JP3741192B2 - 導電性粉体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属により被覆された導電性粉体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
導電性粉体、特に、絶縁性粉体や低い導電性の粉体を金属で被覆して製造した高い導電性を持つ金属被覆粉体は、ベースフィラーとなる粉体素材の選択の自由度が大きく、導電性フィラー、導電性接着剤、異方導電性フィルム等の原料として広い分野に応用が期待できるため、様々な製造手法が検討され、中でも無電解メッキによる手法が主に実用化されていた。
【0003】
無電解メッキは、化学メッキとも呼ばれ、硫酸銅溶液に浸漬した鉄片上に銅を析出させ錆を防止したり、還元剤溶液を添加した硝酸銀溶液にガラスを浸して銀鏡を作製したりする等、古くから行われていた。しかし、電気メッキに劣らない無電解メッキ法として確立されたのは、無電解ニッケルメッキからである。
【0004】
無電解ニッケルメッキは、Brennerらにより1944年に次亜リン酸ナトリウム水溶液中での電気メッキ反応中に偶然発見され、1946年に特許としてプロセスが公表されている(A.Brenner;J.of Research of N.B.S.,37,1(1946),米国特許第2,532,283号(1950))。陽極から金属の補給が行われる電解メッキと異なり、無電解メッキは、金属の析出の進行と共に変動する金属塩や還元剤を補充する必要があるため、その補充方法がG.Gutzeitらにより改良され(G.Gutzeit;米国特許第2,658,841号(1953))、現在では工業用メッキとして広く用いられている(W.H.Safranek,The Properties of Electrodeposited Metals andAlloys,2nd Ed.American Electroplaters and Surface Finishers Soc.,(1986))。
【0005】
無電解メッキによる金属被覆粉体製造においては、活性化処理工程と称する、無電解メッキを開始させる触媒を粉体に付着させる前処理工程が必須である。通常、この工程は、次のように行われていた。粉体を無電解メッキする前に、塩化第一錫の水溶液と接触させて粉体に錫イオンを吸着させた後、塩化パラジウムの水溶液に接触させて、錫イオンの還元作用により粉体表面にパラジウムコロイドを吸着させる。このパラジウムコロイドが無電解メッキを開始させる触媒として作用し、粉体表面に金属が付着する。但し、スズ塩は腐食性があるため、残留するスズ塩を除くために、無電解メッキ開始前に洗浄が必要であるが、あまり洗浄を頻繁に行うと、パラジウムコロイドまで減少し、無電解メッキが進みにくくなるという問題点と、粉体と金属の間の密着性不足から金属が剥離し、導電性が低下するという問題があった。
【0006】
粉体と金属間の密着性不足を改良して、密着性のよい金属被膜を持つ粉体を製造するために、すでに次のような方法が行われていた。即ち、(1)粉体をエッチングして表面に凸凹を作り、無電解メッキを行う、(2)粉体をシランカップリング剤(例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)のようなシランモノマーで処理してから無電解メッキを行う(特公昭60−33133号公報、1985年)、(3)粉体をエポキシ樹脂のような有機樹脂で処理してから無電解メッキを行う(特開昭61−64882号公報、1986年)等が提案されてはいたが、必ずしも良好な金属被覆粉体は得られていなかった。
【0007】
これは、粉体の凝集のためである。凝集とは、粉体粒子が二次的な力で多数集まっている状態であり、個々の粒子は独立性を保ち、合併してはいないから、わずかな力で分離する。触媒接触前に凝集状態であると、粉体粒子の接触部には金属が析出せず、また無電解メッキ前に凝集状態であると、わずかな力でメッキ金属の剥離が起こる。つまり、いずれも粉体に凝集があると、これにメッキを行った場合、金属に被覆されない個所を持つ粉体となり、良好な導電性が発現しないという問題点である。
【0008】
ところで、ケイ素系高分子は、炭素に比べてケイ素が金属性と電子非局在性を持つため、高い耐熱性と柔軟性、良好な薄膜形成特性を示す非常に興味深いポリマーである。中でも、Si−Si結合あるいはSi−H結合を有するケイ素系高分子、より具体的には、Si−Si結合あるいはSi−H結合を有するポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラザン、特にポリシランあるいはSi原子に直接結合した水素原子を有するポリシロキサンは、還元性を持つ高分子として知られている。また、ある種のケイ素系高分子、例えばポリシランは炭化ケイ素セラミック材料の前駆体として、ポリシロキサンは酸化ケイ素セラミック材料の前駆体として、熱処理等により非常に耐熱性に優れた材料になることもよく知られていた。
【0009】
本発明者らは、すでに、還元作用を持つケイ素系高分子で表面を処理した粉体を用いると、塩化スズを用いなくとも、粉体表面に金属コロイドが生成・保持されることを見出し(Synthetic Metals,97,273(1998))、この粉体に無電解メッキを行うと、イオン性の金属をほとんど含まない密着性のよい金属被膜粉体が製造できることを見出し(特開平11−132501号公報、特開平11−132502号公報)、その方法を提示しているが、上記粉体の凝集の点はなお問題である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、凝集のない粉体を無電解メッキすることにより、導電性に優れる金属被覆された導電性粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、還元作用を持つケイ素系高分子処理粉体を超音波撹拌等の手段で凝集のない状態で水中に分散させ、無電解メッキの触媒となる標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩を含む溶液で処理した後に、無電解メッキすることにより、良好な導電性を持つ金属で被覆された粉体が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、粉体をポリシランで処理し、粉体表面にポリシラン層を形成した後、この粉体を発泡を起こさず表面張力のみを下げる非イオン性界面活性剤を添加した水中に超音波撹拌を行って凝集のない状態で分散させ、次いでこの粉体を標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩で処理して、上記ポリシラン層上に上記金属のコロイドを析出させ、その後無電解メッキ液で処理して、上記粉体の最表面に金属膜を析出させることを特徴とする金属により被覆された導電性粉体の製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の金属により被覆された導電性粉体の製造方法は、下記工程(1)〜(3)を有する。
(1)粉体を、還元性を有するケイ素系高分子で処理し、粉体表面にケイ素系高分子の層を形成する工程。
(2)工程(1)の粉体を、凝集のない状態で水中に分散させる工程。
(3)工程(2)の粉体を、標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩を含む溶液で処理することで、粉体の表面にあるケイ素系高分子上に金属コロイドを析出させた後、無電解メッキ液で処理し、粉体の最表面に金属膜を析出させる工程。
【0014】
本発明に使用する粉体は、具体的には、シリカ、アルミナ、マイカ、ケイ酸アルミナ、ガラスのような絶縁性無機粉体、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルエステル樹脂、アクリルニトリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリジアリールフタレート樹脂、ポリキシレン樹脂のような絶縁性有機粉体、酸化チタン、酸化亜鉛のような半導電性粉体、カーボン、ポリアニリン樹脂、ポリアセチレン樹脂、ポリチオフェン樹脂、ポリピロール樹脂のような低い導電性の粉体が挙げられる。形状は粉末状、繊維状、フレーク状等、形状によらないが、メッキする金属の使用量を最少にし、樹脂やゴム等を導電性にするために高充填するためには、同一粒径では最も比表面積の低くなる球状が望ましい。粉体の粒径は、0.01〜1,000μm、より望ましくは0.1〜100μmである。0.01μmより小さいと比表面積が高くなるため、メッキ金属の量が多くなり、高価となり、経済的に得策ではない。また、1,000μmより大きいと樹脂やゴム等に混合しにくくなる場合が生じる。
【0015】
上記粉体を処理する還元性を有するケイ素系高分子化合物としては、ポリシランが好適に用いられる。
【0016】
ここで、上記ポリシランとしては、主鎖にSi−Si結合を持つ下記一般式(1)で表される高分子化合物が好適である。
(R1 m2 npSi)q (1)
(式中、R1,R2は水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、XはR1、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子又は窒素原子を示し、mは0.1≦m≦2、nは0≦n≦1、pは0≦p≦0.5、1≦m+n+p≦2.5を満足する数、qは2≦q≦100,000を満足する整数である。)
【0017】
上記式(1)のポリシランにおいて、R1,R2は、水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R1とR2とは互いに同一であっても異なっていてもよいが、上記一価炭化水素基としては、脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基が用いられる。脂肪族又は脂環式炭化水素基の場合、炭素数1〜12、好ましくは1〜6であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14、より好ましくは6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。なお、置換炭化水素基としては、上記に例示した非置換の炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基などで置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。Xは、上記したように、R1と同様の基、アルコキシ基、ハロゲン原子などであり、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜4のもの、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、通常メトキシ基、エトキシ基が用いられる。
【0018】
mは0.1≦m≦2、特に0.5≦m≦2、nは0≦n≦1、pは0≦p≦0.5、特に0≦p≦0.2であり、かつ、1≦m+n+p≦2.5、特に1.5≦m+n+p≦2を満足する数であり、qは2≦q≦100,000、特に10≦q≦10,000の範囲の整数である。
【0022】
ここで、粉体へのケイ素系ポリマー処理方法としては、特に限定されないが、溶剤等の液体を用いる湿式法、用いない乾式法などが採用されるが、中でも湿式法が好ましく、特にケイ素系高分子を溶剤に溶解させ、希釈した状態で粉体と混合し、このスラリーを容器内で撹拌羽根を回転させて分散接触させる撹拌式や、気流中にこのスラリーを分散させ瞬時に乾燥させる噴霧式が好適に用いられる。
【0023】
湿式処理法の場合、ケイ素系高分子を溶解させる有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンのような脂肪族系炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、酢酸エチルのようなエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドのような非プロトン性極性溶媒、その他、ニトロメタン、アセトニトリル等が好適に用いられる。
【0024】
この後、温度を上げたり減圧にすることにより留去したり、濾過したりして溶剤を除く。更に、溶剤の沸点以上の温度で、例えば1〜100mmHgという減圧下にて40〜200℃程度の温度で撹拌することにより乾燥させることは、凝集防止に効果的である。
【0025】
ケイ素系高分子層の厚さは、0.001〜1.0μm、望ましくは0.01〜0.1μmである。0.001μmより薄いと、粉体を完全に被うことができなくなるため、メッキが起こらない部分ができるおそれがある。また、1.0μmより厚いと、ケイ素系高分子の量が多くなり、高価となるおそれが生じる。
このようにして、ケイ素系高分子処理粉体を製造できる。
【0026】
工程(2)は、ケイ素系高分子処理粉体を、凝集のない状態で水中に分散させる工程である。
【0027】
分散方法は、特に超音波を好適に用い得る。
【0028】
超音波とは、人間の耳に感ずることのできない音波の振動数を持つものをいう。超音波は、音波と同様音響学の諸法則に従うが、振動数が大きく波長が短く、エネルギー密度が普通の音波より著しく大きいものが得られる。1919年、P.Langevinが水晶やチタン酸バリウムのピエゾ電気効果を利用して強力な超音波の発生に成功し、熱作用、乳化作用、分散作用があることが知られている。液体中に存在する粉体粒子に超音波を当てると、キャビテーションと呼ばれる、圧力の減少による気泡が生成する現象を引き起こし、この気泡は成長したりつぶれて消滅したりする。気泡が消滅する時に10-6秒程度の短時間であるが、数千気圧の圧力を生ずることが知られている。この現象に伴う機械的な力、溶存気体の放出と活性化が起こる。
【0029】
超音波を発生させる装置は、超音波脱気装置、超音波洗浄装置の名称で市販されており、容易に入手できる。分散させる粉体を水中に投入混合後、超音波脱気装置の場合は、超音波発生部を液中に投入し、超音波洗浄装置の場合は、洗浄槽に容器ごと投入すればよい。超音波の振動数としては、10〜5,000kHz、より望ましくは20〜200kHzとすることが好ましく、時間は10秒〜30分が好適である。
【0030】
この粉体は、しばしばケイ素系高分子処理により疎水性となり、水に濡れないため、水中分散の効率が低下することがある。この場合は、界面活性剤を添加して分散の効率を向上させることができる。界面活性剤としては、発泡を起こさず表面張力のみを下げるものが望ましく、サーフィノール104,420,504(日信化学工業(株)製)等の非イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
【0031】
工程(3)は、上記のように凝集のない状態で水中に分散させたケイ素系高分子処理粉体を、まず金属塩を含む溶液と接触させ、ケイ素系高分子の還元作用により金属コロイドをこの膜表面に形成させ、次いで洗浄により、還元されなかった金属塩を除き、再度水中あるいは無電解メッキ溶液中に分散させ、無電解メッキ反応により、粉体の最表面に金属を析出させる。
【0032】
金属塩としては、標準酸化還元電位0.54V以上の金属が用い得る。より具体的には、金(標準酸化還元電位1.5V)、パラジウム(標準酸化還元電位0.99V)、銀(標準酸化還元電位0.8V)等の塩が好適に用いられ、標準酸化還元電位が0.54Vより低い銅(標準酸化還元電位0.34V)、ニッケル(標準酸化還元電位−0.25V)等の塩では、本ケイ素系高分子で還元することができない。
【0033】
より具体的には、金塩としては、Au+,Au3+を含んでなるもので、NaAuCl3,NaAu(CN)2,NaAu(CN)4等が好適に用いられる。
【0034】
パラジウム塩としては、Pd2+を含んでなるもので、通常Pd−Z2の形で表し得る。Zとしては、Cl,Br,Iのようなハロゲン、アセテート、トリフルオロアセテート、アセチルアセトネート、カーボネート、パークロレート、ナイトレート、スルフェート、オキサイド等が挙げられる。パラジウム塩の例としては、PdCl2,PdBr2,PdI2,Pd(OCOCH32,Pd(OCOCF32,PdSO4,Pd(NO32,PdO等が好適に用いられる。
【0035】
銀塩としては、Ag+を含んでなるもので、通常Ag−Zの形で表し得る。Zとしては、パークロレート、ボレート、ホスフェート、スルフォネート等が挙げられる。銀塩の例としては、AgBF4,AgClO4,AgPF6,AgBPh4,Ag(CF3SO3),AgNO3等が好適に用いられる。
【0036】
金属塩を溶解させる溶媒は、水やアセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、メタノール、エタノールのようなアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドのような非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、好適には水が用いられる。濃度は、塩を溶解させる溶媒によって異なるが、0.01%〜塩の飽和溶液までが用い得る。0.01%より低いと、メッキ触媒の効果が十分でなく、また飽和溶液以上では、固体塩の析出があり、好ましくない。溶媒が水の場合、0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜5重量%が好ましい。必要に応じて、塩化スズのような他の金属塩を併用してもよい。
【0037】
処理の方法としては、室温から70℃の温度で0.1〜120分、より好ましくは1〜30分程度、ケイ素系高分子処理粉体−分散水を金属塩溶液と混合撹拌すればよい。これにより、ケイ素系高分子表面に金属コロイドが析出した粉体が製造できる。続いて、金属塩を含まない溶剤で洗浄することにより、粉体に担持されなかった不要な金属塩を除く。
【0038】
次いで、このように処理された粉体を再度水又は無電解メッキ溶液中に凝集のない状態で分散させ、無電解メッキを行う。この時、必要に応じて、モーターに撹拌翼を取り付けた撹拌器、回転子と音波のエネルギーを用いて撹拌するホモジナイザー、超音波発生装置が利用できる。なお、粉体を水に分散させた場合は、これに無電解メッキ液を投入すればよい。また、超音波撹拌を行って凝集のない状態で分散させる場合の条件は、上述した場合と同様である。
【0039】
この無電解メッキ処理を行うことにより、完全に表面を金属で被覆された粉体を得ることができる。
【0040】
無電解メッキ液は、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、ロジウムの金属を含んでなるものが好適に用いられる。こうしたメッキ液は、通常メッキ金属塩に次亜リン酸ナトリウム、ホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤、酢酸ナトリウムのようなpH調整剤、フェニレンジアミンや酒石酸ナトリウムカリウムのような錯化剤を含む。通常は無電解メッキ液として市販されており、安価に入手することができる。温度は15〜100℃で、接触時間は1分〜16時間が好適に用い得る。より望ましくは、25〜85℃で10〜60分で処理される。メッキ層の厚さは、0.01〜10.0μm、望ましくは0.1〜2.0μmである。0.01μmより薄いと、粉体を完全に被い、かつ十分な硬度や強度が得られにくくなるおそれがある。また、10.0μmより厚いと、メッキの量が多くなり、かつ比重が高くなるため、高価となり経済的に不利となる場合が生じる。
【0041】
最後に、この粉体を水で十分洗浄してから、必要に応じてアセトンやアルコールで洗浄し、不要な溶媒を乾燥除去することで、金属被覆粉体を得ることができる。乾燥温度は、通常0〜150℃、常圧又は減圧で行うのが好ましい。
【0042】
また、粉体としてシリカやアルミナのように耐熱性の高い粉体を用いた場合は、必要に応じて、この金属被覆粉体を高温処理することにより、セラミック層からなる絶縁層を形成させてもよい。高温処理は、通常150〜900℃、処理時間は1分〜24時間が好適に用い得る。より望ましくは、200〜600℃で処理時間は30分〜4時間行うのがよい。これにより、粉体と金属間にあるケイ素系高分子は、セラミックに変化させられ、より高い耐熱性と絶縁性と密着性を持つことになる。特に、ポリシランを高温処理すると、Si−Si結合が切断され、様々な元素が入り安定化するため、このときの雰囲気を空気中のような酸化系で行うことにより酸化ケイ素のセラミック、またアンモニアガスのような還元性雰囲気下で行うことにより窒化ケイ素のセラミック、アルゴンのような不活性雰囲気下や真空系で行うことにより炭化ケイ素のセラミックにすることができる。
【0043】
本発明によれば、抵抗率が102〜1018Ωcmの絶縁性あるいは低い導電性を持つ粉体から、本発明の無電解メッキによる金属被覆により抵抗率が10-5〜102Ωcmという高い導電性を持つ粉体が得られる。従って、本発明の方法は、安価で簡便な工程により、密着性のよい金属被覆粉体を得ることができるため、導電性充填剤等に有用な金属被覆粉体の製造方法となり得る。この金属被覆粉体は、優れた導電性と高い導電安定性を持ち、コネクター等の原料として広い応用を持っている。
【0044】
【実施例】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で%は重量%を示す。
【0045】
[合成例]
ポリシランの製造方法
フェニルポリシラン(以下、PPHSと略記する)の製造は、以下の方法によった。
アルゴン置換したフラスコ内にビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウムにメチルリチウムのジエチルエーテル溶液を添加し、溶剤を減圧にて留去することで、系内で触媒を調製した。これに、フェニルシランを触媒の50倍モル添加し、100〜150℃で3時間、次いで200℃で8時間加熱撹拌を行った。生成物をトルエンに溶解させ、塩酸水洗を行うことで、触媒を失活除去した。このトルエン溶液に硫酸マグネシウムを加え、水分を除去し、濾過した。これにより、ほぼ定量的に重量平均分子量1,200のPPHSのトルエン溶液を得た。
【0046】
[実施例]
粉体のケイ素系高分子処理(工程1)
粉体としては、球状シリカUS−10(三菱レーヨン製:平均粒径10μm、比表面積0.4m2/g)を用いた。PPHS0.5gをトルエン65gに溶解させ、この溶液をUS−10 100gに加え、1時間撹拌し、スラリーにした。濾過によりトルエンとシリカを分離した後、より完全にトルエンを除くため、密封型プラネタリーミキサーにて回転させながら80℃の温度、45mmHgの圧力で乾燥させた。
【0047】
ケイ素系高分子処理粉体の分散(工程2)
ポリシラン処理シリカは疎水化され、水に投入すると水表面に浮くようになる。界面活性剤としてサーフィノール504(日信化学工業(株)製界面活性剤)の0.5%水溶液100gにこの処理シリカ100gを投入し、撹拌しながら容器の外部から超音波洗浄器(シバタ製SU−9TH:周波数28kHz)により、5分間超音波を照射し、水中に分散させた。
【0048】
無電解メッキ粉体の製造(工程3)
(1)パラジウムコロイド析出粉体の製造
パラジウム処理は、上記シリカ−水分散体200gに対し、1%PdCl2・塩酸水溶液を70g(塩化パラジウムとして0.7g、パラジウムとして0.4g)添加して、15分撹拌後、濾過し、水洗し、再度濾過により単離した。これらの処理により、シリカ表面にパラジウムコロイドが付着し、黒灰色に着色したパラジウムコロイド析出シリカが得られた。
(2)パラジウムコロイド析出粉体の分散
パラジウムコロイド析出シリカ100gをKS−538(信越化学工業(株)製消泡剤)の0.5%水溶液100gに投入し、撹拌しながら容器の外部から超音波洗浄器により5分間超音波を照射し、水中に分散させた。
(3)無電解ニッケルメッキ
上記パラジウムコロイド析出シリカ−水分散体200gを、メッキ液500ml(硫酸ニッケル0.3mol/l、クエン酸アンモニウム0.36mol/l、次亜リン酸アンモニウム0.36mol/lになるようイオン交換水で希釈したもの)に、添加混合し、撹拌しながら分散させ、85℃のウォーターバスに浸漬し、浴温をすばやく85℃に上げた。しばらくして細かな発泡が始まり、浴が深緑色から暗緑色へと変化し、金属ニッケルが析出したシリカが得られた。この間に要した時間は30分であった。メッキされたシリカを吸引濾過して分別したのち、純水にて水洗、再度濾過して分別したのち、シリカが乾かない前に、直ちに次工程へ移った。
(4)無電解金メッキ
金メッキ液として、シアン金酸塩からなる高純度化学研究所製金メッキ液K−24N10gを用いた。金属ニッケルが析出したシリカを、イオン交換水中に分散させた。激しく撹拌しながら、金メッキ液に添加混合し、液温を室温から95℃に上げると、直ちにシリカが金色となり、シリカ表面のニッケルが金に置換された。
金メッキされたシリカは、濾過、水洗、アセトン洗浄の後、乾燥(50℃で30分)した。最後に、水素で置換された電気炉中で250℃,1時間焼成した。
【0049】
導電性粉体の解析
この粉体は、IPC分析により、パラジウム、ニッケル、金が検出された。比重は2.91で、元素分析により、シリカ64%、ニッケル29%、金7%であることがわかった。
実体顕微鏡並びに走査型電子顕微鏡によりその表面を観察したところ、シリカの表面は全面金により覆われていることがわかった。金メッキシリカの抵抗率は、4端子を持つ円筒状のセルに金メッキシリカを充填し、両末端の面積0.2cm2の端子からSMU−257(ケースレ社製電流源)より1〜10mAの電流を流し、円筒の中央部に0.2cm離して設置した端子から、2000型ケースレ社製ナノボルトメーターで電圧降下を測定することで求めた。抵抗率は、1.2mΩ・cmと非常に良好な導電性を示した。
【0050】
[比較例]
比較のため、実施例における工程で、工程(2)を行わない以外は全く同様に行った工程で金メッキシリカを製造した。この粉体は、比重は2.89で、元素分析は、シリカ64%、ニッケル29%、金7%と、実施例の粉体とほぼ同じであるにもかかわらず、走査型電子顕微鏡により観察したところ、粉体表面の一部が金で覆われていないことがわかった。また、抵抗率は、5.5mΩ・cmと高く、実施例に比較して導電性が悪いことがわかった。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、効率よく均一なメッキ層を全面に持つ金属被覆粉体を確実に得ることができ、得られた金属被覆粉体の導電性が高いものである。

Claims (3)

  1. 粉体をポリシランで処理し、粉体表面にポリシラン層を形成した後、この粉体を発泡を起こさず表面張力のみを下げる非イオン性界面活性剤を添加した水中に超音波撹拌を行って凝集のない状態で分散させ、次いでこの粉体を標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩で処理して、上記ポリシラン層上に上記金属のコロイドを析出させ、その後無電解メッキ液で処理して、上記粉体の最表面に金属膜を析出させることを特徴とする金属により被覆された導電性粉体の製造方法。
  2. ポリシランが、下記式(1)で表されるものである請求項記載の方法。
    (R1 m2 npSi)q (1)
    (式中、R1,R2は水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、XはR1、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子又は窒素原子を示し、mは0.1≦m≦2、nは0≦n≦1、pは0≦p≦0.5、1≦m+n+p≦2.5を満足する数、qは2≦q≦100,000を満足する整数である。)
  3. 無電解メッキ液で処理した後、得られた金属被覆粉体を高温処理してポリシラン層をセラミックにすることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
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