JP3745963B2 - 動力伝動用ベルトとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスノーモービル、スクーター及び一般産業用の変速ベルトとして使用される動力伝動用ベルトとその製造方法に係り、詳しくは屈曲性に優れるとともにコグ谷部からの早期亀裂の発生を防止してベルト走行寿命を向上させた高負荷伝動に最適な動力伝動用ベルトとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、スクーターまたは一般産業用の機械分野の駆動系において、駆動プーリと従動プーリに動力伝動用ベルトを懸架し、プーリの有効径を変化させて変速させるベルト式変速装置が用いられている。ここで使用されている動力伝動用ベルトは圧縮ゴム層と伸張ゴム層の少なくとも一方のゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を接着ゴム層内に埋設した構成からなり、ローエッジシングルコグベルトあるいはローエッジダブルコグベルトなどのローエッジコグベルトが知られている。
【0003】
上記ローエッジコグベルトの製造方法としては、予め用意したベルト周長よりも長い平面状のコグ付母型の上に補強布、圧縮ゴム層になる未加硫ゴムシート、接着ゴム層になる未加硫ゴムシートを積層設置し、プレスにより加熱加圧してコグ形状に型付けしたコグパッドを作製し、このコグパッドを成形ドラム上に装着した円筒状母型の凹条部と凸条部に嵌め込み、コグパッドのカット面を突き合わせてジョイントした後、心線を巻き付け、更に他の接着ゴム層と伸長ゴム層になるそれぞれの未加硫ゴムシートをこの上から巻き付けて成型を終え、加硫工程へ移行していた。
【0004】
上記コグパッドは、1ないし数プライの補強布と未加硫ゴムシートとの積層体であって、長さ方向に一定ピッチでコグ山部とコグ谷部を交互に有している。
【0005】
従来、このコグパッドの切断は、熟練作業者の手作業によって行われており、作業者は予めベルト周長に合わせてコグ数を数えて、切断するコグ部にチョークで印をつけた後、一方のコグ山部(コグ部の頂部)をカッターによって切断し、また他方のコグ山部を同様に切断していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この切断作業で最も重要なことは、コグ部の頂部であるコグ山部を幅方向に真っ直ぐにしかも厚さ方向にバイアス状に切断して、切断したコグパッドの各カット面を幅方向に沿って直線状に突き合わせてジョイントすることにある。コグ部をコグ山部から外れた状態で切断すると、コグパッドの両端部を直線状に突き合わせてジョイントすることが困難で、突き合わせ部に間隙が生じる箇所が発生してボリューム割れが起こり、ジョイント部の接合に欠陥が発生することがあった。その結果、得られたベルトは、ベルト走行時の負荷変動や発熱現象によってジョイント部から亀裂が発生する恐れがあった。
【0007】
また、コグ部の頂部であるコグ山部を幅方向に真っ直ぐにしかも厚さ方向に緩やかな傾斜面をもつように切断したコグパッドを使用した場合、得られたベルトのジョイント部はコグ山部の領域からコグ谷部の領域まで侵入した。
即ち、図8に示すように、下コグ部12のジョイント部Jがバイアスであっても、その一端がコグ山部の領域aを越えてコグ谷部bまで侵入した場合には、加硫成形時において各コグ谷部bの中心部へ局部的に僅かながら侵入した接着ゴム層2のゴムが、更にコグ谷部bのジョイント部Jまで侵入することになる。この種のベルトを走行させると、接着ゴム層の軟質の異質ゴムが侵入しているコグ谷部の領域は、繰り返し屈曲疲労を受けて、ジョイント部Jから短時間に亀裂が発生する問題があった。
【0008】
一端がコグ山部の領域aを越えてコグ谷部bまで侵入したジョイント部をもったベルトを走行させると、コグ谷部の領域が接着ゴム層の軟質の異質ゴムが侵入しているため、繰り返し屈曲疲労を受けと、このジョイント部から短時間に亀裂が発生し、コグ山部が欠損するトラブルが起こった。
【0009】
このために、本出願人はコグ部に配したゴム層のジョイント部をコグ山部の領域内に存在させるようにし、ジョイント部をコグ谷部にまたがらないようにすることで、早期亀裂発生の核となるコグ谷部の領域への接着ゴム層の侵入を阻止し、耐屈曲疲労性に富んだ動力伝動用ベルトを提案した。
【0010】
上記ベルトの製造方法では、下布、圧縮ゴム用シート、そして下部接着ゴム用シートの3層からなる積層物を型付けしてコグパッドにし、この積層物であるコグパッドの両端のコグ山部を切断したものを溝付きモールドに巻き付けて両端コグ山部の切断面を当接させてコグ部にジョイント部を形成した後、この上に心線、上部接着ゴムシートと伸張ゴムシートとの積層シートを巻き付けて成形体を作製し、加硫してベルトを成形していた。
【0011】
この製造方法で得られた動力伝動用ベルトのコグ山部9においては、図9に示すように、接着ゴム層の一部がジョイント部の一端部に侵入し、そしてコグ谷部に位置する接着ゴム層のボリュ−ムが減少するために、繰り返し屈曲疲労を受けるコグ谷部には亀裂が入りやすくなっていた。また、ゴム層中の短繊維がゴムの流れに沿って、即ちコグ山部9に沿って配向しているが、ベルトを高負荷条件で走行させると、ベルト側面がプーリからせん断力を受けるために、ゴムの流れに沿った溝10がコグ山部9のプーリ面に接する側壁面層でかつコグ山部9の一方の側に発生し、またジョイント部にも同様な溝が発生し、これらが成長して本格的な亀裂になって、ベルトを破損させていた。
【0012】
そこで、本発明は上記に関わるような問題点を解消し、耐屈曲性に優れるとともにコグ谷部からの早期亀裂の発生を防止してベルト走行寿命を向上させた高負荷伝動に最適な動力伝動用ベルトの提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1記載の発明は、圧縮ゴム層と伸張ゴム層のうち少なくとも圧縮ゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を上部接着ゴム層と下部接着ゴム層間に埋設するように形成した動力伝動用ベルトにおいて、少なくとも1つのジョイント部が圧縮ゴム層のコグ山部の領域内のみに存在するとともに、下部接着ゴム層のゴムが該ジョイント部の先端部へ侵入しておらず、下部接着ゴム層が各コグ山部へ局部的に流れることなく均一な厚みになっている動力伝動用ベルトにある。
【0014】
上記ベルトにあっては、少なくとも1つのジョイント部を圧縮ゴム層のコグ山部の領域内のみに存在させるとともに、下部接着ゴム層のゴムが該ジョイント部の先端部へ侵入していないために、コグ谷部領域における心線と接着ゴム層の接着力が維持され、そしてこの部分が繰り返しの屈曲を受けても疲労しにくいことになる。
【0015】
また、下部接着ゴム層が各コグ山部へ局部的に流れることなく均一な厚みになっているため、繰り返し屈曲疲労を受けるコグ谷部には亀裂が入りにくくなる。
【0016】
本願請求項2〜4記載の発明では、コグ山部の領域内に設けたジョイント部が心線に対してバイアスであり、コグ山部の領域内に設けたジョイント部と心線との角度が60°以上であり、そしてコグ山部の領域内に設けたジョイント部と心線との角度が直角である。
【0017】
本願請求項5記載の発明では、圧縮ゴム層と伸張ゴム層の少なくとも圧縮ゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を接着ゴム層内に埋設するように形成した動力伝動用ベルトの製造方法において、
予め圧縮ゴム層を構成する部材を型付けしてコグパッドに作製し、
該コグパッドの両端のコグ山部で切断したものを溝付きモールドに巻き付けて互いの切断面を当接させてコグ山部に一方のジョイント部を形成し、
この上に一方の接着ゴム層を構成する材料を巻き付けて、上記ジョイント部の接合ライン上から離れた位置で他のジョイント部を形成し、
更に心線、他の接着ゴム層そして伸張ゴム層を構成する材料を順次巻き付けて成形体を作製した後、加硫し、
得られた加硫スリーブをV状に切断して動力伝動用ベルトを作製する、
動力伝動用ベルトの製造方法にある。
【0018】
上記製造方法にあっては、コグパッドとして接着ゴム層を積層しない圧縮ゴム層を構成する部材のみを用いているために、従来のような不具合、即ち1つのジョイント部をコグ山部とコグ谷部にまたがって位置させたことにより、接着ゴム層の一部がコグ谷部のジョイント部へ流れ込みにより発生するコグ谷部のジョイント部からの早期亀裂を回避することができる。
言い換えると、コグパッドとして接着ゴム層を積層しない圧縮ゴム層を構成する部材のみを用いて、圧縮ゴム層と接着ゴム層の各ジョイント部をこの同一ライン上から離れた位置に設けて分散しているために、接着ゴム層の一部がジョイント部へ流れ込むのが阻止されることから、コグ谷部領域における心線と接着ゴム層の接着力が維持され、そしてこの部分が繰り返しの屈曲を受けても疲労しにくいことになる。
【0019】
本願請求項6記載の発明では、お互いのジョイント部は少なくとも1コグ部以上離れている動力伝動用ベルトの製造方法を含む。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
図1は本発明に係る動力伝動用ベルトの部分正面図である。
本発明の動力伝動用ベルト1は、上下部接着ゴム層2a、2b内にポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等のコードからなる心線3が埋め込まれ、上部接着ゴム層2aの上部位置にはゴム層5aからなる伸張ゴム層6、下部接着ゴム層2bの下部位置には補強布4とゴム層5bを積層した圧縮ゴム層7がある。伸張ゴム層6および圧縮ゴム層7には、それぞれ一定ピッチでベルト長手方向に沿ってコグ谷部8とコグ山部9とを交互に配した上下コグ部11、12が設けられている。
尚、伸張ゴム層6にも、補強布を積層してもよい。
【0021】
心線3に隣接する下部接着ゴム層2bは、後に説明するが、圧縮ゴム層7と下部接着ゴム層2bを一体積層し、加圧成形してコグパッドに成形せずに、コグパッドを圧縮ゴム層7のみにして下部接着ゴム層2bをその上に積層しているため、各コグ山部9へ局部的に流れ込むことなくベルト全周囲にわたってほぼ均一な厚みになっている。
【0022】
そして、主ジョイント部19はコグ山部9の領域内にあり、心線3との角度θが60〜90°、好ましくは65〜90°のバイアスジョイントになり、また他の副ジョイント部20はベルト外観から明確に観察することはできないが、主ジョイント部19のライン上から離れた位置、例えば少なくとも1コグ部以上離れた他のコグ山部9上方の下部接着ゴム層2bにあり、それぞれバイアス状に設けられ、主副ジョイント部19、20を分散させている。
尚、補強布4の接合部18は重ね合わせジョイントされ、主ジョイント部19のあるコグ山部9と異なるコグ山部9に位置し、亀裂が入りやすい個所を分散させている。
【0023】
また、本発明では、圧縮ゴム層7と下部接着ゴム層2bを一体積層し、加圧成形してコグパッドに成形せずに、コグパッドを圧縮ゴム層7のみにして下部接着ゴム層2bをその上に積層しているために、主副ジョイント部19、20の位置を離すことができる。これによって、下部接着ゴム層2bのゴムが主ジョイント部19の先端部へ侵入しておらず、下部接着ゴム層2bの各コグ山部9の内部へ局部的に流れずに均一な厚みになり、結果としてコグ谷部8領域における心線3と上下接着ゴム層2a、2bとの接着力が維持され、そしてこの部分が繰り返しの屈曲を受けても疲労しにくいことになる。
【0024】
尚、伸張ゴム層6のゴム層5aのジョイントは、特に制限がないが、好ましくは主ジョイント部19の真上の位置から外した位置に設けることが望ましい。
【0025】
上記の図1に示す動力伝動用ベルトでは、主ジョイント部19と副ジョイント部20をそれぞれ1箇所配した実施例ではあるが、2箇所以上設けることもできる。この場合には、各ジョイント部を分散させ、応力集中を避けることが望ましい。
【0026】
上記圧縮ゴム層7および伸張ゴム層6になるゴムは、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アルキル化クロロスルファン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマー等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。
【0027】
そして、上記圧縮ゴム層7および伸張ゴム層6には、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり繊維の長さは繊維の種類によって異なるが1〜10mm程度の短繊維が用いられ、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。そして、上記ゴム層中の短繊維の方向はベルトの長手方向に対して直角方向を向いているのを90°としたときほとんどの短繊維が70°〜110°の範囲内に配向されていることが望ましい。
接着ゴム層2には、上記短繊維を含めてもよいが、好ましくは含めない。
【0028】
補強布4は綿、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等を素材とした平織、綾織、朱子織等に製織した布で、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の広角度帆布でもよい。補強布4はRFL処理した後、ゴム組成物をフィリクション・コーチングしてゴム付帆布とする。RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレン、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリル、NBRなどである。
【0029】
図2は図1に示すダブルコグベルトの製造方法においてモールド上で圧縮ゴム層、心線、そして伸張ゴム層からなる成形体の作製状態を示す図である。まず、1〜数枚の補強布と所定厚みの未加硫ゴムシートの積層物を歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置して加熱加圧してコグ山部29とコグ谷部28を型付けしてコグパッド30に仕上げる。
【0030】
コグパッド30の一方の切断面32は、図3に示すようにコグ山部29の頂部31で角度αが0〜40°にバイヤス切断され、更にコグパッド30を反転させて他方の切断面33も同様にコグ山部29で逆方向へ傾斜するように切断される。上記コグパッド30をエンドレスにするときには、両切断面が良好に密着する。尚、バイアス角度αが40°を越えると、主ジョイント部19がコグ谷部の領域まで侵入する危険性が出てくる。
【0031】
成形機(図示せず)に、図2に示しているように歯部21と溝部22を交互に有するた円筒状モールド23を装着し、該溝部22にコグ山部29を嵌合しながら上記コグパッド30を巻き付け、一方の切断面32を他方の切断面33に当接させて主ジョイント部19を形成する。更に、その上に所定の長さに両端切断した下部接着ゴムシート35巻き付け、切断面同士を当接させて副ジョイント部20を形成する。この場合、副ジョイント部20の位置を主ジョイント部19のラインから離れた位置、例えば他のコグ山部に配置して、下部接着ゴムシート36のゴムが主ジョイント部19の先端に侵入しないようにする。
無論、本発明では、上記歯部21と溝部22を交互に有するモールド23に代えて、円周方向に沿って所定の間隔で溝部を設けた内母型を装着したモールドを使用することもできる。
【0032】
続いて、心線3をスパイラルに巻き付け、その上に上部接着ゴムシート36とゴムシート37の積層物を巻き付けて、成形体40を作製する。そして、本発明では、図4に示すように、成形機から取り出したモールド23を支持台41上に設置する。
【0033】
図4〜図6に示すように、ガイド棒42は金属あるいは合成樹脂からなり、折り曲がった一方の端部43から垂直に突出した止め部44を、また他端には直線状の抜け易い形状の止め部45を有し、設置と抜き取りが容易な形状になっている。
また、複数のガイド棒42は両端の止め部44、45を該モールド23に設けた係止穴46と支持台41に設けた係止穴47に挿入することで固定される。この時、ガイド棒42は成形体40の表面に接しているか、あるいはわずかに離れている。
【0034】
図7はガイド棒42を成形体40の表面に装着した後、加硫ゴム製からなる母型50をガイド棒42に沿って挿入するところを示している。即ち、母型50は円周方向に沿って所定の間隔で設けた凹状部51をガイド棒42に嵌入しながら挿入する。
上記ガイド棒42の断面の大きさは、母型50の凹状部51に完全に嵌まり込む程度の大きさであってやや凹状部51より小さい程度のものである。断面形状は円形、楕円形、四角形などであり、特に限定しない。
【0035】
続いて、全てのガイド棒42を抜き取った後、成形体40を加硫缶へ移して通常の方法で加硫を行う。加硫した後、ジャケット、母型50、続いて円筒状のベルトスリーブをモールド23から抜き取り、ベルトスリーブを所定幅に切断してダブルコグベルト1を作製する。
【0036】
無論、本発明では、図4〜図7に示すガイド棒42を使用しなくてもよく、成形体40の外周囲に母型50を嵌挿して成形することもできる。
【0037】
【実施例】
以下、更に具体的な実験例により本発明の効果を確認する。
実施例1
心線として、1,500デニールのアラミド繊維(商品名:トワロン)を上撚り数19.7回/10cm、下撚り数15.8回/10cmで上下逆方向に撚糸して2×3の撚り構成とし、トータルデニール9,000の未処理コードを準備した。次いで、この未処理コードをイソシアネート系接着剤でプレディプした後、約170〜180°Cで乾燥し,RFL液に浸漬した後、200〜240°Cで延伸熱固定処理を行なって処理コードとした。
【0038】
補強布として、アラミド繊維(商品名:トワロン)とポリエチレンテレフタレート繊維を重量比で50:50の混撚糸を使用した平織帆布を用いた。これらの帆布をRFL液に浸漬した後、150°Cで2分間熱処理して処理帆布とした。その後、これらの処理帆布にゴム組成物をフリクション・コーチングして、ゴム付帆布とした。
【0039】
圧縮ゴム層と伸張ゴム層はアラミドの短繊維を含んだクロロプレンゴムからなるゴム組成物を用い、また接着ゴム層も短繊維を含んだクロロプレンゴムからなるゴム組成物を用いた。また、厚さの異なる2枚のシートを圧縮ゴム層として用意した。
【0040】
コグパッドとして、1枚の補強布と圧縮ゴム層用シートのもの積層物を、歯部と溝部を交互に配した平坦な金型に設置し、80°Cで加圧することによってコグ部を型付けした。上記コグパッドの両端をコグ山部の頂部からバイアスに切断した。
【0041】
これらの材料を用意した後、円筒状モールドに装着した内母型に上記コグパッドを巻き付けてバイアスにジョイントし、更に下部接着ゴム用シートを巻き付けて、コグパッドのジョイントから離れた位置にジョイントした後に、心線、平坦な上部接着ゴム用シート、伸張ゴムシートを順次巻き付けて成形体を作製した。続いて、母型を挿入した。
続いて、加硫ゴム製ジャケットを被せてモールドを加硫缶に設置し、加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターによってV状に切断してスノーモービル用のローエッジダブルコグベルトに仕上げた。
【0042】
得られたローエッジダブルコグベルトでは、ジョイント部が圧縮ゴム層のコグ山部の領域内のみにあって心線に対してバイアスに存在するとともに、下部接着ゴム層のゴムが該ジョイント部の先端部へ浸入しておらず、均一な厚みになっていた。
【0043】
上記ベルトを直径120mmの駆動プーリと直径120mmの従動プーリからなるタテ型走行試験機に懸架し、背面に直径65mmのテンションプーリを当接させてベルトの曲げ角度を160°に維持し、従動プーリに荷重50kgfをかけ、そして駆動プーリを3600rpmで回転させ、ベルトの走行寿命を確認した。その結果、413時間走行すると、ジョイント部の端部からの亀裂はなく、他のコグ谷部から亀裂が発生した。
【0044】
比較例1
本比較例では、1枚の補強布と圧縮ゴム層用シートと下部接着ゴム用シートの積層物を実施例1と同様にしてコグパッドを作製した。このコグパッドを内母型に巻き付けてバイアスにジョイントし、更にその上に心線、平坦な上部接着ゴム用シート、伸張ゴムシートを順次巻き付けて成形体を作製して、実施例1と同様にローエッジダブルコグベルトを作製した。
得られたベルトは、図8に類似するものであり、一つのバイアス状のジョイント部がコグ山部からコグ谷部の領域内まで侵入し、ジョイント部の端部に接着ゴムが流れ込んだ様子が見られた。上記ベルトの走行試験の結果、312時間でコグ谷部のジョイント部から破損があった。
【0045】
比較例2
本比較例では、1枚の補強布と圧縮ゴム層用シートと下部接着ゴム用シートの積層物を実施例1と同様にしてコグパッドを作製した。このコグパッドを内母型に巻き付けて垂直にジョイントし、更にその上に心線、平坦な上部接着ゴム用シート、伸張ゴムシートを順次巻き付けて成形体を作製して、実施例1と同様にローエッジダブルコグベルトを作製した。
得られたベルトは、図9に示すものと類似し、1つの垂直なジョイント部がコグ山部の領域内にあり、下部接着ゴム層がジョイント部に一部に下部接着ゴムが流れ込んだ様子が見られ得た。上記ベルトの走行試験の結果、比較例1よりもやや長い353時間でコグ谷部から破損があった。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の発明では、少なくとも1つのジョイント部が圧縮ゴム層のコグ山部の領域内のみに存在するとともに、下部接着ゴム層のゴムが該ジョイント部の先端部へ侵入していないことにより、下部接着ゴム層のゴムが該ジョイント部へ侵入していないために、コグ谷部領域における心線と接着ゴム層の接着力が維持され、そしてこの部分が繰り返しの屈曲を受けても疲労しにくい動力伝動用ベルトになり、更に下部接着ゴム層が各コグ山部へ局部的に流れることなく均一な厚みになっているために、繰り返し屈曲疲労を受けるコグ谷部には亀裂が入りにくくなる。
また、動力伝動用ベルトの製造方法では、コグパッドとして接着ゴム層を積層しない圧縮ゴム層を構成する部材のみを用いているために、従来のような不具合、即ち1つのジョイント部をコグ山部とコグ谷部にまたがって位置させたことにより、接着ゴム層の一部がコグ谷部のジョイント部へ流れ込みにより発生するコグ谷部のジョイント部からの早期亀裂を回避、またコグ谷部領域における心線と接着ゴム層の接着力が維持され、そしてこの部分が繰り返しの屈曲を受けても疲労しにくいことになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る動力伝動用ベルトの部分正面図である。
【図2】図1に示す動力伝動用ベルトをモールド上で成形体を作製する状態を示す図である。
【図3】本発明に係る動力伝動用ベルトの使用するコグパッドの斜視図である。
【図4】本発明に係る動力伝動用ベルトを製造する場合において使用する支持台の断面図である。
【図5】図4におけるA部拡大図である。
【図6】図4におけるB部拡大図である。
【図7】本発明に係る動力伝動用ベルトの製造方法において母型をガイド棒に沿って挿入するところの斜視図である
【図8】従来の動力伝動用ベルトの部分正面図である。
【図9】従来のおける他の動力伝動用ベルトの部分正面図である。
【符号の説明】
1 動力伝動用ベルト
2a 上部接着ゴム層
2b 下部接着ゴム層
3 心線
4 補強布
5a、5b ゴム層
6 伸張ゴム層
7 圧縮ゴム層
8 コグ谷部
9 コグ山部
11 上コグ部
12 下コグ部
19 主ジョイント部
20 副ジョイント部
Claims (6)
- 圧縮ゴム層と伸張ゴム層のうち少なくとも圧縮ゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を上部接着ゴム層と下部接着ゴム層間に埋設するように形成した動力伝動用ベルトにおいて、少なくとも1つのジョイント部が圧縮ゴム層のコグ山部の領域内のみに存在するとともに、下部接着ゴム層のゴムが該ジョイント部の先端部へ侵入しておらず、下部接着ゴム層が各コグ山部へ局部的に流れることなく均一な厚みになっていることを特徴とする動力伝動用ベルト。
- コグ山部の領域内に設けたジョイント部が心線に対してバイアスである請求項1記載の動力伝動用ベルト。
- コグ山部の領域内に設けたジョイント部と心線との角度が60°以上である請求項2記載の動力伝動用ベルト。
- コグ山部の領域内に設けたジョイント部と心線との角度が直角である請求項1記載の動力伝動用ベルト。
- 圧縮ゴム層と伸張ゴム層の少なくとも圧縮ゴム層にコグ山部とコグ谷部を交互に配したコグ部を有し、心線を接着ゴム層内に埋設するように形成した動力伝動用ベルトの製造方法において、
予め圧縮ゴム層を構成する部材を型付けしてコグパッドに作製し、
該コグパッドの両端のコグ山部で切断したものを溝付きモールドに巻き付けて互いの切断面を当接させてコグ山部に一方のジョイント部を形成し、
この上に一方の接着ゴム層を構成する材料を巻き付けて、上記ジョイント部の接合ライン上から離れた位置で他のジョイント部を形成し、
更に心線、他の接着ゴム層そして伸張ゴム層を構成する材料を順次巻き付けて成形体を作製した後、加硫し、
得られた加硫スリーブをV状に切断して動力伝動用ベルトを作製する、
ことを特徴とする動力伝動用ベルトの製造方法。 - お互いのジョイント部は少なくとも1コグ部以上離れている請求項5記載の動力伝動用ベルトの製造方法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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