JP3817329B2 - 可変容量コンプレッサ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用空調装置に用いられる可変容量コンプレッサの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、カーエアコンに対する省動力ニーズおよびコンプレッサのON/OFF制御時の吹出風温度変化やショック低減といった快適性ニーズを満たすため、冷房能力の必要量に応じて冷媒吐出容量を可変しうる可変容量コンプレッサが広く普及しつつある。たとえば、斜板式の可変容量コンプレッサを例にとると、斜板の傾きを連続的に変えることにより、ピストンストロークを変化させ、連続的に容量を変えるようにしている。この場合、斜板の傾きが大きければ吐出量が多く(最大冷房時)、傾きが小さければ吐出量も少なくなる(容量制御時)。このように最大冷房時以外では冷媒循環量が減少するため、コンプレッサ所要動力が減少する。
【0003】
このような可変容量コンプレッサにおいて容量を変化させる(たとえば、斜板式の場合には斜板の傾きを変化させる)制御方法として、従来は、いわゆるメカニカルコントロールバルブ(MCV)を用いて制御を行うのが一般的である。このメカニカルコントロールバルブは、コンプレッサ本体に設けられた弁(たとえば、ベローズ式コントロールバルブ)であって、コンプレッサの吸入圧力を使って容量の可変制御を内部的に行うものである。たとえば、斜板式可変容量コンプレッサにベローズ式コントロールバルブを設けた場合、コンプレッサの吸入圧力の変化(設定圧力との大小関係)によるべローズの収縮・膨脹により、コンプレッサの吐出側に通じる高圧側とコンプレッサの吸入側に通じる低圧側のバルブの開閉を行うことで、クランクケース内の圧力(制御圧力)を制御し、ピストンに加わる圧力のバランスを変えて斜板の傾きを変化させている。これにより、吐出圧力が変わり、よって吸入圧力もそれに合わせて変化することになる。
【0004】
図4はメカニカルコントロールバルブの一般的な特性図である。メカニカルコントロールバルブは、一般に、上記した作動原理に基づき、冷房負荷(空気側の負荷)の変動に対して同図に示す特性の吸入圧力Ps となるように冷媒吐出容量(斜板の傾き)を制御する。これにより、冷房負荷(空気負荷)に応じたコンプレッサ性能つまり冷房能力が得られ、また、かかる冷房能力の制御によりエバポレータの凍結防止も図られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の可変容量コンプレッサの可変容量制御にあっては、べローズ式などのメカニカルコントロールバルブを用いての図4に示すような特性に基づく機械的制御であるため、省動力などを目的とした複雑な制御を行うことができない。
【0006】
たとえば、エアコン起動時においては、排出ガス中のNOx 量などを低減するという観点からも、省動力のニーズが強い。すなわち、エンジン始動時で触媒温度が低いときにエアコンを起動した場合には、起動時のコンプレッサトルクが大きいため、エンジン負荷が増大し、排出ガス量(NOx 量など)も増大するおそれがあるので、エアコン起動時のコンプレッサトルク(コンプレッサ負荷)を低減すること、つまり、省動力を図ることが望まれている。また、省エネの観点からは、エアコン起動時に限らず、車室内温度がそれほど高くない時のクールダウン制御においても、コンプレッサトルクを低減して省動力を図ることが望まれる。ところが、従来は、上記したように図4に示すような特性に基づく機械的制御であるため、このような省動力を目的とした複雑な制御はできない。
【0007】
本発明は、可変容量コンプレッサの可変容量制御における上記課題に着目してなされたものであり、省動力などを目的とした複雑な制御を行うことができる可変容量コンプレッサ制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、自動車用空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量コンプレッサの吐出容量の可変制御を行う可変容量コンプレッサ制御装置において、外部からの電気信号に基づいて、前記可変容量コンプレッサの吐出容量を変化させる制御圧力を制御するコントロール手段と、前記可変容量コンプレッサの吸入圧力を検出する吸入圧力検出手段と、所定のデータを入力して所望割合のコンプレッサトルクの低減に必要な吸入圧力目標値を算出し、前記吸入圧力検出手段の出力が前記目標値と一致するように前記コントロール手段を制御する電気信号を出力する制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
この発明にあっては、コントロール手段は、外部からの電気信号に基づき制御圧力を制御して容量を変化させる外部可変制御方式のものであり、より細かい制御が可能となっている。そして、吸入圧力検出手段は、可変容量コンプレッサの吸入圧力を検出し、制御手段は、所定のデータを入力して所望割合のコンプレッサトルクの低減に必要な吸入圧力目標値を算出し、吸入圧力検出手段の出力が前記目標値と一致するようにコントロール手段を制御する電気信号を出力する。この電気信号に基づき、コントロール手段は、可変容量コンプレッサの吐出容量を変化させる制御圧力を制御する。これにより、可変容量コンプレッサの吐出容量が変化して吸入圧力を目標値に近づけ、コンプレッサトルクが目標どおりに低減される。より具体的には、コンプレッサトルクは吐出圧力と吸入圧力の比(=吐出圧力/吸入圧力)によって大きく左右されるため、たとえば、目標値を高く設定して吸入圧力を上げる制御を行うことで、コンプレッサトルクを低減することができるのである。すなわち、外部可変制御方式のコントロール手段を採用し、吸入圧力を目標値と一致させる制御を行ってコンプレッサトルクを低減させるので、省動力化が図られる。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、エンジンからの排出ガスを清浄化するための触媒の温度を検出する触媒温度検出手段を有し、前記制御手段は、前記触媒温度検出手段の出力が所定値以下のときに当該制御を行うことを特徴とする。
【0011】
この発明にあっては、触媒温度検出手段は、エンジンからの排出ガスを清浄化するための触媒の温度を検出し、制御手段は、触媒温度検出手段の出力が所定値以下のときに当該制御、つまり、コンプレッサトルク低減のための吐出圧力制御を行う。このように、触媒が機能を始める所定温度(所定値)以下のときに当該制御を行ってコンプレッサトルクを低減させることで、起動時において、エンジンにかかる負荷が低減され、エンジンからの排出ガス量(NOx 量など)も低減される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る可変容量コンプレッサ制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0013】
このシステムは、自動車用空調装置(カーエアコン)に搭載された冷凍サイクル1を有する。この冷凍サイクル1は、可変容量コンプレッサ2、コンデンサ3、リキッドタンク4、膨脹弁5、およびエバポレータ6などを配管で連結し、その中に冷媒を封入して構成されている。可変容量コンプレッサ2は、図示しないエンジンにより図示しないベルトおよびマグネットクラッチ7を介して選択的に駆動され、その駆動時にエバポレータ6で蒸発した低温低圧のガス冷媒を吸入し圧縮して、高温高圧になったガス冷媒をコンデンサ3に圧送し、該冷媒をコンデンサ3およびエバポレータ6を介して繰返し循環させる。コンデンサ3にはコンデンサファン8が付設されており、コンデンサ3は、コンデンサファン8によって供給される冷却空気との熱交換により、コンプレッサ2から送り込まれてきた高温高圧のガス冷媒を冷却し凝縮液化させる。コンデンサ3と膨脹弁5の間に設けられたリキッドタンク4は、コンデンサ3で液化した冷媒を気液分離して液冷媒を一度貯え、液冷媒のみを膨脹弁5に送り出す。一般的に使用される温度式の膨脹弁5の場合には、リキッドタンク4を通ってきた中温高圧の液冷媒を減圧膨脹させて、低温低圧の霧状の冷媒にするとともに、エバポレータ6の下流に設けた図示しない感温筒のフィードバックにより、エバポレータ出口で、冷媒の蒸発状態が適度な過熱度を持つよう冷媒流量を調節する。エバポレータ6は、コンデンサ3で液化され膨脹弁5で低温低圧になった霧状の冷媒を蒸発させて、外側に図示しないブロアファンにより送られてくる空気を流して前記霧状冷媒と熱交換させることで、車室内に吹き出される空気を冷却し、同時に除湿する。
【0014】
この可変容量コンプレッサ2は、たとえば、斜板式の可変容量コンプレッサであって、その斜板の傾きが電気信号で外から制御できるようになっている(外部可変制御方式)。つまり、この可変容量コンプレッサ2は、コントロール手段として、従来のメカニカルコントロールバルブ(MCV)に代えて電気信号による外部制御が可能な電磁弁などの電子操作式コントロールバルブ(ECV)9を備えている。たとえば、ECV9として高圧側と通じている電磁弁を用いた場合、クランクケース内と低圧側とは所定の開度の通路で連通しており、クランクケース内の圧力は低圧側に逃げるようになっている。よって、かかる電磁弁9をON−OFFして高圧側圧力を導入・遮断することでクランクケース内の圧力(制御圧力)を制御することにより、ピストンに加わる圧力のバランスを変えて斜板の傾きを変化させ、これによってコンプレッサ2の吐出容量を制御することができる。このとき、電磁弁9には、外部からの電気信号として、たとえば、後述するオートアンプから演算された適当な値のデューティ比を持ったデューティ信号が与えられる。容量(斜板の傾き)を小さくする必要があるときは、大きなデューティ比を持ったデューティ信号を与えて電磁弁9の開弁時間を長くしてクランクケース内の圧力(制御圧力)を上昇させ、容量(斜板の傾き)を大きくする必要があるときは、小さなデューティ比を持ったデューティ信号を与えて電磁弁9の開弁時間を短くしてクランクケース内の圧力(制御圧力)を低下させる。
【0015】
この可変容量コンプレッサ2は、制御手段としてのオートアンプ10によって制御される。ここでは、エンジン(およびエアコン)起動時の省動力(コンプレッサトルク低減)を目的とした制御(以下、単に「トルク低減制御」という)に必要な構成要素のみを図示してある。すなわち、オートアンプ10には、エンジンを始動させるためのイグニッションスイッチ11、コンプレッサ2をONしてエアコンを作動させるためのエアコンスイッチ12、車室内の温度を検出する内気センサ13、外気温度を検出する外気センサ14、エンジンからの排出ガスを清浄化するための触媒の温度を検出する触媒温度検出手段としての触媒温度センサ15、可変容量コンプレッサ2の吸入圧力を検出する吸入圧力検出手段としての低圧側圧力センサ(低圧トランスデューサ)16などが接続されている。また、オートアンプ10には、図示しないエンジン制御装置からエンジン回転数信号が入力されるようになっている。このエンジン回転数信号によってコンプレッサ2の回転数が認識できる(エンジンとコンプレッサ2とはプーリで連結されているため両回転数は比例関係にある)。触媒温度センサ15は、たとえば、触媒コンバータ17内にあってエンジンの排出ガスに含まれる有害成分(HC、CO、NOx )を触媒反応により転化し低減するための三元触媒の温度を検出するものである。触媒には触媒が機能を始める温度、つまり触媒が有効に反応する温度が存在するので、触媒温度センサ15によってその温度に達しているかどうかを検知する。また、低圧側圧力センサ(低圧トランスデューサ)16はエバポレータ6とコンプレッサ2の間の低圧配管に取り付けられ、冷媒の低圧側圧力を電気信号に変換するものである。コンプレッサ2の吸入圧力はこの低圧側圧力によって示される。オートアンプ10は、内蔵しているマイクロコンピュータによって、各スイッチ11、12および各センサ13、14、15、16などの入力信号を演算処理して制御パラメタであるデューティ比を決定し、これに基づき可変容量コンプレッサ2の電磁弁(ECV)9をON−OFFして、同コンプレッサ2の容量(斜板の傾き)を可変し、トルク低減制御を行う。そのため、オートアンプ10は、その内部のROM内に図2のフローチャートに対応したプログラムを記憶しており、このプログラムの実行によって当該トルク低減制御が行われる。
【0016】
もちろん、オートアンプ10は、エンジン(およびエアコン)起動時のトルク低減制御のほかに、自動車用空調装置についての通常の制御(以下、単に「通常制御」という)を行う。すなわち、オートアンプ10には、図示しないが、上記した各スイッチおよび各センサ以外に、日射量を検出する日射センサ、希望の室温を設定するための温度調節スイッチなどがさらに接続されており、オートアンプ10は、内蔵しているマイクロコンピュータによって、それらの各センサ、エアミックスPBR(エアミックスドアアクチュエータに内蔵)、および各スイッチなどの信号を演算処理し、各アクチュエータ(インテークドアアクチュエータ、エアミックスドアアクチュエータ、モードドアアクチュエータ)、ファンコントロールアンプ、およびコンプレッサ2(のマグネットクラッチ7)を作動させ、吸込口位置、吹出風温度、吹出口位置、吹出風量、およびコンプレッサ2自体のON/OFFを総合的に制御する機能をも有している。
【0017】
次に、上記のように構成された本システムの動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。
まず、制御の概要を説明しておく。ここでは、エンジン(およびエアコン)起動時のコンプレッサトルクを低減させることを目的とする。ただし、触媒が機能する温度に達するまでの間の可変容量制御とする。そのため、触媒の温度を読み取り、設定温度以下であるときに当該トルク低減制御を行う。このトルク低減制御では、後で詳述するように、あらかじめ設定された推定式(回帰式)により負荷に応じた基準値(基準トルクTr1と基準時間t1 )を推定して制御変数Aを求め、コンプレッサトルクを所望割合だけ低減させるのに必要な制御時の目標トルクTroを設定し、他方であらかじめ設定された他の推定式(回帰式)により吸入圧力Ps に対応する現在のトルクTr を推定して、両者が一致するように斜板の傾き(吐出容量)を制御する。
【0018】
なお、ここでは、トルク目標値を設定し、吸入圧力から推定されるトルク現在値をトルク目標値と一致させる制御を行って、いわば吸入圧力を間接的に制御する(トルク目標値が吸入圧力目標値に相当する)ようにしているが、これは計算量を少なくするためであって、これに限定されるわけではなく、もちろん、負荷に応じた吸入圧力−トルクの関係を示す同一の推定式(回帰式)を用いて吸入圧力目標値を設定し、直接的に吸入圧力をフィードバック制御することも可能である。
【0019】
さて、図2のフローチャートに示すように、オートアンプ10は、プログラムがスタートすると、ステップS1で、自動車用空調装置の制御前提条件を満たすかどうかを判断する。この判断は、たとえば、イグニッションスイッチ11のON/OFF状態、エアコンスイッチ12のON/OFF状態、および電磁弁(ECV)9の作動許否状態のデータに基づいて行われる。具体的には、イグニッションスイッチ11がON状態にあり、かつ、エアコンスイッチ12がON状態にあり、かつ、電磁弁(ECV)9が作動許可状態にあるとき、この制御前提条件を満たすものと判断し、以下の制御を実施する。なお、制御前提条件を満たさない場合には、ステップS16で、後述するフラグFの値を0に保持したまま待機し、または、フラグFの値を0にリセットして一連の制御を終了する。
【0020】
ステップS1の判断の結果として制御前提条件を満たす場合には、次のステップS2で、トルク低減制御を行うための制御実施条件を満たすかどうかを判断する。この判断は、たとえば、触媒温度センサ15および内気センサ13からのデータ(触媒温度と車室内温度)に基づいて行われる。具体的には、触媒温度センサ15の出力(触媒温度)があらかじめ定められた設定温度Tso(触媒が機能を始める温度で、たとえば、約300℃である。なお、効率のピークは約400℃である)以下であり、かつ、内気センサ13の出力があらかじめ定められた設定温度Tra(たとえば、約35℃)以下であるとき、制御実施条件を満たすものと判断し、トルク低減制御を行う。
【0021】
これに対し、触媒温度センサ15の出力(触媒温度)が前記設定温度Tso以上であるか、または、内気センサ13の出力が前記設定温度Tra以上である場合には、フラグFの値を0に保持したまままたはフラグFの値を0にリセットして(ステップS17)通常のエアコン制御を行い(ステップS18)、ステップS1にリターンする。
【0022】
なお、ここで、触媒温度を考慮するのは、エンジン起動時に触媒が低温である場合には触媒が機能しないため通常制御を行えばコンプレッサトルクの増大によりエンジン負荷が増大し排出ガス量(NOx 量など)も増大するおそれがあるので、触媒が機能を始める温度に達するまでの間(たとえば、アイドリングか走行かを問わずにエンジン始動後約1分間)はトルク低減制御を行って上記の不都合を解消するためである。また、車室内温度を考慮するのは、車室内温度が高い場合には車室内を急速に冷房する必要があるので省動力よりも冷房能力を優先させるためである。
【0023】
ステップS2の判断の結果として制御実施条件を満たす場合には、次のステップS3で、フラグFの値が0かどうかを判断する。このフラグFは、トルク低減制御の初期設定としての意味を持つ後述する制御変数Aの設定を行うかどうかを決めるためのものであって、初期状態では0であるが、一度制御変数が設定されるとその値を前提として(更新なし)後の処理が行われ、所定の場合にリセットされるまで1の値に設定、保持される。このステップS3の判断においてF=0の場合には、システムが起動し今からトルク低減制御を開始するものと判断して、ステップS4に進むが、F=1の場合には、すでに制御変数が設定されておりこの値に基づいてトルク低減制御が実行されているものと判断して、ステップS4〜ステップS8の処理を省略して、ただちにステップS9に進む。
【0024】
ステップS4〜ステップS7では、所定のデータを読み込んで、基準値(基準トルクTr1と基準時間t1 )の推定を行い、制御変数A(ここでは、比例定数)の設定を行う。
具体的には、まず、その時点(システム起動時)における初期のエンジン回転数(つまり、コンプレッサ回転数)Ne と外気温度Tamのデータをそれぞれエンジン制御装置および外気センサ14から入力し(ステップS4)、あらかじめ設定された実験式Tr1=F1(Ne ,Tam)により基準トルクTr1を推定する(ステップS5)とともに、あらかじめ設定された他の実験式t1 =F2(Ne ,Tam)により基準時間t1 を推定する(ステップS6)。なお、ステップS4で入力する外気温度Tamの代わりに初期の車室内温度(内気センサ13の出力)を用いることも可能である。
【0025】
ここで、基準時間t1 とは、通常制御でのクールダウン時に触媒温度が設定温度Tsoに達するまでの時間であり、基準トルクTr1とは、その時、つまり通常制御でのクールダウン時に触媒温度が設定温度Tsoに達した時のコンプレッサトルクの値である。これを図3を使って説明すると、起動後のコンプレッサトルクは、通常制御でのクールダウンの場合、一般に、図中の曲線aのように変化する。そして、その場合において触媒温度が設定温度Tsoに達するまでの時間をt1 、その時のトルクをTr1としている。
【0026】
また、上記二つの実験式Tr1=F1(Ne ,Tam)とt1 =F2(Ne ,Tam)は、コンプレッサの単体特性を表わす推定式(回帰式)であって、あらかじめ、実験を行って初期のエンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne と外気温度Tamに対する基準トルクTr1と基準時間t1 をそれぞれ求め、この結果を回帰分析の手法により回帰式に置き換えて作成する。なお、傾向としては、初期のエンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne 、外気温度Tamが増加するほど各基準値Tr1、t1 も増加する傾向にある。
【0027】
ステップS5およびステップS6で基準値Tr1、t1 の推定が終わると、ステップS7で、制御変数Aの算出を行う。ここでは、時間tに対して目標トルクTroを直線的に増加させて設定するため、図3中の曲線bを制御時の目標トルク曲線(直線)とした場合、この目標トルク曲線(直線)の傾き(比例定数)が制御変数Aとなる。たとえば、起動時のコンプレッサトルクを30%低減する場合には、原点を始点とし、基準トルクTr1の−30%、または、ハッチング部分つまり基準時間t1 までの(曲線a−曲線b)の部分の面積が曲線aの積分値の30%に相当する点を終点とする直線の傾きを求め、これを比例定数Aとする。前者の基準を用いた場合、比例定数Aは、下記の式、
によって得られる。
【0028】
ステップS7で比例定数Aが求められると、次のステップS8では、フラグFの値を1に設定する。これにより、トルク低減制御中における比例定数Aの再設定が禁止される。
【0029】
ステップS9〜ステップS15では、ステップS7で決定された比例定数Aを用いて目標トルクTroを算出し、目標トルクTroとなるように吸入圧力Ps を制御する。
【0030】
具体的には、まず、ステップS7で得られた比例定数Aに起動してからの現在の時間tを掛け算して、目標トルク(トルク目標値)Troを算出する(ステップS9)。つまり、下記の式、
Tro=A×t
によって目標トルクTroを算出する。
【0031】
次に、低圧側圧力センサ(低圧トランスデューサ)16とエンジン制御装置の各出力、つまり、現在の吸入圧力Ps とエンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne のデータをそれぞれ入力し(ステップS10)、あらかじめ設定された実験式Tr =F3(Ps ,Ne )により現在のトルク(トルク現在値)Tr を推定する(ステップS11)。ここで、実験式Tr =F3(Ps ,Ne )は、コンプレッサの単体特性を表わす推定式(回帰式)であって、あらかじめ、実験を行って吸入圧力Ps とエンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne に対するコンプレッサトルクTr を求め、この結果を回帰分析の手法により回帰式に置き換えて作成する。エンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne を考慮するのは、同一圧縮比であれば、コンプレッサ回転数が上昇するとコンプレッサトルクも増加するからである。なお、傾向としては、コンプレッサトルクが吐出圧力と吸入圧力の比(=吐出圧力/吸入圧力)に大きく左右されることを反映して、吸入圧力Ps が増加するほどコンプレッサトルクTr は減少し、エンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne が増加するほどコンプレッサトルクTr は増加する傾向にある。
【0032】
その後、推定されるトルク現在値Tr がトルク目標値Troと一致するかどうか(または所定の範囲内で一致するかどうか)を判断し(ステップS12)、YESであれば、目標値Troと一致するので、前回と同じ制御信号(同じデューティ比を持つデューティ信号)をコンプレッサ2の電磁弁(ECV)9に出力して、ステップS1に戻るが、NOであれば、両者を一致させるように前回の制御信号を補正し、この補正された制御信号(補正されたデューティ比を持つデューティ信号)をコンプレッサ2の電磁弁(ECV)9に出力する。具体的には、トルク現在値Tr がトルク目標値Troよりも大きいかどうかを判断し(ステップS13)、大きい場合には、トルクを下げるべく、容量が低下する方向に斜板の傾きを制御して、吸入圧力を上げるようにし(ステップS14)、小さい場合には、トルクを上げるべく、容量が増加する方向に斜板の傾きを制御して、吸入圧力を下げるようにする(ステップS15)。そして、いずれの場合にも、斜板制御、つまり、電磁弁(ECV)9に制御信号(デューティ信号)を出力した後、ステップS1に戻って、以上の処理を繰り返す。
【0033】
すなわち、システムが起動し今からトルク低減制御を開始する場合には、まず制御定数(比例定数)Aを設定した後、トルク目標値Troを設定して、吸入圧力Ps とエンジン回転数(コンプレッサ回転数)Ne から推定されるトルク現在値Tr を目標値Troと一致させる制御を行う(ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4〜ステップS8→ステップS9〜ステップS15)。そして、一度制御定数(比例定数)Aが設定された後は、制御前提条件および制御実施条件を満たす限り、その制御定数(比例定数)Aを用いて吸入圧力Ps の制御を行う(ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS9〜ステップS15→ステップS1)。そして、上記のトルク低減制御の途中で制御前提条件を満たさなくなった場合(たとえば、イグニッションスイッチ11またはエアコンスイッチ12がOFFされた場合)には、処理を終了し(ステップS1→ステップS16)、また、制御実施条件を満たさなくなった場合(たとえば、触媒温度が設定温度Tso以上になった場合)には、通常制御に移行する(ステップS1→ステップS2→ステップS17→ステップS18→ステップS1)。
【0034】
したがって、本実施形態によれば、容量を内部的に機械的に制御する従来のメカニカルコントロールバルブ(MCV)に代えて容量を外部的に電気的に制御する電磁弁などの電子操作式コントロールバルブ(ECV)9を用いて可変容量コンプレッサ2の容量を変えることで、従来よりもより細かい複雑な制御を可能とし、かつ、かかる複雑な制御として、所定の実験式F1 、F2 、F3 を用いて、所望割合のトルク低減を実現するためのトルク目標値Troを設定し、トルク現在値Tr が目標値Troと一致するようにクランクケース内の圧力を変えて吐出容量を制御することで吸入圧力Ps を制御して吸入圧力Ps を上げるようにしたので、通常の制御を行った場合に比べて、コンプレッサトルクが所望の割合だけ低減され、コンプレッサ所要動力が低減される(省動力性能の向上)。換言すれば、あらかじめ負荷に応じたコンプレッサトルクを求めて定式化しておき、実際の運転で負荷が高くなる領域で、斜板を制御し、目標トルクで運転されるようにして、コンプレッサトルクを所望どおりに低減する。しかも、このようなトルク低減制御を触媒温度が低いときに行うようにしたので、触媒がいまだ機能しない場合であっても、コンプレッサトルクの低減によりエンジン負荷が低減され、排出ガス量(NOx 量など)も低減されることになる。さらに、コンプレッサの省動力化により省燃費性能も向上する。
【0035】
なお、本実施形態では、排出ガスの環境への影響対策を考慮して、エンジン始動時で触媒温度が低いときにエアコンを起動した場合において当該トルク低減制御を行うようにしているが、トルク低減制御の実施場面はこれに限定されるわけではない。たとえば、省エネの観点を重視すれば、エアコン起動時に限らず、車室内温度がそれほど高くない時のクールダウン制御においてもトルク低減制御を行うことができる。この場合には、実際の適用に際し、制御実施条件や上記実験式などを適当に修正する必要があることはもちろんである。
【0036】
また、本実施形態では、制御実施条件として、起動時の急速クールダウンを可能にすべく、触媒温度が低くかつ車室内温度が設定温度以下のときに当該トルク低減制御を行うようにしているが、起動時でも省エネの観点を優先させ、起動時の車室内温度の条件を省略することももちろん可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1記載の発明によれば、外部可変制御方式のコントロール手段を採用し、吸入圧力を目標値と一致させる制御を行ってコンプレッサトルクを低減させるので、省動力性能が向上し、省燃費性能も向上する。
【0038】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、触媒温度が低く触媒が機能しないときに当該制御を行ってコンプレッサトルクを低減させるので、起動時にエンジンにかかる負荷が低減され、エンジンからの排出ガス量(NOx 量など)が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る可変容量コンプレッサ制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】 同装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】 同装置によるトルク低減制御の内容を説明するための図である。
【図4】 メカニカルコントロールバルブの一般的な特性図である。
【符号の説明】
1…冷凍サイクル
2…可変容量コンプレッサ
9…電磁弁(コントロール手段)
10…オートアンプ(制御手段)
15…触媒温度センサ(触媒温度検出手段)
16…低圧側圧力センサ(吸入圧力検出手段)
Claims (2)
- 自動車用空調装置の冷凍サイクル(1)を構成する可変容量コンプレッサ(2)の吐出容量の可変制御を行う可変容量コンプレッサ制御装置において、
外部からの電気信号に基づいて、前記可変容量コンプレッサ(2)の吐出容量を変化させる制御圧力を制御するコントロール手段(9)と、
前記可変容量コンプレッサ(2)の吸入圧力を検出する吸入圧力検出手段(16)と、
所定のデータを入力して所望割合のコンプレッサトルクの低減に必要な吸入圧力目標値を算出し、前記吸入圧力検出手段(16)の出力が前記目標値と一致するように前記コントロール手段(9)を制御する電気信号を出力する制御手段(10)と、
を有することを特徴とする可変容量コンプレッサ制御装置。 - エンジンからの排出ガスを清浄化するための触媒の温度を検出する触媒温度検出手段(15)を有し、
前記制御手段(10)は、前記触媒温度検出手段(15)の出力が所定値以下のときに当該制御を行うことを特徴とする請求項1記載の可変容量コンプレッサ制御装置。
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JP09399097A JP3817329B2 (ja) | 1997-04-11 | 1997-04-11 | 可変容量コンプレッサ制御装置 |
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