JP3921659B2 - ゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法及び繊維強化ゴム複合材料 - Google Patents
ゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法及び繊維強化ゴム複合材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法に関するものであり、特に、ゴム補強用芳香族ポリアミド繊維で補強されたゴム組成物が、高温、長時間の過酷な使用状態下でも接着力低下が小さい、耐熱接着性に優れたゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミド繊維は、高強度、高モジュラスで且つ、繊維自体の耐熱性および寸法安定性に優れることから、これらの特性を生かして、近年ではタイヤコード、ベルトおよび、ホースなどの繊維強化ゴム複合材料におけるゴム補強用繊維として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、芳香族ポリアミド繊維は、脂肪族ポリアミド繊維やポリエステル繊維に比較して、ゴムとの接着性が劣るため、従来から芳香族ポリアミド繊維とゴムとの接着性を改良する方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、特開平2−202569号公報には、芳香族ポリアミド繊維を、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物で処理し、次いで、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ゴムラテックス混合物(RFL)で処理する方法が記載されている。
【0005】
また、特開平3−40875号公報には、芳香族ポリアミド繊維をポリエポキシ化合物・ブロックドポリイソシアネート・ゴムラテックスの混合物で処理し、次いで、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ゴムラテックス混合物(RFL)に特殊なクロロフェノール化合物を配合した処理液で処理する方法が記載されている。
【0006】
これらの方法によれば、芳香族ポリアミド繊維とゴムとの初期接着性はほぼ満足できる水準まで改良されるが、補強されたゴム組成物は耐熱接着性が劣り、高温下で長時間使用するような過酷な使用条件下では接着が耐えられないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上述した従来技術における問題点を解決し、耐熱接着性にも優れたゴム補強用芳香族ポリアミド繊維を製造できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するために次の方法を採用する。
【0009】
芳香族ポリアミド繊維の表面を、エポキシ基2個以上含むポリエポキシ化合物と酢酸銅とを有効成分とする第1処理液で処理した後に熱処理を施し、次いで、ゴムラテックスおよびレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、ブロックドイソシアネート化合物またはエチレンイミン化合物とを有効成分とする第2処理液で処理した後に熱処理を施すことによって、ゴム補強用芳香族ポリアミド繊維を製造する。
【0010】
第1処理液中における配合割合は、ポリエポキシ化合物固形分100重量部に対して、酢酸銅2〜20重量部とすることが好ましく、また、第2処理液中における配合割合は、ゴムラテックスおよびレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物100重量部に対して、ブロックドイソシアネート化合物またはエチレンイミン化合物を5〜20重量部とすることが好ましい。
【0011】
第1処理液の芳香族ポリアミド繊維に対する固形分付着量は0.2〜2.0重量%であることが好ましく、また、第2処理液の、前記第1処理液が付着した芳香族ポリアミド繊維に対する固形分付着量は5.0〜15.0重量%であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
本発明で使用する芳香族ポリアミド繊維とは、ポリ−P−フェニレンテレフタルアミドや、ポリ−P−フェニレン・3−4’ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミドを公知の手段で紡糸、延伸してなる繊維を意味する。
【0014】
なお、本発明で用いる芳香族ポリアミド繊維とは、上記芳香族ポリアミドを素材としてなるフィラメント糸の他、このフィラメント糸からなるコード、織物、織布、布帛および、不織布などの形態をも含むものであり、下記に述べる接着処理液による処理は、その任意の形態の芳香族ポリアミド繊維に施されればよい。例えば、芳香族ポリアミド繊維に下撚り及び上撚りをかけてコードとなし、この未処理コードに、第1処理液による処理、及び第2処理液による処理を施せばよい。
【0015】
本発明の第1処理液に含まれるポリエポキシ化合物とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物であり、具体的には、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシ類との反応生成物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂などの多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、ビス−(3,4−エポキシ−6−メチル−ジシクロヘキシルメチル)アジベート、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシドなどの不飽和結合部分を酸化して得られるポリエポキシド化合物などが挙げられるが、好ましくは、多価アルコールのソルビトール・ポリグリシジルエーテルが用いられる。
【0016】
本発明の第1処理液に含まれる酢酸銅とは、Cu(CH3COO)2の無水物であり、使用時には、任意の濃度の水溶液として用いられる。
【0017】
本発明の第2処理液に用いられるレゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)との混合物とは、一般にRFLと称されるものである。
【0018】
このRFLに含まれるレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物(RF)とは、アルカリ触媒または酸触媒の存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたものであって、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が1:0.3〜1:3.0、特に、1:0.75〜1:2.00の範囲であることが好ましい。
【0019】
また、上記RFLに含まれるゴムラテックス(L)としては、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、クロロプレン系ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、アクリレート系ゴムラテックス、天然ゴムラテックス、および塩化ビニル共重合体ラテックスなどが挙げられるが、なかでもビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを用いた場合に最も良好な結果が得られる。
【0020】
本発明の第2処理液に含まれるブロックドイソシアネート化合物とは、熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物を生じる化合物であり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび、トリフェニールメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物と、フェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類、ε−カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類から選ばれたブロック剤との反応生成物などが挙げられ、特にジフェニルメタンジイソシアネートの芳香族化合物が良好な結果を与える。
【0021】
同じく第2処理液に用いられるエチレンイミン化合物としては、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンイミン、1,6−ヘキサメチレンジエチレンイミン、オクタデシルジエチレンイミン、トリレンジエチレンイミン、ナフタレンジエチレンイミンおよび、トリフェニルメタンジエチレンイミンなどの、芳香族、脂肪族イソシアネートとエチレンイミンとの反応生成物が挙げられ、特に、芳香族エチレンイミン化合物が良好な結果を与える。
【0022】
次に、本発明で用いる第1処理液について説明する。
【0023】
第1処理液は、ポリエポキシ化合物と酢酸銅とを有効成分とする処理液であり、ポリエポキシ化合物の固形分100重量部に対する酢酸銅の配合量は2.0〜20重量部が好ましい。この第1処理液は、通常固形分濃度0.5〜10.0重量%で使用され、処理時における芳香族ポリアミド繊維への固形分付着量は0.2〜2.0重量%になるように制御することが好ましい。
【0024】
芳香族ポリアミド繊維に対する第1処理液の固形分付着量が0.2重量%未満ではゴムに対する接着性を十分に改良することができず、2.0重量%を越えると、芳香族ポリアミド繊維自体の特性が阻害される傾向となるため好ましくない。
【0025】
また、芳香族ポリアミド繊維を第1処理液で処理した後に行う熱処理は、80〜160℃で乾燥した後、200〜260℃で熱処理することにより行うことが好ましい。より具体的には、第1処理液付与後は、80℃〜160℃で0.5〜5.0分間乾燥した後、200〜260℃で0.5〜5.0分間熱処理することにより行うことが好ましい。第1処理液付与後の熱処理温度が200℃未満ではゴムに対する接着性を十分に改良することができず、260℃を越えると芳香族ポリアミド繊維自体の特性が阻害され好ましくない。
【0026】
第2処理液は、レゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)と、ブロックドイソシアネート化合物またはエチレンイミン化合物とを有効成分とする処理液であり、レゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)の混合物の固形分100重量部に対する、ブロックドイソシアネート化合物またはエチレンイミン化合物の配合量は5〜20重量部が好ましい。
【0027】
この第2処理液は、通常固形分濃度10.0から25.0重量%で使用され、処理時における第1処理液が付着した芳香族ポリアミド繊維への固形分付着量は5.0〜15.0重量%になるように制御することが好ましい。第2処理液の固形分付着量が5.0重量%未満ではゴムに対する接着性が十分に改良することができず、15.0重量%を越えると芳香族ポリアミド繊維自体の特性が阻害される傾向となり好ましくない。
【0028】
また、第2処理液(RFL)へのブロックイソシアネートまたはエチレンイミン化合物の配合量は5.0重量部未満ではゴムと芳香族ポリアミド繊維との接着性を十分に改良することができず、また、20重量部を越えると接着性改良効果が飽和し、それ以上添加してもコストアップを招くのみであり好ましくない。
【0029】
また、第2処理液で処理した後に行う熱処理は、80〜160℃で乾燥した後、200〜260℃で熱処理することにより行うことが好ましい。より具体的には、第2処理液付与後の熱処理は、80〜160℃で0.5〜5.0分間乾燥した後、200〜260℃で0.5〜5.0分間熱処理することにより行うことが好ましい。第2処理液付与後の熱処理温度が200℃未満ではゴムに対する接着を十分に改良することができず、260℃を越えると芳香族ポリアミド繊維自体の特性が阻害され好ましくない。
【0030】
このように、第1処理液および第2処理液による処理および熱処理が施された芳香族ポリアミド繊維(処理コード)は、通常の方法で、天然ゴムまたは合成ゴムを主体としたゴム組成物中に埋め込まれ、加圧下で加硫され、ゴムと強固に接着される。
【0031】
このようにして製造される本発明の繊維強化ゴム複合材料は、本発明のゴム補強用芳香族ポリアミド繊維により補強されているので、初期接着性や耐熱接着性等に優れ、タイヤ、ベルトおよび、ホースなどの形態の繊維強化ゴム複合材料に適用される。
【0032】
【実施例】
次に、実施例により、本発明を具体的に説明する。各測定値は次の方法により求めたものである。
【0033】
固形分付着量(重量%)
処理前コードおよび処理後コードを、105℃、2時間乾燥した後、重量を測定し、
[(処理後コードの重量−処理前コードの重量)/処理前コードの重量]×100で求めた。
【0034】
T−引抜力(初期および耐熱)
処理コードを未加硫ゴムに埋め込み、加圧下で、初期引抜力の測定用は150℃、30分で、または、耐熱引抜力の測定用は170℃、16時間で、それぞれ加硫を行い、放冷する。得られたゴムブロックからコードを30cm/分の速度で引き抜き、その引き抜き荷重をN/cmで表示する。接着測定用ゴムコンパウンドとしては天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムを用いた。
【0035】
コード強力
“テンシロン”を使用して、JIS L−1017(1983年)に準じてコードの強力を測定した。
【0036】
実施例1〜6、比較例2
ソルビトールポリグリシジルエーテルに蒸留水を加えて、ホモジナイザーを用い、エポキシ水溶液を作成した。次いで、酢酸銅を蒸留水で溶解した酢酸銅水溶液を、ポリエポキシ化合物100重量部に対する酢酸銅の割合が表1に示した所定の比率となるように、混合し、固形分濃度2.5%の第1処理液を作成した。
【0037】
また、苛性ソーダの存在下でレゾルシン1モルに対しホルムアルデヒドを2モルを反応させて得られたレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテックスに混合し、24時間熟成させた。得られた混合物の固形分100重量部に対する割合が表1に示した所定の比率となるように、ジフェニルメタン−ビス4,4’−N,N’−ジエチレンイミンの水分散液を混合し、固形分濃度25.0%の第2処理液を作成した。
【0038】
デュポン社製の芳香族ポリアミド繊維(1670dtexのマルチフィラメント)を下撚り35回/10cmの撚数で撚糸して下撚りコードとし、更に下撚りコード2本を揃えて、35回/10cmの撚数で撚糸し、上撚りコードとし、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて前記第1処理液に浸漬(固形分付着量は表1に記載)し、150℃で133秒間乾燥し、続いで240℃で53秒間熱処理した。次いで、第2処理液に浸漬(固形分付着量は表1に記載)し、130℃で133秒間乾燥し、続いて245℃で53秒間熱処理した。得られたゴム補強用コードの評価結果を表1に示した。
表1における記号内容は以下の通りである。
A:酢酸銅
B:ジフェニルメタン−ビス4,4’−N,N’−ジエチレンイミン
【0039】
比較例1
第1処理液へ酢酸銅未添加、第2処理液へのジフェニルメタン−ビス4,4’−N,N’−ジエチレンイミン水分散液未添加とした以外は実施例と同一条件で芳香族ポリアミド繊維を処理してゴム補強用コードを作成し、評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
【発明の効果】
本発明に係るゴム補強用芳香族ポリアミド繊維で補強されたゴム組成物は、高い初期接着力を有することは勿論のこと、高温、長時間の過酷な状態下によっても接着力の低下が小さい、耐熱接着性に優れたゴム補強用芳香族ポリアミド繊維を提供する。
Claims (5)
- 芳香族ポリアミド繊維の表面を、エポキシ基2個以上含むポリエポキシ化合物と酢酸銅とを有効成分とする第1処理液で処理した後に熱処理を施し、次いで、ゴムラテックスおよびレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、ブロックドイソシアネート化合物またはエチレンイミン化合物とを有効成分とする第2処理液で処理した後に熱処理を施すことを特徴とするゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
- 前記第1処理液において、ポリエポキシ化合物固形分100重量部に対し酢酸銅2〜20重量部が配合されていることを特徴とする請求項1記載のゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
- 前記第2処理液において、ゴムラテックスおよびレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物との混合物の固形分100重量部に対し、ブロックドイソシアネート化合物またはエチレンイミン化合物5〜20重量部が配合されていることを特徴とする請求項1記載のゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
- 前記第1処理液の、芳香族ポリアミド繊維に対する固形分付着量が0.2〜2.0重量%であり、前記第2処理液の、前記第1処理液が付着した芳香族ポリアミド繊維に対する固形分付着量が5.0〜15.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のゴム補強用芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたゴム補強用芳香族ポリアミド繊維を用いて、ゴムを補強したことを特徴とする繊維強化ゴム複合材料。
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