JP3787900B2 - 金属板の逐次張出し成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筺体、扉類等を構成する金属板に3次元シェル形状を成形する成形装置に係り、特に棒状の成形パンチを用いて逐次張出し成形することによって所定の形状を得る逐次張出し成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
逐次張出し成形を行うことによって、金属板より3次元のシェル形状を成形する手法は、スピニング加工、ハンマリングによる板金加工等にみられるように、古くから用いられている。
【0003】
最近、薄板成形において、張出し成形部の周辺を固定した金属板に対して、棒状の工具の軌跡を制御することによって逐次張出し成形を行うことにより、種々の3次元シェル形状を成形する検討が行われている。
【0004】
最も実用化に近い例は、塑性と加工,35巻406号,(1994),1311ペ−ジに発表された(以後、例1と称す)、張り出しの頂点を内側から型で支え、板材を全周で枠にクランプするとともに、枠を工具の深さ方向への送りに合わせて移動できるようガイドしておき、棒状の工具により板材を中央側より周辺に向かって張り出しすることで、プレス加工では難しい円錐や角錐状の成形品を製作する方法である。この方法は、数値制御フライス盤のベッドに棒状の型を固定し、枠にクランプした板材をこの型で支え、クランプの付いた枠は上下方向にスライド可能なようにベッドとガイドされている。棒状工具は主軸に取り付ける。
【0005】
この他に例えば、「ボ−ルロ−ラによるフレキシブルな逐次張出し成形に関する研究」日本機械学会論文集(C編);58巻 554号 3147頁〜3155頁(1992)、「反転プロセスによる鋭凸部輪郭製品のCNCインクリメンタル張出し成形」日本塑性加工学会誌;35巻 406号 1348頁〜1353頁(1994−11)等がある。
【0006】
これらは、逐次張出し成形の基礎検討を行ったものであり、成形装置に関連した文献としては、「単純工具によるフレキシブル薄板逐次成形機の試作」平成6年度日本塑性加工学会春季講演論文集;573頁〜576頁(1994−5)、がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記逐次張出し成形方法における成形装置としては、金属板を固定する加工テーブルと成形パンチが相対的に垂直、水平方向に移動できる機構であれば良いが、上記した各種文献に開示された成形機構・成形装置では、成形可能なシェル形状に制約が多い。特に、シェル形状が上下逆方向に存在する場合は、金属板を反転する、あるいは加工テーブル上の金属板を固定する、固定支持板を取り替える、等の段取り操作が必要となり、段取り時間の増加と、金属板の反転、支持板交換時の位置ずれに起因する精度の低下が発生し、実成形装置の設計上での問題点となっている。
【0008】
上記問題点を解決する方法としては、金属板の上下両方向に成形パンチを有する成形装置であればよいが、相対的に上下の2つのパンチと金属板とを動作する機構を装置化すると、剛性確保のため装置が大形、高価なものとなるため、実成形装置に用いられない状態であった。
【0009】
また、例1の方法では、金属板の上下両方向に成形パンチを有する装置構成としているが、板材とベッドに固定した型とが水平方向に相対移動できないため、成形品の頂点の形状はベッドに固定した型の形状に限定される。このため、大小多種多様な成形品を製作する場合には、その成形品の頂点の形状に対応した型が必要になり、多品種少量生産に対応できないという問題点があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題を解決するため、金属板を逐次張出し成形することによって、3次元のシェル形状を得る成形装置において、成形する金属板を固定した加工テーブルを水平方向に移動させる水平移動機構を有し、加工テーブルに固定した金属板の上下両面より成形が可能となるよう逐次成形パンチを支持する工具支持部を加工テーブルの上部と下部に設け、上工具支持部と下工具支持部に垂直方向の垂直移動機構を、更に下工具支持部には垂直方向に加えて水平方向に加工テーブルより小さい移動量の水平移動機構を有したことを特徴とする。
【0011】
これにより、大小多種多様な成形品を、下ポンチ形状の制約を受けずに成形することができる。3次元シェル形状が金属板の上下両方向に向かって存在する形状においても、金属板を反転すること無く上下面より成形することが可能となる。
【0012】
本発明は、金属板を載置して周辺をクランプするクランプ機構を備え、XY平面内を移動可能なテーブルと、該テーブルの上方に位置して上パンチを保持し、該上パンチを前記テーブルに対して上下方向に駆動する上パンチ駆動手段と、前記テーブルの下方に位置して下パンチを保持し、該下パンチを前記テーブルに対して上下方向に及びXY方向に駆動可能な下パンチ駆動手段と、前記上パンチの先端を、前記金属板に成形する3次元シェル形状の底部の輪郭部に沿って接触・移動させ、及び前記下パンチの先端を、前記金属板に成形する3次元シェル形状の頂部の輪郭部に沿って接触・移動させるように、前記テーブルおよび前記各々の駆動手段を連動して制御する制御手段とを備えた金属板の逐次張出し成形装置を構成したものである。
【0014】
また、逐次張出し成形時に、成形パンチに微小振動、回転制御を加えることにより、成形品の表面性状を向上させる。また、成形工具の回転角度制御を行うことで、軸対称でない成形パンチでの成形ができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を、以下、図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明法による逐次張出し成形装置を、正面より見た図である。図2は、本発明法による逐次張出し成形装置を、側面より見た図である。
【0019】
以下、図1、図2を用いて、本成形装置の構成について説明する。
【0020】
1は上パンチ、2は下パンチである。11は成形が行われる金属板であるワーク、7はワーク11を固定し移動するためのテーブルであり、ワーク11をクランプ10によってテーブル7に固定する。8a、8bはテーブル7を水平方向に移動するための水平移動機構部であり、図1において紙面横方向(X方向)の移動を行うためのX方向テーブル機構部8a、図2において紙面横方向(Y方向)の移動を行うY方向テーブル機構部8bである。移動機構部は、例えばモータ等の回転機構を有するものと、ボールスクリュとの組み合わせた方式によってテーブル7の移動を行う。
【0021】
3は上パンチ1を支持する上工具支持部、4は下パンチ2を支持する下工具支持部である。上工具支持部3は、上部にある上工具支持部垂直移動機構部5によってZ方向の移動を行う。下工具支持部4は下工具支持部垂直移動機構部6によってZ方向の移動を行う。又、下工具支持部4は、その下部にある下工具支持部移動機構部9a、9bによって水平方向の移動が可能となっている。図1における紙面横方向(X方向)の下工具支持部4の移動を行うX方向下工具支持部移動機構部9aと、図2における紙面横方向(Y方向)の下工具支持部4の移動を行うY方向下工具支持部移動機構部9bである。ここで、X方向下工具支持部移動機構部9a、Y方向下工具支持部移動機構部9bの最大移動量は成形する形状に合わせて設定する。本実施例においては移動量は100mmとしている。
【0022】
また、上工具支持部3、上工具支持部垂直移動機構部5、及び下工具支持部4のX、Y、Z方向の移動を行うX方向下工具支持部移動機構部9a、Y方向下工具支持部移動機構部9b、下工具支持部垂直移動機構部6とX方向テーブル移動機構部8a、Y方向テーブル移動機構部8bは図2におけるC形のベースフレーム12によって支持される。上記の移動機構部の制御は、図示されていない例えばコンピュータによる数値制御コントロール、あるいはコンピュータによる多軸同時制御等によって行う。
【0023】
次に、上記構成から成る逐次張出し成形装置による、金属板への3次元シェル形状の成形方法の一例を説明する。本成形装置は、金属板に3次元のシェル形状、例えば、図3(a)、図3(c)に示す四角錐台形状の成形を行うものであり、以下、具体的に図3(a)の四角錐台形状の成形について説明を行う。ここで、図3(b)、図3(d)は、それぞれ図3(a)、図3(c)のP−P’断面図、Q−Q’断面図を示す。
【0024】
図4は、テーブル7にワーク11を固定した図である。図4の実施例においては、ワーク11は、固定治具15を用いてクランプ10によってテーブル7に固定されている。テーブル7には、L字型の段差部16が設けてあり、この段差部16に、ワーク11の加工形状に応じて所定の大きさの穴を設けたバックプレート17を配置し、図3(a)における成形部以外の部分13が、シェル形状14の成形時に変形することを抑止する。
【0025】
固定したワーク11に対して、上工具支持部垂直移動機構5、及びX方向テーブル移動機構8a、Y方向テーブル移動機構8bによって、上パンチ1を図4(a)に示す成形開始位置Aに位置決めする。A位置では、上パンチ1の下端とワーク11は接している状態である。この状態での上パンチ中心を通るX方向断面図が、図4(b)である。次に、A位置において、上工具支持部垂直移動機構5によって、上パンチ1をZ方向へZpだけ下方向に移動させる。この状態での上パンチ中心を通るX方向断面図が、図4(c)である。続いて、テーブル7をY方向テーブル移動機構8bによって、上パンチ1が図4(a)のBの位置に来るようLだけ移動させ、次に、X方向テーブル移動機構8aによって上パンチ1がCの位置に来るようLだけ移動させる。更に、Y方向テーブル移動機構8bによってDの位置に来るようLだけ移動させ、最後に、X方向テーブル移動機構8aによってAの位置に来るようLだけ移動させる。
【0026】
以上のテーブルの周回移動ABCDAを行うことによって、ワーク11のAの位置に上パンチ1は戻り、ワーク11にZ方向の深さがZpの四角錐台形状14が成形される。同様に、上パンチ1のZ方向の移動および、テーブル7のX、Y方向の周回移動の一連の移動を、所定の回数N回繰り返すことによって、Z方向の深さがN×Zpの四角錐台形状が成形される。この時テーブル7のN回目の周回が終わった後、図4(d)に示すよう四角錐台中心方向に向かってXpだけ上パンチ1が内側に来るよう、X方向テーブル移動機構8aによりテーブル7を移動させてから、上工具支持部垂直移動機構5によって、上パンチ1をZ方向へ移動ピッチZpだけ下方向に移動させ、N+1回目のテーブル7の周回移動をX、Y方向のテーブル7の移動量を(L−2×Xp)とすることにより、四角錐台形状14の側面の角度θを任意に設定することができる。
【0027】
また、上記と同様に、下パンチ2をワーク11に接する状態にし、下工具支持部垂直移動機構部6により下パンチ2のZ方向上方への移動を行い、クランプ10と固定治具15によって固定したワーク11を、テーブル7のX方向テーブル移動機構8aとY方向テーブル移動機構8bによって周回移動を行うことで、図3(c)、(d)に示すような、Z方向上に凸の四角錐台形状を成形することできる。
【0028】
次に、上パンチ1と下パンチ2とを同時に用いて成形を行う場合について、図5を用いて説明する。図5(a)は、図3(a)の四角錐台形状を、上パンチ1、下パンチ2を用いて成形する際の、Z方向上方より見た図である。但し、テーブル7、クランプ10は図示していない。図5(b)は、図5(a)におけるH−H’断面図である。ここで、Z方向下に凸の形状を成形する場合、上工具支持部垂直移動機構5による上パンチ1のZ方向の移動と、X方向テーブル移動機構8aとY方向テーブル移動機構8bによるテーブル7の移動は、図4の場合と同様である。
【0029】
図5に示す成形方法では、図4の場合に用いたような四角錐台形状以外の変形を抑止するためのバックプレート17を用いない替わりに、下パンチ2を、ワーク11の下面からの支持材として用いる。つまり、下パンチ2の上部先端gが、ワーク11に成形する四角錐台形状の外側輪郭部に沿って移動するよう、テーブル7のX、Y方向の移動と連動して、X方向下工具支持部移動機構9aとY方向下工具支持部移動機構9bによって、下パンチ2のX、Y方向の移動を行う。下パンチ2のX、Y方向の移動の際は、かつテーブル7の移動方向に対して上パンチ1と下パンチ2の中心を結んだ線が垂直となるよう下パンチ2のX、Y方向の移動を行う。
【0030】
例えば、図3aの四角錐台形状においては、直線部を成形する際は下パンチ2のX、Y方向の移動はないが、X方向からY方向、あるいはY方向からX方向へと移動の方向が変化する点において、図5(b)に示すよう上パンチ1と下パンチの中心ピッチがその周回移動を行い始めた時の距離fを保つようにし、下パンチが外側輪郭部に沿って移動するよう図5(a)に示すようX方向下工具支持部移動機構9aとY方向下工具支持部移動機構9bによってE点からF点へと円弧移動を行いつつテーブル7の移動を行う。
【0031】
つまりテーブル7の移動においてX方向と、Y方向の移動量の比に変化が生じる際に、下パンチ2のX、Y方向の移動を行いテーブル7の移動の方向ベクトルに対して上パンチ1と下パンチ2の中心線を結んだ線が直角となるようにして下パンチの移動を行うように制御する。
【0032】
以上の動作を行うことによって、図4におけるバックプレート17がない場合にも、シェル形状が成形可能となる。
【0033】
次に、従来公知の例1の成形装置および成形方法と、本発明の成形装置および成形方法との相違を図6に示す3次元シェル形状の成形方法を例にあげて説明する。
【0034】
図6(a)、図6(b)は成形品の一例である円錐台の斜視図である。図6(a)の円錐台25は、中央に直径が2Lの円形の頂部25Aを、頂部25Aの外側に水平面に対して角度θで傾斜している傾斜部25Bを、さらに傾斜部25Bの外側に水平面と平行なフランジ部25Cを有している。図6(b)の円錐台26は、中央に直径がLの円形の頂部26Aを、頂部26Aの外側に水平面に対して角度θで傾斜している傾斜部26Bを、さらに傾斜部26Bの外側に水平面と平行なフランジ部26Cを有している。
【0035】
まず、従来公知の例1の成形装置および成形方法において、図6(a)、図6(b)に示す円錐台25および円錐台26を成形する場合の特徴を説明する。
【0036】
図6(a)の円錐台25を成形する場合には、成形時に円形の頂部25Aを内側から支えるため、横断面形状が円形であり直径が2Lの頭部を備えた型が必要になる。同様に、図6(b)の円錐台26を成形する場合には、成形時に円形の頂部26Aを内側から支えるため、横断面形状が円形であり直径がLの頭部を備えた型が必要になる。
【0037】
したがって、図6(a)および図6(b)に示す2種類の円錐台を成形するためには2種類の型が必要になる。同様に、成形品中央部の頂部の形状および寸法が異なる多種の3次元シェル形状を成形する場合、成形品中央部の頂部を支持するため、その頂部の形状および寸法に対応した型が必要になり、金型費が膨大になる。
【0038】
次に、本発明の成形装置および成形方法において、図6(a)、図6(b)に示す円錐台25および円錐台26を成形する方法を図7、図8を用いて説明する。図7(a)は、図6(a)の円錐台25を上パンチ1、下パンチ2を用いて成形する際の、Z方向上方より見た図である。図7(b)は、図6(b)の円錐台26を上パンチ1、下パンチ2を用いて成形する際の、Z方向上方より見た図である。但し、テ−ブル7、クランプ10は図示していない。
【0039】
まず、図6(a)に示す円錐台25を成形する場合、固定したワ−ク11に対して、上工具支持部垂直移動機構5、下工具支持部垂直移動機構6、及びX方向テーブル移動機構8a、Y方向テーブル移動機構8b、X方向下工具支持部移動機構9aとY方向下工具支持部移動機構9bによって、上パンチ1を図7(a)に示す成形開始位置Aに、下ポンチ2を同じく成形開始位置aに位置決めする。Aおよびaの位置では、上パンチ1の下端とワーク11および下ポンチ2の上端とワ−ク11は接している状態である。この状態での上パンチ中心を通るX方向断面図が、図8(a)である。次に、a位置において、下工具支持部垂直移動機構6によって、下パンチ2をZ方向へZpだけ上方向に移動させる。この状態での上パンチ中心を通るX方向断面図が、図8(b)である。続いて、テーブル7をX方向テーブル移動機構8a、Y方向テーブル移動機構8bによって、上パンチ1が図7(a)のAからBの位置に直径2L+2mの円弧を描くように移動させる。この時同時に、X方向下工具支持部移動機構9aとY方向下工具支持部移動機構9bによって、下ポンチ2が図7(a)のbの位置に来るようにだけ移動させる。下パンチ2のX、Y方向の移動の際は、かつテーブル7の移動方向に対して上パンチ1と下パンチ2の中心を結んだ線が垂直となるよう下パンチ2のX、Y方向の移動を行う。
【0040】
同様に、上ポンチ1のABCDAに至るまでの、テーブル7のX、Y方向の移動、およびそれに連動した下ポンチ2のX、Y,Z方向の移動の1サイクルを、所定の回数N回繰り返すことによって、Z方向の深さがN×Zpの円錐台形状が成形される。この時、n回目のサイクルが終わった後、図8(c)に示すよう円錐台中心方向に向かってXpだけ下パンチ2が相対的に内側に来るよう、テ−ブル7と下ポンチ2を同時にX方向に移動させてから、下工具支持部垂直移動機構6によって、下パンチ2を上ポンチ1に対してZ方向へ移動ピッチZpだけ上方に相対移動させる。次にn+1回目のサイクルにおいて、上ポンチ1と下ポンチ2の水平方向の間隔がn回目の周回よりもXpだけ相対的に大きくすることにより、円錐台25の側面の角度θを任意に設定することができる。
【0041】
次に、図6(b)に示す円錐台26を成形する場合には、円錐台25を成形する場合と異なり、テーブル7をX方向テーブル移動機構8a、Y方向テーブル移動機構8bによって、上パンチ1が図7(b)のA´からB´の位置に直径がL+2mの円弧を描くように移動させる。この時同時に、X方向下工具支持部移動機構9aとY方向下工具支持部移動機構9bによって、下ポンチ2が図7(b)のb´の位置に来るようにだけ移動させる。下パンチ2のX、Y方向の移動の際は、かつテーブル7の移動方向に対して上パンチ1と下パンチ2の中心を結んだ線が垂直となるよう下パンチ2のX、Y方向の移動を行う。それ以外は、円錐台25を成形した場合と同様な手順により、円錐台26を成形することができる。
【0042】
本発明によれば、ワ−ク11に対する下パンチ2の相対的な移動量を同時制御することにより、任意の形状および寸法をした3次元シェル形状の成形が可能になり、金型費が低減できる。
【0043】
また本発明法による逐次張出し成形装置は、上工具支持部垂直移動機構部5、下工具支持部垂直移動機構部6に図9(a)に示すような上パンチ1、下パンチ2の軸回りの回転量を制御する回転角度制御機構18を有し、テーブル7の移動と下パンチ2の移動の際に適正な回転角度制御を上パンチ1と下パンチ2に行うことによって上パンチ1の形状が図10(a)に示す非軸対称である場合や、下パンチ2の形状が図10(b)に示す非軸対称形状の場合においても、バックプレート17のない逐次張出し成形が可能である。また、上パンチ1が図11に示す方向性を有するロ−ラ型形状である場合も成形が可能である。
【0044】
さらに、本成形装置においては上パンチ1、下パンチ2に微小振動を与える機能を有する振動付加ユニット19を取付けできる。
【0045】
また、本発明法による逐次張出し成形装置においては、上工具支持部3、下工具支持部4に図9(b)、および図9(c)に示す切削工具20、またレーザトーチ部21を取付け可能とし、形状の異なる複数の上パンチ1、下パンチ2、切削工具20およびレーザトーチ21を収納する工具ホルダを装備し、これらを自動交換し、成形パンチおよび穴明け切断工具として成形を行うことによって、図12に示すように、穴部22を有するワーク11の固定した部分とその周辺部を取り除いた3次元シェル形状23を成形することが可能である。
【0046】
図3(a)に示す四角錐台形状を成形するための具体的な実施例を、以下に説明する。
【0047】
ワークは、板厚1.0mmのアルミニウム(A1050)であり、図3(a)においてL=300mmである。上パンチ1および下パンチ2の形状は、先端が半球をしたものであり、直径が10〜20mmである。四角錐台形状13の側面の角度θは、45度である。
【0048】
装置の具体的寸法および制御機構を、図1および図2を用いて説明する。寸法は、図1、図2の記号を用いて説明すると、装置本体の寸法はW=3600mm、H=2200mm、K=2900mm、テーブル7の寸法はI=1900mm、J=1000mmである。テーブル7の移動量はX、Y方向にそれぞれ1500、800mm、下工具支持部4のX、Y方向の移動量はそれぞれ100、100mm、上工具支持部3と下工具支持部4のZ方向の各移動量は、150、100mmである。移動機後部にはサーボモータとボールスクリュを組み合わせた移動機構を用い、サーボモータの回転をパーソナルコンピュータを用いたマシンコントローラにより高速多軸同時制御している。
【0049】
本実施例においては、上記の如く逐次張出し成形装置の構成、寸法、成形品寸法、成形品形状、成形パンチ形状、成形品パンチ寸法を示しているが、本発明法は前記のものを規定するものではない。また、成形方法において、一定位置で上パンチ1によるZ方向の深さZpの移動を行っているが、一周ごとに違う位置でZpの移動を行う動作や、パンチ1のZ方向の移動を行いつつテ−ブル7の移動を行う動作を行っても良い。
【0050】
【発明の効果】
本発明の逐次張出し成形装置は、加工テーブルにX、Y方向の移動機構を、上パンチ、下パンチを支持する工具支持部にZ方向の移動機構を、更に、下工具支持部に、加工テーブルの移動量に比べて小さい移動量の移動機構を備えることで、金属板の上下両面のどちら側からも逐次張出し成形が加工でき、かつ、上パンチ、下パンチをオフセットして同時に成形に用いることが可能な成形装置となり、また、下工具支持部をX、Y方向に移動可能としているため、相対的に上パンチ、下パンチをワークに対して独立して移動させる装置として、安価、小型で実現できる。
【0051】
また、工具支持部に回転角度制御、振動付加機構を有することにより、パンチ移動時に発生するワーク表面との摩擦力を大幅に低減し、成形品の表面のかじり傷を抑止することが可能となる。
【0052】
更に工具支持部に切削工具、レーザトーチ部を取付け可能とし、工具ホルダを装備して自動制御で成形することによって、複雑形状をした3次元シェル形状が成形可能となり、成形時に用いる所定形状の穴部を有する固定支持板の加工も本成形装置で製作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法の1実施例である逐次張り出し成形装置の正面図である。
【図2】本発明法の1実施例である逐次張り出し成形装置の側面図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明装置を用いて成形した四角錘台形状の斜視図及び断面図である。
【図4】(a)は、本発明装置による逐次張り出し成形部の斜視図、(b)〜(d)は、成形部の水平方向断面図である。
【図5】上パンチ、下パンチを同時に用いた成形の成形手順を示す平面図(a)及び断面図(b)、(c)である。
【図6】(a)、(b)は、本発明装置を用いて成形した円錘台形状の斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、上パンチ、下パンチを同時に用いた成形の成形手順を示す平面図である。
【図8】(a)〜(c)は、上パンチ、下パンチを同時に用いた成形の成形手順を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、本実施例の他の実施例による上工具支持部の正面図である。
【図10】(a)、(b)は、本実施例の他の実施例によるパンチの正面図および断面図である。
【図11】本実施例の他の実施例によるパンチの正面図および断面図である。
【図12】本実施例の他の実施例による成形装置で成形を行った四角錘台形状の斜視図である。
【符号の説明】
1…上パンチ、2…下パンチ、3…上工具支持部、4…下工具支持部、
5…上工具支持部垂直移動機構部、6…下工具支持部垂直移動機構部、
7…テーブル、8a…X方向テーブル移動機構部、
8b…Y方向テーブル移動機構部、9a…X方向下工具支持部移動機構部、
9b…Y方向下工具支持部移動機構部、10…クランプ、11…ワーク、
12…ベースフレーム、13…シェル形状成形部位外のワーク部分、
14…ワーク11に成形した四角錐台形状、15…固定治具、16…段差部、17…固定支持板、18…回転制御機構、19…振動付加ユニット、
20…切削工具、21…レーザトーチ、22…穴部、
23…切断して取り出した四角錐台形状、24…成形部を切断したワーク残りしろ、25…円錐台、25a…円錐台の頂部、25b…円錐台の傾斜部、
25c…円錐台のフランジ部、26…円錐台、26a…円錐台の頂部、
26b…円錐台の傾斜部、26c…円錐台のフランジ部、
27…非軸対称パンチ、28…非軸対称パンチ、29…方向性を有するロ−ラパンチ。
Claims (3)
- 金属板を載置して周辺をクランプするクランプ機構を備え、XY平面内を移動可能なテーブルと、
該テーブルの上方に位置して上パンチを保持し、該上パンチを前記テーブルに対して上下方向に駆動する上パンチ駆動手段と、
前記テーブルの下方に位置して下パンチを保持し、該下パンチを前記テーブルに対して上下方向に及びXY方向に駆動可能な下パンチ駆動手段と、
前記上パンチの先端を、前記金属板に成形する3次元シェル形状の底部の輪郭部に沿って接触・移動させ、及び前記下パンチの先端を、前記金属板に成形する3次元シェル形状の頂部の輪郭部に沿って接触・移動させるように、前記テーブルおよび前記各々の駆動手段を連動して制御する制御手段とを備えたことを特徴とする金属板の逐次張出し成形装置。 - 請求項1記載の前記上パンチ駆動手段または前記下パンチ駆動手段の何れか一方又は両方に、微小振動発生機構を有したことを特徴とする金属板の逐次張出し成形装置。
- 請求項1記載の前記上パンチ駆動手段または前記下パンチ駆動手段の何れか一方又は両方に、パンチの回転の角度を制御する回転制御機構を備えたことを特徴とする金属板の逐次張出し成形装置。
Priority Applications (1)
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