JP3595049B2 - 車輌の挙動制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌の旋回時に於けるスピンやドリフトアウトの如き好ましからざる挙動を抑制し低減する挙動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌の旋回時に於ける挙動を制御する挙動制御装置の一つとして、例えば特開平6−24304号公報に記載されている如く、車輌の実ヨーレートが車輌の走行状態に基づいて演算される目標ヨーレートになるよう制動力を制御するヨーレートフィードバック式の挙動制御装置が従来より知られている。
【0003】
かかる挙動制御装置によれば、実ヨーレートが目標ヨーレートになるよう制動力が制御されることにより、旋回時にスピンやドリフトアウトが生じてもその不安定な挙動が低減されるので、かかる制動力制御が行われない場合に比して車輌の旋回挙動を安定化させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、車輌のスピン状態を抑制するためには、前輪のコーナリングフォースを減少させると共に後輪のコーナリングフォースを増大させることが有効である。従ってスピン状態が検出されたときには、前輪のコーナリングフォースが減少するよう前輪の制動力を増大させると共に、後輪のコーナリングフォースが増大するよう後輪の制動力を減少させることによりスピン状態を抑制することが考えられる。
【0005】
しかし制動力を増減する制動装置がそれぞれ前輪及び後輪の制動力を増減する前輪系統及び後輪系統の2系統に構成された制動装置である場合には、前輪系統が何らかの理由によって失陥し前輪の制動力を正常に発生できなくなった状況に於いてスピン抑制制御が実行されると以下の如き問題が生じる。
【0006】
即ち前輪系統が失陥した状況に於いて車輌の運転者により制動操作が行われると、前輪系統は失陥しているため前輪の制動力は発生せず、後輪にのみ制動力が発生する。かくして後輪にのみ制動力が発生する状況に於いては、後輪の横力が低下することにより車輌はスピン状態になり易く、車輌がスピン状態になったことに対処すべくスピン抑制制御が実行されると後輪の制動力が低下されるので、運転者が期待する減速度よりも小さい減速度しか得られない状況になる。特にこの問題は、旋回外側前輪及び後輪のホイールシリンダをマスタシリンダと遮断しアキュムレータ圧を使用して旋回外側前輪の制動圧を増圧し後輪の制動圧を減圧することによりスピン抑制制御が実行される場合に顕著である。
【0007】
本発明は、従来の挙動制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、前輪系統の失陥状態が検出されたときには車輌がスピン状態にあるときにもスピン抑制制御によって後輪の制動力が低下されることを防止することにより、前輪系統の失陥時にスピン抑制制御が実行されることに起因して後輪の制動力が低下し運転者が期待する減速度よりも小さい減速度しか得られなくなることを防止することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の如き主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ちブレーキ系統が前輪系統及び後輪系統の2系統に構成された制動装置を有し、車輌がスピン状態にあるときには旋回内側前輪のホイールシリンダをマスタシリンダに接続した状態に維持すると共に旋回外側前輪及び後輪のホイールシリンダをマスタシリンダと遮断しアキュムレータ圧を使用して旋回外側前輪及び後輪の制動圧を制御することによりスピン抑制制御を実行する車輌の挙動制御装置に於いて、車輌のスピン状態を判定し、車輌がスピン状態にあると判定されたときには旋回外側前輪の制動力を増大させてスピン状態を抑制するための旋回外側前輪の目標スリップ率を求めると共に、後輪の制動力を旋回外側前輪の目標スリップ率に応じて低下させてスピン状態を抑制するための後輪の目標スリップ率を求め、旋回内側前輪の車輪速度を基準車輪速度としてそれぞれ旋回外側前輪及び後輪の目標スリップ率に基づき旋回外側前輪及び後輪の目標車輪速度を求め、旋回外側前輪及び後輪の車輪速度が前記目標車輪速度になるよう旋回外側前輪及び後輪の制動圧を制御することにより前記スピン抑制制御を実行する制御手段と、前記前輪系統の失陥状態を検出する検出手段と、前記前輪系統の失陥状態が検出されたときには車輌がスピン状態にあると判定されても前記スピン抑制制御の実行を禁止し後輪のホイールシリンダをマスタシリンダに接続した状態に維持する手段とを有していることを特徴とする車輌の挙動制御装置によって達成される。
【0009】
スピン抑制制御は旋回内側前輪のホイールシリンダをマスタシリンダに接続した状態に維持すると共に旋回外側前輪及び後輪のホイールシリンダをマスタシリンダと遮断しアキュムレータ圧を使用して旋回外側前輪及び後輪の制動圧を制御することにより実行され、旋回外側前輪の制動力を増大させてスピン状態を抑制するための旋回外側前輪の目標スリップ率を求めると共に、後輪の制動力を旋回外側前輪の目標スリップ率に応じて低下させてスピン状態を抑制するための後輪の目標スリップ率を求め、旋回内側前輪の車輪速度を基準車輪速度としてそれぞれ旋回外側前輪及び後輪の目標スリップ率に基づき旋回外側前輪及び後輪の目標車輪速度を求め、旋回外側前輪及び後輪の車輪速度が目標車輪速度になるよう後輪の制動力を制御する制御であるので、前輪系統が失陥し前輪の制動力が発生しない状況になると、旋回内側前輪の制動力が運転者の制動意志を反映しなくなると共に旋回内側前輪の車輪速度が高くなることにより基準車輪速度も高い値になり、そのため後輪の目標車輪速度が高くなることに起因して後輪の制動力が低くなって運転者が期待する減速度よりも小さい減速度しか得られなくなると共に運転者の制動意志を反映した制動力を発生できなくなってしまう。
上記構成によれば、前輪系統の失陥状態が検出されたときには車輌がスピン状態にあると判定されてもスピン抑制制御の実行が禁止され、これにより後輪の目標車輪速度が高くなることに起因して後輪の制動力が低下することが防止されるので、前輪の制動力が発生しない状況に於いて後輪の制動力が大きく不足することが回避され、また後輪のホイールシリンダがマスタシリンダと遮断されることが禁止されマスタシリンダと接続された状態に維持され、これにより運転者が期待する減速度よりも小さい減速度しか得られなくなること及び運転者の制動意志を反映した制動力を発生できなくなることが防止される。
【0010】
一般に、ブレーキ踏力が増大するにつれて前輪の制動力が増大することにより車輌の減速度も増大するが、前輪系統が失陥した状態になるとブレーキ踏力が増大しても前輪の制動力は増大せず、そのため車輌の減速度も正常には増大しないので、ブレーキ踏力に対する車輌の減速度が小さいか否かにより前輪系統が失陥状態にあるか否かを判定することができる。
【0011】
従って本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、請求項1の構成に於て、前記検出手段はブレーキ踏力に対する前記車輌の減速度が所定値よりも小さいときに前記前輪系統の失陥状態と判定するよう構成される(請求項2の構成)。
【0012】
またスピン抑制制御が実行されている状況に於ける旋回内側前輪の接地荷重は小さいので、車輌がABS装置を有する場合にはかかる状況に於いて運転者により比較的強い制動操作が行われると、ABS装置が作動し前輪(特に旋回内側前輪)がABS制御されるが、前輪系統が失陥した状態になると、比較的強い制動操作が行われることによりマスタシリンダ圧が高い値になっても前輪に対するABS制御が行われない。
【0013】
従って本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、請求項1の構成に於て、前記車輌はABS装置を有し、前記検出手段は前記スピン抑制制御実行中であり且つ前記制動装置のマスタシリンダ圧が所定値以上であり且つ前輪がABS制御中でないときに前記前輪系統の失陥状態と判定するよう構成される(請求項3の構成)。この構成によれば、前輪系統の失陥状態が正確に判定される。
【0014】
【課題解決手段の好ましい態様】
また路面の摩擦係数が低い場合にはブレーキ踏力が増大しても車輌の減速度は正常には増大しないので、ブレーキ踏力に対する車輌の減速度が小さいか否かによっては必ずしも正確に前輪系統が失陥状態にあるか否かを判定することができない。しかしABS装置を有する車輌の場合には路面の摩擦係数が低く制動時の車輪のスリップ率が高くなるとABS装置が作動するので、ABS制御が行われていない状況に於いてブレーキ踏力に対する車輌の減速度が小さいか否かを判定することにより、前輪系統が失陥状態にあるか否かを一層正確に判定することができる。
【0015】
従って本発明の課題解決手段の一つの好ましい態様によれば、請求項2の構成に於て、車輌はABS装置を有し、検出手段はABS制御中でない場合に於いてブレーキ踏力に対する車輌の減速度が所定値よりも小さいときに前輪系統の失陥状態と判定するよう構成される。
【0016】
本発明の課題解決手段の他の一つの好ましい態様によれば、上述の好ましい態様の構成に於て、検出手段は前輪がABS制御中でなくスピン抑制制御も実行されておらず車速が所定値以上である場合に於いてブレーキ踏力に対する車輌の減速度が所定値よりも小さいときに前輪系統の失陥状態と判定するよう構成される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明による挙動制御装置の一つの実施形態の油圧回路及び電気式制御装置を示す概略構成図である。
【0019】
図1に於て、制動装置10は運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを第一及び第二のポートより圧送するマスタシリンダ14と、マスタシリンダ内のオイル圧力に対応する圧力(レギュレータ圧)にブレーキオイルを増圧するハイドロブースタ16とを有している。マスタシリンダ14の第一のポートは前輪用のブレーキ油圧制御導管18により左右前輪用のブレーキ油圧制御装置20及び22に接続され、第二のポートは途中にプロポーショナルバルブ24を有する後輪用のブレーキ油圧制御導管26により左右後輪用の3ポート2位置切換え型の電磁式の制御弁28に接続されている。制御弁28は導管30により左後輪用のブレーキ油圧制御装置32及び右後輪用のブレーキ油圧制御装置34に接続されている。
【0020】
また制動装置10はリザーバ36に貯容されたブレーキオイルを汲み上げ高圧のオイルとして高圧導管38へ供給するオイルポンプ40を有している。高圧導管38はハイドロブースタ16に接続されると共に切換弁44に接続されており、高圧導管38の途中にはオイルポンプ40より吐出される高圧のオイルをアキュムレータ圧として蓄圧するアキュムレータ46が接続されている。図示の如く切換弁44も3ポート2位置切換え型の電磁式の切換弁であり、四輪用のレギュレータ圧供給導管47によりハイドロブースタ16に接続されている。
【0021】
左右前輪用のブレーキ油圧制御装置20及び22はそれぞれ対応する車輪に対する制動力を制御するホイールシリンダ48FL及び48FRと、3ポート2位置切換え型の電磁式の制御弁50FL及び50FRと、リザーバ36に接続されたリターン通路としての低圧導管52と切換弁44との間に接続された左右前輪用のレギュレータ圧供給導管53の途中に設けられた常開型の電磁式の開閉弁54FL及び54FR及び常閉型の電磁式の開閉弁56FL及び56FRとを有している。それぞれ開閉弁54FL、54FRと開閉弁56FL、56FRとの間の左右前輪用のレギュレータ圧供給導管53は接続導管58FL、58FRにより制御弁50FL、50FRに接続されている。
【0022】
左右後輪用のブレーキ油圧制御装置32、34は制御弁28と低圧導管52との間にて導管30の途中に設けられた常開型の電磁式の開閉弁60RL、60RR及び常閉型の電磁式の開閉弁62RL、62RRと、それぞれ対応する車輪に対する制動力を制御するホイールシリンダ64RL、64RRとを有し、ホイールシリンダ64RL、64RRはそれぞれ接続導管66RL、66RRにより開閉弁60RL、60RRと開閉弁62RL、62RRとの間の導管30に接続されている。
【0023】
制御弁50FL及び50FRはそれぞれ前輪用のブレーキ油圧制御導管18とホイールシリンダ48FL及び48FRとを連通接続し且つホイールシリンダ48FL及び48FRと接続導管58FL及び58FRとの連通を遮断する図示の第一の位置と、ブレーキ油圧制御導管18とホイールシリンダ48FL及び48FRとの連通を遮断し且つホイールシリンダ48FL及び48FRと接続導管58FL及び58FRとを連通接続する第二の位置とに切替わるようになっている。
【0024】
切換弁44と左右後輪用制御弁28との間には左右後輪用のレギュレータ圧供給導管68が接続されており、制御弁28はそれぞれ後輪用のブレーキ油圧制御導管26と開閉弁60RL、60RRとを連通接続し且つ開閉弁60RL、60RRとレギュレータ圧供給導管68との連通を遮断する図示の第一の位置と、ブレーキ油圧制御導管26と開閉弁60RL、60RRとの連通を遮断し且つ開閉弁60RL、60RRとレギュレータ圧供給導管68とを連通接続する第二の位置とに切替わるようになっている。
【0025】
制御弁50FL、50FR、28はマスタシリンダ圧遮断弁として機能し、これらの制御弁が図示の第一の位置にあるときにはホイールシリンダ48FL、48FR、64RL、64RRが導管18、26と連通接続され、各ホイールシリンダへマスタシリンダ圧が供給されることにより、各輪の制動力が運転者によるブレーキペダル12の踏み込み量に応じて制御され、制御弁50FL、50FR、28が第二の位置にあるときには各ホイールシリンダはマスタシリンダ圧より遮断される。
【0026】
また切換弁44はホイールシリンダ48FL、48FR、64RL、64RRへ供給される油圧をアキュムレータ圧とレギュレータ圧との間にて切換える機能を果し、制御弁50FL、50FR、28が第二の位置に切換えられ且つ開閉弁54FL、54FR、60RL、60RR及び開閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが図示の位置にある状態にて切換弁44が図示の第一の位置に維持されるときには、ホイールシリンダ48FL、48FR、64RL、64RRへレギュレータ圧が供給されることにより各ホイールシリンダ内の圧力がレギュレータ圧にて制御され、これにより他の車輪の制動圧に拘わりなくその車輪の制動圧がブレーキペダル12の踏み込み量に対応するレギュレータ圧による増圧モードにて制御される。
【0027】
尚各弁がレギュレータ圧による増圧モードに切換え設定されても、ホイールシリンダ内の圧力がレギュレータ圧よりも高いときには、ホイールシリンダ内のオイルが逆流し、制御モードが増圧モードであるにも拘らず実際の制動圧は低下する。
【0028】
また制御弁50FL、50FR、28が第二の位置に切換えられ且つ開閉弁54FL、54FR、60RL、60RR及び開閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが図示の位置にある状態にて切換弁44が第二の位置に切換えられると、ホイールシリンダ48FL、48FR、64RL、64RRへアキュムレータ圧が供給されることにより各ホイールシリンダ内の圧力がレギュレータ圧よりも高いアキュムレータ圧にて制御され、これによりブレーキペダル12の踏み込み量及び他の車輪の制動圧に拘わりなくその車輪の制動圧がアキュームレータ圧による増圧モードにて制御される。
【0029】
更に制御弁50FL、50FR、28が第二の位置に切換えられた状態にて開閉弁54FL、54FR、60RL、60RRが第二の位置に切換えられ、開閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが図示の状態に制御されると、切換弁44の位置に拘らず各ホイールシリンダ内の圧力が保持され、制御弁50FL、50FR、28が第二の位置に切換えられた状態にて開閉弁54FL、54FR、60RL、60RR及び開閉弁56FL、56FR、62RL、62RRが第二の位置に切換えられると、切換弁44の位置に拘らず各ホイールシリンダ内の圧力が減圧され、これによりブレーキペダル12の踏み込み量及び他の車輪の制動圧に拘わりなくその車輪の制動圧が減圧モードにて制御される。
【0030】
かくして制動装置10は左右前輪の制動力を増減する前輪用ブレーキ油圧制御導管18、左右前輪用のブレーキ油圧制御装置20及び22等よりなる前輪のブレーキ系統と、左右後輪の制動力を増減する後輪用のブレーキ油圧制御導管26、制御弁28、ブレーキ油圧制御装置32及び34等よりなる後輪のブレーキ系統の2系統に構成されている。
【0031】
切換弁44、制御弁50FL、50FR、28、開閉弁54FL、54FR、60RL、60RR及び開閉弁56FL、56FR、62RL、62RR、は後に詳細に説明する如く電気式制御装置70により制御される。電気式制御装置70はマイクロコンピュータ72と駆動回路74とよりなっており、マイクロコンピュータ72は図1には詳細に示されていないが例えば中央処理ユニット(CPU)と、リードオンリメモリ(ROM)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のものであってよい。
【0032】
マイクロコンピュータ72の入出力ポート装置には車速センサ76より車速Vを示す信号、実質的に車体の重心に設けられた横加速度センサ78より車体の横加速度Gy を示す信号、ヨーレートセンサ80より車体のヨーレートγを示す信号、操舵角センサ82より操舵角θを示す信号、実質的に車体の重心に設けられた前後加速度センサ84より車体の前後加速度Gx を示す信号、車輪速センサ86FL〜86RRよりそれぞれ左右前輪及び左右後輪の車輪速(周速)Vwfl 、Vwfr 、Vwrl 、Vwrr を示す信号、圧力センサ88よりマスタシリンダ14内の圧力Pm を示す信号が入力されるようになっている。
【0033】
尚横加速度センサ78及びヨーレートセンサ80等は車輌の左旋回方向を正として横加速度等を検出し、前後加速度センサ84は車輌の加速方向を正として前後加速度を検出するようになっている。また圧力センサ88はマスタシリンダ14の後輪側の液圧室内の油圧を検出するよう、マスタシリンダ14とプロポーショナルバルブ24との間のブレーキ油圧制御導管26に設けられている。
【0034】
また図1には示されていないが、図示の実施形態の車輌にはABS装置が設けられており、このABS装置は運転者により制動操作が行われた場合に於いて各輪の車輪速度が推定車体速度に基づく基準車輪速度よりも低下したときに各輪の制動圧を増圧、保持、減圧する所謂ABS制御を行うようになっており、ABS制御が実行されているか否かを示す信号がマイクロコンピュータ72の入出力ポート装置に入力されるようになっている。
【0035】
マイクロコンピュータ72のROMは後述の如く図2〜図7の制御フロー及び図8〜図10のマップを記憶しており、CPUは上述の種々のセンサにより検出されたパラメータに基づき後述の如く種々の演算を行い、車輌の旋回挙動を判定するためのスピン状態量SS及びドリフトアウト状態量DSを求め、これらの状態量に基づき車輌の旋回挙動を推定し、その推定結果に基づき各輪の制動力を制御して旋回挙動を制御するようになっている。
【0036】
次に図2及び図3に示されたフローチャートを参照して車輌の旋回挙動制御ルーチンについて説明する。尚図2及び図3に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0037】
まずステップ10に於いては車速センサ76により検出された車速Vを示す信号等の読込みが行われ、ステップ20に於いては横加速度Gy と車速V及びヨーレートγの積V*γとの偏差Gy −V*γとして横加速度の偏差、即ち車輌の横すべり加速度Vydが演算され、ステップ30に於いては横すべり加速度Vydが積分されることにより車体の横すべり速度Vy が演算され、車体の前後速度Vx (=車速V)に対する車体の横すべり速度Vy の比Vy /Vx として車体のスリップ角βが演算される。
【0038】
ステップ40に於いてはK1 及びK2 をそれぞれ正の定数として車体のスリップ角β及び横すべり加速度Vydの線形和K1 *β+K2 *Vydとしてスピン量SVが演算され、ステップ50に於いてはヨーレートγの符号に基づき車輌の旋回方向が判定され、スピン状態量SSが車輌が左旋回のときにはSVとして、車輌が右旋回のときには−SVとして演算され、演算結果が負の値のときにはスピン状態量は0とされる。尚スピン量SVは車体のスリップ角β及びその微分値βd の線形和として演算されてもよい。
【0039】
ステップ60に於いてはKh をスタビリティファクタとして下記の数1に従って目標ヨーレートγc が演算されると共に、Tを時定数としsをラプラス演算子として下記の数2に従って基準ヨーレートγt が演算される。尚目標ヨーレートγc は動的なヨーレートを考慮すべく車輌の横加速度Gy を加味して演算されてもよい。
【0040】
【数1】
γc =V*θ/(1+Kh *V)*H
【数2】
γt =γc /(1+T*s)
【0041】
ステップ70に於いては下記の数3に従ってドリフトアウト量DVが演算される。尚ドリフトアウト量DVはHをホイールベースとして下記の数4に従って演算されてもよい。
【0042】
【数3】
DV=(γt −γ)
【数4】
DV=H*(γt −γ)/V
【0043】
ステップ80に於いてはヨーレートγの符号に基づき車輌の旋回方向が判定され、ドリフトアウト状態量DSが車輌が左旋回のときにはDVとして、車輌が右旋回のときには−DVとして演算され、演算結果が負の値のときにはドリフトアウト状態量は0とされる。
【0044】
ステップ90に於いてはスピン状態量SSに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより旋回外側前輪のスリップ率目標値Rssfoが演算され、ステップ100に於いてはドリフトアウト状態量DSに基づき図9に示されたグラフに対応するマップより車輌全体のスリップ率目標値Rsallが演算される。
【0045】
ステップ110に於いてはKsri を旋回内側後輪の分配率として下記の数5に従って旋回外側前輪、旋回内側前輪、旋回外側後輪、旋回内側後輪の目標スリップ率Rsfo 、Rsfi 、Rsro 、Rsri が演算される。
【数5】
Rsfo =Rssfo
Rsfi =0
Rsro =(Rsall−Rssfo)*(100−Ksri )/100
Rsri =(Rsall−Rssfo)*Ksri /100
【0046】
ステップ120に於いてはフラグF1 、F2 、F3 の少くとも一つが1であるか否かの判別、即ち前輪のブレーキ系統が失陥状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ130へ進み、否定判別が行われたときにはステップ120に於いて各輪の目標スリップ率Rsfo 、Rsfi 、Rsro 、Rsri の全てが0であるか否かの判別が行われる。ステップ120に於いて肯定判別が行われたときにはステップ130に於いてフラグFが0にリセットされた後ステップ10へ戻り、否定判別が行われたときにはステップ140に於いてフラグFが1にセットされる。
【0047】
ステップ150に於いてはヨーレートγの符号に基づき車輌の旋回方向が判定されることにより旋回内外輪が特定され、その特定結果に基づき各輪の最終目標スリップ率Rsi(i=fr、fl、rr、rl)が演算される。即ち最終目標スリップ率Rsiが車輌の左旋回の場合及び右旋回の場合についてそれぞれ下記の数6及び数7に従って求められる。
【0048】
【数6】
Rsfr =Rsfo
Rsfl =Rsfi
Rsrr =Rsro
Rsrl =Rsri
【数7】
Rsfr =Rsfi
Rsfl =Rsfo
Rsrr =Rsri
Rsrl =Rsro
【0049】
ステップ160に於いてはVb を基準車輪速度(旋回内側前輪の車輪速度)として下記の数8に従って旋回内側前輪以外の各輪の目標車輪速度Vwti が演算される。
【数8】
Vwti =Vb *(100−Rsi)/100
【0050】
ステップ170に於いてはVwid を各輪の車輪加速度(Vwiの微分値)とし、Ks を正の一定の係数として下記の数9に従って各輪の目標スリップ量SPi が演算され、ステップ180に於いては図10に示されたグラフに対応するマップより各輪のデューティ比Driが演算される。
【数9】
SPi =Vwi −Vwti +Ks *(Vwid −Gx )
【0051】
更にステップ190に於いては切換弁44が第二の位置に切換え設定されてアキュムレータ圧が導入されると共に、最終目標スリップRsiが0でない車輪に対応する各輪の制御弁28、50FR〜50RLに対し制御信号が出力されることによってその制御弁が第二の位置に切換え設定される。また各輪の開閉弁に対しデューティ比Driに対応する制御信号が出力されることにより、ホイールシリンダ48FR〜48RLに対するアキュームレータ圧の給排が制御され、これにより各輪の制動圧が制御される。
【0052】
この場合デューティ比Driが負の基準値と正の基準値との間の値であるときには上流側の開閉弁が第二の位置に切換え設定され且つ下流側の開閉弁が第一の位置に保持されることにより、対応するホイールシリンダ内の圧力が保持され、デューティ比が正の基準値以上のときには上流側及び下流側の開閉弁が図1に示された位置に制御されることにより、対応するホイールシリンダへアキュームレータ圧が供給されることによって該ホイールシリンダ内の圧力が増圧され、デューティ比が負の基準値以下であるときには上流側及び下流側の開閉弁が第二の位置に切換え設定されることにより、対応するホイールシリンダ内のブレーキオイルが低圧導管52へ排出され、これにより該ホイールシリンダ内の圧力が減圧される。
【0053】
尚ホイールシリンダ内の圧力が増圧されるときには上流側の開閉弁がデューティ比に応じて開閉され、ホイールシリンダ内の圧力が減圧されるときには下流側の開閉弁がデューティ比に応じて開閉される。これによりホイールシリンダ内の圧力の増減勾配はデューティ比の大きさが大きいほど大きい勾配となる。
【0054】
次に図4に示されたフローチャートを参照してフラグFa 、Fb 設定ルーチンについて説明する。尚図4に示されたフローチャートによる制御は所定時間毎の割り込みにより実行される(このことは後述の図5〜図7に示されたフローチャートによる制御についても同様である)。
【0055】
まずステップ210に於いてはマスタシリンダ圧Pm を示す信号等の読込みが行われ、ステップ220に於いてはマスタシリンダ圧Pm が基準値S1 (正の定数)を越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ240へ進み、否定判別が行われたときにはステップ230に於いてカウンタのカウント値C1 及びC2 が0にリセットされると共にフラッグFa 及びFb が0にリセットされる。
【0056】
ステップ240に於いては前輪の少なくとも一方がABS制御中であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ250に於いてフラグFが1であるか否かの判別、即ち制動力制御による挙動制御が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ260に於いて車速Vが基準値V1 (正の定数)以上であるか否かの判別が行われる。ステップ260に於いて肯定判別が行われたときにはステップ270へ進み、ステップ240又はステップ250に於いて肯定判別が行われ或いはステップ260に於いて否定判別が行われたときにはステップ230へ進む。
【0057】
ステップ270に於いてはマスタシリンダ圧Pm が基準値S2 (正の定数)以下であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ290へ進み、否定判別が行われたときにはステップ280に於いて車輌の前後加速度Gx がNを正の定数として−Nを越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ300へ進み、否定判別が行われたときにはステップ310へ進む。
【0058】
ステップ290に於いては前後加速度Gx がN1 及びN2 を正の定数として−(Pm −N1 )*N2 を越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ300に於いてカウント値C1 が1インクリメントされ、否定判別が行われたときにはステップ310に於いてカウント値C2 が1インクリメントされる。
【0059】
ステップ320に於いてはカウント値C1 が基準値H1 (正の一定の整数)を越えているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ360へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ330に於いてフラグFa が1にセットされると共にフラグFb が0にリセットされる。
【0060】
ステップ340に於いてはカウント値C2 が基準値H2 (正の一定の整数)を越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ350に於いてフラグFa が0にリセットされると共にフラグFb が1にセットされ、否定判別が行われたときにはステップ360に於いてフラグFa 及びFb が0にリセットされる。
【0061】
次に図5に示されたフローチャートを参照してフラグF1 設定ルーチンについて説明する。
【0062】
ステップ410に於いてはフラグFa が1であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ430へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ420に於いてカウンタのカウント値Cf が1インクリメントされた後ステップ470へ進む。
【0063】
ステップ430に於いてはフラグFb が1であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ470へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ440に於いてカウント値Cf が1デクリメントされた後ステップ450へ進む。ステップ450に於いてはカウント値Cf が負であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ470へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ460に於いてカウント値Cf が0にリセットされる。
【0064】
ステップ470に於いてはカウント値Cf が基準値H3 (正の一定の整数)を越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ480に於いてフラグF1 が1にセットされ、否定判別が行われたときにはステップ490に於いてフラグF1 が0にリセットされる。
【0065】
従ってこのルーチンに於いて、カウンタのカウント値Cf は、
「左右前輪が両方ともABS制御中ではなく且つ挙動制御が実行されておらず且つ車速が基準値V1 以上である」条件が成立している場合に於いて、
(1)「Gx >−(Pm −N1 )*N2 であり且つS1 <Pm ≦S2 」又は「Gx >−Nであり且つPm >S2 」がH1 に相当する時間継続したときにインクリメントされ、
(2)「Gx ≦−(Pm −N1 )*N2 であり且つS1 <Pm ≦S2 」又は「Gx ≦−Nであり且つPm >S2 」がH2 に相当する時間継続したときにデクリメントされ、フラグF1 はカウント値Cf がH3 を越えた場合に1になる。
【0066】
換言すれば、ABS制御も挙動制御も実行されない通常の制動中にマスタシリンダ圧Pm と車輌の前後加速度Gx との関係が前輪のブレーキ系統の失陥相当の減速度しか発生しない関係となり、しかもこの状態が所定時間継続した場合にフラグF1 が1とされ、前輪系統の失陥と判定される。
【0067】
次に図6に示されたフローチャートを参照してフラグF2 設定ルーチンについて説明する。
【0068】
このルーチンのステップ510、520、540はそれぞれ図4に示されたルーチンのステップ210、220、240と同様に実行され、ステップ520に於いて否定判別が行われたときにはステップ530に於いてカウンタのカウント値C3 が0にリセットされ、ステップ540に於いて肯定判別が行われたときにはステップ550に於いてフラグF2 が0にリセットされる。
【0069】
ステップ560に於いては後輪がABS制御されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ530へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ570に於いて車速Vが基準値V2 (正の定数)以上であるか否の判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ530へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ580ヘ進む。
【0070】
ステップ580〜600はそれぞれ図4に示されたルーチンのステップ270〜290と同様に実行され、ステップ590又は600に於いて否定判別が行われたときにはステップ530へ進み、これらのステップに於いて肯定判別が行われたときにはステップ610に於いてカウント値C3 が1インクリメントされる。ステップ620に於いてはカウント値C3 が基準値H3 (正の一定の整数)を越えているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ510へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ630に於いてフラグF2 が1にセットされる。
【0071】
従ってこのルーチンに於いては、
「左右前輪が両方ともABS制御中ではなく且つ後輪がABS制御中であり且つ挙動制御が実行されておらず且つ車速が基準値V2 以上である」条件が成立している場合に於いて、
「Gx >−(Pm −N1 )*N2 であり且つS1 <Pm ≦S2 」又は「Gx >−Nであり且つPm >S2 」がH3 に相当する時間継続したときにフラグF2 が1になる。
【0072】
換言すれば、後輪のABS制御中にマスタシリンダ圧Pm と車輌の前後加速度Gx との関係が前輪のブレーキ系統の失陥相当の減速度しか発生しない関係となると共に左右の前輪がABS制御されず、しかもこの状態が所定時間継続した場合にフラグF2 が1とされ、前輪系統の失陥と判定される。
【0073】
次に図7に示されたフローチャートを参照してフラグF3 設定ルーチンについて説明する。
【0074】
ステップ710及び720はそれぞれ図4に示されたルーチンのステップ210及び240と同様に実行され、ステップ720に於いて肯定判別が行われたときにはステップ730に於いてフラグF3 が0にリセットされる。ステップ740に於いてはマスタシリンダ圧Pm が基準値S3 (正の定数)を越えているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ750に於いてフラグFが1であるか否かの判別、即ち制動力制御による挙動制御が行われているか否かの判別が行われる。
【0075】
ステップ750に於いて肯定判別が行われたときにはステップ760に於いてカウント値C4 が1インクリメントされ、ステップ740又は750に於いて否定判別が行われたときにはステップ770に於いてカウント値C4 が0にリセットされる。ステップ780に於いてはカウント値C4 が基準値H4 (正の一定の整数)を越えているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ710へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ790に於いてフラグF3 が1にセットされる。
【0076】
従ってこのルーチンに於いては、「左右前輪が両方ともABS制御中ではなく且つ挙動制御が実行されており且つPm >S3 」条件が成立した場合にフラグF3 が1になる。
【0077】
換言すれば、挙動制御中に運転者により制動操作が行われマスタシリンダ圧Pm が所定値以上になっているにも拘らず前輪(特に旋回内輪)がABS制御されない場合にフラグF3 が1とされ、前輪系統の失陥と判定される。
【0078】
かくして図示の実施形態に於いては、ステップ20に於いて車体の横すべり加速度Vydが演算され、ステップ30に於いて車体のスリップ角βが演算され、ステップ40に於いてこれらの線形和としてスピン量SVが演算され、ステップ50に於いてスピン量SVが絶対値化された値としてスピン状態量SSが演算される。
【0079】
またステップ60に於いて基準ヨーレートγt が演算され、ステップ70に於いてドリフトアウト量DVが演算され、ステップ80に於いてドリフトアウトDVが絶対値化された値としてドリフトアウト状態量DSが演算され、ステップ90に於いて旋回外側前輪のスリップ率の目標値Rssfoが演算され、ステップ100に於いて車輌全体の目標スリップ率Rsallが演算され、ステップ110に於いて各輪の目標スリップ率Rsfo 、Rsfi 、Rsro 、Rsri が演算される。
【0080】
更にステップ120に於いてフラグF1 、F2 、F3 の少くとも一つが1であるか否かの判別、即ち前輪のブレーキ系統が失陥状態にあるか否かの判別が行われ、ステップ130に於いて全ての車輪の目標スリップ率が0であるか否かの判別、即ち挙動制御が不要であるか否かの判別が行われる。
【0081】
車輌の旋回挙動が安定な状態にあるときには、ステップ130に於いて肯定判別が行われることによりステップ135に於いてフラグFが0にリセットされた後ステップ10へ戻り、従ってこの場合にはステップ150〜190による挙動制御は実行されず、これにより各車輪の制動圧は運転者によるブレーキペダル12の踏込み量に応じて制御される。
【0082】
また車輌の旋回挙動が不安定な状態にあるときには、ステップ130に於いて否定判別が行われ、ステップ140に於いてフラグFが1にセットされ、ステップ150に於いて各輪の最終目標スリップ率Rsi(i=fr、fl、rr、rl)が演算され、ステップ160に於いて旋回内側前輪の車輪速度を基準車輪速度Vbとして旋回内側前輪以外の各輪の目標車輪速度Vwti が演算され、ステップ170〜190に於いて各輪の車輪速度が目標車輪速度Vwti になるようそれらの制動力が制御され、これにより車輌の旋回挙動が安定化される。
【0083】
換言すれば、スピン状態量及びドリフトアウト状態量の両方に基づき各輪の制動力が制御され、これによりスピン状態及びドリフトアウト状態の何れの場合にもそれらの不安定な挙動が低減される。特にスピン状態量に基づいて演算される後輪の目標スリップ率はマイナスの値になるので、車輌がスピン状態になると、後輪の制動力が低減されることによって後輪のコーナリングフォースが増大され、これによりスピンが抑制される。
【0084】
特にスピン抑制制御に於ては、旋回外側前輪の制動力を増大させてスピン状態を抑制するための旋回外側前輪の目標スリップ率R sfo が演算されると共に、後輪の制動力を旋回外側前輪の目標スリップ率に応じて低下させてスピン状態を抑制するための後輪の目標スリップ率Rsrr、Rsrlが演算され、旋回内側前輪の車輪速度Vbを基準車輪速度として目標スリップ率R sfo に基づき旋回外側前輪の目標車輪速度が演算されると共に、目標スリップ率Rsrr、Rsrlに基づき後輪の目標車輪速度Vwtrr、Vwtrlが演算され、旋回外側前輪及び後輪の車輪速度がそれぞれ対応する目標車輪速度になるよう旋回外側前輪及び後輪の制動が制御されるので、前輪系統が失陥し前輪の制動力が発生せず、旋回内側前輪の制動力が運転者の制動意志を反映しなくなると共に旋回内側前輪の車輪速度が高くなり、従って旋回内側前輪の車輪速度V b を基準車輪速度として演算される後輪の目標車輪速度も高い値になり、そのため前輪系統が失陥した状況に於てスピン抑制制御が実行されると、後輪の目標車輪速度が高くなることに起因して後輪の制動力が低くなって運転者が期待する減速度よりも小さい減速度しか得られなくなると共に運転者の制動意志を反映した制動力を発生できなくなってしまう。
図示の実施形態によれば、前輪のブレーキ系統が失陥状態になると、ステップ110に於いて肯定判別が行われ、これによりステップ130に於いてフラグFが0にリセットされると共に、ステップ140〜190、即ち挙動制御が実行されなくなり、従って挙動制御による後輪の制動力の低減が行われなくなると共に後輪のホイールシリンダがマスタシリンダと接続された状態に維持されるので、運転者がブレーキペダルを踏み込んでも期待した減速度が得られなくなること及び運転者の制動意志を反映した制動力を発生できなくなることが確実に防止される。
【0085】
更に図示の実施形態によれば、前輪のブレーキ系統が失陥しているか否かの判別は図5乃至図7に示されたルーチンに従って三つの態様にて判定され、ステップ120に於いてこれら三つの態様のうち何れか一つの態様により前輪系統の失陥が判定されると挙動制御の実行が禁止されるので、三つの態様のうちの何れか一つのみによる場合に比して前輪系統の失陥が正確に判定される。
【0086】
以上に於ては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0087】
例えば上述の実施形態に於いては、各輪の制動力は車輪速フィードバックにより制御されるようになっているが、各輪の制動力はホイールシリンダ内の圧力についての圧力フィードバックにより制御されてもよい。
【0088】
また本発明の挙動制御装置はABS装置が搭載されていない車輌に適用されてもよく、その場合には図示の実施形態に於ける各ルーチンのABS制御に関するステップが省略される。
【0089】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、前輪系統の失陥状態が検出されたときには車輌がスピン状態にあると判定されてもスピン抑制制御の実行が禁止され、これにより後輪の目標車輪速度が高くなることに起因して後輪の制動力が低下することが防止されるので、前輪の制動力が発生しない状況に於いて後輪の制動力が大きく不足することを回避し、また後輪のホイールシリンダがマスタシリンダと遮断されることなくマスタシリンダと接続された状態に維持し、これにより運転者が期待する減速度よりも小さい減速度しか得られなくなること及び運転者の制動意志を反映した制動力を発生できなくなることを確実に防止することができる。
【0090】
また請求項2の構成によれば、検出手段はブレーキ踏力に対する車輌の減速度が所定値よりも小さいときに前輪系統の失陥状態と判定するので、前輪系統に失陥状態が生じたときにはその失陥状態を確実に検出することができる。
【0091】
また請求項3の構成によれば、検出手段はスピン抑制制御実行中であり且つ制動装置のマスタシリンダ圧が所定値以上であり且つ前輪がABS制御中でないときに前輪系統の失陥状態と判定するので、この場合にも前輪系統に失陥状態が生じたときにはその失陥状態を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による挙動制御装置の一つの実施形態の油圧回路及び電気式制御装置を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に於ける挙動制御ルーチンの前半を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に於ける挙動制御ルーチンの後半を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に於けるフラグFa 及びFb の設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】実施形態に於けるフラグF1 設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】実施形態に於けるフラグF2 設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】実施形態に於けるフラグF3 設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】スピン状態量SSと旋回外側前輪のスリップ率目標値Rssfoとの間の関係を示すグラフである。
【図9】ドリフトアウト状態量DSと車輌全体のスリップ率目標値Rsallとの間の関係を示すグラフである。
【図10】各輪の目標スリップ量SPi とデューティ比Driとの間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…制動装置
14…マスタシリンダ
16…ハイドロブースタ
20、22、32、34…ブレーキ油圧制御装置
28、50FL、50FR…制御弁
44…切換弁
44FL、44FR、64RL、64RR…ホイールシリンダ
70…電気式制御装置
76…車速センサ
78…横加速度センサ
80…ヨーレートセンサ
82…操舵角センサ
84…前後加速度センサ
86FL〜86RR…車輪速センサ
88…圧力センサ

Claims (3)

  1. ブレーキ系統が前輪系統及び後輪系統の2系統に構成された制動装置を有し、車輌がスピン状態にあるときには旋回内側前輪のホイールシリンダをマスタシリンダに接続した状態に維持すると共に旋回外側前輪及び後輪のホイールシリンダをマスタシリンダと遮断しアキュムレータ圧を使用して旋回外側前輪及び後輪の制動圧を制御することによりスピン抑制制御を実行する車輌の挙動制御装置に於いて、車輌のスピン状態を判定し、車輌がスピン状態にあると判定されたときには旋回外側前輪の制動力を増大させてスピン状態を抑制するための旋回外側前輪の目標スリップ率を求めると共に、後輪の制動力を旋回外側前輪の目標スリップ率に応じて低下させてスピン状態を抑制するための後輪の目標スリップ率を求め、旋回内側前輪の車輪速度を基準車輪速度としてそれぞれ旋回外側前輪及び後輪の目標スリップ率に基づき旋回外側前輪及び後輪の目標車輪速度を求め、旋回外側前輪及び後輪の車輪速度が前記目標車輪速度になるよう旋回外側前輪及び後輪の制動圧を制御することにより前記スピン抑制制御を実行する制御手段と、前記前輪系統の失陥状態を検出する検出手段と、前記前輪系統の失陥状態が検出されたときには車輌がスピン状態にあると判定されても前記スピン抑制制御の実行を禁止し後輪のホイールシリンダをマスタシリンダに接続した状態に維持する手段とを有していることを特徴とする車輌の挙動制御装置。
  2. 請求項1の車輌の挙動制御装置に於て、前記検出手段はブレーキ踏力に対する前記車輌の減速度が所定値よりも小さいときに前記前輪系統の失陥状態と判定するよう構成されていることを特徴とする車輌の挙動制御装置。
  3. 請求項1の車輌の挙動制御装置に於て、前記車輌はABS装置を有し、前記検出手段は前記スピン抑制制御実行中であり且つ前記制動装置のマスタシリンダ圧が所定値以上であり且つ前輪がABS制御中でないときに前記前輪系統の失陥状態と判定するよう構成されていることを特徴とする車輌の挙動制御装置。
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