JP5243869B2 - 交流電動機の巻線切換装置およびインバータ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、交流電動機の電機子巻線(以降、単に「巻線」と呼ぶ)を切換えることによって速度制御範囲を拡大する巻線切換装置および巻線切換機能を有するインバータ装置に関するものであり、車両駆動、工作機械主軸駆動、クレーンの横行・走行、巻取り機など、広範囲の産業技術分野において適用されるものである。
インバータ装置によって駆動される工作機械の主軸や車両の駆動装置において、低速領域で十分に大きいトルクを得ると共に、高速領域での高効率な運転を可能にするための手段として、巻線切換方法が採用されている。
図11に示すスター・デルタ巻線切換方法は、工作機械の主軸駆動等に広く実用されているものの一例である。図11において、622は交流電源、616から621は3相全波整流回路を構成するダイオード、615は平滑コンデンサ、614は交流電源622を直流電源に変換するコンバータ部である。端子TP,TNはコンバータ部614の直流出力端子であり、インバータ部601の入力となる。602は交流電動機、T1からT6は巻線切換に用いられる端子、603と604は電磁接触器等の開閉器である。
開閉器604を開放して開閉器603を閉じるとスター(Y)結線となり、開閉器604を閉じて開閉器603を開放すればデルタ(Δ)結線となる。低速領域ではスター(Y)結線を選択し、十分に高い電圧を印加することで同一電流に対して大きいトルクを得ることができる。電動機のインピーダンスが周波数に比例して大きくなり、高速領域では電流が流れにくくなるため、インピーダンスの低いデルタ(Δ)結線を選択することで電流を流れやすくすることができる。また、同期電動機では、逆起電圧により高速時に電圧が飽和するため、トルクを発生させるために弱め磁束制御などを行うが、余分な電流が流れて効率が落ちるため、巻線切換により逆起電圧自体を減少させることで、高速でも高効率の運転を行うことが可能となる。
巻線切換方式には、この他にも二組のスター巻線を直並列に切換える方法もある(例えば、特許文献1参照)。しかしこれらの方法は、いずれも機械的接点を持ったスイッチによって切換えることを前提としており、切換え時にインバータ装置からの電流遮断を余儀なくされるため、トルクが途切れてショックが発生するという問題点がある。
これに対し、半導体スイッチを利用した方法により、この遮断時間を短縮する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、巻線切換によるショックを低減するため、電動車両において、加減速中では巻線切換を行わず、加減速をしていない場合にのみ巻線切換を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、巻線切換を行う電動機システムを2台並列に接続し、両者の巻線切換タイミングをずらすことによって2台の合計トルクの変動を抑える方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
このように従来の巻線切換装置は、巻線切換時にインバータ装置からの電流を遮断あるいは電流を0近傍にした上で切換動作をするものである。
特許第3037471号公報 特許第3948009号公報(第3−6頁、図1) 特開平06−225588号公報(図1) 特開平06−217596号公報(図1)
従来の3相交流電動機の巻線切換装置は、機械的接点を用いているため、接点を入り切りする機構動作のための時間が必要であり、また寿命を考慮して一旦電流を遮断した上で、いわゆる無電流開閉を行っており、これらの時間を総合すると、無視できない程度(通常、数十ミリ秒)の無駄時間が生じることになる。この無駄時間は、例えば工作機械主軸駆動装置においては、最終製品の品質に影響することになり、また、車両の駆動装置では乗り心地に影響を与える。更に接点寿命が有限であるため、メンテナンスの手間がかかる。
一方、電気式スイッチによる方式は、この無駄時間を短縮するのに有効であるが、巻線切換時に遮断あるいは電流を0とする必要があった。
また、自動車における加減速中の切換を禁止する方法では、ショックはなくなるものの、例えば高速まで連続して加速する場合には効率が悪くトルクも出なくなるという問題点がある。
2台のシステムを並列にして巻線切換時間をずらす方法では、システムが大きくなり、またコストがかかるという問題点がある。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、加減速中などの条件下でも巻線切換時のショックがなく、簡単な構成で実現できる3相交流電動機の巻線切換装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、相毎に複数の巻線を備えた交流電動機と、前記複数の巻線を切換える巻線切換手段と、前記交流電動機を駆動するインバータ装置を備え、前記インバータ装置は、少なくとも積分器を有し、最大出力電圧に基づく制限電圧指令と出力電圧との偏差を用いて前記交流電動機への電流指令値を演算し、補正する定出力制御器と、予め巻線切換前にテーブルもしくは近似式を用いて算出した補正値を、巻線切換のタイミングで前記積分器に設定する電流指令補正値演算器と、を備える交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記インバータ装置は、前記電流指令値を前記交流電動機の磁束方向を基準としたdq座標系で、トルク指令及び前記交流電動機の電動機定数に基づくd軸電流指令値及びq軸電流指令値として算出する電流指令演算器と、前記出力電圧を前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値が、前記交流電動機に流れる電動機電流のdq座標変換値であるd軸電流検出値及びq軸電流検出値に一致するように算出する電流制御器と、を備え、 前記定出力制御器による補正は、前記d軸電流指令値に対し行われるようにする交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記定出力制御器は、前記積分器への補正値が正値であればゼロとする交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記インバータ装置は、前記交流電動機の速度に応じた電圧フィードフォワード値を前記出力電圧に加える電圧フィードフォワード演算器を備え、前記電圧フィードフォワード値は、少なくとも前記電流指令補正値演算器の出力を用いて演算されるようにする交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記電流指令補正値演算器が出力する、予め巻線切換前に算出する値は、前記q軸電流指令値及び前記交流電動機の速度に応じた値である交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記電流指令補正値演算器が出力する、予め巻線切換前に算出する値は、前記トルク指令および前記インバータ装置のコンバータ部電圧であるPN間電圧検出値を入力とする補正値算出テーブルを用いて算出した値である交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記電流指令補正値演算器が出力する、予め巻線切換前に算出する値は、前記トルク指令を入力とする補正値算出テーブルを用いて近似d軸電流補正値を算出し、さらに前記インバータ装置のコンバータ部電圧であるPN間電圧検出値を用いて前記近似d軸電流補正値を補正して算出した値である交流電動機の巻線切換装置が適用される。
また、本発明の他の観点によれば、巻線切換手段により切換え可能な複数の巻線を相毎に備えた交流電動機に接続され、少なくとも積分器を有し、最大出力電圧に基づく制限電圧指令と出力電圧との偏差を用いて前記交流電動機への電流指令値を演算し、補正する定出力制御器と、予め巻線切換前にテーブルもしくは近似式を用いて算出した補正値を、巻線切換のタイミングで前記積分器に設定する電流指令補正値演算器と、を備え前記交流電動機を駆動するインバータ装置が適用される。
さらに、前記電流指令値を前記交流電動機の磁束方向を基準としたdq座標系で、トルク指令及び前記交流電動機の電動機定数に基づくd軸電流指令値及びq軸電流指令値として算出する電流指令演算器と、前記出力電圧を前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値が、前記交流電動機に流れる電動機電流のdq座標変換値であるd軸電流検出値及びq軸電流検出値に一致するように算出する電流制御器と、を備え、前記定出力制御器による補正は、前記d軸電流指令値に対し行われるインバータ装置が適用される。
さらに、前記定出力制御器は、前記積分器への補正値が正値であればゼロとするインバータ装置が適用される。
また、本発明の他の観点によれば、 相毎に複数の巻線を備えた交流電動機と、前記複数の巻線を切換える巻線切換手段と、前記交流電動機を駆動するインバータ装置とを備え、 前記インバータ装置は、巻線切換指令信号を出力する巻線切換指令信号発生器と、複数内蔵した前記交流電動機の電動機定数を、前記巻線切換指令信号の出力に応じて切換える定数切換器と、前記交流電動機に流れる電動機電流の検出値を、前記交流電動機の電動機定数の変化に応じて補正する電流検出値補正演算器と、を備える交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記インバータ装置は、前記交流電動機への電流指令値を前記交流電動機の磁束方向を基準としたdq座標系で、トルク指令及び前記電動機定数に基づきd軸、q軸電流指令値として算出する電流指令演算器と、前記交流電動機への出力電圧を前記d軸、q軸電流指令値が、前記電動機電流のdq座標変換値であるd軸、q軸電流検出値に一致するように算出する電流制御器と、を備える交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記電流検出値補正演算器は、前記巻線の切換前後の前記電動機定数と、前記交流電動機への電流指令値または前記電動機電流検出値の関数、あるいはテーブルを用いて、前記電動機電流の検出値への補正値を算出する交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記電動機定数は、少なくとも電機子インダクタンスを含んでいる交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記インバータ装置は、キャリア信号に同期して前記出力電圧をPWM制御して前記交流電動機に出力するPWM制御器を備え、前記電流検出値補正演算器は、前記キャリア信号に同期して前記電動機電流の検出値への補正を行う交流電動機の巻線切換装置が適用される。
さらに、前記電流検出値補正演算器は、前記巻線の切換前後の前記電動機定数の比率に応じて前記電動機電流の検出値への補正を行う交流電動機の巻線切換装置が適用される。
また、本発明の他の観点によれば、巻線切換手段により切換え可能な前記複数の巻線を相毎に備えた交流電動機に接続され、巻線切換指令信号を出力する巻線切換指令信号発生器と、複数内蔵した前記交流電動機の電動機定数を、前記巻線切換指令信号の出力に応じて切換える定数切換器と、前記交流電動機に流れる電動機電流の検出値を、前記電動機定数の変化に応じて補正する電流検出値補正演算器と、を備える前記交流電動機を駆動するインバータ装置が適用される。
さらに、前記交流電動機への電流指令値を前記交流電動機の磁束方向を基準としたdq座標系で、トルク指令及び前記電動機定数に基づきd軸、q軸電流指令値として算出する電流指令演算器と、前記交流電動機への出力電圧を前記d軸、q軸電流指令値が、前記電動機電流のdq座標変換値であるd軸、q軸電流検出値に一致するように算出する電流制御器を備えるインバータ装置が適用される。
さらに、前記電流検出値補正演算器は、前記巻線の切換前後の前記電動機定数と、前記交流電動機への電流指令値または前記電動機電流検出値の関数、あるいはテーブルを用いて、前記電動機電流の検出値への補正値を算出するインバータ装置が適用される。
さらに、前記電流検出値補正演算器は、前記巻線の切換前後の前記電動機定数の比率に応じて前記電動機電流の検出値への補正を行うインバータ装置が適用される。

本発明によると、巻線切換前後における交流電動機発生トルクの不連続性、電機子電流のオーバーシュートや応答遅れあるいは不整合状態などを補償し、最大トルク/電流制御から定出力制御の移行、あるいは定出力制御から最大トルク/電流制御への移行等を円滑に行うことができるので、トルク変動のショックを大幅に低減することが可能となる。その結果、工作機械主軸駆動制御における加工精度の向上や、車両駆動装置での乗心地の改善などの効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図1〜図10を参照して説明する。
図1は、本発明の3相交流電動機の巻線切換装置の全体ブロック図である。同図において、15はインバータ装置、20は3相交流電動機、21は位置検出器、30は巻線切換器である。
次に、インバータ装置15の構成について説明する。1はトルク指令を生成するトルク指令発生器である。2は電流指令演算器であり、速度,効率あるいは電圧などに応じて、トルク指令と定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値と電動機定数をもとにd軸電流指令およびq軸電流指令を生成する。3はd軸電流指令I_refとq軸電流指令I_refに追従して3相交流電動機20に電流を流すように電圧指令を生成する電流制御器である。4は、電流制御器3で生成された電圧指令に従って3相交流電動機20に可変周波数の可変電圧を供給するPWM制御器である。5は電流検出器で、3相交流電動機20の巻線に流れる電流を検出する。6は電流検出器5で検出した電流を制御演算に使用する信号に変換するためのA/D変換器である。7はテーブルもしくは近似式を用いてd軸電流指令補正値を演算するd軸電流指令補正値演算器である。8は位置検出器21により検出した位置を微分して速度を得るための速度検出器である。9は3相交流電動機20の速度やトルク指令に応じて巻線切換タイミングを決定し、巻線切換器30に与える巻線切換指令信号を発生する巻線切換指令信号発生器である。10は巻線切換指令信号に従い、電流指令演算器2および電流制御器3で用いる電動機定数や制御パラメータを切り換える定数切換器である。11はコンバータ部出力のPN間電圧を検出するPN間電圧検出器である。12は定出力制御器であり、インバータ出力電圧が設定した任意の最大電圧を越える場合に、インバータ出力電圧と設定した任意の最大電圧の差に基づいて、PI制御演算またはI制御演算してd軸電流指令補正値を求め、d軸電流指令を補正することで出力電圧を制限し、インバータ装置15からの出力電圧を一定に保つ制御を行う。
3相交流電動機20は、巻線の各相の両端および中間点を引き出す接続端子(A1〜A6,B1〜B3)を有しており、2通りの巻線接続方法を選択できる構成となっている。位置検出器21は3相交流電動機20の回転子位置を検出する。通常エンコーダやレゾルバが使用される。
巻線切換器30は2つの巻線切換手段を持っており、3相交流電動機20の巻線の終端と中間点に接続され、終端あるいは中間点を短絡することにより、2通りの巻線特性を切り換える構成となっている。終端を短絡した場合は巻線インピーダンスが大きくなるため低速で大トルクを得ることができ、中間点を短絡することで、インピーダンスを小さくして高速でのトルク発生が可能となる。
なお、実施例1では、巻線切換器30とインバータ装置15をそれぞれ別置きとしたが、両者を一体化して巻線切換機能を内蔵したインバータ装置としてもよく、この場合、インバータ装置としての汎用性を損なうが、設置面積や配線工数などを考慮した場合、全体的なメリットが得られる。
ここで、巻線切換によって変化する定数について、同期電動機の場合を例にとり説明する。同期電動機は、回転子の磁束に同期したdq座標系で電圧電流方程式を求めると以下のように表わすことができる。


ただし、p:微分演算子、I,I:d軸,q軸電流、V,V:d軸,q軸電圧、ω:電動機回転子の電気角速度、R:電機子巻線抵抗、L,L:d軸,q軸の電機子巻線インダクタンス、Φ:電機子鎖交磁束
式(1)からdq軸干渉分および誘起電圧分を補償する電圧フィードフォワードを、


とすることによって、同期電動機は単純なRL負荷とみなすことができるため、次のようなPI制御により電流制御器を構成することができる。


ただし、I ,I はd軸およびq軸の電流指令、KPd,KPqはそれぞれd軸とq軸の電流制御器の比例ゲイン、TId,TIqは積分時定数、vacrd,vacrqはd軸,q軸の電流制御器のPI制御出力である。
ここで、積分時定数と比例ゲインは一般的に電動機定数を元に決定される。例えば、積分時定数TId,TIqを電動機の電気的時定数、


とすることにより、式(3)と同期電動機との伝達関数は一次遅れ系とみなすことができ、比例ゲインKPd,KPqにより応答を設定することができる。この時の応答周波数をfとすると、


により比例ゲインを求めることができる。
また、トルクは以下の式のようになる。


ただし、P:極対数
電流指令演算器2は式(4)や高効率位相、および定出力制御などによりdq軸電流指令を求める。
ここで、図1の3相交流電動機20の巻線の中間点(B1〜B3)を各巻線の切換点であるとすると、高速モード時の各電動機定数は以下のようになる。
電機子巻線抵抗:R=R/2
d軸,q軸の電機子巻線インダクタンス:Ldh = L /4、Lqh=L/4
電機子鎖交磁束:Φ=Φ/2
したがって、これらを用いて演算される値、つまり式(2)の演算用の係数、式(3)の制御定数、および式(4)から求められる電流指令演算のために使用される係数のそれぞれをデータ(巻線1用定数、巻線2用定数)として定数切換器10で持っておき、巻線切換信号によってそれらの巻線定数を切換えるようにする。
次に、巻線切換器30の動作について説明する。図2に巻線切換器30の構成の一例を示す。図2の例は、基本的構成において特許第3948009号公報に示されている図1と同じであるが、巻線切換器30の巻線切換手段1と巻線切換手段2にそれぞれコンデンサ(C1,C2)と抵抗(R1,R2)を個別に設置していることが異なる。これにより、巻線切換時に余るエネルギーをより効果的に吸収することができる。短絡のための半導体スイッチ(SW1,SW2)は1つのみを用いているが、容量が大きい場合にはダイオードブリッジの下段側ダイオードと並列に各相毎に半導体スイッチを設けるようにしてもよい。
以下、図2を基に巻線切換動作について説明する。SW1をOFF、SW2をONとした場合、3相交流電動機20の終端が短絡されるため、巻線のインピーダンスは最大となる。これを低速モードと呼ぶ。この低速モードでは大トルクを得やすいが、回転数が高速になるに従いトルクの発生が困難になってくる。3相交流電動機20の回転速度が高くなるにつれて逆起電圧が高くなり、そのためトルク発生に必要な電圧が得にくくなる。SW1をON、SW2をOFFするとインピーダンスを減少させることができる。これを高速モードと呼ぶ。こうすると逆起電圧が減少するためトルクを得やすくすることができる。
このように、低速時はSW1をOFF、SW2をON(低速モード)、高速時はSW1をON、SW2をOFF(高速モード)とすることにより、低速運転時の高トルクと、高速運転時のトルク発生の両立が可能となる。
加速中に電流が流れている状態で低速モードから高速モードへ移行する際、SW1とSW2の間に挟まれた巻線のエネルギーはスイッチを切換えると同時に、SW2と並列に接続されたコンデンサC2へ移動する。インバータ側の巻線は、その後、高速モードの制御に従って適切なトルクが得られるように制御される。ただし、巻線インピーダンスが小さくなるので、一時的な電流増加となる場合がある。切換えた瞬間に一時的に電流増加があるが、その後はトルク指令発生器1からのトルク指令に従ってトルクが制御され、大きなショックとはならない。
また、高速モードから低速モードへ移行する場合は、巻線のエネルギーはSW1と並列に接続されたコンデンサC1と、終端側巻線へ移動する。この場合は、巻線インピーダンスが大きくなるので、一時的な電流低下となる場合があるが、低速モードの制御に従って適切なトルクが得られるように制御される。
3相交流電動機20を駆動し、3相交流電動機20の速度やトルク指令に応じて巻線を低速モードから高速モードに切り換える場合、トルク指令発生器1において、トルク指令T_refを生成し、電流指令演算器2に与える。この場合、トルク指令は外部などから入力したトルク指令でも、速度制御器からの出力であるトルク指令でもよい。
電流指令演算器2は、最大トルク/電流制御を行う場合、すなわち、電動機の電流振幅を同一の値とした時に、最大のトルクを発生することができる電流位相を高効率位相βと定義すると、式(5)にてd軸電流指令を生成する。なお、βは主磁束(d軸)方向と直交する方向を0とした電流ベクトルの位相、言い換えれば、q軸方向を基準とした電流位相を意味する。


ここで、Kはトルク−電流換算係数である。また、q軸電流指令は、式(6)にて求める。


トルク精度を向上するために、L,Lの電流による変化を考慮した式(7)を用いてもよい。


ここで、Kはd軸電流により変化する係数である。またKはq軸電流により変化する係数である。
定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値が0ではない場合、式(5)から算出されたd軸電流指令I_refにd軸電流指令補正値を加算したものをd軸電流指令値とし、新たに算出されたd軸電流指令値を用いて式(6)あるいは式(7)にてq軸電流指令値を算出する。
電流指令演算器2で算出されたd軸電流指令I_refとq軸電流指令I_refは電流制御器3に入力される。電流制御器3では、電流検出器5で検出した電流をA/D変換器6で取り込み、3相電流をd軸およびq軸電流に変換してフィードバック電流を生成し、d軸電流指令I_refとq軸電流指令I_refとの偏差量をPI制御等によって演算し電圧指令V,Vを求める。このd軸およびq軸の電圧指令をさらに3相交流電動機20に印加する3相電圧に変換するため、U相,V相,W相の電圧指令Vu_ref,Vv_ref,Vw_refが生成される。このとき、位置検出器21より検出された電動機の位相θを用いる。
電流制御器3で生成された電圧指令Vu_ref,Vv_ref,Vw_refは、PWM制御器4に入力され、3相交流電動機20にPWM電圧が印加され、3相交流電動機20はトルク指令T_refに従って駆動される。
巻線切換を速度基準(以下、巻線切換速度と呼ぶ)で行う場合、巻線切換指令信号発生器9において、巻線切換速度と速度検出器8で検出される3相交流電動機20の速度を比較し、巻線切換速度以上のとき高速モードに巻線を切り換える信号を発生する。高速モードに巻線を切り換える信号は、巻線切換器30に与えられ、SW2をOFF、SW1をONし、インピーダンスを減少させた高速モードで3相交流電動機20を駆動する。このとき、定数切換器10にて高速モード用電動機定数を電流指令演算器2および電流制御器3に設定し制御を行う。
この巻線切換器30で巻線が切り換えられる前に、d軸電流指令補正値演算器7では、テーブルもしくは近似式と、トルク指令T_ref、3相交流電動機20の速度、PN間電圧検出器11にて検出したPN間電圧を用いて、d軸電流指令補正値Iを算出する。
近似式は以下の式(8)あるいは式(9)を用いる。



ただし、



ここで、Vomは電圧出力制限値、I_refは巻線が切り換わる前のq軸電流指令を用いる。また、d軸電流指令補正値Iを算出する式は2式あるが、より電流値が小さくなる式を用い、負荷が増加して、Iが次式で与えられる値となった場合は式(9)を用いる。


テーブルを用いてd軸電流指令補正値Iを算出する場合、PN間電圧変動を考慮したテーブルを用いるか、PN間電圧を考慮しないテーブルを用いる。PN間電圧を考慮しないテーブルを用いた場合、トルク指令と速度によって決められたd軸電流指令補正値Id0にPN間電圧Vdcを用いて補正を行い、d軸電流指令補正値Iを算出する。


式(8)(9)あるいは(11)より算出されたd軸電流指令補正値Iは、低速モードから高速モードに切り換えて駆動されるときに、定出力制御器12の積分器に設定され、積分演算の遅れを補償する。ただし、d軸電流指令補正値Iが正の値となった場合、定出力制御器15の積分器には0を設定する。この操作は巻線切換前後の電動機の発生トルクを同一の値に保つための処理であり、この操作により、巻線切換時の電流制御の応答特性を改善することができ、トルクの変動を緩和することができる。
なお、d軸電流指令補正値Iが正の値の場合は、電動機の主磁束を増磁する方向に作用する電流を意味し、負の値の場合は減磁する方向に作用する電流であることを意味する。
図3は定出力制御器12の詳細ブロック図を示したものである。電流制御器3より得られる電圧指令V,Vを振幅演算器44によって式(12)に示す演算を行い、減算器40への電圧フィードバック信号とし、制限電圧指令との偏差量をPI制御器41にてPI


制御演算もしくはI制御演算し、I指令リミッタ42と一次遅れフィルタ43を介して3相交流電動機20の逆起電圧を抑えるためのd軸電流指令補正値とする。すなわち、式(5)で求めたd軸電流指令を補正することで出力電圧を制限し、インバータからの出力を一定に保つ制御を行う。ここで、d軸電流指令補正値はI指令リミッタ42にて、正の値のときは0にリミットされ、負の値のときは所定の負の最大値にリミットされる。
図4は、(a)最大トルク/電流制御の場合と(b)定出力制御の場合の電流ベクトルの様子を示したものである。(b)の定出力制御時は、最大トルク/電流制御の場合に生成されるd軸電流指令に対して、さらに負のd軸電流が加算されて流れる。そのため、電流Iは定出力制御の方が大きくなる。ただし、電動機の端子電圧は図5に示す電圧ベクトルのように、定出力制御時の方が小さくなる(V→V′となる)。
図6は低速モード、高速モードにおける制御の切換領域を表わしたものである。図6で示すように、低速モードから高速モードへの切換時は定出力制御から最大トルク/電流制御となり、高速モードから低速モードへの切換時は最大トルク/電流制御から定出力制御となる。
本発明が従来技術と異なる部分は、定出力制御器12によって算出されるd軸電流指令補正値を、予め巻線切換前にd軸電流指令補正値演算器7で算出し、この算出値を巻線切換のタイミングで定出力制御器12の積分器に設定してやることで、積分演算の遅れを補償することである。この操作によって、巻線切換時の定出力制御への移行あるいは最大トルク/電流制御への移行を速やかに動作させることができ、図4に示す高効率位相βもしくは定出力制御位相β′にてモータを駆動することができ、トルクのショックを大幅に小さくすることができることである。
図7は、本発明の実施例2における3相交流電動機の巻線切換装置の全体ブロック図である。図1との相違点は電圧FF(フィードフォワード)演算器13が追加されたことである。以下、図7に基づいて説明する。
3相交流電動機20を駆動し、3相交流電動機20の速度やトルク指令に応じて巻線を切り換え、巻線切換は巻線切換速度で行う場合、巻線切換指令信号発生器9において、巻線切換速度と速度検出器8で検出される3相交流電動機20の速度を比較し、巻線切換指令信号を生成する。巻線切換指令信号は、巻線切換器30に与えられ、SW1およびSW2をON、OFFすることにより低速モードから高速モードあるいは高速モードから低速モードに切り換え3相交流電動機20を駆動する。このとき、定数切換器10にて低速モードあるいは高速モードの電動機定数を電流指令演算器2および電流制御器3に設定し制御を行う。
この巻線切換器30で巻線が切り換えられる前に、d軸電流指令補正値演算器7で、テーブルもしくは近似式を用いて、d軸電流指令補正値Iを算出する。算出されたd軸電流指令補正値Iは、巻線が切り換えられるときに、定出力制御器12の積分器に設定され、積分演算の遅れを補償する。ただし、d軸電流指令補正値Iが正の値となった場合、定出力制御器12の積分器には0を設定する。
また、電圧FF(フィードフォワード)演算器13において、d軸電流指令補正値Iで補正されたd軸電流指令I_ref、q軸電流指令I_ref、3相交流電動機の速度ω、電動機定数L,Lを用いて、下記の式より電圧フィードフォワードV_FF、V_FFを算出する。


式(13)で算出された電圧フィードフォワードV_FF,V_FFは、巻線が切り換えられるときに、電流制御器3のd軸およびq軸の電圧指令に電圧フィードフォワードとして加えられる。
電圧フィードフォワードによって3相交流電動機20に印加される電圧が巻線切換直後に補償されるため、電流応答を上げることができ、3相交流電動機20のトルクのショックを大幅に減らすことができる。
d軸電流補正値演算器7で、d軸電流指令補正値Iを算出するために使用する、PN間電圧変動を考慮したテーブルの作成方法について説明する。
はじめに、PN間電圧を一定の値に固定し、巻線切換速度で低速モードの運転を行う。このときの定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値を測定する。ここで、トルク指令は電動機に負荷機等を用いて負荷を加えながら、0から最大トルクまで変更し、トルク指令に対するd軸電流指令補正値の測定を行う。次に高速モードに変更し、同じ手順で定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値を測定する。
上記手順を3相交流電動機20を駆動する電圧範囲で、PN間電圧を変更しながら行うことで、PN間電圧変動を考慮した巻線切換時の定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値を測定する。
以上のようにして測定したデータをもとにして、トルク指令およびPN間電圧を入力するとd軸電流指令補正値を出力するテーブルを作成することができる。
次に、PN間電圧変動を考慮しないd軸電流指令補正値I算出テーブルの作成方法について説明する。
はじめに、PN間電圧を一定の値に固定し、巻線切換速度で低速モードの運転を行う。このときの定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値を測定する。ここで、トルク指令は電動機に負荷機等を用いて負荷を加えながら、0から最大トルクまで変更し、トルク指令に対するd軸電流指令補正値の測定を行う。次に高速モードに変更し、同じ手順で定出力制御器12から出力されるd軸電流指令補正値を測定する。
以上のようにして測定したデータをもとにして、トルク指令を入力するとd軸電流指令補正値を出力するテーブルを作成することができる。
図8は、本発明の実施例4における3相交流電動機の巻線切換装置の全体ブロック図である。図1や図7と同一符号で示す部分は同一の回路ブロックまたは機能ブロックを意味するので説明を省略する。また、実施例4に係わる発明を説明するための便宜上、元の回路ブロックまたは機能ブロックを細分化した部分については、元の符号に添え字(a,b)を付けて区別した。また、実施例4の説明において、関連性の少ない回路ブロックまたは機能ブロックは記載を省いている。例えば、図1に示す定出力制御器12やd軸電流指令補正値演算器7などは、実施例4の中での説明では直接関与しないため記載を省略している。以下、図8に基づいて追加変更点を述べる。
3aはd軸電流指令I_refとq軸電流指令I_refに追従して3相交流電動機20に電流を流すように電圧指令を生成する電流制御器である。3bはスイッチング素子におけるデッドタイムやオン電圧、コンバータ部のDC電圧の変動などを補正し、電流制御器3aからの電圧指令通りの電圧が出力されるように各相電圧を演算して、PWM制御器4aに出力する電圧指令を補正演算する電圧指令設定器である。4aは電圧指令設定器3bにて補正演算された電圧指令に従って3相交流電動機20に可変周波数の可変電圧を供給するPWM制御器であり、半導体スイッチング素子等から構成されている。4bはキャリア信号を発生するキャリア信号発生器である。9aは巻線切換指令信号発生器であり、3相交流電動機20の速度やトルク指令に応じて巻線切換タイミングを決定し、定数切換器10および巻線切換信号出力器9bに与える巻線切換指令信号を発生する。9bは巻線切換信号出力部であり、巻線切換器30のスイッチング素子の駆動信号を出力する。
また、45は電流検出器5で検出した3相交流電動機20のU相,V相電流を、A/D変換器6を介して入力し、α相、β相なる90度位相差の2相の電流検出信号に変換する3相2相変換器であり、46は3相2相変換器45で演算したα相,β相電流検出信号からd軸電流検出信号、q軸電流検出信号に変換するd−q変換器である。また、14はd−q変換器46で演算したd軸電流検出信号、q軸電流検出信号を、巻線切換に伴って生じる電動機定数、例えばインダクタンスや誘起電圧定数等の変化の比率に応じて補正する電流検出値補正演算器である。
次に、実施例4における巻線切換時の動作について説明する。図9は巻線切換時のタイムチャートを示したものである。キャリア信号発生器4bにより三角波のキャリア信号101が出力され、このキャリア信号101と電圧指令設定器3bから出力される各相の電圧指令信号105aとを比較し、PWM制御器4aの半導体スイッチング素子の駆動信号を得る。キャリア信号発生器4bは、キャリア信号101と同時にキャリア同期信号102を出力する。図9ではキャリア信号101の谷側の頂点でキャリア同期信号102を出力する例を示している。このキャリア同期信号102を基準として電流検出処理103が開始される。電流検出処理103が完了した後に電流制御処理104が開始され、トルク指令に従った電流となるように電圧指令を求める。電流制御処理104により求められた電圧指令は、演算後のキャリア同期信号102のタイミングで出力される。つまり、電圧指令設定105の設定タイミングは電流を検出してから電圧を払い出すまでに、キャリア同期信号102の1周期分を要する。
ここで巻線切換指令信号発生器9aから巻線切換指令信号106が図9に示す106aのタイミングで発生した場合、実際の巻線切換動作は、巻線切換指令信号106aが出力されてから2度目のキャリア同期信号102の102cのタイミングで行われる。すなわち、巻線切換信号出力108が108aのタイミングで出力され、巻線切換器30のスイッチング素子を駆動し巻線切換を行う。
また、この巻線切換指令信号106aに従って電流制御演算に使用する電動機定数切換処理107が107aのタイミングで実行される。電動機定数切換処理107が完了した後に実行される電流制御処理104は、巻線切換後の定数および電流指令で実行される。しかし、この時の電流検出器5で検出された電流検出値は巻線切換前の値である。そのためキャリア同期信号102の102bのタイミングにおいては、電流指令が巻線切換後の値で指令され、電流フィードバック信号となる電流検出値は巻線切換前の値となるため両者に不整合を生ずる。
そこで、電流検出値補正演算器14により、巻線切換に伴って生じる電動機定数の変化の比率、具体的には、低速モードおよび高速モードにおける巻線インダクタンスの変化の比率に応じて次式に示すような電流検出値の補正を行う。




式(14)〜(17)において、Id_fbはd軸電流検出値、Iq_fbはq軸電流検出値、Id_fbc(L→H)は低速モードから高速モードへの切換時のd軸電流検出値の補正値、Iq_fbc(L→H)は低速モードから高速モードへの切換時のq軸電流検出値の補正値、Id_fbc(H →L )は高速モードから低速モードへの切換時のd軸電流検出値の補正値、Iq_fbc(H→L)は高速モードから低速モードへの切換時のq軸電流検出値の補正値を示す。LdL,LqLは低速モードにおけるd軸およびq軸の巻線インダクタンス、LdH,LqHは高速モードにおけるd軸およびq軸の巻線インダクタンスである。
上記のような電流検出値の補正処理を行うことで、電流検出値は等価的に巻線切換後の値となり、電流制御器3aにおける電流指令値と電流検出値の偏差が小さくなるため、補正なしの場合と比較して、電流偏差のPI制御器からの出力電圧すなわち電圧指令が小さくなる。
さらに、巻線切換信号出力108が実行される108aのタイミングで行われている電流制御処理104に使用されている電流検出値は、巻線切換前の値であるので、上述と同様に、電流検出値補正演算器14により、巻線切換に伴って生じる巻線インダクタンスの変化の比率に応じて補正することで、電流検出値も等価的に巻線切換後の値となり、電流指令値と電流検出値の偏差が小さくなり、補正なしに比べて、電流制御器3aのPI制御器からの出力電圧が小さくなる。上記処理を行うことで、通電中の滑らかな巻線切換が可能となる。
本発明が従来技術と異なる部分は、巻線切換に伴って生じる電動機定数である巻線インダクタンスの変化の比率に応じて電流検出値を補正することで、電流指令と電流検出値の偏差が小さくなるので、巻線切換直後に電流制御器3aのPI制御器から出力される電圧が小さくなる。すなわち、巻線切換に伴う電流指令と電流検出値の不整合状態が緩和されるので、電流リップルが低減し3相交流電動機20の発生トルクのショックを大幅に減らすことができる。
図9のタイムチャートに示したように、電動機定数切換処理107が実行された後の2度目のキャリア同期信号102発生のタイミング102cで巻線切換信号出力108を108aのタイミングで実行し、巻線切換器30のスイッチング素子を駆動して巻線を切換える。このとき、定数切換器10にて電動機定数を電流指令演算器2および電流制御器3aに設定し制御を行う。
電動機定数を切換えた場合、上述の実施例4で説明した通り、電流制御器3aで行われる処理では電流指令が巻線切換後の値となり、電流検出値が巻線切換前の値となる期間が2度存在する。そこで、電流検出値補正演算器14により、巻線切換に伴って生じる巻線インダクタンスの変化の比率に応じて電流検出値を補正した。しかし、巻線インダクタンスやその他の電動機定数も含めて、それらの特性は電流の大きさや温度によって変化する。
図10は、一例として、d軸およびq軸の巻線インダクタンスの電流依存性を示したものである。従って、これらの電動機定数の電流および温度依存性を考慮し、例えば、巻線インダクタンスを電流指令によって補正すれば、さらに精度良く電流検出値を補正することができる。この場合の巻線インダクタンスの補正は、電流指令の1次関数もしくは2次関数による近似式を用いるか、または電流指令に対するテーブルを準備してもよい。図8の電流指令演算器2と電流検出補正演算器14を結ぶ点線は電流指令によって巻線インダクタンスを補正し、その補正された巻線インダクタンスを用いて上述の式(14)〜(17)を実行し電流検出値を補正するように構成したものである。
なお、実際の電流検出値によって巻線インダクタンスの補正を行うことも当然可能であり、上述の電流指令による補正と同様に実施できる。
実施例4および5では、巻線インダクタンスによって電流検出値を補正する方法を示したが、実施例6は巻線切換前後の電流指令によって補正を行うものである。巻線切換前後のd軸およびq軸の電流指令を、低速モードの場合は、IdL_ref,IqL_refとし、高速モードの場合をIdH_ref,IqH_refとしたとき、電流検出値の補正を下式によって算出する。





上記の補正処理により、電流検出値は等価的に巻線切換後の値となり、電流制御器3aにおける電流指令値と電流検出値の偏差が小さくなる。従って、補正なしの場合と比較して、電流偏差のPI制御器からの出力電圧すなわち電圧指令が小さくなるので、通電中の滑らかな切換が可能となる。
本発明の実施例1における3相交流電動機の巻線切換装置の全体ブロック図 図1に示す巻線切換器30の詳細構成図 図1に示す定出力制御器12の詳細ブロック図 本発明における(a)最大トルク/電流制御の場合と(b)定出力制御の場合の電流ベクトルを示す図 本発明における電圧ベクトルを示す図 本発明における低速モードおよび高速モード時の最大トルク/電流制御と定出力制御のトルク−回転速度特性の制御領域を示す図 本発明の実施例2における3相交流電動機の巻線切換装置の全体ブロック図 本発明の実施例4における3相交流電動機の巻線切換装置の全体ブロック図 本発明の実施例4における巻線切換時の動作を説明するタイムチャート 本発明の実施例5における3相交流電動機の巻線インダクタンスの電流依存性を示す図 従来の3相交流電動機の巻線切換装置の構成図
符号の説明
1 トルク指令発生器
2 電流指令演算器
3,3a 電流制御器
3b 電圧指令設定器
4,4a PWM制御器
4b キャリア信号発生器
5 電流検出器
6 電流検出用A/D変換器
7 d軸電流指令補正値演算器
8 速度検出器
9,9a 巻線切換指令信号発生器
9b 巻線切換信号出力器
10 定数切換器
11 PN間電圧検出器
12 定出力制御器
13 電圧FF演算器
14 電流検出値補正演算器
15 インバータ装置
20 3相交流電動機
21 位置検出器
30 巻線切換器
40 減算器
41 PI制御器
42 I指令リミット
43 一次遅れフィルタ
44 振幅演算器
45 3相2相変換器
46 d−q変換器
601 インバータ部
602 交流電動機
603、604 開閉器
614 コンバータ部
615 平滑コンデンサ
616〜621 ダイオード
622 電源

Claims (10)

  1. 相毎に複数の巻線を備えた交流電動機と、
    前記複数の巻線を切換える巻線切換手段と、
    前記交流電動機を駆動するインバータ装置とを備え、
    前記インバータ装置は、
    少なくとも積分器を有し、最大出力電圧に基づく制限電圧指令と出力電圧との偏差を用いて前記交流電動機への電流指令値を演算し、補正する定出力制御器と、
    予め巻線切換前にテーブルもしくは近似式を用いて算出した補正値を、巻線切換のタイミングで前記積分器に設定する電流指令補正値演算器と、を備える
    ことを特徴とする交流電動機の巻線切換装置。
  2. 前記インバータ装置は、さらに、前記電流指令値を前記交流電動機の磁束方向を基準としたdq座標系で、トルク指令及び前記交流電動機の電動機定数に基づくd軸電流指令値及びq軸電流指令値として算出する電流指令演算器と、
    前記出力電圧を前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値が、前記交流電動機に流れる電動機電流のdq座標変換値であるd軸電流検出値及びq軸電流検出値に一致するように算出する電流制御器と、を備え、
    前記定出力制御器による補正は、前記d軸電流指令値に対し行われるようにすることを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の巻線切換装置。
  3. 前記定出力制御器は、前記積分器への補正値が正値であればゼロとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電動機の巻線切換装置。
  4. 前記インバータ装置は、さらに、前記交流電動機の速度に応じた電圧フィードフォワード値を前記出力電圧に加える電圧フィードフォワード演算器を備え、
    前記電圧フィードフォワード値は、少なくとも前記電流指令補正値演算器の出力を用いて演算されるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電動機の巻線切換装置。
  5. 前記電流指令補正値演算器が出力する、予め巻線切換前に算出する値は、前記q軸電流指令値及び前記交流電動機の速度に応じた値であることを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の巻線切換装置。
  6. 前記電流指令補正値演算器が出力する、予め巻線切換前に算出する値は、前記トルク指令および前記インバータ装置のコンバータ部電圧であるPN間電圧検出値を入力とする補正値算出テーブルを用いて算出した値であることを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の巻線切換装置。
  7. 記電流指令補正値演算器が出力する、予め巻線切換前に算出する値は、前記トルク指令を入力とする補正値算出テーブルを用いて近似d軸電流補正値を算出し、さらに前記インバータ装置のコンバータ部電圧であるPN間電圧検出値を用いて前記近似d軸電流補正値を補正して算出した値であることを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の巻線切換装置。
  8. 巻線切換手段により切換え可能な複数の巻線を相毎に備えた交流電動機に接続され、
    少なくとも積分器を有し、最大出力電圧に基づく制限電圧指令と出力電圧との偏差を用いて前記交流電動機への電流指令値を演算し、補正する定出力制御器と、
    予め巻線切換前にテーブルもしくは近似式を用いて算出した補正値を、巻線切換のタイミングで前記積分器に設定する電流指令補正値演算器と、を備え、
    前記交流電動機を駆動することを特徴とするインバータ装置。
  9. 前記電流指令値を前記交流電動機の磁束方向を基準としたdq座標系で、トルク指令及び前記交流電動機の電動機定数に基づくd軸電流指令値及びq軸電流指令値として算出する電流指令演算器と、
    前記出力電圧を前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値が、前記交流電動機に流れる電動機電流のdq座標変換値であるd軸電流検出値及びq軸電流検出値に一致するように算出する電流制御器と、をさらに備え、
    前記定出力制御器による補正は、前記d軸電流指令値に対し行われるようにすることを特徴とする請求項8に記載のインバータ装置。
  10. 前記定出力制御器は、前記積分器への補正値が正値であればゼロとすることを特徴とする請求項8又は9に記載のインバータ装置。
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