JP3655060B2 - 誘導電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は工作機械の主軸駆動などに利用され、誘導電動機の出力トルクを任意に制御する誘導電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工作機械の主軸駆動などの用途には、すべり周波数型ベクトル制御によって駆動される誘導電動機が多く用いられている。このすべり周波数型ベクトル制御において、出力トルクを任意に制御するためには、誘導電動機の二次抵抗r2、励磁インダクタンスMおよびトルク電流i1qに応じて正確なすべり周波数を誘導電動機に与える必要がある。しかしながら、二次抵抗r2は、誘導電動機の温度変化等によって2倍程度に大きく変動するにも拘わらず、制御装置内においては、二次抵抗r2の値は変動が考慮されていない。その結果、誘導電動機に与えられるすべり周波数が不正確となり、出力トルクを正確に制御することができない。この問題を解決するべく、本出願人等は既に特願平7−92165号において、誘導電動機の励磁インダクタンスMおよび二次抵抗r2の値が正確に把握できない場合や、これらの値が変動する場合においても常に出力トルクを精度良く制御できる誘導電動機の制御装置を提案している。
【0003】
図3に特願平7−92165号による誘導電動機の制御装置のシステム構成の一例を示す。この制御装置に対して外部からの入力指令として、トルク指令T*および磁束密度指令φ*が入力される。変換器1は、磁束密度指令φ*に応じて必要な励磁電流指令値i1d*を算出発生する励磁電流指令発生器(手段)であり、磁束密度と励磁電流の関係は後述するように励磁インダクタンスMを意味している。この変換器1では、Mの逆数を乗算することによって励磁電流指令値i1d*が出力される。除算器2はトルク電流指令発生手段を構成し、入力されたトルク指令T*を入力された磁束密度指令φ*で除算する。誘導電動機の出力トルクは磁束密度とトルク電流値との積に比例することから、除算器2の出力がトルク電流指令値i1q*として出力される。
【0004】
この特願平7−92165号による誘導電動機の制御装置の動作を図4の誘導電動機の等価回路をもとに説明する。誘導電動機の一次電流I1,励磁電流Io,一次電圧E1は磁束の回転角周波数ωに同期して回転するdq軸座標上の一次電流i1d,i1q,励磁電流iod,ioq、一次電圧e1d,e1qを用いて次のように表される。
【0005】
【数1】
I1=i1d・sinωt+i1q・cosωt ・・・(1)
【数2】
Io=iod・sinωt+ioq・cosωt ・・・(2)
【数3】
E1=e1d・sinωt+e1q・cosωt ・・・(3)
このとき誘導電動機の一次回路について電圧方程式は次のように表される。
【0006】
【数4】
【数5】
ここでpは微分演算子d/dt、r1は一次巻線抵抗、Lσは漏れインダクタンス、Mは励磁インダクタンスである。
【0007】
次に二次回路についても同様に電圧方程式は次のように表される。
【0008】
【数6】
−r2・i1d+(r2+pM)iod−ωs・M・ioq=0 ・・・(6)
【数7】
−r2・i1q+ωs・M・iod+(r2+pM)ioq=0 ・・・(7)
ここでr2は二次抵抗、ωsはすべり角周波数である。このωsは誘導電動機の回転角周波数ωmを用いて次のように表される。
【0009】
【数8】
ωs=ω−ωm ・・・(8)
磁束方向がd軸に一致していると仮定すると、誘導電動機内部の励磁電流ioは次のように表される。
【0010】
【数9】
io=φ/M=iod,ioq=0 ・・・(9)
(9)式と(6)式よりioとi1dとの関係を求めると次式を得る。
【0011】
【数10】
io/i1d=1/(1+pM/r2) ・・・(10)
すなわち、励磁電流ioはi1dに対して一次遅れで応答し、その時定数はM/r2である。この時定数は一般的な誘導電動機において数100msであり、ioの変化は十分に緩慢であると近似できる。
【0012】
一方、(9)式と(7)式より、次式を得る。
【0013】
【数11】
ωs=r2・i1q/(M・io) ・・・(11)
これがいわゆるベクトル制御条件と呼ばれるもので、この式を満たすすべり角周波数ωsを誘導電動機に与えるとき、磁束方向がd軸に一致する。このときi1qが磁束に直交することから誘導電動機の発生トルクTは、以下のようになる。
【0014】
【数12】
T=φ・i1q=M・io・i1q ・・・(12)
従って、i1qを制御することによって任意にトルクを制御することができる。
【0015】
前記のようにioの変化は十分に緩慢であると近似するとき、(4),(5)式は次のように書き直すことができる。
【0016】
【数13】
e1d=(r1+pLσ)i1d−ωLσ・i1q ・・・(13)
【数14】
e1q=ωLσ・i1d+(r1+pLσ)i1q+ωM・io ・・・(14)
これらの式より、i1d,i1qを任意に制御しようとするとき、誘導電動機に印加する電圧(励磁電流同相電圧指令及びトルク電流同相電圧指令)をそれぞれ次のように制御すればよい。
【0017】
【数15】
e1d*=Gd・Δi1d−ωLσ・i1q* ・・・(15)
【数16】
e1q*=ωLσ・i1d*+Gq・Δi1q+ωMc・io* ・・・(16)
ここで添え字*は指令値であることを意味しており、またΔi1d,Δi1qは次式で表される電流誤差である。
【0018】
【数17】
Δi1d=i1d*−i1d,Δi1q=i1q*−i1q ・・・(17)
Mcはコントローラ内で想定した励磁インダクタンスであり、実際の励磁インダクタンスMとは異なるものである。また、Gd,Gqは十分に大きなゲインであり、pi演算増幅器などを用いて実現する。この(15),(16)式は図3のdq軸電圧指令算出部4で演算されd軸電圧指令算出手段及びq軸電圧指令算出手段が構成されており、その内部ブロック図は図5に表される。また、(11)式を満たすようにすべり角周波数算出手段を構成する除算器7、乗算器8によってすべり角周波数ωsが出力される。
【0019】
(12)式で表される出力トルクTを正確に制御しようとするとき、実際の励磁インダクタンスMがコントローラ内のMcと等しいこと、および(11)式のベクトル制御条件が成立し、磁束位置がd軸に一致していることが必要である。しかしながら先に述べたように、励磁インダクタンスおよび(11)式中の二次抵抗r2を正確に把握することは困難であり、その結果、出力トルク精度が悪化する。そこで特願平7−92165号においては、まず励磁インダクタンスについて次式に基づいて同定を行なっている。
【0020】
【数18】
Gq・Δi1q=ω(M−Mc)io= ω・ΔM・io ・・・(18)
ここでΔMはコントローラ側で想定した励磁インダクタンスMcと実際の電動機内部の真値Mとの間の設定誤差である。なお、(18)式は次のように導出されている。誘導電動機が無負荷でi1q=i1q*=0であるとすると、(14),(16)式は次のように変形できる。
【0021】
【数19】
e1q=ωLσ・i1d+ωM・io ・・・(19)
【数20】
e1q*=ωLσ・i1d*+Gq・Δi1q+ωMc・io* ・・・(20)
電流制御系の働きにより、i1d*=i1d,io*=io,e1q=e1q*として(19),(20)式の差より、(18)式が導出される。上記のように、i1q=i1q*=0の状態において励磁インダクタンスの同定がおこなわれる。すなわち、i1q=i1q*=0の状態のとき図3のコンパレータ22によってトルク指令T*が小さいことが検出され、無負荷状態の時のみ、スイッチ23が閉となり、増幅器21によってGq・Δi1qが増幅されて同定が行なわれる。この増幅器21の出力は、磁束密度指令φ*の値をアドレスとするデータテーブル24に各磁束密度ごとに積分して保持される。この積分値は励磁インダクタンスMの設定誤差ΔMであり励磁インダクタンス補正値を示し、トルク指令が0でない場合においても、磁束密度指令φ*に応じて保持されている設定誤差ΔMを取り出して、変換器1の係数1/Mを補償しているので、常に補正された励磁インダクタンスMの真値を用いて制御すること可能である。
【0022】
次に二次抵抗r2については次式に基づいて同定が行なわれる。
【0023】
【数21】
Gq・Δi1q=Δr2(ω/ωs)i1q ・・・(21)
ここでΔr2はコントローラ側で想定した値r2cと実際の値r2との間の設定誤差である。この(21)式は以下のように導出される。まず(11)式を変形して(22)式を得る。
【0024】
【数22】
ωM・io=(ω/ωs)r2・i1q ・・・(22)
この(22)式を(14)式に代入することによって、実際に誘導電動機に発生するq軸電圧は次のように表すことができる。
【0025】
【数23】
e1q=ωLσ・i1d+(r1+pLσ)i1q+(ω/ωs)r2・i1q・・・(23)
一方、コントローラの出力する電圧e1q*は、(22),(16)式から次のように表すことができる。
【0026】
【数24】
e1q*=Gq・Δi1q+ωLσ・i1d*+(ω/ωs)r2c・i1q*・・・(24)
電流制御系の働きにより、i1d*=i1d,i1q*=i1q,e1q=e1q*として(23),(24)式の差を求めると、次式を得る。
【0027】
【数25】
第1項は他の項に比べて比較的小さいので無視すると(21)式が、導き出される。
【0028】
すなわち(21)式よりGq・Δi1qは二次抵抗r2の設定誤差Δr2を表しており、この誤差はGq・Δi1qを用いて補正することが可能である。図3において、Gq・Δi1qをΔeqと表しており、dq軸電圧指令算出部4の出力ΔeqすなわちGq・Δi1qに増幅器25で同定ゲインGrを乗算し、その出力に応じて二次抵抗補正手段34内の前記二次抵抗r2c(33)を補償している。
【0029】
以上のように、特願平7−92165号の発明では、制御に用いられるパラメータの励磁インダクタンスM、二次抵抗r2について、実際の誘導電動機における真値を同定し、自動的に制御パラメータを適性に追従させているので、鉄心の磁気飽和の影響や誘導電動機の製造上の寸法精度などによる励磁インダクタンスMの変動および誘導電動機の温度変化等による二次抵抗r2の変動の影響を受けず、精度良く所望の出力トルクを得ることができる。
【0030】
特願平7−92165号の発明における他の構成要素の動作を以下に簡単に説明する。dq軸電圧指令算出部4は(15),(16)式の演算を行なっており、その内部構成を図5に示す。図中の減算器11が励磁電流指令値i1d*から励磁電流検出値i1dを減算して励磁電流誤差Δi1dが出力され、増幅器12はΔi1dを増幅してGd・Δi1dが出力される。変換器13、乗算器14ではトルク電流指令値i1q*と回転周波数ω、漏れインダクタンスLσから(15)式の第2項が算出され、これがGd・Δi1dと加算されて、d軸電圧指令e1d*が出力される。同様に減算器15はトルク電流指令値i1q*からトルク電流検出値i1qを減算して、トルク電流誤差Δi1qが求められ、これが増幅器16で増幅されて(16)式の第2項Gq・Δi1qが得られている。変換器18は励磁電流指令i1d*に漏れインダクタンスLσを乗算し、さらに乗算器19で回転角周波数ωが乗算されることによって(16)式の第1項ωLσ・i1d*が得られている。(16)式の第3項ωMc・io*は、図5の図中においてはem*=Mc・io*と置き換えて乗算器19によって出力されており、前記の第1項、第2項と加算されて、トルク電流同相電圧指令e1q*が出力される。なお、図5において一次抵抗r1は符号20で示されており、em*は図3の変換器17によって磁束密度指令φ*に誘起電圧係数Kemを掛けることによって求められている。dq軸電圧指令算出部4の出力した励磁電流同相電圧指令e1d*,トルク電流同相電圧指令e1q*は、三相電圧指令発生手段を構成する図3の二相三相変換器3によって三相の交流電圧指令eu*,ev*,ew*に変換され、インバータ26に入力される。インバータ26は直流電源27をエネルギー源として、この三相の交流電圧指令eu*,ev*,ew*に応じた電圧を誘導電動機28に印加することによって三相交流電流iu,iv,iwが流れる。この三相交流電流iu,iv,iwは電流検出器6a,6b,6cによって検出され、三相二相変換器9によって励磁電流検出値i1dおよびトルク電流検出値i1qに変換される。なお、二相三相変換器3と三相二相変換器9とが座標変換に使用する信号sinωt,cosωtは、角周波数指令ωを基に二相正弦波発生器10によって出力される。この角周波数指令ωは、位置検出器29によって検出された誘導電動機28の回転位置を微分器30で微分することによって得た回転速度ωmに、すべり角周波数ωsを加算する角周波数指令算出手段によって得られている。
【0031】
工作機械の主軸等に使用する誘導電動機は、マグネットスイッチ等によりΔ結線およびY結線に切り替え可能な巻線切替用誘導電動機がしばしば使用される。前記Δ結線およびY結線は、巻線切替指令により結線を切替える。前記巻線切替用誘導電動機のΔ結線およびY結線では前記巻線切替指令が入力されると前記励磁インダクタンスM及び前記2次抵抗r2、前記漏れインダクタンス等の電気的定数(以降パラメータと記す)が異なるため、あらかじめメモリーに設定してある前記Δ結線および前記Y結線のパラメータのノミナル値を前記メモリーより取り出し制御用パラメータとして使用している。図6に従来のパラメータの切替えシーケンスのフローを示す。ステップ(S1)で前記巻線切替指令が入力されたかどうか判断し、入力されない場合、ステップ(S3)に進み制御用パラメータの変更をしない。ステップ(S1)で巻線切替指令が入力された場合、ステップ(S2)に進みΔ結線指令であるか判断する。ステップ(S2)でΔ結線指令の場合、ステップ(S6)に進みΔ結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Δ結線用パラメータに変更する。ステップ(S2)でY結線指令の場合、ステップ7(S7)に進みY結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Y結線用パラメータに変更する。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸等に巻線切替用誘導電動機を使用する場合、頻繁に巻き線を切替え使用する。前記巻線切替用誘導電動機のΔ結線およびY結線では前記励磁インダクタンスM及び前記2次抵抗r2等の電気的定数が異なる。そのため従来の技術では、巻線切替を行う度に前記励磁インダクタンスMおよび二次抵抗のr2等の電気的定数の初期値を前記メモリーに設定してあるノミナル値に切り替え、図3の様に励磁インダクタンスMと二次抵抗のr2(以降同定パラメータと記す)を同定していた。しかし従来の技術では、同定パラメータを同定するのに数100msecかかるため、工作機械の主軸等巻線切替を頻繁に行う用途においては、巻線切替後同定パラメータの同定が完了するまでの数100msecの間出力特性が悪化した。
【0033】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明にかかる誘導電動機の制御装置は、直流電流から変換された三相交流電流によって駆動される誘導電動機の制御装置であって、トルク指令と磁束密度指令の二相指令を前記誘導電動機の1次電流を制御するための三相電圧指令に変換し、前記誘導電動機の三相の1次電流検出値をトルク電流検出値と励磁電流検出値の二相の検出値に変換し、フィードバック制御を行う巻線切替可能な誘導電動機の制御装置において、前記磁束密度指令と、励磁インダクタンス補正値によって補正され同定された補正励磁インダクタンスとに基づき励磁電流指令値を算出する励磁電流指令発生手段と、前記励磁電流指令と前記励磁電流検出値に基づき励磁電流誤差を算出し、該励磁電流誤差に基づき、励磁電流と同相の励磁電流同相電圧指令を算出するd軸電圧指令算出手段と、前記トルク指令と前記磁束密度指令に基づきトルク電流指令を算出するトルク電流指令発生手段と、前記トルク電流指令と前記トルク電流検出値に基づきトルク電流誤差を算出し、該トルク電流誤差に基づき、トルク電流と同相のトルク電流同相電圧指令を算出するq軸電圧指令算出手段と、二次抵抗補正値によって補正され同定された補正二次抵抗値と前記トルク電流指令および前記磁束密度指令とに基づきすべり角周波数を算出するすべり角周波数算出手段と、前記すべり角周波数と実際の誘導電動機の回転角周波数に基づき角周波数指令を算出する角周波数指令算出手段と、前記励磁電流同相電圧指令および前記トルク電流同相電圧指令と、前記角周波数指令とに基づき誘導電動機に印加する三相電圧指令を算出する三相電圧指令発生手段と、Y結線用の前記補正励磁インダクタンス及び前記補正二次抵抗値を保持するY結線用データ保持部と、Δ結線用の前記補正励磁インダクタンス及び前記補正二次抵抗値を保持するΔ結線用データ保持部と、を備える補正値保持手段と、結線方法を切り替えるための巻線切替指令に基づき前記保持手段によって保持された前記補正励磁インダクタンスと、前記補正二次抵抗値を切り替える補正値切替手段であって、Y結線をΔ結線に切り替える巻線切替指令が入力されると、使用しているY結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値を前記Y結線用データ保持部に書き込み、前記Δ結線用データ保持部に書き込まれたΔ結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値をリードし、また、Δ結線をY結線に切り替える巻線切替指令が入力されると、使用しているΔ結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値を前記Δ結線用データ保持部に書き込み、前記Y結線用データ保持部に書き込まれたY結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値をリードする補正値切替手段と、を有することを特徴とする。
【0034】
本発明による誘導電動機の制御装置によれば、誘導電動機の三相の1次電流検出値をトルク電流検出値と励磁電流検出値の二相の検出値に変換する三相二相変換手段によって、電動機電流の3つの瞬時値(例えばiu、iv、iw)から誘導電動機内部の励磁電流(例えばi1d)およびトルク電流(例えばi1q)を直流量として検出し、これらを磁束密度指令から変換した励磁電流指令(例えばi1d*)およびトルク指令を変換したトルク電流指令(例えばi1q*)のそれぞれに対して独立にフィードバック制御を行い、更に、トルク指令が小さな無負荷状態においては、磁束密度指令に対する励磁インダクタンス(M)をトルク電流の誤差アンプ出力(Gq・Δi1q)を用いて同定する。二次抵抗r2についてもトルク電流の誤差アンプ出力(Gq・Δi1q)を用いて同定する。さらに前記巻線切替用誘導電動機を制御する場合は、前記巻線指令に基づき保持してある補正二次抵抗値と補正励磁インダクタンスの同定値を切替えるため、結線が切替わった直後も同定した値を使用することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る誘導電動機の制御装置の一実施形態のブロック図である。図3に示す従来の誘導電動機の制御装置と同じ構成要素は同一符号で示してあり、その説明は重複するので省略する。
【0036】
図1中の31は、補正値保持器であり、Δ結線用データ保持部とY結線用データ保持部から成る。制御中の結線がΔ結線の場合でY結線の巻線指令が入力された場合、制御中に同定した補正励磁インダクタンスおよび補正二次抵抗値(以降同定パラメータと記す)をΔ結線用データ保持部に同定パラメータを保存する。(図中の太線の矢印は複数のデータであることを示す。)補正値切替器32は、Y結線用の同定パラメータを前記Y結線データ保持部より取り出す。次に、前記Y結線データ保持部より取り出した補正二次抵抗値をコントローラ内で想定した二次抵抗値33と置き換える。さらに前記Y結線データ保持部より取り出した前記補正励磁インダクタンスを前記磁束密度指令φ*の値をアドレスとするデータテーブル24の初期データとして書き換える。同様に制御中の結線がY結線の場合にΔ結線の巻線切替指令が入力されると、同定パラメータをY結線用データ保持部に同定パラメータを保存し、補正値切替器32が、Δ結線用の同定パラメータを前記Δ結線データ保持部より取り出す。前記Δ結線データ保持部より取り出した補正二次抵抗値をコントローラ内で想定した二次抵抗値33と置き換え、前記Y結線データ保持部より取り出した前記補正励磁インダクタンスを前記磁束密度指令φ*の値をアドレスとするデータテーブル24の初期データとして書き換える。
【0037】
図2に本発明に係わるシーケンスのフローを示す。ステップ(S1)で前記巻線切替指令が入力されたかどうか判断し、入力されない場合ステップ(S3)に進み制御用パラメータの変更をしない。ステップ(S1)で巻線切替指令が入力された場合ステップ(2)に進みΔ結線指令であるか判断する。ステップ(S2)でΔ結線指令の場合、ステップ(S4)に進みY結線用同定パラメータを前記Y結線用データ保持部に書き込む。次にステップ(S6)に進みΔ結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Δ結線用パラメータに変更する。次にステップ(S8)に進み前記Δ結線用データ保持部より前記同定パラメータをリードし制御用パラメータを変更する。ステップ(S2)でY結線指令の場合、ステップ(S5)に進みΔ結線用同定パラメータを前記Δ結線用データ保持部に書き込む。次にステップ(S7)に進みY結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Y結線用パラメータに変更する。次にステップ(S9)に進み前記Y結線用データ保持部より前記同定パラメータをリードし制御用パラメータを変更する。
【0038】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明において誘導電動機内部の励磁電流およびトルク電流は、それぞれ独立にフィードバック制御されており、その制御に用いられるパラメータの励磁インダクタンスM、二次抵抗r2は正確な値を制御に用いることができる。特に巻線切替用誘導電動機において、結線を切替えた直後でも正確な補正二次抵抗値および補正励磁インダクタンスを用いることができる。
【0039】
その結果、結線が切替わった直後でも、常に精度良く所望の出力トルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による誘導電動機の制御装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】 本発明による誘導電動機の制御装置の電気的定数入れ替えシーケンスのフローチャートである。
【図3】 従来の誘導電動機の制御装置のブロック図である。
【図4】 誘導電動機の等価回路図である。
【図5】 dq軸電圧指令算出部の内部ブロック図である。
【図6】 従来の誘導電動機の制御装置の電気的定数入れ替えシーケンスのフローチャートである。
【符号の説明】
1、13、17、18、20 変換器、2,7 除算器、3 二相三相変換器、4 dq軸電圧指令算出部、6 電流検出器、8,14,19乗算器、9 三相二相変換器、10 二相正弦波発生器、11,15 減算器、12,16,21,25 増幅器、22 コンパレータ、23 スイッチ、24 データテーブル、26 インバータ、27 直流電源、28 誘導電動機、29 位置検出器、30 微分器、31 補正値保持器、32 補正値切替器、33 コントローラ内で想定した二次抵抗値、34 二次抵抗補正手段。
【発明の属する技術分野】
本発明は工作機械の主軸駆動などに利用され、誘導電動機の出力トルクを任意に制御する誘導電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工作機械の主軸駆動などの用途には、すべり周波数型ベクトル制御によって駆動される誘導電動機が多く用いられている。このすべり周波数型ベクトル制御において、出力トルクを任意に制御するためには、誘導電動機の二次抵抗r2、励磁インダクタンスMおよびトルク電流i1qに応じて正確なすべり周波数を誘導電動機に与える必要がある。しかしながら、二次抵抗r2は、誘導電動機の温度変化等によって2倍程度に大きく変動するにも拘わらず、制御装置内においては、二次抵抗r2の値は変動が考慮されていない。その結果、誘導電動機に与えられるすべり周波数が不正確となり、出力トルクを正確に制御することができない。この問題を解決するべく、本出願人等は既に特願平7−92165号において、誘導電動機の励磁インダクタンスMおよび二次抵抗r2の値が正確に把握できない場合や、これらの値が変動する場合においても常に出力トルクを精度良く制御できる誘導電動機の制御装置を提案している。
【0003】
図3に特願平7−92165号による誘導電動機の制御装置のシステム構成の一例を示す。この制御装置に対して外部からの入力指令として、トルク指令T*および磁束密度指令φ*が入力される。変換器1は、磁束密度指令φ*に応じて必要な励磁電流指令値i1d*を算出発生する励磁電流指令発生器(手段)であり、磁束密度と励磁電流の関係は後述するように励磁インダクタンスMを意味している。この変換器1では、Mの逆数を乗算することによって励磁電流指令値i1d*が出力される。除算器2はトルク電流指令発生手段を構成し、入力されたトルク指令T*を入力された磁束密度指令φ*で除算する。誘導電動機の出力トルクは磁束密度とトルク電流値との積に比例することから、除算器2の出力がトルク電流指令値i1q*として出力される。
【0004】
この特願平7−92165号による誘導電動機の制御装置の動作を図4の誘導電動機の等価回路をもとに説明する。誘導電動機の一次電流I1,励磁電流Io,一次電圧E1は磁束の回転角周波数ωに同期して回転するdq軸座標上の一次電流i1d,i1q,励磁電流iod,ioq、一次電圧e1d,e1qを用いて次のように表される。
【0005】
【数1】
I1=i1d・sinωt+i1q・cosωt ・・・(1)
【数2】
Io=iod・sinωt+ioq・cosωt ・・・(2)
【数3】
E1=e1d・sinωt+e1q・cosωt ・・・(3)
このとき誘導電動機の一次回路について電圧方程式は次のように表される。
【0006】
【数4】
【数5】
ここでpは微分演算子d/dt、r1は一次巻線抵抗、Lσは漏れインダクタンス、Mは励磁インダクタンスである。
【0007】
次に二次回路についても同様に電圧方程式は次のように表される。
【0008】
【数6】
−r2・i1d+(r2+pM)iod−ωs・M・ioq=0 ・・・(6)
【数7】
−r2・i1q+ωs・M・iod+(r2+pM)ioq=0 ・・・(7)
ここでr2は二次抵抗、ωsはすべり角周波数である。このωsは誘導電動機の回転角周波数ωmを用いて次のように表される。
【0009】
【数8】
ωs=ω−ωm ・・・(8)
磁束方向がd軸に一致していると仮定すると、誘導電動機内部の励磁電流ioは次のように表される。
【0010】
【数9】
io=φ/M=iod,ioq=0 ・・・(9)
(9)式と(6)式よりioとi1dとの関係を求めると次式を得る。
【0011】
【数10】
io/i1d=1/(1+pM/r2) ・・・(10)
すなわち、励磁電流ioはi1dに対して一次遅れで応答し、その時定数はM/r2である。この時定数は一般的な誘導電動機において数100msであり、ioの変化は十分に緩慢であると近似できる。
【0012】
一方、(9)式と(7)式より、次式を得る。
【0013】
【数11】
ωs=r2・i1q/(M・io) ・・・(11)
これがいわゆるベクトル制御条件と呼ばれるもので、この式を満たすすべり角周波数ωsを誘導電動機に与えるとき、磁束方向がd軸に一致する。このときi1qが磁束に直交することから誘導電動機の発生トルクTは、以下のようになる。
【0014】
【数12】
T=φ・i1q=M・io・i1q ・・・(12)
従って、i1qを制御することによって任意にトルクを制御することができる。
【0015】
前記のようにioの変化は十分に緩慢であると近似するとき、(4),(5)式は次のように書き直すことができる。
【0016】
【数13】
e1d=(r1+pLσ)i1d−ωLσ・i1q ・・・(13)
【数14】
e1q=ωLσ・i1d+(r1+pLσ)i1q+ωM・io ・・・(14)
これらの式より、i1d,i1qを任意に制御しようとするとき、誘導電動機に印加する電圧(励磁電流同相電圧指令及びトルク電流同相電圧指令)をそれぞれ次のように制御すればよい。
【0017】
【数15】
e1d*=Gd・Δi1d−ωLσ・i1q* ・・・(15)
【数16】
e1q*=ωLσ・i1d*+Gq・Δi1q+ωMc・io* ・・・(16)
ここで添え字*は指令値であることを意味しており、またΔi1d,Δi1qは次式で表される電流誤差である。
【0018】
【数17】
Δi1d=i1d*−i1d,Δi1q=i1q*−i1q ・・・(17)
Mcはコントローラ内で想定した励磁インダクタンスであり、実際の励磁インダクタンスMとは異なるものである。また、Gd,Gqは十分に大きなゲインであり、pi演算増幅器などを用いて実現する。この(15),(16)式は図3のdq軸電圧指令算出部4で演算されd軸電圧指令算出手段及びq軸電圧指令算出手段が構成されており、その内部ブロック図は図5に表される。また、(11)式を満たすようにすべり角周波数算出手段を構成する除算器7、乗算器8によってすべり角周波数ωsが出力される。
【0019】
(12)式で表される出力トルクTを正確に制御しようとするとき、実際の励磁インダクタンスMがコントローラ内のMcと等しいこと、および(11)式のベクトル制御条件が成立し、磁束位置がd軸に一致していることが必要である。しかしながら先に述べたように、励磁インダクタンスおよび(11)式中の二次抵抗r2を正確に把握することは困難であり、その結果、出力トルク精度が悪化する。そこで特願平7−92165号においては、まず励磁インダクタンスについて次式に基づいて同定を行なっている。
【0020】
【数18】
Gq・Δi1q=ω(M−Mc)io= ω・ΔM・io ・・・(18)
ここでΔMはコントローラ側で想定した励磁インダクタンスMcと実際の電動機内部の真値Mとの間の設定誤差である。なお、(18)式は次のように導出されている。誘導電動機が無負荷でi1q=i1q*=0であるとすると、(14),(16)式は次のように変形できる。
【0021】
【数19】
e1q=ωLσ・i1d+ωM・io ・・・(19)
【数20】
e1q*=ωLσ・i1d*+Gq・Δi1q+ωMc・io* ・・・(20)
電流制御系の働きにより、i1d*=i1d,io*=io,e1q=e1q*として(19),(20)式の差より、(18)式が導出される。上記のように、i1q=i1q*=0の状態において励磁インダクタンスの同定がおこなわれる。すなわち、i1q=i1q*=0の状態のとき図3のコンパレータ22によってトルク指令T*が小さいことが検出され、無負荷状態の時のみ、スイッチ23が閉となり、増幅器21によってGq・Δi1qが増幅されて同定が行なわれる。この増幅器21の出力は、磁束密度指令φ*の値をアドレスとするデータテーブル24に各磁束密度ごとに積分して保持される。この積分値は励磁インダクタンスMの設定誤差ΔMであり励磁インダクタンス補正値を示し、トルク指令が0でない場合においても、磁束密度指令φ*に応じて保持されている設定誤差ΔMを取り出して、変換器1の係数1/Mを補償しているので、常に補正された励磁インダクタンスMの真値を用いて制御すること可能である。
【0022】
次に二次抵抗r2については次式に基づいて同定が行なわれる。
【0023】
【数21】
Gq・Δi1q=Δr2(ω/ωs)i1q ・・・(21)
ここでΔr2はコントローラ側で想定した値r2cと実際の値r2との間の設定誤差である。この(21)式は以下のように導出される。まず(11)式を変形して(22)式を得る。
【0024】
【数22】
ωM・io=(ω/ωs)r2・i1q ・・・(22)
この(22)式を(14)式に代入することによって、実際に誘導電動機に発生するq軸電圧は次のように表すことができる。
【0025】
【数23】
e1q=ωLσ・i1d+(r1+pLσ)i1q+(ω/ωs)r2・i1q・・・(23)
一方、コントローラの出力する電圧e1q*は、(22),(16)式から次のように表すことができる。
【0026】
【数24】
e1q*=Gq・Δi1q+ωLσ・i1d*+(ω/ωs)r2c・i1q*・・・(24)
電流制御系の働きにより、i1d*=i1d,i1q*=i1q,e1q=e1q*として(23),(24)式の差を求めると、次式を得る。
【0027】
【数25】
第1項は他の項に比べて比較的小さいので無視すると(21)式が、導き出される。
【0028】
すなわち(21)式よりGq・Δi1qは二次抵抗r2の設定誤差Δr2を表しており、この誤差はGq・Δi1qを用いて補正することが可能である。図3において、Gq・Δi1qをΔeqと表しており、dq軸電圧指令算出部4の出力ΔeqすなわちGq・Δi1qに増幅器25で同定ゲインGrを乗算し、その出力に応じて二次抵抗補正手段34内の前記二次抵抗r2c(33)を補償している。
【0029】
以上のように、特願平7−92165号の発明では、制御に用いられるパラメータの励磁インダクタンスM、二次抵抗r2について、実際の誘導電動機における真値を同定し、自動的に制御パラメータを適性に追従させているので、鉄心の磁気飽和の影響や誘導電動機の製造上の寸法精度などによる励磁インダクタンスMの変動および誘導電動機の温度変化等による二次抵抗r2の変動の影響を受けず、精度良く所望の出力トルクを得ることができる。
【0030】
特願平7−92165号の発明における他の構成要素の動作を以下に簡単に説明する。dq軸電圧指令算出部4は(15),(16)式の演算を行なっており、その内部構成を図5に示す。図中の減算器11が励磁電流指令値i1d*から励磁電流検出値i1dを減算して励磁電流誤差Δi1dが出力され、増幅器12はΔi1dを増幅してGd・Δi1dが出力される。変換器13、乗算器14ではトルク電流指令値i1q*と回転周波数ω、漏れインダクタンスLσから(15)式の第2項が算出され、これがGd・Δi1dと加算されて、d軸電圧指令e1d*が出力される。同様に減算器15はトルク電流指令値i1q*からトルク電流検出値i1qを減算して、トルク電流誤差Δi1qが求められ、これが増幅器16で増幅されて(16)式の第2項Gq・Δi1qが得られている。変換器18は励磁電流指令i1d*に漏れインダクタンスLσを乗算し、さらに乗算器19で回転角周波数ωが乗算されることによって(16)式の第1項ωLσ・i1d*が得られている。(16)式の第3項ωMc・io*は、図5の図中においてはem*=Mc・io*と置き換えて乗算器19によって出力されており、前記の第1項、第2項と加算されて、トルク電流同相電圧指令e1q*が出力される。なお、図5において一次抵抗r1は符号20で示されており、em*は図3の変換器17によって磁束密度指令φ*に誘起電圧係数Kemを掛けることによって求められている。dq軸電圧指令算出部4の出力した励磁電流同相電圧指令e1d*,トルク電流同相電圧指令e1q*は、三相電圧指令発生手段を構成する図3の二相三相変換器3によって三相の交流電圧指令eu*,ev*,ew*に変換され、インバータ26に入力される。インバータ26は直流電源27をエネルギー源として、この三相の交流電圧指令eu*,ev*,ew*に応じた電圧を誘導電動機28に印加することによって三相交流電流iu,iv,iwが流れる。この三相交流電流iu,iv,iwは電流検出器6a,6b,6cによって検出され、三相二相変換器9によって励磁電流検出値i1dおよびトルク電流検出値i1qに変換される。なお、二相三相変換器3と三相二相変換器9とが座標変換に使用する信号sinωt,cosωtは、角周波数指令ωを基に二相正弦波発生器10によって出力される。この角周波数指令ωは、位置検出器29によって検出された誘導電動機28の回転位置を微分器30で微分することによって得た回転速度ωmに、すべり角周波数ωsを加算する角周波数指令算出手段によって得られている。
【0031】
工作機械の主軸等に使用する誘導電動機は、マグネットスイッチ等によりΔ結線およびY結線に切り替え可能な巻線切替用誘導電動機がしばしば使用される。前記Δ結線およびY結線は、巻線切替指令により結線を切替える。前記巻線切替用誘導電動機のΔ結線およびY結線では前記巻線切替指令が入力されると前記励磁インダクタンスM及び前記2次抵抗r2、前記漏れインダクタンス等の電気的定数(以降パラメータと記す)が異なるため、あらかじめメモリーに設定してある前記Δ結線および前記Y結線のパラメータのノミナル値を前記メモリーより取り出し制御用パラメータとして使用している。図6に従来のパラメータの切替えシーケンスのフローを示す。ステップ(S1)で前記巻線切替指令が入力されたかどうか判断し、入力されない場合、ステップ(S3)に進み制御用パラメータの変更をしない。ステップ(S1)で巻線切替指令が入力された場合、ステップ(S2)に進みΔ結線指令であるか判断する。ステップ(S2)でΔ結線指令の場合、ステップ(S6)に進みΔ結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Δ結線用パラメータに変更する。ステップ(S2)でY結線指令の場合、ステップ7(S7)に進みY結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Y結線用パラメータに変更する。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
工作機械の主軸等に巻線切替用誘導電動機を使用する場合、頻繁に巻き線を切替え使用する。前記巻線切替用誘導電動機のΔ結線およびY結線では前記励磁インダクタンスM及び前記2次抵抗r2等の電気的定数が異なる。そのため従来の技術では、巻線切替を行う度に前記励磁インダクタンスMおよび二次抵抗のr2等の電気的定数の初期値を前記メモリーに設定してあるノミナル値に切り替え、図3の様に励磁インダクタンスMと二次抵抗のr2(以降同定パラメータと記す)を同定していた。しかし従来の技術では、同定パラメータを同定するのに数100msecかかるため、工作機械の主軸等巻線切替を頻繁に行う用途においては、巻線切替後同定パラメータの同定が完了するまでの数100msecの間出力特性が悪化した。
【0033】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明にかかる誘導電動機の制御装置は、直流電流から変換された三相交流電流によって駆動される誘導電動機の制御装置であって、トルク指令と磁束密度指令の二相指令を前記誘導電動機の1次電流を制御するための三相電圧指令に変換し、前記誘導電動機の三相の1次電流検出値をトルク電流検出値と励磁電流検出値の二相の検出値に変換し、フィードバック制御を行う巻線切替可能な誘導電動機の制御装置において、前記磁束密度指令と、励磁インダクタンス補正値によって補正され同定された補正励磁インダクタンスとに基づき励磁電流指令値を算出する励磁電流指令発生手段と、前記励磁電流指令と前記励磁電流検出値に基づき励磁電流誤差を算出し、該励磁電流誤差に基づき、励磁電流と同相の励磁電流同相電圧指令を算出するd軸電圧指令算出手段と、前記トルク指令と前記磁束密度指令に基づきトルク電流指令を算出するトルク電流指令発生手段と、前記トルク電流指令と前記トルク電流検出値に基づきトルク電流誤差を算出し、該トルク電流誤差に基づき、トルク電流と同相のトルク電流同相電圧指令を算出するq軸電圧指令算出手段と、二次抵抗補正値によって補正され同定された補正二次抵抗値と前記トルク電流指令および前記磁束密度指令とに基づきすべり角周波数を算出するすべり角周波数算出手段と、前記すべり角周波数と実際の誘導電動機の回転角周波数に基づき角周波数指令を算出する角周波数指令算出手段と、前記励磁電流同相電圧指令および前記トルク電流同相電圧指令と、前記角周波数指令とに基づき誘導電動機に印加する三相電圧指令を算出する三相電圧指令発生手段と、Y結線用の前記補正励磁インダクタンス及び前記補正二次抵抗値を保持するY結線用データ保持部と、Δ結線用の前記補正励磁インダクタンス及び前記補正二次抵抗値を保持するΔ結線用データ保持部と、を備える補正値保持手段と、結線方法を切り替えるための巻線切替指令に基づき前記保持手段によって保持された前記補正励磁インダクタンスと、前記補正二次抵抗値を切り替える補正値切替手段であって、Y結線をΔ結線に切り替える巻線切替指令が入力されると、使用しているY結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値を前記Y結線用データ保持部に書き込み、前記Δ結線用データ保持部に書き込まれたΔ結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値をリードし、また、Δ結線をY結線に切り替える巻線切替指令が入力されると、使用しているΔ結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値を前記Δ結線用データ保持部に書き込み、前記Y結線用データ保持部に書き込まれたY結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値をリードする補正値切替手段と、を有することを特徴とする。
【0034】
本発明による誘導電動機の制御装置によれば、誘導電動機の三相の1次電流検出値をトルク電流検出値と励磁電流検出値の二相の検出値に変換する三相二相変換手段によって、電動機電流の3つの瞬時値(例えばiu、iv、iw)から誘導電動機内部の励磁電流(例えばi1d)およびトルク電流(例えばi1q)を直流量として検出し、これらを磁束密度指令から変換した励磁電流指令(例えばi1d*)およびトルク指令を変換したトルク電流指令(例えばi1q*)のそれぞれに対して独立にフィードバック制御を行い、更に、トルク指令が小さな無負荷状態においては、磁束密度指令に対する励磁インダクタンス(M)をトルク電流の誤差アンプ出力(Gq・Δi1q)を用いて同定する。二次抵抗r2についてもトルク電流の誤差アンプ出力(Gq・Δi1q)を用いて同定する。さらに前記巻線切替用誘導電動機を制御する場合は、前記巻線指令に基づき保持してある補正二次抵抗値と補正励磁インダクタンスの同定値を切替えるため、結線が切替わった直後も同定した値を使用することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る誘導電動機の制御装置の一実施形態のブロック図である。図3に示す従来の誘導電動機の制御装置と同じ構成要素は同一符号で示してあり、その説明は重複するので省略する。
【0036】
図1中の31は、補正値保持器であり、Δ結線用データ保持部とY結線用データ保持部から成る。制御中の結線がΔ結線の場合でY結線の巻線指令が入力された場合、制御中に同定した補正励磁インダクタンスおよび補正二次抵抗値(以降同定パラメータと記す)をΔ結線用データ保持部に同定パラメータを保存する。(図中の太線の矢印は複数のデータであることを示す。)補正値切替器32は、Y結線用の同定パラメータを前記Y結線データ保持部より取り出す。次に、前記Y結線データ保持部より取り出した補正二次抵抗値をコントローラ内で想定した二次抵抗値33と置き換える。さらに前記Y結線データ保持部より取り出した前記補正励磁インダクタンスを前記磁束密度指令φ*の値をアドレスとするデータテーブル24の初期データとして書き換える。同様に制御中の結線がY結線の場合にΔ結線の巻線切替指令が入力されると、同定パラメータをY結線用データ保持部に同定パラメータを保存し、補正値切替器32が、Δ結線用の同定パラメータを前記Δ結線データ保持部より取り出す。前記Δ結線データ保持部より取り出した補正二次抵抗値をコントローラ内で想定した二次抵抗値33と置き換え、前記Y結線データ保持部より取り出した前記補正励磁インダクタンスを前記磁束密度指令φ*の値をアドレスとするデータテーブル24の初期データとして書き換える。
【0037】
図2に本発明に係わるシーケンスのフローを示す。ステップ(S1)で前記巻線切替指令が入力されたかどうか判断し、入力されない場合ステップ(S3)に進み制御用パラメータの変更をしない。ステップ(S1)で巻線切替指令が入力された場合ステップ(2)に進みΔ結線指令であるか判断する。ステップ(S2)でΔ結線指令の場合、ステップ(S4)に進みY結線用同定パラメータを前記Y結線用データ保持部に書き込む。次にステップ(S6)に進みΔ結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Δ結線用パラメータに変更する。次にステップ(S8)に進み前記Δ結線用データ保持部より前記同定パラメータをリードし制御用パラメータを変更する。ステップ(S2)でY結線指令の場合、ステップ(S5)に進みΔ結線用同定パラメータを前記Δ結線用データ保持部に書き込む。次にステップ(S7)に進みY結線用パラメータをメモリーよりリードし前記制御パラメータをリードした前記Y結線用パラメータに変更する。次にステップ(S9)に進み前記Y結線用データ保持部より前記同定パラメータをリードし制御用パラメータを変更する。
【0038】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明において誘導電動機内部の励磁電流およびトルク電流は、それぞれ独立にフィードバック制御されており、その制御に用いられるパラメータの励磁インダクタンスM、二次抵抗r2は正確な値を制御に用いることができる。特に巻線切替用誘導電動機において、結線を切替えた直後でも正確な補正二次抵抗値および補正励磁インダクタンスを用いることができる。
【0039】
その結果、結線が切替わった直後でも、常に精度良く所望の出力トルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による誘導電動機の制御装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】 本発明による誘導電動機の制御装置の電気的定数入れ替えシーケンスのフローチャートである。
【図3】 従来の誘導電動機の制御装置のブロック図である。
【図4】 誘導電動機の等価回路図である。
【図5】 dq軸電圧指令算出部の内部ブロック図である。
【図6】 従来の誘導電動機の制御装置の電気的定数入れ替えシーケンスのフローチャートである。
【符号の説明】
1、13、17、18、20 変換器、2,7 除算器、3 二相三相変換器、4 dq軸電圧指令算出部、6 電流検出器、8,14,19乗算器、9 三相二相変換器、10 二相正弦波発生器、11,15 減算器、12,16,21,25 増幅器、22 コンパレータ、23 スイッチ、24 データテーブル、26 インバータ、27 直流電源、28 誘導電動機、29 位置検出器、30 微分器、31 補正値保持器、32 補正値切替器、33 コントローラ内で想定した二次抵抗値、34 二次抵抗補正手段。
Claims (1)
- 直流電流から変換された三相交流電流によって駆動される誘導電動機の制御装置であって、トルク指令と磁束密度指令の二相指令を前記誘導電動機の1次電流を制御するための三相電圧指令に変換し、前記誘導電動機の三相の1次電流検出値をトルク電流検出値と励磁電流検出値の二相の検出値に変換し、フィードバック制御を行う巻線切替可能な誘導電動機の制御装置において、前記磁束密度指令と、励磁インダクタンス補正値によって補正され同定された補正励磁インダクタンスとに基づき励磁電流指令値を算出する励磁電流指令発生手段と、
前記励磁電流指令と前記励磁電流検出値に基づき励磁電流誤差を算出し、該励磁電流誤差に基づき、励磁電流と同相の励磁電流同相電圧指令を算出するd軸電圧指令算出手段と、
前記トルク指令と前記磁束密度指令に基づきトルク電流指令を算出するトルク電流指令発生手段と、
前記トルク電流指令と前記トルク電流検出値に基づきトルク電流誤差を算出し、該トルク電流誤差に基づき、トルク電流と同相のトルク電流同相電圧指令を算出するq軸電圧指令算出手段と、
二次抵抗補正値によって補正され同定された補正二次抵抗値と前記トルク電流指令および前記磁束密度指令とに基づきすべり角周波数を算出するすべり角周波数算出手段と、
前記すべり角周波数と実際の誘導電動機の回転角周波数に基づき角周波数指令を算出する角周波数指令算出手段と、
前記励磁電流同相電圧指令および前記トルク電流同相電圧指令と、前記角周波数指令とに基づき誘導電動機に印加する三相電圧指令を算出する三相電圧指令発生手段と、
Y結線用の前記補正励磁インダクタンス及び前記補正二次抵抗値を保持するY結線用データ保持部と、Δ結線用の前記補正励磁インダクタンス及び前記補正二次抵抗値を保持するΔ結線用データ保持部と、を備える補正値保持手段と、
結線方法を切り替えるための巻線切替指令に基づき前記保持手段によって保持された前記補正励磁インダクタンスと、前記補正二次抵抗値を切り替える補正値切替手段であって、Y結線をΔ結線に切り替える巻線切替指令が入力されると、使用しているY結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値を前記Y結線用データ保持部に書き込み、前記Δ結線用データ保持部に書き込まれたΔ結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値をリードし、また、Δ結線をY結線に切り替える巻線切替指令が入力されると、使用しているΔ結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値を前記Δ結線用データ保持部に書き込み、前記Y結線用データ保持部に書き込まれたY結線用の補正励磁インダクタンス及び二次抵抗補正値をリードする補正値切替手段と、
を有することを特徴とする誘導電動機の制御装置。
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JP (1) | JP3655060B2 (ja) |
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1997
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