JP3570274B2 - 空燃比センサの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空燃比センサの制御装置に関し、特に、内燃機関の排気空燃比を検出する酸素濃度検出素子のような空燃比センサ素子のインピーダンスを精度よく短時間に検出し、検出したインピーダンスに基づき、空燃比センサの故障や活性状態の判定および空燃比センサの出力値からの空燃比の算出を正確に行う空燃比センサの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の機関の空燃比制御においては、機関の排気系に空燃比センサと触媒とを配設し、触媒により排気ガス中の有害成分(HC、CO、NOx 等)を最大限浄化するため、空燃比センサにより検出される機関の排気空燃比が目標空燃比、例えば理論空燃比になるようにフィードバック制御されている。この空燃比センサとして、機関から排出される排気ガス中に含まれる酸素濃度に比例して限界電流を出力する限界電流式の酸素濃度検出素子が用いられている。限界電流式酸素濃度検出素子は、酸素濃度から機関の排気空燃比を広域かつリニアに検出するものであり、空燃比制御精度を向上させたり、リッチ〜理論空燃比(ストイキ)〜リーンの広域空燃比の間で機関の排気空燃比を目標空燃比にするよう制御するために有用である。
【0003】
上記酸素濃度検出素子は、空燃比の検出精度を維持するため活性状態に保たれることが不可欠であり、通常、機関始動時から同素子に付設されたヒータを通電することにより同素子を加熱し、早期活性化させてその活性状態を維持するようヒータの通電制御を行っている。
図45は酸素濃度検出素子の温度とインピーダンスの相関関係を示す図である。上記酸素濃度検出素子(以下、単に素子と記す)の温度とインピーダンスとの間には図45に太線で示すような相関関係、すなわち素子温度の上昇に連れて素子のインピーダンスが減衰するという関係がある。この関係に着目し、上記のようなヒータの通電制御においては、素子のインピーダンスを検出して素子温度を導き出し、その素子温度が所望の活性化温度、例えば700°Cになるようにフィードバック制御されている。例えば、図45の太線に示すように、素子のインピーダンスZacが、初期制御素子温700°Cに相当する素子のインピーダンス30Ω以上とき(Zac≧30)、すなわち素子温が700°C以下のとき、ヒータに通電し、Zacが30Ωより小のとき(Zac<30)、すなわち素子温が700°Cを超えるとき、ヒータの通電を解除する制御を行うことで、素子の温度を活性化温度700°C以上に保ち、素子の活性状態を維持している。また、ヒータ通電時は、素子のインピーダンスとその目標値との偏差(Zac−30)をなくすために必要な通電量を求め、その通電量を供給するようデューティ制御を行っている。
【0004】
従来技術によれば、例えば特開平9−292364号公報に開示されているように、上記酸素濃度検出素子のインピーダンスを検出するに際し、同素子温度を検出するために好ましい1つの周波数の交流電圧を印加し、そのインピーダンスの検出を行っている。この周波数の電圧の印加により、同素子の電解質部の抵抗を測定することはできる。しかしながら、この電解質部の抵抗は経年変化により顕著に変化しないので同素子のインピーダンスも大きく変化せず、図45の太線で示す同素子の温度とインピーダンスの関係は経年変化に関わらず略維持されるものと考えられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記酸素濃度検出素子が耐久し経時劣化した後では、同素子の温度とインピーダンスの相関関係は図45において破線で示すようになる。
ここで、空燃比センサ素子の構造、等価回路およびインピーダンス特性について以下に説明する。
図46は空燃比センサ素子の構造を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は電解質部の部分拡大図である。
【0006】
図47は空燃比センサ素子の等価回路を示す図である。図47において、R1は例えばジルコニアからなる電解質のバルク抵抗(図46の grain部)、R2は電解質の粒界抵抗(図46の grain boundary 部)、R3は例えば白金からなる電極の界面抵抗を示し、C2は電解質の粒界の容量成分、C3は電極界面の容量成分を示し、Z(W)は交流による分極が行われると周期的に界面濃度が変化するために生じるインピーダンス分(ワールブルインピーダンス)を示す。
【0007】
図48は空燃比センサ素子のインピーダンス特性を示す図である。横軸はインピーダンスZの実部Z’ 、縦軸は虚部Z” を示す。空燃比センサ素子のインピーダンスZはZ=Z’+jZ”で表される。図48から、電極界面抵抗R3は、周波数が1〜10KHzに近づくにつれて0に収束することが判る。また、破線で示す曲線は、空燃比センサ素子が劣化したときに変化したインピーダンスを示す。この破線で示されるインピーダンス特性の部分からR3が経年変化により特に変化することが判る。また、空燃比センサ素子により検出されるガスの酸素濃度が急激に変化するときもインピーダンス特性は破線で示すように変化する。
【0008】
図49は空燃比センサ素子への交流印加電圧の周波数と同素子インピーダンスとの関係を示す図である。図49は図48について横軸を周波数fに、縦軸をインピーダンスZacに変換したものである。図48から、周波数1〜10KHz付近〜10MHzではインピーダンスZacが所定値(R1+R2)に収束し、10MHzより高周波側ではインピーダンスZacは減少し、R1に収束することが判る。このことから、インピーダンスZacを安定した状態で検出するためには、Zacが周波数によらず一定値となる1〜10KHz付近〜10MHz付近が望ましいことが判る。また、破線で示す曲線は、経年変化により特に変化するR3を測定可能な低い周波数(1KHz未満)の交流電圧を印加したときのインピーダンスを示す。この低周波インピーダンスから空燃比センサ素子の劣化の度合いが判る。
【0009】
ところで、図45に破線で示すように、空燃比センサ素子である酸素濃度検出素子の温度と1〜10KHz付近〜10MHzのインピーダンスの相関関係は、素子劣化後において新品時と比して大きく変化する。
【0010】
しかしながら、特開平9−292364号公報によれば、空燃比センサ素子のR1+R2の抵抗分のみを測定しているので、空燃比センサ素子の特性変化を捕らえることができない。したがって、素子温制御目標値としての素子インピーダンスZacを30Ωに維持したままヒータの通電制御を継続すると素子劣化後の制御素子温度は徐々に増大し、例えば800°Cに設定されてしまうので、素子は過加熱され、劣化が促進され、寿命が低下するという問題が生じる。
【0011】
また、図48、図49に破線で示すように、空燃比センサに1〜10KHz付近までの低周波数の交流電圧を印加したとき検出される低周波インピーダンスは、素子劣化後において新品時と比して大きく変化する。
しかしながら、特開平9−292364号公報によれば、空燃比センサ素子のR1+R2の抵抗分のみを測定しているので、空燃比センサ素子の特性変化を捕らえることができない。したがって、素子温あるいは素子特性が変化し空燃比センサの出力値からの空燃比の算出が不正確になり、機関のエミッションが悪化するという問題が生じる。あるいは、このような素子温あるいは素子特性が変化している状態で検出された素子インピーダンスに基づき空燃比センサの故障や活性状態の判定を行うので、これらの正確な判定ができないという問題がある。
【0012】
本願出願人は、平成10年12月28日に出願した特許出願(特願平10−374543)に記載の発明により上記問題を解決する技術を提案している。特願平10−374543に記載の発明は、空燃比センサ素子に複数、例えば高周波数と低周波数の2つの周波数の交流電圧を印加し、各周波数に対する交流インピーダンスを検出し、検出した高周波数インピーダンスと低周波数インピーダンスの差に基づき、素子温制御目標値を変更し、素子劣化後の制御素子温度を700°Cに維持することにより、素子の過加熱や劣化を防止し、素子の長寿命化を実現するとともに、上記インピーダンス差に基づき、空燃比センサの出力補正および空燃比センサの故障や活性状態の判定を行うものである。
【0013】
しかしながら、上記特願平10−374543に記載の発明は、空燃比センサ素子の特性変化を考慮しているものの、劣化後のセンサ素子の出力特性およびセンサ素子が新品時に作成したマップ等を用いて、空燃比センサの出力値から空燃比の算出を行うとともに空燃比センサの故障や活性状態の判定を行っているので、空燃比センサ素子の特性変化を正確に検出することができず、高精度な空燃比センサの制御ができず、空燃比センサの出力値から正確な空燃比が得られず、かつ空燃比センサの故障や活性状態の判定も正確に行えないという問題がある。
また、上記特願平10−374543に記載の発明は、空燃比センサ素子の温度をセンサ素子の活性状態を維持する一定、例えば700°Cに維持しているので、センサ素子の劣化後の特性、例えばセンサ素子の出力特性は新品時の特性から変化し、それゆえ空燃比センサの出力値から正確な空燃比が得られないという問題がある。
【0014】
それゆえ、本発明は上記問題を解決し、空燃比センサ素子の特性変化を正確に検出することにより、空燃比センサの出力値から空燃比を高精度に検出し、かつ空燃比センサの故障や活性状態の判定をより正確に行う空燃比センサの制御装置を提供することを目的とする。
また、本発明は空燃比センサの出力特性が経年変化による影響を受けないように空燃比センサの出力特性を一定に維持することにより、空燃比センサの出力値から高精度に空燃比を検出する空燃比センサの制御装置を提供することを他の目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記問題を解決する本発明による空燃比センサの制御装置は、酸素濃度検出素子に電圧を印加することにより被検出ガス中の酸素濃度に対応した電流を該酸素濃度検出素子から検出する空燃比センサの制御装置において、
前記酸素濃度検出素子に複数の周波数の交流電圧を印加し、該周波数の各々に対する該酸素濃度検出素子の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された高周波数側の高周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の素子温度を目標温度に調整する温度調整手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された低周波数側の低周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の特性変化を検出する特性変化検出手段と、
を備え、
前記特性変化検出手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記酸素濃度検出素子の出力値を補正する出力値補正手段を備える、ことを特徴とする。
上記構成により、空燃比センサ素子の劣化に応じたセンサ素子の特性変化を正確に検出する。
【0016】
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記特性変化検出手段は、前記酸素濃度検出素子の故障を判定する故障判定手段を備える。
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記故障判定手段は、前記酸素濃度検出素子の故障を判定する故障判定値を前記高周波インピーダンスに応じて設定する。
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記故障判定手段により前記酸素濃度検出素子が故障したと判定されたとき、その故障を警報する警報手段を備える。
【0017】
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記特性変化検出手段は、前記酸素濃度検出素子の出力値を補正する出力値補正手段を備える。
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記出力値補正手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記酸素濃度検出素子の出力値を補正する。
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記出力値補正手段は、前記低周波インピーダンスの初期値と学習値とに基づいて前記酸素濃度検出素子の出力値を補正する補正係数を算出する。
【0018】
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記温度調整手段は、前記高周波インピーダンスと前記酸素濃度検出素子の目標温度とに基づいて、該素子に付設されたヒータを通電することにより該素子を加熱し該素子の温度を制御する。
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記温度調整手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記目標温度を変更する。
【0019】
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記酸素濃度検出素子の温度Tが、前記低周波インピーダンスから前記被検出ガスの空燃比を検出し得る例えば500°Cの第1所定温度から前記酸素濃度検出素子の活性状態を判定する例えば700°Cの第2所定温度に至るまでの第1温度範囲(500°C≦T<700°C)では前記低周波インピーダンスに基づき前記空燃比を算出し、前記酸素濃度検出素子の温度が前記第2所定温度以上の第2温度範囲(T≧700°C)では前記高周波インピーダンスに基づき前記空燃比を算出する空燃比算出手段を、備える。
上記構成により、空燃比センサの出力信号を空燃比センサ素子の活性前の低温から空燃比フィードバック制御に使用できる。
本発明はまた、上記空燃比センサの制御装置において、前記空燃比算出手段により算出された空燃比をフィードバックして前記酸素濃度検出素子の出力値を用いて空燃比を制御する機関の空燃比制御手段を備え、
前記空燃比制御手段は、前記第1の温度範囲では前記第2の温度範囲より低い空燃比フィードバック制御ゲインを有する。
上記構成により、空燃比センサの活性状態に応じて空燃比フィードバック制御ゲインが選択され、空燃比センサ素子の活性/非活性に応じた空燃比フィードバック制御が行われる。
前記問題を解決する本発明による空燃比センサの制御装置は、酸素濃度検出素子に電圧を印加することにより被検出ガス中の酸素濃度に対応した電流を該酸素濃度検出素子から検出する空燃比センサの制御装置において、
前記酸素濃度検出素子に複数の周波数の交流電圧を印加し、該周波数の各々に対する該酸素濃度検出素子の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された高周波数側の高周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の素子温度を目標温度に調整する温度調整手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された低周波数側の低周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の特性変化を検出する特性変化検出手段と、
を備え、
前記温度調整手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記目標温度を変更する、
ことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明による空燃比センサ制御装置の一実施形態の概略構成図である。図1以降、同一のものは同一符号で示す。図示しない内燃機関の排気通路に配設され機関の排気空燃比を検出する空燃比センサ1は、空燃比センサ素子(以下、センサ素子と記す)2とヒータ4とからなり、センサ素子2には空燃比センサ回路(以下、センサ回路と記す)3から電圧が印加され、ヒータ2にはバッテリ5からヒータ制御回路6の制御にしたがって電力が供給される。センサ回路3はマイクロコンピュータからなる空燃比制御ユニット(A/FCU)10からアナログの印加電圧をローパスフィルタ(LPF)7を介して受けセンサ素子2に印加する。
【0021】
A/FCU10はセンサ回路3、ヒータ制御回路6およびLPF7と共に電子制御ユニット(ECU)100の一部をなし、後述の処理にしたがって算出したデジタルデータを内部に設けられたD/A変換器により矩形状のアナログ電圧に変換した後LPF7を介してセンサ回路3へ出力する。LPF7は矩形状のアナログ電圧信号の高周波成分を除去したなまし信号を出力し、高周波ノイズによるセンサ素子2の出力電流の検出エラーを防止している。このなまし信号の電圧のセンサ素子2への印加に伴いA/FCU10は被検出ガス中、すなわち排気ガス中の酸素濃度に比例して変化するセンサ素子2を流れる電流およびその時のセンサ素子2への印加電圧を検出する。A/FCU10はこれらの電流および電圧を検出するため内部に設けられたそれぞれのA/D変換器によりセンサ回路3からセンサ素子2に流れる電流に相当するアナログ電圧およびセンサ素子2への印加電圧を受けデジタルデータに変換してこれらのデジタルデータを後述する処理に使用する。
【0022】
LPF7はフィルタ定数を切換える機能を有する。空燃比制御ユニット(A/FCU)10はマイクロコンピュータ11、D/A変換器12およびA/D変換器13〜16を有する。マイクロコンピュータ11はセンサ素子2に印加する交流電圧の周波数に応じてLPF7のフィルタ定数を切換え、センサ素子2へ印加する電圧およびセンサ素子から出力される電流から、センサ素子のインピーダンスを高精度に検出する処理を実行する。
【0023】
空燃比センサ1はセンサ素子2が活性状態にならないとその出力を空燃比制御に使用できない。このため、A/FCU10は機関始動時にバッテリ5からセンサ素子2に内蔵されたヒータ4へ電力供給してヒータ4を通電し、センサ素子2の早期活性化を行い、センサ素子2が活性化された後はその活性状態を維持するようヒータ4へ電力供給する。
【0024】
しかるに、センサ素子2の抵抗がセンサ素子2の温度に依存すること、すなわちセンサ素子温度の増大に連れて減衰することに着目し、センサ素子2の抵抗がセンサ素子2の活性状態を維持する温度に相当する抵抗値、例えば30Ωとなるようヒータ4へ電力供給することによりセンサ素子2の温度を目標温度、例えば700°Cに維持する制御が行われている。また、空燃比制御ユニット(A/FCU)10は内部に設けられたA/D変換器によりセンサ素子2を加熱するヒータ制御回路6からヒータ4の電圧と電流に相当するアナログ電圧を受けデジタルデータに変換してこのデジタルデータを後述する処理に使用する。例えば、ヒータ4の抵抗値を算出し、この抵抗値に基づき機関の運転状態に応じた電力供給をヒータ4に行うとともにヒータ4の過昇温(OT)を防止するようヒータ4の温度制御を行う。
【0025】
空燃比制御ユニット(A/FCU)10は、例えば図示しない双方向性バスにより相互に接続されたCPU、ROM、RAM、B(バッテリバックアップ).RAM、入力ポート、出力ポート、A/D変換器およびD/A変換器を具備し、後述する本発明の空燃比センサ1の制御を行う。
図2は空燃比センサの入出力信号を示す図であり、(A)は空燃比センサへ印加する入力電圧の波形を示す図であり、(B)は空燃比センサから検出される出力電流の波形を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。図2の(A)に示すように、空燃比センサに印加する入力電圧Vmとして、常時直流電圧0.3Vが印加されている。センサ素子のインピーダンスを測定するため、後述するルーチンの実行により、空燃比センサに±0.2Vの第1周波数のパルス電圧が上記直流電圧0.3Vに重畳して印加される。
【0026】
一方、図2の(B)に示すように、空燃比センサから検出される出力電流Imは、空燃比センサに直流電圧0.3Vのみを印加している間はその時々の被測定ガスの酸素濃度に応じた値を示すが、空燃比センサに上記パルス電圧±0.2Vを直流電圧0.3Vに重畳して印加すると印加直前の値を変化させる。このときの空燃比センサへの印加電圧および空燃比センサからの出力電流の変化を検出してセンサ素子のインピーダンスを算出する。この空燃比センサのセンサ素子のインピーダンス特性については図48および図49に示す通りである。
【0027】
図3は空燃比センサの電圧−電流特性を示す図である。横軸に空燃比センサへの印加電圧V、縦軸に空燃比センサの出力電流Iを示す。図3から判るように、印加電圧Vと出力電流Iとは略比例関係にあり、空燃比がリーンであれば正側に、空燃比がリッチであれば負側へ電流値が変化する(図3に1点鎖線で示す特性線L1を参照)。つまり、空燃比がリーン側になる程限界電流は増大し、空燃比がリッチ側になる程限界電流は減少する。また、出力電流Iが0mAのとき、空燃比は理論空燃比(=14.5)になる。
【0028】
図4は図1における空燃比制御ユニット10の説明図である。以下、図1と図4を相互に参照しつつ説明する。空燃比制御ユニット10は、マイクロコンピュータ11、D/A変換器12およびA/D変換器13〜16を有する。マイクロコンピュータ11は、双方向性バス21により相互に接続されたCPU22、ROM23、RAM24、B.(バッテリバックアップ)RAM25、入力ポート26および出力ポート27を具備し、後述する本発明の空燃比センサの制御を行う。
【0029】
D/A変換器12は出力ポート27に接続されCPU22により演算されたデジタルデータをアナログ電圧に変換する。A/D変換器13、14はそれぞれ入力ポート26に接続され、センサ回路3に印加されたアナログ電圧、センサ回路3におけるA/Fセンサ電流検出回路により検出された電流に比例するアナログ電圧をそれぞれデジタルデータに変換する。
【0030】
同様に、A/D変換器15、16はヒータ制御回路6を介してヒータ4の電圧、電流をデジタルデータに変換する。CPU22はこれらデジタルデータをセンサ素子2の電圧値、電流値およびヒータ4の電圧値、電流値として読取る。また、出力ポート27からLPF7へはLPF7のフィルタ定数を切換える信号が出力され、出力ポート27からヒータ制御回路6へはヒータ4への電力供給量を制御するDUTY信号が出力される。
【0031】
図5は図1におけるLPF7の説明図である。A/FCU10におけるマイクロコンピュータ11からセンサ回路3への印加電圧を変更する指令がD/A変換器12に出力され、D/A変換器12から矩形状パルスが出力される。LPF7はこれを受けて高周波成分を除去したなまし信号の電圧を出力しセンサ回路3へ印加する。LPF7は、抵抗31、32、コンデンサ33、34、35、演算増幅器(OPアンプ)36および電界効果トランジスタ(FET)37からなる。FET37にはマイクロコンピュータ11から低周波時にオンとし高周波時にオフとする信号が送られ、これによりLPF7のフィルタ定数(抵抗31、32の値とコンデンサ33〜35の容量で定まる時定数)が第1(高周波数)交流電圧印加時に時定数小となり第2(低周波数)交流電圧印加時に時定数大となるように切換えられる。
【0032】
図6は図1における空燃比センサ回路3の説明図である。センサ回路3は大別して基準電圧回路41、第1電圧供給回路42、第2電圧供給回路43および電流検出回路44からなる。基準電圧回路41は、定電圧VDCを抵抗45、46で分圧した電圧Va 、例えば0.6Vを基準電圧とする。第1電圧供給回路42は、電圧フォロアとして構成されA/Fセンサ1の一方の端子47に基準電圧Va を供給する。第2電圧供給回路43は、LPF7に接続され、第1と同様に電圧フォロアとして構成されA/Fセンサ1のもう一方の端子48にLPF7の出力電圧Vc (0.3±0.2(V))を供給する。LPF7の出力電圧Vc は、通常0.3(V)であるが、マイクロコンピュータ11によりA/Fセンサ1の素子インピーダンスを測定する際に±0.2(V)が0.3(V)に重畳されて出力され、それゆえA/Fセンサ1には0.1〜0.5(V)の電圧が印加されることになる。電流検出回路44は、抵抗49からなり、抵抗49の両端電圧(|Vb −Va |)をA/D変換器13を介して読取ることによりA/Fセンサ1に流れる電流を検出する。
【0033】
次に、図1に示す本発明の一実施形態に係る空燃比センサ制御装置によるセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンについて以下に詳細に説明する。
図7は本発明の第1形態に係るセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンの前半フローチャートであり、図8〜図13は同ルーチンの後半フローチャートである。より詳しくは、図8はセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンにおける第1(高)周波数重畳処理のフローチャートであり、図9と図10は第1周波数重畳処理を遂行するために必要な割込処理ルーチンのフローチャートであり、図11はセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンにおける第2(低)周波数重畳処理のフローチャートであり、図12と図13は第2周波数重畳処理を遂行するために必要な割込処理ルーチンのフローチャートである。図7、図8および図11に示すルーチンは、所定の周期、例えば100μsec 毎に実行される。
【0034】
図14は本発明の第1形態に係るセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンを説明するタイムチャートである。横軸は時間を示す。上段はセンサ素子2への印加電圧を示し、下段はLPF7のフィルタ定数の設定を切換えるLPF切換信号のオンオフ状態を示す。センサ素子2に流れる電流変化も上記印加電圧変化と略同様である。図14のタイムチャートに示す本発明の第1形態に係るセンサ素子2のインピーダンスの算出は次の様に行われる。通常、センサ素子2の電極間には0.3Vの直流電圧が印加されており、128ms毎に第1の周波数(高周波数)例えば2.5KHz の高周波パルスをセンサ素子2に印加し、高周波パルスの印加後64ms経過する毎に第1の周波数(低周波数)例えば500Hz の低周波パルスをセンサ素子2に印加する。第1(高周波)インピーダンスZac1 は高周波パルス印加後、例えば85μs経過後にセンサ素子2を流れる電流Im1を検出してセンサ素子印加電圧の増分ΔVm(0.3−0.1=0.2(V))と電流の増分ΔIm(Im1−Ims)から次式により算出する。
Zac1 =ΔVm/ΔIm=0.2/(Im1−Ims)
ここで、Imsは4ms毎に検出されるセンサ素子の限界電流である。
【0035】
第2(低周波)インピーダンスZac2 は低周波パルス印加後、例えば0.95ms経過後にセンサ素子2を流れる電流Im2を検出してセンサ素子印加電圧の増分ΔVm(0.3−0.1=0.2(V))と電流の増分ΔIm(Im2−Ims)から次式により算出する。
Zac2 =ΔVm/ΔIm=0.2/(Im2−Ims)
LPF切換信号のオンオフタイミングは、高周波パルス印加後、例えば500μs経過後にオンとされ、高周波パルス印加後64ms経過後に低周波パルスが印加された後3ms経過後にオフとされ、低周波パルスの周期2msとその収束時間1msを含めた低周波パルスの印加時間帯はフィルタ定数が大とされる。
上述のタイムチャートにしたがったセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンを図7〜図13を用いて以下に詳細に説明する。
【0036】
先ず、ステップ701では、イグニッションスイッチIGSW(図示せず)がオンかオフかを判別し、IGSWがオンのときはステップ702へ進み、IGSWがオフのときは本ルーチンを終了する。ステップ702では、空燃比センサ1にVm=0.3Vの直流電圧がすでに印加されているか否かを判別し、その判別結果がYESのときはステップ703へ進み、その判別結果がNOのときはステップ704へ進む。ステップ704では空燃比センサ1に0.3Vの直流電圧を印加する。
ステップ703では、Vm の印加から500μsが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのときはステップ705に進み、その判別結果がNOのときはステップ706に進む。ステップ705ではマイクロコンピュータ11からLPF7にフィルタ定数を増大する切換え信号を出力する。
【0037】
ステップ706では、ステップ704で空燃比センサ1に0.3Vの直流電圧を印加してから4msecが経過した時期か否か、あるいは本ルーチンの前回処理周期に空燃比センサ1の電流Imsを読込んでから4msecが経過した時期か否かを、例えばカウンタにより判別し、これらの判別結果の何れか一方がYESのときはステップ707へ進み、その判別結果の両方がNOのときは本ルーチンを終了する。ステップ707では、空燃比センサ1の電流Imsを読込む。これらのステップから判るように電流Imsは4msec毎に読込まれる。
【0038】
ステップ708では、後述する空燃比センサの劣化補正処理を実行し、ステップ709では、後述する空燃比センサの故障判定処理を実行し、ステップ710では、後述する空燃比センサの活性判定処理を実行する。
【0039】
次に、図8〜図10を相互に参照しつつ、センサ素子のインピーダンス算出ルーチンの第1周波数重畳処理のフローチャートを説明する。第1周波数として5KHzを用いた例で説明する。
図8〜図10に示すフローチャートは、A/Fセンサ1の出力を図3に示すダイナミックレンジ内に維持するための処理に関する。この処理はA/Fセンサ1の出力をダイナミックレンジ内に維持することにより絶えずセンサ素子2の限界電流を検出できるようにするものである。このため、機関の排気空燃比に応じてセンサ素子2に印加する電圧を、A/Fがリーンのときは負側(ステップ805)から正側(ステップ907)に、A/Fがストイキまたはリッチのときは正側(ステップ804)から負側(ステップ906)に印加している。次に、図8〜図10のフローチャートを個々に説明する。
【0040】
先ず、ステップ801では、今回処理周期が本ルーチン開始からk×64msec(kは奇数1、3、5、…)経過した時期か否かを、例えばカウンタにより判別し、これらの判別結果がYES、すなわち今回処理周期が本ルーチン開始から64msec、192msec、320msec、…のときはステップ802へ進み、その判別結果がNOのときはステップ1101(図11参照)へ進む。
ステップ802では、空燃比センサ1の出力から空燃比(A/F)がリーンか否(ストイキまたはリッチ)かを判別し、A/Fがリーンと判別されたときはステップ803に進み、ステップ803でリーン判定フラグLFLGを1にセットし、ステップ805に進む。ステップ802でA/Fがストイキまたはリッチと判別されたときはステップ804に進み、ステップ804では、空燃比センサ1への印加電圧Vm(=0.3V)に+0.2Vのパルス電圧を重畳する。したがって、このときの空燃比センサ1への印加電圧Vm1は0.5Vとなる。ステップ805では、空燃比センサ1への印加電圧Vm(=0.3V)に−0.2Vのパルス電圧を重畳する。したがって、このときの空燃比センサ1への印加電圧Vm1は0.1Vとなる。また、ステップ804およびステップ805では図9に示す第1タイマ割込が起動される。
【0041】
ここで、図9の第1タイマ割込処理について説明する。ステップ901では、上記第2タイマ割込の起動後85μsが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのとき、ステップ902へ進み、空燃比センサ1の出力電流Im1を読込み、その判別結果がNOのとき、ステップ901へ戻る。
ステップ903では、上記第2タイマ割込の起動後100μsが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのとき、ステップ904へ進み、その判別結果がNOのとき、ステップ901へ戻る。
ステップ904では、図8のステップ803でリーン判定フラグLFLGがセットされたか否かを判別し、LFLG=1と判別されたときはステップ905に進み、ステップ905でリーン判定フラグLFLGを0にリセットし、ステップ907に進む。ステップ904でLFLG=0と判別されたときはステップ906に進み、ステップ906では、図10に示す第2タイマ割込が軌道され、空燃比センサ1にVm2’ =0.1Vを印加する。ステップ907では、図10に示す第2タイマ割込が起動され、空燃比センサ1にVm2=0.5Vを印加する。
【0042】
ここで、図10の第2タイマ割込処理について説明する。ステップ1001では、上記第1タイマ割込の起動後100μsが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのとき、ステップ1002へ進み、空燃比センサ1にVm=0.3Vの電圧を印加して通常の空燃比検出状態に戻し、その判別結果がNOのとき、ステップ1001へ戻る。
【0043】
再び、図8へ戻る。ステップ806では、今回処理周期が本ルーチン開始から(k×64+4)msec(kは奇数1、3、5、…)経過した時期か否かを判別し、その判別結果がYESのときはステップ807へ進み、その判別結果がNOのときは本ルーチンを終了する。
ステップ807では、第1周波数電圧印加時の第1(高周波)インピーダンスZac1 を次式から計算する。
【0044】
Zac1 =ΔVm/ΔIm=0.2/(Im1−Ims)
次いでステップ808では、Zac1 のガード処理、すなわちZac1 を下限ガード値KREL1と上限ガード値KREH1との間に収めるKREL1≦Zac1 ≦KREH1とする処理を実行する。具体的には、Zac1 がKREL1≦Zac1 ≦KREH1のときはそのままとし、Zac1 <KREL1のときはZac1 =KREL1=1(Ω)とし、KREH1<Zac1 のときはZac1 =KREH1=200(Ω)とする処理を実行する。なお、ガード処理は通常外乱やA/D変換誤差等によるデータを無視するために行う。
【0045】
図11〜図13に示すフローチャートは、A/Fセンサ1の出力を図3に示すダイナミックレンジ内に維持するための処理に関する。この処理は空燃比センサ1の出力をダイナミックレンジ内に維持することにより絶えずセンサ素子2の限界電流を検出できるようにするものである。このため、機関の排気空燃比に応じて空燃比センサ1に印加する電圧を、A/Fがリーンのときは負側(ステップ1105)から正側(ステップ1207)に印加し、A/Fがストイキまたはリッチのときは正側(ステップ1104)から負側(ステップ1206)に印加している。
【0046】
次に、図11〜図13を相互に参照しつつ、センサ素子のインピーダンス算出ルーチンの第2周波数重畳処理のフローチャートを説明する。第2周波数として500Hzを用いた例で説明する。図8のフローチャートにおけるステップ801でNOと判定されたときステップ1101が実行される。ステップ1101では、本ルーチン開始からk×64msec(kは偶数2、4、6、…)が経過した時期か否かを、例えばカウンタにより判別し、これらの判別結果がYES、すなわち128msec、256msec、384msec、…のときはステップ1102へ進み、その判別結果がNOのときは本ルーチンを終了する。
【0047】
ステップ1102では、空燃比センサ1の出力から空燃比(A/F)がリーンか否(ストイキまたはリッチ)かを判別し、A/Fがリーンと判別されたときはステップ1103に進み、ステップ1103でリーン判定フラグLFLGを1にセットし、ステップ1105に進む。ステップ1102でA/Fがストイキまたはリッチと判別されたときはステップ1104に進み、ステップ1104で空燃比センサ1にVm1’ =0.5Vを印加する。
【0048】
ステップ1105では、空燃比センサ1への印加電圧Vm(=0.3V)に−0.2Vのパルス電圧を重畳する。したがって、このときの空燃比センサ1への印加電圧Vm1は0.1Vとなる。また、ステップ1104およびステップ1105では第3タイマ割込が起動される。
【0049】
ここで、図12の第3タイマ割込処理について説明する。ステップ1201では、上記第3タイマ割込の起動後0.95msecが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのとき、ステップ1202へ進み空燃比センサ1の出力電流Im2を読込み、その判別結果がNOのとき、ステップ1201へ戻る。
【0050】
ステップ1203では、上記第3タイマ割込の起動後1msecが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのとき、ステップ1204へ進み、その判別結果がNOのとき、ステップ1201へ戻る。
ステップ1204では、図11のステップ1103でリーン判定フラグLFLGがセットされたか否かを判別し、LFLG=1と判別されたときはステップ1205に進み、ステップ1205でリーン判定フラグLFLGを0にリセットし、ステップ1207に進む。ステップ1204でLFLG=0と判別されたときはステップ1206に進み、ステップ1206で空燃比センサ1にVm2’ =0.1Vを印加する。ステップ1207では、空燃比センサ1にVm2=0.5Vを印加する。また、ステップ1206およびステップ1207では図15に示す第4タイマ割込が起動される。
【0051】
ここで、図13の第4タイマ割込処理について説明する。ステップ1301では、上記第4タイマ割込の起動後1msecが経過したか否かを判別し、その判別結果がYESのとき、ステップ1302へ進み、空燃比センサ1にVm=0.3Vの電圧を印加して通常の空燃比検出状態に戻し、その判別結果がNOのとき、ステップ1301へ戻る。
【0052】
再び、図11へ戻る。ステップ1106では、今回処理周期が本ルーチン開始から(k×64+4)msec(kは偶数2、4、6、…)経過した時期か否かを判別し、その判別結果がYESのときはステップ1107へ進み、その判別結果がNOのときは本ルーチンを終了する。ここで、3msecは低周波パルス周期の2msecにパルス収束時間1msecを加算した値を示す。
ステップ1107では、マイクロコンピュータ11により図7のステップ705で切換えたLPF切換え信号をオフにし、LPF7にフィルタ定数を高周波インピーダンス検出用に戻す切換え信号を出力する。
ステップ1108では、第2周波数電圧印加時の第2(低周波)インピーダンスZac2 を次式から計算する。
【0053】
Zac2 =ΔVm/ΔIm=0.2/(Im2−Ims)
ステップ1109では、Zac2 のガード処理、すなわちZac2 を下限ガード値KREL2と上限ガード値KREH2との間に収めるKREL2≦Zac2 ≦KREH2とする処理を実行する。具体的には、Zac2 がKREL2≦Zac2 ≦KREH2のときはそのままとし、Zac2 <KREL2のときはZac2 =KREL2=1(Ω)とし、KREH2<Zac2 のときはZac2 =KREH2=200(Ω)とする処理を実行する。
【0054】
以上説明した実施の形態において、128ms毎に高周波パルスを印加する中間に低周波パルスを印加したのは、CPUの負荷バランスを平均化するためであるが、他の実施の形態として、高周波パルスを印加した後すぐに、例えば4ms経過後に低周波パルスを印加して低周波インピーダンスを検出してもよい。また、第2(低周波)インピーダンスの検出処理を、第1(高周波)インピーダンス検出処理10回に1回実行するようにしてもよい。さらに、低周波インピーダンスの検出処理を、機関がアイドリング状態のとき等、空燃比センサ1の雰囲気が安定した状態のときにのみ実行するようにしてもよい。
以上説明した実施の形態では、低周波インピーダンスを検出する低周波パルス印加からの4ms間は空燃比センサ1からの空燃比検出を不能にしている。これは図7のステップ707によるセンサ素子2の限界電流Imsの読込みをステップ706が示すように4ms毎に行っていることから判る。
【0055】
以上説明した本発明の実施の形態では、第1の周波数に5KHz、第2の周波数に500Hzを用いたが、本発明はこれに限定されない。空燃比センサの電解質、電極等の材料、センサ回路の特性、印加電圧、使用温度等を考慮してこれら周波数は適宜選択できる。なお、第1の周波数としては図47におけるR1(電解質のバルク抵抗)+R2(電解質の粒界抵抗)の交流インピーダンスを検出可能な周波数、例えば1KHz〜10KHz程度の範囲が使用可能である。また、第2周波数としては第1周波数より低周波数で、しかもR1+R2+R3(電極界面抵抗)までのインピーダンスが検出可能な周波数であればよい。
【0056】
また、上述の実施の形態では、2つの周波数のみを使用する例を示したが、3周波数以上の複数の交流電圧を印加し、検出された複数のセンサ出力電圧値や電流値からインピーダンスを検出してもよい。もちろん、複数のインピーダンスの中から最適な2つを選択する方法、または複数のインピーダンスに基づいて統計的な手法、例えば平均値からインピーダンスを算出する方法であってもよい。
【0057】
図15は空燃比センサの直流抵抗に対する低周波インピーダンスおよび高周波インピーダンスの相関関係を示す図である。ここで、低周波インピーダンスは所定温度下で25Hzの交流電圧をセンサ素子に印加したときに検出されたものであり、高周波インピーダンスは所定温度下で2.5KHzの交流電圧をセンサ素子に印加したときに検出されたものである。直流抵抗と低周波インピーダンスとの相関関係を黒丸●で示し、直流抵抗と高周波インピーダンスとの相関関係を白丸○で示す。直流抵抗と低周波インピーダンスとの相関関係を示す黒丸●を結ぶ線151はセンサ素子の新品時と耐久劣化時で略同じである。一方、直流抵抗と高周波インピーダンスとの相関関係を示す白丸○を結ぶ線はセンサ素子の新品時で152、耐久劣化時で153となり、直流抵抗Ri は耐久劣化後の方が新品時より増大していることが判る。これは、高周波インピーダンスがジルコニア電解質の抵抗を検出しており電極界面抵抗を検出していないからである。
【0058】
一方、電極界面抵抗を検出する低周波インピーダンスはセンサ素子が新品時から耐久劣化に至るまで変化する直流抵抗Ri を反映している。それゆえ、本発明は空燃比センサの直流抵抗と低周波インピーダンスとの相関関係は新品時も耐久劣化後もリニアであるという点に着目し、低周波インピーダンスZac2 を検出してZac2 から空燃比センサの劣化度合いを空燃比センサの直流抵抗Ri として捕らえ、劣化後変化したRi に応じて空燃比センサの出力を補正して空燃比を高精度に検出しようとするものである。
【0059】
図16および図17は酸素濃度検出素子の劣化に応じて変化する同素子の温度とインピーダンスの第1の相関関係および第2の相関関係を示す図である。図16、図17において、横軸はセンサ素子の温度、縦軸はセンサ素子のインピーダンスを示し、高周波インピーダンスZac1 を実線で、低周波数インピーダンスZac2 を破線でそれぞれ示す。
【0060】
先ず、図16について説明する。図16に実線で示すように、耐久劣化後のセンサ素子の温度とZac1 の相関関係を示す曲線は新品時と比して右側にシフトしている。したがって、センサ素子の素子温制御目標値Zactgを新品時の値Zactgi に保持していると、耐久劣化後の素子温は新品時の700°Cから730°Cに上昇する。また、図16に破線で示すように、耐久劣化後のセンサ素子の温度とZac2 の相関関係を示す曲線も同様、新品時と比して右側にシフトしている。この相関関係は、後述するが、電極凝集等によるセンサ素子の電極界面抵抗が増大するような劣化が進行したときに生じる。したがって、センサ素子の素子温制御目標値Zactgを新品時の値Zactgi に保持していると、新品時のZac2iは耐久劣化後の素子温730°CのときにZac2dとなる。
【0061】
なお、ここで耐久劣化とは、耐久試験によるセンサ素子の劣化を意味し、経時劣化とは、通常使用条件下でのセンサ素子の経時的劣化を意味する。
本発明は、Zac2 の値を新品時の値Zac2iに保持することにより、換言すればセンサ素子の直流抵抗Rs を初期値に維持することにより、センサ素子劣化後の空燃比センサの出力特性を新品時の特性に維持し、この出力値から空燃比を高精度に検出しようとするものである。それゆえ、Zac2 の耐久劣化時の値Zactgd を新品時の値Zac2iとするように素子温を740°Cにし、素子温が740°CのときのZac1 、すなわちZactgd を耐久劣化後の素子温制御目標値とするものである。このZac1 とZac2 に対する耐久劣化後のセンサ素子の温度の相違は、図15に示すセンサ素子の直流抵抗Ri のZac1 とZac2 に対する相違から生じるものである。図15から明白なようにZac2 によるセンサ素子の温度補正の方がZac1 による補正よりセンサ素子の出力特性を維持できる。
【0062】
次に、図17について説明する。図17に実線で示すように、耐久劣化後のセンサ素子の温度とZac1 の相関関係を示す曲線は新品時と比して右側にシフトしている。したがって、センサ素子の素子温制御目標値Zactgを新品時の値Zactgi に保持していると、耐久劣化後の素子温は新品時の700°Cから730°Cに上昇する。一方、図17に破線で示すように、耐久劣化後のセンサ素子の温度とZac2 の相関関係を示す曲線は、新品時と比して左側にシフトしている。この相関関係は、後述するが、ヒータの過加熱等によりセンサ素子の拡散層が破壊するような劣化が進行したときに生じる。したがって、センサ素子の素子温制御目標値Zactgを新品時の値Zactgi に保持していると、新品時のZac2iは耐久劣化後の素子温730°CのときにZac2dとなる。
【0063】
本発明は、Zac2 の値を新品時の値Zac2iに保持することにより、換言すればセンサ素子の直流抵抗Rs を初期値に維持することにより、センサ素子劣化後の空燃比センサの出力特性を新品時の特性に維持し、この出力値から空燃比を高精度に検出しようとするものである。しかしながら、拡散層クラックは、センサ素子が略破壊したものであり、空燃比センサの出力特性の維持は、できなくなる。また、Zac2 の耐久劣化時の値Zactgd を新品時の値Zac2iとするように素子温を690°Cにし、素子温が690°CのときのZac1 、すなわちZactgd を耐久劣化後の素子温制御目標値とすると、センサ素子を活性状態に維持できなくなる。
しかしながら、耐久劣化時の値Zactgd が新品時の値Zac2iより大となったときには空燃比センサは故障したと判定され、空燃比フィードバック制御は中止される。
図16、図17を用いて説明したように、本発明によればセンサ素子の耐久劣化度合いに応じて素子温制御目標値Zactgを可変するのでセンサ素子の特性を耐久劣化後も一定に保つことができる。
【0064】
次に、図16、図17を用いて上述したように、耐久劣化後のセンサ素子の特性を新品時同様に維持するように素子温制御目標値Zactgを補正しつつ、前述した図7のフローチャートにおけるステップ708による空燃比センサの劣化補正処理をどのように実行するかについて以下に説明する。
【0065】
図18は空燃比センサの劣化補正ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、所定の周期、例えば4msec毎に実行される。本ルーチンは低周波インピーダンスZac2 に基づいてZactgの補正を行うものである。
先ず、ステップ1801では、劣化補正条件が成立したか否かを下記の1〜5の条件を全て満たしたか否かにより判定し、その判定結果がYESのときはステップ1802へ進み、その判定結果がNOのときは本ルーチンを終了する。
【0066】
1.機関の回転数NE≦1000RPM
2.車速VS≦3Km/h
3.アイドルスイッチオン
4.空燃比フィードバック制御実行中で空燃比A/Fが14.5付近
5.機関の冷却水温THW≧85°C(機関暖機状態)
ステップ1802では、第1(高周波)インピーダンスZac1 と第2(低周波)インピーダンスZac2 を読込み、Zac2 をセンサ素子の特性変化、特に経年変化を示すパラメータとして求める。
【0067】
図19は空燃比センサの全素子抵抗Rs(=R1+R2+R3)と素子温度との関係を示す図であり、図20は素子温制御目標値の補正量Zactggkと低周波インピーダンスZac2 との関係を示す図であり、図21は空燃比センサの出力特性を示す図である。
図19から判るように経時劣化品は新品時より同一素子温度でRs が増大する。センサ素子が経時劣化しRs が増大すると、空燃比センサの出力特性は、図21に破線で示すように、新品時の直流抵抗を示す直線LiがLdに変化し、同一空燃比に対する限界電流値が低下し、その結果空燃比の検出に誤差が生じる。
【0068】
前述した図7のフローチャートにおけるステップ709による空燃比センサの故障判定処理は図18に示すステップ1803〜1810の実行により次のように達成される。ステップ1803では、センサ素子の素子温制御目標値Zactgがセンサ素子の特性ばらつきを含めた上限値Zactgmax と下限値Zactgmin の範囲内か否かを判定し、その判定結果がYESのとき(Zactgmin ≦Zactg≦Zactgmax )は、素子温制御目標値の補正が可能であると判定してステップ1804に進み、その判定結果がNOのときはステップ1805に進む。ステップ1804では、Zac2 から素子温制御目標値Zactgの補正量Zactggkを図20に示すマップから算出する。この補正量Zactggkは、Zac2 が、10〜20Ω程度になるように設定される。このマップは予めROMに格納されている。この素子温制御目標値Zactgとは、空燃比センサの素子温度が目標温度になったときの素子のインピーダンスを言う。次いで、ステップ1806では素子温制御目標値Zactg(i) (今回値)を下式から平均値として算出する。
Zactgt =Zactg(i−1) (前回値)−Zactggk
Zactg(i) (今回値)=(Zactg(i−1) (前回値)×31+Zactgt )/32
空燃比センサ1のヒータ制御において、このように算出されたZactg(i) (今回値)をセンサ素子2の高周波インピーダンスZac1 の素子温制御目標値に設定し、センサ素子インピーダンスがZactg(i) となるようにセンサ素子温度の制御を行う。
【0069】
図20のマップが示すように、この素子温制御目標値の補正量Zactggkは、センサ素子の低周波インピーダンスZac2 に比例して増大する。したがって、ステップ1806においてZactggkで補正して求めたZactg(i) は、Zac2 が増大する程低い値となり素子温は上昇する。一方、Zac2 が所定値まで減少したとき素子温が低下するように補正する。このように、センサ素子の劣化状態に応じてセンサ素子の温度は新品時と異なった温度に制御され、センサ特性は新品同様に保持される。電極凝集等によるセンサ素子の電極界面抵抗が増大するような劣化が進行したときは、劣化後のセンサ素子のZac2 は増大するのでZactggkも増大し、それゆえZactg(i) は減少し、素子温は上昇する。一方、センサ素子の拡散層が破壊するような劣化が進行したときは、劣化後のセンサ素子のZac2 は減少するのでZactggkも減少し、それゆえZactg(i) は増大するが、このときステップ1805、1809、1810で空燃比センサは故障したと判定され、空燃比フィードバック制御は中止される。
【0070】
また、ステップ1807では、素子温制御目標値ZactgはバックアップRAMにZactgb として記憶させる。次回の機関始動時のイニシャルルーチンにてZactgb がZactgに取り込まれ、次回の機関始動時も素子温が目標温度付近になるように制御される。次いで、ステップ1808では、空燃比算出ルーチンを実行する。この空燃比算出ルーチンについては後で説明する。
しかるに、ステップ1805では、図34〜図44を用いて後述する空燃比センサの故障判定処理ルーチンを実行する。ステップ1809では、ステップ1805の故障判定結果に応じて、その判定結果がYESのときは本ルーチンを終了し、その判定結果がNOのときはステップ1810へ進む。ステップ1810では空燃比センサ故障フラグXFAFSを立てる。
【0071】
空燃比センサ1のヒータ制御において、センサ素子2の素子インピーダンスがこの素子温制御目標値Zactgとなるように素子温度を制御する。図20のマップが示すように、この素子温制御目標値補正量Zactggkは、センサ素子の特性パラメータとしての低周波数インピーダンスZac2 の増大、すなわちセンサ素子2の劣化度合いの増大に伴って大きくなるので、前回の素子温制御目標値Zactgにこの補正量を減算した今回の素子温制御目標値Zactgもこれに伴って小さく設定される。したがって、劣化後の素子温は許容範囲内で新品時より高い目標温度に設定される。何故ならば、劣化後は図19に示すように同素子温度でのRs が増大し、センサ素子の特性が低下するので、新品時の特性を保持するためにRs を小さくするためセンサ素子の素子温度を高い側に補正するのである。
次に、本発明による空燃比算出ルーチンについて以下に説明する。
【0072】
図22〜図24を用いて以下に説明する本発明の一実施例の空燃比算出ルーチンは、上述したように低周波インピーダンスが空燃比センサの特性を示すので、低周波インピーダンスを学習し、その学習値によりセンサ素子の出力値を補正して空燃比を精度よく算出するものである。
図22は低周波インピーダンス学習値の算出ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは所定周期、例えば100ms毎に実行される。ステップ2201ではセンサ素子の特性が劣化したか否かを判定するため下記の1〜4のセンサ素子の特性劣化検出条件が全て成立したか否かを判別し、その判別結果がYESのときはステップ2202に進み、その判別結果がNOのときは本ルーチンを終了する。
1.ホットアイドル停止
2.空燃比センサが活性状態
3.空燃比フィードバック中
4.所定空燃比内(理論空燃比付近)
ステップ2202では、所定回転数における低周波インピーダンスZacL を積算し、その平均値を学習値ZacLGとして算出する。
【0073】
図23は本発明による第1実施例の空燃比算出ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは所定周期、例えば1ms毎に実行される。ステップ2301では空燃比センサの限界電流値Im に相当する空燃比センサの電流値AFIを読取る。ステップ2302およびステップ2303では、素子温制御目標値Zactgである高周波インピーダンス値ZacHTG から適合により予め設定されたセンサ素子新品時の低周波インピーダンス値ZacLINIT と低周波インピーダンス学習値ZacLGとからステップ2301で読取ったセンサ素子の限界電流値Im に相当する空燃比センサの電流値AFIを補正する。
【0074】
図24は素子温制御目標値Zactgに対応する高周波インピーダンスZacHTG から低周波インピーダンスの初期値ZacLINIT を算出するマップである。低周波インピーダンスの初期値ZacLINIT は複数のセンサ素子の新品時における低周波インピーダンスの平均値として求められる。ステップ2302では図24に示すマップから高周波インピーダンス値ZacHTG に応じて低周波インピーダンスの初期値ZacLINIT を算出する。
次に、ステップ2303では、ステップ2301で読取った空燃比センサの電流値AFIを下式により補正する。
AFI=AFI×(ZacLG/ZacLINIT )×k
ここで、kは適合による補正係数である。
次に、ステップ2304では、予めROMに格納したマップに基づき、補正した空燃比センサの電流値AFIから空燃比を算出する。
【0075】
次に、前述した図7のフローチャートにおけるステップ710の空燃比センサ活性判定処理について図25〜図27を用いて以下に説明する。
図25は空燃比センサの故障判定後の処理ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは所定の周期、例えば1msec毎に実行される。ステップ2501では、空燃比センサ故障フラグXFAFSが立てられたか否かを判別し、XFAFS=1のときは、空燃比センサが故障と判定されたのでステップ2502へ進む。ステップ2502では、空燃比フィードバック制御を続行すると排気エミッションが悪化するので、空燃比フィードバック制御を停止し、ステップ2503でヒータの過昇温を防止するためヒータの通電を停止し、ステップ2504で警告ランプ(図示せず)を点灯する。一方、ステップ2501でXFAFS=0のときは、空燃比センサは故障していないと判定されたので本ルーチンを終了する。
【0076】
図26は空燃比センサの活性判定ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、所定の周期、例えば1msec毎に実行される。先ず、ステップ2601では、空燃比センサ故障フラグXFAFSが立てられたか否かを判別し、素子異常と判定されたXFAFS=1のときは、ステップ2602へ進み、素子異常でないと判定されたXFAFS=0のときは、ステップ2603へ進む。
【0077】
ステップ2602では、空燃比活性フラグXAFSACTをオフにする。ステップ2603では、図27に示すマップから劣化補正後の素子温制御目標値Zactgに対応する活性判定値Zacact を算出する。図27に示すように、素子温制御目標値に余裕をもたせるため、すなわち目標温度より多少低い温度でセンサ素子の活性判定をするように、活性判定値Zacact は素子温制御目標値Zactgより多少大きく設定される。
【0078】
ステップ2604では、高周波インピーダンスZac1 が活性判定値Zacact より小さいか否かを判定し、その判定結果がYESのとき(Zac1 <Zacact )は空燃比センサは活性状態であると見なしステップ2605へ進み、その判定結果がNOのとき(Zac1 ≧Zacact )は空燃比センサは非活性状態であると見なしステップ2602へ進む。ステップ2605では、空燃比活性フラグXAFSACTをオンにする。
【0079】
上述したように、上記活性判定は、センサ素子の低周波インピーダンスZac2 から算出した劣化後の素子温制御目標値Zactgから活性判定値Zacact を算出し、これを高周波インピーダンスZac1 と比較して判定を行っている。
図28はヒータ制御ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、所定の周期、例えば128msec毎に実行される。本ルーチンは、空燃比センサ1の高周波インピーダンスZac1 と素子温制御目標値Zactgとの偏差Zacerr (=Zactg−Zac1 )に基づいて、ヒータ4への通電のデューティ比のPID制御を行う。ここで、素子温制御目標値Zactgは、低周波インピーダンスZac2 から算出され、空燃比センサ1の電極凝集等による劣化に伴ない変化するものである。先ず、ステップ2801では、比例項KPを次式から算出する。
【0080】
KP=Zacerr ×K1 (K1 :定数)
ステップ2802では、積分項KIを次式から算出する。
KI=ΣZacerr ×K2 (K2 :定数)
ステップ2803では、微分項KDを次式から算出する。
KD=(ΔZacerr /Δt)×K3 (K3 :定数)
ステップ2804では、PIDゲインKPIDを次式から算出する。
【0081】
KPID=KP+KI+KD
ステップ2805では、出力デューティ比を次式から算出する。
DUTY(i) =DUTY(i−1) ×KPID
ステップ2806では、出力デューティ比DUTY(i) のガード処理を行い、DUTY(i) を下限値KDUTYLと上限値KDUTYHとの間KDUTYL≦DUTY(i) ≦KDUTYHに収める処理を実行する。具体的には、KDUTYL≦DUTY(i) ≦KDUTYHのときはそのままとし、DUTY(i) <KDUTYLのときはDUTY(i) =KDUTYLとし、KDUTYH<DUTY(i) のときはDUTY(i) =KDUTYHとする処理を実行する。
【0082】
また、図28に示したヒータ制御において、本発明はヒータ4およびセンサ素子2の過昇温(Over Temperature)を防止するため、高周波数に対するセンサ素子のインピーダンスZac1 が劣化補正後の素子温制御目標値Zactgより所定値、例えば5Ωを超えるか否か(Zac1 ≦Zactg−5(Ω))を判別し、その判別結果がYESのときは正常、すなわちヒータ4およびセンサ素子2は過昇温になっていないものと判定し図28のフローチャートで示したヒータ制御ルーチンを実行し、その判別結果がNOのときは異常、すなわちヒータ4およびセンサ素子2は過昇温になっていると判定し、DUTY(i) =0に設定する処理を行う。ここで、素子温制御目標値Zactgは、図20に示すマップからセンサ素子の低周波インピーダンスZac2 に応じて算出される。
【0083】
次に、空燃比センサが活性状態に至る前のセンサ素子温度が700°C以下の低温時に空燃比を検出する制御について以下に説明する。
図29は高周波インピーダンスと低周波インピーダンスの温度特性および空燃比との関係を示す図である。図29において横軸はセンサ素子温度、縦軸は素子インピーダンスを示す。図29から、太線280で示す高周波インピーダンスの温度特性はセンサ素子の雰囲気の空燃比に実質的に無関係であり、細線291、292、293で示す低周波インピーダンスの温度特性はセンサ素子の雰囲気のそれぞれの空燃比A/F=12、14.5、18に関係することが判る。このような関係が実験的に確かめられた。
この関係に着目すれば、高周波インピーダンスからセンサ素子温度を検出し、センサ素子温度が低い空燃比センサの非活性状態のときには低周波インピーダンスから空燃比を算出し、空燃比制御を早期に開始することが可能となることが判る。
【0084】
以下、図30〜図33を用いて、センサ素子が非活性状態のときに低周波インピーダンスから空燃比を算出する制御について説明する。
図30は本発明による第2実施例の空燃比算出ルーチンのフローチャートであり、図31は空気量から低周波インピーダンスを補正するためのマップを示す図であり、図32は高周波インピーダンスと低周波インピーダンスの2次元マップから空燃比を算出するマップであり、図33は空燃比フィードバック(F/B)制御ゲインの設定ルーチンのフローチャートである。
【0085】
図30に示す空燃比算出ルーチンは所定の周期、例えば1ms毎に実行される。まず、ステップ3001ではセンサ素子2の高周波インピーダンスZac1 、低周波インピーダンスZac2 、限界電流Imsおよび機関のエアフローメータ(図示せず)から吸入空気量ga(g/sec )を読込む。次いでステップ3002ではZac1 と素子温500°Cに相当する第1素子温制御目標値Zactg1 とを比較し、Zac1 ≦Zactg1 のとき、すなわち素子温が500°C以下と判断されたときは本ルーチンを終了し、Zac1 >Zactg1 、すなわち素子温が500°Cを超えたと判断されたときはステップ3003へ進む。
【0086】
ステップ3002で判断された素子温500°C以下では低周波インピーダンスから空燃比を検出する検出精度が不十分であるので、このときは空燃比フィードバック制御を実行しない。ステップ3003ではZac1 と素子温700°Cに相当する第2素子温制御目標値Zactg2 とを比較し、Zac1 <Zactg2 のとき、すなわち素子温が活性状態を示す700°C未満と判断されたときはステップ3004に進み、Zac1 ≧Zactg2 、すなわち素子温が700°C以上と判断されたときはステップ3005へ進む。
【0087】
ステップ3004では、センサ素子の低周波インピーダンスZac2 に基づいて空燃比を算出中であることを示すフラグXIMPAFを1にセットする。次いでステップ3006では図31に示す吸入空気量gaと低周波インピーダンス補正率kgaz(%)との関係を示すマップからステップ3001で読込んだgaに対応するkgazを算出し、算出したkgazとステップ3001で読込んだZac2 とからその時点の低周波インピーダンスZac2 を次式から算出する。
Zac2 = Zac2 (1+kgaz/100)
次いでその算出値をバックアップRAMに格納する(Zac2b←Zac2 )。上式は吸入空気量が20(g/sec )を超えるとセンサ素子の電極界面抵抗R3は増大し始め、したがって低周波インピーダンスZac2 は増大し始めるので、Zac2 を吸入空気量に応じて補正することを示す。
【0088】
次に、ステップ3007では図32に示す高周波インピーダンスZac1 と低周波インピーダンスZac2 から空燃比を算出する2次元マップから空燃比を算出する。この2次元マップにおいてZac1 はセンサ素子の温度特性を示すものであり、したがってZac1 が大な程、素子温は低いことを示している。素子温が一定のときは図29からも判るようにZac2 が大な程、空燃比は小、すなわちリッチになる。このように、本発明の上記実施形態では、高周波インピーダンスからセンサ素子温度を検出し、センサ素子温度が低い空燃比センサの非活性状態のときでも低周波インピーダンスから空燃比を算出し、空燃比制御を早期に開始する。
一方、ステップ3005では、センサ素子2の限界電流から空燃比を算出中であることを示すフラグXLMTAFを1にセットする。次いでステップ3008ではZac2 に基づいて空燃比を算出中であることを示すフラグXIMPAFを0にリセットする。次いでステップ3009では前述した空燃比算出ルーチンを実行する。
【0089】
次に図33に示す空燃比フィードバック制御ゲインの設定ルーチンのフローチャートについて以下に説明する。本ルーチンは、センサ素子2が低温のときに空燃比センサ1の出力応答が遅くなるので、低周波インピーダンスに基づいて空燃比フィードバック制御を実行する(ステップ3301でYESの)ときは、ステップ3302で空燃比フィードバック制御における比例項P、積分項I、微分項Dの各ゲインを低いLOWゲインに設定し、センサ素子2が活性化した後の限界電流に基づいて空燃比フィードバック制御が実行中であることを示すフラグXLMTAFがセットされている(ステップ3301でNOかつステップ3303でYESの)ときはステップ3304で上記PIDの各ゲインをHIGHゲインに設定するものである。ステップ3301に示すフラグXIMTAFには、センサ素子2の低周波インピーダンスZac2 から空燃比を算出中であるときセットされるフラグである。なお、ステップ3301でNOかつステップ3303でNOのときはセンサ素子温が500°C以下で空燃比が検出不能なのでステップ3305で空燃比フィードバック制御禁止フラグXPHAFを1にセットする。ステップ3302および3304で空燃比制御ゲインはLOWおよびHIGHに設定した後、ステップ3306では空燃比フィードバック制御禁止フラグXPHAFを0にリセットする。
【0090】
次に、前述した図18のフローチャートにおけるステップ1805による空燃比センサの故障判定処理について図34〜図44を用いて以下に説明する。
図34は所定温度下における空燃比センサの直流抵抗と低周波インピーダンスとの相関関係を示す図である。図34に示すようにセンサ素子の直流抵抗Ri は低周波インピーダンスZacL に比例する。したがって、空燃比センサの特性を示すセンサ素子の直流抵抗Ri を低周波インピーダンスZacL として求め、ZacL から空燃比センサの特性劣化を検出しようとするものである。
【0091】
図35は劣化した空燃比センサにおける低周波インピーダンスの特性変化を示す図である。図35において、横軸はセンサ素子の温度を示し、縦軸はセンサ素子のインピーダンスを示す。センサ素子の温度に対する高周波インピーダンスZacH の特性は曲線350に示すように、センサ素子の劣化状態に関わらず、すなわち新品時から耐久劣化時まで変化が小さい。したがって、高周波インピーダンスZacH はセンサ素子の温度を示すパラメータとして利用できる。一方、低周波インピーダンスZacL の特性はセンサ素子の劣化状態に応じて変化が大きくなり、曲線351に示すように例えばヒータ過加熱により拡散層にクラック等が生じセンサ素子の内部抵抗が減少したものから曲線352に示すように電極凝集等によりセンサ素子の内部抵抗が増大したものまで種々異なる。曲線353は新品時のセンサ素子の温度に対する低周波インピーダンスZacL の特性を示す。公差を含めると曲線353は曲線353aから曲線353bの範囲内にある。
【0092】
素子温制御目標値Zactgはセンサ素子の活性化温度700°Cに対応する高周波インピーダンスZacH として決定される。センサ素子の温度が700°Cとなるようにセンサ素子のヒータ制御が行われているとき、低周波インピーダンスZacL は、センサ素子の劣化に応じて、拡散層にクラック等が生じたときはセンサ素子の内部抵抗が減少するので空燃比センサの出力は増大し応答性が早くなる方向に変化しZacL1となるが、一方電極凝集等が生じたときはセンサ素子の内部抵抗が増大するので空燃比センサの出力は減少し応答性が遅くなる方向に変化しZacL2となる。
【0093】
図36は空燃比センサの出力のばらつきと高周波インピーダンス一定下での低周波インピーダンスとの相関関係を示す図である。図36に示す相関関係はセンサ素子の温度、すなわち高周波インピーダンスに応じて変化する。図35を用いて説明したように、センサ素子の高周波インピーダンスZacH がセンサ素子温700°Cに対応する素子温制御目標値Zactgのときの低周波インピーダンスはZacL1からZacL2まで変化する。低周波インピーダンスZacL が耐久劣化後小さくなったときは(ZacL1)直流抵抗Ri も小さくなり、空燃比センサの出力はプラス側にシフトし(+X,X>0)、一方ZacL が耐久劣化後大きくなったときは(ZacL2)直流抵抗Ri も大きくなり、空燃比センサの出力はマイナス側にシフトする(−X)。この空燃比センサの出力のばらつきが+Xを越えてさらにプラス側にシフトしたとき、センサ素子は拡散層クラック等により劣化したものと判定し、一方、−Xを越えてさらにマイナス側にシフトしたとき、センサ素子は電極凝集等により劣化したものと判定する。空燃比センサの出力劣化が許容される低周波インピーダンスZacL の平均値ZacLav の最小許容値がafvminであり最大許容値がafvmaxである。また、ZacLav がafvminのとき空燃比センサの出力のばらつきは−Xであり、ZacLav がafvmaxのとき空燃比センサの出力のばらつきは+Xである。
【0094】
図37は空燃比センサの応答性のばらつきと高周波インピーダンス一定下での低周波インピーダンスとの相関関係を示す図である。図37に示す相関関係はセンサ素子の温度、すなわち高周波インピーダンスに応じて変化する。低周波インピーダンスZacL が耐久劣化後小さくなったときは(ZacL1)直流抵抗Ri も小さくなり、空燃比センサの応答性はマイナス側、すなわち応答が早くなる方向にシフトし(−Y,Y>0)、一方ZacL が耐久劣化後大きくなったときは(ZacL2)直流抵抗Ri も大きくなり、空燃比センサの応答性はプラス側、すなわち応答が遅くなる方向にシフトする(+Y)。この空燃比センサの応答性のばらつきが−Yを越えてさらにマイナス側にシフトしたとき、センサ素子は拡散層クラック等により劣化したものと判定し、一方、+Yを越えてさらにプラス側にシフトしたとき、センサ素子は電極凝集等により劣化したものと判定する。空燃比センサの応答性劣化が許容される低周波インピーダンスZacL の平均値ZacLav の最小許容値がafrminであり最大許容値がafrmaxである。また、ZacLav がafrminのとき空燃比センサの応答性のばらつきは−Yであり、ZacLav がafrmaxのとき空燃比センサの応答性のばらつきは+Yである。
【0095】
次に、図34〜図37を用いて説明した低周波インピーダンスから空燃比センサの劣化を判定する具体的処理について、図38〜図44を用いて以下に説明する。
図38は空燃比センサの特性劣化検出ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは所定周期、例えば100ms毎に実行される。ステップ3801ではセンサ素子の特性が劣化したか否かを判定するため下記の1〜4の特性劣化検出条件が全て成立したか否かを判別し、その判別結果がYESのときはステップ3802に進み、その判別結果がNOのときは本ルーチンを終了する。
1.ホットアイドル停止
2.空燃比センサが活性状態
3.空燃比フィードバック中
4.所定空燃比内(理論空燃比付近)
ステップ3802では、機関が所定回転数のときの低周波インピーダンスZacL を積算し、その平均値ZacLav を学習値ZacLGとして算出する。
【0096】
次に、ステップ3803ではセンサ出力劣化検出ルーチン(図39)を実行し、ステップ3804ではセンサ応答劣化検出ルーチン(図42)を実行する。
図39は空燃比センサの出力劣化検出ルーチンのフローチャートであり、図40は素子温制御目標値から空燃比センサの出力劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の下限値を算出するマップであり、図41は素子温制御目標値から空燃比センサの出力劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の上限値を算出するマップである。図39に示すルーチンは高周波インピーダンスZacH である素子温制御目標値Zactgと図38のステップ3802で算出した低周波インピーダンスの平均値ZacLav とから空燃比センサの出力異常の判定を行うものである。
【0097】
先ず、ステップ3901では図40に示すマップに基づき高周波インピーダンスに相当する素子温制御目標値Zactgから空燃比センサの出力劣化が許容されるZacLav の下限値afvminを算出する。ステップ3902ではZacLav がステップ3901で算出したafvminより大か否かを判別し、ZacLav <afvminのときはセンサ素子が異常と判定してステップ3903に進み、ZacLav ≧afvminのときはステップ3904に進む。ステップ3904では図41に示すマップに基づき高周波インピーダンスに相当する素子温制御目標値Zactgから空燃比センサの出力劣化が許容されるZacLav の上限値afvmaxを算出する。ステップ3902ではZacLav がステップ3901で算出したafvmaxより小か否かを判別し、ZacLav >afvmaxのときはセンサ素子が異常と判定してステップ3903に進み、ZacLav ≦afvmaxのときは本ルーチンを終了する。ステップ3903では空燃比センサの出力が劣化したことを示すフラグXAFVを1にセットする。
【0098】
上述したように、空燃比センサ出力劣化検出ルーチンにおいて、空燃比センサの故障判定値afvminおよびafvmaxは素子温制御目標値Zactg、すなわち高周波インピーダンスに応じて設定される。
図42は空燃比センサの応答性劣化検出ルーチンのフローチャートであり、図43は素子温制御目標値から空燃比センサの応答性劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の下限値を算出するマップであり、図44は素子温制御目標値から空燃比センサの応答性劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の上限値を算出するマップである。図42に示すルーチンは高周波インピーダンスZacH である素子温制御目標値Zactgと図38のステップ3802で算出した低周波インピーダンスの平均値ZacLav とから空燃比センサの応答性異常の判定を行うものである。
【0099】
先ず、ステップ4201では図43に示すマップに基づき高周波インピーダンスに相当する素子温制御目標値Zactgから空燃比センサの応答性劣化が許容されるZacLav の下限値afrminを算出する。ステップ4202ではZacLav がステップ4201で算出したafrminより大か否かを判別し、ZacLav <afrminのときはセンサ素子が異常と判定してステップ4203に進み、ZacLav ≧afrminのときはステップ4204に進む。ステップ4204では図44に示すマップに基づき高周波インピーダンスに相当するZactgから空燃比センサの応答性劣化が許容されるZacLav の上限値afrmaxを算出する。ステップ4202ではZacLav がステップ4201で算出したafrmaxより小か否かを判別し、ZacLav >afrmaxのときはセンサ素子が異常と判定してステップ4203に進み、ZacLav ≦afrmaxのときは本ルーチンを終了する。ステップ4203では空燃比センサの応答性が劣化したことを示すフラグXAFRを1にセットする。
【0100】
上述したように、空燃比センサ応答性劣化検出ルーチンにおいて、空燃比センサの故障判定値afrminおよびafrmaxは素子温制御目標値Zactg、すなわち高周波インピーダンスに応じて設定される。
空燃比センサの劣化判定後の処理ルーチンのフローチャートは図25に示す通りである。図25に示すルーチンは所定の周期、例えば1msec毎に実行され、ステップ2501では、空燃比センサが故障か否かを空燃比センサの出力劣化判定XAFVまたは応答性劣化判定フラグXAFRが立てられたか否かにより判定し、XAFV=1またはXAFR=1のときXFAFS を1にセット、空燃比センサは劣化したと判定する。以下ステップ2502〜2504が実行される。
【0101】
図38〜図44を用いて説明した本発明による空燃比センサの特性劣化の検出によれば、従来技術のように、空燃比センサ素子の過昇温を検出しその過昇温から空燃比センサの特性劣化を検出するため、空燃比センサのヒータへの通電電力量を算出する必要もなく、また機関の所定運転条件下での空燃比センサの出力の軌跡から空燃比センサの特性劣化を検出する必要もなしで、それゆえ機関の運転条件に左右されることなく、空燃比センサのみからその劣化を判定することができる。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の空燃比センサの制御装置によれば、空燃比センサ素子の特性変化を正確に検出することにより、空燃比センサの出力値から空燃比を高精度に検出し、かつ空燃比センサの故障や活性状態の判定をより正確に行う空燃比センサの制御装置を提供することができる。
【0103】
また、本発明によれば、空燃比センサの出力特性が経年変化による影響を受けないように空燃比センサの出力特性を一定に維持するので、空燃比センサの出力値から高精度に空燃比を検出する空燃比センサの制御装置を提供することができる。
【0104】
また、本発明によれば、空燃比センサの出力信号を空燃比センサ素子の活性前の低温から空燃比フィードバック制御に使用できるので、機関始動時の排気エミッションが良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による空燃比センサ制御装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】空燃比センサの入出力信号を示す図であり、(A)は空燃比センサへ印加する入力電圧の波形を示す図であり、(B)は空燃比センサから検出される出力電流波形を示す図である。
【図3】空燃比センサの電圧−電流特性を示す図である。
【図4】図1における空燃比制御ユニット20の説明図である。
【図5】図1におけるLPF7の説明図である。
【図6】図1における空燃比センサ回路3の説明図である。
【図7】本発明の第2形態に係るセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンの前半フローチャートである。
【図8】センサ素子のインピーダンス算出ルーチンにおける第1周波数重畳処理のフローチャートである。
【図9】第1周波数重畳処理を遂行するために必要な第1割込処理ルーチンのフローチャートである。
【図10】第1周波数重畳処理を遂行するために必要な第2割込処理ルーチンのフローチャートである。
【図11】センサ素子のインピーダンス算出ルーチンにおける第2周波数重畳処理のフローチャートである。
【図12】第2周波数重畳処理を遂行するために必要な第3割込処理ルーチンのフローチャートである。
【図13】第2周波数重畳処理を遂行するために必要な第4割込処理ルーチンのフローチャートである。
【図14】本発明の第1形態に係るセンサ素子のインピーダンス算出ルーチンを説明するタイムチャートである。
【図15】空燃比センサの直流抵抗に対する低周波インピーダンスおよび高周波インピーダンスの相関関係を示す図である。
【図16】酸素濃度検出素子の劣化に応じて変化する同素子の温度とインピーダンスの第1の相関関係を示す図である。
【図17】酸素濃度検出素子の劣化に応じて変化する同素子の温度とインピーダンスの第2の相関関係を示す図である。
【図18】空燃比センサの劣化補正ルーチンのフローチャートである。
【図19】空燃比センサの全素子抵抗Rsと素子温度との関係を示すマップである。
【図20】素子温制御目標値の補正量Zacgkと低周波インピーダンスZac2 との関係を示すマップである。
【図21】空燃比センサの出力特性を示す図である。
【図22】低周波インピーダンス学習値の算出ルーチンのフローチャートである。
【図23】本発明による第1実施例の空燃比算出ルーチンのフローチャートである。
【図24】素子温制御目標値に対応する高周波インピーダンスZacHTG から低周波インピーダンスの初期値ZacLINIT を算出するマップである。
【図25】空燃比センサの故障判定後の処理ルーチンのフローチャートである。
【図26】空燃比センサの活性判定ルーチンのフローチャートである。
【図27】素子温制御目標値Zactgから活性判定値Zacact を算出するマップである。
【図28】ヒータ制御ルーチンのフローチャートである。
【図29】高周波インピーダンスと低周波インピーダンスの温度特性および空燃比との関係を示す図である。
【図30】本発明による第2実施例の空燃比算出ルーチンのフローチャートである。
【図31】空気量から低周波インピーダンスを補正するためのマップを示す図である。
【図32】高周波インピーダンスと低周波インピーダンスの2次元マップから空燃比を算出するマップである。
【図33】空燃比フィードバック制御ゲインの設定ルーチンのフローチャートである。
【図34】所定温度下における空燃比センサの直流抵抗と低周波インピーダンスとの相関関係を示す図である。
【図35】劣化した空燃比センサにおける低周波インピーダンスの特性変化を示す図である。
【図36】空燃比センサの出力のばらつきと高周波インピーダンス一定下での低周波インピーダンスとの相関関係を示す図である。
【図37】空燃比センサの応答性のばらつきと高周波インピーダンス一定下での低周波インピーダンスとの相関関係を示す図である。
【図38】空燃比センサの特性劣化検出ルーチンのフローチャートである。
【図39】空燃比センサの出力劣化検出ルーチンのフローチャートである。
【図40】素子温制御目標値から空燃比センサの出力劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の下限値を算出するマップである。
【図41】素子温制御目標値から空燃比センサの出力劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の上限値を算出するマップである。
【図42】空燃比センサの応答性劣化検出ルーチンのフローチャートである。
【図43】素子温制御目標値から空燃比センサの応答性劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の下限値を算出するマップである。
【図44】素子温制御目標値から空燃比センサの応答性劣化が許容される低周波インピーダンスの平均値の上限値を算出するマップである。
【図45】酸素濃度検出素子の温度とインピーダンスの相関関係を示す図である。
【図46】空燃比センサ素子の構造を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は電解質部の部分拡大図である。
【図47】空燃比センサ素子の等価回路を示す図である。
【図48】空燃比センサ素子のインピーダンス特性を示す図である。
【図49】空燃比センサ素子への交流印加電圧の周波数と同素子インピーダンスとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1…空燃比センサ
2…センサ素子
3…センサ制御回路
4…ヒータ
5…バッテリ
6…ヒータ制御回路
7、17…ローパスフィルタ(LPF)
10…空燃比制御ユニット(A/FCU)
11…マイクロコンピュータ
12…D/A変換器
13〜16…A/D変換器
100…電子制御ユニット(ECU)
Claims (12)
- 酸素濃度検出素子に電圧を印加することにより被検出ガス中の酸素濃度に対応した電流を該酸素濃度検出素子から検出する空燃比センサの制御装置において、
前記酸素濃度検出素子に複数の周波数の交流電圧を印加し、該周波数の各々に対する該酸素濃度検出素子の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された高周波数側の高周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の素子温度を目標温度に調整する温度調整手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された低周波数側の低周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の特性変化を検出する特性変化検出手段と、
を備え、
前記特性変化検出手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記酸素濃度検出素子の出力値を補正する出力値補正手段を備える、
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。 - 前記特性変化検出手段は、前記酸素濃度検出素子の故障を判定する故障判定手段を備える、
請求項1に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記故障判定手段は、前記酸素濃度検出素子の故障を判定する故障判定値を前記高周波インピーダンスに応じて設定する、
請求項2に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記故障判定手段により前記酸素濃度検出素子が故障したと判定されたとき、その故障を警報する警報手段を備えた、
請求項2または3に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記出力値補正手段は、前記低周波インピーダンスの初期値と学習値とに基づいて前記酸素濃度検出素子の出力値を補正する補正係数を算出する、
請求項4に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記温度調整手段は、前記高周波インピーダンスと前記酸素濃度検出素子の目標温度とに基づいて、該素子に付設されたヒータを通電することにより該素子を加熱し該素子の温度を制御する、
請求項1に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記温度調整手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記目標温度を変更する、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記酸素濃度検出素子の温度が第1所定温度から第2所定温度に至るまでの第1温度範囲では前記低周波インピーダンスに基づき前記空燃比を算出し、前記酸素濃度検出素子の温度が前記第2所定温度以上の第2温度範囲では前記高周波インピーダンスに基づき前記空燃比を算出する空燃比算出手段を、
備えた請求項1乃至7の何れか1項に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記空燃比算出手段により算出された空燃比をフィードバックして前記酸素濃度検出素子の出力値を用いて空燃比を制御する機関の空燃比制御手段を備え、
前記空燃比制御手段は、前記第1の温度範囲では前記第2の温度範囲より低い空燃比フィードバック制御ゲインを有する請求項8に記載の空燃比センサの制御装置。 - 酸素濃度検出素子に電圧を印加することにより被検出ガス中の酸素濃度に対応した電流を該酸素濃度検出素子から検出する空燃比センサの制御装置において、
前記酸素濃度検出素子に複数の周波数の交流電圧を印加し、該周波数の各々に対する該酸素濃度検出素子の交流インピーダンスを検出するインピーダンス検出手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された高周波数側の高周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の素子温度を目標温度に調整する温度調整手段と、
前記インピーダンス検出手段により検出された低周波数側の低周波インピーダンスに基づいて前記酸素濃度検出素子の特性変化を検出する特性変化検出手段と、
を備え、
前記温度調整手段は、前記低周波インピーダンスに応じて前記目標温度を変更する、
ことを特徴とする空燃比センサの制御装置。 - 前記酸素濃度検出素子の温度が第1所定温度から第2所定温度に至るまでの第1温度範囲では前記低周波インピーダンスに基づき前記空燃比を算出し、前記酸素濃度検出素子の温度が前記第2所定温度以上の第2温度範囲では前記高周波インピーダンスに基づき前記空燃比を算出する空燃比算出手段を、
備えた請求項10に記載の空燃比センサの制御装置。 - 前記空燃比算出手段により算出された空燃比をフィードバックして前記酸素濃度検出素子の出力値を用いて空燃比を制御する機関の空燃比制御手段を備え、
前記空燃比制御手段は、前記第1の温度範囲では前記第2の温度範囲より低い空燃比フィードバック制御ゲインを有する請求項11に記載の空燃比センサの制御装置。
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