JP3699207B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録シートに関し、さらに詳しくは、油性インクの印刷適性の悪化がなく、顕色剤塗布面の滑り性及びインクジェット記録印刷特性を向上させるのに好適なインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、多色化が容易であり、記録速度が比較的高速である上、大版の記録も可能である等の利点を有している。一方、従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インク及び装置の両面から改良が進んでおり、現在では、各種のプリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等の種々の分野で広く使用され、急速に普及している。
【0003】
感圧記録用シートにインクジェット方式で部分的に記録する用途があるが、通常の感圧記録用シートの顕色シートをインクジェット方式で記録すると、インクの滲みが発生する。また、感圧記録用シートをこれらの装置に用いる場合の問題の1つに搬送性があり、この搬送性は、記録シートの塗布面における滑り性に起因するところが多い。
従来の塗布面に滑り性を付与する手段として、例えば、塗布液中に滑石を添加する方法や塗布液面を乾燥した後、その面にキャレンダー掛けを行い、塗布面を平滑化する方法等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗布液中に滑石を添加する方法の場合、塗布面における油性インクによる印刷適性が悪化する問題があり、また、記録文字等の滲みが大きくなり、インクジェット記録適性が悪化する問題がある。
一方、キャレンダー掛けを行い、塗布面を平滑化する方法の場合、記録シートの柔軟性が損なわれ、所謂、腰のないシートになる嫌いがあり、しかもキャレンダー装置等の設備費が増大する問題がある。
【0005】
本発明の目的は、キャレンダー掛けを行うことなく、油性インクの印刷適性の悪化がなく、塗布面の滑り性及びインクジェット記録印刷特性を向上させるのに好適なインクジェット記録用シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的は、無機顔料を主成分とし、顕色剤としてフェノール樹脂又は芳香族カルボン酸の金属塩を含有する水分散液に平均粒径が0.8μm以下の固形分散状ワックスを添加して得られる顕色剤分散液を支持体上に塗布してなる、インクジェット記録用シートによって達成される。
また、固形分散状ワックスを添加する前の分散液の固形重量に対して、固形分散状ワックスの固形重量が1〜12重量%であることが望ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は顕色剤分散液を支持体上に塗布した記録用シートであるが、この支持体にはLBKP、NBPK等の木材パルプを主体とした基紙等が挙げられる。この基紙は、必要に応じてさらに合成パルプ、合成繊維等を含有していてもよい。基紙は、必要に応じて、填料、サイズ剤、紙力増強剤、定着剤等を含有していてもよい。
【0008】
填料としては、例えば、クレイ、タルク、TiO2 、CaCO3 、BaSO4 等が挙げられる。前記填料の含有量としては、パルプに対して通常0〜30重量%である。サイズ剤としては、例えば、ロジン、アルケニルコハク酸塩、ステアリン酸塩、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物等が挙げられる。紙力増強剤としては、例えば、スターチ、ゼラチン、CMC、ポリアクリルアミド等が挙げられる。また、定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等が挙げられる。
【0009】
基紙の坪量としては、通常30〜250g/m2 であり、好ましくは40〜150g/m2 である。基紙の厚さとしては、通常30〜250μmであり、好ましくは40〜150μmである。基紙の白色度(ハンター)としては、70%以上であるのが好ましく、基紙の剛度(テーバー)としては、1〜29gであるのが好ましい。また、基紙の吸水度としては、JIS−P−8140で10〜30g/m2 であるのが好ましい。吸水度が10g/m2 未満であると、インク流れが生じ易くなることがある。一方、30g/m2 を超えると、白ヌケが生じ易くなることがある。
【0010】
また、上記した基紙の他に熱可塑性合成樹脂フィルム等が使用でき、特に制限はない。熱可塑性合成樹脂フィルムとしては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0011】
前記のような支持体に塗布される顕色剤塗布液中の主成分は、無機顔料である。本発明における無機顔料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、クレー、タルク、チタンホワイト、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイソウ土、ケン酸、ケン酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミナ、リトポン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0012】
本発明における顕色剤としては、フェノール樹脂又は芳香族カルボン酸の金属塩が使用される。顕色剤としては、感圧記録の発色特性が良いこと、インクジェット記録のインクの吸収性に大きく影響を与えないこと等の理由から、特に芳香族カルボン酸の金属塩が好ましい。顕色剤の具体例としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−オクチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ノニルサリチル酸、3,5−ジ−t−ドデシルサリチル酸、3−メチル−5−t−ドデシルサリチル酸、3−t−ドデシルサリチル酸、5−t−ドデシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−5−メチルサリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−6−メチルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−6−エチルサリチル酸、3−フェニル−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、カルボキシ変性テルペンフェノール樹脂、3,5−ビス(α−メチルベンジルサリチル酸とベンジルクロリドとの反応生成物であるサリチル酸等の、亜鉛塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、カルシウム塩等を挙げることができる。
【0013】
また、顕色剤分散液に添加される固形分散状ワックスは、木ロウ、白ロウ、カルナバロウ、蜜ロウ、硬化ロウ、糖ワックス、セラッカロウ等の動植物ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、モンタンワックス、粉末ワックス、酸化パラフィン、スラックワックス等の石油系ワックス、ポリエチレンワックス、その他高級脂肪酸の多価アルコールエステルや多価金属塩等が挙げられる。
【0014】
この固形分散状ワックスは、微粉末又はエマルジョンとして使用されるが、その平均粒径は0.8μm以下であることが必要である。平均粒径が0.8μmよりも大きいと、記録用シートを油性インクで印刷する際の印刷適性が悪く、印刷仕上がり不良となる。
【0015】
本発明における固形分散状ワックスは、固形分散状ワックスを添加する前の分散液の固形重量に対して、固形分散状ワックスの固形重量が1〜12重量%であることが望ましい。固形分散状ワックスの固形重量が1重量%よりも少ないと、インクジェット記録印刷適性を向上させくことができず、一方、固形分散状ワックスの固形重量が12重量%よりも多いと、発色濃度の低下を伴い、好ましくない。
【0016】
また、本発明において、顕色剤分散液には、水性の結着剤を使用することができる。水性の結着剤としては、ポリビニルアルコール又はその誘導体、澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブダジエン共重合体、アクリル酸エステル及びメタアクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、顕色剤分散液中には、上記した成分の他に必要に応じて、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0017】
本発明において、上記した各種の成分を含有する顕色剤分散液を支持体に塗布し、乾燥して顕色剤を含む塗布層が形成される。支持体に分散液を塗布する手段としては、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビヤコーター等のいずれも使用することができる。顕色剤分散液は、支持体上に固形分として1〜15g/m2 、好ましくは、2〜8g/m2 となるように塗布される。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、特に断りのない限り「部」は『重量部』を意味する。
実施例1
炭酸カルシウム(Brilliant −15、平均粒径0.5μm、白石工業社製)120部、活性白土30部、酸化亜鉛40部、40%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液5部と水230部と用い、サンドグライダーにて平均粒径2μmになるように均一に分散し、顔料分散液を得た。
【0020】
この顔料分散液50部に10%PVA−117(ケン化度:98%、重合度:1,750、クラレ社製)水溶液40部、3,5−ジ−(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛分散液(固形分濃度30%)6部を加え、これに融点68℃のパラフィンワックス分散物(平均粒径0.8μm、固形分濃度30%)2.8部を加えた後、固形分濃度が20%となるように加水調整して塗布液を得た。この塗布液を50g/m2 の原紙に5.0g/m2 の固形分が塗布されるようにエアーナイフコーターを使用して塗布し、乾燥して記録用シートを作製した。
【0021】
実施例2
実施例1のパラフィンワックス分散物の代わりに、同じく融点68℃のパラフィンワックス分散物(平均粒径0.5μm、固形分濃度30%)を使用した他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0022】
実施例3
実施例1のパラフィンワックス分散物の代わりに、平均粒径0.35μmのパラフィンワックス分散物(W−116H、固形分濃度30%、荒川化学社製)を使用した他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0023】
実施例4
実施例1のパラフィンワックス分散物の使用量を実施例1の2倍にした他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0024】
比較例1
実施例1のパラフィンワックス分散物を使用しない他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0025】
比較例2
実施例1のパラフィンワックス分散物の代わりに滑石(EF−100A、日本タルク社製)を水に分散したもの(固形分濃度30%)を使用した他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0026】
比較例3
実施例1のパラフィンワックス分散物の代わりに融点68℃のパラフィンワックス分散物(平均粒径2.5μm、固形分濃度30%)を使用した他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0027】
比較例4
実施例1のパラフィンワックス分散物の代わりに流動パラフィンのエマルジョン(平均粒径0.5μm、固形分濃度30%)を使用した他は、実施例1と同様にして記録用シートを作製した。
【0028】
上記のようにして得られた記録用シートについて、滑り性、インクジェット記録適性、油性インクによる印刷適性についてそれぞれ評価した。
〔滑り性の評価〕
作製した記録用シートの顕色剤塗布面同士が接触するように組み合わせ、摩擦係数測定試験機を使用して静摩擦係数及び動摩擦係数の測定を行い、摩擦係数の数値によって滑り性とした。
(注)摩擦係数が小さいほど、滑り性がよい。
【0029】
〔インクジェット記録適性の評価〕
ペン書きサイズ試験(J.TAPPI No.12)による標準滲み見本と比較して等級づける方法で評価した。ただし、インクは、インクジェット記録用のインクを使用した。
悪(0)〜良(6)を7段階で評価した。
【0030】
〔油性インクによる印刷適性の評価〕
オフセット印刷試験機を使用して顕色剤塗布面に印刷を行い、印刷の仕上がりを目視判定した。
○:印刷仕上がり良、△:印刷仕上がり不良、×:印刷仕上がり甚だ不良
結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から、次のことがわかる。固形分散状ワックスを使用しない(比較例1)場合、摩擦係数が大きく、滑り性が悪く、かつ、インクジェット記録適性が劣っている。固形分散状ワックスの代わりに滑石を用いる(比較例2)場合、滑り性はよいが、インクジェット記録適性及び油性インクによる印刷適性が劣っている。また、平均粒径が0.8μmよりも大きい2.5μmの固形分散状ワックスを用いる(比較例3)場合、油性インクによる印刷適性が劣っている。さらに、固形分散状ワックスではなく流動パラフィンを用いる(比較例4)場合、摩擦係数が大きく、滑り性が劣り、インクジェット記録適性もやや劣っている。
一方、平均粒径が0.8μm以下の固形分散状ワックスを用いる(実施例1〜実施例4)の場合、摩擦係数が小さく、滑り性がよく、インクジェット記録適性及び油性インクによる印刷適性がいずれも優れている。
【0033】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、摩擦係数が小さく、滑り性がよく、インクジェット記録適性及び油性インクによる印刷適性がいずれも優れた記録用シートを提供することができる。
Claims (2)
- 無機顔料を主成分とし、顕色剤としてフェノール樹脂又は芳香族カルボン酸の金属塩を含有する水分散液に平均粒径が0.8μm以下の固形分散状ワックスを添加して得られる顕色剤分散液を支持体上に塗布してなることを特徴とするインクジェット記録用シート。
- 固形分散状ワックスを添加する前の分散液の固形重量に対して、固形分散状ワックスの固形重量が1〜12重量%であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
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