JP3698540B2 - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、高周波領域の電磁変換特性に優れ、かつ生産性に優れた塗布型の磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大容量の記憶装置の普及に伴い、磁気記録媒体の高密度化が要望されるようになり、磁性層の高充填化、薄層化、および平滑化が求められている。しかしながら、磁性層の高充填化、平滑化は、他方で磁気記録媒体としての物性の劣化をもたらすという問題がある。これに対する方策として、磁性層の下層として非磁性層を別途設け、上記不具合を防止しようとすることが一般に行われている。
【0003】
例えば特開昭59−207027号公報では、放射線感応硬化樹脂と充填剤を含有したものを放射線により硬化させた下層を用いることにより、層間粘着を防止し、磁性層の高充填化、耐摩耗性向上、媒体の表面性の向上を図ろうとする技術が開示されている。しかしながら該公報のものは、下層の分散性、表面性が十分でなく、また、上・下層の塗膜の物性についても、高温から低温までの環境で十分に高い信頼性が得られない。
【0004】
また、特開平4−167225号公報では、下層に放射線や紫外線等の電磁波の照射によって硬化する樹脂バインダー中に針状比が3より大きい針状粒子を含有させることによってスティフネスを高め、電磁特性の向上を図った技術が開示されている。しかしながら該公報のものは、下層の分散性、表面性が十分に満足すべき程度にまで至っていない。
【0005】
上記以外にも、例えば特開昭60−38723号公報では、下層として放射線により硬化する不飽和二重結合を1個以上含むオリゴマーまたはポリマーの1種以上に、カーボンブラックを分散させて放射線硬化したものを用いることにより、帯電性が低く、磁性層の表面平滑性がよく、接着性の高い磁気記録媒体を得ようとする技術が開示されている。
【0006】
また特開平6−131652号公報では、極性基をもつ2種類の電子線(EB)硬化性樹脂をバックコートに使用している。極性基をもつ2種類の電子線硬化性樹脂を組み合わせて用いることにより、カーボン等の無機顔料の分散性を向上させ、磁性層への裏移りを少なくし、電磁特性、エラーレートを向上させることを目的としている。しかし、非磁性下層への適用については記載がない。
【0007】
このように、下層を設けることおよび電子線硬化性樹脂を利用することにより磁気記録媒体の特性向上を図るという方策においては種々の方法が提示されているが、近年の磁気記録媒体の高密度化の要望に応えるべく、より一層優れた磁気記録媒体を目指してさらなる技術開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、非磁性層(下層)が分散性、加工性に優れ、かつ磁性層(上層)が耐久性と高周波領域の電磁変換特性に優れ、さらに生産性にも優れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、磁性層(上層)が特定のガラス転移温度(Tg)を有し、かつ、非磁性層(下層)が特定の2種類の電子線硬化性樹脂を特定の割合で含有し、しかも該非磁性層の電子線硬化前のガラス転移温度(Tg)が所定の範囲の温度であるような磁気記録媒体が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、電子線硬化性樹脂を含む非磁性層と、該非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、前記磁性層のガラス転移温度(Tg)が65℃以上であり、前記非磁性層は、電子線硬化性樹脂を含む非磁性層用塗料を非磁性支持体上に塗布して形成した塗膜を電子線硬化してなるものであって、電子線硬化前の塗膜のガラス転移温度(Tg)が30℃〜53℃であり、かつ、該電子線硬化性樹脂が、イオウ含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂と、リン含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂とを、69:31〜10:90(重量比)の割合で含有することを特徴とする磁気記録媒体に関するものである。
【0011】
さらに本発明は、
(I)非磁性支持体の少なくとも一方の面上に電子線硬化性樹脂を含む非磁性層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程、
(II)上記塗膜を電子線硬化させて非磁性層を形成する工程、
(III)上記非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層用塗料を塗布し、磁性層を形成する工程、
を含む、請求項1の磁気記録媒体を製造する方法に関する。
【0012】
ここで、上記(II)工程において、硬化前にカレンダー加工処理を行うのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、電子線硬化性樹脂を含む非磁性層(下層)と、該非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層(上層)が設けられている。
【0015】
本発明において、非磁性層に含まれる電子線硬化性樹脂には、イオウ含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂と、リン含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂とを含む。
【0016】
上記電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂が含有するイオウ含有極性基(「S含有極性基」)としては、特に硫酸基および/またはスルホ基が望ましい。
【0017】
硫酸基およびスルホ基としては、−SO4Y、−SO3Y(YはHまたはアルカリ金属)において、−SO4K、−SO3K(すなわちY=カリウム)のものが特に望ましい。これら硫酸基、スルホ基は、いずれか一方を含有するものであっても、あるいは両者を含有するものであってもよく、両者を含むときにはその比は任意である。
【0018】
これらS含有極性基は、S原子換算で分子中に0.01〜10wt%、特には0.1〜5wt%含まれていることが好ましい。
【0019】
これらのS含有極性基が結合する樹脂骨格は塩化ビニル系樹脂である。塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル含有量が60〜100wt%、特には60〜95wt%のものが好ましい。
【0020】
このような塩化ビニル系樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、塩化ビニルとエポキシ基を含有する単量体との共重合体が特に好ましい。そして、その平均重合度は100〜900程度が好ましい。
【0021】
また、この塩化ビニル系樹脂は、S含有極性基に加え、不飽和二重結合を有するが、不飽和二重結合としては、アクリル基CH2=CH−COO−、メタクリル基CH2=CHCH3COO−を含有するのが好ましい。これらの(メタ)アクリル基は、分子中に平均で1〜20個、特には2〜10個程度存在することが好ましい。また、この(メタ)アクリル基は1つのウレタン結合を介して塩化ビニル系樹脂骨格に結合するのが好ましい。
【0022】
このようなS含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂を得るには、以下のようにするのが好ましい。
【0023】
すなわち、まず、S含有極性基を有し、さらに水酸基を含有する原料塩化ビニル系樹脂を用意する。この原料塩化ビニル系樹脂の水酸基の数は1分子中に3〜60個、好ましくは2〜30個である。極性基としては、S含有極性基のほかに必要に応じ、−OPO3Y、−PO3Y、−COOY(Yは、Hまたはアルカリ金属)、アミノ基(−NR3)、−NR3Cl(RはH、メチル基、エチル基)等を含有させることもできる。これらの中でアミノ基が特に好ましく、中でもジアルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル)が好ましい。このようなアミノ基は、通常、アミン変性によって得られる。すなわち、塩化ビニル・アルキルカルボン酸ビニルエステルの共重合体をアルコール等の有機溶剤に分散あるいは溶解させ、その中にアミン化合物(脂肪族アミン、脂環状アミン、アルカノールアミン、アルコキシアルキルアミン等の第1級、第2級もしくは第3級アミン等)と、容易にケン化反応を進行させるためのエポキシ基含有化合物とを加えてケン化反応を行なうことで得られる。このようなアミノ基を有するビニル単位を含有させる場合、樹脂中に0.05〜5wt%程度が好ましい。なお、アンモニウム塩基が結果的に含まれていてもよい。
【0024】
このような原料塩化ビニル系樹脂としては、例えば、特開昭60−238371号公報、同60−101161号公報、同60−235814号公報、同60−238306号公報、同60−238309号公報等に開示されたものが好適である。
【0025】
これら原料塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル、エポキシ基を有する単量体、さらに必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体を過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等のSを含む強酸根を有するラジカル発生剤の存在下に重合して得ることができる。このラジカル発生剤は、単量体に対して通常は0.3〜9.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%の割合で用いられる。
【0026】
なお、Sを含む強酸根を有するラジカル発生剤は水溶性のものが多いので、乳化重合あるいはメタノール等のアルコールを重合媒体とする懸濁重合やケトン類を溶媒とする溶液重合が好適である。
【0027】
ここで、Sを含む強酸根を有するラジカル発生剤に加えて、一般に塩化ビニルの重合に用いられるラジカル発生剤を用いてもよい。これらのラジカル発生剤としては、例えばラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネト、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、t−ブチル−パーオキシピパレート、t−ブチル−パーオキシネオデカノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸等のアゾ化合物等が挙げられる。また、強酸根を有するラジカル発生剤に、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記の重合反応において用いられ得る懸濁安定剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、マレイン酸−スチレン共重合体、マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、マレイン酸−酢酸ビニル共重合体等の合成高分子物質;デンプン、ゼラチン等の天然高分子物質等が挙げられる。
【0029】
また乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル等の非イオン性乳化剤等が挙げられる。
【0030】
また、必要に応じてトリクロルエチレン、チオグリコール等の分子量調整剤を用いることもできる。
【0031】
上記のエポキシ基を有する単量体としては、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル等の不飽和アルコールのグリシジルエーテル類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−P−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジル(メタ)アリルスルホネート等の不飽和酸のグリシジルエステル類;ブタジエンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセン等のエポキシドオレフィン類等が挙げられる。このエポキシ基を有する単量体は、一般に共重合体中のエポキシ基の量が0.5wt%以上となる範囲で使用される。
【0032】
塩化ビニルとエポキシ基を有する単量体のほかに、必要に応じて用いることのできる単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ブチルベンジル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、イタコン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の不飽和カルボン酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;スチレン、α−メチルスチレン、P−メチルスチレン等の芳香族ビニル等が挙げられる。
【0033】
このようにして得られる原料塩化ビニル系樹脂は、平均重合度が100〜900、特には200〜500で、塩化ビニルの含有量が60wt%以上のものが好ましい。なお、このような原料塩化ビニル系樹脂は、例えば「MR−110」(日本ゼオン(株)製)等として市販されている。
【0034】
かかる原料塩化ビニル系樹脂は、その後電子線変性を施される。
【0035】
一般的に熱硬化型の塩化ビニル系樹脂を電子線硬化型に変性する方法としては、水酸基やカルボン酸基を有する樹脂に対し、(メタ)アクリル基とカルボン酸無水物あるいはジカルボン酸を有する化合物を反応させてエステル変性する方法と、トリレンジイソシアネート(TDI)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2−HEMA)との反応物(アダクト)とを反応させてウレタン変性する方法がよく知られている。
【0036】
しかし、エステル変性は一般に塗膜が脆くなってしまうため、塩化ビニル系樹脂に適用するのは好ましくない。また、従来からよく用いられている上記のイソシアネートとアクリレートとのアダクト(TDI−2−HEMA)は分子内にすでにウレタン結合を有するため、アクリル二重結合を末端にもつ分岐分子鎖中にはウレタン結合が2個存在してしまう。そして、この2個のウレタン結合の存在と、長い鎖長とが分散性を低下させてしまうため、高分散性が必要な場合不適である。
【0037】
上記のような理由から、本発明において感電子線変性を行うには、エチレン性不飽和二重結合を1個以上およびイソシアネート基1個を1分子中に有し、かつウレタン結合を分子中にもたないモノマーを用いることが好ましい。このようなモノマーとしては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等がある。イソシアネートエチルアクリレートは分子内にウレタン結合をもたないので、電子線変性した塩化ビニルの分岐分子鎖中には1つのウレタン結合が存在するのみであり、分岐鎖も短いので、本来持っている骨格の塩化ビニルの分散性を低下させない。しかも分子主鎖内にはウレタン結合が存在するので、塩化ビニル系樹脂の混合比率を上げても塗膜が脆くなることもない。
【0038】
このように、水酸基およびS含有極性基を有する原料塩化ビニル系樹脂とモノマーとの反応によるウレタン結合によりエチレン性不飽和二重結合を導入するが、原料塩化ビニル系樹脂とモノマーのモル比によって電子線硬化性を自由に設計することができる。しかしながら上述したようにウレタン結合濃度を上げすぎると分散性の低下を生じる。そこで分散性と硬化性のバランスをとると、原料塩化ビニル系樹脂1分子あたり1〜20個、好ましくは2〜10個のモノマーを反応させることにより分散性、硬化性ともに優れた電子線硬化性塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0039】
原料塩化ビニル系樹脂とモノマーとの反応は、必要に応じて反応に関与しない公知の有機溶剤に水酸基およびその他の極性基を有する塩化ビニル系共重合体を溶解させ、公知のウレタン化反応触媒を用い、公知のラジカル重合禁止剤、例えばハイドロキノンを用い、反応温度60℃以下で行われる。
【0040】
なお、このようなS含有極性基を有する電子線硬化性塩化ビニル系樹脂は、例えば「TB−0246」(東洋紡績(株)製)等として市販されている。
【0041】
上記電子線硬化性塩化ビニル系樹脂と併用される電子線硬化性のウレタン樹脂はリン含有極性基(「P含有極性基」)を含有する。
【0042】
P含有極性基としては、ホスホン酸基=PO3Y、ホスフィン酸基=PO2Y、亜ホスフィン酸基=POY(YはHまたはアルカリ金属)の中から選ばれるいずれか1種以上が好ましい。Yとしては特にNaが好ましい。これらの極性基のうち=PO3Naのみを含むか、=PO3Naを主成分として含むものが好ましい。これらのP含有極性基は、P原子換算で分子中に0.01〜10wt%、特には0.02〜3wt%含まれていることが好ましい。これらは骨格樹脂の主鎖中に存在しても、分岐中に存在してもよい。
【0043】
これらのP含有極性基を結合する樹脂骨格は電子線硬化性のウレタン樹脂である。すなわち、分子内にアクリル系二重結合を少なくとも1個有し、後述のリン(P)化合物の少なくとも1種を反応させたP含有電子線硬化性樹脂であって、アクリル系二重結合含有化合物とウレタン結合を介して結合しているポリウレタンアクリレート樹脂である。
【0044】
ここでいうアクリル系二重結合とは、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド等の残基(アクリロイル基またはメタクリロイル基)をいう。
【0045】
アクリル系二重結合含有化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン等のトリオール化合物のモノ(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の4価以上ポリオールのモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル等のヒドロキシ基含有アクリル系化合物等が好適である。
【0046】
これらのアクリル系二重結合は樹脂分子内に少なくとも1個以上、好ましくは2〜20個存在する。
【0047】
ポリウレタンアクリレート樹脂は、一般にヒドロキシ基含有樹脂およびヒドロキシ基含有アクリル系化合物とポリイソシアネート含有化合物との反応により得られる。
【0048】
ヒドロキシ基含有樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、各種のグリコールおよびヒドロキシル基を分子鎖末端に有するポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0049】
中でもポリエステルポリオールを1成分として得られるポリウレタンアクリレート樹脂が好ましい。
【0050】
ポリエステルポリオールのカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の不飽和脂肪酸および脂環族ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリおよびテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0051】
また、ポリエステルポリオールのグリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0052】
また、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリおよびテトラオールを併用してもよい。
【0053】
ポリエステルポリオールとしてはほかに、カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルジオール類が挙げられる。
【0054】
上記ポリイソシアネート含有化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−ジフェニルエーテル、1,5’−ナフタレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートジシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、あるいは全イソシアネート基のうち7モル%以下の2,4−トリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体等のトリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0055】
上記ポリウレタンアクリレート樹脂製造に用いられるリン(P)化合物としては、下記の化1〜化5で表される化合物が好ましいものとして例示される。
【0056】
【化1】
【0057】
【化2】
【0058】
【化3】
【0059】
【化4】
【0060】
【化5】
【0061】
上記において、X1、X2はエステル形成官能基を表す。R1は炭素原子数8〜10の8価の炭化水素基を表す。R2は炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。アリール基およびアリールオキシ基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、−OM’(M’はアルカリ金属)またはアミノ基が結合したものでもよい。R3、R4はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−(CH3OR5)mで表される基(ただし、R5は炭素原子数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を表し;mは1〜4の整数である)を表す。Yはアルカリ金属原子、水素、1価の炭化水素基、またはアミノ基を表すが、特にNaが好ましい。
【0062】
上記リン化合物の具体例としては、例えば特開平6−131652号公報に記載のものが好適に挙げられる。
【0063】
これらのリン化合物は、ポリウレタンアクリレート樹脂製造において種々の過程で導入させることができる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリアルキレングリコールの原料樹脂を製造する際に、その1成分として用いることができる。特に、ポリエステルポリオールを製造する際、上記のリン化合物をポリエステルポリオールの重合完結前の任意の段階で添加し、反応させることができる。
【0064】
また、これらのリン化合物は、ポリウレタンアクリレート樹脂の原料の1成分として用いることができる。例えば、ヒドロキシ基を含有するリン化合物は、直接イソシアネート化合物やポリエステルポリオールやアクリレート化合物と反応させることにより、ポリウレタンアクリレート樹脂を製造することができる。
【0065】
本発明に用いられるP含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂は、公知の方法により、アクリル系二重結合含有化合物と特定のリン化合物および/また特定のリン化合物と反応させた原料樹脂等を含む原料とを溶剤中、または無溶剤中で反応させることにより得られる。得られる樹脂の分子量は500〜100,000であることが望ましい。なお、これらの製法は特開昭62−43830号公報、同61−77134号公報、同62−40615号公報、同62−195720号公報等に記載されている。
【0066】
なお、これらP含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂は、例えば「TB−0242」(東洋紡績(株)製)等として市販されている。
【0067】
これらS含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂とP含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂は、本発明の十分な効果を得るためには、前者:後者の混合比が69:31〜10:90(重量比)の範囲とし、より好ましくは60:40〜40:60である。なお、これらの樹脂に加えて、非磁性層含有成分全体の20wt%以下の範囲で公知の各種樹脂を含有してもよい。
【0068】
非磁性層には、上記2種類の電子線硬化性樹脂の他に、非磁性粉末、導電性物質、溶剤、潤滑剤、研磨剤等が含有される。
【0069】
非磁性層に用いる非磁性粉末としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、硫酸バリウム、ZnS、MgCO3、ZnO,CaO、γ硫化鉄、二硫化W、二硫化Mo、窒化ホウ素、MgO,SnO2 、SiO2、Cr2O3、α−Al2O3、SiC,酸化セリウム、コランタム、人造ダイアモンド、α−酸化鉄、ザクロ石、ガーネット、ケイ石、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化モリブデン、炭化ホウ素、炭化タングステン、チタンカーバイト、トリポリ、ケイソウ土、ドロマイト等が挙げられる。
【0070】
これら非磁性層に用いられる非磁性粉末の形状は、球状、粒状、針状等、通常用いられる形状であれば特に限定されるものでないが、球状、粒状等の形状よりも、針状の形状の方が、重層にした場合の平滑性が高くなり好ましい。具体的には、非磁性粉末の形状が針状のときは平均長径0.08〜0.40μm、平均軸比3〜10のものが好ましいが、さらに好ましくは平均長径0.10〜0.30μm、平均軸比4〜10のものである。平均長径が大きすぎると下層の表面平滑性が劣化し、一方小さすぎると針状のメリットが見込めない。なお、粒状の場合は、平均粒径は0.02〜0.05μmであることが好ましい。
【0071】
非磁性層には導電性物質を含むことが好ましい。導電性物質としては、平均粒径10〜60nm、好ましくは15〜40nm、BET法による比表面積150m2/g以下、好ましくは20〜150m2/g、さらに好ましくは25〜150m2/g、特に好ましくは30〜130m2/gで、DBP給油量が100ml/100g以下、さらに好ましくは20〜100ml/100g、特に好ましくは30〜80ml/100gのものが好ましく、これらを満たすものであればその種類等に特に制限はない。平均粒径が10nm未満では分散性が低下し表面性が良好でなくなることがあり、平均粒径が60nmを超えても表面性が良好でなくなることがある。また、比表面積が150m2/gを超えると分散が困難になるとともに高充填の塗料の調製が困難になる。さらに、DBP給油量が100ml/100gを超えても同様の不具合が生じやすくなる。ただし、比表面積、DBP給油量が小さすぎると、いずれにおいても表面性が悪くなりやすい。
【0072】
なお、平均粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって求めればよい。
【0073】
好ましい導電性物質としては、例えばカーボンブラック、SnO2、TiO2、SnO2(Sbドープ)、黒色導電性酸化チタン(TiOx;1≦x≦2)等が挙げられる。
【0074】
上記のなかでも、表面性と導電性を満足するにはカーボンブラックが望ましく、特にストラクチャーが未発達な非構造性カーボンブラックが望ましい。このような非構造性カーボンブラックは、導電性は比較的低いが分散性に優れているため、非磁性層における顔料の充填率を大きくできる。このため非磁性層自体の表面性が良化し、ひいては磁性層の表面性が良好となり、本発明の効果が向上する。また、非構造性カーボンブラックの形状には特に制限はなく、球状、薄片状、塊状、繊維状等のいずれであってもよいが、球状のものが好ましい。
【0075】
本発明で用いるカーボンブラックは、市販品をそのまま用いればよく、例えば、商品名♯45B、MA8B、♯52B、CF9B(いずれも三菱化成工業(株)製)、REVEN760(コロンビアカーボン社製)等が挙げられる。
【0076】
一般にカーボンおよび導電性物質の非磁性層中の含有量は、目的とする特性および使用するカーボンブラックおよび導電性物質の種類によって決めればよいが、カーボンブラックおよび導電性物質以外の非磁性粉末と併用する場合はその非磁性粉末100wt%に対して5〜50wt%の範囲で添加するのが好ましい。この範囲で添加することにより表面性と導電性の調節を容易に行うことができる。
【0077】
溶剤としては特に制限はないが、バインダーの溶解性および相溶性等を考慮して適宜、選択される。例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパロール、ブタノール等のアルコール類、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、テトヒドロフラン、フルフラール等のフラン類等、ジメチルホルムアミド、ビニルピロリドン等の希釈剤ないし溶剤を、単一またはこれらの混合溶剤として用いる。これらの溶剤は、バインダーに対して10〜10000wt%、特には100〜5000wt%の割合で用いるのが好ましい。
【0078】
潤滑剤としては、公知の種々の潤滑剤の中で、特に脂肪酸および/または脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
【0079】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素原子数8以上の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素原子数11以上のアルキル基)等が挙げられ、中でもミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等が好ましい。
【0080】
また、脂肪酸エステルとしては、炭素原子数10〜22の飽和ないし不飽和の脂肪酸と炭素原子数4〜22の飽和ないし不飽和のアルコールや、ソルビタン等の環状若しくは多糖類還元アルコール等からなる脂肪酸エステルが好ましく、例えばステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等が特に好適である。エステルにおける脂肪酸および/またはアルコールの脂肪族鎖は飽和でも不飽和であってもよく、n−体、i−体等種々のものであってもよい。
【0081】
その他の潤滑剤として、前記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石鹸、シリコーンオイル、フッ素オイル、パラフィン、流動パラフィン、界面活性剤等も用いることができる。
【0082】
用いる潤滑剤の量は、非磁性粉末100wt%に対して総計20wt%以下、特には0.1〜15wt%が好ましい。
【0083】
研磨剤としては、一般的な無機化合物が使用できるが、モース硬度6以上のCr2O3、α−Al2O3、SiC等の材料が好ましい。また、粒径は0.05〜0.5μm程度のものを使用することが好ましい。
【0084】
本発明において、非磁性層(下層)の電子線硬化前の塗膜のガラス転移温度(Tg)は30℃〜53℃である。電子線硬化前の下層塗膜のガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることによりカレンダー加工が容易となる。また硬化後のガラス転移温度(Tg)が65℃以上である磁性層(上層)と組み合わせることにより、低温から高温まで柔軟な磁気記録媒体とすることができる。
【0085】
なお下層のガラス転移温度(Tg)は、電子線硬化前の塗膜の状態で測定した場合に上記範囲に入ればよく、下層に含有される種々のガラス転移温度(Tg)の樹脂を混合して調節することができる。ガラス転移温度(Tg)は粘弾性スペクトルメーターにより測定することができる。
【0086】
非磁性層の電子線硬化前の塗膜のガラス転移温度(Tg)を53℃以下にするには、例えばTgの低い樹脂、特に電子硬化性ウレタン樹脂のTgの低いものを使用すること等により達成し得る。特にポリウレタン樹脂成分のポリエステル部分を変化させることが、分散性を低下させずにTgを下げることができるため好ましい。非磁性層の硬化前のTgが53℃を超えると、下層そのもののカレンダー加工性が劣ったり、磁性層をその上に形成した後の加工性が劣ったりする。また、上層(磁性層)の塗膜のTgによっては低温での物性が悪くなったりしやすい。また、非磁性層の硬化前の塗膜のTgが30℃未満の場合は、カレンダー加工性は良好なものの、磁性層の塗膜のTgをいくら高くしても高温での物性が劣る問題点が出やすい。なお、上記塗膜のTgを30〜53℃とするには、例えば上記の方法の他、塩化ビニル系樹脂とウレタンの比率を調整する、非磁性粉末や導電性物質等の顔料に対する樹脂の比率を調整する(樹脂の比率を上げるとTgが低下する傾向となる)、モノマーを添加する(モノマーの分子量が小さいほどTgが低下する傾向)等方法など挙げられる。なお、上記モノマーとしては、例えばトリメチロールプロパン、ジペンタエルスリトール、ペンタエルスリトール、ネオペンチルグリコール等を骨格とするアクリレート系、メタアクリレート系の多官能モノマーやオリゴマー等、従来公知のものを任意に用いることができる。
【0087】
このような非磁性層塗膜の電子線硬化において、電子線の照射量は1〜10Mradが好ましく、特には3〜7Mradが好ましい。またその照射エネルギー(加速電圧)は100kV以上とするのがよい。
【0088】
なお、非磁性層の塗膜への電子線の照射は、非磁性支持体上に上記樹脂を含む非磁性層用塗料を塗布して塗膜を形成した後であればいつでもよい。非磁性層を加工した後に電子線硬化を行うのが、下層の表面性が出やすく最も望ましいが、非磁性層の加工前や磁性層の塗布、乾燥後に電子線照射してもよい。また、磁性層塗布前、後に分けてそれぞれ電子線を照射してもよい。
【0089】
上層である磁性層は、鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含み、硬化後のガラス転移温度(Tg)が65℃以上である。
【0090】
本発明で用いる磁性粉末は鉄(Fe)を主成分とし、鉄(Fe)100wt%に対して以下の組成のものを用いるのが好ましい。
【0091】
Co :18〜40wt%
Al : 1〜15wt%
Yおよび希土類元素: 1〜15at%
Fe磁性粉末に含まれるCo量は18〜40wt%が好ましい。18wt%未満では磁気エネルギーの向上が期待できず、一方、40wt%超では磁性粉末の特性が均一になりにくい。さらに、Alが含まれない場合には、Fe磁性粉末が焼結したり、強度が低下し保存特性が劣化したり、また塗料分散性、塗料安定性にも悪影響を及ぼす。Yまたは希土類元素が含まれない場合には、Alと同様にFe磁性粉末が焼結し、形状が崩れSFD(Switching Field Distribution;反転磁界分布)の低下を招くおそれがある。
【0092】
このFe磁性粉末には、さらにSi、Cr、Mn、Ni、Zn、Cu、Zr、Ti、Bi、Ag、Pt、B、C、P、N、S、Sc、V、Mo、Rh、Pd、Sn、Sb、Te、Ba、Ca、Ta、W、Re、Au、Hg、Sr、Pb等の元素が含まれていてもよい。
【0093】
また、これらのFe磁性粉末には、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物膜で覆ったものでも、Si、Al、Ti等のカップリング剤や各種の界面活性剤等で表面処理したものでも、分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤等で分散前にあらかじめ処理を行ったものでもよい。
【0094】
Fe磁性粉末に含まれるNa、K、Ca等の可溶性の無機イオンの量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0095】
Fe磁性粉末の含水量は0.1〜2%であればよいが、結合剤の種類等により最適化させるのが好ましい。
【0096】
Fe磁性粉末のpHは用いる結合剤との組み合わせにより最適化することが好ましく、その範囲は7〜11であり、さらに好ましくは8〜10である。
【0097】
Fe磁性粉末は、BET法による比表面積で25〜70m2/gであるのが好ましく、より好ましくは35〜60m2/gである。
【0098】
Fe磁性粉末の飽和磁化量は130emu/g以上が好ましく、さらには140〜170emu/gであることが好ましい。長軸長は0.2μm以下であることが好ましく、さらには0.05〜0.15μmであることが好ましい。結晶サイズ(Dx)は200オングストローム以下が好ましく、さらには90〜180オングストロームが好ましい。
【0099】
Fe磁性粉末を分散する結合剤としては一般的に公知のものが使用できる。例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性ないし反応型樹脂、放射線感応型変性樹脂等が用いられる。これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは磁気記録媒体の特性、工程条件に合わせて適宜選択使用される。
【0100】
熱可塑性樹脂としては、軟化温度が150℃以下、平均分子量5,000〜20,000、重合度100〜2,000程度のものが好ましい。
【0101】
熱硬化性樹脂、反応型樹脂等も、上記と同様の平均分子量、重合度のものが用いられ、塗布、乾燥、カレンダー加工後に加熱、および/または電子線照射することにより、縮合、付加等の反応により分子量は無限大のものとなる。
【0102】
これらの樹脂の中で、樹脂が熱分解または溶融しないものが好ましい。
【0103】
上記樹脂の例としては塩化ビニル系共重合体が挙げられる。具体的には、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール−プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−末端OH側鎖アルキル共重合体等が挙げられる。
【0104】
またウレタン化合物も好ましく用いられる。ウレタン化合物の例としては、ポリウレタンエラストマーおよびプレポリマーおよびテロマーがあり、ポリウレタンの使用は、耐摩耗性およびPETフィルム等支持体への接着性が良い点で特に有効である。ウレタンの合成原料のイソシアネートとして、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4−4’ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−または1,4−キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、デスモジュールL、デスモジュールN等の各種多価イソシアネートが挙げられる。
【0105】
さらに、線状飽和ポリエステル(エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリット、ソルビートル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和多価塩基酸との縮重合物によるもの)、線状飽和ポリエーテル(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)やカプロラクタム、ヒドロキシル含有アクリル酸エステル、ヒドロキシル含有メタクリル酸エステル等の各種ポリエステル類の縮重合によりなるポリウレタンエラストマー、プレポリマーが有効である。
【0106】
このほかに、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ホルマール樹脂等のポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、繊維素誘導体、多官能ポリエステル樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂および誘導体(PVPオレフィン共重合体)、ポリエーテル樹脂、ポリカプロラクトン等の多官能性ポリエーテル類、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、スピロアセタール樹脂、水酸基を含有するアクリルエステルおよびメタクリルエステルを重合成分として少なくとも1種含むアクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合エラストマー、ポリブタジエンエラストマー、塩化ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴムおよびその他環化物、エポキシ変性ゴム、内部可塑性飽和線状ポリエステル等のエラストマーも使用することができる。
【0107】
熱硬化性樹脂としては、縮重合するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、ブチラール樹脂、ポリマール樹脂、メラニン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系反応樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0108】
反応型樹脂としては、前記の縮重合系樹脂とイソシアネート化合物等の架橋剤との混合物;高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物;メタクリル酸塩共重合体とジイソシアネートプレポリマーの混合物;ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物;低分子量多価アルコール/高分子量多価アルコール/トリフェニルメタントリイソシアネートの混合物等が挙げられる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル(カルボン酸含有も含む)、塩化ビニル−ビニルアルコール−酢酸ビニル(カルボン酸含有も含む)、塩化ビニル−塩化ビニリデン、塩化ビニル−アクリロニトリル、ビニルブチラール、ビニリホルマール等のビニル系共重合体樹脂と架橋剤との混合物;ニトロセルロース、セルロースアセトブチレート等の繊維素系樹脂と架橋剤との混合物;ブタジエン−アクリロニトリル等の合成ゴム系と架橋剤との混合物等が挙げられる。これらの重合体は、単独あるいは2種以上併用して用いられる。
【0109】
また、上記共重合体は末端および/または側鎖に水酸基を有するものがイソシアナートを使用した架橋や放射線架橋等を容易に利用できるため好適である。さらに、末端や側鎖に極性基として、−COOY、−SO3Y、−OSO3Y、−OPO3Y、−PO3Y、−PO2Y、−N+R3Cl-、−NR2(ただし、YはHまたはアルカリ金属、RはH、メチル基、エチル基)等をはじめとする酸性極性基、塩基性極性基等を含有していてもよく、これらの含有は分散性の向上に好適である。
【0110】
これらの共重合体をイソシネートアダクト体を使用して架橋させる場合の硬化剤としては、イソシネートとして、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の各種多価イソシアネートとトリメチロールプロパンのような多価アルコールとのアダクト体を使用すればよい。具体的には、コロネートL、HL、3041(以上、いずれも日本ポリウレタン(株)製)、24A−100、TPI−100(以上、いずれも旭化成工業(株)製)、デスモジュールL、N(以上、いずれもB. F. Goodrich社製)等が挙げられ、上記重合体に対して1〜50wt%添加して使用する。
【0111】
一般にこのような反応性または熱硬化性樹脂を硬化するには、加熱オーブン中で50〜80℃にて6〜100時間加熱すればよい。
【0112】
Fe磁性粉末に対する結合剤の量は、Fe磁性粉末100に対して10から100(重量比)が好ましい。結合剤が少なすぎるとFe磁性粉末の結合性が悪く、走行耐久で粉落ちによる目詰まりが発生しやすい。一方、結合剤が多すぎると高い電磁変換特性が選られない。結合剤の量はハード側の要求する特性に合うように、電磁変換特性と物性のバランスを考慮し、決めることが好ましい。
【0113】
磁性層に添加する研磨剤、カーボンブラック、添加剤は非磁性層での説明の中で示したものが同様に使用できる。
【0114】
磁性層の厚さは、厚み損失を減らし、磁性層の塗布性を高め、非磁性層からの潤滑剤の供給しやすさ等のために、極力薄い方が好ましく、1μm以下が好ましく、0.2μm以下が特に好ましい。
【0115】
本発明では、磁性層塗膜の熱硬化後のガラス転移温度(Tg)は65℃以上である。磁性層の硬化後Tgが65℃以上の場合、硬化前Tgが53℃以下である非磁性層と組み合わさったとき高物性の磁気記録媒体が得られる。一方、磁性層の硬化後Tgが65℃未満では、高温での耐久性や高温高湿での保存特性に問題を生じ、好ましくない。なお、磁性層塗膜の熱硬化後Tgは90℃以下であるのが、塗膜の柔軟性、低温耐久性、0℃のスチル特性等の点から、好ましい。
【0116】
なお、上層のTgは、上層塗布、熱硬化処理後の層を測定した場合に上記範囲に入ればよく、上層に含有される種々のガラス転移温度(Tg)の樹脂を混合して調節することができる。なお、ガラス転移温度(Tg)は、下層の場合と同様に、粘弾性スペクトルメーターにより測定することができる。
【0117】
なお、本発明において磁性層塗料は、非磁性層を支持体上に塗布後、乾燥し、ついでカレンダー加工、さらに硬化した後に、この上に塗布するのが好ましい。なお、磁性層の硬化は、用いる結合剤の種類等に応じて、熱硬化、電子線硬化等、任意の方法が用いられ得る。
【0118】
このような非磁性層、磁性層が設けられる非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホンセルローストリアセテート、ポリカーボネート等の公知のフイルムを使用することができ、好ましくは、PET、PEN、芳香族ポリアミドであり、さらに好ましくは、PETないしPENの2種ないし3種による多層共押出しによる複合化フイルムまたは芳香族ポリアミドであり、これらのフィルムを使用すると電磁変換特性、耐久性、摩擦特性、フィルム強度、生産性のバランスが得やすい。
【0119】
また、これらの非磁性支持体には、フィラーとしてAl、Ca、Si、Ti等の酸化物や炭酸塩等の無機化合物、アクリル樹脂系微粉末等の有機化合物等を添加することが好ましく、これらの量と大きさにより表面性を自由にコントロールすることが可能となり、電磁変換特性、耐久性、摩擦特性等をコントロールすることが可能である。
【0120】
さらに、これら非磁性支持体には、あらかじめコロナ放電処理、プラズマ放電および/または重合処理、易接着剤塗布処理、除塵処理、熱および/または調湿による緩和処理等を行ってもよい。
【0121】
本発明では、走行安定性のさらなる改善や磁性層のさらなる帯電防止等のために、非磁性支持体上にバックコート層が設けられていてもよい。バックコート層は、30〜80wt%のカーボンブラックを含有すること好ましい。カーボンブラックの含有量が少なすぎると帯電防止効果が低下する傾向があり、さらに走行安定性が低下しやすくなる。一方、カーボンブラックの含有量が多すぎるとバックコート層の強度が低下し、走行耐久性が悪化しやすくなる。カーボンブラックは、通常使用されるものであればどのようなものであってもよく、その平均粒径は、5〜500nm程度が好ましい。平均粒径は、通常、透過型電子顕微鏡により測定する。
【0122】
バックコート層には、前記カーボンブラック以外に、機械的強度を高めるために、非磁性層の説明において挙げた各種研磨材等の非磁性無機粉末を含有させてもよい。
【0123】
この他、必要に応じ、界面活性剤等の分散剤、高級脂肪酸,脂肪酸エステル、シリコンオイル等の潤滑剤、その他の各種添加物を添加してもよい。
【0124】
バックコート層に用いる結合剤、架橋剤、溶剤等は前述した非磁性層、磁性層に用いるものと同様のものでよい。結合剤としては、特に塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂等が挙げられる。結合剤の含有量は、固形分の合計100重量部に対し、好ましくは15〜200重量部、より好ましくは50〜180重量部である。結合剤の含有量が多すぎると、媒体摺接経路との摩擦が大きくなりすぎて走行安定性が低下し、走行事故を起こしやすくなる。また、磁性層とのブロッキング等の問題が発生する。結合剤の含有量が少なすぎると、バックコート層の強度が低下して走行耐久性が低下しやすくなる。
【0125】
バックコート層の厚さ(カレンダー加工後)は、1.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmである。バックコート層が厚すぎると、媒体摺接経路との間の摩擦が大きくなりすぎて、走行安定性が低下する傾向にある。一方、薄すぎると、非磁性支持体の表面性の影響でバックコート層の表面性が低下する。このため、バックコートを熱硬化する際にバックコート層表面の粗さが磁性層表面に転写され、高域出力、S/N、C/Nの低下を招く。また、バックコート層が薄すぎると、媒体の走行時にバックコート層の削れが発生する。
【0126】
本願における非磁性層、磁性層は、支持体の片面に設けられても、両面に設けるものでも、磁性層を複数層設けるものであってもよく、特に磁性層を片面のみに設けるときには、磁性層とは反対の面にバックコート層を設けることが好ましく、磁性層上に、磁性層の潤滑、保護のために、潤滑剤、プラズマ重合膜、ダイヤモンドライクカーボン膜等の保護潤滑層を設けてもよい。
【0127】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、
(I)非磁性支持体の少なくとも一方の面上に電子線硬化性樹脂を含む非磁性層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程、
(II)上記塗膜を電子線硬化させて非磁性層を形成する工程、
(III)上記非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層用塗料を塗布し、磁性層を形成する工程、
を含む。
【0128】
ここで上記(II)工程において、電子線硬化前にカレンダー加工処理を行のが好ましい。
【0129】
また、さらにバックコート層を形成する工程を含んでもよい。
【0130】
具体的には、例えば以下の方法により製造する。
【0131】
まず、非磁性支持体に非磁性層用塗料を塗布する。非磁性層の厚さは非磁性支持体の表面粗さや媒体の要求特性により適宜決めればよいが、一般的には0.5〜3.0μmである。さらに非磁性層のメリットを引き出そうとすると、好ましくは0.8μm以上である。非磁性層用塗料を塗布後、乾燥し、好ましくはカレンダー加工処理を施した後、電子線照射により硬化する。非磁性層は、硬化前にカレンダー加工した方がカレンダーの温度、加工圧等が低くても良好な非磁性層の表面が得られ好ましい。また、非磁性層は磁性層塗布前にカレンダー加工した方が好ましい。
【0132】
カレンダー加工ロールとしてはエポキシ、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール(カーボン、金属やその他の無機化合物を練り込んで有るものでもよい)と金属ロールの組合わせ(3ないし7段の組合せ)、または金属ロールどうしで処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、その線圧力は好ましくは200kg/cm以上、さらに好ましくは300kg/cm以上であり、その速度は20〜700m/分の範囲である。
【0133】
カレンダー加工すると次のような利点がある。
【0134】
(1)磁性層の塗布後の表面性が良好になり、磁性層の加工条件を低くでき、物性に有利な媒体を作りやすい。
【0135】
(2)非磁性層をあらかじめ加工、硬化しておくと、磁性層中の研磨剤が非磁性層に潜ることが少ないため、磁性層厚が1.0μm以下、さらには0.5μm以下の場合、現在存在する研磨能が高い一般的な研磨剤の粒径が0.1〜0.5μmと膜厚と一致し、研磨能の高い媒体を作りやすい。すなわち、加工しない非磁性層に上層を塗布する場合に比べ、研磨剤の粒径は小さく、かつ少量で同様の研磨能の媒体ができるため、電磁変換特性を高くすることができる。
【0136】
(3)先に非磁性層を加工することで、上層である磁性層はベースのフィラーの影響を受けづらくなり、電磁変換特性に有利である。
【0137】
(4)上層である磁性層塗布時の塗布ノズルの摩耗の程度を低下させることができる。
【0138】
また、磁性層塗布前に電子線照射等により硬化させないと、非磁性層が磁性層の溶剤の影響を受け、上層である磁性層の塗布が難しい。
【0139】
電子線照射量は1〜10Mradが好ましく、特には3〜10Mradが好ましい。3Mrad未満では磁性層の塗布面の安定性を得るのに十分でなく、一方、10Mradを超える照射量で照射しても媒体物性に差が現れない。
【0140】
磁性層の塗布性には電子線照射量が多い方が、磁性層の加工性には電子線照射量の少ない方が、磁気記録媒体物性としては電子線照射量の多い方が、それぞれ好ましい。そのため、磁性層塗布前後に分けて電子線を照射するのが最もバランスをとりやすく、好ましい。
【0141】
また、非磁性層に従来用いられている熱硬化性樹脂を用いた場合、熱硬化性の硬化剤が必要となるが、これは一般にTgが高く、上層磁性層の加工性が上がりにくくなるのに対し、本発明のように電子線硬化性樹脂を用い、これを電子線で硬化させた場合にはこのような傾向がなく、磁性層の塗布性と加工性のバランスをとりやすい。
【0142】
また、非磁性層塗布から加工、電子線照射、巻き取りまで1工程ですることが好ましい。特にベース厚が7μm以下になると、走行による帯電の影響で巻き取りが乱れ、生産性が低下してしまうが、巻き取り前に電子線照射することで帯電量が減少し、巻き取りを良好に行うことができる。同様に、磁性層塗布、加工、電子線照射、巻取りも1工程で行った方が巻き取りを良好に行うことができ好ましい。
【0143】
次いで、この電子線硬化後の非磁性層上に、磁性層用塗料を塗布する。
【0144】
磁性層塗布後は一般的な磁気媒体の製造方法に準じ、乾燥、カレンダー加工、バックコート塗布、乾燥、熱硬化を行う。また、磁性層やバックコート層の結合剤種によっては複数回電子線照射できない場合もあるので注意が必要である。
【0145】
特にバックコート層の結合剤がニトロセルロース系樹脂を含む場合には、電子線照射により発火するおそれがあるため、バックコート層塗布前に電子線照射を終らせておくべきである。
【0146】
また、バックコート層塗布前に電子線照射することで、バックコート層の接着性が向上するため、バックコート塗布前に電子線照射することが好ましい。
【0147】
このようにして非磁性層、磁性層を形成した後に、必要に応じて表面平滑化処理として好ましくはカレンダー加工を行う。カレンダー加工の方法は、上記非磁性層での加工で説明したのと同じように行うことができる。
【0148】
カレンダー加工後、非磁性層、磁性層、バックコート層の硬化を促進するために、40℃〜80℃の熱硬化処理および/または電子線照射処理を施してもかまわない。
【0149】
次いで、スリッタまたはプレス機で所定のテープあるいはディスク形状にし、さらに磁性面および/またはバックコート面に研磨、クリーニング等の二次加工を行い、本発明の磁気記録媒体を作製する。
【0150】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0151】
なお、本実施例における磁気記録媒体の特性評価は、下記基準に従った。
【0152】
[分散光沢]
GLOSS METER GM−3D(村上色彩研究所)を使用し、入射角60°で測定した。
【0153】
[表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)]
「TALYSTEPシステム」(テーラーホブソン社製)を用い、JIS B0601に基づいてRaの測定を行った。ただし測定機の条件としては、フィルター0.18〜9Hz、触針0.1×2.5μmスタイラス、触針圧2mg、測定スピード0.03mm/sec、測定長さ500μmである。また、ベースフィルムのRz(十点平均粗さ)もこの方法によった。
【0154】
[電磁変換特性(C/N)]
松下DVCカメラNV−DJ1にて20.96MHz(1/2Tb)の信号を記録し、この信号を再生したときの19.96MHzの再生信号の比を測定した。この時テープポジションはMPモードで、OdBはTDK DVC−refテープである。
【0155】
[耐久走行性]
0℃、20℃で60%RH、40℃で80%RHの3環境下に松下DVCカメラNV−DJ1を各3台設置し、60分テープを繰り返し再生100時間走行させ、走行中のRF出力をモニターし、各走行ごとのRFの出力変動、出力低下、目詰まり、100時間後のテープ状態を調査した。トラブルが発生した環境と、状況、巻数を記した。なお、ここでRF出力が初期値に対し瞬時に3dB以上低下し、かつ15秒以上復帰しない場合を目詰まりとした。また15秒以内に復帰した場合は瞬間目詰まりとした。
【0156】
[ドロップアウト(DO)]
松下DVCカメラNV−DJ1で各テープにカラーバー信号を記録し、その再生時に「ドロップアウトカウンターVH03AZ」(シバソク社製)にて幅5μs、深さ12dBの大きさのDOを30分測定し、1分間あたりのDO個数を求めた。
【0157】
[0℃スチル]
0℃の環境にスチル時間限定を解除したシャープのDVCカメラVL−DC1を3台設置してスチル試験を行った。3台のデッキでのスチル時間の平均を記した。ただし最大60分までの測定時間とした。
【0158】
[製品歩留まり]
それぞれの水準を切断後の長さが10000mになるように、塗布幅274mmで塗布を行い、6.35mm幅に切断後パンケーキを全数検査し、盛り上がり、しわ、スジ等の調査を行い、以下の基準に従って良品のパンケーキ長さを求め、全パンケーキ長さに対する比率をパーセントで表示した。
【0159】
盛り上がり: パンケーキ状態を目視で観察し、盛り上がりが明らかな場合はパンケーキ全長NGとした。
【0160】
しわ、スジ: パンケーキ頭より10m分の磁性層を目視で観察し、スジ、しわのない場合はパンケーキ全長OKとした。スジ、しわが1本でもあった場合はそこから1000m分をNGとし、再度10m目視で観察し、それを繰り返し、良品のパンケーキ長さを求めた。
【0161】
上記の材料のすべて、または一部をニーダーで混練後、横型のピンミルにて分散し、最後に溶剤で粘度調整を行った。
【0162】
(磁性層組成)
磁性粉末1 同和鉱業 HB167 100.0重量部
Co/Al/Y=30wt%/6.1wt%/6.1at%(Fe 100% に対して)
Hc:2375Oe
σs:143emu/g
BET値:51m2/g
長軸長:0.10μm
結晶子サイズ:165オングストローム
pH:9.4
樹脂 塩化ビニル 日本ゼオン MR110 7.7重量部
塩化ビニル共重合体
塩ビ/2HEMA/AGE/分子末端OSO3K=84.5/4.5/7.4/0.36
ポリウレタン 東洋紡 UR8200 7.7重量部
ポリエステルポリウレタン
SO3Na基含有
平均分子量:20,000
分散剤 東邦化学 RE610 3.0重量部
有機リン酸化合物
研磨剤 住友化学 HIT80 5.0重量部
α−アルミナ
平均粒径:0.09μm
カーボン 三菱化学 #10 0.2重量部
ファーネスカーボン
粒径:84nm
BET値:28m2/g
吸油量:84ml/100g
潤滑剤 日本油脂 NAA180 1.2重量部
脂肪酸
日光ケミカルズ NIKKOL BS 1.0重量部
脂肪酸エステル
硬化剤 日本ポリウレタン C−2030 3.1重量部
トリレンジイソシアネート/酢酸ブチル
NV=15%
溶剤比 MEK/トルエン/シクロヘキサノン=1/1/2
上記材料のすべて、または一部をニーダーで混練後、横型のピンミルにて分散し、最後に粘度調節を行った。
【0163】
上記材料のすべて、または一部を高速ディスパーにて攪拌後、縦型のピンミルにて分散し、最後に溶剤で粘度調節を行った。
【0164】
(塗布工程)
5.2μm厚のポリエチレンナフタレート支持体(帝人PENフィルムQ11:Ra7nm、Rz100nm、ヤング率700/730kg/mm2)上に、カレンダー加工後の厚みが1.4μmになるように、非磁性下層をリバースコーターで塗布した。その後カレンダー加工を行い、さらに3Mradで電子線照射を行った。このとき下層の表面粗さ(Ra)は3.0nmであった。なお、電子線照射前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0165】
こうして形成した非磁性層上に、磁性層を、加工後厚みが0.13μmになるようにノズルで塗布を行い、配向、乾燥、カレンダー加工後、再電子線照射(4Mrad)を行った。さらにバックコートを0.5μmの乾燥厚になるようにグラビアシリンダーで塗布、乾燥した。
【0166】
こうして作製したテープ原反を60℃で48時間熱硬化を行った後、6.35mm幅に切断し、DVC用テープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃であった。
【0167】
(比較例1)
実施例1において、非磁性層の樹脂を「TB−0246」(以下「EBCVC(S)」とも記す場合あり)のみとし、「TB−0242」(以下「EBCU(P)」とも記す場合あり)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は70℃であった。
【0168】
(比較例2)
実施例1において、非磁性層の樹脂を「TB−0242」(EBCU(P))のみとし、「TB−0246」(EBCVC(S))を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は20℃であった。
【0169】
(比較例3)
実施例1において、非磁性層の樹脂を下記に示すEBCVC(COOH)9.6重量部とEBCU(COOH)9.6重量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は60℃であった。
[EBCVC(COOH)]
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−マレイン酸共重合体
平均重合度400
COOH基含有量:1wt%
アクリル基含有量:10モル/1モル
[EBCU(COOH)]
ヒドロキシ含有アクリル化合物−カルボキシ含有化合物−ヒドロキシ含有ポリエステルポリオール−ジフェニルメタンジイソシアネート
平均分子量:2.5万
COOH含有量:1wt%
アクリル含有量:6モル/1モル
【0170】
(比較例4)
実施例1において、非磁性層の塩化ビニル系樹脂/ウレタン樹脂(重量比)を50/50から70/30に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は55℃であった。
【0171】
(比較例5)
実施例1において、磁性層のポリエステルポリウレタン「UR8200」を分子量2.3万のアジピン酸系ポリエステルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリウレタン樹脂に変更し、かつ、塩化ビニル系樹脂/ウレタン樹脂(重量比)を50/50から70/30に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は60℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0172】
(実施例2)
実施例1において、非磁性層の塩化ビニル系樹脂/ウレタン樹脂(重量比)を50/50から60/40に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は50℃であった。
【0173】
(実施例3)
実施例1において、磁性層の「MR110」/「UR8200」(重量比)を50/50から65/35に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は75℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0174】
(比較例6)
実施例1において、非磁性層の樹脂を「TB−0242」(EBCU(P))のみとし、「TB−0246」(EBCVC(S))を添加せず、かつ、磁性層の「MR110」/「UR8200」(重量比)を50/50から65/35に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は75℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は20℃であった。
【0175】
(比較例7)
実施例1において、非磁性層の樹脂を「TB−0246」(EBCVC(S))のみとし、「TB−0242」(EBCU(P))を添加せず、かつ、磁性層のポリエステルポリウレタン「UR8200」を分子量2.3万のアジピン酸系ポリエステルポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリウレタン樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は50℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は70℃であった。
【0176】
(実施例4)
実施例1において、基本骨格として「UR8200」と同一のポリエステルポリウレタンで、アクリル含有量8モル/1モル、P含有量0.2wt%のウレタンEBCU(P)IIを用いて、非磁性層のEBCVC(S)/EBCU(P)/EBCU(P)II(重量比)を20/60/20とした以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は38℃であった。
【0177】
(実施例5)実施例1において、非磁性層の顔料を下記に示すα−酸化鉄とカーボンの混合系に変え、また、磁性層の磁性粉末1を下記に示す磁性粉末2に変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
(非磁性層の顔料)
顔料 α−酸化鉄 戸田工業 DPN250BX 80.0重量部
針状α酸化鉄
Al/Si: 0.16/0.28wt%
BET値 : 53m2/g
pH : 6
可溶性Na量: 30〜100ppm
可溶性Ca量: 2〜10ppm
嵩密度 : 0.7g/ml
長軸長 : 0.15μm
短軸長 : 0.03μm
カーボン コロンビアンカーボン R760 20.0重量部
ファーネスカーボン
一次粒径 : 30nm
BET値 : 70m2/g
給油量 : 48ml/g
(磁性層の磁性粉末)
磁性粉末2 KDK #1171
Co/Al/Si/Sm: 30wt%/2.3wt%/2.0wt%/3.6at%
(Fe 100%に対して)
Hc:2267Oe
δs:148emu/g
BET値:54m2/g
長軸長:0.10μm
結晶子サイズ:171オングストローム
【0178】
(実施例6)
実施例5において、非磁性層塗布後、カレンダー加工なしで電子線照射を行った後、磁性層を塗布した以外は、実施例5と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0179】
(比較例8)
実施例5において、非磁性層のEBCU(P)のリン含有極性基をSO3Na基(これをEBCU(S)と記す)0.2wt%に変更した以外は、実施例5と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0180】
(比較例9)
実施例5において、非磁性層の樹脂EBCVC(S)を熱硬化(TS)塩化ビニル共重合体TSVC(S)に、EBCU(P)を熱硬化(TS)ポリウレタン樹脂TSU(P)に、それぞれ変更した。ここでTSVC(S)としてEBCVC(S)の電子線変性前の日本ゼオン社製「MR110」を使用した。また、TSU(P)として分子量2.3万のアジピン酸系ポリエステルポリオールとジフェニルメタンイソシアネートからなるウレタン樹脂であって、リン酸基含有量は0.2wt%のものを用いた。さらに架橋剤として日本ポリウレタン(株)製の「C−3041」を使用した。
【0181】
非磁性層塗布、カレンダー加工後、60℃で48時間熱硬化を行った。
【0182】
その後は実施例5と同様にして、磁性層、バックコート層を形成し(ただし、磁性層側の再電子線照射は行わなかった)、得られたテープ原反からDVC用テープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃であった。
【0183】
なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、加熱硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は50℃であった。
【0184】
(比較例10)
比較例9と同じ非磁性層用塗料および磁性層用塗料を用いた。まず、非磁性層をリバースコーターで加工後の厚みが1.4μmになるように塗布を行い、下層が湿潤状態のうちにノズルで磁性層を加工後厚みが0.13μmになるように塗布し配向(ウェット・オン・ウェット法)、乾燥、カレンダー加工を行った。その後は実施例5と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、加熱硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は50℃であった。
【0185】
(実施例7)
実施例5において、非磁性支持体をQ11から同じ厚さの帝人製PENベースQ16(Ra7nm、Rz100nm、ヤング率600/1200kg/mm2)に変更した以外は、実施例5と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0186】
(実施例8)
実施例5において、非磁性支持体を同じ厚さの帝人製デュアルタイプのPENベースTQV18(Ra3nm、Rz30nm、ヤング率600/900kg/mm2)に変更した以外は、実施例5と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0187】
(実施例9)
実施例5において、非磁性支持体を同じ厚さの帝人製デュアルタイプのPENベースTQV18(Ra3nm、Rz30nm、ヤング率600/900kg/mm2)に変更し、かつ、非磁性層塗布後カレンダー加工をせずに電子線照射を行った以外は、実施例5と同様にしてテープを作製した。なお、加熱硬化後の上層のガラス転移温度(Tg)は70℃、電子線硬化前の下層のガラス転移温度(Tg)は45℃であった。
【0188】
結果を表1〜5に示す。なお、表1〜5中、下層(非磁性層)組成において「α」とあるのは「α−酸化鉄」を意味する。また、重層塗布法において「W/D」は下層を塗布後、乾燥した後上層を塗布するウェット・オン・ドライ法を、「W/W」とあるのはウェット・オン・ウェット法を意味する。
【0189】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0190】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、デジタル媒体に必要な高域での高いC/Nをもち、どんな環境でも目詰まりせず、ドロップアウト(DO)も少なく、生産性に優れた磁気記録媒体が得られる。特に、本発明での非磁性層樹脂の極性基の組み合わせは、顔料としてカーボンを混入したときにも高分散性を保ち、電磁特性が高く、DOが少ない媒体を提供することができる。
【0191】
さらに、このような樹脂の組み合わせで作られた非磁性層は加工性に優れ、平滑な表面が得られるため、Raが7nm、RZが100nm以上の表面性が悪い単層ベースにおいても高い電磁特性を維持することができ、ベースの走行性に伴う歩留まり低下を抑え、コストが低く、生産性が高い媒体を作製することができる。
Claims (3)
- 非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、電子線硬化性樹脂を含む非磁性層と、該非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、
前記磁性層のガラス転移温度(Tg)が65℃以上であり、
前記非磁性層は、電子線硬化性樹脂を含む非磁性層用塗料を非磁性支持体上に塗布して形成した塗膜を電子線硬化してなるものであって、電子線硬化前の塗膜のガラス転移温度(Tg)が30℃〜53℃であり、かつ、該電子線硬化性樹脂が、イオウ含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂と、リン含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂とを、69:31〜10:90(重量比)の割合で含有することを特徴とする磁気記録媒体。 - (I)非磁性支持体の少なくとも一方の面上に電子線硬化性樹脂を含む非磁性層用塗料を塗布して塗膜を形成する工程、
(II)上記塗膜を電子線硬化させて非磁性層を形成する工程、
(III)上記非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層用塗料を塗布し、磁性層を形成する工程、
を含む、請求項1の磁気記録媒体を製造する方法。 - 上記(II)工程において、電子線硬化前にカレンダー加工処理を行う、請求項2記載の製造方法。
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