受3および二番受7には、ルビー製の軸受が圧入されており、この軸受は、各歯車装置107〜111の回転軸を支持するとともに、油により潤滑されている。
また、この油は、各歯車装置107〜112のかみ合い部分に注入されて、歯のかみ合い部分の潤滑性(摩擦係数低減および摩耗低減)を向上している。
【0031】
電子制御式機械時計の調速機120は、磁石およびコイルからなる電磁ブレーキ式の調速機であり、具体的にはロータ112、ステータ115、コイルブロック116を備えて構成されている。
【0032】
ロータ112は、ロータ磁石112a、ロータかな112b、ロータ慣性円板112cから構成される。ロータ慣性円板112cは、香箱車1からの駆動トルク変動に対しロータ112の回転速度変動を少なくするためのものである。
【0033】
コイルブロック116は、ステータの一部116cが一体とされた磁心116aにコイル116bを巻線したものである。ステータ115は、ステータ体115aにステータコイル115bを巻線したものであり、磁心116aの一部で構成されるステータ116cにロータ112を挟んで対向する側に配置され、ネジ121でコイルブロック116の他端および地板に固定されている。ここで、ステータ115と磁心116a、磁心116aに一体のステータ116cはPCパーマロイ等で構成されている。また、コイル116bは、出力電圧の変動を検出することでロータ112の回転を検出するように構成されている。
【0034】
図4には、本実施形態の電子制御式機械時計の構成を示すブロック図が示されている。
電子制御式機械時計は、機械的エネルギ源としてのゼンマイ1aと、ゼンマイ1aのトルクを発電機120に伝達する増速輪列117と、増速輪列117に連結されて時刻表示を行う時刻表示装置である指針118とを備えている。
【0035】
発電機120は、増速輪列117を介してゼンマイ1aによって駆動され、誘起電力を発生して電気的エネルギを供給する。この発電機120からの交流出力は、整流回路125を通して昇圧、整流され、コンデンサ(蓄電装置)126に充電供給される。
【0036】
このコンデンサ126から供給される電力によってワンチップICで構成された回転制御装置150が駆動される。この回転制御装置150は、図4に示すように、発振回路151、ロータの回転検出回路152およびブレーキの制御回路153を備えて構成されている。
【0037】
発振回路151は、時間標準源である水晶振動子151Aを用いて発振信号(32768Hz)を出力し、この発振信号を所定の分周回路で分周し、基準信号fsとして制御回路153に出力している。
【0038】
回転検出回路152は、発電機120から出力される発電波形からロータの回転速度を検出し、その回転検出信号FG1を制御回路153へ出力する。
制御回路153は、基準信号fsに対する回転検出信号FG1の位相差等に基づいて発電機(調速機)120にブレーキ信号を入力し、調速している。
【0039】
本実施形態では、このような電子制御式機械時計において、各番車107〜111を本発明に係る歯車装置として適用している。従って、この電子制御式機械時計によって、増速輪列(動力伝達装置)を備えた機器が構成されている。
【0040】
図5は、増速輪列117を構成する一歯車装置を示す拡大断面図である。
各歯車装置107〜111は、大歯車10と、この大歯車10の回転中心に取り付けられる回転軸30とを備え、この回転軸30には、大歯車10に比べて歯数の少ない小歯車20が、大歯車10に対向するように一体成形される。
【0041】
各歯車装置107〜111のそれぞれの構成および製造方法は、略同様であるので、ここでは、三番車108を例に挙げて、歯車装置の構成および製造方法について説明する。
なお、三番車108以外のその他の歯車装置(二番車107、四番車109、五番車110、六番車111)については、その説明を省略する。
【0042】
大歯車10は、その厚さ(図中の上下方向の寸法)が0.14mmであって、そのモジュールが0.0776mm、歯数75枚のシリコン製の歯車である。
大歯車10の外周側(図中の左右端縁)には、隣接する他の歯車装置(四番車109)の小歯車20とかみ合って、自身の回転を伝達するための複数個の歯11が形成される。また、大歯車10の回転中心には、回転軸30が貫通して取り付けられる開口部12が形成されている。
【0043】
回転軸30は、1%程度の炭素を含有する炭素鋼によって形成され、棒状の本体31と、本体31の一端側に形成され、かつ本体31より径寸法の大きい支持体32と、この支持体32の一端側に形成され、かつ本体31よりも径寸法の小さい第1突出部33と、本体31の他端側に一体成形された小歯車20の他端側に形成され、かつ本体31よりも径寸法の小さい第2突出部36とを備える。
【0044】
小歯車20は、そのモジュールが0.0815mmに形成された炭素鋼製の歯車である。
小歯車20の外周側(図中の左右端縁)には、隣接するその他の歯車装置(二番車107)の大歯車10とかみ合って、その大歯車10の回転が伝達される複数個の歯21が形成される。
【0045】
支持体32は、小歯車20と略同じ径寸法を有し、大歯車10の開口部12に挿入される挿入部34と、大歯車10の表面10A(図中下側の面)に接触する接触部35とを備える。
第1突出部33は、他端側に向かって突出するように形成され、その先端部分であるほぞ33Aは、0.1mmの径寸法を有するとともに、図示しない軸受けで支持されている。
また、第2突出部36は、一端側に向かって突出するように形成され、その先端部分であるほぞ36Aは、0.1mmの径寸法を有するとともに、図示しない軸受けで支持されている。
【0046】
次に、シリコン製の大歯車10の製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、大歯車10の製造過程を示す模式図である。
【0047】
<1-1> 準備工程
0.14mmの厚さ寸法Tを有し、その表面(図中上面)200Aおよび裏面(図中下面)200Bが、表面粗さを示す算術平均粗さ(Ra)が1nm程度に鏡面研磨された円板状のシリコンウエハ(Si)200を準備する(図6(A))。
【0048】
<1-2> 酸化工程
次に、シリコンウエハ200を約900度の高温のスチーム雰囲気にさらして、シリコン(Si)と酸素(O2)とを反応させ、シリコンウエハ200の表裏面200A,200Bに酸化膜(SiO2膜)201を形成する(図6(B))。
なお、前述のようなスチーム雰囲気とせずに、乾燥した雰囲気下で酸化反応処理を施しても良い。ただし、スチーム雰囲気下のほうが、酸化膜の成長速度が速いという利点がある。
【0049】
<1-3> フォトレジスト塗布工程
シリコンウエハ200の酸化膜201の表面側に、フォトレジスト(感光性樹脂)を滴下した後に、シリコンウエハ200を高速回転させて、フォトレジストの薄膜であるレジスト膜202を形成する(図6(C))。
なお、このフォトレジストは、後述する現像工程において、光が照射された部分が除去されることになるポジ型のものが使用される。
【0050】
<1-4> 露光工程
次に、シリコンウエハ200を露光装置であるステッパに設置する。このステッパでは、紫外線を射出する光源205とシリコンウエハ200との間に、除去したい部分が開口された開口部206Aを有するマスク206を配置し、光源20から、マスク206を介して、シリコンウエハ200の表面側のレジスト膜202に紫外線を照射する。すると、シリコンウエハ200のレジスト膜202には、除去したい部分を示すマスクパターン202Aが転写(露光)される(図6(D))。従って、マスク206を大歯車10の平面形状と同じ形状にしておけば目的形状の大歯車10が得られることになる。
なお、このレジスト膜202上のマスクパターン202A部分は、紫外線の照射により、アルカリ溶液に可溶な化学構造に変化している。
【0051】
<1-5> 現像工程
露光されたシリコンウエハ200をアルカリ性の現像液により、マスクパターン202Aに対応する部分のレジスト膜202を除去する(図6(E))。
【0052】
<1-6> 酸化膜のエッチング工程
真空のチャンバ内に、現像されたシリコンウエハ200を配置して、ドライエッチング加工を行い、露光部分201Aを除去する(図6(F))。
【0053】
<1-7> フォトレジスト膜の剥離工程
次に、残存するレジスト膜202の表面に、酸素プラズマ等による灰化処理を行い、レジスト膜202を、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去する。
そして、このレジスト膜202が除去されたシリコンウエハ200を、ダイサーシート203の上に貼付して、後述する異方性ドライエッチング工程の後に、加工された歯車が紛失しないようにしておく(図6(G))。
なお、ダイサーシート203は、表面に紫外線硬化型接着剤が塗布されたポリイミド等の樹脂製のシートである。また、紛失等の心配がなければ、ダイサーシート203はなくてもよい。
【0054】
<1-8> シリコンウエハのエッチング工程
RIE(reactive ion etching)により、シリコンウエハ200の表面200Aに対して垂直な方向にエッチング加工(異方性ドライエッチング加工)を施して、シリコンウエハ200のエッチング加工を正確に行う。そして、シリコンウエハ200のエッチング部200Cを除去する。
続いて、ダイサーシート203とシリコンウエハ200との接着部分に、紫外線を照射して接着剤を硬化させ、ダイサーシート203とシリコンウエハ200とを分離する(図6(H))。
【0055】
<1-9> 酸化膜の除去工程
エッチング加工されたシリコンウエハ200を、フッ化水素溶液に浸して、酸化膜を除去する(ウェットエッチング加工)。その後、シリコンウエハ200の表面に、所定の後処理を施して、目的形状の大歯車10を得ることができる(図6(I))。
【0056】
なお、小歯車20および回転軸30は、一般的な方法により、炭素鋼を用いて製造されるので、その説明を省略する。
【0057】
次に、大歯車10に、小歯車20を含む回転軸30を取り付けて、歯車装置107〜111を製造する手順について、図5および図7を参照して説明する。
図7は、大歯車と回転軸との接合部分を示す模式図である。
【0058】
[1-1] 準備工程
炭素鋼(Fe-C)製の支持体32の接触部35を、金(Au)61Aによってメッキ加工を施す。
一方、シリコン製の大歯車10の表面10Aの接触部13には、クロム(Cr)層62をスパッタリング加工する。具体的には、クロムに高エネルギのアルゴン原子をぶつけて、アルゴン原子に叩かれて飛び出してくるクロム原子を、接触部13に付着させる。
【0059】
このクロム層62は、網状の構成となっているため、その網目の隙間から大歯車10のシリコンが外部に露出することになる。
さらに、そのクロム層62の上から、金61Bによってメッキ加工を施す。この際、金とシリコンとの原子量比が、金70原子量%で、シリコン30原子量%となるように、つまり共晶結合状態となるように金61A,61Bの量を調整しながら、メッキ加工を施す。
【0060】
[1-2] 共融混合物による溶接工程
支持体32の挿入部34を大歯車10の開口部12に挿入し、支持体32において金メッキ加工された接触部35と、大歯車10において金メッキ加工された接触部13とを接触させた状態で、373度で30〜60分間加熱する。すると、メッキ加工された金61A,61Bと大歯車10のシリコンとが共融混合物となって、大歯車10と支持体32を含む回転軸30とが溶接される。
なお、373度は焼き入れした炭素鋼(Fe-C)の硬度を低下させるが、実用上問題の無いレベルである。
以上のようにして、大歯車10に回転軸30が取り付けられる。
【0061】
このようにして得られた歯車装置107〜111の性能を、従来の方法で製造された歯車装置等と比較しながら、二番車107と三番車108とのかみ合いで説明する(図3参照)。
なお、二番車107における大歯車10の歯11の数は72枚であり、モジュールは0.0815mmである。一方、三番車108における小歯車20の歯21の数は9枚であり、モジュールは0.0815mmである。各歯車10,20の中心距離は3.3mmである。このように、大歯車10の歯数が小歯車20の歯数以上であるため、増速輪列となる。
【0062】
本実施形態の方法で得られた大歯車10は、ピッチ誤差が1μm以下であり、偏心が1μm以下である。一方、小歯車20は、従来と同様の方法で製造しているため、ピッチ誤差が5μmであり、偏心が2μmである。
このため、本実施形態の大歯車10と小歯車20とのかみ合い部では、ピッチ誤差が略5μmであり、偏心が略2μmとなる。
【0063】
また、従来の大歯車は、ピッチ誤差が5μmであり、偏心が10μmである。そして、小歯車は、ピッチ誤差が5μmであり、偏心が2μmである。
このため、従来の大歯車と小歯車とのかみ合い部では、ピッチ誤差が10μmであり、偏心が12μmとなる。
【0064】
これらをまとめて、本実施形態の方法で得られた歯車装置107〜111と、理想の形状に製造された場合の歯車装置と、従来の方法で製造された歯車装置との、ピッチ誤差および偏心の精度は、次の表1のようになる。
【0065】
【表1】
Figure 0003928364
【0066】
さらに、図8〜図10を参照して、歯車装置107〜111の性能を、大歯車10および小歯車20のかみ合いモーメント比率[%]に換算して説明する。
【0067】
ここで、モーメント比率とは、トルクの伝達を示す指標であり、100%に近いことが理想である。すなわち、モーメント比率が100%を越えると、大歯車10は小歯車20にトルクを大きく伝えすぎることになり、100%に満たない場合には、トルクを伝えきれないことになる。
【0068】
このため、ゼンマイ1aからのトルクをロータに伝達する際に、トルクが大きすぎると、電子制御式機械時計の制動限界を超えてしまうために進みが発生する。このためには、発電機を大きくして制動力を高めなければならない。その結果、発電機が大きくなって時計が大型化し、かつ持続時間も減ってしまうという問題が発生する。
さらに、モーメント比率が100%を越える(高くなる)ところでは、滑りが大きく発生するため、摩耗が多く発生し、寿命が短くなる。
【0069】
一方、トルクが小さすぎると、十分なトルクを伝達するために、駆動力を高めなければならず、持続時間が減ってしまうという問題がある。
従って、モーメント比率は100%に近いことが望ましいことになる。
【0070】
図8は、歯車間の中心距離を変化させた場合における、理想通りに形成された大歯車および小歯車のかみ合いのモーメント比率の軌跡を示す図である。
なお、図中の近寄り遠のきの比[%]とは、噛合う2つの歯車の中心を結んだ線に対して、両歯車の接点の位置を示す物であり、近寄り(マイナス側)から遠のき(プラス側)両方で100%になる。
理想通りに形成された大歯車および小歯車のかみ合いのモーメント比率は、図に示すように、94%〜98%の範囲の値となる。
【0071】
図9は、従来実施されていた方法により製造された大歯車および小歯車の、製造誤差(ピッチ誤差、偏心)を含んだモーメント比率の軌跡を示す図である。
なお、両歯車において、ピッチ誤差がプラス方向(歯面同士の間隔が開く方向)への誤差として発生した場合とマイナス方向(歯面同士の間隔が近づく方向)への誤差として発生した場合、また、偏心が、プラス方向(中心距離を遠ざける方向)への誤差として発生した場合とマイナス方向(中心距離を近づける方向)への誤差として発生した場合、の組み合わせとしての4パターンについて、モーメント比率の範囲を求めた。
従来実施されていた方法により製造された大歯車および小歯車のかみ合いのモーメント比率は、図に示すように、74%〜116%に範囲の値となる。
【0072】
図10は、本実施形態により製造された大歯車10および小歯車20の、製造誤差(ピッチ誤差、偏心)を含んだモーメント比率の軌跡を示す図である。
なお、図9と同様の4パターンについて、モーメント比率の範囲を求めた。本実施形態により製造された大歯車10および小歯車20のかみ合いのモーメント比率は、図に示すように、85%〜105%の値となっていた。
【0073】
このような図8〜図10に示す各歯車装置における、モーメント比率の最小値(min.)および最大値(max.)を表2に示す。
【0074】
【表2】
Figure 0003928364
【0075】
また、従来の歯車装置に対する本実施形態の歯車装置における大小歯車間の改善度、およびこの歯車を5段輪列とした際の改善度を、表3に示す。
なお、大小歯車間の改善度とは、本実施形態の歯車装置が、従来の歯車装置に比べて、モーメント比率の最小値(min.)および最大値(max.)において、理想のモーメント比率(100%)にどれだけ近づいたかを示す指標(単位:[%])である。
具体的には、最小値(min.)の場合には、(85/74−1)×100=15[%]となる。一方、最大値(max.)の場合には、(116/105−1)×100=10[%]となる。
【0076】
また、5段輪列とした際の改善度とは、前記歯車装置を5段の輪列として使用した場合の改善度であり、モーメント比率の最小値(min.)および最大値(max.)における前記改善度のべき乗(5乗)で示される。
具体的には、最小値(min.)の場合には、(((100+15)/100)^5−1)×100=100[%]となる。一方、最大値(max.)の場合には、(((100+10)/100)^5−1)×100=60[%]となる。
【0077】
【表3】
Figure 0003928364
【0078】
このような本実施形態の歯車装置では、従来の歯車装置に比べて、モーメント比率の範囲が理想の範囲に近づいており、改善されている。
【0079】
具体的には、本実施形態では、大小歯車間のモーメント比率が100%よりも小さい場合において、大小歯車間の改善度が15%向上しており、このため、駆動力が15%弱いゼンマイでも、同等のトルク伝達を達成できる。
また、5段輪列とした際の改善度が100%向上しており、このため、仕様トルクの半分のトルクで駆動できることとなり、持続時間を2倍とすることができる。
【0080】
一方、大小歯車間のモーメント比率が100%を越える場合において、大小歯車間の改善度が10%向上しており、このため、制動力を10%弱くしても同等のトルク伝達を達成できる。
また、5段輪列とした際の改善度が60%向上しており、このため、制動力を60%弱くしても同等のトルク伝達を達成できることとなり、発電量の小さな発電機を採用できる。また、同じ発電機を使用する場合には、持続時間を60%伸ばすことができる。
【0081】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1) シリコンを用いて大歯車10を製造したので、金属を用いて製造する場合に比べて、加工精度の高い大歯車10を製造できる。
【0082】
(2) 回転軸30を炭素鋼で製造したので、シリコンで大歯車10、小歯車20および回転軸30を有する歯車装置を製造する場合に比べて、シリコンの使用量を減少でき、コストを抑えることができる。
【0083】
(3) 回転軸30を炭素鋼製としたので、炭素鋼のほうがシリコンよりもすり合わせによる摩耗が発生しにくいから、回転軸30が最もすり合わせを起こしやすいことを考慮すれば、回転軸30、ひいては歯車装置107〜111の耐用年数を長くできる。
【0084】
(4) 小歯車20と回転軸30とを一体成形したので、小歯車20に対する回転軸30の設置位置のずれによる偏心を抑えることができ、精度の高い歯車装置107〜111を製造できる。さらに、大歯車10と小歯車20の両方をシリコンで製造する場合に比べて、小歯車20を安価な金属で製造するので、製造コストを抑えることができる。
【0085】
(5) 大歯車10のモジュールを0.0815mmとし、小歯車20のモジュールも0.0815mmとしたので、歯車10,20が比較的小さい場合には、歯車10,20における加工精度の誤差の影響が相対的に大きくなることを考慮すれば、比較的大きな歯車に比べて、誤差の影響を抑えることができ、効果的である。
【0086】
(6) 金とシリコンとの共融混合物として、大歯車10と回転軸30とを溶接したので、大歯車10に回転軸30を圧入して歯車装置107〜111を製造する場合に比べて、大歯車10の割れを防止して、歯車装置107〜111の生産性を向上できる。また、金とシリコンとの共融混合物で溶接したので、接合強度を高めることができるとともに、比較的低温短時間で接合したので、金属製の回転軸の焼き鈍しを抑えて、回転軸の硬度を維持できる。
【0087】
(7) 鏡面研磨したシリコンウエハ200を用いて大歯車10を製造したので、噛合い部に滴下した油が、自身の表面張力によって表面10Aに広がることがないから、歯車10,20間のかみ合い部に油を留めることができ、長期に渡って歯車10,20のかみ合い部分の潤滑性を確保できる。このため、増速輪列117を形成した際に、正確な動力を伝達できるうえ、歯車装置107〜111の耐用年数を向上できる。
【0088】
(8) シリコンウエハ200の加工において、異方性エッチング加工を利用したので、異方性エッチング加工が特定方向のみへのエッチング加工であることから、精度の高い大歯車10を製造できる。
【0089】
(9) 歯車装置107〜111を用いて増速輪列117を構成したので、これらの歯車装置107〜111が高精度であることから、正確な動力を伝達できる。また、増速輪列117では、各歯車装置107〜111での誤差が累乗された動力が伝達されることになるので、誤差の影響を抑えて、正確な動力を伝達できる。このため、伝達ロスの少ない高効率の動力伝達装置を提供できる。
【0090】
(10) 正確な動力を伝達できる増速輪列117を備えて時計を構成したので、作動時の効率を向上でき、省エネルギー化が図れ、長時間作動可能な時計を提供できる。
【0091】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、歯車装置107〜111を、大歯車10とこの大歯車10よりも歯数の少ない小歯車20とを備えて構成したが、これに限らず、アイドラーのように、大歯車10または小歯車20のどちらか一方が、つまり一つの歯車のみが回転軸30に取り付けられたものであってもよい。要するに、少なくとも1つの歯車と回転軸とを備えた歯車装置であればよい。
【0092】
また、前記実施形態では、歯車装置107〜111を、大歯車10とこの大歯車10よりも歯数の少ない小歯車20とを一つずつ備えて構成したが、これに限らず、大歯車10および小歯車20を合わせて3個以上備えた構成としてもよい。さらには、大歯車10と小歯車20との寸法を、同じものとしてもよい。
ただし、時計等の機器では、歯車装置107〜111が輪列として使用されることが多いので、大小の歯車10,20が一つずつ取り付けられたものが一般的であり、汎用性が高いという利点がある。
【0093】
前記実施形態では、小歯車20と回転軸30とを炭素鋼によって、一体成形したが、これに限らず、別体であってもよい。ただし、前記実施形態のほうが、偏心を抑えて製造誤差を小さくできる利点がある。
【0094】
また、前記実施形態では、小歯車20および回転軸30を炭素鋼で製造したが、これに限らず、鉄やステンレス鋼等のその他の金属で製造してもよい。ただし、炭素鋼製のほうが耐摩耗性や切削性が高いという利点がある。
【0095】
前記実施形態では、大歯車10のモジュールを0.0815mmとし、小歯車20のモジュールを0.0815mmとしたが、これに限らず、任意の大きさとしてよい。ただし、モジュールが0.05mm〜0.2mmの範囲にあることが好ましい。要するに、原料となるシリコンのコストや、加工適性、加工誤差の影響等を考慮して大きさを特定すればよい。
【0096】
また、本発明に係る歯車装置107〜111は、前記実施形態には限定されず、図11に示すように、大歯車210およびこの大歯車210に比べて歯数の少ない小歯車220が一体成型されたシリコン製の歯車部230と、これらの歯車部230の回転中心に取り付けられる金属製の回転軸240とを備えて構成してもよい。
【0097】
この際、回転軸240には、大歯車210の径方向に沿う方向に延出するとともに、大歯車210の下面210Bに当接する接触部241が形成されており、この接触部241および大歯車210の面210Bが、前述の共融混合物による溶接等により接着されればよい。
【0098】
また、このような歯車部230は、前述のシリコンウエハ200よりも厚さのある、例えば0.7mmのシリコンウエハ等から製造できる。なお、歯車部230と回転軸240とは、前述と同様にろう付けや溶接等で接着されればよい。
【0099】
このようにすれば、大歯車210と小歯車220とを一体成形して歯車部230を構成したので、大歯車210と小歯車220とが別体の場合に比べて、管理すべき部材の点数が減少し、歯車210,220ひいては歯車装置107〜111の管理を容易にすることができ、さらに歯車装置107〜111の組立て作業も簡単にできる。
【0100】
また、各歯車210,220の回転中心毎にそれぞれ加工を施す場合に比べて、一体成形された歯車部230の回転中心に一回だけ加工を施せばよいので、加工の回数が減少するから、偏心を抑えて、精度の高い歯車装置107〜111を製造できる。
【0101】
さらに、接触部241と大歯車210の下面210Bとが接触するようにしたので、接触部241と下面210Bとの間に共融混合物や接着剤等が挿入しやすいので、歯車部230と回転軸240とを簡単に接着できる。
【0102】
また、大歯車10の製造方法は、前記実施形態には限定されず、図12に示す方法であってもよい。具体的には以下の通りである。
【0103】
<2-1> 準備工程
前記実施形態と全く同じ、シリコンウエハ(Si)200を準備する(図12(A))。
【0104】
<2-2> フォトレジスト塗布工程
シリコンウエハ200の表面側(図中、上側)に、フォトレジスト(感光性樹脂)を滴下した後に、シリコンウエハ200を高速回転させて、フォトレジストの薄膜であるレジスト膜202を形成する(図12(B))。なお、このフォトレジストは、前述と同じポジ型のものが使用される。
【0105】
<2-3> 露光工程
前述と同様に、紫外線を射出する光源205とシリコンウエハ200との間に、除去したい部分が開口された開口部206Aを有するマスク206を配置し、光源205から、マスク206を介して、シリコンウエハ200の表面側のレジスト膜202に紫外線を照射して、レジスト膜202にマスクパターン202Aを転写(露光)する(図12(C))。
【0106】
<2-4> 現像工程
露光されたシリコンウエハ200をアルカリ性の現像液により、マスクパターン202Aに対応する部分のレジスト膜202を除去する(図12(D))。
【0107】
<2-5> シリコンウエハのエッチング工程
前述と同様に、RIE(reactive ion etching)により、シリコンウエハ200を正確にエッチング加工し、シリコンウエハ200におけるエッチング部200Cを除去する(図12(E))。
【0108】
<2-6> フォトレジスト膜の剥離工程
次に、残存するレジスト膜202の表面に、酸素プラズマ等による灰化処理を行い、レジスト膜202を、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去する。その後、シリコンウエハ200の表面に、所定の後処理を施して、目的形状の大歯車を得る(図12(F))。
【0109】
このような方法によれば、前記実施形態に比べて、工程数を減少することができる。ただし、シリコンウエハ200が、空気中において酸化しやすいことを考慮すれば、前記実施形態では意図的にシリコンウエハ200を酸化させているので、前記実施形態のほうが、シリコンウエハ200の酸化を気にする必要がなく、比較的簡単に加工できる。
【0110】
なお、シリコン製の歯車の製造方法は、一般的な半導体の製造技術等を参考に、製造されればよく、前記方法に限定されるものではない。
【0111】
また、前記実施形態では、シリコンと金との共融混合物として、大歯車10と回転軸30とを溶接したが、これに限らず、大歯車10と回転軸30とを取り付けて、歯車装置107〜111を製造する手順は、例えば、図13に示す手順であってもよい。具体的には、以下の通りである。
【0112】
[2-1] 準備工程
前述と同様に、シリコン製の大歯車10の表面10Aの接触部13に、クロム(Cr)層62をスパッタリングし、このクロム層62の上から、金(Au)61Bによってメッキ加工を施す。
一方、炭素鋼(Fe-C)製の回転軸30の支持体32における接触部35には、特に加工は施さない。
【0113】
[2-2] 共融混合物を用いたろう付け工程
予め、金とシリコンとの重量比が、金80重量%で、すず20重量%である共融混合物(Au−Sn)63を準備する。
そして、支持体32の挿入部34を大歯車10の開口部12に挿入し、支持体32の接触部35と、大歯車10の金メッキ加工された接触部13との間に、前述の共融混合物63を配置し、接触部13,35同士を接触させた状態で、273度で5〜10分間加熱する。すると、共融混合物63が融解して、大歯車10と支持体32を含む回転軸30とが溶接される。なお、温度が273度だと、わずかに炭素鋼(Fe-C)の焼きが戻ってしまうが、短時間であるため、その影響はほとんどない。
以上のようにして、大歯車10に回転軸30が取り付けられる。
【0114】
このような方法によれば、シリコン製の大歯車10に炭素鋼製の回転軸30を圧入して取り付ける場合に比べて、共融混合物63でろう付け加工したので、シリコン製の大歯車10の割れを防止して、歯車装置107〜111の生産性を向上できる。
また、金とすずとの共融混合物63を使用したので、この共融混合物63の融解温度が273度であって、一般的な金属に比べて比較的低いことから、炭素鋼製である回転軸30の焼き鈍しを抑えて、硬度を維持できる。
【0115】
さらに、大歯車10と回転軸30とを取り付けて、歯車装置107〜111を製造する手順は、図14に示す手順であってもよい。具体的には、以下の通りである。
【0116】
[3-1] 準備工程
シリコン製の大歯車10を空気中に放置して、大歯車10の表面10Aの接触部13に、二酸化珪素(SiO2)の自然酸化膜71を形成する(図14(A))。
一方、炭素鋼(Fe-C)製の支持体32の接触部35に、金(Au)74をメッキしておく(図14(D))。
【0117】
[3-2] エッチング工程およびスパッタリング工程
前記実施形態にて使用した、RIEによるエッチング加工やドライエッチング加工等により、自然酸化膜71に対して所定の形状にエッチング加工を施す。
そして、エッチング加工されたシリコン製の大歯車10の接触部13に、金(Au)72をスパッタリング加工する(図14(B))。
【0118】
[3-3] 共融混合物作製工程
スパッタリング加工された大歯車10を373度まで加熱して、エッチング加工がなされた部分に、大歯車10のシリコンと金72との共融混合物(Au−Si)73を作製する(図14(C))。
【0119】
[3-4] 共融混合物による溶接工程
まず、前記実施形態と同様の方法(ウェットエッチング加工)で、自然酸化膜71を除去する。
次いで、支持体32において金メッキ加工された接触部35と、大歯車10において共融混合物73が施された接触部13とを接触させて、373度で30〜60分間加熱する。すると、共融混合物73によって大歯車10と支持体32を含む回転軸30とが溶接される(図14(D))。なお、これらの工程は、同一真空中で処理される。
以上のようにして、大歯車10に回転軸30が取り付けられる。
【0120】
大歯車10と回転軸30とを取り付けて、歯車装置107〜111を製造する手順は、特に限定されるものではない。要するに、大歯車10と回転軸30とが、外れないように接着されればよい。このため、前述の共融混合物によるろう付けや溶接に限らず、例えば、接着剤等を用いて接着してもよい。
また、前記実施形態では、回転軸30に支持体32を設け、その支持体32の接触部35と大歯車10の表面10Aとで接合していたが、特に支持体32を設けずに、回転軸30と大歯車10の開口部12における側面とを、接着剤等で接合してもよい。ただし、前記実施形態の方が、確実に接合できる利点がある。
【0121】
本発明は、前記実施形態のような平歯車に適用する場合に限らず、はすば歯車、やまば歯車等のねじれ角を有する歯車などの各種歯車に広く適用することができる。
【0122】
さらに、本発明の歯車装置は、電子制御式機械時計の輪列に限らず、一般的な機械時計の輪列に適用してもよい。このようにした場合も、前記実施形態と同様の効果が得られる。
この際、一般的な機械時計の場合には、主に歯車のかみ合い段が3段であることから、前記実施形態における改善度等の結果を参照すれば、3段輪列とした場合のトルクの伝達を50%向上できる。このため、ゼンマイのトルクを小さくして巻数を大きくすることで、1.5倍の接続時間の向上が図れる。
さらに、ガンギ車やアンクル、テンプ等の脱進器に一定のトルクを安定して供給でき、高精度の時計を実現できる。
【0123】
また、本発明の歯車装置は、モータの駆動を減速輪列で針を駆動するクオーツ時計の輪列に利用してもよい。このようにすれば、モータの駆動トルクを安定して伝達できるため、駆動トルクの小さい低消費電力で動くモータを採用でき、電池寿命の長い時計を実現できる。
【0124】
本発明の歯車装置の用途としては、時計用の輪列に限らず、その他の各種の動力伝達装置の歯車として利用可能である。
また、この歯車を備えた動力伝達手段を有する機器としても、時計に限らず、オルゴール、玩具、タイマー等の歯車装置で動力を伝達する機器に適宜利用可能である。
特に、本発明では、シリコンウエハの価格を考慮すれば、なるべくシリコンの使用量を減らために、マイクロマシン等の小型機器内に組み込む小さい歯車装置に適用することが望ましい。
【0125】
また、前記実施形態のように、本発明の歯車装置は、増速輪列、減速輪列のいずれでも利用できるが、特に、改善度を大幅に向上できる点で、増速輪列に用いることがより効果的である。
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、歯車をフォトリソグラフィー等によるシリコン製としたので、歯車を金属製造とする場合に比べて、加工精度の高い歯車を製造できる。
また、回転軸を金属製としたので、歯車だけでなく回転軸もシリコン製とした場合に比べて、シリコンの使用量を減少でき、コストを抑えることができる。そのうえ、回転軸を、シリコンに比べて摩耗しにくい金属製としたので、回転軸、ひいては歯車装置の耐用年数を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る歯車装置を適用した電子制御式機械時計の要部を示す平面図である。
【図2】前記実施形態の電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図3】前記実施形態の電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図4】前記実施形態の電子制御式機械時計の構成を示すブロック図である
【図5】前記実施形態の歯車装置を示す拡大断面図である。
【図6】前記実施形態における歯車の製造過程を示す模式図である。
【図7】前記実施形態における歯車と回転軸との接合部分を示す模式図である。
【図8】理想通りに形成された歯車間のかみ合いモーメント比率の軌跡を示す図である。
【図9】従来実施されていた方法により製造された歯車間のかみ合いモーメント比率の軌跡を示す図である。
【図10】本実施形態により製造された歯車間のかみ合いモーメント比率の軌跡を示す図である。
【図11】本発明に係る変形例の歯車装置を示す拡大断面図である。
【図12】本発明に係る変形例の歯車の製造過程を示す模式図である。
【図13】本発明に係る変形例の歯車と回転軸との接合部分を示す模式図である。
【図14】本発明に係る他の変形例の歯車と回転軸との接合部分を示す模式図である。
【符号の説明】
10,210 大歯車
13,35,241 接触部
20,200 小歯車
30,240 回転軸
61A,61B,72 金
63 金とすずとの共融混合物
73 金とシリコンとの共融混合物
107 歯車装置である二番車
108 歯車装置である三番車
109 歯車装置である四番車
110 歯車装置である五番車
111 歯車装置である六番車
117 増速輪列
200 シリコンウエハ

Claims (2)

  1. 香箱車内のぜんまいが解けるときの機械エネルギが増速輪列を介して調速機に伝達され、前記増速輪列の一方は前記香箱車の香箱歯車と噛み合うとともに、他方は前記調速機と噛み合っている時計において、
    前記増速輪列を構成する番車の回転軸上に指針が取り付けられるとともに、
    前記増速輪列を構成するすべての番車は、
    大歯車と、前記大歯車に比べて歯数の少ない小歯車と、前記小歯車と一体成形された回転軸とを備え、前記回転軸は、前記大歯車の回転中心を貫通して取り付けられており、
    前記大歯車は、鏡面研磨されたシリコンウエハからドライエッチングにより形成されたシリコン製であり、
    前記小歯車および前記回転軸は金属製であり、
    前記回転軸と前記大歯車とは、金とすずとの共融混合物でろう付けされる
    ことを特徴とする時計。
  2. 香箱車内のぜんまいが解けるときの機械エネルギが増速輪列を介して調速機に伝達され、前記増速輪列の一方は前記香箱車の香箱歯車と噛み合うとともに、他方は前記調速機と噛み合っている時計において、
    前記増速輪列を構成する番車の回転軸上に指針が取り付けられるとともに、
    前記増速輪列を構成するすべての番車は、
    大歯車と、前記大歯車に比べて歯数の少ない小歯車と、前記小歯車と一体成形された回転軸とを備え、前記回転軸は、前記大歯車の回転中心を貫通して取り付けられており、
    前記大歯車は、鏡面研磨されたシリコンウエハからドライエッチングにより形成されたシリコン製であり、
    前記小歯車および前記回転軸は金属製であり、
    前記回転軸は、前記大歯車に接触する接触部が金で被覆され、
    前記回転軸と前記大歯車とは、前記接触部において、金とシリコンとの共融混合物で接合されている
    ことを特徴とする時計。
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